(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】リボン巻取り機構およびテープ印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 17/02 20060101AFI20240509BHJP
B41J 2/325 20060101ALI20240509BHJP
B41J 23/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J17/02
B41J2/325 A
B41J23/02 B
(21)【出願番号】P 2020119415
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001623
【氏名又は名称】弁理士法人真菱国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰志
(72)【発明者】
【氏名】中島 賢一
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-144875(JP,A)
【文献】特開2001-301292(JP,A)
【文献】特開昭49-127722(JP,A)
【文献】特開2002-002053(JP,A)
【文献】特開平01-085788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 17/02
B41J 2/325
B41J 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンが巻回された繰出しコアと係合する繰出し回転子と、
前記繰出しコアから繰り出された前記インクリボンが巻き取られる巻取りコアと係合する巻取り回転子と、
第1回転方向と、前記第1回転方向とは反対の第2回転方向と、に回転可能な送りモーターと、
巻取り側第1歯車と、前記巻取り側第1歯車と噛み合う位置および前記巻取り側第1歯車から外れた位置とに移動可能なクラッチ歯車と、を有し、前記送りモーターが前記第1回転方向に回転したときには、前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車と噛み合うことで、前記巻取りコアに前記インクリボンが巻き取られるように、前記送りモーターの回転を前記巻取り回転子に伝達し、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときには、前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車から外れることで、前記送りモーターの回転を前記巻取り回転子に伝達しない巻取り側歯車列と、
前記送りモーターが前記第1回転方向に回転したときに、前記送りモーターの回転を前記繰出し回転子に伝達せず、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときに、前記繰出しコアに前記インクリボンが巻き戻されるように、前記送りモーターの回転を前記繰出し回転子に伝達する繰出し側歯車列と、
前記クラッチ歯車を回転可能に支持し、支持した前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車と噛み合う噛合位置と、支持した前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車から外れる非噛合位置と、に移動可能な歯車支持部材と、
前記送りモーターが前記第2回転方向への回転を開始したときに、前記歯車支持部材に対し、前記噛合位置から前記非噛合位置へ移動することを阻害するクラッチ阻害力を作用させるクラッチ阻害ばねと、
前記歯車支持部材と係合した駆動部材、を有し、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときに、前記クラッチ阻害力に抗して、前記歯車支持部材を前記非噛合位置に移動させるクラッチ駆動機構と、
を備えたことを特徴とするリボン巻取り機構。
【請求項2】
前記歯車支持部材は、支持側歯部を有し、
前記駆動部材は、前記支持側歯部と噛み合った駆動側歯部、を有し、
前記駆動部材は、前記送りモーターが前記第1回転方向に回転したときに、第1駆動方向に回転することで、前記歯車支持部材を前記噛合位置に回転させ、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときに、前記第1駆動方向とは逆の第2駆動方向に回転することで、前記歯車支持部材を前記非噛合位置に回転させることを特徴とする請求項1に記載のリボン巻取り機構。
【請求項3】
前記歯車支持部材の回転半径は、前記駆動部材の回転半径よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のリボン巻取り機構。
【請求項4】
前記クラッチ駆動機構は、
前記送りモーターが前記第1回転方向に回転したときに、前記第1駆動方向に回転し、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときに、前記第2駆動方向に回転する入力歯車と、
前記入力歯車と前記駆動部材との間で、前記入力歯車および前記駆動部材と同軸上に設けられたクラッチ軸部材と、
前記入力歯車と前記クラッチ軸部材とを連結し、前記入力歯車が前記第1駆動方向に回転したときに、前記クラッチ軸部材に対してスリップすることで、前記入力歯車から前記クラッチ軸部材に伝達されるトルクを制限する第1クラッチスリップばねと、
前記クラッチ軸部材と前記駆動部材とを連結し、前記クラッチ軸部材が前記第2駆動方向に回転したときに、前記クラッチ軸部材に対してスリップすることで、前記クラッチ軸部材から前記駆動部材に伝達されるトルクを制限する第2クラッチスリップばねと、
を有することを特徴とする請求項2または3に記載のリボン巻取り機構。
【請求項5】
前記第1クラッチスリップばねは、前記入力歯車から前記クラッチ軸部材に伝達されるトルクを、第1トルクに制限し、
前記第2クラッチスリップばねは、前記クラッチ軸部材から前記駆動部材に伝達されるトルクを、前記第1トルクよりも大きい第2トルクに制限することを特徴とする請求項4に記載のリボン巻取り機構。
【請求項6】
前記繰出しコアと前記巻取りコアとの間で前記インクリボンを送る送りローラーと係合するローラー回転子と、
前記送りモーターの回転を前記ローラー回転子に伝達する送り歯車列と、を備え、
前記入力歯車は、前記送り歯車列に含まれていることを特徴とする請求項4または5に記載のリボン巻取り機構。
【請求項7】
インクリボンが巻回された繰出しコアと係合する繰出し回転子と、
前記繰出しコアから繰り出された前記インクリボンが巻き取られる巻取りコアと係合する巻取り回転子と、
第1回転方向と、前記第1回転方向とは反対の第2回転方向と、に回転可能な送りモーターと、
巻取り側第1歯車と、前記巻取り側第1歯車と噛み合う位置および前記巻取り側第1歯車から外れた位置とに移動可能なクラッチ歯車と、を有し、前記送りモーターが前記第1回転方向に回転したときには、前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車と噛み合うことで、前記巻取りコアに前記インクリボンが巻き取られるように、前記送りモーターの回転を前記巻取り回転子に伝達し、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときには、前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車から外れることで、前記送りモーターの回転を前記巻取り回転子に伝達しない巻取り側歯車列と、
前記送りモーターが前記第1回転方向に回転したときに、前記送りモーターの回転を前記繰出し回転子に伝達せず、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときに、前記繰出しコアに前記インクリボンが巻き戻されるように、前記送りモーターの回転を前記繰出し回転子に伝達する繰出し側歯車列と、
前記クラッチ歯車を回転可能に支持し、支持した前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車と噛み合う噛合位置と、支持した前記クラッチ歯車が前記巻取り側第1歯車から外れる非噛合位置と、に移動可能な歯車支持部材と、
前記送りモーターが前記第2回転方向への回転を開始したときに、前記歯車支持部材に対し、前記噛合位置から前記非噛合位置へ移動することを阻害するクラッチ阻害力を作用させるクラッチ阻害ばねと、
前記歯車支持部材と係合した駆動部材、を有し、前記送りモーターが前記第2回転方向に回転したときに、前記クラッチ阻害力に抗して、前記歯車支持部材を前記非噛合位置に移動させるクラッチ駆動機構と、
前記インクリボンを用いてテープに印刷を行うサーマルヘッドと、
を備えたことを特徴とするテープ印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクリボンの巻取りおよび巻戻しが可能なリボン巻取り機構およびテープ印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1が開示するように、インクリボンの巻取りおよび巻戻しが可能なテープ印刷装置が知られている。テープ印刷装置は、遊星ギアと巻取り側入力ギアとを有する歯車列を備えている。駆動モーターが正回転駆動したときには、遊星ギアが巻取り側入力ギアと噛み合うことで、リボン巻取りコアにインクリボンが巻き取られるように、駆動モーターの回転が巻取り側駆動軸に伝達される。一方、駆動モーターが逆回転駆動したときには、遊星ギアが巻取り側入力ギアから外れることで、駆動モーターの回転が巻取り側駆動軸に伝達されない。また、巻取り側出力ギアと巻取り側駆動軸との間には、巻取り側出力ギアから巻取り側駆動軸に伝達されるトルクを制限するテンションばねが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のテープ印刷装置において、インクリボンの巻戻し開始時に、巻取り側出力ギアがある程度逆回転してテンションばねの弾性変形が解消されるまで、テンションばねの弾性力により、遊星ギアが巻取り側入力ギアから外れないおそれがある。この場合、遊星ギアが巻取り側入力ギアから外れるまでの間、テンションばねの弾性力によりインクリボンに過度なテンションが掛かった状態で、インクリボンが巻き戻されてしまう、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のリボン巻取り機構は、インクリボンが巻回された繰出しコアと係合する繰出し回転子と、繰出しコアから繰り出されたインクリボンが巻き取られる巻取りコアと係合する巻取り回転子と、第1回転方向と、第1回転方向とは反対の第2回転方向と、に回転可能な送りモーターと、巻取り側第1歯車と、巻取り側第1歯車と噛み合う位置および巻取り側第1歯車から外れた位置とに移動可能なクラッチ歯車と、を有し、送りモーターが第1回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合うことで、巻取りコアにインクリボンが巻き取られるように、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達し、送りモーターが第2回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れることで、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達しない巻取り側歯車列と、送りモーターが第1回転方向に回転したときに、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達せず、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、繰出しコアにインクリボンが巻き戻されるように、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達する繰出し側歯車列と、クラッチ歯車を回転可能に支持し、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合う噛合位置と、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れる非噛合位置と、に移動可能な歯車支持部材と、送りモーターが第2回転方向への回転を開始したときに、歯車支持部材に対し、噛合位置から非噛合位置へ移動することを阻害するクラッチ阻害力を作用させるクラッチ阻害ばねと、歯車支持部材と係合した駆動部材、を有し、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、クラッチ阻害力に抗して、歯車支持部材を非噛合位置に移動させるクラッチ駆動機構と、を備えた。
【0006】
本発明のテープ印刷装置は、インクリボンが巻回された繰出しコアと係合する繰出し回転子と、繰出しコアから繰り出されたインクリボンが巻き取られる巻取りコアと係合する巻取り回転子と、第1回転方向と、第1回転方向とは反対の第2回転方向と、に回転可能な送りモーターと、巻取り側第1歯車と、巻取り側第1歯車と噛み合う位置および巻取り側第1歯車から外れた位置とに移動可能なクラッチ歯車と、を有し、送りモーターが第1回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合うことで、巻取りコアにインクリボンが巻き取られるように、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達し、送りモーターが第2回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れることで、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達しない巻取り側歯車列と、送りモーターが第1回転方向に回転したときに、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達せず、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、繰出しコアにインクリボンが巻き戻されるように、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達する繰出し側歯車列と、クラッチ歯車を回転可能に支持し、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合う噛合位置と、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れる非噛合位置と、に移動可能な歯車支持部材と、送りモーターが第2回転方向への回転を開始したときに、歯車支持部材に対し、噛合位置から非噛合位置へ移動することを阻害するクラッチ阻害力を作用させるクラッチ阻害ばねと、歯車支持部材と係合した駆動部材、を有し、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、クラッチ阻害力に抗して、歯車支持部材を非噛合位置に移動させるクラッチ駆動機構と、インクリボンを用いてテープに印刷を行うサーマルヘッドと、を備えた。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】テープカートリッジおよびリボンカートリッジが装着されていないテープ印刷装置を+Z方向から見た図である。
【
図4】テープカートリッジが装着されたテープ印刷装置を+Z方向から見た図である。
【
図5】リボンカートリッジが装着されたテープ印刷装置を+Z方向から見た図である。
【
図6】リボン巻取り機構を+Z方向から見た図であり、送りモーターが時計回りに回転したときの各部の回転方向を示す図である。
【
図7】リボン巻取り機構を+Z方向から見た図であり、送りモーターが反時計回りに回転したときの各部の回転方向を示す図である。
【
図8】第1巻取り回転子の周りの構成を示す図である。
【
図9】送りモーターが反時計回りの回転を開始したときに、第2巻取りスリップばねの弾性力により各歯車に伝達される回転力の方向を示す図である。
【
図11】
図10とは別の角度から見たクラッチ駆動機構の分解斜視図である。
【
図13】送りモーターが時計回りに回転したときのクラッチ駆動機構の各部の動きを示す図である。
【
図14】送りモーターが反時計回りに回転したときのクラッチ駆動機構の各部の動きを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付の図面を参照しつつ、リボン巻取り機構およびテープ印刷装置について説明する。まず、テープ印刷装置の一実施形態であるテープ印刷装置1に択一的に装着されるテープカートリッジ201およびリボンカートリッジ301について説明する。なお、以下では、各図に示したXYZ直交座標系による方向を用いて説明するが、これらの方向は説明の便宜上のものにすぎず、以下の実施形態を何ら限定するものではない。
【0009】
[テープカートリッジ]
図1に示すように、テープカートリッジ201は、テープコア203(
図4参照)と、第1プラテンローラー205と、第1繰出しコア207(
図4参照)と、第1巻取りコア209と、これらを収容した第1カートリッジケース211とを備えている。テープコア203には、第1テープ213が巻回されている。テープコア203から繰り出された第1テープ213は、第1カートリッジケース211の-X方向の周壁部に設けられたテープ送出口215から、第1カートリッジケース211外へ送り出される。第1繰出しコア207には、第1インクリボン217が巻回されている。第1繰出しコア207から繰り出された第1インクリボン217は、第1巻取りコア209に巻き取られる。第1カートリッジケース211は、テープカートリッジ201の外殻を構成している。第1カートリッジケース211には、第1ヘッド挿通孔219が、Z方向に貫通して設けられている。
【0010】
[リボンカートリッジ]
図2に示すように、リボンカートリッジ301は、第2プラテンローラー305と、第2繰出しコア307(
図5参照)と、第2巻取りコア309と、これらを収容した第2カートリッジケース311とを備えている。第2繰出しコア307には、第2インクリボン317(
図5参照)が巻回されている。第2繰出しコア307から繰り出された第2インクリボン317は、第2巻取りコア309に巻き取られる。第2カートリッジケース311は、リボンカートリッジ301の外殻を構成している。第2カートリッジケース311には、第2ヘッド挿通孔319が、Z方向に貫通して設けられている。また、第2カートリッジケース311には、テープ経路321が設けられている。テープ経路321には、テープ印刷装置1外に設けられたテープロール(図示省略)から繰り出された第2テープ313(
図5参照)が導入される。なお、リボンカートリッジ301は、ユーザーによりテープ経路321に第2テープ313が挿入された状態で、カートリッジ装着部11に装着される。
【0011】
[テープ印刷装置]
図3ないし
図5に示すように、テープ印刷装置1は、装置ケース3と、装着部カバー5とを備えている。装置ケース3は、略直方体状に形成されている。装置ケース3の+X方向の面には、装置側テープ導入口7が設けられ、装置ケース3の-X方向の面には、装置側テープ排出口9が設けられている。テープロールから繰り出された第2テープ313は、装置側テープ導入口7から装置ケース3内に導入され、装置側テープ排出口9から装置ケース3外へ排出される(
図5参照)。
【0012】
装着部カバー5は、装置ケース3の+Y方向の端部に回動可能に取り付けられており、カートリッジ装着部11を開閉する。カートリッジ装着部11には、テープカートリッジ201(
図4参照)とリボンカートリッジ301(
図5参照)とが択一的に装着される。カートリッジ装着部11は、+Z方向が開放された凹状に形成されている。カートリッジ装着部11の底面である装着底面13には、ヘッド部15が設けられている。ヘッド部15は、サーマルヘッド17と、ヘッドカバー19とを備えている。サーマルヘッド17は、発熱素子(図示省略)を備えている。ヘッドカバー19は、サーマルヘッド17の一部を覆っている。
【0013】
装着底面13には、-X方向から順に、プラテン軸21と、第1巻取り軸25と、第1繰出し軸23と、第2繰出し軸27と、第2巻取り軸29とが、+Z方向に突出して設けられている。プラテン軸21、第1繰出し軸23、第1巻取り軸25、第2繰出し軸27および第2巻取り軸29には、それぞれ、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33、第1巻取り回転子35、第2繰出し回転子37および第2巻取り回転子39が、回転可能に支持されている。プラテン回転子31、第1繰出し回転子33、第1巻取り回転子35、第2繰出し回転子37および第2巻取り回転子39には、後述する歯車列43を介して、送りモーター41の回転が伝達される(
図6および
図7参照)。
【0014】
送りモーター41は、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33、第1巻取り回転子35、第2繰出し回転子37および第2巻取り回転子39を回転させる駆動源である。送りモーター41は、時計回りおよび反時計回りに回転可能である(
図6および
図7参照)。なお、送りモーター41が時計回りに回転するとは、送りモーター41の出力軸が時計回りに回転することを意味する。同様に、送りモーター41が反時計回りに回転するとは、送りモーター41の出力軸が反時計回りに回転することを意味する。また、時計回りとは、+Z方向から見たときの時計回りを意味する。同様に、反時計回りとは、+Z方向から見たときの反時計回りを意味する。
【0015】
カートリッジ装着部11と装置側テープ排出口9との間には、カッター45が設けられている。カッター45は、第1テープ213或いは第2テープ313を切断する。カッター45は、図示省略したカッターモーターを駆動源として、切断動作を行う。
【0016】
図4に示すように、カートリッジ装着部11にテープカートリッジ201が装着されると、ヘッド部15が第1ヘッド挿通孔219に挿入される。また、プラテン軸21、第1繰出し軸23および第1巻取り軸25が、それぞれ、第1プラテンローラー205、第1繰出しコア207および第1巻取りコア209に挿入される。これにより、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33および第1巻取り回転子35が、それぞれ、第1プラテンローラー205、第1繰出しコア207および第1巻取りコア209と係合する。
【0017】
テープカートリッジ201がカートリッジ装着部11に装着された後、装着部カバー5が閉められると、ヘッド移動機構47(
図6および
図7参照)により、サーマルヘッド17がプラテン軸21に向けて移動する。これにより、サーマルヘッド17と第1プラテンローラー205との間に、第1テープ213および第1インクリボン217が挟持される。
【0018】
この状態で、送りモーター41が時計回りに回転すると、送りモーター41の回転が歯車列43を介してプラテン回転子31および第1巻取り回転子35に伝達され、第1プラテンローラー205が時計回りに回転し、第1巻取りコア209が反時計回りに回転する(
図6参照)。これにより、第1テープ213が正送り、すなわち装置側テープ排出口9に向けて送られると共に、第1インクリボン217が第1繰出しコア207から第1巻取りコア209に向けて送られ、第1巻取りコア209に巻き取られる。
【0019】
また、送りモーター41が反時計回りに回転すると、送りモーター41の回転が歯車列43を介してプラテン回転子31および第1繰出し回転子33に伝達され、第1プラテンローラー205が反時計回りに回転し、第1繰出しコア207が反時計回りに回転する(
図7参照)。これにより、第1テープ213が逆送り、すなわち装置側テープ排出口9に向かう方向とは逆方向に送られると共に、第1インクリボン217が第1巻取りコア209から第1繰出しコア207に向けて送られ、第1繰出しコア207に巻き戻される。
【0020】
テープ印刷装置1は、ユーザーから印刷実行の指示を受け付けると、送りモーター41を時計回りに回転させて第1プラテンローラー205により第1テープ213および第1インクリボン217を送りつつ、サーマルヘッド17を発熱させることで、印刷データに基づく印刷画像を第1テープ213に印刷する。なお、印刷データは、例えば、テープ印刷装置1への文字等の入力操作により生成されたものでもよく、テープ印刷装置1がパソコンなどの外部装置から受信したものでもよい。印刷終了後、テープ印刷装置1は、カッター45により、第1テープ213の印刷済み部分を切り離す。その後、テープ印刷装置1は、送りモーター41を反時計回りに回転させることにより、第1テープ213の先端が、サーマルヘッド17と第1プラテンローラー205との挟持位置の近傍にくるまで、第1テープ213を引き戻す。これにより、次に印刷される第1テープ213において、第1テープ213の長さ方向前方に生じる余白を、短くすることができる。
【0021】
図5に示すように、カートリッジ装着部11にリボンカートリッジ301が装着されると、ヘッド部15が第2ヘッド挿通孔319に挿入される。また、プラテン軸21、第2繰出し軸27および第2巻取り軸29が、それぞれ、第2プラテンローラー305、第2繰出しコア307および第2巻取りコア309に挿入される。これにより、プラテン回転子31、第2繰出し回転子37および第2巻取り回転子39が、それぞれ、第2プラテンローラー305、第2繰出しコア307および第2巻取りコア309と係合する。
【0022】
リボンカートリッジ301がカートリッジ装着部11に装着された後、装着部カバー5が閉められると、ヘッド移動機構47により、サーマルヘッド17がプラテン軸21に向けて移動する。これにより、サーマルヘッド17と第2プラテンローラー305との間に、第2テープ313および第2インクリボン317が挟持される。
【0023】
この状態で、送りモーター41が時計回りに回転すると、送りモーター41の回転が歯車列43を介してプラテン回転子31および第2巻取り回転子39に伝達され、第2プラテンローラー305が時計回りに回転し、第2巻取りコア309が反時計回りに回転する(
図6参照)。これにより、第2テープ313が正送り、すなわち装置側テープ排出口9に向けて送られると共に、第2インクリボン317が第2繰出しコア307から第2巻取りコア309に向けて送られ、第2巻取りコア309に巻き取られる。
【0024】
また、送りモーター41が反時計回りに回転すると、送りモーター41の回転が歯車列43を介してプラテン回転子31および第2繰出し回転子37に伝達され、第2プラテンローラー305が反時計回りに回転し、第2繰出しコア307が反時計回りに回転する(
図7参照)。これにより、第2テープ313が逆送り、すなわち装置側テープ排出口9に向かう方向とは逆方向に送られると共に、第2インクリボン317が第2巻取りコア309から第2繰出しコア307に向けて送られ、第2繰出しコア307に巻き戻される。
【0025】
テープ印刷装置1は、ユーザーから印刷実行の指示を受け付けると、送りモーター41を時計回りに回転させて第2プラテンローラー305により第2テープ313および第2インクリボン317を送りつつ、サーマルヘッド17を発熱させることで、印刷データに基づく印刷画像を第2テープ313に印刷する。印刷終了後、テープ印刷装置1は、カッター45により、第2テープ313の印刷済み部分を切り離す。その後、テープ印刷装置1は、送りモーター41を反時計回りに回転させることにより、第2テープ313の先端が、サーマルヘッド17と第2プラテンローラー305との挟持位置の近傍にくるまで、第2テープ313を引き戻す。これにより、次に印刷される第2テープ313において、第2テープ313の長さ方向前方に生じる余白を、短くすることができる。
【0026】
[リボン巻取り機構]
図6および
図7に基づいて、テープ印刷装置1が備えるリボン巻取り機構30について説明する。なお、
図6では、送りモーター41が時計回りに回転したときに、送りモーター41、プラテン回転子31、第1巻取り回転子35、第2巻取り回転子39、および歯車列43を構成する各歯車が回転する方向を、矢印で示す。
図7では、送りモーター41が反時計回りに回転したときに、送りモーター41、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33、第2繰出し回転子37、および歯車列43を構成する各歯車が回転する方向を、矢印で示す。また、
図6および
図7では、送りモーター41、送り第1歯車63、送り第2歯車65および中継第1歯車81を、それらよりも-Z方向に設けられた構造を図示するために、二点鎖線で仮想的に示している。
【0027】
リボン巻取り機構30は、上記したプラテン回転子31、第1繰出し回転子33、第1巻取り回転子35、第2繰出し回転子37、第2巻取り回転子39および送りモーター41のほか、歯車列43と、クラッチ駆動機構51と、これらを支持するフレーム53とを備えている。
【0028】
歯車列43は、送りモーター41の回転を、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33、第1巻取り回転子35、第2繰出し回転子37および第2巻取り回転子39に伝達する。歯車列43は、送り歯車列55と、中継歯車列57と、繰出し側歯車列59と、巻取り側歯車列61とを備えている。
【0029】
送り歯車列55は、送りモーター41の回転を、プラテン回転子31および中継歯車列57に伝達する。送り歯車列55は、送り第1歯車63と、送り第2歯車65と、送り第3歯車67と、送り第4歯車69とを備えている。
【0030】
送り第1歯車63は、2段歯車であり、送り第1大径部71と、送り第1小径部(図示省略)とを備えている。送り第1大径部71は、送りモーター41の出力軸に設けられた出力歯車(図示省略)と噛み合っている。送り第1小径部は、送り第1大径部71よりも径が小さく、送り第1大径部71の-Z方向の面に送り第1大径部71と一体に形成されている。
【0031】
送り第2歯車65は、2段歯車であり、送り第2大径部73と、送り第2小径部75(
図12参照)とを備えている。送り第2大径部73は、送り第1小径部と噛み合っている。送り第2小径部75は、送り第2大径部73よりも径が小さく、送り第2大径部73の-Z方向の面に送り第2大径部73と一体に形成されている。より具体的には、送り第2小径部75は、送り第2大径部73の-Z方向の面から略円筒状に突出している。
【0032】
送り第3歯車67は、2段歯車であり、送り第3大径部77と、送り第3小径部79とを備えている。送り第3大径部77は、送り第2小径部75と噛み合っている。送り第3小径部79は、送り第3大径部77よりも径が小さく、送り第3大径部77の+Z方向の面に送り第3大径部77と一体に形成されている。
【0033】
送り第4歯車69は、送り第3小径部79と噛み合っており、プラテン回転子31と共にプラテン軸21に回転可能に設けられている。送り第4歯車69が回転することで、プラテン回転子31が送り第4歯車69と同方向に回転する。
【0034】
中継歯車列57は、送り歯車列55を介して入力された送りモーター41の回転を、繰出し側歯車列59および巻取り側歯車列61に伝達する。中継歯車列57は、中継第1歯車81と、中継第2歯車(図示省略)とを備えている。
【0035】
中継第1歯車81は、3段歯車であり、中継第1大径部83と、中継第1中径部85と、中継第1小径部(図示省略)とを備えている。中継第1大径部83は、送り第2大径部73と噛み合っている。中継第1中径部85は、中継第1大径部83よりも径が小さく、中継第1大径部83の+Z方向の面に中継第1大径部83と一体に形成されている。中継第1小径部は、中継第1中径部85よりも径が小さく、中継第1大径部83の-Z方向の面に中継第1大径部83と一体に形成されている。中継第2歯車は、後述するワンウェイクラッチ87と同軸上に設けれ、中継第1中径部85と噛み合っている。
【0036】
繰出し側歯車列59は、
図6に示すように、送りモーター41が時計回りに回転したときには、中継歯車列57を介して入力した送りモーター41の回転を、第1繰出し回転子33および第2繰出し回転子37に伝達しない。一方、繰出し側歯車列59は、
図7に示すように、送りモーター41が反時計回りに回転したときには、中継歯車列57を介して入力した送りモーター41の回転を、第1繰出し回転子33および第2繰出し回転子37に伝達する。
【0037】
繰出し側歯車列59は、ワンウェイクラッチ87と、繰出し側第1歯車89と、繰出し側第2歯車91と、繰出し側第3歯車93とを備えている。ワンウェイクラッチ87は、中継第2歯車と同軸上に設けられている。ワンウェイクラッチ87は、送りモーター41が時計回りに回転したときには、繰出し側第1歯車89を介して入力された送りモーター41の回転を、繰出し側第1歯車89に伝達しない。一方、ワンウェイクラッチ87は、送りモーター41が反時計回りに回転したときには、繰出し側第1歯車89を介して入力された送りモーター41の回転を、繰出し側第1歯車89に伝達する。
【0038】
繰出し側第1歯車89には、ワンウェイクラッチ87を介して、送りモーター41の回転が伝達される。繰出し側第2歯車91は、繰出し側第1歯車89と噛み合っており、第1繰出し回転子33と共に第1繰出し軸23に回転可能に設けられている。繰出し側第2歯車91が回転することで、第1繰出し回転子33が繰出し側第2歯車91と同方向に回転する。繰出し側第2歯車91は、繰出し側第1歯車89と噛み合っており、第2繰出し回転子37と共に第2繰出し軸27に回転可能に設けられている。繰出し側第3歯車93が回転することで、第2繰出し回転子37が繰出し側第3歯車93と同方向に回転する。
【0039】
巻取り側歯車列61は、
図6に示すように、送りモーター41が時計回りに回転したときには、中継歯車列57を介して入力した送りモーター41の回転を、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39に伝達する。一方、巻取り側歯車列61は、
図7に示すように、送りモーター41が反時計回りに回転したときには、中継歯車列57を介して入力した送りモーター41の回転を、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39に伝達しない。
【0040】
巻取り側歯車列61は、クラッチ歯車95と、歯車支持部材97と、第1巻取り側歯車列99と、中間歯車101と、第2巻取り側歯車列103とを備えている。
【0041】
クラッチ歯車95は、歯車支持部材97に回転可能に支持され、中継第1小径部と噛み合っている。クラッチ歯車95は、第1巻取り側歯車列99の巻取り側第1歯車113と噛み合う位置(
図6参照)と、巻取り側第1歯車113から外れた位置(
図7参照)とに移動可能である。
【0042】
歯車支持部材97は、フレーム53から+Z方向に突出した回転軸105を中心として、回転可能に設けられている。なお、回転軸105には、上記の中継第1歯車81も回転可能に設けられている。歯車支持部材97は、支持したクラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113と噛み合う噛合位置(
図6参照)と、支持したクラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れる非噛合位置(
図7参照)とに回転可能である。
【0043】
歯車支持部材97は、
図6に示すように、送りモーター41が時計回りに回転すると、後述するクラッチ駆動機構51により、噛合位置へ反時計回りに回転する。これにより、クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113と噛み合うため、送りモーター41の回転が第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39に伝達され、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39が回転する。一方、歯車支持部材97は、
図7に示すように、送りモーター41が反時計回りに回転すると、クラッチ駆動機構51により、非噛合位置へ時計回りに回転する。これにより、クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れるため、送りモーター41の回転が第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39に伝達されず、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39が回転しない。
【0044】
歯車支持部材97は、略扇形の板状に形成されている。歯車支持部材97には、+X方向の端部に、軸挿通穴107(
図13参照)が設けられている。軸挿通穴107には、回転軸105が挿通している。歯車支持部材97の-X方向の端部には、支持側歯部109が設けられている。支持側歯部109は、後述する駆動部材137の駆動側歯部151と噛み合っている。軸挿通穴107と支持側歯部109との間には、歯車支軸111が設けられている。歯車支軸111は、クラッチ歯車95を、回転可能に支持している。なお、歯車支持部材97の-Z方向の面には、位置規制凹部(図示省略)が設けられている。位置規制凹部は、フレーム53から+Z方向に突出した位置規制凸部(図示省略)と係合している。歯車支持部材97は、噛合位置から時計回りに回転した後、位置規制凹部の内周面が位置規制凸部に突き当たることで、非噛合位置に位置規制される。
【0045】
第1巻取り側歯車列99は、クラッチ歯車95を介して入力した送りモーター41の回転を、第1巻取り回転子35に伝達する。第1巻取り側歯車列99は、巻取り側第1歯車113と、巻取り側第2歯車115と、巻取り側第3歯車117と、巻取り側第4歯車119と、第1可動歯車121とを備えている。巻取り側第1歯車113は、クラッチ歯車95と噛合い可能に構成されている。巻取り側第2歯車115は、巻取り側第1歯車113と噛み合っている。巻取り側第3歯車117および巻取り側第4歯車119は、第1巻取り回転子35と共に第1巻取り軸25に回転可能に設けられている。巻取り側第3歯車117は、巻取り側第2歯車115と噛み合っている。巻取り側第4歯車119は、巻取り側第3歯車117と第1巻取り回転子35との間に設けられている。
【0046】
図8に示すように、巻取り側第3歯車117と巻取り側第4歯車119とは、第1巻取りスリップばね123を介して連結されている。第1巻取りスリップばね123は、ねじりコイルばねにより構成されており、巻取り側第3歯車117が反時計回りに回転すると、巻取り側第4歯車119に対してスリップするように弾性変形することで、巻取り側第3歯車117から巻取り側第4歯車119に伝達されるトルクを制限する。巻取り側第4歯車119と第1巻取り回転子35とは、第2巻取りスリップばね125を介して連結されている。第2巻取りスリップばね125は、ねじりコイルばねにより構成されており、巻取り側第4歯車119が反時計回りに回転すると、第1巻取り回転子35に対してスリップするように弾性変形することで、巻取り側第4歯車119から第1巻取り回転子35に伝達されるトルクを制限する。なお、第2巻取りスリップばね125が伝達するトルクは、第1巻取りスリップばね123が伝達するトルクよりも大きい。
【0047】
第1可動歯車121は、図示省略した第1巻取りトルク切替機構により、巻取り側第4歯車119に噛み合う位置と、巻取り側第4歯車119から外れた位置とに移動可能に構成されている。幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201がカートリッジ装着部11に装着された場合には、第1巻取りトルク切替機構により、第1可動歯車121が巻取り側第4歯車119に噛み合う位置に移動することで、第1巻取り回転子35に伝達されるトルクが大きくなる。一方、幅の狭い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201がカートリッジ装着部11に装着された場合には、第1巻取りトルク切替機構により、第1可動歯車121が巻取り側第4歯車119から外れた位置に移動することで、第1巻取り回転子35に伝達されるトルクが小さくなる。これにより、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合には、幅の狭い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合に比べ、第1インクリボン217の巻取りトルクを大きくすることができるため、幅の広い第1インクリボン217を適切に巻き取ることができる。
【0048】
中間歯車101は、第1巻取り側歯車列99の巻取り側第1歯車113と、第2巻取り側歯車列103の巻取り側第5歯車127との間に設けられている。なお、中間歯車101は、中継第2歯車およびワンウェイクラッチ87と同軸上に設けられている。
【0049】
第2巻取り側歯車列103は、中間歯車101を介して入力した送りモーター41の回転を、第2巻取り回転子39に伝達する。第2巻取り側歯車列103は、第1巻取り側歯車列99と同様に構成されている。すなわち、第2巻取り側歯車列103は、巻取り側第5歯車127と、巻取り側第6歯車129と、巻取り側第7歯車131と、巻取り側第8歯車133と、第2可動歯車135とを備えている。巻取り側第5歯車127は、中間歯車101と噛み合っている。巻取り側第6歯車129は、巻取り側第5歯車127と噛み合っている。巻取り側第7歯車131および巻取り側第8歯車133は、第2巻取り回転子39と共に第2巻取り軸29に回転可能に設けられている。巻取り側第7歯車131は、巻取り側第6歯車129と噛み合っている。巻取り側第8歯車133は、巻取り側第7歯車131と第2巻取り回転子39との間に設けられている。
【0050】
図示省略したが、巻取り側第7歯車131と巻取り側第8歯車133とは、第3巻取りスリップばねを介して連結されている。第3巻取りスリップばねは、ねじりコイルばねにより構成されており、巻取り側第7歯車131が反時計回りに回転すると、巻取り側第8歯車133に対してスリップするように弾性変形することで、巻取り側第7歯車131から巻取り側第8歯車133に伝達されるトルクを制限する。巻取り側第8歯車133と第2巻取り回転子39とは、第4巻取りスリップばねを介して連結されている。第4巻取りスリップばねは、ねじりコイルばねにより構成されており、巻取り側第4歯車119が反時計回りに回転すると、第2巻取り回転子39に対してスリップするように弾性変形することで、巻取り側第8歯車133から第2巻取り回転子39に伝達されるトルクを制限する。なお、第4巻取りスリップばねが伝達するトルクは、第3巻取りスリップばねが伝達するトルクよりも大きい。
【0051】
第2可動歯車135は、図示省略した第2巻取りトルク切替機構により、巻取り側第8歯車133に噛み合う位置と、巻取り側第8歯車133から外れた位置とに移動可能に構成されている。幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301がカートリッジ装着部11に装着された場合には、第2巻取りトルク切替機構により、第2可動歯車135が巻取り側第8歯車133に噛み合う位置に移動することで、第2巻取り回転子39に伝達されるトルクが大きくなる。一方、幅の狭い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301がカートリッジ装着部11に装着された場合には、第2巻取りトルク切替機構により、第2可動歯車135が巻取り側第8歯車133から外れた位置に移動することで、第2巻取り回転子39に伝達されるトルクが小さくなる。これにより、幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合には、幅の狭い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合に比べ、第2インクリボン317の巻取りトルクを大きくすることができるため、幅の広い第2インクリボン317を適切に巻き取ることができる。
【0052】
このように構成されたリボン巻取り機構30では、
図6に示すように、送りモーター41が時計回りに回転すると、送りモーター41の回転が、歯車列43を介して、プラテン回転子31、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39に伝達され、第1繰出し回転子33および第2繰出し回転子37には伝達されない。その結果、プラテン回転子31、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39が回転し、第1繰出し回転子33および第2繰出し回転子37は回転しない。一方、
図7に示すように、送りモーター41が反時計回りに回転すると、送りモーター41の回転が、歯車列43を介して、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33および第2繰出し回転子37に伝達され、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39には伝達されない。その結果、プラテン回転子31、第1繰出し回転子33および第2繰出し回転子37が回転し、第1巻取り回転子35および第2巻取り回転子39は回転しない。
【0053】
ここで、例として、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201がカートリッジ装着部11に装着された場合における、巻取り側歯車列61の各部の動きについて説明する。
【0054】
図6に示すように、送りモーター41が時計回りに回転している間、すなわち、第1インクリボン217が第1巻取りコア209へ巻き取られている間には、巻取り側第4歯車119が、第2巻取りスリップばね125を第1巻取り回転子35に対してスリップするように弾性変形させながら、反時計回りに回転する。そして、送りモーター41が時計回りの回転を停止した後、反時計回りの回転を開始するまでの間には、第2巻取りスリップばね125が弾性変形したままとなっている。このため、
図9に示すように、送りモーター41が反時計回りの回転を開始したときには、第2巻取りスリップばね125の弾性力が、巻取り側第1歯車113に対し、時計回りに回転させる力として伝達される。この巻取り側第1歯車113を時計回りに回転させる力は、クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れることを阻害する力、すなわち歯車支持部材97が噛合位置から非噛合位置へ回転することを阻害する力、として作用する。歯車支持部材97が噛合位置から非噛合位置へ回転することを阻害する力を、クラッチ阻害力という。なお、
図9では、送りモーター41が反時計回りの回転を開始したときに、第2巻取りスリップばね125の弾性力により各歯車に伝達される回転力の方向を、矢印で示す。
【0055】
本実施形態とは異なり、リボン巻取り機構30がクラッチ駆動機構51を備えていない構成では、送りモーター41が反時計回りへの回転を開始した直後、すなわち、第1インクリボン217の第1繰出しコア207への巻戻しを開始した直後には、クラッチ阻害力により、歯車支持部材97が噛合位置から非噛合位置へ回転できずに噛合位置に位置したままとなっている。すなわち、クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れずに巻取り側第1歯車113と噛み合ったままとなっている。これにより、送りモーター41の回転が巻取り側第4歯車119に伝達されることで、巻取り側第4歯車119が時計回りに回転する。巻取り側第4歯車119が時計回りにある程度、例えば30°回転すると、第2巻取りスリップばね125の弾性変形が解消される。その結果、第2巻取りスリップばね125の弾性力によるクラッチ阻害力も解消されるため、歯車支持部材97が噛合位置から非噛合位置へ回転し、クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れる。
【0056】
換言すれば、送りモーター41が反時計回りへの回転を開始した後、送りモーター41の回転が巻取り側第4歯車119に伝達されることで巻取り側第4歯車119が時計回りにある程度回転するまでは、第2巻取りスリップばね125の弾性変形が解消されない。このため、送りモーター41が反時計回りへの回転を開始してから巻取り側第4歯車119が時計回りにある程度回転するまでの間、第2巻取りスリップばね125の弾性力により第1インクリボン217に過度なバックテンションが掛かった状態で、第1インクリボン217が巻き戻されることになる。第1インクリボン217に過度なバックテンションが掛かった状態で第1インクリボン217が巻き戻されると、第1繰出しコア207と第1巻取りコア209との間で第1インクリボン217の送りをガイドするリボンガイドが傾斜するなどの理由により、第1インクリボン217にシワが生じるおそれがある。その結果、第1インクリボン217の巻戻し終了後の印刷において、第1テープ213に印刷された印刷画像に印字シワが生じるおそれがある。
【0057】
これに対し、本実施形態のテープ印刷装置1は、クラッチ駆動機構51を備えたことで、送りモーター41が反時計回りへの回転を開始すると、巻取り側第4歯車119が時計回りにある程度回転するのを待つことなく、クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れるようになっている。クラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113から外れると、巻取り側第1歯車113から巻取り側第4歯車119までの各歯車が自由に回転可能となるため、第2巻取りスリップばね125の弾性力により、巻取り側第4歯車119が時計回りに回転し、第2巻取りスリップばね125の弾性変形が解消される。その結果、送りモーター41が反時計回りへの回転を開始すると、即座に第2巻取りスリップばね125の弾性変形が解消されるため、第1インクリボン217に過度なバックテンションが掛かった状態で第1インクリボン217が巻き戻されることが、抑制される。したがって、第1インクリボン217の巻戻し終了後の印刷において、第1テープ213に印刷された印刷画像に印字シワが生じることを抑制することができる。そこで、次に、歯車支持部材97を噛合位置と非噛合位置とに移動させるクラッチ駆動機構51について説明する。
【0058】
[クラッチ駆動機構]
図10ないし
図12に示すように、クラッチ駆動機構51は、上記の送り第2歯車65と、駆動部材137と、クラッチ軸部材139と、第1クラッチスリップばね141と、第2クラッチスリップばね143とを備えている。
【0059】
送り第2歯車65は、送りモーター41が時計回りに回転したときには、時計回りに回転し(
図6参照)、送りモーター41が反時計回りに回転したときには、反時計回りに回転する(
図7参照)。送り第2歯車65の-Z方向の面には、歯車側係合凹部145が設けられている(
図12参照)。歯車側係合凹部145には、第1クラッチスリップばね141の+Z方向の端部である第1ばね端部147が係合している。なお、歯車側係合凹部145は、送り第2歯車65の-Z方向の面から略円筒状に突出した送り第2小径部75の内側に設けられている。
【0060】
駆動部材137は、送り第2歯車65と同軸上で回転可能に設けられており、第1クラッチスリップばね141、クラッチ軸部材139および第2クラッチスリップばね143を介して、送り第2歯車65と連結されている。駆動部材137は、歯車支持部材97と噛み合っている。駆動部材137は、時計回りに回転することで、歯車支持部材97を噛合位置に回転させ、反時計回りに回転することで、歯車支持部材97を非噛合位置に回転させる。
【0061】
駆動部材137は、駆動円筒部149と、駆動側歯部151とを備えている。駆動円筒部149は、略有底円筒状に形成されている。駆動円筒部149の底面には、駆動側係合凹部153が設けられている(
図11参照)。駆動側係合凹部153には、第2クラッチスリップばね143の-Z方向の端部である第2ばね端部155が係合している。駆動側歯部151は、駆動円筒部149の周面のうち周方向の一部に設けられている。駆動側歯部151は、歯車支持部材97の支持側歯部109と噛み合っている。
【0062】
クラッチ軸部材139は、略円筒状に形成されており、送り第2歯車65と駆動部材137との間に位置して、送り第2歯車65および駆動部材137と同軸上で回転可能に設けられている。クラッチ軸部材139の軸方向略中間部には、フランジ部157が設けられている。フランジ部157よりも+Z方向の部分を、第1ばね取付部159といい、フランジ部157よりも-Z方向の部分を、第2ばね取付部161という。第1ばね取付部159は、送り第2小径部75の内部に挿入され、第2ばね取付部161は、駆動円筒部149に挿入されている。
【0063】
第1クラッチスリップばね141は、送り第2歯車65とクラッチ軸部材139とを連結している。すなわち、第1クラッチスリップばね141は、ねじりコイルばねにより構成されており、第1ばね取付部159に外嵌めされていると共に、第1ばね端部147が歯車側係合凹部145と係合している。第1クラッチスリップばね141は、送り第2歯車65が時計回りに回転すると、クラッチ軸部材139に対してスリップするように弾性変形することで、送り第2歯車65からクラッチ軸部材139に伝達されるトルクを、第1トルクに制限する。
【0064】
第2クラッチスリップばね143は、クラッチ軸部材139と駆動部材137とを連結している。すなわち、第2クラッチスリップばね143は、ねじりコイルばねにより構成されており、第2ばね取付部161に外嵌めされていると共に、第2ばね端部155が駆動側係合凹部153と係合している。第2クラッチスリップばね143は、クラッチ軸部材139が反時計回りに回転すると、クラッチ軸部材139に対してスリップするように弾性変形することで、クラッチ軸部材139から駆動部材137に伝達されるトルクを、第2トルクに制限する。
【0065】
図13および
図14を参照して、送りモーター41が時計回りに回転したときのクラッチ駆動機構51の各部の動きと、送りモーター41が反時計回りに回転したときのクラッチ駆動機構51の各部の動きとについて説明する。なお、
図13では、送りモーター41が時計回りに回転したときに、送り第2歯車65、駆動部材137および歯車支持部材97が回転する方向を、矢印で示す。
図14では、送りモーター41が反時計回りに回転したときに、送り第2歯車65、駆動部材137および歯車支持部材97が回転する方向を、矢印で示す。
【0066】
図13に示すように、送りモーター41が時計回りに回転したときには、送り第2歯車65が時計回りに回転するため、送り第2歯車65と連結された駆動部材137も、時計回りに回転する。これにより、クラッチ駆動機構51は、駆動部材137と噛み合った歯車支持部材97を、噛合位置へ反時計回りに回転させる。その結果、歯車支持部材97に支持されたクラッチ歯車95を巻取り側第1歯車113と噛み合わせることができる。駆動部材137は、歯車支持部材97が噛合位置に回転するまで、すなわちクラッチ歯車95が巻取り側第1歯車113と噛み合うまで、時計回りに回転する。駆動部材137は、歯車支持部材97が噛合位置まで回転すると、回転を停止する。送り第2歯車65は、歯車支持部材97が噛合位置に回転した後も、第1クラッチスリップばね141がクラッチ軸部材139に対してスリップすることで、時計回りに回転し続ける。
【0067】
一方、
図14に示すように、送りモーター41が反時計回りに回転したときには、送り第2歯車65が反時計回りに回転するため、送り第2歯車65と連結された駆動部材137も、反時計回りに回転する。これにより、クラッチ駆動機構51は、駆動部材137と噛み合った歯車支持部材97を、非噛合位置へ時計回りに回転させる。その結果、歯車支持部材97に支持されたクラッチ歯車95を巻取り側第1歯車113から外すことができる。駆動部材137は、歯車支持部材97が非噛合位置に回転するまで、すなわち上述したように歯車支持部材97に設けられた位置規制凹部の内周面が位置規制凸部に突き当たるまで、反時計回りに回転する。駆動部材137は、歯車支持部材97が非噛合位置まで回転すると、回転を停止する。送り第2歯車65は、歯車支持部材97が非噛合位置に回転した後も、第2クラッチスリップばね143がクラッチ軸部材139に対してスリップすることで、反時計回りに回転し続ける。例えば、第1インクリボン217の巻戻し量が6mmの場合、最初の2mmが巻き戻される間に、歯車支持部材97が非噛合位置まで回転し、残りの4mmが巻き戻される間には、第2クラッチスリップばね143がクラッチ軸部材139に対してスリップする。
【0068】
なお、歯車支持部材97の回転半径r
1は、駆動部材137の回転半径r
2よりも大きい(
図9参照)。このため、歯車支持部材97を回転させるトルクを、駆動部材137を回転させるトルクよりも大きくすることができる。したがって、駆動部材137を回転させるトルクがさほど大きくなくても、クラッチ歯車95を巻取り側第1歯車113から外すために必要なトルクを、歯車支持部材97に作用させることができる。歯車支持部材97の回転半径r
1は、駆動部材137の回転半径r
2の2倍以上であることが好ましく、3倍以上であることがより好ましい。本実施形態では、歯車支持部材97の回転半径r
1は、駆動部材137の回転半径r
2の略4倍である。なお、歯車支持部材97の回転半径r
1とは、歯車支持部材97の回転中心から、歯車支持部材97と駆動部材137との噛合い箇所までの寸法を意味する。駆動部材137の回転半径r
2とは、駆動部材137の回転中心から、駆動部材137と歯車支持部材97との噛合い箇所までの寸法を意味する。
【0069】
ここで、送りモーター41が時計回りに回転するとき、すなわち第1テープ213の正送りおよび第1インクリボン217の第1巻取りコア209への巻取りが行われるときには、第1テープ213および第1インクリボン217の送り量が多く、送り速度も速いため、送りモーター41の負担が大きい。このため、送りモーター41に対するクラッチ駆動機構51の負荷を軽減すべく、送り第2歯車65から駆動部材137へ比較的小さなトルクが伝達されることが要求される。一方、送りモーター41が反時計回りに回転するとき、すなわち第1テープ213の逆送りおよび第1インクリボン217の第1繰出しコア207への巻戻しが行われるときには、第2巻取りスリップばね125の弾性力による上記のクラッチ阻害力に抗して、歯車支持部材97を噛合位置から非噛合位置へ回転させるべく、送り第2歯車65から駆動部材137へ比較的大きなトルクが伝達されることが要求される。
【0070】
これらの要求に応えるべく、送りモーター41が時計回りに回転したときに第1クラッチスリップばね141が伝達する第1トルクは、送りモーター41が反時計回りに回転したときに第2クラッチスリップばね143が伝達する第2トルクよりも小さくなっている。これにより、送りモーター41が時計回りに回転したときには、送り第2歯車65から駆動部材137へ比較的小さなトルクが伝達されるため、送りモーター41に掛かる負荷を軽減することができ、送りモーター41に脱調などの不具合が生じることを抑制することができる。
【0071】
一方、送りモーター41が反時計回りに回転したときには、送り第2歯車65から駆動部材137へ比較的大きなトルクが伝達されるため、クラッチ歯車95を巻取り側第1歯車113から外すのに必要なトルクで、駆動部材137を回転させることができる。なお、このとき、第1クラッチスリップばね141は、クラッチ軸部材139に対して締め付けるように弾性変形するため、送り第2歯車65から駆動部材137へのトルクの伝達が、第1クラッチスリップばね141により損なわれることが抑制される。
【0072】
以上のように、本実施形態のリボン巻取り機構30によれば、送りモーター41が反時計回りに回転したときに、クラッチ駆動機構51が歯車支持部材97をクラッチ阻害力に抗して噛合位置から非噛合位置に回転させることで、クラッチ歯車95を巻取り側第1歯車113から強制的に外すことができる。これにより、巻取り側歯車列61を構成する各歯車が自由に回転可能となり、第2巻取りスリップばね125の弾性変形が解消される。したがって、第2巻取りスリップばね125の弾性力により第1インクリボン217に過度なテンションが掛かった状態で、第1インクリボン217が巻き戻されることを、抑制することができる。なお、第2巻取りスリップばね125の弾性変形が解消された後も、第1巻取り側歯車列99を構成する各歯車の回転負荷等により、第1インクリボン217に若干のテンションが掛かっているため、第1インクリボン217を第1繰出しコア207に適切に巻き戻すことができる。
【0073】
ここまでは、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合について説明したが、リボン巻取り機構30は、この場合に限定されず、上記の作用効果を奏する。すなわち、リボン巻取り機構30は、幅の狭い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合、幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合、および幅の狭い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合、のいずれにおいても、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合と同様の作用効果を奏する。幅の狭い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合、幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合、および幅の狭い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合には、それぞれ、第1巻取りスリップばね123、第4巻取りスリップばねおよび第3巻取りスリップばねの弾性力が、クラッチ阻害力として作用する。これに対し、本実施形態のリボン巻取り機構30によれば、送りモーター41が反時計回りに回転したときに、クラッチ駆動機構51が歯車支持部材97をクラッチ阻害力に抗して噛合位置から非噛合位置に回転させることで、クラッチ歯車95を巻取り側第1歯車113から強制的に外すことができる。
【0074】
なお、上述したように、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合には、幅の狭い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合に比べ、第1インクリボン217の巻取りトルクが大きい。このため、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合には、幅の狭い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合に比べ、クラッチ阻害力が大きくなる。ゆえに、本実施形態のリボン巻取り機構30は、幅の広い第1インクリボン217を収容したテープカートリッジ201が装着された場合に、特に有用である。同様に、幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合には、幅の狭い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合に比べ、第2インクリボン317の巻取りトルクが大きい。このため、幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合には、幅の狭い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合に比べ、クラッチ阻害力が大きくなる。ゆえに、本実施形態のリボン巻取り機構30は、幅の広い第2インクリボン317を収容したリボンカートリッジ301が装着された場合に、特に有用である。
【0075】
[その他の変形例]
上記の実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、上記の実施形態は、上述したほか、以下のような形態に変更することができる。また、実施形態や変形例を、それぞれ組み合わせた構成でもよい。
【0076】
歯車支持部材97は、噛合位置と非噛合位置とに回転可能な構成に限定されず、噛合位置と非噛合位置とに移動可能な構成であればよい。例えば、歯車支持部材97は、噛合位置と非噛合位置とに平行移動可能な構成でもよい。また、歯車支持部材97は、駆動部材137と噛み合った構成に限定されず、駆動部材137と係合した構成であればよい。
【0077】
駆動部材137は、クラッチ軸部材139を介して、送り第2歯車65のように送り歯車列55を構成する歯車と連結された構成に限定されず、送り歯車列55を構成する歯車以外の歯車と連結された構成でもよい。また、駆動部材137は、クラッチ軸部材139を介して歯車と連結されることで、駆動される構成に限定されず、例えば、歯車と噛み合うことで、駆動される構成でもよい。さらに、駆動部材137は、送りモーター41を駆動源とする構成に限定されず、例えば、送りモーター41とは別のモーターを駆動源とする構成でもよい。
【0078】
リボン巻取り機構30は、第1インクリボン217の巻取りトルクを切り替えるために、第1巻取り回転子35に対して第1巻取りスリップばね123と第2巻取りスリップばね125とを備えた構成に限定されず、第1巻取り回転子35に対して1つの巻取りスリップばねを備えた構成でもよい。同様に、リボン巻取り機構30は、第2インクリボン317の巻取りトルクを切り替えるために、第2巻取り回転子39に対して第3巻取りスリップばねと第4巻取りスリップばねとを備えた構成に限定されず、第2巻取り回転子39に対して1つの巻取りスリップばねを備えた構成でもよい。
【0079】
カートリッジ装着部11は、テープカートリッジ201およびリボンカートリッジ301が択一的に装着可能な構成に限定されず、テープカートリッジ201のみが装着可能な構成でもよく、リボンカートリッジ301のみが装着可能な構成でもよい。
【0080】
[付記]
以下、リボン巻取り機構およびテープ印刷装置について付記する。
リボン巻取り機構は、インクリボンが巻回された繰出しコアと係合する繰出し回転子と、繰出しコアから繰り出されたインクリボンが巻き取られる巻取りコアと係合する巻取り回転子と、第1回転方向と、第1回転方向とは反対の第2回転方向と、に回転可能な送りモーターと、巻取り側第1歯車と、巻取り側第1歯車と噛み合う位置および巻取り側第1歯車から外れた位置とに移動可能なクラッチ歯車と、を有し、送りモーターが第1回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合うことで、巻取りコアにインクリボンが巻き取られるように、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達し、送りモーターが第2回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れることで、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達しない巻取り側歯車列と、送りモーターが第1回転方向に回転したときに、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達せず、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、繰出しコアにインクリボンが巻き戻されるように、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達する繰出し側歯車列と、クラッチ歯車を回転可能に支持し、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合う噛合位置と、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れる非噛合位置と、に移動可能な歯車支持部材と、送りモーターが第2回転方向への回転を開始したときに、歯車支持部材に対し、噛合位置から非噛合位置へ移動することを阻害するクラッチ阻害力を作用させるクラッチ阻害ばねと、歯車支持部材と係合した駆動部材、を有し、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、クラッチ阻害力に抗して、歯車支持部材を非噛合位置に移動させるクラッチ駆動機構と、を備えた。
【0081】
この構成によれば、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、クラッチ駆動機構が、歯車支持部材を非噛合位置に移動させることで、クラッチ歯車を巻取り側第1歯車から強制的に外すことができる。これにより、巻取り側歯車列を構成する各歯車が自由に回転可能となり、巻取りスリップばねの弾性変形が解消される。したがって、巻取りスリップばねの弾性力によりインクリボンに過度なテンションが掛かった状態で、インクリボンが巻き戻されることを、抑制することができる。
なお、第1インクリボン217は、「インクリボン」の一例である。第2インクリボン317は、「インクリボン」の一例である。第1繰出しコア207は、「繰出しコア」の一例である。第2繰出しコア307は、「繰出しコア」の一例である。第1繰出し回転子33は、「繰出し回転子」の一例である。第2繰出し回転子37は、「繰出し回転子」の一例である。第1巻取りコア209は、「巻取りコア」の一例である。第2巻取りコア309は、「巻取りコア」の一例である。第1巻取り回転子35は、「巻取り回転子」の一例である。第2巻取り回転子39は、「巻取り回転子」の一例である。時計回りは、「第1回転方向」の一例である。反時計回りは、「第2回転方向」の一例である。第1巻取りスリップばね123は、「クラッチ阻害ばね」の一例である。第2巻取りスリップばね125は、「クラッチ阻害ばね」の一例である。第3巻取りスリップばねは、「クラッチ阻害ばね」の一例である。第4巻取りスリップばねは、「クラッチ阻害ばね」の一例である。
【0082】
この場合、歯車支持部材は、支持側歯部を有し、駆動部材は、支持側歯部と噛み合った駆動側歯部、を有し、駆動部材は、送りモーターが第1回転方向に回転したときに、第1駆動方向に回転することで、歯車支持部材を噛合位置に回転させ、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、第1駆動方向とは逆の第2駆動方向に回転することで、歯車支持部材を非噛合位置に回転させることが好ましい。
【0083】
この構成によれば、駆動部材が第1駆動方向に回転することで、歯車支持部材を噛合位置に回転させ、歯車支持部材に支持されたクラッチ歯車を巻取り側第1歯車と噛み合わせることができる。また、駆動部材が第2駆動方向に回転することで、歯車支持部材を非噛合位置に回転させ、歯車支持部材に支持されたクラッチ歯車を巻取り側第1歯車から外すことができる。
なお、時計回りは、「第1駆動方向」の一例である。反時計回りは、「第2駆動方向」の一例である。第1駆動方向は、第1回転方向と同じ方向でもよく、異なる方向でもよい。同様に、第2駆動方向は、第2回転方向と同じ方向でもよく、異なる方向でもよい。
【0084】
この場合、歯車支持部材の回転半径は、駆動部材の回転半径よりも大きいことが好ましい。
【0085】
この構成によれば、歯車支持部材を回転させるトルクを、駆動部材を回転させるトルクよりも大きくすることができる。したがって、駆動部材を回転させるトルクがさほど大きくなくても、クラッチ歯車を巻取り側第1歯車から外すために必要なトルクを、歯車支持部材に作用させることができる。
【0086】
この場合、クラッチ駆動機構は、送りモーターが第1回転方向に回転したときに、第1駆動方向に回転し、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、第2駆動方向に回転する入力歯車と、入力歯車と駆動部材との間で、入力歯車および駆動部材と同軸上に設けられたクラッチ軸部材と、入力歯車とクラッチ軸部材とを連結し、入力歯車が第1駆動方向に回転したときに、クラッチ軸部材に対してスリップすることで、入力歯車からクラッチ軸部材に伝達されるトルクを制限する第1クラッチスリップばねと、クラッチ軸部材と駆動部材とを連結し、クラッチ軸部材が第2駆動方向に回転したときに、クラッチ軸部材に対してスリップすることで、クラッチ軸部材から駆動部材に伝達されるトルクを制限する第2クラッチスリップばねと、を有することが好ましい。
【0087】
この構成によれば、入力歯車が第1駆動方向に回転したときに、第1クラッチスリップばねがクラッチ軸部材に対してスリップする。このため、入力歯車は、歯車支持部材が噛合位置に回転した後も、第1駆動方向に回転し続ける。また、入力歯車が第2駆動方向に回転したときに、第2クラッチスリップばねがクラッチ軸部材に対してスリップする。このため、入力歯車は、歯車支持部材が非噛合位置に回転した後も、第2駆動方向に回転し続ける。
なお、送り第2歯車は、「入力歯車」の一例である。
【0088】
この場合、第1クラッチスリップばねは、入力歯車からクラッチ軸部材に伝達されるトルクを、第1トルクに制限し、第2クラッチスリップばねは、クラッチ軸部材から駆動部材に伝達されるトルクを、第1トルクよりも大きい第2トルクに制限することが好ましい。
【0089】
この構成によれば、送りモーターが第1回転方向に回転するときには、入力歯車から駆動部材へ比較的小さなトルクが伝達されるため、送りモーターに掛かる負荷を軽減することができる。一方、送りモーターが第2回転方向に回転するときには、入力歯車から駆動部材へ比較的大きなトルクが伝達されるため、クラッチ歯車を巻取り側第1歯車から外すのに必要なトルクで、駆動部材を回転させることができる。
【0090】
この場合、繰出しコアと巻取りコアとの間でインクリボンを送る送りローラーと係合するローラー回転子と、送りモーターの回転をローラー回転子に伝達する送り歯車列と、を備え、入力歯車は、送り歯車列に含まれていることが好ましい。
【0091】
この構成によれば、送り歯車列に含まれる入力歯車の回転を利用して、駆動部材を回転させることができる。
なお、第1プラテンローラー205は、「送りローラー」の一例である。第2プラテンローラー305は、「送りローラー」の一例である。プラテン回転子31は、「ローラー回転子」の一例である。
【0092】
テープ印刷装置は、インクリボンが巻回された繰出しコアと係合する繰出し回転子と、繰出しコアから繰り出されたインクリボンが巻き取られる巻取りコアと係合する巻取り回転子と、第1回転方向と、第1回転方向とは反対の第2回転方向と、に回転可能な送りモーターと、巻取り側第1歯車と、巻取り側第1歯車と噛み合う位置および巻取り側第1歯車から外れた位置とに移動可能なクラッチ歯車と、を有し、送りモーターが第1回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合うことで、巻取りコアにインクリボンが巻き取られるように、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達し、送りモーターが第2回転方向に回転したときには、クラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れることで、送りモーターの回転を巻取り回転子に伝達しない巻取り側歯車列と、送りモーターが第1回転方向に回転したときに、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達せず、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、繰出しコアにインクリボンが巻き戻されるように、送りモーターの回転を繰出し回転子に伝達する繰出し側歯車列と、クラッチ歯車を回転可能に支持し、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車と噛み合う噛合位置と、支持したクラッチ歯車が巻取り側第1歯車から外れる非噛合位置と、に移動可能な歯車支持部材と、送りモーターが第2回転方向への回転を開始したときに、歯車支持部材に対し、噛合位置から非噛合位置へ移動することを阻害するクラッチ阻害力を作用させるクラッチ阻害ばねと、歯車支持部材と係合した駆動部材、を有し、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、クラッチ阻害力に抗して、歯車支持部材を非噛合位置に移動させるクラッチ駆動機構と、インクリボンを用いてテープに印刷を行うサーマルヘッドと、を備えた。
【0093】
この構成によれば、送りモーターが第2回転方向に回転したときに、クラッチ駆動機構が、歯車支持部材を非噛合位置に移動させることで、クラッチ歯車を巻取り側第1歯車から強制的に外すことができる。これにより、巻取り側歯車列を構成する各歯車が自由に回転可能となり、巻取りスリップばねの弾性変形が解消される。したがって、巻取りスリップばねの弾性力によりインクリボンに過度なテンションが掛かった状態で、インクリボンが巻き戻されることを、抑制することができる。
なお、第1テープ213は、「テープ」の一例である。第2テープ313は、「テープ」の一例である。
【符号の説明】
【0094】
1…テープ印刷装置、17…サーマルヘッド、30…リボン巻取り機構、31…プラテン回転子、33…第1繰出し回転子、35…第1巻取り回転子、37…第2繰出し回転子、39…第2巻取り回転子、41…送りモーター、43…歯車列、51…クラッチ駆動機構、55…送り歯車列、59…繰出し側歯車列、61…巻取り側歯車列、65…送り第2歯車、95…クラッチ歯車、97…歯車支持部材、109…支持側歯部、113…巻取り側第1歯車、123…第1巻取りスリップばね、125…第2巻取りスリップばね、137…駆動部材、139…クラッチ軸部材、141…第1クラッチスリップばね、143…第2クラッチスリップばね、205…第1プラテンローラー、207…第1繰出しコア、209…第1巻取りコア、213…第1テープ、217…第1インクリボン、305…第2プラテンローラー、307…第2繰出しコア、309…第2巻取りコア、313…第2テープ、317…第2インクリボン、r1…回転半径、r2…回転半径。