(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】情報処理装置及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240509BHJP
【FI】
G06F30/10
(21)【出願番号】P 2020088340
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加納 康弘
【審査官】堀井 啓明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-092143(JP,A)
【文献】特開2007-079952(JP,A)
【文献】特開2009-199298(JP,A)
【文献】特開平06-290237(JP,A)
【文献】特開平09-073472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00-30/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
製品又は前記製品を構成する部品の3次元形状データ、及び、前記3次元形状データを構成する面及びエッジの各々に付与された属性情報を取得し、
前記3次元形状データ及び前記属性情報から、前記3次元形状データに関する3次元注記を含む製品製造情報を自動的に作成し、
前記3次元注記は、前記3次元形状データを形状認識することにより得られる寸法と、前記属性情報から得られるデータムと、前記属性情報から得られる寸法公差とを含み、
前記寸法、前記データム、及び前記寸法公差に基づいて、前記3次元形状データに対応する2次元図面を作成する
情報処理装置。
【請求項2】
前記属性情報は、データム及び寸法公差、並びに、タップ穴、金型制約条件、及びシボ加工の少なくとも1つを含む情報である
請求項
1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記属性情報は、種類毎に色分けされている
請求項
2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記3次元形状データの投影方向を特定し、特定した投影方向に応じた2次元図面を更に作成する
請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
製品又は前記製品を構成する部品の3次元形状データ、及び、前記3次元形状データを構成する面及びエッジの各々に付与された属性情報を取得し、
前記3次元形状データ及び前記属性情報から、前記3次元形状データに関する3次元注記を含む製品製造情報を自動的に作成し、
前記3次元注記は、前記3次元形状データを形状認識することにより得られる寸法と、前記属性情報から得られるデータムと、前記属性情報から得られる寸法公差とを含み、
前記寸法、前記データム、及び前記寸法公差に基づいて、前記3次元形状データに対応する2次元図面を作成することを、
コンピュータに実行させるための情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、CAD(Computer Aided Design)装置を用いて作成したCADモデルと属性情報を利用した属性情報処理装置が記載されている。この属性情報処理装置は、CADモデル上の寸法などの属性情報に識別子を付加する識別子付加手段と、属性情報に計測などの作業に必要な情報を付加する作業指示情報付加手段と、属性情報を作業段取り毎にグループ化する作業段取り手段と、を有する。また、この属性情報処理装置は、計測などの作業に必要な情報を出力する作業情報出力手段と、計測などの作業を教示する作業教示手段と、計測などの作業結果を識別子と属性情報を関連付けて読込む作業結果読込み手段と、作業結果をCADモデルと関連付けて表示する作業結果表示手段と、を有する。
【0003】
また、特許文献2には、3次元金型CADデータをもとに、金属素材を加工して所望の3次元形状の金型を生成する金型生成システムが記載されている。この金型生成システムは、3次元金型CADデータと関連させて規定された所定の金型面属性と、当該所定の金型面属性を製作された金型において実現させるために適した加工方法との関係を対応付けて記憶した、金型面属性・加工方法対応記憶手段を備える。また、この金型生成システムは、金型面属性・加工方法対応記憶手段の金型面属性・加工方法を用いて、金型面属性の各面の属性に対応する加工方法を導き出す、金型加工方法導出手段と、金型加工方法導出手段によって導出された金型加工方法に従って、金属素材を加工して金型を生成する、金属素材加工手段と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-328952号公報
【文献】特開2009-104584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、1つの製品について約1000点の部品を新規設計する際に、その全ての部品について2次元図面を作成している。2次元図面の作成には、1部品当たり約3時間程度の工数が必要とされ、製品設計にかかる工数の大部分を占めている。このため、2次元図面を効率的に作成することが望まれている。
【0006】
本発明は、製品又は製品を構成する部品の3次元形状データ及びその属性情報を考慮しない場合と比較して、2次元図面を効率的に作成することができる情報処理装置及び情報処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1態様に係る情報処理装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサが、製品又は前記製品を構成する部品の3次元形状データ、及び、前記3次元形状データを構成する面及びエッジの各々に付与された属性情報を取得し、前記3次元形状データを形状認識することにより得られる寸法と、前記属性情報から得られるデータム及び寸法公差とに基づいて、前記3次元形状データに対応する2次元図面を作成する。
【0008】
また、第2態様に係る情報処理装置は、第1態様に係る情報処理装置において、前記プロセッサが、前記3次元形状データ及び前記属性情報から、前記3次元形状データに関する3次元注記を更に作成する。
【0009】
また、第3態様に係る情報処理装置は、第1態様又は第2態様に係る情報処理装置において、前記属性情報が、データム及び寸法公差、並びに、タップ穴、金型制約条件、及びシボ加工の少なくとも1つを含む情報であるとされている。
【0010】
また、第4態様に係る情報処理装置は、第3態様に係る情報処理装置において、前記属性情報が、種類毎に色分けされている。
【0011】
また、第5態様に係る情報処理装置は、第1態様~第4態様のいずれか1の態様に係る情報処理装置において、前記プロセッサが、前記3次元形状データの投影方向を特定し、特定した投影方向に応じた2次元図面を更に作成する。
【0012】
更に、上記目的を達成するために、第6態様に係る情報処理プログラムは、製品又は前記製品を構成する部品の3次元形状データ、及び、前記3次元形状データを構成する面及びエッジの各々に付与された属性情報を取得し、前記3次元形状データを形状認識することにより得られる寸法と、前記属性情報から得られるデータム及び寸法公差とに基づいて、前記3次元形状データに対応する2次元図面を作成することを、コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
第1態様及び第6態様によれば、製品又は製品を構成する部品の3次元形状データ及びその属性情報を考慮しない場合と比較して、2次元図面を効率的に作成することができる、という効果を有する。
【0014】
第2態様によれば、製品又は製品を構成する部品の3次元形状データ及びその属性情報を考慮しない場合と比較して、3次元注記を効率的に作成することができる、という効果を有する。
【0015】
第3態様によれば、2次元図面の作成に必要な属性情報を利用することができる、という効果を有する。
【0016】
第4態様によれば、色分けによって属性情報を可視化することができる、という効果を有する。
【0017】
第5態様によれば、3次元形状データの投影方向を考慮しない場合と比較して、適切な2次元図面を作成することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る情報処理装置の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】(A)は比較例に係る部品の3次元形状データを示す斜視図である。(B)は比較例に係る部品の2次元図面を示す図である。
【
図3】比較例に係るはめ合い穴の寸法指示の説明に供する図である。
【
図4】実施形態に係る情報処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る情報処理プログラムによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る部品の3次元形状データの一例を示す斜視図である。
【
図7】実施形態に係る部品の3次元形状データ及びPMIの一例を示す斜視図である。
【
図8】実施形態に係るブラケットの一例を示す斜視図である。
【
図9】(A)は実施形態に係るブラケットの一例を示す平面図である。(B)は実施形態に係るブラケットの一例を示す側面図である。
【
図10】実施形態に係る部品の2次元図面の一例を示す図である。
【
図11】(A)は実施形態に係る属性情報を付与する対象部品の3次元形状データの一例を示す斜視図である。(B)は実施形態に係る属性情報管理テーブルの一例を示す図である。
【
図12】実施形態に係る属性付加UI画面の一例を示す正面図である。
【
図13】実施形態に係るはめ合い穴を有する対象面に属性情報を付与する方法の説明に供する図である。
【
図14】実施形態に係る3次元注記を自動的に作成する方法の説明に供する図である。
【
図15】投影方向をZ方向としたときの部品の2次元図面の一例を示す図である。
【
図16】投影方向をX方向としたときの部品の2次元図面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態の一例について詳細に説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置10の電気的な構成の一例を示すブロック図である。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10は、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、入出力インターフェース(I/O)14と、記憶部15と、表示部16と、操作部17と、通信部18と、を備えている。
【0022】
本実施形態に係る情報処理装置10には、例えば、サーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)等の汎用的なコンピュータ装置が適用される。
【0023】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14は、バスを介して各々接続されている。I/O14には、記憶部15と、表示部16と、操作部17と、通信部18と、を含む各機能部が接続されている。これらの各機能部は、I/O14を介して、CPU11と相互に通信可能とされる。
【0024】
CPU11、ROM12、RAM13、及びI/O14によって制御部が構成される。制御部は、情報処理装置10の一部の動作を制御するサブ制御部として構成されてもよいし、情報処理装置10の全体の動作を制御するメイン制御部の一部として構成されてもよい。制御部の各ブロックの一部又は全部には、例えば、LSI(Large Scale Integration)等の集積回路又はIC(Integrated Circuit)チップセットが用いられる。上記各ブロックに個別の回路を用いてもよいし、一部又は全部を集積した回路を用いてもよい。上記各ブロック同士が一体として設けられてもよいし、一部のブロックが別に設けられてもよい。また、上記各ブロックのそれぞれにおいて、その一部が別に設けられてもよい。制御部の集積化には、LSIに限らず、専用回路又は汎用プロセッサを用いてもよい。
【0025】
記憶部15としては、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等が用いられる。記憶部15には、本実施形態に係る情報処理プログラム15Aが記憶される。なお、この情報処理プログラム15Aは、ROM12に記憶されていてもよい。
【0026】
情報処理プログラム15Aは、例えば、情報処理装置10に予めインストールされていてもよい。情報処理プログラム15Aは、不揮発性の記憶媒体に記憶して、又はネットワークを介して配布して、情報処理装置10に適宜インストールすることで実現してもよい。なお、不揮発性の記憶媒体の例としては、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、光磁気ディスク、HDD、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、フラッシュメモリ、メモリカード等が想定される。
【0027】
表示部16には、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等が用いられる。表示部16は、タッチパネルを一体的に有していてもよい。操作部17には、例えば、キーボードやマウス等の操作入力用のデバイスが設けられている。表示部16及び操作部17は、情報処理装置10のユーザから各種の指示を受け付ける。表示部16は、ユーザから受け付けた指示に応じて実行された処理の結果や、処理に対する通知等の各種の情報を表示する。
【0028】
通信部18は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等のネットワークに接続されており、画像形成装置、他のPC等の外部機器との間でネットワークを介して通信が可能とされる。
【0029】
ところで、上述したように、2次元図面の作成には、1部品当たり約3時間程度の工数が必要とされ、製品設計にかかる工数の大部分を占めている。このため、2次元図面を効率的に作成することが望まれている。
【0030】
ここで、比較例に係る2次元図面作成処理について、
図2(A)、
図2(B)、及び
図3を参照して説明する。
【0031】
図2(A)は、比較例に係る部品30の3次元形状データを示す斜視図である。
【0032】
図2(A)に示す部品30は、例えば、設計担当者等が3次元CADを用いて作成した3次元形状データとして表される。なお、図中に示す矢印Zは部品上下方向(鉛直方向)を示し、矢印Xは部品幅方向(水平方向)を示し、矢印Yは部品奥行方向(水平方向)を示す。
【0033】
部品30は、幅方向及び奥行方向に延びる下面33と、下面33の下端部35から上方向に延びる壁面32と、壁面32の上端部34から下面33に対して平行でかつ反対向きに延びる上面31と、を有している。
【0034】
図2(B)は、比較例に係る部品30の2次元図面を示す図である。
【0035】
図2(B)に示す2次元図面は、
図2(A)に示す部品30を上から見た状態を示している。従来、例えば、はめ合い穴の寸法指示を行う場合、
図3に示すように、11個のステップの入力及び選択が必要とされていた。
【0036】
図3は、比較例に係るはめ合い穴の寸法指示の説明に供する図である。なお、ここでは、説明を簡単にするため、はめ合い穴の左右を水平方向、上下を垂直方向として説明する。
【0037】
図3では、ユーザの操作に従って、ステップ(1)~ステップ(11)が実行される。すなわち、(1)では、はめ合い穴に対して、水平方向における基準を選択し、(2)では、はめ合い穴の水平方向における径位置を選択し、(3)では、水平方向における寸法公差を選択する。
【0038】
次に、(4)では、はめ合い穴に対して、垂直方向における基準を選択し、(5)では、はめ合い穴の垂直方向における径位置を選択し、(6)では、垂直方向における寸法公差を選択する。
【0039】
次に、(7)では、はめ合い穴の径を選択し、(8)では、はめ合い穴の径公差、はめ合い等級を入力し、(9)では、幾何公差を選択し、(10)では、寸法公差を入力し、(11)では、適用データムを入力する。
【0040】
上記従来手法に対して、本実施形態では、3次元形状データ及びその属性情報を用いて、3次元形状データに対応する2次元図面を自動的に作成し、上記従来手法と比較して、2次元図面の作成に必要な工数を削減する。
【0041】
このため、本実施形態に係る情報処理装置10のCPU11は、記憶部15に記憶されている情報処理プログラム15AをRAM13に書き込んで実行することにより、
図4に示す各部として機能する。なお、CPU11は、プロセッサの一例である。
【0042】
図4は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0043】
図4に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10のCPU11は、取得部11A、作成部11B、及び表示制御部11Cとして機能する。
【0044】
本実施形態に係る記憶部15には、3次元形状データ及びその属性情報が記憶されている。3次元形状データとは、設計担当者等が3次元CAD(Computer Aided Design)を用いて作成した、製品又は当該製品を構成する部品の3次元形状を表すデータである。属性情報とは、3次元形状データを構成する面及びエッジ(=端部)の各々に付与されたテキスト情報である。属性情報には、例えば、データム及び寸法公差が含まれる。属性情報には、例えば、データム及び寸法公差に加え、更に、タップ穴、金型制約条件、及びシボ加工の少なくとも1つが含まれていてもよい。なお、データムとは、物体の姿勢偏差、位置偏差、振れ等を決めるために設定した理論的に正確な幾何学的基準、と定義される。つまり、データムは、加工、寸法測定をする際に基準となる面又は線を表す。
【0045】
本実施形態に係る取得部11Aは、記憶部15から、3次元形状データ及びその属性情報を取得する。
【0046】
本実施形態に係る作成部11Bは、取得部11Aにより取得された3次元形状データを形状認識することにより得られる寸法と、属性情報から得られるデータム及び寸法公差とに基づいて、3次元形状データに対応する2次元図面を作成する。
【0047】
また、作成部11Bは、3次元形状データ及び属性情報から、3次元形状データに関する3次元注記を更に作成する。
【0048】
また、作成部11Bは、3次元形状データの投影方向を特定し、特定した投影方向に応じた2次元図面を更に作成するようにしてもよい。
【0049】
本実施形態に係る表示制御部11Cは、作成部11Bにより作成された2次元図面を表示部16に表示する制御を行う。
【0050】
次に、
図5を参照して、本実施形態に係る情報処理装置10の作用を説明する。
【0051】
図5は、本実施形態に係る情報処理プログラム15Aによる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0052】
まず、情報処理装置10に対して、2次元図面作成処理の実行が指示されると、CPU11により情報処理プログラム15Aが起動され、以下の各ステップを実行する。
【0053】
図5のステップ100では、CPU11が、記憶部15から、3次元形状データ及びその属性情報を取得する。
【0054】
図6は、本実施形態に係る部品30の3次元形状データの一例を示す斜視図である。
【0055】
図6に示す部品30の面及びエッジ(=端部)の各々には属性情報が予め付与されている。なお、この属性情報は、後述する属性付加UI(User Interface)画面を介して入力される。部品30は、上述したように、上面31、壁面32、下面33、上端部34、及び下端部35を有している。
図6の例では、これらの上面31、壁面32、下面33、上端部34、及び下端部35の各々に属性情報が付与されている。この属性情報には、少なくともデータム及び寸法公差が含まれている。面の属性情報の場合、例えば、面の名前、目印(データの色)が付与される。属性情報は種類毎に色分けされ、可視化されている。例えば、データムの場合には黄色、寸法公差の場合には青色で示される。
図6の例では、ハッチングの違いで色の違いを表現している。なお、
図6の例では、上面31が寸法公差の青色で表され、下面33がデータムの黄色及び寸法公差の青色で表される。
【0056】
ステップ101では、CPU11が、ステップ100で取得した3次元形状データを中間データに変換する。なお、中間データのデータ形式には、特に限定されるものではないが、例えば、比較的よく利用されるJT形式等が用いられる。
【0057】
ステップ102では、CPU11が、ステップ101で中間データに変換された3次元形状データ及びその属性情報に基づいて、一例として、
図7に示すPMI(Product and Manufacturing Information)を自動的に作成する。
【0058】
図7は、本実施形態に係る部品30の3次元形状データ及びPMIの一例を示す斜視図である。
【0059】
図7に示すPMIは、製品製造情報と呼ばれ、PMIには、3次元形状データに関する3次元注記(例えば、寸法、データム、寸法公差等)が含まれる。この3次元注記のうち寸法は、公知の形状認識技術を用いて取得される。この形状認識技術によれば、部品30を構成する各要素(例えば、直線、曲線、穴、リブ、バーリング等)の形状を認識して、各要素の寸法を計測することが可能とされる。なお、3次元注記のうちデータム及び寸法公差は、属性情報から取得される。つまり、3次元形状データを形状認識することにより寸法が取得され、属性情報からデータム及び寸法公差が取得される。
【0060】
ここで、
図8、
図9(A)、及び
図9(B)を参照して、部品の一例であるブラケットを構成するバーリングの形状を認識する方法について具体的に説明する。なお、認識対象とされる要素はバーリングに限定されるものではなく、各種の要素についても認識可能とされる。
【0061】
図8は、本実施形態に係るブラケット50の一例を示す斜視図である。
図9(A)は、本実施形態に係るブラケット50の一例を示す平面図であり、
図9(B)は、本実施形態に係るブラケット50の一例を示す側面図である。
【0062】
ブラケット50は、
図8に示すように、端面50aを有し、ブラケット50には、板面が上下方向を向いた平板状の基部52と、板面が幅方向を向いた平板状の壁部54と、基部52と壁部54とを連結する連結部56とが形成されている。基部52には板面52aが形成され、連結部56には湾曲面56aが形成されている。さらに、基部52には、バーリング58と、バーリング60とが形成されている。ここで、「バーリング」とは、平板状の板部に形成された筒状の部分(=筒部)である。
【0063】
まず、CPU11は、三次元形状データからブラケット50の板厚情報を取得する。
【0064】
次に、CPU11は、ブラケット50に板厚の例えば1.5倍以上の高さの内周面が形成されているか否かを判定する。ここで、「内周面」とは、板材の板面(本例では、基部52の板面)に対して直交する面で、かつ、一周繋がって内側を向いている面である。
【0065】
本例では、バーリング58、60の内周面58b、60bが、
図8、
図9(A)、及び
図9(B)に示すように、高さが板厚の1.5倍以上とされ、基部52の板面52aに対して直交する面で、かつ、一周繋がって内側を向いている面である。このため、CPU11は、ブラケット50に板厚の1.5倍以上の高さの内周面58b、60bが形成されていると判定する。
【0066】
内周面が形成されている場合、CPU11は、内周面58b、60bが、1個の曲面、又は2個の曲面と2個の平面とで構成されているか否かを判定する。本例では、内周面58bは、
図9(A)に示すように、1個の曲面で構成されている。また、内周面60bは、奥行方向に対向する2個の曲面62aと、幅方向に対向する2個の平面62bとで構成されている。このため、CPU11は、内周面58bが、1個の曲面で構成され、内周面60bが2個の曲面と2個の平面とで構成されていると判定する。
【0067】
内周面58b、60bが、1個の曲面、又は2個の曲面と2個の平面とで構成されている場合、CPU11は、内周面58b、60bの先端に、2本の稜線で囲まれた円環面、又は長円環面が形成されているか否かを判定する。本例では、内周面58bの先端に、
図8、
図9(A)に示すように、2本の稜線に囲まれた円環面58cが形成されている。また、内周面60bの先端に、2本の稜線で囲まれた長円環面60cが形成されている。このため、CPU11は、内周面58b、60bの先端に、2本の稜線で囲まれた円環面58c、又は長円環面60cが形成されていると判定する。
【0068】
内周面58b、60bの先端に、2本の稜線で囲まれた円環面、又は長円環面が形成されている場合、CPU11は、円環面58c、又は長円環面60cの外側に高さ方向に延びている外周面が形成されているか否かを判定する。ここで、「外周面」とは、板材の板面(本例では、基部52の板面)に対して直交する面で、かつ、一周繋がって外側を向いている面である。
【0069】
本例では、バーリング58、60の外周面58a、60aは、
図8、
図9(A)に示すように、基部52の板面に対して直交する面で一周繋がっており、かつ、外側を向いている。このため、CPU11は、基部52の板面に対して直交する面で、かつ、一周繋がって外側を向いている外周面58a、60aが形成されていると判定する。
【0070】
外周面が形成されている場合、CPU11は、円孔バーリングとしてバーリング58と、長孔バーリングとしてバーリング60とを認識する。
【0071】
なお、要素としてリブの形状を認識するには、例えば、特開2018-156507号公報等に記載の技術を適用すればよい。
【0072】
次に、ステップ103では、CPU11が、ステップ102で作成したPMIを用いて、一例として、
図10に示すように、部品30の2次元図面を自動的に作成する。
【0073】
図10は、本実施形態に係る部品30の2次元図面の一例を示す図である。
【0074】
図10に示す2次元図面は、
図6に示す部品30を上から見た状態を示している。この2次元図面は、3次元形状データ及びその属性情報から得られた寸法、データム、及び寸法公差を用いて自動的に作成される。
【0075】
ステップ104では、CPU11が、ステップ103で作成した部品30の2次元図面を表示部16に表示出力し、本情報処理プログラム15Aによる一連の処理を終了する。
【0076】
次に、
図11(A)、
図11(B)、及び
図12を参照して、属性情報を付与する方法について具体的に説明する。
【0077】
図11(A)は、本実施形態に係る属性情報を付与する対象部品70の3次元形状データの一例を示す斜視図である。
【0078】
図11(A)に示す対象部品70の場合、要素d1~要素d3には属性としてデータムが付与され、要素t1~要素t12には属性として寸法公差が付与されている。この場合、要素d1~要素d3はデータムの黄色で表され、要素t1~t12は寸法公差の青色で表される。
【0079】
図11(B)は、本実施形態に係る属性情報管理テーブルの一例を示す図である。
【0080】
図11(B)に示す属性情報管理テーブルでは、属性の一例として、データム、寸法公差、タップ穴、金型制約条件、及びシボ加工が定義される。データムには黄色、寸法公差には青色、タップ穴には緑色、金型制約条件には赤色、シボ加工にはピンク色がそれぞれ対応付けられている。なお、
図11(B)の例では、ハッチングの違いで色の違いを表現している。
【0081】
図12は、本実施形態に係る属性付加UI画面80の一例を示す正面図である。
【0082】
図12に示す属性付加UI画面80は、一例として、属性選択欄80A、属性指定色80B、公差域選択欄80C、位置度選択欄80D、及び面選択ボタン80Eを有している。
【0083】
図12の例では、ユーザにより属性選択欄80Aから「公差」が選択されているため、この「公差」を表す青色(ここではハッチングとして示す。)が属性指定色80Bとして表示される。この場合、ユーザが、(1)公差域選択欄80Cから適切な公差域を選択し、(2)位置度選択欄80Dから適切な位置度を選択し、(3)面選択ボタン80Eを押下して属性を付加する面を選択する。なお、同じ公差域であれば、複数の面を一括選択して付加することが可能とされる。つまり、
図12の例では、ユーザが3つの選択ステップを行うだけで属性情報が付与される。
【0084】
図13は、本実施形態に係るはめ合い穴を有する対象面に属性情報を付与する方法の説明に供する図である。
【0085】
図13に示す属性付加UI画面81は、はめ合い穴を有する対象面に属性として公差を付与するための画面である。この属性付加UI画面81は、一例として、はめ合い等級選択欄81A、位置度選択欄81B、及び面選択ボタン81Cを有している。
【0086】
図13の例では、ユーザが、(1)はめ合い等級選択欄81Aから適切なはめ合い等級を選択し、(2)位置度選択欄81Bから適切な位置度を選択し、(3)面選択ボタン81Cを押下して属性を付加する面を選択する。
図13の例では、面選択ボタン81Cが押下された場合に、部品90の対象面が選択される。これら3つの選択ステップで属性が選択された状態で、「適用」ボタンが押下されると、選択された属性が部品90の対象面に付与される。
【0087】
上述の
図3に示す比較例では11個のステップを必要とするのに対して、
図13に示す実施形態では3個のステップで属性情報が付与される。そして、本実施形態では、部品90の3次元形状データを形状認識することで寸法が取得され、部品90の属性情報からデータム及び寸法公差が取得される。このため、
図3の比較例と比して、工数が低減される。
【0088】
次に、
図14を参照して、3次元形状データ及びその属性情報から、3次元形状データに関する3次元注記を自動的に作成する方法について具体的に説明する。
【0089】
図14は、本実施形態に係る3次元注記を自動的に作成する方法の説明に供する図である。なお、
図14は、部品90の3次元形状データを表している。
【0090】
図14の部品90は、はめ合い穴91を有し、各面及びエッジ(=端部)の各々には3次元注記が付与されている。
【0091】
図14に示す3次元注記には、点線で囲んだ注記及び実線で囲んだ注記が含まれる。点線で囲んだ注記は、3次元形状データを形状認識して得られる寸法を示す。実線で囲んだ注記は、3次元形状データの属性情報から得られるデータム及び寸法公差を示す。
【0092】
次に、
図15及び
図16を参照して、3次元形状データの投影方向を特定し、特定した投影方向に応じた2次元図面を作成する方法について具体的に説明する。
【0093】
図15は、投影方向をZ方向としたときの部品90の2次元図面の一例を示す図である。
【0094】
例えば、部品90の3次元形状データ(
図14参照)をZ方向(鉛直方向)から投影した場合、
図15に示すように、部品90の2次元図面が自動的に作成される。
【0095】
図16は、投影方向をX方向としたときの部品90の2次元図面の一例を示す図である。
【0096】
例えば、部品90の3次元形状データ(
図14参照)をX方向(水平方向)から投影した場合、
図16に示すように、部品90の2次元図面が自動的に作成される。
【0097】
このように本実施形態によれば、製品又は製品を構成する部品の3次元形状データ及びその属性情報を用いて、3次元形状データに対応する2次元図面が自動的に作成される。このため、2次元図面を作成するための工数が低減され、2次元図面が効率的に作成される。
【0098】
なお、上記各実施形態において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えば、CPU: Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えば、GPU: Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0099】
また、上記各実施形態におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は、上記各実施形態において記載した順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0100】
以上、実施形態に係る情報処理装置を例示して説明した。実施形態は、情報処理装置が備える各部の機能をコンピュータに実行させるためのプログラムの形態としてもよい。実施形態は、これらのプログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な非一時的記憶媒体の形態としてもよい。
【0101】
その他、上記実施形態で説明した情報処理装置の構成は、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において状況に応じて変更してもよい。
【0102】
また、上記実施形態で説明したプログラムの処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。実施形態は、例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって実現してもよい。
【符号の説明】
【0104】
10 情報処理装置
11 CPU
11A 取得部
11B 作成部
11C 表示制御部
12 ROM
13 RAM
14 I/O
15 記憶部
15A 情報処理プログラム
16 表示部
17 操作部
18 通信部
30、90 部品
31 上面
32 壁面
33 下面
34 上端部
35 下端部
50 ブラケット
58、60 バーリング
70 対象部品
80、81 属性付加UI画面