(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】インク供給装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240509BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/175 117
B41J2/175 119
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2020108640
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【氏名又は名称】北村 周彦
(72)【発明者】
【氏名】福永 靖幸
(72)【発明者】
【氏名】大西 雄三
【審査官】山本 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-220625(JP,A)
【文献】特開2016-168729(JP,A)
【文献】特開2019-214150(JP,A)
【文献】特開2006-213061(JP,A)
【文献】特開2014-162233(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0007281(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/17
B41J 2/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを収容する複数のインクコンテナと、
前記インクコンテナから送り出された前記インクが通過するチューブ、前記チューブを通過する前記インクを加熱するヒーター、及び、前記チューブと前記ヒーターとを収容する板状の筐体を備え、横並びに積層された複数のヒーターユニットと、
前記複数のインクコンテナと前記複数のヒーターユニットとを収容するフレームと、
前記フレームに固定され、前記複数のヒーターユニットの下端部を一括して保持する下部固定部材と、
前記フレームに着脱可能に固定され、前記複数のヒーターユニットの上端部を一括して保持する上部固定部材と、を備えることを特徴とするインク供給装置。
【請求項2】
前記複数のヒーターユニットの積層方向における前記上部固定部材の一端部が取り外し可能な固定具を用いて前記フレームに固定され、
前記上部固定部材の前記フレームに固定された端部から最も遠くに位置する前記ヒーターユニットが、前記下部固定部材及び前記上部固定部材に取り外し可能な前記固定具を用いて固定されていることを特徴とする請求項1に記載のインク供給装置。
【請求項3】
前記上部固定部材及び前記下部固定部材は、前記ヒーターユニットが嵌め込まれる切欠部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のインク供給装置。
【請求項4】
前記ヒーターユニットは、前記上部固定部材及び前記下部固定部材が嵌め込まれる切欠部を備えることを特徴とする請求項3に記載のインク供給装置。
【請求項5】
前記上部固定部材及び前記下部固定部材は、前記複数のヒーターユニットの積層方向と交差する方向の複数箇所に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のインク供給装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインク供給装置と、
シート状の記録媒体を搬送する搬送ユニットと、前記搬送ユニットにより搬送される前記記録媒体に前記チューブから供給された前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、を備えるインクジェット記録装置と、を備えることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置にインクを供給するインク供給装置及びインク供給装置を備える画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置には、インクジェットヘッドにインクを供給するインクコンテナが装着されるが、インクを大量に消費する場合を想定して、大容量のインクコンテナを備えたインク供給装置が提供されている。
【0003】
良好な画質を実現するためには、インクの粘度を適正な範囲に保つ必要があるが、室温が低いためにインクの粘度が増大する場合がある。そのため、インク供給装置にはインクを加温する手段が設けられている。インクを加温する手段の一例として、チューブとヒーターとを備えたヒーターユニットが知られている。チューブの一端部が大容量のインクコンテナに接続され、他端部がインクジェット記録装置のインク供給路に接続され、インクコンテナから送り出されるインクがヒーターで加温され、インクジェット記録装置に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数色のインクを用いてカラー印刷を行うインクジェット記録装置の場合、インク供給装置は、色毎にインクコンテナとヒーターユニットを備える。複数のヒーターユニットが占有する空間をコンパクトにまとめるには、板状の筐体にチューブとヒーターを収容し、複数の筐体を積層すると有利である。その場合、メンテナンスの容易さを考慮すると、上下方向に積層するよりも、
図17に示されるように横並びに積層する方が有利である。
【0006】
この例では、4つのヒーターユニットのうち最も奥側のヒーターユニットがねじを用いてフレームに固定され、隣り合うヒーターユニット同士がねじを用いて結合されている。ヒーターユニットが故障した場合には、故障したヒーターユニットを取り外して修理又は交換する必要がある。しかし、この例では、ヒーターユニット同士がねじで結合されているため、最も奥側のヒーターユニットや奥から2番目又は3番目のヒーターユニットを取り外すには、それよりも手前側のヒーターユニットも全て取り外さなければならない。また、ヒーターユニットに接続されたチューブも取り外す必要があるため、インク漏れや汚染等のトラブルが増えるおそれがある。従って、故障していないヒーターユニットを取り外さなくても故障したヒーターユニットを取り外すことのできる構成が望ましい。
【0007】
この問題を解決するには、例えば、ラッチレバーによりフレームに対して着脱可能な構成(例えば、特許文献1)が考えられるが、インク供給装置のような大型の装置では、ラッチレバーや筐体の剛性を高める必要があるため、コストがかさむおそれがある。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、横並びに積層された複数のヒーターユニットを備える場合に、故障していないヒーターユニットを取り外さなくても故障したヒーターユニットを取り外すことのできるインク供給装置及び画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るインク供給装置は、インクを収容する複数のインクコンテナと、前記インクコンテナから送り出された前記インクが通過するチューブ、前記チューブを通過する前記インクを加熱するヒーター、及び、前記チューブと前記ヒーターとを収容する板状の筐体を備え、横並びに積層された複数のヒーターユニットと、前記複数のインクコンテナと前記複数のヒーターユニットとを収容するフレームと、前記フレームに固定され、前記複数のヒーターユニットの下端部を一括して保持する下部固定部材と、前記フレームに着脱可能に固定され、前記複数のヒーターユニットの上端部を一括して保持する上部固定部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るインク供給装置において、前記複数のヒーターユニットの積層方向における前記上部固定部材の一端部が取り外し可能な固定具を用いて前記フレームに固定され、前記上部固定部材の前記フレームに固定された端部から最も遠くに位置する前記ヒーターユニットが、前記下部固定部材及び前記上部固定部材に取り外し可能な前記固定具を用いて固定されていてもよい。
【0011】
本発明に係るインク供給装置において、前記上部固定部材及び前記下部固定部材は、前記ヒーターユニットが嵌め込まれる切欠部を備えていてもよい。
【0012】
本発明に係るインク供給装置において、前記ヒーターユニットは、前記上部固定部材及び前記下部固定部材が嵌め込まれる切欠部を備えていてもよい。
【0013】
本発明に係るインク供給装置において、前記上部固定部材及び前記下部固定部材は、前記複数のヒーターユニットの積層方向と交差する方向の複数箇所に設けられていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る画像形成システムは、前記のいずれかのインク供給装置と、シート状の記録媒体を搬送する搬送ユニットと、前記搬送ユニットにより搬送される前記記録媒体に前記チューブから供給された前記インクを吐出するインクジェットヘッドと、を備えるインクジェット記録装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、横並びに積層された複数のヒーターユニットを備える場合に、故障していないヒーターユニットを取り外さなくても故障したヒーターユニットを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るインク供給装置とプリンターの外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプリンターの内部構成を模式的に示す正面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るインクを供給する経路を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るインク供給装置の内部を示す斜視図である。
【
図5A】本発明の一実施形態に係るヒーターユニットの斜視図である。
【
図5B】本発明の一実施形態に係るヒーターユニットの斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るヒーターユニットの断面を模式的に示す図である。
【
図7A】本発明の一実施形態に係るヒーターの斜視図である。
【
図7B】本発明の一実施形態に係るチューブの斜視図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るフレームの斜視図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る上部固定部材の斜視図である。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る上部固定部材の斜視図である。
【
図10A】本発明の一実施形態に係る下部固定部材の斜視図である。
【
図10B】本発明の一実施形態に係る下部固定部材の斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るフレームに下部固定部材が取り付けられた様子を示す斜視図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る下部固定部材に最も奥側(後側)のヒーターユニットが載せられた様子を示す斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態に係る下部固定部材に全てのヒーターユニットが載せられた様子を示す斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態に係るヒーターユニットが上部固定部材によって固定された様子を示す斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態に係るヒーターユニットとその周辺部の断面を模式的に示す図である。
【
図16】本発明の一実施形態に係る最も奥側のヒーターユニットが取り外された様子を示す斜視図である。
【
図17】従来のインク供給装置の内部を示す斜視図である。
【
図18】従来のヒーターユニットの上部フランジ部80Uを拡大した斜視図である。
【
図19A】従来の単体のヒーターユニットを示す斜視図である。
【
図19B】従来の単体のヒーターユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る画像形成システム3について説明する。
【0018】
まず、画像形成システム3の全体の構成について説明する。画像形成システム3は、インク供給装置2とプリンター1(インクジェット記録装置の一例)とを含む。
図1は、インク供給装置2とプリンター1の外観を示す斜視図である。
図2は、プリンター1の内部構成を模式的に示す正面図である。
図3は、インクの供給経路を模式的に示す図である。以下、
図1におけるFr側(
図2における紙面手前側)をインク供給装置2及びプリンター1の正面側(前側)とし、左右の向きはインク供給装置2及びプリンター1を正面から見た方向を基準として説明する。各図において、U、Lo、L、R、Fr、Rrは、それぞれ上、下、左、右、前、後を示す。
【0019】
プリンター1は、普通紙、コート紙等のシートS(シート状の記録媒体の一例)にインクを吐出することで画像を形成するインクジェット方式の画像形成装置である。インク供給装置2は、プリンター1の後方に設けられ、プリンター1にインクを供給する。
【0020】
プリンター1は、各種機器が収容される箱形の本体ハウジング10を備える。本体ハウジング10内の下部にはシートSが収容される引き出し可能な給紙カセット15が設けられ、本体ハウジング10の右側面にはシートSが手差しで積載される手差しトレイ25が設けられている。手差しトレイ25の上方には、画像形成済みのシートSが積載される排出トレイ17が設けられ、本体ハウジング10の左側面の上部には、プリンター1の左側に隣接する後処理装置(図示省略)にシートSを搬送するための排出口19が形成されている。
【0021】
本体ハウジング10内の中央部には、シートSにインクを吐出する1つ以上のインクジェットヘッドを備えるヘッドユニット34Y、34Bk、34C、34M(ヘッドユニット34と総称する)が設けられ、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクを吐出する。ヘッドユニット34の下方には、画像が形成されるシートSを搬送ベルト45に吸着させて搬送する搬送ユニット40が設けられ、搬送ユニット40の左方には、画像形成済みのシートSを搬送しながら乾燥させる乾燥ユニット48が設けられている。本体ハウジング10内の左下部には、インクが充填されたインクコンテナ51が収容されている。
【0022】
搬送ユニット40の右方には、給紙カセット15から搬送ユニット40に至る第1搬送路21と、手差しトレイ25から第1搬送路21に合流する手差し搬送路27が設けられている。乾燥ユニット48の左方には、乾燥ユニット48から排出口19に至る第2搬送路22が設けられている。ヘッドユニット34の上方には、第2搬送路22から分岐して排出トレイ17に至る第3搬送路23と、第3搬送路23から分岐して第1搬送路21に合流する第4搬送路24と、が設けられている。第2搬送路22と第3搬送路23との分岐点、及び、第3搬送路23と第4搬送路24との分岐点には、シートSの搬送を案内する案内部材が設けられている(図示省略)。
【0023】
次に、プリンター1の画像形成動作の概要について説明する。プリンター1に画像形成ジョブが入力されると、シートSが、給紙カセット15又は手差しトレイ25から送り出され、第1搬送路21に沿ってY1方向に搬送される。シートSは、搬送ユニット40の搬送ベルト45に吸着されて搬送される。そして、ヘッドユニット34からシートSにインク滴が吐出されることでシートSに画像が形成される。画像が形成されたシートSは、乾燥ユニット48によりインクの乾燥が促進され、第2搬送路22、第3搬送路23に沿って搬送され、排出トレイ17に排出される。
【0024】
[インク供給経路]
次に、インクの供給経路について説明する。
図3では、1色のインクに対応する構成が示されているが、本実施形態では4色のインクを用いるため、同様の構成が4系統設けられている。プリンター1は、インクコンテナ51が装着されるコンテナ装着部52と、インクコンテナ51からインクを吸引するポンプ53と、ポンプ53に吸引されるインクを濾過するフィルター54と、ポンプ53から送り出されたインクを貯留するサブタンク55と、サブタンク55に貯留されたインクをヘッドユニット34に送り出すポンプ(図示省略)と、を備える。インクコンテナ51とフィルター54とポンプ53とサブタンク55は、メインチューブ56で接続されている。中継チューブ57の一端部はプリンター1の本体ハウジング10の背面に設けられたカップリング58に接続されている。インク供給装置2を使用する場合には、メインチューブ56の上流側の端部がインクコンテナ51に代えて中継チューブ57の他端部に付け替えられる。
【0025】
[インク供給装置]
次に、インク供給装置2について説明する。
図4は、インク供給装置2の内部を示す斜視図である。
図5A、5Bは、ヒーターユニット71の斜視図である。
図6は、ヒーターユニット71の断面を模式的に示す図である。
図7Aは、ヒーター75の斜視図である。
図7Bは、チューブ72の斜視図である。
図8は、フレーム64の斜視図である。
図9A、9Bは、上部固定部材81の斜視図である。
図10A、10Bは、下部固定部材82の斜視図である。
【0026】
インク供給装置2は、インクを収容する複数のインクコンテナ61と、インクコンテナ61から送り出されたインクが通過するチューブ72、チューブ72を通過するインクを加熱するヒーター75、及び、チューブ72とヒーター75とを収容する板状の筐体80を備え、横並びに積層された複数のヒーターユニット71と、複数のインクコンテナ61と複数のヒーターユニット71とを収容するフレーム64と、フレーム64に固定され、複数のヒーターユニット71の下端部を一括して保持する下部固定部材82と、フレーム64に着脱可能に固定され、複数のヒーターユニット71の上端部を一括して保持する上部固定部材81と、を備える。
【0027】
[インクコンテナ]
インク供給装置2(
図4参照)は、インクコンテナ61が装着されるコンテナ装着部62を備える。インクコンテナ61は、プリンター1の内部に装着されるインクコンテナ51よりも大きな容積を有する。本実施形態では4色のインクを用いるため、4つのインクコンテナ61が設けられ、それぞれイエロー、ブラック、シアン、マゼンタのインクが充填されている。なお、予備のインクコンテナ61が収容される予備コンテナ収容部63が備えられていてもよい。
【0028】
[ヒーターユニット]
インクコンテナ61の各々に対して1つのヒーターユニット71が設けられている。
【0029】
[チューブ]
チューブ72(
図3、7B参照)は、ステンレス鋼等で形成された管であり、規則的に蛇行した形状で設けられている。チューブ72は、アルミニウム等で形成された2枚の支持板73によって前後方向に挟持されている。チューブ72の一端部は、中継チューブ74によってインクコンテナ61に接続されている。チューブ72の他端部は、中継チューブ74によってプリンター1のカップリング58に接続されている。
【0030】
[ヒーター]
ヒーター75(
図7A参照)は、例えば電熱線をシリコーン樹脂で被覆したコードヒーターであり、支持板73を介してチューブ72の前後にチューブ72に沿うように設けられている。ヒーター75には、給電線76が接続される。
【0031】
[筐体]
筐体80(
図5A乃至6参照)は、ヒーター75とチューブ72を収容する。筐体80は、左右方向、上下方向、前後方向の3方向のうち、前後方向の寸法が左右方向及び上下方向の寸法に比べて小さい中空の板状に形成されている。筐体80は、箱状部材80Bと板状部材80Pとを備える。箱状部材80Bは、後側が開口した箱状に形成されており、上縁部と下縁部に、それぞれ上方、下方に突出したフランジ部80Fが形成されている。板状部材80Pは、上下方向と左右方向の寸法が箱状部材80Bとほぼ等しい板状の部材である。
【0032】
箱状部材80Bのフランジ部80Fが板状部材80Pの上端部及び下端部にねじ等を用いて固定される。以下、箱状部材80Bの上側のフランジ部80Fと板状部材80Pの上端部とで形成されている部分を上部フランジ部80Uと呼び、箱状部材80Bの下側のフランジ部80Fと板状部材80Pの下端部とで形成されている部分を下部フランジ部80Loと呼ぶ。上部フランジ部80Uには、左右方向の4箇所に切欠部80Sが設けられている。下部フランジ部80Loには、左右方向の2箇所に切欠部80Sが設けられている。上部フランジ部80Uの左から1つ目と2つ目の切欠部80Sの間、及び左から3つ目と4つ目の切欠部80Sの間には、ねじ穴部80Hが設けられている。下部フランジ部80Loのそれぞれの切欠部80Sの右側には、ねじ穴部80Hが設けられている。
【0033】
[フレーム]
フレーム64(
図4、8参照)は、直方体の稜を形成する稜部64Eと、直方体の底を形成する底板部64Bと、内部の空間を前後に仕切る隔壁部64Pと、を備え、フレーム64の外側に側板と天板が装着されることでハウジング65が形成される。4つのヒーターユニット71が隔壁部64Pよりも前側に、4つのインクコンテナ61が隔壁部64Pよりも後側に収容される。4つのヒーターユニット71は、前後方向に横並びに積層され、後述する上部固定部材81及び下部固定部材82によってフレーム64に固定される。隔壁部64Pと底板部64Bには、上部固定部材81及び下部固定部材82を固定するためのねじ穴部64Hが設けられている。底板部64Bの前端部から上方に前壁部64Frが設けられている。
【0034】
[上部固定部材]
上部固定部材81(
図9A、9B参照)は、ステンレス鋼等の板材を板金加工することで形成されている。上部固定部材81は、天板部81Uと、天板部81Uの左右両端部から下方に設けられた壁部81Wと、天板部81Uの後端部から上方に設けられた後部固定部81Rrと、左右の壁部81Wの後端部からそれぞれ左方、右方に設けられた後部固定部81Rrと、天板部81Uの前端部の一部分が下方に切り起こされた前部固定部81Frと、を備える。後部固定部81Rr、前部固定部81Frには、ねじ穴部81Hが設けられている。壁部81Wの下端部には、前後方向の4箇所に等間隔で切欠部81Sが設けられている。
【0035】
[下部固定部材]
下部固定部材82(
図10A、10B参照)は、ステンレス鋼等の板材を板金加工することで形成されている。下部固定部材82は、底板部82Bと、底板部82Bの左端部から上方に設けられた壁部82Wと、壁部82Wの後端部から右方に設けられた後部固定部82Rrと、底板部82Bの前端部から上方に設けられた前部固定部82Frと、壁部82Wの前端部の上部から左方に設けられた前壁上部82Uと、壁部82Wの前端部の下部から左方に設けられた前壁下部82Loと、を備える。前壁上部82Uは、前壁下部82Loよりも若干前方に設けられているため、前壁上部82Uと前壁下部82Loとの間に段が形成されている。前壁上部82Uと前壁下部82Loとの間の壁部82Wには上方に延びる第1切欠部82S1が設けられている。底板部82B、後部固定部82Rr、前部固定部82Frには、ねじ穴部82Hが設けられている。壁部82Wの上端部には、前後方向の4箇所に、上部固定部材81の切欠部81Sと等しい等間隔で第2切欠部92S2が設けられている。
【0036】
[ヒーターユニットの取り付け]
次に、ヒーターユニット71の取り付けの手順について説明する。
図11は、フレーム64に下部固定部材82が取り付けられた様子を示す斜視図である。
図12は、下部固定部材82に最も奥側(後側)のヒーターユニット71が載せられた様子を示す斜視図である。
図13は、下部固定部材82に全てのヒーターユニット71が載せられた様子を示す斜視図である。
図14は、ヒーターユニット71が上部固定部材81によって固定された様子を示す斜視図である。
図15は、ヒーターユニット71とその周辺部の断面を模式的に示す図である。
【0037】
最初に、
図11に示されるように、フレーム64に2つの下部固定部材82を取り付ける。具体的には、フレーム64の前壁部64Frに下部固定部材82の第1切欠部82S1を噛み合わせ、下部固定部材82の底板部82Bをねじ90(取り外し可能な固定具の一例)でフレーム64の底板部64Bに固定し、下部固定部材82の後部固定部82Rrをねじ90で隔壁部64Pに固定する。
【0038】
次に、
図12に示されるように、1つ目のヒーターユニット71を下部固定部材82の最も奥側(最も後側)に載せる。具体的には、下部固定部材82の最も奥側の第2切欠部82S2と、1つ目のヒーターユニット71の下部フランジ部80Loの切欠部80Sと、を噛み合わせる。
【0039】
同様に、
図13に示されるように、2つ目から4つ目のヒーターユニット71を下部固定部材82に載せる。具体的には、下部固定部材82の奥から2番目の第2切欠部82S2と、2つ目のヒーターユニット71の下部フランジ部80Loの切欠部80Sと、を噛み合わせる。次に、下部固定部材82の奥から3番目の第2切欠部82S2と、3つ目のヒーターユニット71の下部フランジ部80Loの切欠部80Sと、を噛み合わせる。次に、下部固定部材82の最も手前側(最も前側)の第2切欠部82S2と、4つ目のヒーターユニット71の下部フランジ部80Loの切欠部80Sと、を噛み合わせる。
【0040】
次に、
図14に示されるように、上部固定部材81を取り付ける。具体的には、上部固定部材81の切欠部81Sと、4つのヒーターユニット71の上部フランジ部80Uの切欠部80Sと、を噛み合わせる。次に、上部固定部材81の後部固定部81Rrをねじ90で隔壁部64Pに固定する。次に、4つ目(最も手前側)のヒーターユニット71の下部フランジ部80Loを、下部固定部材82の前部固定部82Frにねじ90で固定する。また、4つ目のヒーターユニット71の上部フランジ部80Uを、上部固定部材81の前部固定部81Frにねじ90で固定する。
【0041】
こうして、4つのヒーターユニット71が上部固定部材81及び下部固定部材82を介してフレーム64に固定される。また、隔壁部64Pと上部固定部材81と下部固定部材82と4つ目のヒーターユニット71とで閉断面の箱形構造が形成される。
【0042】
[ヒーターユニットの取り外し]
次に、ヒーターユニット71の取り外しの手順について説明する。この例では、奥(後)から2つ目のヒーターユニット71が故障し、それ以外のヒーターユニット71は故障していない場合について説明する。
【0043】
最初に、上部固定部材81の前部固定部81Frと後部固定部81Rrからねじ90を外し、4つのヒーターユニット71から上部固定部材81を取り外す(
図13参照)。次に、奥から2つ目のヒーターユニット71を持ち上げて、下部フランジ部80Loの切欠部80Sと下部固定部材82の第2切欠部82S2との噛み合わせを解除し、そのヒーターユニット71を左方又は右方に引き抜く。こうして、故障したヒーターユニット71のみがフレーム64から取り外される。
図16は、奥から2つ目のヒーターユニット71が取り外された様子を示す斜視図である。
【0044】
最も奥側又は奥から3つ目のヒーターユニット71が故障した場合にも、上記と同様に、上部固定部材81を取り外した後、故障したヒーターユニット71を持ち上げて左方又は右方に引き抜くことで、故障したヒーターユニット71のみがフレーム64から取り外される。
【0045】
ここで、比較のために、従来のインク供給装置2Aについて説明する。
図17は、従来のインク供給装置2Aの内部を示す斜視図である。
図18は、従来のヒーターユニット71Aの上部フランジ部80Uを拡大した斜視図である。
図19A、19Bは、従来の単体のヒーターユニット71Aを示す斜視図である。
【0046】
このインク供給装置2Aは、上部固定部材81及び下部固定部材82を備えておらず、ヒーターユニット71Aが直接的にフレーム64に取り付けられている。具体的には、
図18に示されるように、4つのヒーターユニット71Aのうち最も奥側のヒーターユニット71Aがねじ90を用いて隔壁部64Pに固定され、隣り合うヒーターユニット71A同士がねじ90を用いて結合されている。そのため、最も奥側のヒーターユニット71Aや奥から2番目又は3番目のヒーターユニット71Aを取り外すには、それよりも手前側のヒーターユニット71Aを全て取り外さなければならない。また、ヒーターユニット71Aに接続された中継チューブ74も取り外す必要があるため、インク漏れや汚染等のトラブルが増えるおそれがある。
【0047】
また、
図19A,19Bに示されるように、箱状部材80Bと板状部材80Pのそれぞれにねじ90の締結用の切り起こし91B、91Pを形成する必要がある。また、ねじ90を締結する工具を挿入する空間を確保するために、切り起こし91Bと切り起こし91Pの左右方向の位置をずらした少なくとも2種類の筐体80を作成する必要がある。また、ヒーターユニット71Aがねじ90だけで固定されているため、ヒーターユニット71Aに上下方向や左右方向の外力が加わった場合にねじ90がせん断破壊するおそれがある。本実施形態に係るインク供給装置2では、これらの問題が生じない。
【0048】
以上説明した本実施形態に係るインク供給装置2によれば、横並びに積層された複数のヒーターユニット71を備える場合に、故障していないヒーターユニット71を取り外さなくても故障したヒーターユニット71を取り外すことができる。
【0049】
また、本実施形態に係るインク供給装置2によれば、複数のヒーターユニット71の積層方向における上部固定部材81の一端部がねじ90を用いてフレーム64に固定され、上部固定部材81のフレーム64に固定された端部から最も遠くに位置するヒーターユニット71が、下部固定部材82及び上部固定部材81にねじ90を用いて固定されている。この構成により、フレーム64の隔壁部64Pと上部固定部材81と下部固定部材82とヒーターユニット71とで閉断面の箱形構造が形成されるから、装置全体の剛性を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態に係るインク供給装置2によれば、上部固定部材81、下部固定部材82が、それぞれヒーターユニット71が嵌め込まれる切欠部81S、第2切欠部82S2を備えるから、ヒーターユニット71の積層方向の位置決めが容易である。また、ヒーターユニット71の積層方向の位置ずれを防ぐことができる。また、故障したヒーターユニット71を取り外したときの、取り外されていないヒーターユニット71の積層方向の位置ずれを防ぐことができる。
【0051】
また、本実施形態に係るインク供給装置2によれば、ヒーターユニット71が、上部固定部材81及び下部固定部材82が嵌め込まれる80S切欠部を備えるから、ヒーターユニット71の積層方向と交差する方向の位置決めが容易である。また、ヒーターユニット71の積層方向と交差する方向の位置ずれを防ぐことができる。
【0052】
また、本実施形態に係るインク供給装置2によれば、上部固定部材81及び下部固定部材82が、複数のヒーターユニット71の積層方向と交差する方向の複数箇所に設けられている。この構成により、閉断面の箱形構造が複数箇所に形成されるから、装置全体の剛性をさらに高めることができる。
【0053】
上記実施形態が以下のように変形されてもよい。
【0054】
上記実施形態では、上部固定部材81と下部固定部材82の形状が異なっている例が示されたが、下部固定部材82は上部固定部材81を上下方向に反転させた形状でもよい。あるいは、上部固定部材81は下部固定部材82を上下方向に反転させた形状でもよい。この構成によれば、上部固定部材81と下部固定部材82の共通化によりコストを抑制することができる。
【0055】
上記実施形態では、ヒーターユニット71の上部フランジ部80U、下部フランジ部80Loに切欠部80Sが設けられている例が示されたが、これらの切欠部80Sは設けられていなくてもよい。
【0056】
上記実施形態では、上部固定部材81と下部固定部材82がそれぞれヒーターユニット71の積層方向と交差する方向の2箇所に設けられている例が示されたが、上部固定部材81と下部固定部材82がそれぞれ1箇所に設けられていてもよい。この場合、下部固定部材82が設けられていない場所に、ヒーターユニット71の下部フランジ部80Loを支持するスペーサーが設けられていてもよい。この構成によれば、コストを抑制することができる。また、上部固定部材81と下部固定部材82がそれぞれ3箇所以上に設けられていてもよい。この構成によれば、装置の剛性を高めることができる。なお、上部固定部材81と下部固定部材82の数は同じでなくてもよい。
【0057】
上記実施形態では、フレーム64の隔壁部64Pと上部固定部材81と下部固定部材82と最も手前側のヒーターユニット71とで閉断面の箱形構造が形成される例が示されたが、最も手前側のヒーターユニット71のさらに手前側に柱状、板状等の補強部材を設け、隔壁部64Pと上部固定部材81と下部固定部材82と補強部材とで閉断面の箱形構造が形成されてもよい。この構成によれば、最も手前側のヒーターユニット71の応力を抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 プリンター(インクジェット記録装置)
2 インク供給装置
61 インクコンテナ
64 フレーム
71 ヒーターユニット
72 チューブ
75 ヒーター
80 筐体
80S 切欠部
81 上部固定部材
81S 切欠部
82 下部固定部材
82S2 第2切欠部