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  • 特許-タイヤ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 1/00 20060101AFI20240509BHJP
   B60C 11/00 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 5/548 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60C1/00 A
B60C11/00 B
C08L21/00
C08K3/36
C08K5/548
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020122287
(22)【出願日】2020-07-16
(65)【公開番号】P2022018872
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】向口 大喜
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太郎
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102963216(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104553620(CN,A)
【文献】特開2018-065954(JP,A)
【文献】再公表特許第2018/143111(JP,A1)
【文献】再公表特許第2018/143380(JP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0244894(US,A1)
【文献】特開2018-123260(JP,A)
【文献】特開2005-067236(JP,A)
【文献】特開平11-060810(JP,A)
【文献】特開平10-044714(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/170615(JP,A1)
【文献】特開2005-280511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とを有するトレッドゴムを備えたタイヤであって、
前記表層及び前記第2層の少なくとも一方は、シリカとシランカップリング剤とを含み、
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むタイヤ。
【請求項2】
前記表層及び前記第2層は、シリカの含有量がカーボンブラックの含有量より多く、かつ前記有機珪素化合物を含み、
前記第2層には、溝深さの20%以上を構成する溝が形成され、
前記表層及び前記第2層におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量の差が80質量部以内である請求項1記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2層には、溝深さの40%以上の深さの溝が形成されている請求項1又は2記載のタイヤ。
【請求項4】
前記表層及び前記第2層におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量の差が30質量部以内である請求項1~3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
前記表層におけるゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量、前記第2層におけるゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量の差は、10質量%以内である請求項1~4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
前記表層におけるゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量、前記第2層におけるゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量の差は、10質量%以内である請求項1~5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
前記表層及び前記第2層は、無機フィラー100質量%中のシリカの含有率が80質量%以上である請求項1~6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
前記表層及び前記第2層は、シリカの含有量がカーボンブラックの含有量より多く、かつ前記有機珪素化合物を含み、
前記第2層には、溝深さの20%以上の深さの溝が形成され、
前記表層及び前記第2層におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量の差(質量部)、溝深さ(mm)が下記(式1)を満たす請求項1~7のいずれかに記載のタイヤ。
(式1)
表層及び第2層におけるシリカの含有量の差×溝深さ<200
【請求項9】
下記式を満たす請求項8記載のタイヤ。
表層及び第2層におけるシリカの含有量の差×溝深さ<100
【請求項10】
前記表層の厚みが1.0~10.0mm、前記第2層の厚みが2.0~10.0mm、前記第3層の厚みが1.0~10.0mmである請求項1~9のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項11】
前記表層及び前記第2層は、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が70質量%以上である請求項1~10のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項12】
前記表層及び前記第2層は、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が50~90質量%、ブタジエンゴムの含有量が10~40質量%である請求項1~11のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項13】
前記表層及び前記第2層は、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が50質量部以上である請求項1~12のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項14】
前記表層はゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が80質量部以上、前記第2層はゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が60質量部以上である請求項1~13のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項15】
前記第2層は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が1~20質量%である請求項1~14のいずれかに記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用タイヤには、種々の性能が要求され、シランカップリング剤によりゴム性能を向上する技術などが提案されている。例えば、特許文献1は、硫黄元素量が少ないシランカップリング剤を用いて、低燃費性、耐摩耗性を改善することを開示している。しかしながら、硫黄元素量が多いシランカップリング剤で、耐久性、特に高速走行時の耐久性を向上させることは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-65954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記課題を解決し、高速走行時の耐久性を向上できるタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とを有するトレッドゴムを備えたタイヤであって、前記表層及び前記第2層の少なくとも一方は、シリカとシランカップリング剤とを含み、前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むタイヤに関する。
【0006】
前記表層及び前記第2層は、シリカの含有量がカーボンブラックの含有量より多く、かつ前記有機珪素化合物を含み、前記第2層には、溝深さの20%以上を構成する溝が形成され、前記表層及び前記第2層におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量の差が80質量部以内であることが好ましい。
【0007】
前記第2層には、溝深さの40%以上の深さの溝が形成されていることが好ましい。
【0008】
前記表層及び前記第2層におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量の差が30質量部以内であることが好ましい。
【0009】
前記表層におけるゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量、前記第2層におけるゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量の差は、10質量%以内であることが好ましい。
【0010】
前記表層におけるゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量、前記第2層におけるゴム成分100質量%中のブタジエンゴムの含有量の差は、10質量%以内であることが好ましい。
【0011】
前記表層及び前記第2層は、無機フィラー100質量%中のシリカの含有率が80質量%以上であることが好ましい。
【0012】
前記表層及び前記第2層は、シリカの含有量がカーボンブラックの含有量より多く、かつ前記有機珪素化合物を含み、前記第2層には、溝深さの20%以上の深さの溝が形成され、前記表層及び前記第2層におけるゴム成分100質量部に対するシリカの含有量の差(質量部)、溝深さ(mm)が下記(式1)を満たすことが好ましい。
(式1)
表層及び第2層におけるシリカの含有量の差×溝深さ<200
【0013】
下記式を満たすことが好ましい。
表層及び第2層におけるシリカの含有量の差×溝深さ<100
【0014】
前記表層の厚みが1.0~10.0mm、前記第2層の厚みが2.0~10.0mm、前記第3層の厚みが1.0~10.0mmであることが好ましい。
【0015】
前記表層及び前記第2層は、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムの合計含有量が70質量%以上であることが好ましい。
【0016】
前記表層及び前記第2層は、ゴム成分100質量%中のスチレンブタジエンゴムの含有量が50~90質量%、ブタジエンゴムの含有量が10~40質量%であることが好ましい。
【0017】
前記表層及び前記第2層は、ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が50質量部以上であることが好ましい。
【0018】
前記表層はゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が80質量部以上、前記第2層はゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が60質量部以上であることが好ましい。
【0019】
前記第2層は、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量が1~20質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とを有するトレッドゴムを備えたタイヤであって、前記表層及び前記第2層の少なくとも一方は、シリカとシランカップリング剤とを含み、前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むタイヤであるので、高速走行時の耐久性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とからなる3層構造トレッドゴムの模式図(断面図)の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とを有するトレッドゴムを備えたタイヤで、該表層及び第2層の少なくとも一方がシリカとシランカップリング剤とを含み、かつ該シランカップリング剤がアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むものである。前記タイヤは、高速走行時の耐久性に優れている。
【0023】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。
一般に、表層と第2層が異種ゴムである点に起因し、歪が界面付近に集中して界面の接着性が低下する懸念がある。これに対し、表層及び/又は第2層において、シリカと、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むシランカップリング剤とを用いることで、表層中のポリマーと第2層中のシリカとを、又は、表層中のシリカと第2層中のポリマーとを、非常に強固に繋ぐことが可能となるため、界面における接着性を強化できる。従って、表層及び/又は第2層がシリカ配合でかつ深い溝が形成されたタイヤの場合であっても、耐久性を高めることが可能となり、特に高速走行時の耐久性が向上すると推察される。
【0024】
前記タイヤのトレッドゴムは、表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とを備えている。表層と第2層と第3層とを有する3層以上の多層構造トレッドゴムとしては特に限定されず、例えば、表層(路面と接触するトレッドゴムの最表面のゴム層)と、該表層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された第2層と、該第2層のタイヤ半径方向内側に隣接して配された第3層とからなる3層構造のトレッドゴム、更に1層以上の他のトレッドゴム層を有する4層以上構造のトレッドゴムなどが挙げられる。他のトレッドゴム層としては、第3層のタイヤ半径方向内側に配されるゴム層の他、表層と第2層との間や、第2層と第3層との間に配されるゴム層でもよい。
【0025】
<表層及び第2層>
前記タイヤのトレッドゴムにおいて、表層及び第2層の少なくとも一方は、シリカとシランカップリング剤とを含み、かつ該シランカップリング剤がアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むゴム組成物から構成される。表層を構成する表層組成物、第2層を構成する第2層組成物には、通常、互いに異なる配合のゴム組成物が使用される。
【0026】
(ゴム成分)
表層及び第2層組成物に使用可能なゴム成分としては、例えば、ジエン系ゴムを使用できる。ジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、高速走行時の耐久性の観点から、SBR、BR、イソプレン系ゴムが好ましく、SBR、BRがより好ましい。
【0027】
上記ジエン系ゴムは、非変性ジエン系ゴムでもよいし、変性ジエン系ゴムでもよい。
変性ジエン系ゴムとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するジエン系ゴムであればよく、例えば、ジエン系ゴムの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性ジエン系ゴム(末端に上記官能基を有する末端変性ジエン系ゴム)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性ジエン系ゴムや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性ジエン系ゴム(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性ジエン系ゴム)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性ジエン系ゴム等が挙げられる。
【0028】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0029】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0031】
SBRのビニル結合量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0032】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。変性SBRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性SBRが挙げられる。
【0033】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0034】
表層組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0035】
第2層組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上である。上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0036】
表層組成物におけるSBRの含有量(ゴム成分100質量%中のSBRの含有量(質量%))、第2層組成物におけるSBRの含有量(ゴム成分100質量%中のSBRの含有量(質量%))の差は、高速走行時の耐久性の観点から、10質量%以内(以下)であることが好ましく、より好ましくは5質量%以内、更に好ましくは3質量%以内、特に好ましくは0質量%である。
【0037】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0038】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性ジエン系ゴムと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。変性BRを用いることは、氷上制動性能、低発熱性、ミクロE低下に有利である。
【0039】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0040】
表層組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0041】
第2層組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0042】
表層組成物におけるBRの含有量(ゴム成分100質量%中のBRの含有量(質量%))、第2層組成物におけるBRの含有量(ゴム成分100質量%中のBRの含有量(質量%))の差は、高速走行時の耐久性の観点から、10質量%以内(以下)であることが好ましく、より好ましくは5質量%以内、更に好ましくは3質量%以内、特に好ましくは0質量%である。
【0043】
表層組成物において、ゴム成分100質量%中のSBR及びBRの合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%でもよいが、95質量%以下でもよい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0044】
第2層組成物において、ゴム成分100質量%中のSBR及びBRの合計含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限は特に限定されず、100質量%でもよいが、95質量%以下でもよい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0045】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
表層組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0047】
第2層組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0048】
(シリカ)
表層及び第2層組成物に使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0050】
表層組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0051】
第2層組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0052】
表層組成物におけるシリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))、第2層組成物におけるシリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))の差は、高速走行時の耐久性の観点から、80質量部以内(以下)であることが好ましく、より好ましくは50質量部以内、更に好ましくは30質量部以内、特に好ましくは20質量部以内である。
【0053】
また、高速走行時の耐久性の観点から、第2層組成物におけるシリカの含有量に比べて、表層組成物におけるシリカの含有量の方が多量であることが望ましい。
【0054】
(シランカップリング剤)
表層及び第2層組成物に使用されるシランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むものである。このような有機珪素化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記有機珪素化合物のなかでも、下記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物が好ましい。
【化1】
(式中、xは、硫黄原子の平均個数を表し、3.5以上である。mは、6以上の整数を表す。R~Rは、同一若しくは異なって炭素数1~6のアルキル基又はアルコキシ基を表し、R~Rの少なくとも1つ及びR~Rの少なくとも1つが前記アルコキシ基である。なお、R~Rは、前記アルキル基又は前記アルコキシ基が結合した環構造を形成したものでもよい。)
【0055】
xは、前記有機珪素化合物の硫黄原子の平均個数を表す。xは、3.5以上12以下が好ましい。ここで、硫黄原子の平均個数、珪素原子の個数は、蛍光X線により組成物中の硫黄量、珪素量を測定しそれぞれの分子量より換算した値である。
【0056】
mは、6以上の整数を表し、好ましくは6以上14以下である。
【0057】
アルキル基(R~R)の炭素数に関し、好ましくは炭素数1以上5以下である。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0058】
アルコキシ基(R~R)は、好ましくは炭素数1以上5以下である。アルコキシ基中の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等が挙げられる。
【0059】
~Rの少なくとも1つ及びR~Rの少なくとも1つが炭素数1~6のアルコキシ基であり、好ましくは、R~R、R~Rのそれぞれ2つ以上が炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0060】
なお、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基が結合した環構造を形成したものでもよい。例えば、(i)Rがエトキシ基、Rがメチル基が結合した環構造、(ii)Rがエチル基、Rがメチル基が結合した環構造、を形成する場合、それぞれ、R及びRで「-O-C-CH-」、「-C-CH-」という2価の基が形成され、Siに結合した構造が挙げられる。
【0061】
前記有機珪素化合物は、例えば、特開2018-65954号公報に記載の製造方法で調製できる。具体的には、特開2018-65954号公報に記載の式(I-1)のハロゲン基含有有機珪素化合物、及びNaSで表される無水硫化ソーダ、更に必要により硫黄を反応させることにより、前記有機珪素化合物を製造することが可能である。上記反応を行う際、スルフィド鎖の調整のため、硫黄の添加は任意であり、所望の平均組成式(I)の化合物となるように、平均組成式(I-1)の化合物と無水硫化ソーダと必要により硫黄との配合量から決定すればよい。例えば、平均組成式(I)の化合物のxを3.5にしたい場合、無水硫化ソーダ1.0molと、硫黄2.5molと、式(I-1)の化合物2.0molとを反応させればよい。
【0062】
そして、シランカップリング剤としてアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物、すなわち、長鎖シランカップリング剤を用いると、化合物中のアルコキシ基がシリカ表面の水酸基と反応することで、シリカ表面を疎水化し、かつ該化合物の炭素鎖が長いことに起因して従来のシランカップリング剤よりも疎水化の影響が大きくなるため、シリカの分散性が顕著に向上する。また、表層中のポリマーと第2層中のシリカとを、又は、表層中のシリカと第2層中のポリマーとを、非常に強固に繋ぐことが可能となるため、界面における接着性も強化できる。従って、このような長鎖シランカップリング剤を用いることで、表層及び/又は第2層がシリカ配合でかつ深い溝が形成されたタイヤの場合であっても、耐久性が十分に高められ、優れた高速走行時の耐久性が得ることが可能となる。
【0063】
表層組成物において、前記有機珪素化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。なお、前記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物の含有量も同様の範囲が望ましい。
【0064】
第2層組成物において、前記有機珪素化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。なお、前記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物の含有量も同様の範囲が望ましい。
【0065】
表層及び第2層組成物は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物以外の他のシランカップリング剤を含んでもよい。
他のシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
表層組成物において、シランカップリング剤の含有量(前記有機珪素化合物、他のシランカップリング剤の総量)は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0067】
第2層組成物において、シランカップリング剤の含有量(前記有機珪素化合物、他のシランカップリング剤の総量)は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0068】
(他の無機フィラー)
シリカ以外の無機フィラーとしては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。なかでも、カーボンブラックが好ましい。
【0069】
表層組成物において、フィラーの含有量(フィラ-の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは80質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0070】
第2層組成物において、フィラーの含有量(フィラ-の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは30質量部以上、より好ましくは50質量部以上、更に好ましくは70質量部以上、特に好ましくは90質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは130質量部以下、更に好ましくは120質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0071】
表層組成物、第2層組成物において、無機フィラー100質量%中のシリカの含有率は、高速走行時の耐久性の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が特に好ましい。上限は特に限定されない。
【0072】
表層及び第2層組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、70m/g以上がより好ましく、90m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0074】
表層組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0075】
第2層組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0076】
表層組成物、第2層組成物の少なくとも一方は、高速走行時の耐久性の観点から、カーボンブラックの含有量(ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部))に比べて、シリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))が多量であることが好ましく、より好ましくは両組成物が該カーボンブラックの含有量に比べてシリカの含有量が多量である。
【0077】
表層組成物において、該シリカの含有量-該カーボンブラックの含有量は、60質量部以上が好ましく、80質量部以上がより好ましく、90質量部以上が更に好ましい。上限は、150質量部以下が好ましく、130質量部以下がより好ましく、110質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0078】
第2層組成物において、該シリカの含有量-該カーボンブラックの含有量は、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、70質量部以上が更に好ましい。上限は、150質量部以下が好ましく、130質量部以下がより好ましく、110質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0079】
(可塑剤)
表層組成物、第2層組成物には、可塑剤を配合してもよい。可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。なかでも、高速走行時の耐久性の観点から、樹脂が好ましい。
【0080】
表層組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0081】
第2層組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0082】
表層及び第2層組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマーなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
表層組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0084】
第2層組成物において、液体可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0085】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。
【0086】
液状樹脂としては、25℃で液体状態のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0087】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0088】
表層及び第2層組成物に使用可能な上記樹脂(常温(25℃)で固体状態の樹脂)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、高速走行時の耐久性の観点から、芳香族ビニル重合体、石油樹脂が好ましい。
【0089】
表層組成物において、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。なお、芳香族ビニル重合体の含有量に関しても、同様の範囲が好適である。
【0090】
第2層組成物において、上記樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは10質量部以下、より好ましくは7質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。なお、芳香族ビニル重合体の含有量に関しても、同様の範囲が好適である。
【0091】
上記樹脂の軟化点は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
なお、上記樹脂の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0092】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0093】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0094】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0095】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0096】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0097】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0098】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂が好ましい。
【0099】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0100】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0101】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0102】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0103】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0104】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0105】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0106】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0107】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0108】
上記可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0109】
(他の材料)
表層組成物、第2層組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0110】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0111】
表層組成物、第2層組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0112】
表層組成物、第2層組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。表層組成物、第2層組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0113】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0114】
表層組成物、第2層組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。表層組成物、第2層組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0115】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0116】
表層組成物、第2層組成物には、ワックスを配合してもよい。表層組成物、第2層組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0117】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0118】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0119】
表層組成物、第2層組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0120】
表層組成物、第2層組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。
【0121】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
表層組成物、第2層組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
表層組成物、第2層組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
【0123】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0124】
表層組成物、第2層組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0125】
<第3層>
前記タイヤは、表層と第2層と第3層とを有するものであり、該第3層は、第3層組成物から構成される。上記第3層組成物には、例えば、上記表層及び第2層組成物と同様の薬品を使用可能である。
【0126】
第3層組成物において、ゴム成分として、ジエン系ゴムが好ましく、イソプレン系ゴム、BRが特に好ましい。
【0127】
第3層組成物がイソプレン系ゴムを含有する場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0128】
第3層組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下、更に好ましくは40質量%以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0129】
第3層組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上であり、また、好ましくは40質量部以下、より好ましくは35質量部以下、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0130】
第3層組成物において、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは60m/g以上、更に好ましくは70m/g以上であり、また、好ましくは90m/g以下、より好ましくは85m/g以下、更に好ましくは80m/g以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0131】
第3層組成物がシリカを含有する場合、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上であり、また、好ましくは80質量部以下、より好ましくは60質量部以下、更に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0132】
第3層組成物がシランカップリング剤を含有する場合、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは12質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは8質量部以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0133】
上記第3層組成物は、上記成分以外に、ワックス、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛、硫黄、加硫促進剤等を適宜配合してもよい。
【0134】
表層組成物、第2層組成物、第3層組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0135】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0136】
タイヤは、表層組成物、第2層組成物、第3層組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合した表層組成物、第2層組成物、第3層組成物を、未加硫の段階で表層、第2層、第3層の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、タイヤが得られる。
【0137】
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤ、ライトトラック用タイヤに好適に使用できる。
【0138】
<溝深さ>
前記タイヤは、高速走行時の耐久性の観点から、第2層に、タイヤの溝深さ(タイヤに形成された溝の深さ)100%中の20%以上を構成する溝が形成されていることが好ましい。すなわち、タイヤには、主溝等の溝が形成されているが、その溝の深さの20%以上が第2層に形成されていることが望ましい。好ましくは溝深さの30%以上、より好ましくは溝深さの40%以上、更に好ましくは溝深さの50%以上が第2層に形成されている。上限は特に限定されないが、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは70%以下である。ここで、本明細書における「溝」とは、接地面内における幅2mm以上、深さ7mm以上の溝であり、「溝深さ」とは、溝の最深部までのタイヤ半径方向距離である。
【0139】
溝深さに関し、前述のように、前記タイヤは、溝深さが大きいタイヤでも良好な高速走行時の耐久性を付与できるものであり、適宜選択することができるが、7mm以上が好ましく、9mm以上がより好ましく、10mm以上が更に好ましい。上限は、100mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましい。
【0140】
前記タイヤは、高速走行時の耐久性の観点から、表層組成物におけるシリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))と第2層組成物におけるシリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))との差(質量部)、タイヤの溝深さ(mm)が、下記式を満たすことが好ましい。
(式1)
表層及び第2層におけるシリカの含有量の差×溝深さ<250
表層及び第2層におけるシリカの含有量の差×溝深さは、200未満がより好ましく、150未満が更に好ましく、100未満が特に好ましく、50未満でもよい。下限は特に限定されず、0以上でよい。
【0141】
<トレッドゴムの厚み>
前記タイヤにおいて、トレッドゴムの厚み(表層、第2層、第3層を有する多層構造のトレッドゴムの総厚み)は、好ましくは4.0mm以上、より好ましくは6.0mm以上、更に好ましくは8.0mm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは100.0mm以下、より好ましくは50.0mm以下、更に好ましくは30.0mm以下、特に好ましくは20.0mm以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0142】
前記タイヤにおいて、表層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上、更に好ましくは2.5mm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは50.0mm以下、より好ましくは30.0mm以下、更に好ましくは10.0mm以下、特に好ましくは8.0mm以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0143】
前記タイヤにおいて、第2層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上、より好ましくは3.0mm以上、更に好ましくは3.5mm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは50.0mm以下、より好ましくは30.0mm以下、更に好ましくは10.0mm以下、特に好ましくは8.0mm以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0144】
前記タイヤにおいて、第3層の厚みは、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは50.0mm以下、より好ましくは30.0mm以下、更に好ましくは10.0mm以下、特に好ましくは8.0mm以下である。上記範囲内にすることで、良好な高速走行時の耐久性が得られる傾向がある。
【0145】
なお、トレッドゴムの厚みは、表層、第2層及び第3層を有する多層構造のトレッドゴムの総厚みの最大値であり、トレッドゴム面の法線に沿って計測される。表層、第2層及び第3層の厚みは、それぞれ表層面、第2層面、第3層面の法線に沿って計測される。
【0146】
図1は、表層と第2層と第3層とを有する3層以上の多層構造トレッドゴムの一例として、3層構造トレッドゴムの模式図(断面図)を示している。
【0147】
図1において、トレッドゴム11は、路面に接触する最外側に配された表層11aと、該表層11aのタイヤ半径方向内側に配された第2層11bと、該第2層11bのタイヤ半径方向内側に配された第3層11cとからなる3層構造である。表層11aの表面には、サイプ21が形成されている。表層11a、第2層11bの少なくとも一方は、シリカと、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むシランカップリング剤とを含む前述の表層及び第2層組成物で構成される。
【0148】
図1において、所定の溝深さ31である主溝32により、陸部41が形成されており、主溝32は、図示のタイヤ周方向の溝の他に、ラグやブロックを形成するためのタイヤ幅方向等の溝であってもよい。
【0149】
図1において、主溝32は、タイヤ半径方向内側に、表層11aを貫通し、第2層11bの内部まで形成されている。主溝32の溝深さ31は、図示されているとおり、表層11aの表面から主溝32の最深部までのタイヤ半径方向距離である。そして、前述のとおり、主溝32の溝深さ31(100%)の20%以上が第2層11bに形成されている構成が好適である。更に、表層11a、第2層11bのシリカの含有量の差、溝深さ31が前記(式1)を満たす構成が好適である。
【0150】
図1において、トレッドゴム11の厚みTは、表層11a、第2層11b及び第3層11cからなる3層構造のトレッドゴム11の総厚みの最大値である。表層11aの厚みTa、第2層11bの厚みTb、第3層11cの厚みTcは、それぞれ、表層11aの厚み、第2層11bの厚み、第3層11cの厚みの最大値である。
【0151】
図1において、符号Pは、トレッドゴム面上の点(又は表層面上の点)である。両矢印Tは、点Pにおけるトレッドゴム11の総厚みである。総厚みTは、点Pにおける表層11a、第2層11b及び第3層11cの厚みの合計で、点Pにおけるトレッドゴム面の法線に沿って計測される。点Pにおける表層11aの厚みTaは点Pにおける表層面の法線、点Qにおける第2層11bの厚みTbは点Qにおける第2層面の法線、点Rにおける第3層11cの厚みTcは点Rにおける第3層面の法線、に沿ってそれぞれ計測される。
【0152】
なお、4層以上の構造を有するトレッドゴムの場合、トレッドゴムの総厚みTはその点Pにおける4層以上の層の厚みの合計であり、その場合の点Pにおける総厚みTもその点Pにおけるトレッドゴム面の法線に沿って計測される。また同様に、点P、Q、Rにおける表層11a、第2層11b、第3層11cの厚みTa、Tb、Tcは、それぞれ点P、Q、Rにおける表層面、第2層面、第3層面の法線に沿って計測される。
【実施例
【0153】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0154】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のSBR1502(非油展、スチレン含有量25質量%)
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量97質量%)
NR:TSR20
シリカ:デグッサ社製のウルトラジルVN3(NSA175m/g)
カーボンブラック1:三菱ケミカル(株)製のダイアブラックN220(NSA111m/g)
カーボンブラック2:キャボットジャパン(株)製のショウブラックN330(NSA75m/g)
有機珪素化合物1:下記製造例で合成したシランカップリング剤
有機珪素化合物2:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
樹脂:Arizona chemical社製のSYLVARES SA85(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、Tg43℃、軟化点85℃)
オイル:H&R(株)製のVivaTec400(TDAEオイル)
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン3C
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
加硫促進剤CBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS))
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
【0155】
(製造例:有機珪素化合物1の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、無水硫化ソーダ78.0g(1.0モル)、硫黄80.3g(2.5モル)およびエタノール480gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、6-クロロヘキシルトリエトキシシラン566g(2.0モル)を滴下投入し、80℃にて10時間加熱撹拌した。この反応液を、濾過板を用いて加圧濾過することで、反応の進行とともに生成した塩が除去された濾液を得た。得られた濾液を100℃まで加熱し、10mmHg以下の減圧下でエタノールを留去することで、反応生成物として有機珪素化合物1(シランカップリング剤)を得た。得られた有機珪素化合物1は、化合物中に含まれる硫黄量が18.5質量%であり、有機珪素化合物1分子中に含まれる平均の硫黄の原子数Xは3.5であり、mの値は6であった。
【0156】
<実施例及び比較例>
表1、2、3に示す配合内容に従い、硫黄及び加硫促進剤を除く各種薬品を、バンバリーミキサーにて、150℃で5分間混練りした。得られた混練物に、硫黄及び加硫促進剤を添加して、オープンロールを用いて、170℃で12分間混練りし、表層未加硫ゴム組成物、第2層未加硫ゴム組成物、第3層未加硫ゴム組成物を得た。
得られたそれぞれの未加硫ゴム組成物を表層、第2層、第3層の形状に成形し、タイヤ成型機上で他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、170℃の条件下で20分間プレス加硫し、試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15、タイヤ仕様:表に記載)を得た。
【0157】
得られた試験用タイヤについて、以下の評価を行った。なお、表1、2は比較例1を基準比較例とした。
【0158】
<高速走行時の耐久性>
作製した試験用タイヤをドラム式走行試験機を用い、100km/hの速度にて2時間連続走行を行った。その後、表層と第2層との間の剥離抗力を、次のようにして評価した。タイヤの周方向(縦)に長さ150mm、周方向に対して垂直方向に長さ25mmのサンプルをタイヤから採取した。採取したサンプルの表層と第2層との間にスリット(切れ込み)を入れた。引張試験機を用い、スリット(切込み)によって分かれた表層側及び第2層側のそれぞれをパラレルチャックにて挟み、表層側を引張速度50mm/minにてタイヤの周方向に引張った。その引張りに要した力をサンプルの周方向の25mmあたりの力(N/25mm)として示し、これを剥離抗力(N/25mm)とした。基準比較例の剥離抗力を100とし、各試験用タイヤについて指数化した。指数が大きいほど、高速走行時の耐久性が優れている。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
【表3】
【0162】
表より、表層と、前記表層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第2層と、前記第2層に隣接してタイヤ半径方向内側に位置する第3層とを有するトレッドゴムを備え、該表層及び第2層の少なくとも一方がシリカとシランカップリング剤とを含み、かつ該シランカップリング剤がアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含む実施例のタイヤは、高速走行時の耐久性に優れていた。
【符号の説明】
【0163】
11 トレッドゴム
11a 表層
11b 第2層
11c 第3層
21 サイプ
31 溝深さ
32 主溝
41 陸部
T トレッドゴム11の厚み
Ta 表層11aの厚み
Tb 第2層11bの厚み
Tc 第3層11cの厚み
P トレッドゴム面上の点(又は表層面上の点)
Q 第2層面の点
R 第3層面の点
図1