(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置、ノズルのメンテナンス方法及びプロブラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20240509BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J2/165 205
B41J2/01 451
(21)【出願番号】P 2020108080
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒須 重隆
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-046287(JP,A)
【文献】特開2018-079598(JP,A)
【文献】特開平11-216874(JP,A)
【文献】特開2003-191492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部により前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部と、
を備え
、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、ノズル詰まりが前記インクの吐出によって解消されたと判断し、前記制御部は、前記メンテナンスモードを終了するインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記制御部は、次回の前記メンテナンスモードの実施時期を、設定された実施時期よりも早い実施時期に変更する請求項
1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部により前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部と、
を備え、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合、ノズル詰まりが生じていて解消できていないと判断するインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記圧力付与部によって付与される外力をそれまでより大きくして、再度前記メンテナ
ンスモードを実行する請求項
3に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部により前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部と、
を備え、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合のいずれにも該当しない場合、前記のノズルに気泡が混入していると判断し、
前記制御部は、前記メンテナンスモードよりもインクの吐出量が多いパージメンテナンスモードに切り替えて実行するインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記判断部による判断結果に応じて、前記メンテナンスモードの終了、他のメンテナンスモードに変更、前記メンテナンスモードの繰り返しのうち、どれか一つを実行する請求項1
から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、前記ノズルにおけるインクの吐出状態は正常と判断し、前記制御部は、前記メンテナンスモードを終了する請求項
1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記判断部による判断結果を表示する表示部を備える請求項1から
7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットヘッド記録装置におけるノズルのメンテナンス方法において、
前記インクに外力を付与する圧力付与工程と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御工程と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与工程によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知工程と、
前記流動検知工程による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断工程と、
を含
み、
前記流動検知工程において、前記圧力付与工程によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断工程において、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、ノズル詰まりが前記インクの吐出によって解消されたと判断し、前記制御工程において、前記メンテナンスモードを終了するノズルのメンテナンス方法。
【請求項10】
前記制御工程において、次回の前記メンテナンスモードの実施時期を、設定された実施時期よりも早い実施時期に変更する請求項9に記載のノズルのメンテナンス方法。
【請求項11】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットヘッド記録装置におけるノズルのメンテナンス方法において、
前記インクに外力を付与する圧力付与工程と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御工程と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与工程によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知工程と、
前記流動検知工程による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断工程と、
を含み、
前記流動検知工程において、前記圧力付与工程によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断工程において、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合、ノズル詰まりが生じていて解消できていないと判断するノズルのメンテナンス方法。
【請求項12】
前記制御工程において、前記圧力付与工程によって付与される外力をそれまでより大きくして、再度前記メンテナンスモードを実行する請求項11に記載のノズルのメンテナンス方法。
【請求項13】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットヘッド記録装置におけるノズルのメンテナンス方法において、
前記インクに外力を付与する圧力付与工程と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御工程と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与工程によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知工程と、
前記流動検知工程による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断工程と、
を含み、
前記流動検知工程において、前記圧力付与工程によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断工程において、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合のいずれにも該当しない場合、前記のノズルに気泡が混入していると判断し、
前記制御工程において、前記メンテナンスモードよりもインクの吐出量が多いパージメンテナンスモードに切り替えて実行するノズルのメンテナンス方法。
【請求項14】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
を備えたインクジェットヘッド記録装置のコンピューターを、
前記メンテナンスモードを制御する制御部、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部
、として機能させ
、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、ノズル詰まりが前記インクの吐出によって解消されたと判断し、前記制御部は、前記メンテナンスモードを終了するプログラム。
【請求項15】
前記制御部は、次回の前記メンテナンスモードの実施時期を、設定された実施時期よりも早い実施時期に変更する請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
を備えたインクジェットヘッド記録装置のコンピューターを、
前記メンテナンスモードを制御する制御部、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部、として機能させ、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合、ノズル詰まりが生じていて解消できていないと判断するプログラム。
【請求項17】
前記制御部は、前記圧力付与部によって付与される外力をそれまでより大きくして、再度前記メンテナンスモードを実行する請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
を備えたインクジェットヘッド記録装置のコンピューターを、
前記メンテナンスモードを制御する制御部、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部、として機能させ、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合のいずれにも該当しない場合、前記のノズルに気泡が混入していると判断し、
前記制御部は、前記メンテナンスモードよりもインクの吐出量が多いパージメンテナンスモードに切り替えて実行するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクジェット記録装置、ノズルのメンテナンス方法及びプロブラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ノズルからインクを吐出させて媒体上に画像や構造などを形成するインクジェットヘッドを用いたインクジェットヘッド記録装置がある。
【0003】
インクジェットヘッドのノズルの吐出不良を検知する方法として、記録媒体に印字したパターンをCCD(Charge Coupled Device)などの光学センサーで読み取る方法が知られ、利用されている。
【0004】
これに関連して、特許文献1には、検査シートをCCDセンサーで読み取った画像データと、検査シートにテストパターンを印字し、印字した検査シートを再度読み取った画像データの差分からノズルの吐出不良を検知する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を用いた場合、ノズルの吐出不良を検知するために、記録媒体にテストパターンを印字して光学センサーで読み取るなどの工数やヤレ紙の無駄が発生し、また検知システムに高額部品が必要であった。
また、ノズルの吐出不良が検知できたとしてもその要因まではわからず、必要のないヘッド交換や過剰メンテナンスにより大量のインク廃液を出してしまうなどの適切な回復動作ができない問題があった。
【0007】
この発明の目的は、ノズルにおけるインクの吐出状態を比較的容易に自動で判断できるインクジェット記録装置、ノズルのメンテナンス方法及びプロブラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明のインクジェット記録装置は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部により前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部と、
を備え、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、ノズル詰まりが前記インクの吐出によって解消されたと判断し、前記制御部は、前記メンテナンスモードを終了する。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、次回の前記メンテナンスモードの実施時期を、設定された実施時期よりも早い実施時期に変更する。
【0014】
また、請求項3に記載の発明のインクジェット記録装置は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部により前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部と、
を備え、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合、ノズル詰まりが生じていて解消できていないと判断する。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記圧力付与部によって付与される外力をそれまでより大きくして、再度前記メンテナンスモードを実行する。
【0016】
また、請求項5に記載の発明のインクジェット記録装置は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置であって、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記圧力付与部により前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部と、
を備え、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合のいずれにも該当しない場合、前記のノズルに気泡が混入していると判断し、
前記制御部は、前記メンテナンスモードよりもインクの吐出量が多いパージメンテナンスモードに切り替えて実行する。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記制御部は、前記判断部による判断結果に応じて、前記メンテナンスモードの終了、他のメンテナンスモードに変更、前記メンテナンスモードの繰り返しのうち、どれか一つを実行する。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、前記ノズルにおけるインクの吐出状態は正常と判断し、前記制御部は、前記メンテナンスモードを終了する。
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置において、
前記判断部による判断結果を表示する表示部を備える。
【0018】
また、請求項9に記載の発明のノズルのメンテナンス方法は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットヘッド記録装置におけるノズルのメンテナンス方法において、
前記インクに外力を付与する圧力付与工程と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御工程と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与工程によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知工程と、
前記流動検知工程による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断工程と、
を含み、
前記流動検知工程において、前記圧力付与工程によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断工程において、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、ノズル詰まりが前記インクの吐出によって解消されたと判断し、前記制御工程において、前記メンテナンスモードを終了する。
また、請求項10に記載の発明は、請求項9に記載のノズルのメンテナンス方法において、
前記制御工程において、次回の前記メンテナンスモードの実施時期を、設定された実施時期よりも早い実施時期に変更する。
また、請求項11に記載の発明のノズルのメンテナンス方法は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットヘッド記録装置におけるノズルのメンテナンス方法において、
前記インクに外力を付与する圧力付与工程と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御工程と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与工程によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知工程と、
前記流動検知工程による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断工程と、
を含み、
前記流動検知工程において、前記圧力付与工程によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断工程において、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合、ノズル詰まりが生じていて解消できていないと判断する。
また、請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のノズルのメンテナンス方法において、
前記制御工程において、前記圧力付与工程によって付与される外力をそれまでより大きくして、再度前記メンテナンスモードを実行する。
また、請求項13に記載の発明のノズルのメンテナンス方法は、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドを備えたインクジェットヘッド記録装置におけるノズルのメンテナンス方法において、
前記インクに外力を付与する圧力付与工程と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御工程と、
前記メンテナンスモード実行時に、前記圧力付与工程によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知工程と、
前記流動検知工程による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断工程と、
を含み、
前記流動検知工程において、前記圧力付与工程によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断工程において、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合のいずれにも該当しない場合、前記のノズルに気泡が混入していると判断し、
前記制御工程において、前記メンテナンスモードよりもインクの吐出量が多いパージメンテナンスモードに切り替えて実行する。
【0019】
また、請求項14に記載の発明のプログラムは、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
を備えたインクジェットヘッド記録装置のコンピューターを、
前記メンテナンスモードを制御する制御部、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部、として機能させ、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、ノズル詰まりが前記インクの吐出によって解消されたと判断し、前記制御部は、前記メンテナンスモードを終了する。
また、請求項15に記載の発明は、請求項14に記載のプログラムにおいて、
前記制御部は、次回の前記メンテナンスモードの実施時期を、設定された実施時期よりも早い実施時期に変更する。
また、請求項16に記載の発明のプログラムは、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
を備えたインクジェットヘッド記録装置のコンピューターを、
前記メンテナンスモードを制御する制御部、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部、として機能させ、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合、ノズル詰まりが生じていて解消できていないと判断する。
また、請求項17に記載の発明は、請求項16に記載のプログラムにおいて、
前記制御部は、前記圧力付与部によって付与される外力をそれまでより大きくして、再度前記メンテナンスモードを実行する。
また、請求項18に記載の発明のプログラムは、
インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッドと、
前記インクに外力を付与する圧力付与部と、
前記インクに外力を付与して前記ノズルから前記インクを強制的に吐出させるメンテナンスモード実行時に、前記圧力付与部によって前記ノズルから吐出される前記インクの流動を検知する流動検知部と、
を備えたインクジェットヘッド記録装置のコンピューターを、
前記メンテナンスモードを制御する制御部、
前記流動検知部による検知結果に基づいて、前記ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部、として機能させ、
前記流動検知部は、前記圧力付与部によって前記インクに外力を与えてからの流動の時間変化を検知し、
前記判断部は、前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時から吐出終了時まで、前記流動の時間変化の傾きが予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲内である場合、あるいは前記ノズルから前記インクが吐出され始めた時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常時の傾きより小さく、かつ前記インクの吐出終了直前時の前記流動の時間変化の傾きが、予め設定された正常範囲より小さい場合のいずれにも該当しない場合、前記のノズルに気泡が混入していると判断し、
前記制御部は、前記メンテナンスモードよりもインクの吐出量が多いパージメンテナンスモードに切り替えて実行する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に従うと、ノズルにおけるインクの吐出状態を比較的容易に自動で判断できるインクジェット記録装置、ノズルのメンテナンス方法及びプロブラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態のインクジェット記録装置の構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態の圧力付与部と流動検知部近傍を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態の制御部の制御関係を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態のインク流動の検知動作シーケンスのフローチャートである。
【
図5A】本発明の実施形態のノズルにおけるインクの吐出状態が正常である場合のインク流動の時間変化を示す図である。
【
図5B】本発明の実施形態のノズル詰まりが解消された場合のインク流動の時間変化を示す図である。
【
図5C】本発明の実施形態のノズル詰まりが解消されない場合のインク流動の時間変化を示す図である。
【
図5D】本発明の実施形態のノズルに気泡が混入している場合のインク流動の時間変化を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態のメンテナンスモードを示すフローチャートである。
【
図7】本発明の実施形態の変形例の圧力付与部と流動検知部近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は、インクジェット記録装置1の構成を示す図である。
インクジェット記録装置1は、インクジェットヘッド10、サブタンクA20、サブタンクB30、メインタンク40、及びインクタンク50を備える。
【0024】
サブタンクA20は、内部にインクと空気が入っている金属製の剛体密閉タンクであり、内部に液面検知部であるインク量検知センサーを備える。
また、サブタンクA20は、空気経路によって、圧力付与部21、流動検知部22、及び弁を介して背圧制御部A23と接続されている。
背圧制御部A23は、サブタンクA20内の空気圧力を制御し、サブタンクA20内のインクにかかる圧力を調整している。
サブタンクB30は、内部にインクと空気が入っており、内部に液面検知部であるインク量検知センサーを備える。
また、サブタンクB30は、空気経路によって、背圧制御部B31に接続されている。
背圧制御部B31は、サブタンクB30内の圧力を制御し、サブタンクB30内のインクにかかる圧力を調整している。
メインタンク40は、弁を介して、外気と接続されており、弁は開放されている。
【0025】
インクは、インクタンク50からメインタンク40に送液ポンプP1で供給され、メインタンク40からサブタンクA20に送液ポンプP2で、サブタンクA20内のインク量検知センサーが検知した消費量に応じたインクが供給される。サブタンクA20とサブタンクB30の背圧差を制御することで、サブタンクA20からインクジェットヘッド10にインクが供給される。インクジェットヘッド10において画像形成で消費されなかったインクは、開放された弁を介して、サブタンクB30に回収される。サブタンクB30内のインク量検知センサーが容量の限度までインクが入っていることを検知すると、送液ポンプP3によりメインタンク40にインクが戻される。
以上のように、インクは、メインタンク40、サブタンクA20、インクジェットヘッド10、サブタンクB30、メインタンク40の順に循環している。
図1に示す矢印は、インクの流れの方向を表す。
【0026】
図2は、圧力付与部21と流動検知部22の近傍を示す図である。
圧力付与部21は、加圧ポンプ211、バッファタンク212、圧力計213、N.O弁214、及びN.C弁215を備える。
加圧ポンプ211は、空気を加圧する。
バッファタンク212は、加圧ポンプ211によって加圧された空気を貯留する。
圧力計213は、バッファタンク212内の空気圧力を計測する。
N.O弁214は、サブタンクA20内の加圧を始めるときは閉じていて、所定時間後に大気開放するために用いられる。
N.C弁215は、加圧された空気をサブタンクA20内に連通させるときに開く。
流動検知部22は、サブタンクA20内の圧力を計測する圧力計221、及び圧力計221と背圧制御部A23と接続する弁222を備える。
【0027】
インクジェット記録装置1は、
図3に示す制御部26を備える。
図3は、制御部26の制御関係を示すブロック図である。
制御部26は、CPU(Central Processing Unit)等を備えて構成され、圧力付与部21、流動検知部22、背圧制御部A23、背圧制御部B31、インク量制御部24、送液部25、及び表示部27の制御を行う。
制御部26は、インク量制御部24と送液部25を制御して、サブタンクA20内のインク量検知センサーが検知するインク消費に応じてメインタンク40からサブタンクA20にインクを供給する。また、制御部26は、インク量制御部24と送液部25を用いて、サブタンクB30内のインク量検知センサーがサブタンクB30の容量が限度に達したことを検知すると、サブタンクB30からメインタンク40にインクを戻す。
表示部27は、制御部26の指示にしたがって操作画面等を表示する。表示部27としては、LCD(Liquid Crystal Display)、OELD(Organic Electro Luminescence Display)等を用いることができる。
【0028】
制御部26は、後述するメンテナンスモード実行時に、
図4に示すインク流動の検知動作シーケンスを実行する。また、当該シーケンス実行時に、流動検知部22を制御して、サブタンクA20内の圧力の時間変化であるインク流動の時間変化を記録する。したがって、ノズル近傍のインクに瞬時に外力印加と開放が実行可能で、その時のインクの流動を検知することができる。
また、制御部26は、当該シーケンスを実行時のインク流動の時間変化から、インクジェットヘッド10のノズルにおけるインクの吐出状態を判断する。ここで、制御部26は、判断部として機能する。
【0029】
まず、制御部26は、インク量制御部24と送液部25を制御して、インク量検知センサーが検知するサブタンクA20内のインク量が所定値になるように、インクを貯める(ステップS1)。
次に、制御部26は、N.O弁214、サブタンクA20と背圧制御部A23間の弁、インクジェットヘッド10とサブタンクB30間の弁を閉める(ステップS2)。
次に、制御部26は、加圧ポンプ211を制御して、規定圧力までバッファタンク212内の空気を加圧する(ステップS3)。
次に、制御部26は、N.C弁215を開放する(ステップS4)。加圧された空気をサブタンクA20内に連通することで、サブタンクA20内のインクが加圧され、インクジェットヘッド10のノズル近傍のインクに瞬時に外圧が印加される。ノズル詰まりが生じていない場合、印加された外圧によって、直ちにノズルからインクが排出される。
次に、制御部26は、N.C弁215の開放から所定時間経過後にN.O弁214を開放する(ステップS5)。N.O弁214を開放することで、バッファタンク212内の圧力とサブタンクA20内の圧力が大気解放され、当該シーケンスは終了する。
【0030】
図5A~
図5Dに、
図4に示すインク流動の検知動作シーケンスを実行したときの、圧力計213によって検知したバッファタンク212内の圧力と流動検知部22によって検知したサブタンクA20内のインク流動の時間変化を示す。
図5A~
図5Dにおいて、t0は、加圧ポンプ211を用いてバッファタンク212内の空気を加圧し始めた時である。t1は、バッファタンク212内の空気の圧力が規定圧力に達し、N.C弁215を開放した時である。t2は、N.C弁215の開放から所定時間経過後にN.O弁214を開放した時である。
規定圧力やt1とt2間の時間は任意に設定される。
【0031】
図5Aに、ノズル詰まりが生じていない、つまりノズルにおけるインクの吐出状態が正常である場合のサブタンクA20内のインク流動の時間変化(実線)及びバッファタンク212内の圧力の時間変化(破線)を示す。
ノズル詰まりが生じていない場合、t1において、インクに圧力がかかると、直ちにノズルからのインク排出が始まり、インク排出とともにサブタンクA20内の圧力は、t2までほぼ線形に減少していき、圧力減衰の傾きは一定である。
また、t1以降は、バッファタンク212内の圧力とサブタンクA20内の圧力は同一である。
【0032】
図5Bに、ノズル詰まりが生じていたが、インクに圧力を加えている途中で解消された場合のサブタンクA20内のインク流動の時間変化及びバッファタンク212内の圧力の時間変化を示す。
ノズル詰まりによる吐出不良がある場合、t1直後において、インクに圧力がかかっても、ノズルからインクが直ちに排出されないため、サブタンクA20内の圧力が下がらない。
図5Bに、t1直後において、インクに圧力がかかっても一時的にサブタンクA20内の圧力が変化しない状態が示されている。
圧力が変化しない状態の後、サブタンクA20内の圧力は、正常時の減衰変化と同様の減衰変化をしていることから、軽微なノズル詰まりが発生していたが、インクに圧力をかけている途中で解消されたと判断される。一点鎖線は、正常時の圧力減衰変化を示す。
また、t1以降は、バッファタンク212内の圧力とサブタンクA20内の圧力は同一である。
【0033】
図5Cに、ノズル詰まりが生じており、インクに圧力をかけても解消されない場合のサブタンクA20内のインク流動の時間変化及びバッファタンク212内の圧力の時間変化を示す。
図5Cに、t1直後において、インクに圧力がかかっても一時的にサブタンクA20内の圧力が変化しない状態が示されている。
圧力が変化しない状態の後、サブタンクA20内の圧力は、減衰を始めるも減衰変化の傾きは正常時の減衰変化の傾きより小さいことから、ノズル詰まりが解消されていないと判断される。一点鎖線は、正常時の圧力減衰変化を示す。
また、t1以降は、バッファタンク212内の圧力とサブタンクA20内の圧力は同一である。
【0034】
図5Dに、ノズルに気泡が混入している場合のサブタンクA20内のインク流動の時間変化及びバッファタンク212内の圧力の時間変化を示す。
ノズルに気泡が混入して、吐出不良がある場合、気泡が大きいと、バッファタンク212からインクジェットヘッド10までの全容量に対して空気の割合が増加しているため、t1直後における圧力波形がなまったり、正常時の圧力より低い圧力となったりする。
図5Dに示す矢印は、正常時より圧力が低下したことを表す。
また、t1とt2間の圧力の時間変化の波形は、ノズルからインクとともに気泡排出されることでノイジーな波形となる。一点鎖線は、正常時の圧力減衰変化を示す。
また、t1以降は、バッファタンク212内の圧力とサブタンクA20内の圧力は同一である。
【0035】
制御部26は、インクジェット記録装置1の電源投入時や外気の温湿度、印字率や放置時間など応じて、任意に設定された周期に基づいてメンテナンスモードを実行する。
図6に、当該メンテナンスモードのフローチャートを示す。
図6に示す、t1、t2は、
図5に示すt1、t2と同様であり、つまりt1は、インク流動の検知動作シーケンスにおいて、バッファタンク212内の空気の圧力が規定圧力に達し、N.C弁215を開放した時である。t2は、インク流動の検知動作シーケンスにおいて、N.C弁215の開放から所定時間経過後にN.O弁214を開放した時である。
【0036】
まず、制御部26は、
図4に示すインク流動の検知動作シーケンスを実行する(ステップS11)。
次に、制御部26は、ステップS11で行ったインク流動の検知動作シーケンスが1回目であったか否かを判断する(ステップS12)。
インク流動の検知動作シーケンス動作が1回目であった場合(ステップS12;YES)、制御部26は、t1とt2の間のインク流動の時間変化の傾きは正常範囲内か否かを判断する(ステップS13)。
t1とt2の間のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲内であった場合(ステップS13;YES)、制御部26は、ノズルにおけるインクの吐出状態は正常であると判断し(ステップS14)、メンテナンスモードを終了する。
【0037】
また、t1とt2の間のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲内でなかった場合(ステップS13;NO)、制御部26は、t1直後のインク流動の時間変化の傾きはt2直前のインク流動の時間変化の傾きより小さいか否かを判断する(ステップS15)。
t1直後のインク流動の時間変化の傾きがt2直前のインク流動の時間変化の傾きより小さい場合(ステップS15;YES)、制御部26は、t2直前のインク流動の時間変化の傾きは正常範囲内か否かを判断する(ステップS16)。
t2直前のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲内である場合(ステップS16;YES)、制御部26は、ノズルにおけるインクの吐出状態はノズル詰まりが生じていたが、ノズル流動の検知動作シーケンス実行によって解消されたと判断する(ステップS17)。
次に、制御部26は、ノズル詰まりが発生する前に次回のメンテナンスモードを実行するようにするために、設定されたメンテナンスモード実行の周期より早い時期に、次回のメンテナンスモードを実行するように設定し(ステップS18)、メンテナンスモードを終了する。
【0038】
また、t2直前のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲内でなかった場合(ステップS16;NO)、制御部26は、t2直前のインク流動の時間変化の傾きは正常範囲より小さいか否かを判断する(ステップS19)。
t2直前のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲より小さい場合(ステップS19;YES)、制御部26は、ノズルにおけるインクの吐出状態はノズル詰まりが生じていて、インク流動の検知動作シーケンスを実行しても解消されていないと判断する(ステップS20)。
次に、制御部26は、ノズル詰まりを解消するために、圧力付与部21を制御して、1回目のインク流動の検知動作シーケンス時よりインクへの付与圧力を高めて(ステップS21)、再度インク流動の検知動作シーケンスを実行する。つまり、ステップS11に戻る。
次に、インク流動の検知動作シーケンスを実行するのは2回目であるため、制御部26は、インク流動の検知動作シーケンスは1回目ではないと判断する(ステップS12;NO)。
次に、制御部26は、2回目のインク流動の検知動作シーケンスにおいて、t2直前のインク流動の時間変化の傾きは正常範囲内か否か判断する(ステップS24)。
t2直前のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲内である場合(ステップS24;YES)、制御部26は、ステップS17に移行する。
t2直前のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲内でない場合(ステップS24;NO)、制御部26は、ノズルにおけるインクの吐出状態は、ノズル詰まりが生じていて、インク流動の検知動作シーケンスを2回実行しても解消されていないと判断し、その旨を表示部27に表示して(ステップS25)、終了する。
【0039】
また、t1直後のインク流動の時間変化の傾きがt2直前のインク流動の時間変化の傾きより小さくない場合(ステップS15;NO)、及びt2直前のインク流動の時間変化の傾きが正常範囲より小さくない場合(ステップS19;NO)、制御部26は、ノズルにおけるインクの吐出状態は、ノズルに気泡が混入していると判断する(ステップS22)。
次に、制御部26は、ノズルに混入している気泡を排出するために、パージメンテナンスを実行し(ステップS23)、メンテナンスモードを終了する。パージメンテナンスでは、制御部26は、圧力付与部21を制御し、インク流動の検知動作シーケンスよりもインクへの付与圧力を高め、長時間ノズルからインクを排出させる。
【0040】
また、制御部26は、
図6に示すメンテナンスモード実行する間、流動検知部22を制御して、サブタンクA20内の圧力の時間変化を記録する。
【0041】
以上のように、本実施形態のインクジェット記録装置1は、インクを吐出する複数のノズルを有するインクジェットヘッド10を備えたインクジェット記録装置1であって、インクに外力を付与する圧力付与部21と、圧力付与部21によりインクに外力を付与してノズルからインクを強制的に吐出させるメンテナンスモードを制御する制御部26と、メンテナンスモード実行時に、圧力付与部21によってノズルから吐出されるインクの流動を検知する流動検知部22と、流動検知部22による検知結果に基づいて、ノズルにおけるインクの吐出状態を判断する判断部(制御部26)と、を備える。
従って、ノズルにおけるインクの吐出状態を比較的容易に自動で判断できるインクジェット記録装置、ノズルのメンテナンス方法及びプロブラムを提供することができる。
【0042】
(変形例)
以下では、本変形例と上記実施形態のインクジェット記録装置1との差異を中心に説明する。
【0043】
本変形例の圧力付与部21と流動検知部22近傍の構成を
図7に示す。
本変形例におけるサブタンクA20は、可塑性の部材で構成され、サブタンクA20からN.O弁214を介して、メインタンク40へインク経路が接続されている。
本変形例のインク流動の検知動作シーケンスにおいて、サブタンクA20を、圧力付与部21である加圧部材によって瞬間的に加圧することで、サブタンクA20内のインクに外力を与え、インクジェットヘッド10のノズルからインクを吐出する。
この時、流動検知部22である圧力計221で、インク流動の時間変化を記録する。ここで、圧力計221の代わりに流量計を用いてもよい。
その他の構成、インク流動の検知動作シーケンスの工程、及びメンテナンスモードは上記実施形態のインクジェット記録装置1と同様である。
【0044】
以上のように、本実施形態の変形例の構成においても、ノズルにおけるインクの吐出状態を比較的容易に自動で判断できるインクジェット記録装置、ノズルのメンテナンス方法及びプロブラムを提供することができる。
【0045】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、上記実施形態及び変形例のインクジェット記録装置1は、インクが流路を循環するとしたが、これに限らない。インクが循環しないインクジェット記録装置1でもよい。
【0046】
また、上記実施形態及び変形例のインクジェット記録装置1における圧力付与部21及び流動検知部22は、上記の構成に限らない。ノズル近傍のインクに瞬時に外力印加と開放が実行可能で、その時のインクの流動が検知できれば良い。
また、流動検知部22は、圧力の代わりにインクの流量を計測してもよい。
【0047】
また、上記実施形態のインクジェット記録装置1において、圧力付与部21の圧力計213はなくてもよい。この場合、バッファタンク212内の空気の圧力は、加圧ポンプ211の稼働時間によって調節することができる。
【0048】
また、上記実施形態及び変形例のインクジェット記録装置1のインク流動の検知動作シーケンスのステップS25において、制御部26は、ノズルにおけるインクの吐出状態は、ノズル詰まりが生じていて、解消されていないことを表示部27に表示するとしたが、これに限らない。制御部26は、インク流動の検知動作シーケンスのステップS14、S17、S22においても、判断結果を表示部27に表示するとしてもよい。
【0049】
その他、上記実施の形態及び変形例で示した構成の具体的な細部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 インクジェット記録装置
10 インクジェットヘッド
20 サブタンクA
21 圧力付与部
211 加圧ポンプ
212 バッファタンク
213 圧力計
214 N.O弁
215 N.C弁
22 流動検知部
221 圧力計
222 弁
23 背圧制御部A
24 インク量制御部
25 送液部
26 制御部(判断部)
27 表示部
30 サブタンクB
31 背圧制御部B
40 メインタンク
50 インクタンク
P1、P2、P3 送液ポンプ