(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】放射線画像撮影システム、プログラム、光学画像撮影条件設定方法及び光学画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240509BHJP
【FI】
A61B6/00 520M
(21)【出願番号】P 2020121758
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 亜麻衣
(72)【発明者】
【氏名】山村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 達也
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-117368(JP,A)
【文献】特開2017-063839(JP,A)
【文献】特開2020-039525(JP,A)
【文献】特開2019-033828(JP,A)
【文献】特表2015-505679(JP,A)
【文献】特開2012-147978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む領域の光学画像を撮影する光学画像撮影部と、
前記放射線画像の撮影
部位に基づいて、前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する光学画像撮影条件設定部と、
を備える放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記光学画像撮影条件設定部はさらに、前記放射線源から前記放射線画像撮影部に設けられた放射線検出器までの距離
、撮影方向、前記放射線検出器のサイズの少なくともいずれか
に基づいて前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記光学画像撮影条件設定部は、前記光学画像撮影部の画角、撮影方向の少なくともいずれかを設定する請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記光学画像撮影条件設定部は、前記放射線源から前記放射線検出器までの距離にかかわらず前記光学画像に写る前記被写体の範囲が同じになるように前記光学画像撮影部の画角を設定する請求項3に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記光学画像撮影部により撮影された光学画像を解析する光学画像解析部を更に備え、
前記光学画像解析部は、前記光学画像を解析して、前記放射線源から前記放射線検出器までの距離、撮影部位、撮影方向、前記放射線検出器のサイズの少なくともいずれかの撮影条件を判別する請求項2~4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記光学画像撮影条件設定部は、前記光学画像解析部により解析された、前記放射線源から前記放射線検出器までの距離、撮影部位、前記放射線検出器のサイズの少なくともいずれかに基づいて、前記光学画像撮影部の画角を設定する請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記光学画像撮影条件設定部は、前記光学画像解析部により解析された撮影部位又は撮影方向の少なくともいずれかに基づいて、前記光学画像撮影部の撮影方向を設定する請求項5又は6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記光学画像撮影部は、前記放射線源と一体的に設けられ、
前記光学画像解析部により解析される光学画像は、前記光学画像撮影部により前記放射線源の放射線照射方向と同じ向きで撮影された画像である請求項5~7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む光学画像を撮影する光学画像撮影部と、
を備える放射線画像撮影システムで用いられるコンピューターを、
前記放射線画像の撮影
部位に基づいて、前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する光学画像撮影条件設定部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む光学画像を撮影する光学画像撮影部と、
を備える放射線画像撮影システムにおける光学画像撮影条件設定方法であって、
前記放射線画像の撮影
部位に基づいて、前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する工程を含む光学画像撮影条件設定方法。
【請求項11】
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部を有する放射線画像撮影システムに備えられ、前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む光学画像を撮影する光学画像撮影装置であって、
前記放射線画像の撮影
部位に基づいて、前記光学画像の撮影条件を設定する光学画像撮影条件設定部を備える光学画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システム、プログラム、光学画像撮影条件設定方法及び光学画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射線画像の撮影条件の設定や確認に光学画像を用いる技術が提案されている。例えば、特許文献1には、カメラ画像から放射線撮影に使用するカセッテを判別し、使用するカセッテを自動的にコンソールに設定する技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、光学画像を撮影するTVカメラをX線の焦点距離と共役な位置に配置して、TVカメラの視野を照射野に対応した視野とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-33828号公報
【文献】特開平6-217973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1、2に記載のように、光学画像を撮影する光学カメラは放射線源の近傍に放射線源と一体的に備えられることが多いため、放射線画像の撮影条件に応じて光学画像に写る範囲や方向が変わってしまう場合がある。例えば、放射線源と放射線検出器との距離であるSID(Source to image receptor distance)が変わると、光学カメラの画角がそのままの場合は光学画像に写る被写体の範囲が変わってしまう。例えば、
図4に示すように、画角θの場合、SID2をSID1に変更すると光学画像に写る被写体Hの範囲が狭くなり、被写体Hが光学画像からはみ出てしまう。そのため、放射線画像の撮影条件によって、光学画像を用いた放射線撮影時の確認や解析に不都合が生じてしまう場合があった。
【0006】
本発明の課題は、放射線画像の撮影条件によって、光学画像を用いた放射線撮影時の確認や解析に不都合が生じることを防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の放射線画像撮影システムは、
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む領域の光学画像を撮影する光学画像撮影部と、
前記放射線画像の撮影部位に基づいて、前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する光学画像撮影条件設定部と、
を備える。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
前記光学画像撮影条件設定部はさらに、前記放射線源から前記放射線画像撮影部に設けられた放射線検出器までの距離、撮影方向、前記放射線検出器のサイズの少なくともいずれかに基づいて前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
前記光学画像撮影条件設定部は、前記光学画像撮影部の画角、撮影方向の少なくともいずれかを設定する。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、
前記光学画像撮影条件設定部は、前記放射線源から前記放射線検出器までの距離にかかわらず前記光学画像に写る前記被写体の範囲が同じになるように前記光学画像撮影部の画角を設定する。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項2~4のいずれか一項に記載の発明において、
前記光学画像撮影部により撮影された光学画像を解析する光学画像解析部を更に備え、
前記光学画像解析部は、前記光学画像を解析して、前記放射線源から前記放射線検出器までの距離、撮影部位、撮影方向、前記放射線検出器のサイズの少なくともいずれかの撮影条件を判別する。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、
前記光学画像撮影条件設定部は、前記光学画像解析部により解析された、前記放射線源から前記放射線検出器までの距離、撮影部位、前記放射線検出器のサイズの少なくともいずれかに基づいて、前記光学画像撮影部の画角を設定する。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の発明において、
前記光学画像撮影条件設定部は、前記光学画像解析部により解析された撮影部位又は撮影方向の少なくともいずれかに基づいて、前記光学画像撮影部の撮影方向を設定する。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項5~7のいずれか一項に記載の発明において、
前記光学画像撮影部は、前記放射線源と一体的に設けられ、
前記光学画像解析部により解析される光学画像は、前記光学画像撮影部により前記放射線源の放射線照射方向と同じ向きで撮影された画像である。
【0015】
請求項9に記載の発明のプログラムは、
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む光学画像を撮影する光学画像撮影部と、
を備える放射線画像撮影システムで用いられるコンピューターを、
前記放射線画像の撮影部位に基づいて、前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する光学画像撮影条件設定部、
として機能させる。
【0016】
請求項10に記載の発明は、
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部と、
前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む光学画像を撮影する光学画像撮影部と、
を備える放射線画像撮影システムにおける光学画像撮影条件設定方法であって、
前記放射線画像の撮影部位に基づいて、前記光学画像撮影部の撮影条件を設定する工程を含む。
【0017】
請求項11に記載の発明は、
放射線源から照射され被写体を透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部を有する放射線画像撮影システムに備えられ、前記放射線源からの放射線が照射される領域を含む光学画像を撮影する光学画像撮影装置であって、
前記放射線画像の撮影部位に基づいて、前記光学画像の撮影条件を設定する光学画像撮影条件設定部を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、放射線撮影の撮影条件によって、光学画像を用いた放射線撮影時の確認や解析に不都合が生じることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態における放射線画像撮影システムの全体構成を示す図である。
【
図2】
図1のコンソールの機能的構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態において
図2の制御部により実行される撮影制御処理Aの流れを示すフローチャートである。
【
図4】SIDと光学カメラの画角の関係を模式的に示す図である。
【
図5】第2の実施形態において
図2の制御部により実行される撮影制御処理Bの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0021】
<第1の実施形態>
〔放射線画像撮影システム100の構成〕
まず、本発明の第1の実施形態の構成を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る放射線画像撮影システム100の全体構成例を示す図である。放射線画像撮影システム100は、被写体Hに放射線撮影を行って放射線画像を取得するシステムである。
【0022】
図1に示すように、放射線画像撮影システム100は、放射線照射装置1と、放射線検出装置2と、コンソール3と、光学カメラ4と、を備えて構成されている。コンソール3は、放射線照射装置1、放射線検出装置2及び光学カメラ4とデータ送受信可能に接続されて構成されている。
【0023】
放射線照射装置1は、被写体H(被検者)を挟んで放射線検出装置2と対向する位置に配置された放射線源11を備え、コンソール3の制御に従って、被写体Hに対し放射線(X線)を照射する。
【0024】
放射線検出装置2は、放射線源11から照射され被写体Hを透過した放射線を検出し、放射線画像を撮影する放射線画像撮影部であり、検出器保持部22、放射線検出器P等を備えて構成されている。放射線検出器Pは、FPD(Flat Panel Detector)等より構成される。放射線検出器Pは、例えば、ガラス基板等を有しており、基板上の所定位置に、放射線照射装置1から照射されて少なくとも被写体Hを透過した放射線(X線)をその強度に応じて検出し、検出した放射線を電気信号に変換して蓄積する複数の検出素子(画素)がマトリックス状に配列されている。各画素は、例えばTFT(Thin Film Transistor)等のスイッチング部を備えて構成されている。放射線検出器Pは、コンソール3から入力された画像読取条件に基づいて各画素のスイッチング部を制御して、当該各画素に蓄積された電気信号の読み取りをスイッチングしていき、各画素に蓄積された電気信号を読み取ることにより、画像データ(フレーム画像)を取得する。そして、放射線検出器Pは、取得した画像データをコンソール3に出力する。
【0025】
コンソール3は、放射線照射条件を放射線照射装置1に出力するとともに、画像読取条件を放射線検出器Pに出力し、放射線照射装置1による放射線照射及び放射線検出器Pによる放射線画像の読み取り動作を制御する。また、コンソール3は、光学カメラ4の設定や撮影を制御する。
【0026】
コンソール3は、
図2に示すように、制御部31、記憶部32、操作部33、表示部34、通信部35を備えて構成され、各部はバス36により接続されている。
【0027】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。制御部31のCPUは、操作部33の操作に応じて、記憶部32に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って、コンソール3各部の動作や、放射線画像撮影システム100を構成する各装置の動作を集中制御する。
【0028】
記憶部32は、不揮発性の半導体メモリーやハードディスク等により構成される。記憶部32は、制御部31で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメーター、或いは処理結果等のデータを記憶する。各種プログラムは、読取可能なプログラムコードの形態で格納され、制御部31は、当該プログラムコードに従った動作を逐次実行する。
また、記憶部32は、撮影により取得された放射線画像を患者情報(患者ID、患者名等)や検査情報(検査日、撮影条件等)に対応付けて記憶する。
また、記憶部32には、後述する画角テーブル及び方向テーブルが記憶されている。
【0029】
操作部33は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キー等を備えたキーボードと、マウス等のポインティングデバイスを備えて構成され、キーボードに対するキー操作やマウス操作により入力された指示信号を制御部31に出力する。また、操作部33は、表示部34の表示画面にタッチパネルを備えても良く、この場合、タッチパネルを介して入力された指示信号を制御部31に出力する。更に、操作部33には、放射線照射装置1に放射線撮影を指示するための曝射スイッチ等が備えられている。
【0030】
表示部34は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成され、制御部31から入力される表示信号の指示に従って、操作部33からの入力指示やデータ等を表示する。
【0031】
通信部35は、放射線照射装置1、放射線検出装置2及び光学カメラ4とデータ送受信を行うためのインターフェースを有する。なお、コンソール3と放射線照射装置1、放射線検出装置2及び光学カメラ4との通信は、有線通信であっても無線通信であってもよい。
【0032】
光学カメラ4は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor Device)カメラ、又は赤外線カメラ等により構成され、光学画像を撮影するための光学画像撮影部(光学画像撮影装置)である。本実施形態において、光学カメラ4は、放射線源11から放射線が照射される領域を含む領域(基本的には、放射線が照射される領域又はそれよりやや大きめの領域)の光学画像を取得するために設けられたものであり、例えば、放射線照射装置1の放射線源11の近傍に、放射線源11と一体的に設けられている。なお、光学カメラ4は、放射線源11とは独立して向き(撮影方向)の変更が可能である。光学カメラ4は、コンソール3からの指示に従って、光学画像を撮影し、撮影した光学画像をコンソール3に送信する。
【0033】
〔放射線画像撮影システム100の動作〕
次に、放射線画像撮影システム100の動作について説明する。
図3は、コンソール3により実行される撮影制御処理Aを示すフローチャートである。撮影制御処理Aは、例えば、操作部33により被写体Hの患者情報等が入力された際に、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0034】
まず、制御部31は、放射線画像の撮影条件を設定する(ステップS1)。
例えば、制御部31は、操作部33による放射線画像の撮影条件の入力を受け付け、入力された撮影条件を放射線照射装置1や放射線検出器Pに設定する。放射線画像の撮影条件には、SID、撮影部位、撮影方向、撮影に使用する放射線検出器Pのサイズが含まれる。尚、コンソール3は、図示しない放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)等からの撮影オーダーに基づいて放射線画像の撮影条件を設定するようにしてもよい。
【0035】
次いで、制御部31は、放射線画像の撮影条件に基づいて、光学カメラ4の撮影条件を設定する(ステップS2)。
ここで、光学カメラ4は、放射線撮影時の確認用又は解析用に、放射線源11から放射線が照射される領域を含む領域の光学画像を取得することを目的としているが、光学カメラ4の画角や撮影方向の設定が一定の場合、放射線画像の撮影条件に応じて光学画像に写る被写体Hの範囲や方向が変わってしまい、光学画像を用いた放射線撮影時の確認(ポジショニング等の確認)や解析に不都合が生じる場合がある。
例えば、
図4に示すように、SIDがSID2からSID1に変わった場合、SIDが短くなったにもかかわらず同じ画角θで光学画像を撮影すると、光学画像に含まれる被写体Hの範囲が狭くなってしまい、放射線画像の撮影範囲内の被写体Hが光学画像に入りきらなくなってしまう場合がある。また、撮影部位によって放射線画像に写るべき被写体Hの範囲が異なるが、撮影部位が変わったにもかかわらず同じ画角で光学画像を撮影すると、撮影部位に応じた適切な範囲の光学画像が得られなくならなくなってしまう。また、小さいサイズの放射線検出器Pで撮影する場合と大きいサイズの放射線検出器Pを用いる場合とで同じ画角で撮影すると、小さい放射線検出器Pで撮影を行う場合に光学画像から被写体Hがはみ出てしまう場合がある。
また、斜入撮影では、放射線源11は放射線検出器Pに正対しないため、光学カメラ4を放射線源11と同じ方向を向くように放射線源11と一体的に動かすと、放射線検出器Pに正対しなくなるが、光学画像は放射線検出器Pに正対させて撮影した方がよい撮影部位もある。例えば、頭部の斜入撮影の場合でOM線(眼窩耳孔線)の角度を確認するには、光学カメラ4は放射線検出器Pに正対する方向に向ける必要がある。
【0036】
そこで、制御部31は、放射線画像の撮影条件のSID、撮影部位、撮影方向及び撮影に使用する放射線検出器Pのサイズに基づいて、光学カメラ4の撮影条件、例えば、画角及び撮影方向を設定する。
例えば、記憶部32には、放射線画像の撮影条件のSID、撮影部位及び撮影に使用する放射線検出器Pのサイズの組み合わせごとに、設定する光学カメラ4の画角を対応付けた画角設定テーブルが記憶されている。この設定する光学カメラ4の画角は、例えば、撮影部位(又は放射線検出器Pのサイズの組み合わせ)ごとに想定される放射線画像の撮影範囲(放射線が照射される領域)か又はそれよりやや大きめの範囲が光学画像として撮影される画角であり、SIDが変更されても(SIDにかかわらず)、同じ撮影部位及び放射線検出器Pのサイズに対しては光学画像に写る被写体Hの範囲が同じとなるように予め定められている。例えば、撮影部位や撮影に使用する放射線検出器Pのサイズが同じである場合、
図4のケースでは、SID1の場合は画角θ´が、SID2の場合は画角θが記憶されている。
また、記憶部32には、放射線画像の撮影条件の撮影部位及び撮影方向の組み合わせごとに、設定する光学カメラ4の撮影方向を対応付けた方向設定テーブルが記憶されている。そして、制御部31は、画角設定テーブル及び方向設定テーブルを参照して、設定された放射線画像の撮影条件に応じて光学カメラ4の画角及び撮影方向を設定する。
【0037】
次いで、制御部31は、光学カメラ4により撮影を行わせ、光学画像を取得する(ステップS3)。
例えば、撮影実施者は、被写体Hのポジショニングを行って、操作部33により撮影を指示する。制御部31は、操作部33による撮影指示に応じて光学カメラ4に撮影を行わせ、光学カメラ4は、設定された画角及び撮影方向で光学画像を撮影し、コンソール3に送信する。これにより、コンソール3では、放射線源11から放射線が照射される領域を含む領域、例えば、放射線源11から放射線が照射される領域又はそれよりやや大きめの領域の光学画像を取得することができる。
【0038】
次いで、制御部31は、光学画像を表示部34に表示させる(ステップS4)。
撮影実施者は、光学画像を確認し、例えば、ポジショニングの良否を判断し、ポジショニング不良と判断した場合は、ポジショニングをやり直す。ここで、撮影実施者は、操作部33により再度撮影を指示して光学画像を取得及び表示をし直すこととしてもよい。
【0039】
次いで、制御部31は、曝射スイッチの押下に応じて、放射線照射装置1及び放射線検出装置2の放射線検出器Pに放射線撮影を行わせ、放射線画像を取得する(ステップS5)。
【0040】
次いで、制御部31は、取得された放射線画像に画像処理を施す(ステップS6)。
画像処理としては、例えば、ダイナミックレンジ圧縮処理、コントラスト変換処理、濃度補正処理、LUT(Look Up Table)処理、周波数強調処理、散乱線補正処理、ノイズ抑制処理、画像のトリミング、画像のマスキング、画像の回転、画像の反転のうち少なくとも一つの画像処理が挙げられる。
【0041】
そして、画像処理された放射線画像を患者情報や検査情報に対応付けて記憶部32に保存させ(ステップS7)、撮影制御処理Aを終了する。ステップS7では、放射線画像に対応付けて光学画像を記憶部32に保存することとしてもよい。
【0042】
なお、撮影制御処理Aでは、ステップS4において、ステップS3で撮影された光学画像を放射線撮影時の確認用に表示部34に表示することとしたが、例えば、光学画像を解析し、撮影部位ごとに予め設定された注目部位が放射線画像の撮影範囲に入っているか等を判定してもよい。そして、注目部位が放射線画像の撮影範囲に入っていない場合は表示部34又は音声により撮影実施者に警告を行うこととしてもよい。また、ステップS3で撮影された光学画像を解析して、放射線画像に施す画像処理の画像処理条件を取得することとしてもよい。
【0043】
このように、第1の実施形態では、設定された放射線画像の撮影条件に基づいて、自動的に光学カメラ4の撮影条件を設定するので、放射線画像の撮影条件によって、光学画像を用いたポジショニングの確認や解析に不都合が生じることを防止することができる。
【0044】
例えば、SIDの変更前と変更後で光学画像に写る被写体の範囲が一定となるように光学カメラ4の画角を設定するので、SIDの変更により放射線画像の撮影範囲内の被写体が光学画像に入りきらなくなってしまう等の不都合が生じることを防止することができる。
また、撮影部位に応じた画角を設定するので、撮影部位を変更した場合に、撮影部位に応じた放射線画像の撮影範囲に対応した光学画像が得られなくなってしまう等の不都合を防止することができる。
また、放射線検出器Pのサイズに応じて画角を設定するので、放射線検出器Pのサイズの変更により光学画像から被写体がはみ出てしまう等の不都合を防止することができる。
また、放射線画像の撮影方向に応じて光学カメラ4の撮影方向を設定するので、例えば、斜入撮影の場合に正対した光学画像が確認できなくなってしまう等の不都合を防止することができる。
【0045】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
第1の実施形態では、設定された放射線画像の撮影条件に基づいて光学画像の撮影条件を設定することとして説明したが、第2の実施形態では、撮影準備を行った状態で光学画像を撮影し、得られた光学画像を解析して放射線画像の撮影条件を判別し、判別した放射線画像の撮影条件に基づいて、放射線撮影時の確認や解析に用いる光学画像の撮影条件を設定する例について説明する。
【0046】
第2の実施形態における放射線画像撮影システム100の構成は、第1の実施形態で説明したものと同様であるので説明を援用し、以下、第2の実施形態の動作について説明する。
【0047】
放射線撮影を行うにあたり、撮影実施者は、まず、撮影準備を行う。すなわち、コンソール3の操作部33により患者情報等の入力を受け付け、放射線源11の向きやSIDを調整し、被写体Hのポジショニングを行う。撮影準備が終了すると、撮影実施者は、操作部33により撮影開始を指示する。操作部33から撮影開始が指示されると、コンソール3は、
図5に示す撮影制御処理Bを実行する。撮影制御処理Bは、制御部31と記憶部32に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0048】
まず、制御部31は、光学カメラ4に撮影を行わせ、光学画像を取得する(ステップS11)。
ステップS11において、制御部31は、光学カメラ4に放射線源11の放射線照射方向と同じ向きで撮影を行わせる。これにより、放射線源11とほぼ同じ位置から同じ撮影方向で撮影された光学画像を取得することができる。
【0049】
次いで、制御部31は、取得された光学画像を解析することにより、放射線画像の撮影条件(SID、撮影部位、放射線検出器Pのサイズ、撮影方向)を判別する(ステップS12)。
光学画像からSID、撮影部位、撮影方向、放射線検出器Pのサイズ、を判別する手法は、特に限定されず、公知のいずれの手法を用いてもよい。
光学画像からのSIDの判別は、例えば、三島直、佐々木孝之著「単眼カメラで撮影した1枚の画像から精度よく距離計測できるカラー開口撮影技術」(東芝レビューVol.73 No.1 2018年1月)の距離計測手法等を用いて行うことができる。
また、光学画像からの撮影部位や撮影方向の判別は、例えば、特開2015-219879号公報に記載の手法、テンプレートマッチングや機械学習を用いた手法等を用いることができる。なお、撮影方向は、被写体が配置されていない状態で光学カメラ4により撮影を行い、得られた光学画像の検出器保持部22の外形やこれに表示されているサイズ表示線の角度等から撮影方向を判別してもよい。
また、放射線検出器Pのサイズの判別は、例えば、特許文献1に記載の手法を用いることができる。
【0050】
次いで、制御部31は、放射線画像の撮影条件に基づいて、光学カメラ4の撮影条件を設定する(ステップS13)。
ステップS13の処理は、
図3のステップS2と同様であるので説明を援用する。
【0051】
次いで、制御部31は、光学カメラ4により撮影を行わせ、光学画像を取得する(ステップS14)。
光学カメラ4は、設定された画角及び撮影方向で光学画像を撮影し、コンソール3に送信する。これにより、コンソール3では、放射線源11から放射線が照射される領域を含む領域、例えば、放射線源11から放射線が照射される領域又はそれよりやや大きめの領域の光学画像を取得することができる。
【0052】
次いで、制御部31は、光学画像を表示部34に表示させる(ステップS15)。
ステップS15の処理は、ステップS4で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0053】
次いで、制御部31は、曝射スイッチの押下に応じて、放射線照射装置1及び放射線検出装置2に放射線撮影を行わせ、放射線画像を取得する(ステップS16)。
【0054】
次いで、制御部31は、取得された放射線画像に画像処理を施す(ステップS17)。
ステップS17の処理はステップS6で説明したものと同様であるので説明を援用する。
【0055】
そして、画像処理された放射線画像を患者情報や検査情報に対応付けて記憶部32に保存させ(ステップS18)、撮影制御処理Bを終了する。ステップS18では、放射線画像に対応付けて光学画像を記憶部32に保存することとしてもよい。
【0056】
なお、撮影制御処理Bでは、ステップS15において、ステップS14で撮影された光学画像を放射線撮影時の確認用に表示部34に表示することとしたが、例えば、光学画像を解析し、撮影部位ごとに予め設定された注目部位が放射線画像の撮影範囲に入っているか等を判定してもよい。そして、注目部位が放射線画像の撮影範囲に入っていない場合は表示部34又は音声により撮影実施者に警告を行うこととしてもよい。また、ステップS14で撮影された光学画像を解析して、放射線画像に施す画像処理の画像処理条件を取得することとしてもよい。
【0057】
このように、第2の実施形態では、光学画像から判別した放射線画像の撮影条件に基づいて、自動的に光学カメラ4の撮影条件を設定するので、放射線画像の撮影条件によって、光学画像によるポジショニングの確認や解析に不都合が生じることを防止することができる。
【0058】
例えば、SIDの変更前と変更後で光学画像に写る被写体の範囲が一定となるように光学カメラ4の画角を設定するので、SIDの変更により放射線画像の撮影範囲内の被写体が光学画像に入りきらなくなってしまう等の不都合が生じることを防止することができる。
また、撮影部位に応じた画角を設定するので、撮影部位を変更した場合に、撮影部位に応じた放射線画像の撮影範囲に対応した光学画像が得られなくなってしまう等の不都合を防止することができる。
また、放射線検出器Pのサイズに応じて画角を設定するので、放射線検出器Pのサイズの変更により光学画像から被写体がはみ出てしまう等の不都合を防止することができる。
また、放射線画像の撮影方向に応じて光学カメラ4の撮影方向を設定するので、例えば、斜入撮影の場合に正対した光学画像が確認できなくなってしまう等の不都合を防止することができる。
【0059】
以上、第1~第2の実施形態について説明したが、上記実施形態における記述内容は、本発明の好適な一例であり、これに限定されるものではない。
【0060】
例えば、上記実施形態では、放射線画像の撮影時のSID、撮影部位、及び放射線検出器Pのサイズの組み合わせに基づいて、光学カメラ4の画角を設定することとしたが、例えば、検診センターなど決まった撮影部位しか撮影しないような場合は、SIDと放射線検出器Pのサイズに基づいて光学カメラ4の画角を設定することとしてもよい。また、決まったサイズの放射線検出器Pのみを用いる施設などでは、SIDと撮影部位に基づいて光学カメラ4の画角を設定することとしてもよい。また、決まった撮影部位を決まったサイズの放射線検出器Pを用いて撮影するだけの施設の場合は、SIDのみに基づいて光学カメラ4の画角を設定してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、放射線画像の撮影時の撮影部位及び撮影方向の組み合わせに基づいて、光学カメラ4の撮影方向を設定することとしたが、例えば、撮影部位のみで放射線画像の撮影時の撮影方向が特定できる場合は、撮影部位のみで光学カメラ4の撮影方向を特定してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、コンソール3に本発明の光学画像撮影条件設定部としての機能を備えることとして説明したが、光学カメラ4に光学画像撮影条件設定部としての機能を備えることとしてもよい。例えば、上述の画角設定テーブル及び方向設定テーブルを光学カメラ4の記憶部に記憶しておき、放射線画像の撮影条件(SID、撮影部位、撮影方向及び撮影に使用する放射線検出器Pのサイズの少なくともいずれか)がコンソール3から受信された場合に、光学カメラ4のCPUとプログラムとの協働により、放射線画像の撮影条件に基づいて光学カメラ4の撮影条件(画角や撮影方向)を設定してもよい。また、コンソール3の指示に基づいて、光学カメラ4が放射線源11の放射線照射方向と同じ向きで撮影した光学画像を取得し、取得した光学画像を解析することにより放射線画像の撮影条件を判別し、判別した放射線画像の撮影条件に基づいて光学カメラ4の撮影条件(画角や撮影方向)を設定してもよい。
【0063】
また、例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【0064】
その他、放射線画像撮影システムを構成する各装置の細部構成及び細部動作に関しても、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
100 放射線画像撮影システム
1 放射線照射装置
11 放射線源
2 放射線検出装置
P 放射線検出器
3 コンソール
31 制御部
32 記憶部
33 操作部
34 表示部
35 通信部
36 バス
4 光学カメラ