(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】照明装置およびプロジェクター
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20240509BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240509BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240509BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240509BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20240509BHJP
F21V 9/35 20180101ALI20240509BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240509BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21S2/00 311
F21V5/00 510
F21V5/04 200
F21V7/28 240
F21V9/35
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2020097822
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(72)【発明者】
【氏名】秋山 光一
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0179221(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0331990(US,A1)
【文献】特開2016-58213(JP,A)
【文献】特開2011-128522(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106950785(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/14
F21S 2/00
F21V 5/00 - 9/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長帯の第1光を射出する発光装置と、
前記第1光の一部を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換し、前記第2光と前記第1光の他の一部とを射出する波長変換素子と、
正のパワーを有し、前記第1光が入射する第1光学系と、
前記第1光学系から射出される前記第1光が入射し、前記第1光および前記第2光のうちの一方を反射し、他方を透過する光学素子と、
正のパワーを有し、前記光学素子から射出される前記第1光と前記波長変換素子から射出される前記第2光とが入射する第2光学系と、
正のパワーを有し、前記第2光学系から射出される前記第1光を前記波長変換素子に入射させる第3光学系と、
正のパワーを有し、前記第2光学系から射出される前記第2光が入射する第4光学系と、を備え
、
前記第1光学系は、前記発光装置と前記光学素子との間に設けられ、前記光学素子上または前記光学素子と前記第2光学系との間に焦点を有し、前記発光装置から射出される前記第1光を集束させ、
前記第2光学系は、前記光学素子から射出される前記第1光が入射するのに十分な大きさを有しており、
前記第1光の前記他の一部の周縁部の光束は、前記第2光学系および前記光学素子に入射することなく、前記第2光学系および前記光学素子の外側の空間を通過し、
前記第2光の一部は前記第2光学系および前記光学素子に入射し、前記第2光の他の一部は前記第2光学系および前記光学素子に入射することなく、前記第2光学系および前記光学素子の外側の空間を通過し、
前記第2光学系から射出された前記第2光の前記一部は、前記光学素子を介して所定の発散角に広がった状態で前記第4光学系に入射し、
前記第4光学系は、前記第2光の前記一部の前記発散角を小さくし、前記第2光の前記一部の前記発散角を前記第2光の前記他の一部の発散角に近づける、照明装置。
【請求項2】
前記第2光学系は、前記光学素子から射出される前記第1光を前記第3光学系に向けて射出するとともに、前記第2光学系から射出された後の前記第1光の発散角を前記第2光学系に入射する前の前記第1光の発散角よりも小さくする、または、前記第1光を平行化する、請求項1
に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第3光学系は、前記第2光学系と前記波長変換素子との間に設けられる、請求項1
または請求項
2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記第4光学系は、前記光学素子から射出される前記第2光を射出するとともに、前記第4光学系から射出された後の前記第2光の発散角を前記第4光学系に入射する前の前記第2光の発散角よりも小さくする、または、前記第2光を平行化する、請求項1から請求項
3までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記発光装置と前記光学素子との間に設けられ、前記第1光を拡散させる拡散素子をさらに備える、請求項1から請求項
4までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1光は、前記波長変換素子上にデフォーカス状態で入射する、請求項1から請求項
5までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記光学素子は、
透光性基板と、
前記透光性基板に設けられ、前記第1光を反射し、前記第2光を透過するダイクロイックミラーと、
を有する、請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記光学素子は、
透光性基板と、
前記透光性基板の第1領域に設けられ、前記第1光を透過し、前記第2光を反射するダイクロイックミラーと、
前記透光性基板の前記第1領域とは異なる第2領域に設けられ、前記第1光および前記第2光を反射するミラーと、
を有する、請求項1から請求項
6までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記光学素子は、前記発光装置の光軸上において、前記発光装置の光軸と前記波長変換素子の光軸との交点から離間した位置に設けられる、請求項1から請求項
8までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記波長変換素子は、
前記第1光を前記第2光に変換する波長変換層と、
前記波長変換層の第1面に設けられた反射層と、
前記波長変換層の前記第1面とは異なる第2面に設けられた構造体と、
を有する、請求項1から請求項
9までのいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項11】
請求項1から請求項1
0までのいずれか一項に記載の照明装置と、
前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、
を備える、プロジェクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクターに用いる光源装置として、発光素子から射出された励起光を蛍光体に照射した際に蛍光体から発せられる蛍光を利用した光源装置が従来から提案されている。
【0003】
下記の特許文献1には、青色の励起光を射出する光源と、励起光を蛍光に変換する波長変換素子と、励起光を反射し、蛍光を透過するダイクロイックミラーと、ダイクロイックミラーから射出される励起光を波長変換素子に導く集光レンズユニットと、を備える光源装置が開示されている。
【0004】
下記の特許文献2には、励起光を射出する第1光源と、励起光の照射によって蛍光を発する第2光源と、励起光を反射させ、蛍光を透過させるダイクロイックミラーと、を備える光源装置が開示されている。この光源装置においては、励起光を射出するレーザー光源とダイクロイックミラーとの間に、マイクロレンズアレイと、光束の断面形状を調整する調整レンズと、が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-194523号公報
【文献】特開2019-8193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の光源装置において、波長変換素子から射出される励起光の光束幅に対してダイクロイックミラーが大きい場合、励起光の多くがダイクロイックミラーで反射して光源の方向に戻るため、照明光として利用される青色光の割合が低下する、という問題がある。ところが、特許文献1の光源装置においては、光源とダイクロイックミラーとの間に第1レンズアレイおよび第2レンズアレイが設けられているため、励起光が拡散し、これら2枚のレンズアレイにより波長変換素子上での励起光の分布が均一化されたとしても、ダイクロイックミラーを小型化することは困難である。
【0007】
同様に、特許文献2の光源装置においては、レーザー光源と調整レンズとの間にマイクロレンズアレイが設けられているため、励起光が拡散し、マイクロレンズアレイによって蛍光体上での励起光の強度分布が均一化されたとしても、ダイクロイックミラーを小型化することは困難である。このように、特許文献1および2の光源装置においては、ダイクロイックミラーの小型化が困難であり、励起光の利用効率の低下を抑制することは困難である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一つの態様の照明装置は、第1波長帯の第1光を射出する発光装置と、前記第1光の一部を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換し、前記第2光と前記第1光の他の一部とを射出する波長変換素子と、正のパワーを有し、前記第1光が入射する第1光学系と、前記第1光学系から射出される前記第1光が入射し、前記第1光および前記第2光のうちの一方を反射し、他方を透過する光学素子と、正のパワーを有し、前記光学素子から射出される前記第1光と前記波長変換素子から射出される前記第2光とが入射する第2光学系と、正のパワーを有し、前記第2光学系から射出される前記第1光を前記波長変換素子に入射させる第3光学系と、正のパワーを有し、前記第2光学系から射出される前記第2光が入射する第4光学系と、を備える。
【0009】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の照明装置と、前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の照明装置の概略構成を示す平面図である。
【
図4】第1調整レンズおよび第2調整レンズの保持構造を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態の照明装置の概略構成を示す平面図である。
【
図6】第3実施形態の照明装置の概略構成を示す平面図である。
【
図7】第3実施形態の照明装置における波長変換素子上での照度分布を示す図である。
【
図9】第3実施形態の変形例の照明装置における波長変換素子上での照度分布を示す図である。
【
図11】第4実施形態の照明装置の概略構成を示す平面図である。
【
図12】第4実施形態の照明装置における波長変換素子上での照度分布を示す図である。
【
図14】第4実施形態の第1変形例の照明装置における波長変換素子上での照度分布を示す図である。
【
図16】第4実施形態の第2変形例の照明装置における波長変換素子上での照度分布を示す図である。
【
図18】第5実施形態の照明装置の概略構成を示す平面図である。
【
図19】第6実施形態の照明装置の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、
図1~
図4を用いて説明する。
以下の各図面においては各構成要素を見やすくするため、構成要素によって寸法の縮尺を異ならせて示すことがある。
【0012】
本実施形態に係るプロジェクターの一例について説明する。
図1は、本実施形態に係るプロジェクターの概略構成図である。
図1に示すように、本実施形態のプロジェクター1は、スクリーンSCR上にカラー映像を表示する投写型画像表示装置である。プロジェクター1は、照明装置2と、色分離光学系3と、光変調装置4R,光変調装置4G,光変調装置4Bと、合成光学系5と、投写光学装置6と、を備えている。照明装置2の構成については、後で説明する。
【0013】
色分離光学系3は、第1ダイクロイックミラー7aと、第2ダイクロイックミラー7bと、反射ミラー8aと、反射ミラー8bと、反射ミラー8cと、リレーレンズ9aと、リレーレンズ9bと、を備えている。色分離光学系3は、照明装置2から射出された照明光WLを赤色光LRと緑色光LGと青色光LBとに分離し、赤色光LRを光変調装置4Rに導き、緑色光LGを光変調装置4Gに導き、青色光LBを光変調装置4Bに導く。
【0014】
フィールドレンズ10Rは、色分離光学系3と光変調装置4Rとの間に配置され、入射した光を略平行化して光変調装置4Rに向けて射出する。フィールドレンズ10Gは、色分離光学系3と光変調装置4Gとの間に配置され、入射した光を略平行化して光変調装置4Gに向けて射出する。フィールドレンズ10Bは、色分離光学系3と光変調装置4Bとの間に配置され、入射した光を略平行化して光変調装置4Bに向けて射出する。
【0015】
第1ダイクロイックミラー7aは、赤色光成分を透過させ、緑色光成分および青色光成分を反射させる。第2ダイクロイックミラー7bは、緑色光成分を反射させ、青色光成分を透過させる。反射ミラー8aは、赤色光成分を反射させる。反射ミラー8bおよび反射ミラー8cは、青色光成分を反射させる。
【0016】
第1ダイクロイックミラー7aを透過した赤色光LRは、反射ミラー8aで反射し、フィールドレンズ10Rを透過して赤色光用の光変調装置4Rの画像形成領域に入射する。第1ダイクロイックミラー7aで反射した緑色光LGは、第2ダイクロイックミラー7bでさらに反射し、フィールドレンズ10Gを透過して緑色光用の光変調装置4Gの画像形成領域に入射する。第2ダイクロイックミラー7bを透過した青色光LBは、リレーレンズ9a、入射側の反射ミラー8b、リレーレンズ9b、射出側の反射ミラー8c、およびフィールドレンズ10Bを経て青色光用の光変調装置4Bの画像形成領域に入射する。
【0017】
光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれは、入射された色光を画像情報に応じて変調し、画像光を形成する。光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bのそれぞれは、液晶ライトバルブから構成されている。図示を省略したが、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの光入射側に、入射側偏光板がそれぞれ配置されている。光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bの光射出側に、射出側偏光板がそれぞれ配置されている。
【0018】
合成光学系5は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bから射出された各画像光を合成してフルカラーの画像光を形成する。合成光学系5は、4つの直角プリズムを貼り合わせた平面視で略正方形状をなすクロスダイクロイックプリズムで構成されている。直角プリズム同士を貼り合わせた略X字状の界面には、誘電体多層膜が形成されている。
【0019】
合成光学系5から射出された画像光は、投写光学装置6によって拡大投写され、スクリーンSCR上で画像を形成する。すなわち、投写光学装置6は、光変調装置4R、光変調装置4G、および光変調装置4Bにより変調された光を投写する。投写光学装置6は、複数の投写レンズで構成されている。
【0020】
本実施形態の照明装置2の一例について説明する。
以下、
図2においては、XYZ直交座標系を用い、発光装置20から射出される青色光BLの主光線に平行な軸をX軸と定義し、波長変換素子23から射出される蛍光YLの主光線に平行な軸をY軸と定義し、X軸およびY軸に直交する軸をZ軸と定義する。
また、青色光BLの主光線に沿う軸を発光装置20の光軸ax4と称する。すなわち、発光装置20の光軸ax4は、X軸と平行である。蛍光YLの主光線に沿う軸を波長変換素子23の光軸ax5と称する。すなわち、波長変換素子23の光軸ax5は、Y軸と平行である。
【0021】
図2は、Z軸方向から見た照明装置2の平面図である。
図2に示すように、本実施形態の照明装置2は、発光装置20と、集光レンズ35(第1光学系)と、光学素子21と、第1調整レンズ31(第2光学系)と、集光ピックアップ光学系22(第3光学系)と、波長変換素子23と、第2調整レンズ32(第4光学系)と、インテグレーター光学系24と、偏光変換素子25と、重畳レンズ26と、を備えている。
【0022】
発光装置20は、複数の発光素子201を有する。本実施形態の場合、発光装置20は、4個の発光素子201を有する。4個の発光素子201は、Y軸およびZ軸に沿って2行2列に互いに離れて配置されている。なお、発光装置20を構成する発光素子201の数および配置は、特に限定されない。
【0023】
発光素子201は、青色半導体レーザーを有し、第1波長帯の青色光束BL1を射出する。青色半導体レーザーは、例えば380nm~495nmの範囲内にピーク波長を有する第1波長帯の青色光束BL1を射出する。したがって、発光装置20は、全体として、4本の青色光束BL1を射出する。本明細書では、4本の青色光束BL1をまとめて青色光BLと称し、4本の青色光束BL1全体の中心軸を青色光BLの主光線と称する。後述するように、青色光BLの一部は、波長変換素子23に含まれる蛍光体を励起させる励起光として機能する。本実施形態の青色光BLは、特許請求の範囲の第1光に対応する。
【0024】
本実施形態において、発光素子201は、1個の半導体レーザーチップがパッケージ内に収容された形態、いわゆるCANパッケージ型のレーザー素子が用いられている。また、パッケージ202の光射出面に凸レンズからなるコリメーターレンズ203が設けられ、コリメーターレンズ203によって平行化された青色光束BL1が射出される。なお、発光素子201として、複数の半導体レーザーチップが1つのパッケージ内に収容された形態の発光素子が用いられてもよい。
【0025】
集光レンズ35は、発光装置20と光学素子21との間に設けられている。集光レンズ35は、正のパワーを有する凸レンズから構成され、発光装置20から射出される青色光BLが入射する。本実施形態の集光レンズ35は、光学素子21上に焦点を有し、発光装置20から射出される青色光BLを光学素子21の中心において1点に集束させる。光学素子21の中心は、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点に一致する。したがって、集光レンズ35は、発光装置20から射出される青色光BLを発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点において1点に集束させる。言い換えると、集光レンズ35の焦点距離は、集光レンズ35の主点と光学素子21の中心との距離に一致する。本実施形態の集光レンズ35は、特許請求の範囲の第1光学系に対応する。本実施形態では、第1光学系は、1枚のレンズで構成されているが、第1光学系を構成するレンズの数は特に限定されず、複数枚のレンズで構成されていてもよい。第1光学系が複数枚のレンズで構成される場合、第1光学系全体の焦点距離は、第1光学系全体の主点と光学素子の中心との距離に一致する。なお、集光レンズ35のレンズ面には、青色光BLに対する反射防止膜が設けられていてもよい。
【0026】
光学素子21は、光軸ax4および光軸ax5のそれぞれに対して45°の角度をなすように配置されている。すなわち、光学素子21は、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5とが交差する位置に設けられている。光学素子21は、青色波長帯の光を反射させ、黄色波長帯の光を透過させる特性を有する。そのため、光学素子21は、発光装置20から射出される青色光BLを反射させ、波長変換素子23から射出される蛍光YLを透過させる。本実施形態の光学素子21は、特許請求の範囲の光学素子に対応する。
【0027】
光学素子21は、透光性基板211と、ダイクロイックミラー212と、を有する。ダイクロイックミラー212は、透光性基板211の第1面211aに設けられ、発光装置20から射出される青色光BLを反射させ、波長変換素子23から射出される蛍光YLを透過させる。本実施形態の場合、ダイクロイックミラー212を透光性基板211の一部の領域に設けているが、透光性基板211をダイクロイックミラー212と同じ大きさに小型化し、ダイクロイックミラー212を透光性基板211の全領域に設けてもよい。
【0028】
第1調整レンズ31は、光学素子21と集光ピックアップ光学系22との間に設けられている。第1調整レンズ31は、正のパワーを有する凸レンズから構成され、光学素子21から射出される青色光BLと、波長変換素子23から射出される蛍光YLおよび青色光BLと、が入射する。第1調整レンズ31は、青色光BLが入射するのに十分な大きさを有しており、集光ピックアップ光学系22を構成する各レンズに比べて小さい。なお、第1調整レンズ31のレンズ面には、可視域全域の光に対する反射防止膜が設けられていてもよい。
【0029】
本実施形態の第1調整レンズ31は、光学素子21から射出される青色光BLを集光ピックアップ光学系22に向けて射出するとともに、青色光BLを平行化する。すなわち、第1調整レンズ31は、光学素子21から射出される所定の発散角を有する青色光BLを平行化された青色光BLに変換し、集光ピックアップ光学系22に向けて射出する。したがって、第1調整レンズ31の焦点距離は、第1調整レンズ31と光学素子21との距離に一致する。なお、第1調整レンズ31と光学素子21との距離は、第1調整レンズ31の主点と光学素子21の中心との距離と定義する。第1調整レンズ31は、青色光BLが集光ピックアップ光学系22を介して波長変換素子23に入射する際の照度分布を調整する機能を有する。本実施形態の第1調整レンズ31は、特許請求の範囲の第2光学系に対応する。本実施形態では、第2光学系は、1枚のレンズで構成されているが、第2光学系を構成するレンズの数は特に限定されず、複数枚のレンズで構成されていてもよい。第2光学系が複数枚のレンズで構成される場合、第2光学系全体の焦点距離は、第2光学系全体の主点と光学素子21の中心との距離に一致する。
【0030】
集光ピックアップ光学系22は、第1調整レンズ31と波長変換素子23との間に設けられている。集光ピックアップ光学系22は、正のパワーを有し、第1レンズ221、第2レンズ222、および第3レンズ223からなる3枚の凸レンズから構成されている。集光ピックアップ光学系22は、波長変換素子23上に焦点を有する。集光ピックアップ光学系22は、第1調整レンズ31から射出される平行化された青色光BLを集束させて波長変換素子23に入射させる。本実施形態の集光ピックアップ光学系22は、特許請求の範囲の第3光学系に対応する。本実施形態では、第3光学系は、3枚のレンズで構成されているが、第3光学系を構成するレンズの数は特に限定されない。
【0031】
波長変換素子23は、青色光BLが入射する第1面23aを有し、青色光BLの一部を蛍光YLに変換し、蛍光YLと青色光BLの他の一部とを第1面23aから射出させる。
【0032】
図3は、波長変換素子23の断面図である。
図3に示すように、波長変換素子23は、基板231と、反射層232と、波長変換層233と、構造体234と、を備える。波長変換素子23は、集光ピックアップ光学系22から射出された青色光BLを第1波長帯とは異なる第2波長帯の蛍光YLに変換する。波長変換層233は、青色光BLを黄色の蛍光YLに変換するセラミック蛍光体を含んでいる。第2波長帯は例えば490~750nmであり、蛍光YLは緑色光成分および赤色光成分を含む黄色光である。なお、蛍光体は、単結晶蛍光体を含んでいてもよい。また、波長変換素子23の平面形状は、青色光BLの入射方向(Y軸方向)から見て、略正方形である。本実施形態の蛍光YLは、特許請求の範囲の第2光に対応する。
【0033】
基板231は、反射層232、波長変換層233、および構造体234を支持する支持基板として機能するとともに、波長変換層233で発生する熱を放熱する放熱基板として機能する。基板231は、例えば金属、セラミックス等、高い熱伝導率を有する材料で構成される。
【0034】
反射層232は、基板231の第1面231aに設けられている。すなわち、反射層232は、基板231の第1面231aと波長変換層233の第1面233aとの間に位置し、波長変換層233から入射される蛍光YLを、波長変換層233の側に反射させる。反射層232は、例えば誘電体多層膜、金属ミラーおよび増反射膜等を含む積層膜で構成されている。
【0035】
波長変換層233は、例えばイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)系蛍光体を含んでいる。賦活剤としてセリウム(Ce)を含有するYAG:Ceを例にとると、蛍光体として、Y2O3、Al2O3、CeO3等の構成元素を含む原料粉末を混合して固相反応させた材料、共沈法やソルゲル法等の湿式法により得られるY-Al-Oアモルファス粒子、噴霧乾燥法や火炎熱分解法、熱プラズマ法等の気相法により得られるYAG粒子等を用いることができる。
【0036】
構造体234は、波長変換層233の第2面233bに設けられている。構造体234は、波長変換素子23に入射する青色光BLの一部を散乱させ、青色光BLが入射する方向とは逆方向に反射させる。構造体234は、透光性材料で構成されており、複数の散乱構造を有する。本実施形態の散乱構造は、凸部からなるレンズ形状を有する。
【0037】
構造体234は、波長変換層233とは別体で形成される。本実施形態の構造体234は、例えば蒸着法、スパッタ法、CVD法、塗布法等によって誘電体を形成した後、フォトリソグラフィーで加工する手法が適している。構造体234は、光吸収が小さく、化学的に安定な材料で構成することが望ましい。すなわち、構造体234は、屈折率が1.3~2.5の範囲の材料で構成され、例えばSiO2、SiON、TiO2などを用いることができる。例えばSiO2を用いて構造体234を構成すれば、ウェットエッチングあるいはドライエッチングによって精度良く加工することができる。
【0038】
上記の構成により、波長変換素子23に入射した青色光BLのうち、一部の青色光BLは、構造体234を透過した後、波長変換層233において波長変換され、蛍光YLに変換される。すなわち、一部の青色光BLは、蛍光体を励起させる励起光として機能する。一方、他の一部の青色光BLは、蛍光YLに波長変換される前に構造体234によって後方散乱し、波長変換されることなく、波長変換素子23の外部に射出される。このとき、青色光BLは、蛍光YLの角度分布と略同様の角度分布に拡散された状態で射出される。
【0039】
なお、上記の構造体234に代えて、波長変換層233は、青色光BLおよび蛍光YLを散乱させるための散乱要素を含んでいてもよい。散乱要素として、例えば蛍光体の内部に形成される複数の気孔が用いられる。この場合、波長変換素子23に入射した青色光BLのうち、一部の青色光BLは、波長変換されて蛍光YLに変換されるが、他の一部の青色光BLは、蛍光YLに波長変換される前に蛍光体に含まれる散乱要素によって後方散乱し、波長変換されることなく、波長変換素子23の外部に射出される。
【0040】
図2に示すように、第2調整レンズ32は、光学素子21から射出される蛍光YLの光路上に設けられている。具体的には、第2調整レンズ32は、光学素子21とインテグレーター光学系24との間に設けられている。第2調整レンズ32は、正のパワーを有する凸レンズから構成され、第1調整レンズ31から射出される蛍光YLが光学素子21を介して入射する。
【0041】
第2調整レンズ32は、光学素子21から射出される蛍光YLを射出するとともに、蛍光YLを平行化する。すなわち、第2調整レンズ32は、第2調整レンズ32に所定の発散角で入射する蛍光YLを、平行化された蛍光YLに変換して射出する。第2調整レンズ32の曲率は、第1調整レンズ31の曲率と等しい。すなわち、第2調整レンズ32の焦点距離は、第1調整レンズ31の焦点距離と一致しており、第2調整レンズ32と光学素子21との距離とも一致している。なお、第2調整レンズ32と光学素子21との距離は、第2調整レンズ32の主点と光学素子21の中心との距離と定義する。本実施形態の第2調整レンズ32は、特許請求の範囲の第4光学系に対応する。本実施形態では、第4光学系は、1枚のレンズで構成されているが、第4光学系を構成するレンズの数は特に限定されず、複数枚のレンズで構成されていてもよい。第4光学系が複数枚のレンズで構成される場合、第4光学系全体の焦点距離は、第4光学系全体の主点と光学素子21の中心との距離に一致する。なお、第2調整レンズ32のレンズ面には、可視域全域の光に対する反射防止膜が設けられていてもよい。
【0042】
図4は、第1調整レンズ31と第2調整レンズ32との保持構造を示す断面図である。
図4に示すように、第1調整レンズ31は、保持部材33aによって光学素子21に保持されている。同様に、第2調整レンズ32は、保持部材33bによって光学素子21に保持されている。保持部材33a,33bは、例えばガラス等の透光性材料からなり、内部が中空の円筒状部材で構成されている。保持部材33a,33bは、長手方向の中央部において45°の角度で斜めに切断され、各切断面が例えば接着等の方法により光学素子21にそれぞれ固定されている。また、保持部材33aの光学素子21側とは反対側の端面に第1調整レンズ31が固定され、保持部材33bの光学素子21側とは反対側の端面には第2調整レンズ32が固定されている。第1調整レンズ31および第2調整レンズ32は、例えば接着等の方法により保持部材33a、保持部材33bにそれぞれ固定されている。
【0043】
本実施形態の場合、発光装置20と光学素子21との間に正のパワーを有する集光レンズ35が設けられているため、青色光BLが集束された状態でダイクロイックミラー212に入射する。そのため、集光レンズ35が設けられていない場合に比べて、ダイクロイックミラー212を小型化することができる。ダイクロイックミラー212が黄色光成分を透過する特性を有するため、波長変換素子23から射出された蛍光YLのうち、中央部の光束は、集光ピックアップ光学系22を透過した後、ダイクロイックミラー212を透過する。また、波長変換素子23から射出された蛍光YLのうち、周縁部の光束は、ダイクロイックミラー212に入射することなく、透光性基板211、または光学素子21の外側の空間を通過する。
【0044】
また、波長変換素子23から射出された青色光BLのうち、中央部の光束は、ダイクロイックミラー212に入射するが、周縁部の光束は、ダイクロイックミラー212に入射することなく、透光性基板211、または光学素子の外側の空間を通過する。ダイクロイックミラー212に入射した青色光BLの中央部の光束は、ダイクロイックミラー212で反射され、損失となるが、ダイクロイックミラー212に入射しない光束BLは、蛍光YLとともに照明光WLとして利用される。この場合、ダイクロイックミラー212を小型化することにより、ダイクロイックミラー212で反射され、損失となる青色光BLを少なくすることができる。
【0045】
以上のようにして、青色光BLと蛍光YLとは、インテグレーター光学系24に入射する。青色の光束BLと黄色の蛍光YLとが合成されることにより、白色の照明光WLが生成される。
【0046】
インテグレーター光学系24は、第1マルチレンズアレイ241と、第2マルチレンズアレイ242と、を有する。第1マルチレンズアレイ241は、照明光WLを複数の部分光束に分割するための複数の第1レンズ2411を有する。
【0047】
第1マルチレンズアレイ241のレンズ面、すなわち第1レンズ2411の表面と、光変調装置4R,4G,4Bの各々の画像形成領域とは、互いに共役の関係となっている。そのため、光軸ax5の方向から見て、第1レンズ2411の各々の形状は、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域の形状と略相似形の矩形状である。これにより、第1マルチレンズアレイ241から射出された部分光束の各々は、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域にそれぞれ効率良く入射する。
【0048】
第2マルチレンズアレイ242は、第1マルチレンズアレイ241の複数の第1レンズ2411に対応する複数の第2レンズ2421を有する。第2マルチレンズアレイ242は、重畳レンズ26とともに、第1マルチレンズアレイ241の各第1レンズ2411の像を各光変調装置4R,4G,4Bの各々の画像形成領域の近傍に結像させる。
【0049】
インテグレーター光学系24を透過した照明光WLは、偏光変換素子25に入射する。偏光変換素子25は、図示しない偏光分離膜と位相差板とをアレイ状に配列した構成を有する。偏光変換素子25は、照明光WLの偏光方向を所定の方向に揃える。具体的には、偏光変換素子25は、照明光WLの偏光方向を光変調装置4R,4G,4Bの入射側偏光板の透過軸の方向に揃える。
【0050】
これにより、偏光変換素子25を透過した照明光WLから分離される赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBの偏光方向は、各光変調装置4R,4G,4Bの入射側偏光板の透過軸方向に一致する。したがって、赤色光LR、緑色光LG、および青色光LBは、入射側偏光板でそれぞれ遮光されることなく、光変調装置4R,4G,4Bの画像形成領域にそれぞれ入射する。
【0051】
偏光変換素子25を透過した照明光WLは、重畳レンズ26に入射する。重畳レンズ26は、インテグレーター光学系24と協働して、被照明領域である光変調装置4R,4G,4Bの各々の画像形成領域における照度分布を均一化する。
【0052】
[第1実施形態の効果]
本実施形態の照明装置2は、青色光BLを射出する発光装置20と、青色光BLの一部を蛍光YLに変換し、蛍光YLと青色光BLの他の一部とを射出する波長変換素子23と、正のパワーを有し、青色光BLが入射する集光レンズ35と、集光レンズ35から射出される青色光BLが入射し、青色光BLを反射し、蛍光YLを透過する光学素子21と、正のパワーを有し、光学素子21から射出される青色光BLと波長変換素子23から射出される蛍光YLとが入射する第1調整レンズ31と、正のパワーを有し、第1調整レンズ31から射出される青色光BLを波長変換素子23に入射させる集光ピックアップ光学系22と、正のパワーを有し、第1調整レンズ31から射出される蛍光YLが入射する第2調整レンズ32と、を備える。
【0053】
また、本実施形態の照明装置2において、集光レンズ35は、発光装置20と光学素子21との間に設けられ、光学素子21上に焦点を有し、発光装置20から射出される青色光BLを集束させる。また、第1調整レンズ31は、光学素子21と集光ピックアップ光学系22との間に設けられ、光学素子21から射出される青色光BLを平行化された青色光BLに変換し、集光ピックアップ光学系22に向けて射出させる。また、第2調整レンズ32は、光学素子21から射出される蛍光YLの光路上に設けられ、第2調整レンズ32に入射する蛍光YLを平行化された蛍光YLに変換する。
【0054】
上述したように、本実施形態の照明装置2は、集光レンズ35を有しているため、ダイクロイックミラー212に入射させる青色光BLを集光レンズ35によって集束させることができ、ダイクロイックミラー212を従来よりも小型化することができる。特に本実施形態の場合、青色光BLは、集光レンズ35によってダイクロイックミラー212上の1点に集束するため、ダイクロイックミラー212を十分に小型化することができる。これにより、波長変換素子23から射出される青色光BLのうち、ダイクロイックミラー212で反射して発光装置20の方向に戻る光を減らすことができ、青色光BLの利用効率を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態の照明装置2は、第1調整レンズ31を有しているため、波長変換素子23上での青色光BLの照度分布を調整することができる。本実施形態の場合、青色光BLは、ダイクロイックミラー212上の1点に集束するため、ダイクロイックミラー212から所定の発散角に広がった状態で射出される。したがって、仮に第1調整レンズ31がなかったとすると、所定の発散角に広がった青色光BLが集光ピックアップ光学系22に入射する。これに対し、本実施形態の場合、所定の発散角に広がった青色光BLは、第1調整レンズ31によって平行化された後、集光ピックアップ光学系22に入射する。そのため、青色光BLは、集光ピックアップ光学系22によって波長変換素子23上の1点に集束する。
【0056】
蛍光YLは、ランバート分布に近い配光分布で波長変換素子23から射出された後、集光ピックアップ光学系22によって平行化される。集光ピックアップ光学系22から射出される蛍光YLのうち、光軸ax5に近い中央部の光束は、第1調整レンズ31によってダイクロイックミラー212上の1点に集束された後、所定の発散角に広がった状態でダイクロイックミラー212から射出される。一方、集光ピックアップ光学系22から射出される蛍光YLのうち、光軸ax5から遠い周縁部の光束は、第1調整レンズ31およびダイクロイックミラー212に入射することなく、インテグレーター光学系24に向かって進む。
【0057】
このように、蛍光YLのうち、光軸ax5に近い中央部の光束は、所定の発散角に広がった状態でダイクロイックミラー212から射出されるため、仮に第2調整レンズ32がなかったとすると、一部の光束はインテグレーター光学系24に入射できないおそれがあり、蛍光YLの利用効率が低下するという問題が生じる。これに対して、本実施形態の場合、ダイクロイックミラー212から射出される蛍光YLの光路上に第2調整レンズ32が設けられているため、所定の発散角に広がった蛍光YLは、第2調整レンズ32により平行化された後、インテグレーター光学系24に向かって進む。これにより、インテグレーター光学系24に入射できない光束を低減でき、蛍光YLの利用効率の低下を抑制することができる。したがって、本実施形態によれば、青色光BLおよび蛍光YLの利用効率に優れた照明装置2を提供することができる。
【0058】
また、本実施形態の照明装置2において、光学素子21は、透光性基板211と、透光性基板211に設けられ、青色光BLを反射し、蛍光YLを透過するダイクロイックミラー212と、を有する。
この構成によれば、簡易な構成の光学素子21を実現することができる。
【0059】
また、本実施形態の照明装置2において、波長変換素子23は、青色光BLを蛍光YLに変換する波長変換層233と、波長変換層233の第1面233aに設けられた反射層232と、波長変換層233の第2面233bに設けられた構造体234と、を有する。
この構成によれば、波長変換層233に入射する前の青色光BLの一部を構造体234によって後方散乱させることができるため、青色光BLの一部を照明光として有効に利用することができる。
【0060】
本実施形態のプロジェクター1は、本実施形態の照明装置2を備えているため、光利用効率に優れる。
【0061】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態について、
図5を用いて説明する。
第2実施形態のプロジェクターの構成は第1実施形態と同様であり、照明装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび照明装置の全体構成の説明は省略する。
図5は、第2実施形態の照明装置28の概略構成図である。
図5において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0062】
図5に示すように、本実施形態の照明装置28は、発光装置20と、集光レンズ37(第1光学系)と、光学素子21と、第1調整レンズ31(第2光学系)と、集光ピックアップ光学系22(第3光学系)と、波長変換素子23と、第2調整レンズ32(第4光学系)と、インテグレーター光学系24と、偏光変換素子25と、重畳レンズ26と、を備えている。
【0063】
第1実施形態の集光レンズ35は、光学素子21上に焦点を有しており、発光装置20から射出される青色光BLを光学素子21の中心において1点に集束させていた。これに対して、本実施形態の集光レンズ37の曲率は、第1実施形態の集光レンズ35の曲率よりも大きく、集光レンズ37は、光学素子21の中心と第1調整レンズ31の主点との間に焦点を有する。そのため、青色光BLは、集光レンズ37によって集束されるが、光学素子21上にデフォーカス状態で入射する。
【0064】
本実施形態の第1調整レンズ31、集光ピックアップ光学系22、および第2調整レンズ32は、第1実施形態の第1調整レンズ31、集光ピックアップ光学系22、および第2調整レンズ32と同一である。一方、本実施形態の集光レンズ37は、第1実施形態の集光レンズ35とは異なっている。したがって、第1実施形態において、光学素子21から射出される青色光BLは、第1調整レンズ31によって平行化されて集光ピックアップ光学系22に入射されるのに対し、本実施形態において、光学素子21から射出される青色光BLは、第1調整レンズ31によって平行化されることなく集光ピックアップ光学系22に入射される。本実施形態の場合、第1調整レンズ31は、光学素子21から射出される青色光BLを集光ピックアップ光学系22に向けて射出するとともに、第1調整レンズ31から射出された後の青色光BLの発散角を第1調整レンズ31に入射する前の青色光BLの発散角よりも小さくする。
【0065】
本実施形態の場合、このように、平行化されていない青色光BLが集光ピックアップ光学系22に入射するため、第1実施形態とは異なり、青色光BLは、集光ピックアップ光学系22によって、波長変換素子23上において1点に集束されることなく、デフォーカス状態で集束される。
【0066】
一方、波長変換素子23から射出される蛍光YLについては、第1実施形態と同様の振る舞いを示す。すなわち、波長変換素子23から射出された後、集光ピックアップ光学系22によって平行化される蛍光YLのうち、光軸ax5に近い中央部の光束は、第1調整レンズ31によって光学素子21上の1点に集束された後、所定の発散角に広がった状態で光学素子21から射出される。所定の発散角に広がった蛍光YLは、第2調整レンズ32によって平行化された後、インテグレーター光学系24に向かって進む。
照明装置28のその他の構成は、第1実施形態の照明装置2と同様である。
【0067】
[第2実施形態の効果]
本実施形態においても、青色光BLおよび蛍光YLの利用効率に優れた照明装置28を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
また、本実施形態の照明装置28において、青色光BLは、波長変換素子23上にデフォーカス状態で入射する。
この構成によれば、青色光BLが波長変換素子23上で1点に集束する第1実施形態の照明装置2に比べて、波長変換素子23における青色光BLの光密度を低下させることができる。これにより、波長変換素子23の温度上昇を抑えることができるため、波長変換効率および信頼性の向上を図ることができる。
【0069】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態について、
図6~
図10を用いて説明する。
第3実施形態のプロジェクターの構成は第1実施形態と同様であり、照明装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび照明装置の全体構成の説明は省略する。
図6は、第3実施形態の照明装置の概略構成図である。
図6において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0070】
図6に示すように、本実施形態の照明装置40は、発光装置20と、拡散素子36と、集光レンズ35(第1光学系)と、光学素子21と、第1調整レンズ31(第2光学系)と、集光ピックアップ光学系22(第3光学系)と、波長変換素子23と、第2調整レンズ32(第4光学系)と、インテグレーター光学系24と、偏光変換素子25と、重畳レンズ26と、を備えている。
【0071】
拡散素子36は、発光装置20と集光レンズ35との間に設けられ、発光装置20から射出される青色光BLを拡散させ、集光レンズ35に向けて射出させる。波長変換素子23上における青色光BLの照度のピーク値は、拡散素子36によって低下する。拡散素子36として、例えば光学ガラスからなる磨りガラス板、またはレンズ形状を有する複数の構造体が設けられた透光性基板等が用いられる。なお、拡散素子36は、発光装置20と光学素子21との間に設けられていればよく、例えば集光レンズ35と光学素子21との間に設けられていてもよい。
【0072】
集光レンズ35は、第1実施形態と同様、光学素子21上に焦点を有しており、発光装置20から射出される青色光BLを光学素子21において1点に集束させる。
照明装置40のその他の構成は、第1実施形態の照明装置2と同様である。
【0073】
[第3実施形態の効果]
本実施形態においても、青色光BLおよび蛍光YLの利用効率に優れた照明装置40を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
また、本実施形態の照明装置40は、発光装置20と光学素子21との間に設けられ、青色光BLを拡散させる拡散素子36をさらに備えている。
この構成によれば、青色光BLが波長変換素子23上で1点に集束する第1実施形態の照明装置2に比べて、波長変換素子23における青色光BLの照度のピーク値を低下させることができる。これにより、波長変換素子23の局所的な温度上昇を抑えることができるため、波長変換効率および信頼性の向上を図ることができる。
【0075】
ここで、本発明者は、本実施形態の照明装置40における拡散素子36の効果を実証するためのシミュレーションを行った。具体的には、本発明者は、シミュレーションにより波長変換素子23に照射される青色光BLの照度分布を求めた。
【0076】
[第1実施例]
第1実施例の照明装置のシミュレーション条件として、拡散素子の拡散角を6°に設定した。なお、拡散角は、拡散素子によって拡散された光の中心輝度の半値となる位置を全角で表した値と定義する。
【0077】
図7は、青色光の入射方向から見た波長変換素子上の青色光の照度分布を示すシミュレーション結果である。
以下の全てのシミュレーションにおいて、青色光の入射位置は、青色光の主光線が波長変換素子の中心に一致するように設定した。また、照度分布のシミュレーション結果を示す以下の全ての図において、白色の領域は照度が相対的に高い領域であり、黒色の領域は照度が相対的に低い領域である。
【0078】
図7に示すように、第1実施例の照明装置によれば、拡散角が6°の拡散素子によって青色光が拡散することにより、青色光の光軸を中心として同心円状に広がった照度分布が得られた。
【0079】
図8は、
図7の照度分布をグラフ化した図である。
照度分布をグラフ化した以下の全ての図面において、横軸は波長変換素子上の相対的な位置を示し、位置「0」は青色光の主光線の位置を示す。縦軸は照度[W/mm
2]を示す。なお、グラフ化にあたって、X軸(
図7の横方向)に沿う照度分布とZ軸(
図7の縦方向)に沿う照度分布とで略同等の結果が得られたため、グラフ化した以下の全ての図面ではX軸およびZ軸に沿う照度分布を1本のグラフで示す。
【0080】
図8に示すように、第1実施例の照明装置によれば、青色光の照度の最大値が約27W/mm
2で略一定となった照度分布が得られた。
【0081】
[第2実施例]
次に、第2実施例の照明装置のシミュレーション条件として、拡散素子の拡散角を4°に設定した。
【0082】
図9は、青色光の入射方向から見た波長変換素子上の青色光の照度分布を示すシミュレーション結果である。
図9に示すように、第2実施例の照明装置によれば、拡散角が4°の拡散素子によって青色光が拡散することにより、青色光の光軸を中心として同心円状に広がった照度分布が得られた。なお、照度分布の広がりは、第1実施例における照度分布の広がりに比べて小さい。
【0083】
図10は、
図9の照度分布をグラフ化した図である。
図10に示すように、第2実施例の照明装置によれば、青色光の照度の最大値が約44W/mm
2となった。照度の最大値は、第1実施例における照度の最大値に比べて高い。
【0084】
以上の第1実施例および第2実施例のシミュレーションから判るように、第3実施形態の照明装置40によれば、拡散素子36を備えていない第1実施形態の照明装置2に比べて、波長変換素子23における青色光BLの照度のピーク値を低減できることが実証された。
【0085】
[第4実施形態]
以下、本発明の第4実施形態について、
図11~
図17を用いて説明する。
第4実施形態のプロジェクターの構成は第1実施形態と同様であり、照明装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび照明装置の全体構成の説明は省略する。
図11は、第4実施形態の照明装置42の概略構成図である。
図11において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0086】
図11に示すように、本実施形態の照明装置42は、発光装置20と、拡散素子36と、集光レンズ37(第1光学系)と、光学素子21と、第1調整レンズ31(第2光学系)と、集光ピックアップ光学系22(第3光学系)と、波長変換素子23と、第2調整レンズ32(第4光学系)と、インテグレーター光学系24と、偏光変換素子25と、重畳レンズ26と、を備えている。
【0087】
拡散素子36は、第3実施形態と同様、発光装置20と集光レンズ37との間に設けられ、発光装置20から射出される青色光BLを拡散させ、集光レンズ37に向けて射出させる。波長変換素子23上における青色光BLの照度のピーク値は、拡散素子36によって低下する。本実施形態において、拡散素子36は、発光装置20と光学素子21との間に設けられていればよく、例えば集光レンズ37と光学素子21との間に設けられていてもよい。
【0088】
集光レンズ37は、第2実施形態と同様、光学素子21と第1調整レンズ31との間に焦点を有する。そのため、青色光BLは、集光レンズ37によって、光学素子21上においてはデフォーカス状態となり、光学素子21と第1調整レンズ31との間の光路上の焦点に集束される。
照明装置42のその他の構成は、第1実施形態の照明装置2と同様である。
【0089】
[第4実施形態の効果]
本実施形態においても、青色光BLおよび蛍光YLの利用効率に優れた照明装置42を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0090】
また、本実施形態の照明装置42は、青色光BLが波長変換素子23上にデフォーカス状態で入射する構成を有するとともに、青色光BLを拡散させる拡散素子36をさらに備えている。
この構成によれば、第2実施形態で説明したデフォーカスによる作用と、第3実施形態で説明した拡散素子36による作用と、によって、波長変換素子23における青色光BLの照度のピーク値をさらに低下させることができる。これにより、波長変換素子23の局所的な温度上昇を抑えることができるため、波長変換効率および信頼性の向上を図ることができる。
【0091】
ここで、本発明者は、本実施形態の照明装置42における拡散素子の効果を実証するため、第3実施形態と同様、波長変換素子23上の照度分布のシミュレーションを行った。
【0092】
[第3実施例]
第3実施例の照明装置のシミュレーション条件として、拡散素子の拡散角を6°に設定し、集光レンズの曲率半径を12mmに設定し、第1調整レンズの曲率半径を5mmに設定した。
【0093】
図12は、青色光の入射方向から見た波長変換素子上の青色光の照度分布を示すシミュレーション結果である。
図12に示すように、第3実施例の照明装置によれば、青色光が、波長変換素子上でデフォーカス状態となるとともに、拡散素子によって拡散することにより、青色光の光軸を中心として、角が丸まった正方形状に大きく広がった照度分布が得られた。
【0094】
図13は、
図12の照度分布をグラフ化した図である。
図13に示すように、第1実施例の照明装置によれば、青色光BLの照度の最大値が約8.6W/mm
2となった。照度分布は、2つのピークを有するとともに、青色光の光軸近傍で小さい谷を有する。
【0095】
[第4実施例]
次に、第4実施例の照明装置のシミュレーション条件として、拡散素子の拡散角を6°に設定し、集光レンズの曲率半径を10mmに設定し、第1調整レンズの曲率半径を5mmに設定した。
【0096】
図14は、青色光の入射方向から見た波長変換素子上の青色光の照度分布を示すシミュレーション結果である。
図14に示すように、第4実施例の照明装置によれば、青色光が、波長変換素子上でデフォーカス状態となるとともに、拡散素子によって拡散することにより、青色光の光軸を中心として円形に広がった照度分布が得られた。照度分布の広がりは、
図12に示す第3実施例における照度分布の広がりに比べて小さい。
【0097】
図15は、
図14の照度分布をグラフ化した図である。
図15に示すように、第4実施例の照明装置によれば、青色光の照度の最大値が約21W/mm
2となった。照度の最大値は、第3実施例における照度の最大値に比べて高く、照度分布は、1つのピークを有する。
【0098】
[第5実施例]
次に、第5実施例の照明装置のシミュレーション条件として、拡散素子の拡散角を6°に設定し、集光レンズの曲率半径を10mmに設定し、第1調整レンズの曲率半径を7mmに設定した。
【0099】
図16は、青色光の入射方向から見た波長変換素子上の青色光の照度分布を示すシミュレーション結果である。
図16に示すように、第5実施例の照明装置によれば、青色光が、波長変換素子上でデフォーカス状態となるとともに、拡散素子によって拡散することにより、青色光の光軸を中心として、角が丸まった正方形状に広がった照度分布が得られた。照度分布の広がりは、
図12に示す第3実施例における照度分布の広がりに比べて小さい。
【0100】
図17は、
図16の照度分布をグラフ化した図である。
図17に示すように、第5実施例の照明装置によれば、青色光の照度の最大値が約13.5W/mm
2となった。照度の最大値は、第3実施例における照度の最大値に比べて高い。
【0101】
以上の第3~第5実施例のシミュレーションから判るように、第4実施形態の照明装置42によれば、拡散素子36を備えていない第1実施形態の照明装置2に比べて、波長変換素子23における青色光BLの照度のピーク値を低減できることが実証された。また、集光レンズ37および第1調整レンズ31の少なくとも一方の曲率半径を変え、波長変換素子23上でのデフォーカス状態を調整することにより、青色光BLの照度分布を調整できることが判った。
【0102】
[第5実施形態]
以下、本発明の第5実施形態について、
図18を用いて説明する。
第5実施形態のプロジェクターの構成は第1実施形態と同様であり、照明装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターおよび照明装置の全体構成の説明は省略する。
図18は、第5実施形態の照明装置44の概略構成図である。
図18において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0103】
図18に示すように、本実施形態の照明装置44は、発光装置20と、拡散素子36と、集光レンズ37(第1光学系)と、光学素子21と、第1調整レンズ31(第2光学系)と、集光ピックアップ光学系22(第3光学系)と、波長変換素子23と、第2調整レンズ32(第4光学系)と、インテグレーター光学系24と、偏光変換素子25と、重畳レンズ26と、を備えている。
【0104】
拡散素子36は、第4実施形態と同様、発光装置20と集光レンズ37との間に設けられ、発光装置20から射出される青色光BLを拡散させ、集光レンズ37に向けて射出させる。波長変換素子23上における青色光BLの照度のピーク値は、拡散素子36によって低下する。本実施形態においても、拡散素子36は、発光装置20と光学素子21との間に設けられていればよく、例えば集光レンズ37と光学素子21との間に設けられていてもよい。
【0105】
集光レンズ37は、第4実施形態と同様、光学素子21と第1調整レンズ31との間に焦点を有する。そのため、青色光BLは、集光レンズ37によって、光学素子21上においてはデフォーカス状態となり、光学素子21と第1調整レンズ31との間の光路上の焦点に集束される。
【0106】
第1~第4実施形態の照明装置2,28,40,42において、光学素子21は、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点に設けられている。これに対して、本実施形態の照明装置44において、光学素子21は、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点に設けられていない。
【0107】
光学素子21は、発光装置20の光軸ax4上において、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点から離間した位置に設けられている。本実施形態の場合、光学素子21は、発光装置20の光軸ax4上において、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点よりも発光装置20に近い側に設けられている。光学素子21の中心を通り、光軸ax5に平行な光軸を光軸ax7とすると、光軸ax7は、光軸ax5よりも発光装置に近い側に位置する。なお、光学素子21は、発光装置20の光軸ax4上において、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5との交点よりも発光装置20から遠い側に設けられていてもよい。
照明装置44のその他の構成は、第1実施形態の照明装置と同様である。
【0108】
[第5実施形態の効果]
本実施形態においても、青色光BLおよび蛍光YLの利用効率に優れた照明装置44を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0109】
また、本実施形態の照明装置44は、青色光BLが波長変換素子23上にデフォーカス状態で入射する構成を有するとともに、青色光BLを拡散させる拡散素子36をさらに備えている。
この構成によれば、第4実施形態と同様、波長変換素子23における青色光BLの照度分布のピーク値をさらに低下させることができる。これにより、波長変換素子23の局所的な温度上昇を抑えることができるため、波長変換効率および信頼性の向上を図ることができる。
【0110】
[第6実施形態]
以下、本発明の第6実施形態について、
図19を用いて説明する。
第6実施形態のプロジェクターの構成は第1実施形態と同様であり、照明装置の構成が第1実施形態と異なる。そのため、プロジェクターの全体構成の説明は省略する。
図19は、第6実施形態の照明装置46の概略構成図である。
図19において、第1実施形態で用いた図面と共通の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0111】
図19に示すように、本実施形態の照明装置46は、発光装置20と、拡散素子36と、集光レンズ37(第1光学系)と、光学素子53と、第1調整レンズ31(第2光学系)と、集光ピックアップ光学系22(第3光学系)と、波長変換素子23と、第2調整レンズ32(第4光学系)と、インテグレーター光学系24と、偏光変換素子25と、重畳レンズ26と、を備えている。
【0112】
第1~第5実施形態の照明装置2,28,40,42,44においては、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5とが直交していた。これに対して、本実施形態の照明装置46においては、発光装置20の光軸ax4と波長変換素子23の光軸ax5とが同一直線上に配置されている。したがって、本実施形態の場合、発光装置20、拡散素子36、集光レンズ37、光学素子53、第1調整レンズ31、集光ピックアップ光学系22、および波長変換素子23は、同一の光軸上に配置されている。また、光軸ax4および光軸ax5は、第2調整レンズ32、インテグレーター光学系24、偏光変換素子25、および重畳レンズ26を含む後段の光学系の光軸ax6と直交する。
【0113】
光学素子53は、光軸ax4および光軸ax5と光軸ax6のそれぞれに対して45°の角度をなすように配置されている。光学素子53は、透光性基板531と、透光性基板531の第1領域に設けられるダイクロイックミラー532と、透光性基板531の第1領域とは異なる第2領域に設けられるミラー533と、を有する。
【0114】
ダイクロイックミラー532は、第1領域として、光軸ax4および光軸ax5と光軸ax6とが交差する透光性基板531の中央領域に設けられている。ダイクロイックミラー532は、青色光BLを透過させ、黄色の蛍光YLを反射させる。すなわち、本実施形態のダイクロイックミラー532の透過波長帯および反射波長帯は、第1実施形態のダイクロイックミラー212の透過波長帯および反射波長帯と互いに逆の関係である。
【0115】
ミラー533は、第2領域として、ダイクロイックミラー532の両側方にあたる透光性基板531の周縁領域に設けられている。ミラー533は、青色光BLおよび蛍光YLをともに反射させる。ミラー533は、誘電体多層膜、金属膜等から構成されている。
【0116】
本実施形態の場合、発光装置20から射出される青色光BLは、拡散素子36および集光レンズ37を介してダイクロイックミラー532を透過し、第1調整レンズ31および集光ピックアップ光学系22を介して波長変換素子23に入射する。このとき、本実施形態においても、第1実施形態と同様、発光装置20と光学素子53との間に集光レンズ37が設けられているため、光学素子53上のダイクロイックミラー532を小型化することができる。
【0117】
ダイクロイックミラー532を小型化することにより、波長変換素子23から射出される青色光BLのうち、青色光BLの中央部は、ダイクロイックミラー532に入射するが、青色光BLの周縁部はダイクロイックミラー532の両側に設けられたミラー533で反射する。ダイクロイックミラー532に入射する青色光BLは、ダイクロイックミラー532を透過するため、損失となるが、ミラー533に入射する青色光BLは、蛍光YLとともに照明光WLとして利用される。また、ダイクロイックミラー532を小型化することにより、ダイクロイックミラー532を透過し、損失となる青色光BLを少なくすることができる。
【0118】
第1調整レンズ31および第2調整レンズ32の作用については、第1~第5実施形態の照明装置2,28,40,42,44と同様である。すなわち、第1調整レンズ31の曲率を変えることによって、波長変換素子23上の青色光BLの照度分布を調整することができる。また、第2調整レンズ32を設けることによって、第2調整レンズ32の後段の光学系に入射できない蛍光YLを低減することができる。
【0119】
[第6実施形態の効果]
本実施形態においても、青色光BLおよび蛍光YLの利用効率に優れた照明装置46を実現することができる、といった第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0120】
また、本実施形態の照明装置46は、青色光BLが波長変換素子23上にデフォーカス状態で入射する構成を有するとともに、青色光BLを拡散させる拡散素子36をさらに備えている。
この構成によれば、第4実施形態と同様、波長変換素子23における青色光BLの照度のピーク値をさらに低下させることができる。これにより、波長変換素子23の局所的な温度上昇を抑えることができるため、波長変換効率および信頼性の向上を図ることができる。
【0121】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば上記実施形態の照明装置においては、第2調整レンズの曲率および焦点距離が第1調整レンズの曲率および焦点距離と一致しており、第2調整レンズは、当該第2調整レンズに入射する蛍光YLを平行化していた。この構成に代えて、第2調整レンズの曲率および焦点距離は、第1調整レンズの曲率および焦点距離と一致していなくてもよい。この構成においては、第2調整レンズは、光学素子から射出される蛍光YLを射出するとともに、第2調整レンズから射出された後の蛍光YLの発散角を第2調整レンズに入射する前の蛍光YLの発散角よりも小さくする。この場合であっても、第2調整レンズは、第2調整レンズの後段の光学系で利用できない蛍光YLを低減し、蛍光YLの利用効率の向上に寄与することができる。
【0122】
また、上記実施形態では、回転可能とされていない固定型の波長変換素子の例を挙げたが、本発明は、モーターによって回転可能とされた波長変換素子を有する照明装置にも適用が可能である。また、回転可能とされていない固定型の拡散素子の例を挙げたが、本発明は、モーターによって回転可能とされた拡散素子を有する照明装置にも適用が可能である。
【0123】
その他、照明装置およびプロジェクターの各構成要素の形状、数、配置、材料等の具体的な記載については、上記実施形態に限らず、適宜変更が可能である。上記実施形態では、本発明による照明装置を、液晶ライトバルブを用いたプロジェクターに搭載した例を示したが、これに限られない。本発明による照明装置を、光変調装置としてデジタルマイクロミラーデバイスを用いたプロジェクターに適用してもよい。また、プロジェクターは、複数の光変調装置を有していなくてもよく、1つの光変調装置のみを有していてもよい。
【0124】
上記実施形態では、本発明の照明装置をプロジェクターに適用した例を示したが、これに限られない。本発明の照明装置は、照明器具や自動車のヘッドライト等にも適用することができる。
【0125】
本発明の一つの態様の照明装置は、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様の照明装置は、第1波長帯の第1光を射出する発光装置と、前記第1光の一部を前記第1波長帯とは異なる第2波長帯の第2光に変換し、前記第2光と前記第1光の他の一部とを射出する波長変換素子と、正のパワーを有し、前記第1光が入射する第1光学系と、前記第1光学系から射出される前記第1光が入射し、前記第1光および前記第2光のうちの一方を反射し、他方を透過する光学素子と、正のパワーを有し、前記光学素子から射出される前記第1光と前記波長変換素子から射出される前記第2光とが入射する第2光学系と、正のパワーを有し、前記第2光学系から射出される前記第1光を前記波長変換素子に入射させる第3光学系と、正のパワーを有し、前記第2光学系から射出される前記第2光が入射する第4光学系と、を備える。
【0126】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記第1光学系は、前記発光装置と前記光学素子との間に設けられ、前記光学素子上または前記光学素子と前記第2光学系との間に焦点を有し、前記発光装置から射出される前記第1光を集束させてもよい。
【0127】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記第2光学系は、前記光学素子から射出される前記第1光を前記第3光学系に向けて射出するとともに、前記第2光学系から射出された後の前記第1光の発散角を前記第2光学系に入射する前の前記第1光の発散角よりも小さくする、または、前記第1光を平行化してもよい。
【0128】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記第3光学系は、前記第2光学系と前記波長変換素子との間に設けられていてもよい。
【0129】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記第4光学系は、前記光学素子から射出される前記第2光を射出するとともに、前記第4光学系から射出された後の前記第2光の発散角を前記第4光学系に入射する前の前記第2光の発散角よりも小さくする、または、前記第2光を平行化してもよい。
【0130】
本発明の一つの態様の照明装置は、前記発光装置と前記光学素子との間に設けられ、前記第1光を拡散させる拡散素子をさらに備えていてもよい。
【0131】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記第1光は、前記波長変換素子上にデフォーカス状態で入射してもよい。
【0132】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記光学素子は、透光性基板と、前記透光性基板に設けられ、前記第1光を反射し、前記第2光を透過するダイクロイックミラーと、を有していてもよい。
【0133】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記光学素子は、透光性基板と、前記透光性基板の第1領域に設けられ、前記第1光を透過し、前記第2光を反射するダイクロイックミラーと、前記透光性基板の前記第1領域とは異なる第2領域に設けられ、前記第1光および前記第2光を反射するミラーと、を有していてもよい。
【0134】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記光学素子は、前記発光装置の光軸上において、前記発光装置の光軸と前記波長変換素子の光軸との交点から離間した位置に設けられていてもよい。
【0135】
本発明の一つの態様の照明装置において、前記波長変換素子は、前記第1光を前記第2光に変換する波長変換層と、前記波長変換層の第1面に設けられた反射層と、前記波長変換層の前記第1面とは異なる第2面に設けられた構造体と、を有していてもよい。
【0136】
本発明の一つの態様のプロジェクターは、以下の構成を有していてもよい。
本発明の一つの態様のプロジェクターは、本発明の一つの態様の照明装置と、前記照明装置からの光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、前記光変調装置により変調された光を投写する投写光学装置と、を備える。
【符号の説明】
【0137】
1…プロジェクター、2,28,40,42,44,46…照明装置、4B,4G,4R…光変調装置、6…投写光学装置、20…発光装置、21,53…光学素子、22…集光ピックアップ光学系(第3光学系)、23…波長変換素子、23a…第1面、31…第1調整レンズ(第2光学系)、32…第2調整レンズ(第4光学系)、35,37…集光レンズ(第1光学系)、36…拡散素子、211,531…透光性基板、212,532…ダイクロイックミラー、232…反射層、233…波長変換層、234…構造体、533…ミラー、BL…青色光(第1光)、YL…蛍光(第2光)。