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  • 特許-印刷装置、及び、印刷装置の制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】印刷装置、及び、印刷装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240509BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B41J2/175 503
B41J2/01 451
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020124226
(22)【出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2022020937
(43)【公開日】2022-02-02
【審査請求日】2023-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品田 稜介
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-274360(JP,A)
【文献】特開2011-183617(JP,A)
【文献】特開2008-000962(JP,A)
【文献】特開昭62-140849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に画像を形成する印刷装置であって、
インクを吐出する印刷ヘッドと、
前記インクを貯留する第1インク貯留部と、
前記第1インク貯留部から前記印刷ヘッドにインクを輸送する流路に配置され、前記第1インク貯留部から送出された前記インクを貯留する第2インク貯留部と、
前記第2インク貯留部から前記印刷ヘッドに前記インクを輸送する流路に配置され、前記インクを貯留する第3インク貯留部と、
前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部に前記インクを輸送する第1輸送部と、
前記第2インク貯留部に貯留されている前記インクの量を検出する第1検出部と、
前記インクの輸送に要した時間を計測する計測部と、
前記第1インク貯留部に貯留されている前記インクの沈降状態を判定する判定処理を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記判定処理で、前記第1輸送部を駆動して前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部へ前記インクを輸送させ、前記第2インク貯留部に貯留されている前記インクの量が第1目標量に達するまでに要した時間を前記計測部により計測し、前記計測部の計測時間に基づいて前記インクの沈降状態を判定する、印刷装置。
【請求項2】
報知部を備え、
前記制御部は、前記計測部の計測時間に基づく前記インクの沈降状態の判定結果に応じて、前記報知部により報知を実行させる、請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記印刷装置の電源が投入されて前記印刷装置を起動するときに、前記判定処理を実行する、請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記判定処理において、前記第2インク貯留部の前記インクの量が、前記第1目標量よりも少ない第2目標量から、前記第1目標量に達するまでに要した時間を前記計測部により計測し、
前記判定処理を開始する際に、前記第1検出部により検出された前記第2インク貯留部の前記インクの量が前記第2目標量と異なる場合、前記第2インク貯留部の前記インクの量を前記第2目標量とする調整を行ってから前記判定処理を実行する、請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記第2インク貯留部から前記第3インク貯留部に前記インクを輸送する第2輸送部を備え、
前記制御部は、前記判定処理を開始する際に、前記第1検出部により検出された前記第2インク貯留部の前記インクの量が前記第2目標量以上である場合、前記第2輸送部により前記第2インク貯留部から前記第3インク貯留部に前記インクを輸送することによって、前記第2インク貯留部の前記インクの量を前記第2目標量まで減少させる、請求項4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記判定処理を開始する際に、前記第1検出部により検出された前記第2インク貯留部の前記インクの量が前記第2目標量より少ない場合、前記第1輸送部により前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部に前記インクを輸送することによって、前記第2インク貯留部の前記インクの量を前記第2目標量まで増加させる、請求項4または5記載の印刷装置。
【請求項7】
前記第1インク貯留部と前記第3インク貯留部とを接続するバイパス経路と、前記第3インク貯留部の前記インクの量を検出する第2検出部と、を備え、
前記第1輸送部によって、前記第1インク貯留部から前記第3インク貯留部に前記インクを輸送可能であり、
前記制御部は、前記第3インク貯留部の前記インクの量が第3目標量より少ない場合は前記第3インク貯留部に前記インクを輸送するインク補充動作を実行し、
前記インク補充動作は、前記第2インク貯留部の前記インクの量が前記第2目標量以上である場合に、前記第2インク貯留部から前記第3インク貯留部に前記インクを輸送する第1インク補充動作と、前記第2インク貯留部の前記インクの量が前記第2目標量より少ない場合に前記第1インク貯留部から前記バイパス経路を通じて前記第3インク貯留部に前記インクを輸送する第2インク補充動作と、を含む、請求項6記載の印刷装置。
【請求項8】
前記第1インク貯留部から前記インクを輸送する経路として、前記バイパス経路と、前記第2インク貯留部に向かう経路とを切り替える切替機構を備え、
前記制御部は、
前記第2インク補充動作において、前記第2検出部によって前記第3インク貯留部の前記インクの量が前記第3目標量よりも多い第4目標量になったことが検出される前に、前記第1検出部によって前記第2インク貯留部の前記インクの量が前記第2目標量になったことが検出された場合には、前記切替機構によって前記バイパス経路に切り替え、前記第2検出部によって前記第3インク貯留部の前記インクの量が前記第4目標量になったことが検出されるまで、前記第1インク貯留部から前記第3インク貯留部へ前記インクを輸送する、請求項7記載の印刷装置。
【請求項9】
前記第4目標量と前記第3目標量との差に相当する前記インクの量は、前記第1目標量と前記第2目標量との差に相当する前記インクの量よりも多い、請求項8記載の印刷装置。
【請求項10】
インクを吐出する印刷ヘッドと、前記インクを貯留する第1インク貯留部と、前記第1インク貯留部から前記印刷ヘッドにインクを輸送する流路に配置され、前記第1インク貯留部から送出された前記インクを貯留する第2インク貯留部と、前記第2インク貯留部から前記印刷ヘッドに前記インクを輸送する流路に配置され、前記インクを貯留する第3インク貯留部と、前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部に前記インクを輸送する第1輸送部と、前記第2インク貯留部に貯留されているインクの量を検出する第1検出部と、を備える印刷装置を制御し、
前記第1輸送部を駆動して前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部へ前記インクを輸送し、
前記インクを輸送することにより前記第2インク貯留部に貯留されている前記インクの量が第1目標量に達するまでに要した時間を計測し、
計測時間に基づいて前記第1インク貯留部に貯留されている前記インクの沈降状態を判定する判定処理を行う、印刷装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドからインクを吐出して画像を形成する印刷装置において、顔料などの沈降性物質を含むインクを使用する場合、インク容器の中でインクの成分が沈降する可能性がある。そこで、従来、インクの成分の沈降を抑制するため、ユーザーが印刷装置からインク容器を取り外して振り、インク容器内のインクを攪拌することが推奨されていた。また、インクの成分の沈降を抑制する機能を有する印刷装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷装置は、インク容器を動かす機構を備え、印刷装置に装着されているインク容器をシェークする機能を具備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-188790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
印刷装置に装着されたインク容器においてインクの沈降が生じた場合、特許文献1に記載された構成によりインク容器をシェークしたり、ユーザーが印刷装置からインク容器を取り外してシェークしたりする必要がある。このため、印刷装置にインク容器が装着された状態で、インクの成分の沈降が発生しているかどうかを判定する手法が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための一態様は、印刷媒体に画像を形成する印刷装置であって、インクを吐出する印刷ヘッドと、前記インクを貯留する第1インク貯留部と、前記第1インク貯留部から前記印刷ヘッドにインクを輸送する流路に配置され、前記第1インク貯留部から送出された前記インクを貯留する第2インク貯留部と、前記第2インク貯留部から前記印刷ヘッドに前記インクを輸送する流路に配置され、前記インクを貯留する第3インク貯留部と、前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部に前記インクを輸送する第1輸送部と、前記第2インク貯留部に貯留されている前記インクの量を検出する第1検出部と、前記インクの輸送に要した時間を計測する計測部と、前記第1インク貯留部に貯留されている前記インクの沈降状態を判定する判定処理を行う制御部と、を備え、前記制御部は、前記判定処理で、前記第1輸送部を駆動して前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部へ前記インクを輸送させ、前記第2インク貯留部に貯留されている前記インクの量が第1目標量に達するまでに要した時間を前記計測部により計測し、前記計測部の計測時間に基づいて前記インクの沈降状態を判定する、印刷装置である。
【0006】
上記課題を解決するための別の一態様は、インクを吐出する印刷ヘッドと、前記インクを貯留する第1インク貯留部と、前記第1インク貯留部から前記印刷ヘッドにインクを輸送する流路に配置され、前記第1インク貯留部から送出された前記インクを貯留する第2インク貯留部と、前記第2インク貯留部から前記印刷ヘッドに前記インクを輸送する流路に配置され、前記インクを貯留する第3インク貯留部と、前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部に前記インクを輸送する第1輸送部と、前記第2インク貯留部に貯留されているインクの量を検出する第1検出部と、を備える印刷装置を制御し、前記第1輸送部を駆動して前記第1インク貯留部から前記第2インク貯留部へ前記インクを輸送し、前記インクを輸送することにより前記第2インク貯留部に貯留されている前記インクの量が第1目標量に達するまでに要した時間を計測し、計測時間に基づいて前記第1インク貯留部に貯留されている前記インクの沈降状態を判定する判定処理を行う、印刷装置の制御方法である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係るプリンターの概略構成を示す図。
図2】プリンターのインク供給機構の構成を示す図。
図3】プリンターの制御系のブロック図。
図4】制御部の機能ブロック図。
図5】プリンターの動作を示すフローチャート。
図6】プリンターの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[1.プリンターの全体構成]
以下、図面を参照して本発明を適用した実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係るプリンター1の概略構成を示す平面図である。
プリンター1は、印刷媒体Mにインクを吐出して、印刷媒体Mの印刷面に画像を形成するインクジェット式の印刷装置である。プリンター1は、印刷媒体Mにインクを吐出する印刷ヘッド41を備える。印刷ヘッド41は、プリンター1が使用するインクの色毎に設けられる。図1には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック、ホワイトの5色のインクに対応する5つの印刷ヘッド41を備える構成を例示するが、プリンター1が使用するインクの色数は特に制限されない。
印刷ヘッド41に対向する位置には、印刷媒体Mを支持するプラテン42が配置される。
【0009】
印刷媒体Mは、シート状であれば特に制限されず、紙、合成樹脂製のシート、布帛等を用いることができる。印刷媒体Mは、定型サイズにカットされたカットシートであってもよいが、本実施形態では、長尺の印刷媒体Mを用いる構成を例に挙げて説明する。
【0010】
プリンター1は、印刷媒体Mがロール状に巻き回された繰出ローラー43を有する。プリンター1は、繰出ローラー43から引き出された印刷媒体Mを搬送方向Fに搬送する搬送部を有する。搬送部は、例えば、図1に示す中継ローラー44、搬送ローラー45、搬送ローラー46及び、中継ローラー47を含む。搬送ローラー45は、一対のローラーにより印刷媒体Mをニップして、不図示の搬送モーターの動力により印刷媒体Mを搬送方向Fに送る。印刷ヘッド41によって印刷された印刷媒体Mは、巻取ローラー48に巻き取られる。
【0011】
印刷ヘッド41には、図2に示す後述するインク供給機構によってインクが供給される。印刷ヘッド41は、プラテン42に対向する不図示のノズル、及び、インクを加圧する不図示の加圧機構を有する。この加圧機構の動作によって、ノズルからインクが吐出される。このとき、印刷ヘッド41では加圧機構の動作に伴って負圧が生じ、この負圧によって印刷ヘッド41はインクを吸引する。
【0012】
[2.インク供給機構の構成]
図2は、プリンター1のインク供給機構50の構成を示す図である。図2は、インクの供給および貯留に係る構成を模式的に示す図であり、インク供給機構50に含まれる各部の具体的な形状やサイズは図2に制限されない。プリンター1は、1つのインク色に対応して1つのインク供給機構50を備える。例えば、図1に示すように5色のインクを使用するプリンター1は、各々の色のインクに対応する5個のインク供給機構50を備える。それぞれの色に対応するインク供給機構50の構成は共通である。
【0013】
プリンター1は、インクを貯留する貯留部として、主貯留部51、補助タンク53、及び、ヘッド供給用タンク54を備える。主貯留部51は第1インク貯留部の一例に対応し、補助タンク53は第2インク貯留部の一例に対応し、ヘッド供給用タンク54は第3インク貯留部の一例に対応する。
【0014】
主貯留部51には、インクパック52が装着される。インクパック52は、インクが封入されたインク容器であり、主貯留部51に対し着脱可能である。主貯留部51にインクパック52を装着することにより、プリンター1にインクを補充できる。図2に示す構成では、主貯留部51に複数のインクパック52を装着可能である。いずれかのインクパック52のインクが空になった場合に、プリンター1を停止させることなく、インクパック52を交換可能である。
【0015】
主貯留部51は、インクパック52に繋がる管に取り付けられたバルブ71、71を備える。バルブ71は開閉弁であり、インクパック52が取り外される際に、インクが流れる経路を閉鎖する。主貯留部51は、主貯留部インクセンサー85を備える。主貯留部インクセンサー85は、主貯留部51に装着されたインクパック52におけるインクの残量を検出する。例えば、主貯留部インクセンサー85は、主貯留部51に装着されたいずれかのインクパック52におけるインクの残量が、予め設定された量を下回ったことを検出する。
【0016】
主貯留部51には、インクを輸送する輸送路としてインク供給管91が接続される。インク供給管91は、インク供給管92、及び、バイパス管95に繋がる。インク供給管92は、インク供給管91を通じて輸送されたインクを補助タンク53に供給する管である。主貯留部51は、インク供給管91にインクを送出するメインポンプ72を備える。メインポンプ72が駆動することにより、インクパック52に収容されたインクがインク供給管91に送出される。メインポンプ72は、第1輸送部の一例に対応する。
【0017】
補助タンク53は、インク供給管92を通じて流入するインクを一時的に貯留する。補助タンク53は、インク供給管93によってヘッド供給用タンク54に接続される。インク供給管93には補助ポンプ77が配置され、補助ポンプ77が駆動することにより、補助タンク53に貯留されたインクがインク供給管93を通じてヘッド供給用タンク54に輸送される。補助ポンプ77は、第2輸送部の一例に対応する。
【0018】
ヘッド供給用タンク54は、インク供給管93を通じて流入するインクを一時的に貯留する。ヘッド供給用タンク54は、吸込管94により印刷ヘッド41に接続される。印刷ヘッド41がインクを吐出する動作に伴ってインクを吸引すると、吸込管94を通じて、ヘッド供給用タンク54からインクが印刷ヘッド41に供給される。プリンター1は、ヘッド供給用タンク54にインクを貯留しておくことで、印刷ヘッド41にインクを円滑に供給できる。
【0019】
インク供給機構50は、インク供給管91と、インク供給管93とを接続するバイパス管95を備える。バイパス管95は、インク供給管93を経由せずに、主貯留部51からヘッド供給用タンク54へインクを輸送する輸送路として機能する。
【0020】
インクの輸送路を切り替える構成として、インク供給機構50は、切替ユニット73、および、バルブ76を有する。切替ユニット73は、インク供給管91からインクを供給する供給先を、インク供給管92とバイパス管95とに切り替える弁であり、インク供給管91と、インク供給管92と、バイパス管95との接続点に設けられる。切替ユニット73は、例えば、インク供給管92を開閉するバルブ74と、バイパス管95を開閉するバルブ75とを備える構成であってもよい。この場合、開閉弁であるバルブ74、75の開閉により、メインポンプ72が送り出すインクの輸送先を、補助タンク53と、ヘッド供給用タンク54とに切り替え可能である。切替ユニット73の構成は任意に変更可能であり、例えば、インク供給管92とバイパス管95とを切り替えてインク供給管91に接続する1つの三方弁であってもよい。切替ユニット73は、切替機構の一例に対応する。
【0021】
インク供給管93には、バルブ76が配置されている。バルブ76は開閉弁であり、バイパス管95からインク供給管93に流入するインクが、補助タンク53に向けて流れないようにインク供給管93を閉鎖できる。バルブ76は、インクの補助タンク53に向かう流動を阻止できればよく、例えば逆止弁であってもよい。
【0022】
このように、インク供給機構50は、主貯留部51から補助タンク53を経由してヘッド供給用タンク54へインクを供給する。この場合、切替ユニット73のバルブ75が閉じられ、バルブ74が開かれて、インク供給管91からインク供給管92へインクが流れる。この場合のインクの経路を供給経路Aとする。また、インク供給機構50は、切替ユニット73のバルブ75が開かれ、バルブ74が閉じられることにより、インク供給管91からバイパス管95にインクを輸送する。この場合のインクの経路を供給経路Bとする。供給経路Bは、バイパス経路に相当する。
【0023】
インク供給機構50は、インクの量を検出するセンサーとして、第1インク量検出部31、第2インク量検出部32、及び、主貯留部インクセンサー85を備える。第1インク量検出部31は第1検出部の一例に対応し、第2インク量検出部32は第2検出部の一例に対応する。
【0024】
第1インク量検出部31は、補助タンク53に貯留されるインクの量を検出するユニットである。第1インク量検出部31は、補助タンク53に貯留されたインクの量を検出可能な構成であってもよいが、少なくとも、インクの量が第1目標量L1以上であるか否か、及び、第2目標量L2以上であるか否かを検出可能な構成であればよい。本実施形態では、インクの量が第1目標量L1以上であることを検出する第1センサー81と、インクの量が第2目標量L2以上であることを検出する第2センサー82とを備える。第1センサー81は、例えば、第1目標量L1の液面位置におけるインクの有無を光学的に検出する光センサーである。第2センサー82も同様に、光センサーを採用できる。ここで、第1インク量検出部31は、重量センサーを採用した構成とすることも可能である。例えば、第1インク量検出部31は、第1センサー81及び第2センサー82に替えて、1または複数の重量センサーを備える構成であってもよい。
【0025】
第2インク量検出部32は、ヘッド供給用タンク54に貯留されるインクの量を検出するユニットである。第2インク量検出部32は、ヘッド供給用タンク54に貯留されたインクの量を検出可能な構成であってもよいが、少なくとも、インクの量が第4目標量L4以上であるか否か、及び、第3目標量L3以上であるか否かを検出可能な構成であればよい。本実施形態では、インクの量が第4目標量L4以上であることを検出する第4センサー84と、インクの量が第3目標量L3以上であることを検出する第3センサー83とを備える。第4センサー84は、例えば、第4目標量L4の液面位置におけるインクの有無を光学的に検出する光センサーである。第3センサー83も同様に、光センサーを採用できる。ここで、第2インク量検出部32は、重量センサーを採用した構成とすることも可能である。例えば、第2インク量検出部32は、第3センサー83及び第4センサー84に替えて、1または複数の重量センサーを備える構成であってもよい。
【0026】
主貯留部インクセンサー85は、主貯留部51に装着されたインクパック52のインクの残量を検出するセンサーであり、例えば、重量センサーを用いることができる。
【0027】
補助タンク53は、プリンター1がインクの成分の沈降状態を判定する処理に利用される。プリンター1は、顔料成分を含むインクを利用できる。例えば、白色インクは、カラー画像の背景色として白色を印刷するためのインクであり、沈降性の白色顔料を含有する。白色顔料としては、例えば、金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。金属酸化物としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等が挙げられる。イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックの各色、或いはその他の色のインクも、基材としての液体に、色剤として顔料を分散させた顔料インクを用いることができる。これらのインクは、時間の経過に伴って色剤が沈降する性質を有し、沈降性のインクと呼ばれる。
【0028】
インクに含まれる顔料が沈降した場合、印刷ヘッド41に供給されるインクは、基剤を多く含み、顔料の含有量が少ない状態となる。このため、インク供給機構50を流れるインクの粘度が減少する。そこで、本実施形態では、インクの粘度を測定することにより、インクにおける顔料の沈降の発生状態、すなわちインクの沈降状態を検出する。
具体的には、プリンター1は、主貯留部51から補助タンク53にインクを輸送し、補助タンク53にインクを所定量だけ溜めるのに要する時間を求め、この時間を、インクの粘度の指標として利用する。ここで、所定量とは、本実施形態では第2目標量L2と第1目標量L1との差のインク量M1であり、第2目標量L2<第1目標量L1である。
【0029】
一方、ヘッド供給用タンク54は、印刷ヘッド41にインクを円滑に供給するためにインクを貯留するタンクであり、プリンター1は、ヘッド供給用タンク54のインクが不足しないよう制御する。具体的には、ヘッド供給用タンク54にインクを補充する目安として第3目標量L3が設定され、インク量が第3目標量L3を下回った場合にはヘッド供給用タンク54にインクが補充される。この場合、ヘッド供給用タンク54のインク量が第4目標量L4に達したときに、補充が終了する。つまり、ヘッド供給用タンク54には、1回の補充動作で、第4目標量L4と第3目標量L3の差に相当するインク量M2のインクが供給される。
【0030】
ここで、ヘッド供給用タンク54におけるインク量M2は、補助タンク53におけるインク量M1よりも多い。このため、補助タンク53のインク量が第1目標量L1に達した後で、ヘッド供給用タンク54のインク量が第3目標量L3となった場合、補助タンク53のインクを、インク量が第2目標量L2となるまでヘッド供給用タンク54に輸送できる。これにより、インクの沈降状態を判定する処理を行わない場合には、補助タンク53に貯留されるインクの量を最小限にすることができる。補助タンク53のインク量が少ない場合、プリンター1は、主貯留部51からバイパス管95を経由して、ヘッド供給用タンク54にインクを供給する。
【0031】
[3.プリンターの制御系]
図3は、プリンター1の制御系の構成を示すブロック図である。
プリンター1は、プリンター1の各部を制御する制御部100を備える。制御部100は、プログラムを実行するプロセッサー101、及び、記憶部110を備える。プロセッサー101は、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、マイコン等で構成される演算処理装置である。プロセッサー101は、複数のハードウェアにより構成されてもよいし、単一のプロセッサーで構成されてもよい。プロセッサー101が、後述する各部の機能を実現するようプログラムされたハードウェアであってもよい。すなわち、プロセッサー101は、制御プログラム111をハードウェア回路として搭載した構成であってもよい。この場合、例えば、プロセッサー101は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)で構成される。
以下の説明では、プロセッサー101が制御プログラム111を実行することにより、制御部100の各種の機能を実現する構成例を説明する。
【0032】
記憶部110は、プロセッサー101が実行するプログラムや、プロセッサー101により処理されるデータを記憶する記憶領域を有する。記憶部110は、プロセッサー101が実行する制御プログラム111、及び、プリンター1の動作に関する各種の設定値を含む設定データ112を記憶する。記憶部110は、プログラムやデータを不揮発的に記憶する不揮発性記憶領域を有する。また、記憶部110は、揮発性記憶領域を備え、プロセッサー101が実行するプログラムや処理対象のデータを一時的に記憶するワークエリアを構成してもよい。
【0033】
制御部100には、搬送ユニット10、ヘッドユニット11、インク供給ユニット12、検出器群13、操作部14、インターフェース15、及び、報知部16が接続される。
搬送ユニット10は、図1に示した繰出ローラー43、搬送ローラー45、46、巻取ローラー48を駆動する不図示のモーター等を含む。搬送ユニット10は、制御部100の制御に従って、印刷媒体Mを搬送する。
【0034】
ヘッドユニット11は、印刷ヘッド41を含み、制御部100の制御に従ってインクを印刷ヘッド41によって吐出し、印刷媒体Mに画像を形成する。
インク供給ユニット12は、制御部100の制御に従ってインク供給機構50を動作させ、印刷ヘッド41にインクを供給する。インク供給ユニット12は、第1バルブ駆動部21、第2バルブ駆動部22、第3バルブ駆動部23、及び、ポンプ駆動部24を備える。第1バルブ駆動部21はバルブ71を開閉する駆動部であり、第2バルブ駆動部22は切替ユニット73を切り替える駆動部であり、第3バルブ駆動部23はバルブ76を開閉する駆動部である。バルブ71、74、75、76は、不図示のモーターの動力により開閉する電動弁や、ソレノイドにより開閉する電磁弁で構成することができる。この場合、第1バルブ駆動部21、及び第2バルブ駆動部22は、モーター或いはソレノイドで構成される。バルブ76は、動力源を必要としない逆止弁で構成することもできる。第3バルブ駆動部23は、第1バルブ駆動部21と同様に構成されるが、バルブ76が逆止弁である場合、第3バルブ駆動部23は省略される。
【0035】
ポンプ駆動部24は、メインポンプ72、及び、補助ポンプ77を駆動するモーター等を含み、制御部100の制御に従って、メインポンプ72及び補助ポンプ77をそれぞれ動作させる。
【0036】
検出器群13は、プリンター1の動作に関する検出を行う各種のセンサーを含む。例えば、検出器群13は、繰出ローラー43に巻かれた印刷媒体Mの残量を検出する残量センサー、プラテン42の上流及び/または下流の検出位置で印刷媒体Mの有無を検出する媒体センサー等を含んでもよい。また、印刷ヘッド41のノズルの詰まりを検出する各種のセンサーを含んでもよい。また、印刷ヘッド41は、印刷媒体Mの搬送量を検出するロータリーエンコーダーを備えてもよい。
【0037】
検出器群13が備えるセンサーの一例として、図3に、第1インク量検出部31、第2インク量検出部32、及び、インクセンサー33を示す。第1インク量検出部31は、図2に示したように、補助タンク53のインク量を検出するユニットである。第2インク量検出部32は、ヘッド供給用タンク54のインク量を検出するユニットである。インクセンサー33は、主貯留部51に装着されたインクパック52のインク残量を検出するセンサーであり、例えば図2に示した主貯留部インクセンサー85を含む。検出器群13は、センサーの検出値を示す信号を、制御部100により指定されたタイミングで、或いは、予め設定された周期で、制御部100に出力する。
【0038】
操作部14は、プリンター1のユーザーよる操作を受け付ける操作子やタッチパネルを備える。操作部14は、ユーザーによる操作を受け付けた場合、操作内容を示す信号を制御部100に出力する。
【0039】
インターフェース15は、プリンター1の外部の装置に接続される。本実施形態では、インターフェース15にホストコンピューター2が接続される。ホストコンピューター2は、プリンター1が印刷する画像のデータや、プリンター1に対する印刷指示を含む制御データを、インターフェース15に出力する。インターフェース15は、例えば、ケーブルを接続するコネクター及びインターフェース回路を備える有線インターフェースユニットであってもよい。また、インターフェース15は、ホストコンピューター2と無線データ通信を実行する無線通信インターフェースであってもよい。
【0040】
報知部16は、制御部100の制御に従って報知を実行する。報知部16は、例えば、液晶表示パネルを備え、報知内容を示す文字や画像を表示する。また、報知部16は、LED(Light Emitting Diode)インジケーターを備え、制御部100の制御に従ってLEDを点灯或いは点滅させる構成であってもよい。報知部16は、スピーカー及び音声出力回路を備え、制御部100の制御に従って報知音を出力する構成であってもよい。
【0041】
図4は、制御部100の機能ブロック図である。
制御部100は、印刷制御部121、インク供給制御部122、計測部123、判定部124、及び、報知制御部125を備える。これらの各部は、上述したように、例えば、プロセッサー101が制御プログラム111を実行することによって、ソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される。
【0042】
印刷制御部121は、インターフェース15を介してホストコンピューター2から入力されたデータに基づいて、搬送ユニット10及びヘッドユニット11を駆動し、印刷媒体Mへの印刷を実行する。
【0043】
インク供給制御部122は、インク供給ユニット12を制御して、印刷ヘッド41にインクを供給する。インク供給制御部122は、所定のタイミングで、インクの沈降状態を判定するための制御を実行する。この場合、インク供給制御部122は、補助タンク53のインク量を第2目標量L2に合わせ、補助タンク53に第1目標量L1までインクを供給する。
【0044】
計測部123は、時間を測定する。計測部123は、インクの沈降状態を判定する処理において、補助タンク53のインク量が第2目標量L2から第1目標量L1に変化するのに要する時間を計測する。
判定部124は、計測部123が計測した時間に基づき、インクの沈降状態を判定する。
報知制御部125は、判定部124の判定結果に基づいて、報知部16による報知を実行させる。
【0045】
[4.インクの沈降状態の判定]
図5は、プリンター1の動作を示すフローチャートであり、インクの沈降状態を判定する判定処理を示す。
【0046】
図5に示す例では、プリンター1の制御部100は、プリンター1の電源が投入された際に、判定処理を実行する。ステップST13-ST20、ST22-ST23の動作はインク供給制御部122が実行し、ステップST24、ST25は判定部124が実行し、ステップST26は報知制御部125が実行する。
【0047】
プリンター1の電源がオンにされると(ステップST11)、制御部100は、プリンター1の各部を初期化する(ステップST12)。ステップST12で、制御部100は、例えば、検出器群13を構成する各種のセンサーの初期化、モーターの初期位置の検出等を実行する。制御部100は、補助タンク53のインク量を第1インク量検出部31により検出し、インク量が第2目標量L2以上であるか否かを判定する(ステップST13)。ステップST13で、制御部100は、例えば、第2センサー82により第2目標量L2の検出位置でインクが検出されているか否かを判定する。
【0048】
補助タンク53のインク量が第2目標量L2以上である場合(ステップST13;YES)、制御部100は、ヘッド供給用タンク54のインク量が第3目標量L3以上であるか否かを判定する(ステップST14)。すなわち、第3センサー83によって第3目標量L3の検出位置でインクが検出されているか否かを判定する。
ここで、インク量が第3目標量L3以上である場合(ステップST14;YES)、制御部100は、所定周期でステップS14の判定を繰り返し、ステップST14で否定判定するまで待機する。この間、例えば、プリンター1が印刷ヘッド41のメンテナンス或いは印刷を実行することにより、ヘッド供給用タンク54のインク量が減少する。すなわち、制御部100は、ヘッド供給用タンク54にインクを受け入れ可能な空き容量がない場合、ヘッド供給用タンク54のインク量が減少するまで待機する。
【0049】
ヘッド供給用タンク54のインク量が第3目標量L3より少ない場合(ステップST14;NO)、制御部100は、補助ポンプ77の動作を開始させる(ステップST15)。これにより、補助タンク53からヘッド供給用タンク54にインクが輸送される。補助ポンプ77の動作中、制御部100は、補助タンク53のインク量が第2目標量L2以上であるか否かを判定する(ステップST16)。ステップST16で、制御部100は、例えば、第2センサー82によって第2目標量L2の検出位置でインクが検出されているか否かを判定する。インク量が第2目標量L2以上である場合(ステップST16;YES)、制御部100は、所定時間毎にステップST16の判定を繰り返す。インク量が第2目標量L2より少ない場合(ステップST16;NO)、制御部100は、補助ポンプ77を停止させ(ステップST17)、ステップST18に移行する。また、ステップST13において、インク量が第2目標量L2より少ないと判定された場合(ステップST13;NO)、制御部100はステップST18に移行する。
【0050】
ステップST18で、制御部100は、切替ユニット73によって、インク供給管91からインクを供給する経路を、供給経路Aに切り替える(ステップST18)。続いて、制御部100は、メインポンプ72の動作を開始させる(ステップST19)。メインポンプ72の動作中、制御部100は、補助タンク53のインク量が第2目標量L2に達したか否かを判定する(ステップST20)。ステップST20の判定は、ステップST16と同様に実行される。インク量が第2目標量L2に達していない場合(ステップST20;NO)、制御部100は、所定時間毎にステップST18の判定を繰り返す。インク量が第2目標量L2である場合(ステップST20;YES)、補助タンク53のインク量が増加して第2目標量L2に到達したことを意味する。このとき、制御部100は、計測部123による時間の計測を開始する(ステップST21)。計測中、制御部100は、補助タンク53のインク量を第1インク量検出部31により検出し、インク量が第1目標量L1に達しているか否かを判定する(ステップST22)。制御部100は、例えば、第1センサー81により第1目標量L1の検出位置におけるインクが検出されているか否かを判定する。インク量が第1目標量L1に達していない場合(ステップST22;NO)、制御部100は、所定時間毎にステップST21の判定を繰り返す。
【0051】
インク量が第1目標量L1に達した場合(ステップST22;YES)、制御部100は、メインポンプ72を停止させる(ステップST23)。制御部100は、インク量が第2目標量L2から第1目標量L1に増加するまでに要した所要時間を算出する(ステップST24)。制御部100は、ステップST24で算出した時間に基づき、インクの沈降状態を判定する(ステップST25)。
【0052】
インクの沈降状態の判定により、インク成分の沈降が発生していると判定した場合(ステップST25;YES)、制御部100は、報知部16による報知を実行し(ステップST26)、ステップST27に移行する。ステップST26の報知は、例えば、ユーザーに、インク成分の沈降が発生したことを知らせる内容や、インクパック52のインクの攪拌を案内する内容である。インク成分の沈降が発生していないと判定した場合(ステップST25;NO)、制御部100は、報知を実行せずにステップST27に移行する。この場合、制御部100は、報知部16により、インク成分の沈降がないことを報知してもよい。
ステップST27で、制御部100は、切替ユニット73によって、インク供給管91からインクを供給する経路を供給経路Bに切り替え(ステップST27)、本処理を終了する。
【0053】
[5.印刷中におけるインクの供給]
図6は、プリンター1の動作を示すフローチャートであり、プリンター1が印刷動作を実行可能な状態におけるインクの供給に関する制御を示す。例えば、図6の動作は、ホストコンピューター2がプリンター1に送信した制御データや画像データに基づいて、プリンター1が印刷を実行している間に、行われる。図6の動作は、例えばインク供給制御部122により実行される。
【0054】
制御部100は、第2インク量検出部32によりヘッド供給用タンク54のインク量を検出し、インク量が第3目標量L3より少ないか否かを判定する(ステップST31)。ステップST31で、制御部100は、例えば、第3センサー83が第3目標量L3の検出位置においてインクを検出しているか否かに基づき判定を行う。
インク量が第3目標量L3以上である場合(ステップST31;NO)、制御部100は、本処理を終了する。制御部100は、図6の動作を、所定周期で実行する。
【0055】
ヘッド供給用タンク54のインク量が第3目標量L3より少ない場合(ステップST31;YES)、制御部100は、第1インク量検出部31により補助タンク53のインク量を検出する。制御部100は、インク量が第2目標量L2以上であるか否かを判定する(ステップST32)。ステップST32の判定は、例えば、ステップST16と同様に実行される。
【0056】
補助タンク53のインク量が第2目標量L2より少ない場合(ステップST32;NO)、制御部100は、後述するステップST38に移行する。
補助タンク53のインク量が第2目標量L2以上である場合(ステップST32;YES)、制御部100は、補助ポンプ77の動作を開始させる(ステップST33)。補助ポンプ77の動作中、制御部100は、ヘッド供給用タンク54のインク量が第4目標量L4に達したか否かを判定する(ステップS34)。ステップST34において、制御部100は、例えば、第4センサー84によって第4目標量L4の検出位置でインクが検出されているか否かを判定する。
インク量が第4目標量L4に達した場合(ステップST34;YES)、制御部100は、補助ポンプ77を停止させ(ステップST35)、本処理を終了する。
【0057】
ヘッド供給用タンク54のインク量が第4目標量L4に達していない場合(ステップST34;NO)、制御部100は、補助タンク53のインク量が第2目標量L2以上であるか否かを判定する(ステップST36)。ステップST36、ステップST16と同様に実行される。
ステップST36で、補助タンク53のインク量が第2目標量L2以上である場合(ステップST36;YES)、制御部100は、ステップST34に戻り、所定時間毎にステップST34,ST36の判定を繰り返す。
【0058】
補助タンク53のインク量が第2目標量L2より少ない場合(ステップST36;NO)、制御部100は、補助ポンプ77を停止させ(ステップST37)、ステップST38に移行する。
ステップST38で、制御部100は、メインポンプ72の動作を開始させる(ステップST38)。メインポンプ72の動作中、制御部100は、ヘッド供給用タンク54のインク量が第4目標量L4に達したか否かを判定する(ステップST39)。ステップST39で、制御部100は、例えばステップS34と同様に判定を行う。インク量が第4目標量L4に達していない場合(ステップST39;NO)、制御部100は、所定時間毎にステップST39の判定を繰り返す。
【0059】
インク量が第4目標量L4に達した場合(ステップST39;YES)、ヘッド供給用タンク54へのインクの補充が完了したことを意味する。この場合、制御部100は、メインポンプ72を停止させ(ステップST40)、本処理を終了する。
【0060】
図6の動作は、ヘッド供給用タンク54のインクが第3目標量L3より少なくなった場合に、ヘッド供給用タンク54にインクを補充するインク補充動作に相当する。ステップST33-ST36の動作は、補助タンク53からヘッド供給用タンク54にインクを輸送する第1インク補充動作に相当する。ステップST38-ST40の動作は、補助タンク53のインクの量が第2目標量L2より少ない場合に主貯留部51からバイパス管95を通じてヘッド供給用タンク54にインクを輸送する第2インク補充動作に相当する。
【0061】
制御部100は、第1インク補充動作と、第2インク補充動作と、を切り替えて実行することにより、補助タンク53に貯留されたインクを、主貯留部51のインクより優先してヘッド供給用タンク54に供給する。これにより、インクの沈降状態の判定に用いた補助タンク53のインクを、速やかに印刷ヘッド41により消費でき、補助タンク53におけるインクの滞留を防止できる。従って、補助タンク53におけるインク成分の沈降を抑制することができ、これにより、補助タンク53を利用して高精度でインクの沈降状態を判定できる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態のプリンター1は、印刷媒体Mに画像を形成するプリンター1であって、インクを吐出する印刷ヘッドと、インクを貯留する主貯留部51と、を備える。プリンター1は、主貯留部51から印刷ヘッドにインクを輸送する流路に配置され、主貯留部51から送出されたインクを貯留する補助タンク53を備える。プリンター1は、補助タンク53から印刷ヘッドにインクを輸送する流路に配置され、インクを貯留するヘッド供給用タンク54を備える。また、主貯留部51から補助タンク53にインクを輸送するメインポンプ72と、補助タンク53に貯留されているインクの量を検出する第1インク量検出部31と、を備える。プリンター1は、インクの輸送に要した時間を計測する計測部123と、主貯留部51に貯留されているインクの沈降状態を判定する判定処理を行う制御部100と、を備える。制御部100は、判定処理で、メインポンプ72を駆動して主貯留部51から補助タンク53へインクを輸送させる。制御部100は、補助タンク53に貯留されているインクの量が第1目標量L1に達するまでに要した時間を計測部123により計測し、計測部123の計測時間に基づいてインクの沈降状態を判定する。
【0063】
プリンター1の制御部100が実行する制御方法は、判定処理において、メインポンプ72を駆動して主貯留部51から補助タンク53へインクを輸送する。インクを輸送することにより補助タンク53に貯留されているインクの量が第1目標量L1に達するまでに要した時間を計測する。計測時間に基づいて主貯留部51に貯留されているインクの沈降状態を判定する判定処理を行う。
【0064】
プリンター1、及び、プリンター1の制御方法によれば、補助タンク53にインクを輸送し、インクの量が第1目標量L1に達するまでの時間を、インクの粘度の指標として、インクの沈降状態を判定できる。これにより、印刷ヘッド41にインクを供給可能な状態で、プリンター1におけるインクの沈降状態を判定できる。例えば、プリンター1からインクパック52を取り外したり、インク供給機構50からインクを取り出したりすることなく、インクの沈降が発生しているか否かを判定できる。
【0065】
プリンター1は、報知部16を備え、制御部100は、計測部123の計測時間に基づくインクの沈降状態の判定結果に応じて、報知部16により報知を実行させる。これにより、インクの沈降状態をユーザーに知らせることができ、ユーザーは、例えばインクを攪拌するなどの対処を行うことができる。
【0066】
プリンター1において、制御部100は、プリンター1の電源が投入されてプリンター1を起動するときに、判定処理を実行する。これにより、プリンター1の電源がオフにされていた期間にインク成分の沈降が発生したか否かを、印刷を実行する前に判定できる。
【0067】
制御部100は、判定処理において、補助タンク53のインクの量が、第1目標量L1よりも少ない第2目標量L2から、第1目標量L1に達するまでに要した時間を計測部123により計測する。制御部100は、判定処理を開始する際に、第1インク量検出部31により検出された補助タンク53のインクの量が第2目標量L2と異なる場合、補助タンク53のインクの量を第2目標量L2とする調整を行ってから判定処理を実行する。これにより、補助タンク53のインク量が第2目標量L2に調整された後に、インク量が第2目標量L2から第1目標量L1に増加する間の所要時間が計測される。例えば、制御部100は、補助タンク53のインク量が第2目標量L2以上である場合に、補助ポンプ77を動作させてインク量を第2目標量L2より少ない量まで減少させる。また、制御部100は、補助タンク53のインク量が第2目標量L2より少ない場合は、メインポンプ72を動作させて補助タンク53にインクを供給し、インク量が第2目標量L2に達してから計測を実行する。このため、インク量が第2目標量L2から第1目標量L1に変化する間の所要時間を正確に計測できる。
【0068】
プリンター1は、補助タンク53からヘッド供給用タンク54にインクを輸送する補助ポンプ77を備える。制御部100は、判定処理を開始する際に、第1インク量検出部31により検出された補助タンク53のインクの量を検出する。インクの量が第2目標量L2以上である場合、第2輸送部により補助タンク53からヘッド供給用タンク54にインクを輸送することによって、補助タンク53のインクの量を第2目標量L2まで減少させる。これにより、補助タンク53のインク量が第2目標量L2から第1目標量L1に変化する間の所要時間を、より正確に計測できる。
【0069】
制御部100は、判定処理を開始する際に、第1インク量検出部31により検出された補助タンク53のインクの量を検出する。インクの量が第2目標量L2より少ない場合、メインポンプ72により主貯留部51から補助タンク53にインクを輸送することによって、補助タンク53のインクの量を第2目標量L2まで増加させる。これにより、補助タンク53のインク量が第2目標量L2から第1目標量L1に変化する間の所要時間を、より正確に計測できる。
【0070】
プリンター1は、主貯留部51とヘッド供給用タンク54とを接続するバイパス管95と、ヘッド供給用タンク54のインクの量を検出する第2インク量検出部32と、を備える。プリンター1は、メインポンプ72によって、主貯留部51からヘッド供給用タンク54にインクを輸送可能である。制御部100は、ヘッド供給用タンク54のインクの量が第3目標量L3より少ない場合はヘッド供給用タンク54にインクを輸送するインク補充動作を実行する。インク補充動作は、補助タンク53のインクの量が第2目標量L2以上である場合に、補助タンク53からヘッド供給用タンク54にインクを輸送する第1インク補充動作を含む。インク補充動作は、補助タンク53のインクの量が第2目標量L2より少ない場合に主貯留部51からバイパス管95を通じてヘッド供給用タンク54にインクを輸送する第2インク補充動作を含む。
これにより、プリンター1が印刷を実行中に、ヘッド供給用タンク54に適切にインクを供給できる。また、第1インク補充動作と、第2インク補充動作とを実行可能なため、例えば、第1インク補充動作を実行して、インクの沈降状態の判定に用いた補助タンク53のインクを、速やかに印刷ヘッド41により消費できる。このため、補助タンク53におけるインクの滞留を防止できる。従って、補助タンク53におけるインク成分の沈降を抑制でき、補助タンク53を利用したインクの沈降状態の判定の精度を高めることができる。
【0071】
プリンター1は、主貯留部51からインクを輸送する経路として、バイパス管95と、補助タンク53に向かう経路とを切り替える切替ユニット73を備える。制御部100は、第2インク補充動作において、次の動作を実行する。すなわち、ヘッド供給用タンク54のインクの量が第4目標量L4になったことが検出される前に、補助タンク53のインクの量が第2目標量L2になったことが検出された場合には、切替ユニット73によってバイパス管95に切り替える。第4目標量L4は、第3目標量L3より多い量である。制御部100は、第2インク量検出部32によってヘッド供給用タンク54のインクの量が第4目標量L4になったことが検出されるまで、主貯留部51からヘッド供給用タンク54へインクを輸送する。これにより、ヘッド供給用タンク54にインクを供給する際に、補助タンク53に貯留されているインクを優先してヘッド供給用タンク54に輸送することができ、補助タンク53におけるインクの滞留を防止できる。そして、補助タンク53のインクの量が第2目標量L2より少なくなった場合に、補助タンク53を経由せずに、主貯留部51からヘッド供給用タンク54にインクを供給する。このため、補助タンク53におけるインクの滞留を、より確実に防止できる。
【0072】
プリンター1において、第4目標量L4と第3目標量L3との差に相当するインク量M2は、第1目標量L1と第2目標量L2との差に相当するインク量M1よりも多い。このため、ステップST31において、ヘッド供給用タンク54のインクの量が第3目標量L3以下であれば、補助タンク53に貯留されたインクをヘッド供給用タンク54に収容できる。補助タンク53からヘッド供給用タンク54に輸送されるインクは最大でインク量M1であり、ヘッド供給用タンク54の容量であるインク量M2は、インク量M1より多い。このため、補助タンク53からヘッド供給用タンク54にインクを輸送し、補助タンク53に滞留するインク量を確実に減少させることができる。従って、インク補充動作を実行することにより、補助タンク53に貯留されたインクの大半をヘッド供給用タンク54に輸送できるので、補助タンク53におけるインクの滞留を、より確実に防止できる。
【0073】
[6.他の実施形態]
上述した実施形態は、本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
【0074】
例えば、上述した実施形態では、第1インク量検出部31により検出されたインク量について、制御部100が、第1目標量L1以上であるか第1目標量L1より少ないかを判定する構成を例示した。同様に、補助タンク53のインク量について、第2目標量L2以上であるか、第2目標量L2より少ないかを判定し、第2インク量検出部32によって検出されたインク量についても同様に判定した。これは具体的な実施態様の例に過ぎず制御部100は、例えば、第1目標量L1より多いか、第1目標量L1以下かを判定してもよく、第2目標量L2、第3目標量L3、及び第4目標量L4についても同様である。
【0075】
また、上述した実施形態では、ステップST26で報知を行った後、ステップST27で供給経路Bへの切替を行って処理を終了する構成を説明した。ここで、ステップST26とステップST27との間に、補助タンク53に貯留されたインクをヘッド供給用タンク54に輸送する工程を追加してもよい。具体的には、前述のステップST31と同様の判定を行い、肯定判定されない場合は待機する。ここで肯定判定した場合はステップST33と同様に補助ポンプ77を駆動する。補助ポンプ77の動作開始後はステップST34、ST36、ST37と同様の動作を実行する。また、ステップST34で肯定判定した場合、すなわちヘッド供給用タンク54のインク量が第4目標量L4であると判定した場合には、補助ポンプ77を停止した上で所定時間待機し、再びステップST31と同様の判定、すなわち、ヘッド供給用タンク54のインク量を判定すればよい。そして、補助タンク53のインク量が第2目標量L2より少なくなった場合に、補助ポンプ77を停止させて、ステップST27に移行する。この例では、インクの沈降状態を判定した後に、補助タンク53に貯留されたインクを速やかに排出することにより、補助タンク53におけるインクの滞留を、より確実に防止できるという利点がある。例えば、図5に示す動作の実行後、印刷開始までに時間が経過しても、補助タンク53におけるインクの滞留を防止できる。さらに、上記の動作を行うことにより、次回プリンター1の電源が投入された際に、補助タンク53に貯留されているインクが第2目標量L2より少ない状態となる。このため、図5に示す動作を開始した際に、補助タンク53に貯留されているインクを第2目標量より少なくするための動作を省略でき、インクの沈降状態を判定する判定処理を素早く実施することが可能になる。
【0076】
また、上述したプリンター1の構成は一具体例に過ぎない。例えば、主貯留部51に装着されるインクパック52の数や、主貯留部51からインクを輸送する具体的な構成は任意に変更可能である。プリンター1において使用されるインクの色の数および印刷ヘッド41の数も適宜に変更可能である。また、図1に示したプリンター1の構成において、印刷媒体Mの搬送経路に、インクを乾燥させる乾燥装置や、インクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射装置等を配置した構成とすることも勿論可能である。その他のプリンター1の構成についても適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…プリンター(印刷装置)、10…搬送ユニット、11…ヘッドユニット、12…インク供給ユニット、13…検出器群、14…操作部、15…インターフェース、16…報知部、21…第1バルブ駆動部、22…第2バルブ駆動部、23…第3バルブ駆動部、24…ポンプ駆動部、31…第1インク量検出部(第1検出部)、32…第2インク量検出部(第2検出部)、33…インクセンサー、41…印刷ヘッド、42…プラテン、43…繰出ローラー、48…巻取ローラー、50…インク供給機構、51…貯留部(第1インク貯留部)、52…インクパック、53…補助タンク(第2インク貯留部)、54…ヘッド供給用タンク(第3インク貯留部)、72…メインポンプ(第1輸送部)、73…切替ユニット(切替機構)、71、74、75、76…バルブ、77…補助ポンプ(第2輸送部)、81…第1センサー、82…第2センサー、83…第3センサー、84…第4センサー、85…貯留部インクセンサー、91、92、93…インク供給管、94…吸込管、95…バイパス管(バイパス経路)、100…制御部、101…プロセッサー、121…印刷制御部、122…インク供給制御部、123…計測部、124…判定部、125…報知制御部、A、B…供給経路、L1…第1目標量、L2…第2目標量、L3…第3目標量、L4…第4目標量、M…印刷媒体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6