(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20240509BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240509BHJP
H01L 21/28 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L21/285 Z
G03F7/40 511
H01L21/28 301B
(21)【出願番号】P 2020105954
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】平崎 貴英
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-232452(JP,A)
【文献】特開2019-057638(JP,A)
【文献】特開2004-087967(JP,A)
【文献】特開2012-169539(JP,A)
【文献】特開2012-073393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/285
G03F 7/40
H01L 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN系の半導体層の上に、塩素を含む
第1電子線レジスト
、第2電子線レジストおよび塩素を含む第3電子線レジストを
この順で形成する工程と、
前記
第1電子線レジストに前記半導体層の表面の一部を露出させる第1開口を
、前記第2電子線レジストに前記第1開口の幅より大きい幅を有する第2開口を、前記第3電子線レジストに前記第1開口の幅より大きく、かつ、前記第2開口の幅より小さい幅を有する第3開口を、それぞれ形成する工程と、
前記第1開口
、前記第2開口および前記第3開口の
それぞれの側壁面を覆うシュリンク剤の膜を形成する工程と、
前記第1開口、前記第2開口および前記第3開口のそれぞれの前記側壁面が前記シュリンク剤の膜により覆われた状態で、前記第1開口を通じて前記半導体層に接するNi膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シュリンク剤の膜を形成する工程は、
前記第1開口
、前記第2開口および前記第3開口を埋めるように前記シュリンク剤を塗布する工程と、
ベークにより前記シュリンク剤の前記
第1電子線レジスト
、前記第2電子線レジストおよび前記第3電子線レジストのそれぞれと接する部分を硬化させる工程と、
前記シュリンク剤の未硬化の部分を除去する工程と、
を有する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記ベークの温度は、120℃以上250℃以下である請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シュリンク剤は、ポリビニル系アルコール誘導体を含有する請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1開口の幅は、150nm以下である請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記Ni膜を形成する工程の後に、前記Ni膜の上方にAu膜を形成する工程を有する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記Au膜を形成する工程の後に、前記
第1電子線レジスト
、前記第2電子線レジスト、前記第3電子線レジスト及び前記シュリンク剤を除去する工程を有する請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記
第1電子線レジスト
、前記第2電子線レジストおよび前記第3電子線レジストを形成する工程の前に、前記半導体層の上に保護膜を形成する工程を有し、
前記シュリンク剤の膜を形成する工程と前記Ni膜を形成する工程との間に、前記保護膜に前記第1開口に連通する第
4開口を形成する工程を有し、
前記Ni膜は前記第1開口及び前記第
4開口を通じて前記半導体層に接する請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
GaN系の半導体層の上に保護膜を形成する工程と、
前記保護膜の上に、塩素を含む
第1電子線レジスト
、第2電子線レジストおよび塩素を含む第3電子線レジストを形成する工程と、
前記
第1電子線レジストに前記保護膜の表面の一部を露出させる第1開口を
、前記第2電子線レジストに前記第1開口の幅より大きい幅を有する第2開口を、前記第3電子線レジストに前記第1開口の幅より大きく、かつ、前記第2開口の幅より小さい幅を有する第3開口を、それぞれ形成する工程と、
前記第1開口
、前記第2開口および前記第3開口の
それぞれの側壁面を覆い、ポリビニル系アルコール誘導体を含有するシュリンク剤の膜を形成する工程と、
前記保護膜に前記第1開口に連通する第
4開口を形成する工程と、
前記第1開口、前記第2開口および前記第3開口のそれぞれの前記側壁面が前記シュリンク剤の膜により覆われた状態で、前記第1開口及び前記第
4開口を通じて前記半導体層に接するNi膜を形成する工程と、
前記Ni膜の上方にAu膜を形成する工程と、
前記Au膜を形成する工程の後に、前記
第1電子線レジスト
、第2電子線レジスト、第3電子線レジスト及び前記シュリンク剤を除去する工程と、
を有し、
前記第1開口の幅は、150nm以下であり、
前記シュリンク剤の膜を形成する工程は、
前記第1開口
、前記第2開口および前記第3開口を埋めるように前記シュリンク剤を塗布する工程と、
140℃以上160℃以下の温度でのベークにより前記シュリンク剤の前記
第1電子線レジスト
、第2電子線レジストおよび第3電子線レジストと接する部分を硬化させる工程と、
前記シュリンク剤の未硬化の部分を除去する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の一つとして、窒化ガリウム(GaN)系の窒化物半導体を用いた高移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)が知られている。GaN系の窒化物半導体を用いたHEMT(以下、GaN-HEMTということがある)のゲート電極を形成する方法として、電子線レジストを用いてリフトオフを行う方法が開示されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-107116号公報
【文献】国際公開第2006/080109号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の方法で製造した半導体装置では、特性がばらつくことがある。例えば、所望の閾値電圧が得られないことがある。
【0005】
本開示は、安定した特性が得られる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の半導体装置の製造方法は、GaN系の半導体層の上に、塩素を含む電子線レジストを形成する工程と、前記電子線レジストに前記半導体層の表面の一部を露出させる第1開口を形成する工程と、前記第1開口の側壁面を覆うシュリンク剤の膜を形成する工程と、前記側壁面が前記シュリンク剤の膜により覆われた状態で、前記第1開口を通じて前記半導体層に接するNi膜を形成する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、安定した特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図10】
図10は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図13】
図13は、第1条件で作製した試料の観察像を示す図である。
【
図14】
図14は、第2条件で作製した試料の観察像を示す図である。
【
図15】
図15は、第3条件で作製した試料の観察像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一又は対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0011】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置の製造方法は、GaN系の半導体層の上に、塩素を含む電子線レジストを形成する工程と、前記電子線レジストに前記半導体層の表面の一部を露出させる第1開口を形成する工程と、前記第1開口の側壁面を覆うシュリンク剤の膜を形成する工程と、前記側壁面が前記シュリンク剤の膜により覆われた状態で、前記第1開口を通じて前記半導体層に接するNi膜を形成する工程と、を有する。
【0012】
本願発明者は、特性がばらつく原因を究明すべく鋭意検討を行った。この結果、ゲート電極に含まれるNi膜に腐食が生じることがあることが判明した。また、Ni膜の腐食の原因を究明すべく鋭意検討を行ったところ、ゲート電極の形成に用いられる電子線レジストとNi膜とが反応していることが明らかになった。そこで、本願発明者は、Ni膜を形成する前に電子線レジストの表面をシュリンク剤の膜で覆うことで、電子線レジストとNi膜との反応を抑制できることに想到した。本開示の一態様では、第1開口の側壁面がシュリンク剤の膜により覆われた状態で、第1開口を通じて半導体層に接するNi膜を形成する。従って、Ni膜は、塩素を含有する電子線レジストに接触せず、Ni膜の腐食を抑制できる。このため、Ni膜の腐食に伴う特性のばらつきを抑制し、安定した特性が得られる。
【0013】
〔2〕 〔1〕において、前記シュリンク剤の膜を形成する工程は、前記第1開口を埋めるように前記シュリンク剤を塗布する工程と、ベークにより前記シュリンク剤の前記電子線レジストと接する部分を硬化させる工程と、前記シュリンク剤の未硬化の部分を除去する工程と、を有してもよい。この場合、シュリンク剤の膜を形成しやすい。
【0014】
〔3〕 〔2〕において、前記ベークの温度は、120℃以上250℃以下であってもよい。この場合、電子線レジストの変質を抑制しながら、シュリンク剤を硬化させやすい。
【0015】
〔4〕 〔1〕~〔3〕において、前記シュリンク剤は、ポリビニル系アルコール誘導体を含有してもよい。この場合、シュリンク剤の膜を形成しやすい。
【0016】
〔5〕 〔1〕~〔4〕において、前記第1開口の幅は、150nm以下であってもよい。この場合、ゲート長を短縮できる。
【0017】
〔6〕 〔1〕~〔5〕において、前記Ni膜を形成する工程の後に、前記Ni膜の上方にAu膜を形成する工程を有してもよい。この場合、ゲート電極に優れた導電性が得やすい。
【0018】
〔7〕 〔6〕において、前記Au膜を形成する工程の後に、前記電子線レジスト及び前記シュリンク剤を除去する工程を有してもよい。この場合、断面形状がTの字型のゲート電極を形成しやすい。
【0019】
〔8〕 〔1〕~〔7〕において、前記電子線レジストを形成する工程の前に、前記半導体層の上に保護膜を形成する工程を有し、前記シュリンク剤の膜を形成する工程と前記Ni膜を形成する工程との間に、前記保護膜に前記第1開口に連通する第2開口を形成する工程を有し、前記Ni膜は前記第1開口及び前記第2開口を通じて前記半導体層に接してもよい。この場合、保護膜により半導体層を保護できる。
【0020】
〔9〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置の製造方法は、GaN系の半導体層の上に保護膜を形成する工程と、前記保護膜の上に、塩素を含む電子線レジストを形成する工程と、前記電子線レジストに前記保護膜の表面の一部を露出させる第1開口を形成する工程と、前記第1開口の側壁面を覆い、ポリビニル系アルコール誘導体を含有するシュリンク剤の膜を形成する工程と、前記保護膜に前記第1開口に連通する第2開口を形成する工程と、前記側壁面が前記シュリンク剤の膜により覆われた状態で、前記第1開口及び前記第2開口を通じて前記半導体層に接するNi膜を形成する工程と、前記Ni膜の上方にAu膜を形成する工程と、前記Au膜を形成する工程の後に、前記電子線レジスト及び前記シュリンク剤を除去する工程と、を有し、前記第1開口の幅は、150nm以下であり、前記シュリンク剤の膜を形成する工程は、前記第1開口を埋めるように前記シュリンク剤を塗布する工程と、140℃以上160℃以下の温度でのベークにより前記シュリンク剤の前記電子線レジストと接する部分を硬化させる工程と、前記シュリンク剤の未硬化の部分を除去する工程と、を有する。
【0021】
本開示の一態様でも、Ni膜は、塩素を含有する電子線レジストに接触せず、Ni膜の腐食を抑制できる。このため、Ni膜の腐食に伴う特性のばらつきを抑制し、安定した特性が得られる。
【0022】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の実施形態について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0023】
本実施形態は、窒化物半導体を主構成材料とするGaN-HEMTを含む半導体装置の製造方法に関する。
図1~
図12は、実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0024】
まず、
図1に示すように、基板10上に、有機金属化学気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法を用いて、複数の窒化物半導体層を含む積層構造20を成長する。基板10は、例えば(0001)主面を有するSiC基板であり、積層構造20の積層方向は例えば[0001]方向である。積層構造20は、基板10側から順に形成される電子走行層12と、電子供給層14と、キャップ層16とを含む。電子走行層12は、例えば厚さが1000nmのアンドープGaN層である。電子供給層14は、例えば厚さ20nmのn型AlGaN層である。キャップ層16は、例えば厚さ5nmのn型GaN層である。次に、積層構造20の上面に接する保護膜22を、プラズマCVD法を用いて成膜する。保護膜22は、例えば厚さが100nmのSiN膜である。保護膜22の成膜温度は、例えば200℃~400℃である。また、保護膜22の原料ガスとして、例えばアンモニアガス及びシラン(SiH
4)を用いる。電子走行層12を形成する前に基板10の上に核形成層を形成し、核形成層の上に電子走行層12を形成してもよい。核形成層は、例えば厚さ数十nmのAlN層である。
【0025】
次に、
図2に示すように、保護膜22の上に、フォトレジスト51と、フォトレジスト52とをこの順で塗布する。例えば、フォトレジスト51の材料はポリメチルグルタルイミド(PMGI)であり、フォトレジスト52はi線レジストである。次に、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト52に開口52Xを形成し、フォトレジスト51に開口51Xを形成する。開口52X及び51Xを通じて保護膜22が露出する。
【0026】
次に、
図3に示すように、フォトレジスト51及び52をマスクとして、反応性イオンエッチング(reactive ion etching:RIE)により保護膜22及び積層構造20にソース用の開口31と、ドレイン用の開口32とを形成する。例えば、保護膜22のエッチングにはフッ素(F)を含む反応性ガスが用いられ、積層構造20のエッチングには塩素(Cl)を含む反応性ガスが用いられる。
【0027】
次に、
図4に示すように、蒸着法により、開口31の内側及び開口32の内側に金属層61を形成する。金属層61は、フォトレジスト52の上面及び開口52Xの側壁面にも付着する。金属層61は、例えば、基板10側から順に形成されるTa膜と、Al膜と、Mo膜とを含む。
【0028】
次に、
図5に示すように、フォトレジスト51及び52を除去する。フォトレジスト52の除去に伴って、金属層61のフォトレジスト52に付着した部分も除去される。その一方で、開口31及び32の内側には、金属層61が残存する。つまり、リフトオフが行われる。次いで、熱処理によって金属層61を合金化(アロイ)する。これにより、積層構造20にオーミックコンタクトするソース電極41が開口31内に形成され、積層構造20にオーミックコンタクトするドレイン電極42が開口32内に形成される。
【0029】
次に、
図6に示すように、保護膜22、ソース電極41及びドレイン電極42の上に、電子線レジスト53と、電子線レジスト54と、電子線レジスト55とをこの順で塗布する。電子線レジストは、電子線によって露光されるレジストである。電子線レジスト53及び55は、例えば、α-クロロアクリレートとα-メチルスチレンとの共重合体であり、塩素を含む。例えば、電子線レジスト53及び55として日本ゼオン株式会社製のZEP520Aが用いられ、電子線レジスト54の材料はポリメチルグルタルイミド(PMGI)である。電子線レジスト53及び55は電子線レジスト54よりも微細な加工が可能である。次に、電子線リソグラフィにより、電子線レジスト55に開口55Xを形成し、電子線レジスト54に開口54Xを形成し、電子線レジスト53に開口53Xを形成する。開口53Xの幅、すなわちゲート長方向の寸法は、例えば150nm以下であり、好ましくは120nm以下である。開口55X、54X及び53Xを通じて保護膜22が露出する。開口53Xは第1開口の一例である。
【0030】
次に、
図7に示すように、開口55X、54X及び53Xを埋めるように電子線レジスト53~55の上にシュリンク剤62を塗布する。例えば、シュリンク剤62はポリビニル系アルコール誘導体を含有する。シュリンク剤62としては、例えば、i線又はKrFエキシマレーザを用いたフォトリソグラフィにおいて、フォトレジストの開口幅を狭めるために用いられるシュリンク剤を用いることができる。一般に、このようなシュリンク剤がi線又はKrFエキシマレーザを用いたフォトリソグラフィに用いられる場合、100℃以下の温度でのベークが行われ、シュリンク剤が硬化させられる。なお、電子線リソグラフィでは、シュリンク剤を用いずとも十分に微細なパターンを容易に形成できるため、シュリンク剤が用いられることはない。
【0031】
次に、
図8に示すように、ベークによりシュリンク剤62の電子線レジスト53~55と接する部分を硬化させて、開口53X~55Xの側壁面を覆うシュリンク剤の膜63を形成する。このとき、保護膜22の一部は、開口53X~55Xから露出したままとする。シュリンク剤の膜63により、電子線レジスト55の上面も覆われてよい。ベークの温度は、例えば120℃以上250℃以下とする。一般に、電子線レジストに電子線が照射されると共重合体がモノマー化してα-クロロアクリレートが生じるが、電子線照射後の電子線レジストの酸性度は、フォトレジストの酸性度よりも低い。このため、ベークの温度が低すぎると、シュリンク剤62が重合しにくく、シュリンク剤62を硬化させにくい。また、ベークの温度が高すぎると、電子線レジスト53~55が変質したり、過剰な硬化により開口53Xが膜63で塞がれたりするおそれがある。ベークの温度は、より好ましくは140℃以上160℃以下である。
【0032】
次に、
図9に示すように、シュリンク剤62の未硬化の部分を除去する。すなわち、シュリンク剤62のうち、ベークによって重合して硬化した膜63を残しながら、ベークによっても重合せずに硬化しなかった部分を除去する。シュリンク剤62が水溶性の場合、未硬化の部分は、例えば純水を用いて除去できる。
【0033】
次に、
図10に示すように、電子線レジスト53~55をマスクとして、フッ素を含む反応性ガスを用いたRIEにより保護膜22にゲート用の開口33を形成する。開口33は第2開口の一例である。
【0034】
次に、
図11に示すように、蒸着法により、開口33の内側にNi膜71を形成する。Ni膜71は、電子線レジスト55の上面及び開口55Xの側壁面の上で膜63の上にも付着する。更に、蒸着法により、Ni膜71の上にAu膜72を形成する。Au膜72は、電子線レジスト53の上面の上で膜63の上に広がるように形成される。
【0035】
次に、
図12に示すように、電子線レジスト53~55及びシュリンク剤の膜63を除去する。電子線レジスト53~55及び膜63は、例えば有機溶剤を用いて除去できる。電子線レジスト53~55及び膜63の除去に伴って、Ni膜71の電子線レジスト55上に形成された膜63に付着した部分と、その上のAu膜72も除去される。その一方で、開口33の内側には、Ni膜71が残存し、その上のAu膜72も残存する。つまり、リフトオフが行われる。これにより、Ni膜71及びAu膜72を有し、開口33を通じて積層構造20にショットキーコンタクトするゲート電極43が形成される。ゲート電極43は、例えば断面視でTの字型の形状を備える。
【0036】
その後、必要に応じて配線等を形成する。このようにして、GaN-HEMTを含む半導体装置を製造することができる。
【0037】
本実施形態では、開口53Xの側壁面がシュリンク剤の膜63により覆われた状態で、開口53Xを通じて積層構造20に接するNi膜71を形成する。従って、Ni膜71は、塩素を含有する電子線レジスト53に接触せず、Ni膜71の腐食を抑制できる。このため、Ni膜71の腐食に伴う特性の低下及びばらつきを抑制できる。
【0038】
膜63の形成に際して、シュリンク剤62の塗布、ベーク及び未硬化の部分の除去を行うことで、膜63を形成しやすい。ポリビニル系アルコール誘導体を含有するシュリンク剤62を用いることで、膜63を形成しやすい。
【0039】
開口53Xの幅を150nm以下とすることで、ゲート長を短縮できる。開口53Xの幅は、好ましくは120nm以下である。
【0040】
Ni膜71の形成後にNi膜71の上にAu膜72を形成することで、ゲート電極43に優れた導電性が得られる。Au膜72の形成後に電子線レジスト53~55及び膜63を除去することで、断面形状がTの字型のゲート電極43を形成しやすい。
【0041】
電子線レジスト53~55の形成前に保護膜22を形成し、保護膜22に開口33を形成し、Ni膜71は開口53X及び開口33を通じて積層構造20に接するため、保護膜22により積層構造20を保護できる。例えば、電流コラプス等の特性の劣化を抑制できる。
【0042】
次に、本願発明者が行ったNi膜の腐食に関する実験について説明する。この実験では、塩素を含有する電子線レジスト(日本ゼオン株式会社製のZEP520A)を基板上に形成し、その後、Ni膜及びAu膜を蒸着法により形成した。第1条件では、電子線レジストの上にNi膜を形成した。第2条件では、電子線レジストの上にポリビニル系アルコール誘導体を含有するシュリンク剤を塗布し、130℃で90秒間のベークを行ってシュリンク剤を硬化させて膜を形成し、この膜の上にNi膜を形成した。第3条件では、電子線レジストの上にポリビニル系アルコール誘導体を含有するシュリンク剤を塗布し、150℃で90秒間のベークを行ってシュリンク剤を硬化させて膜を形成し、この膜の上にNi膜を形成した。第1条件では、Ni膜の下面が電子線レジストの上面に直接接触する。第2条件及び第3条件では、電子線レジストとNi膜との間にシュリンク剤の膜が介在する。
【0043】
そして、各条件の試料をノマルスキー(Nomarski)顕微鏡を用いて観察した。この観察像を
図13~
図15に示す。
図13は、第1条件で作製した試料の観察像を示す図である。
図14は、第2条件で作製した試料の観察像を示す図である。
図15は、第3条件で作製した試料の観察像を示す図である。
【0044】
図13に示すように、第1条件で作製した試料では、多数の点で腐食が観察された。
図14に示すように、第2条件で作製した試料では、ほとんど腐食が観察されなかった。
図15に示すように、第3条件で作製した試料では、腐食が観察されなかった。これらの結果からも、ベークの温度は120℃以上が好ましく、140℃以上がより好ましい。
【0045】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
10:基板
12:電子走行層
14:電子供給層
16:キャップ層
20:積層構造
22:保護膜
31:開口
32:開口
33:開口
41:ソース電極
42:ドレイン電極
43:ゲート電極
51:フォトレジスト
51X:開口
52:フォトレジスト
52X:開口
53:電子線レジスト
53X:開口
54:電子線レジスト
54X:開口
55:電子線レジスト
55X:開口
61:金属層
62:シュリンク剤
63:膜
71:Ni膜
72:Au膜