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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】温度管理用物品
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G06K19/07 170
G06K19/07 020
G06K19/07 230
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020126275
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023370
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】小林 燃
【審査官】後藤 彰
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-505418(JP,A)
【文献】特開2015-168481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度管理用非接触ICタグと、温度管理用非接触ICタグを保持する保持体と、を備えた温度管理用物品であって、
温度管理用非接触ICタグは、外部装置との無線通信を可能とするアンテナと、温度センサと、温度センサからの温度情報を取得、記憶し、外部装置との通信を制御するICチップと、ICチップに電力を供給する電池と、を備えており、
保持体は、互いに直交する少なくとも2つの平板状部材からなり、少なくともアンテナが配置される平板状部材は外部装置との通信を阻害しない材料からなる事を特徴とする温度管理用物品。
【請求項2】
前記温度管理用非接触ICタグが、前記保持体の前記平板状部材の表面に備えられている事を特徴とする請求項1に記載の温度管理用物品。
【請求項3】
前記温度管理用非接触ICタグが、前記保持体の前記平板状部材の内部に埋め込まれている事を特徴とする請求項1に記載の温度管理用物品。
【請求項4】
前記アンテナが配置されている前記保持体の平板状部材と、前記アンテナ以外が配置されている平板状部材と、が異なる事を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の温度管理用物品。
【請求項5】
前記アンテナが配置されている前記保持体の平板状部材と、前記アンテナ以外が配置されている平板状部材と、が同じである事を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の温度管理用物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温容器の温度履歴情報を取得し記録する温度管理用非接触ICタグを備えた温度管理用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
保温や保冷などの温度管理が必要な物品を生産拠点から消費地まで輸送する場合、定温輸送用の保温容器に物品を収納して輸送している。更に、その輸送過程で所定の温度管理が確実になされたかどうかを確認できる技術が実用化されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、保温対象物を低温に保持することができ、取り扱い性に優れた保温ケースを提供することを課題として、ターポリンシートと、複数層の合成樹脂製不織布シートと、ポリエステル帆布の各層がこの順に積層された積層体を使用した保温ケースが開示されている。この保温ケースは、保温ケースの内部の温度を計測し、記録する温度計測・記録部を有する。この温度計測・記録部において温度を計測する計測部の素子部は、保温シートに埋め込んで固定され、温度を検知する部位が、前記保温シートが箱状に形成された内部の空間に露出されている。
【0004】
しかしながら、この保温ケースは特殊な積層体を使用した専用保温ケースである為、コストが高い。また、この保温ケースの中では物品が固定されておらず、輸送時に収容された対象物が動いて、ICタグへの圧力や衝撃となってICタグが破損する虞がある。
【0005】
また、特許文献2は、通箱に収容された物品の物品情報の随時読取りおよび送信を可能にして、輸送中(出荷時、輸送途上、回収時)の物品の所在位置、安全性、保全性の確認および輸送中に事故が発生した場合の迅速な対処を可能にする物品輸送管理法を提供することを課題としている。
【0006】
その解決手段として、(a)少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと、外側面に設けられた外部通信用アンテナと、電源とを含むRFIDリーダライタを備え、側面にRFIDタグが取り付けられた物品を、前記RFIDタグのアンテナが前記内部通信用アンテナの少なくとも一つに対面するように保持する物品保持具を備えた通箱を用意し、(b)側面にRFIDタグを取り付けられた1つ以上の物品を、前記RFIDタグのアンテナが前記通箱の内部通信用アンテナの少なくとも一つに対面するように前記通箱の物品保持具に保持し、(c)前記通箱のRFIDリーダライタを起動させて、前記内部通信用アンテナと前記物品のRFIDタグのアンテナとの間で通信させて前記RFIDタグに記録されている前記物品に関する情報である物品情報を前記RFIDリーダライタに読み取り、(d)その後、任意の時間に、前記RFIDリーダライタの外部通信用アンテナを介して前記RFIDリーダライタと輸送者の携帯端末との間で通信して、前記RFIDタグから読み取った前記物品情報を前記携帯端末から前記通箱の回収先および/または出荷元の情報処理装置に伝送することを特徴とする物品輸送管理方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、この物品輸送管理方法は、専用の通箱を使用し、且つ通箱にリーダライタを搭載している為、コストが高い。また、通箱搭載リーダライタでなく、外部のりーダライタを使用するとした場合、ICタグが取り付けられた物品を個別に通箱から取り出して読み取る必要がある、ICタグは物品に取り付けられており、剥がして再利用することができない、ICタグは物品に取り付けられており、ICタグが通信できるためには物品の包装材料に金属蒸着シートなどを使用できない、などの問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5747258号公報
【文献】特許第6220825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の事情に鑑み、本発明は、専用の保温ケースを必要とせず、再利用可能であり、破損する虞が無く、物品に貼り付けずに使用する事ができ、保温ケースから取り出さずに、記録した保温ケースの温度履歴データを読取り可能な温度管理用具を提供する事を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決する手段として、本発明の請求項1に記載の発明は、温度管理用非接触ICタグと、温度管理用非接触ICタグを保持する保持体と、を備えた温度管理用物品であって、
温度管理用非接触ICタグは、外部装置との無線通信を可能とするアンテナと、温度センサと、温度センサからの温度情報を取得、記憶し、外部装置との通信を制御するICチップと、ICチップに電力を供給する電池と、を備えており、
保持体は、互いに直交する少なくとも2つの平板状部材からなり、少なくともアンテナが配置される平板状部材は外部装置との通信を阻害しない材料からなる事を特徴とする温度管理用物品である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記温度管理用非接触ICタグが、前記保持体の前記平板状部材の表面に備えられている事を特徴とする請求項1に記載の温度管理用物品である。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、前記温度管理用非接触ICタグが、前記保持体の前記平板状部材の内部に埋め込まれている事を特徴とする請求項1に記載の温度管理用物品である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、前記アンテナが配置されている前記保持体の平板状部材と、前記アンテナ以外が配置されている平板状部材と、が異なる事を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の温度管理用物品である。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、前記アンテナが配置されている前記保持体の平板状部材と、前記アンテナ以外が配置されている平板状部材と、が同じである事を特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の温度管理用物品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の温度管理用物品によれば、温度センサを備えた温度管理用非接触ICタグが、互いに直交する少なくとも2つの平板状部材からなる保持体に保持された構成となっている。単に、温度管理用非接触ICタグを平板状部材に貼り付けるだけでも本発明の温度管理用物品を作る事ができる。その為、本温度管理用物品を従来から使用してきた保温ケースなどの保温容器に入れるだけで温度履歴情報を取得可能となる。また、取り出して再利用することができる。また、直交する2つの平板状部材のうち、非接触ICタグのアンテナを保温ケースの上面に向く様に配置する事で、保温ケースの上面からリーダライタを用いて、温度管理用非接触ICタグの温度履歴情報を取得する事が可能となる。また、本発明の温度管理用非接触ICタグは保持体に保持されている事で、機械的な強度が補強され
ている為、外力による損傷を受け難くなっている。以上の事から、本発明の温度管理用物品は、低コストで、再利用可能であり、破損する虞が無く、物品に貼り付けずに使用する事ができ、保温ケースから取り出さずに、記録した保温ケースの温度履歴データを読取り可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の温度管理用物品の一例を示す断面説明図。
図2】本発明の温度管理用物品の一例を示す断面説明図。
図3】本発明の温度管理用物品の一例を示す断面説明図。
図4】本発明の温度管理用物品で使用する温度管理用非接触ICタグの構成を例示する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<温度管理用物品>
本発明の温度管理用物品について、図1図4を用いて説明する。
本発明の温度管理用物品20、20-1、20-2は、温度管理用非接触ICタグ10と、温度管理用非接触ICタグ10を保持する保持体7と、を備えた温度管理用物品である。
【0018】
ここで温度管理用物品とは、温度管理が必要な品物を収納した保温ケース(または、保温容器)の内部の温度を計測し、その保温ケース内の温度履歴を記憶しておき、リーダライタなどの外部装置を用いて、その温度履歴情報を読み取る事を可能とする装置を指している。
【0019】
図4に示す様に、温度管理用非接触ICタグ10は、外部装置との無線通信を可能とするアンテナ1と、温度センサ3と、温度センサ3からの温度情報を取得、記憶し、外部装置との通信を制御するICチップ2と、ICチップ2に電力を供給する電池6と、を備えている。
【0020】
温度管理用非接触ICタグ10のアンテナ1と、アンテナ1以外の部分を、折り曲げ易くする様に、折り曲げ線5が備えられていても良い。アンテナ1とICチップ2、電池6とICチップ2、温度センサ3とICチップ2、は配線4により接続されている。
【0021】
保持体7は、互いに直交する、少なくとも2つの平板状部材からなり、少なくともアンテナ1が配置される平板状部材は外部装置との通信を阻害しない材料からなる。
【0022】
図1は、本発明の温度管理用物品20の一例を示した説明図である。温度管理用物品20は、保持体7に温度管理用非接触ICタグ10が備えられた構成を持っている。保持体7は、2つの平板状部材7-1、7-2から構成されている。平板状部材7-1と7-2は、1つの辺で直交して接合しており、その辺が延伸する方向に直交する平面における断面がL字状となっている。
【0023】
図1は、温度管理用物品20において、平板状部材7-1と平板状部材7-2が形成するL字の90度側(内側)の面に温度管理用非接触ICタグ10が備えられた場合を例示している。温度管理用非接触ICタグ10のアンテナ1は平板状部材7-1の内側に備えられている。アンテナ1以外の温度管理用非接触ICタグ10の部分は、平板状部材7-2の内側に備えられている。
【0024】
温度管理用非接触ICタグ10は、例えばフレキシブルプリント配線基板の様、に、フィルム状の配線基板上にアンテナを形成し、同じ配線基板上に、ICチップ、温度センサ、電池などを実装する場合は、必ずしも機械的な強度が十分高いとは言えない場合がある。その様な温度管理用非接触ICタグ10であっても、保持体7の平板状部材7-1、7-2の内側に接着などにより保持される事により、温度管理用物品20として、より高い機械的な強度を獲得する事ができる。その為、破損してしまう虞が低くなる。
【0025】
この様に、2つの平板状部材7-1と7-2が、L字状に直交した保持体7のL字の内側(90度側)に温度管理用非接触ICタグ10が備えられている形態の温度管理用物品20は、保温ケースの中に収納されている品物と品物の隙間に、平板状部材7-1または7-2を差し込む事ができる。品物が直方体の箱である場合は、例えば平板状部材7-2を差し込むと、アンテナ1が配置されている平板状部材7-1は、保温ケースに収納されている箱の上面に配置される為、保温ケースの上面側からリーダライタにより、温度管理用非接触ICタグ10記憶している保温ケース内の温度履歴情報を取得する事が可能となる。
【0026】
また、少なくとも、アンテナ1が配置される平板状部材7-1は外部装置との通信を阻害しない材料からなる為、アンテナ1とリーダライタなどの外部装置との間に平板状部材7-1が存在していても、通信可能である。
【0027】
また、本発明の温度管理用物品20は、保温ケースから取り出して、別の保温ケースで使用する事ができる。本発明の温度管理用物品20は、保温ケースの中の品物や品物を収納した箱などに貼り付ける事無く、ただ、保温ケースに入れるだけで再利用する事ができる為、低コストである。
【0028】
図2は、本発明の温度管理用物品20-1を例示した断面説明図である。温度管理用物品20-1では、保持体7は温度管理用物品20と同じであるが、温度管理用非接触ICタグ10の配置されている位置が異なる。2つの平板状部材7-1と7-2が、L字状に直交した保持体7のL字の外側(270度側)に、温度管理用非接触ICタグ10が備えられている。この様な構成であっても、機能的には温度管理用物品20と何ら変わるものでは無い。
【0029】
図1図2に示した様な、温度管理用非接触ICタグ10をL字状に屈曲した保持体7の内側や外側に配置する場合、温度管理用非接触ICタグ10に備えられた折り曲げ線5でL字状に折り曲げた状態で、接着層を介して、保持体7の内側や外側に接着する事ができる。
【0030】
図3は、本発明の温度管理用物品20-2を例示した断面説明図である。温度管理用物品20-2では、温度管理用非接触ICタグ10が保持体7の中に備えられている点が、温度管理用物品20、20-1と異なるが、その他の点は同様である。この場合は、温度管理用非接触ICタグ10を用意し、樹脂成形技術により樹脂の内部に封入する事によって作製することができる。
【0031】
以上で説明した本発明の温度管理用物品20、20-1、20-2は、互いに直交する、少なくとも2つの平板状部材7-1、7-2からなる保持体7がL字状に接合または屈曲した場合を例にとって説明した。しかし本発明の温度管理用物品はこの様なL字状の形態に限定されるものでは無い。即ち、2つの平板状部材7-1、7-2からなる場合であれば、平板状部材7-1、7-2がT字状に接合した形態であっても良い。
【0032】
また、平板状部材は、3つであっても良い。例えば、コの字状に接合された平板状部材からなる構成であっても構わない。この場合は、平板状部材が配置されていない部分から品物などを挿入し、温度管理用物品を固定する形態となる。
【0033】
また、温度管理用非接触ICタグ10は、図4に例示した様な、アンテナ1と、アンテナ1以外のICチップ2、電池6、温度センサ3が2つの領域に区分可能な配置である場合を例示したが、これに限定する必要は無い。例えば、アンテナ1の中央部にアンテナ1以外のICチップ2、電池6、温度センサ3を配置した構成であっても良い。
【0034】
(温度管理用非接触ICタグ)
温度管理用非接触ICタグ10としては、特に限定する必要は無く、従来から使用されているものを使用する事ができる。
【0035】
(アンテナ)
アンテナ1の形態や材料は、通信に使用する周波数によって適する巻き数やアンテナ形状を用いればよい。材料については、適宜、導電性材料を選択すれば良い。求められるアンテナ特性に対応して、導線を巻回して作製するコイル、銅箔をエッチング加工して作製するアンテナパターン、導電性インキをスクリーン印刷などにより形成するアンテナパターンなどの中から選択すれば良い。
【0036】
(ICチップ)
温度管理用非接触ICタグ10で使用するICチップは、温度センサ3が測定する温度情報を温度センサ3から取得する事ができる事、取得した温度情報を記憶する事ができる事、記憶した温度情報(温度履歴情報)を、リーダライタなどの外部装置の指示で送信する事ができる事、などの機能を備えたものであれば特に限定する必要は無い。市販されている温度管理用非接触ICタグを好適に使用する事ができる。
【0037】

(電池)
電池6については、特に限定する必要は無い。使用する温度管理用非接触ICタグ10の電圧仕様と電流仕様に適合した電池であれば良い。
【0038】
(温度センサ)
温度センサ3については、特に限定する必要は無い。熱電対、プラチナ温度センサ、サーミスタなどを使用する事ができる。
【0039】
(平板状部材)
平板状部材7-1、7-2としては、機械的な強度がある程度高く、無線通信を阻害しない板状の材料を使用する事が好ましい。その様な材料としては各種の樹脂から作製した板状材料を好適に使用する事ができる。特に、アンテナ1を配置する平板状部材の材料としては、非接触ICタグの通信を阻害する電磁波シールド性がある金属材料や高透磁率材料は使用できない。
【0040】
(保持体)
保持体7は、例えば、1枚の平板状部材を屈曲または2枚の平板状部材を接合させてL字状にした構造体や、T字状に接合した構造体を挙げる事ができる。また、3枚の平板状部材を使用して、コの字状に接合した構造体であっても良い。L字状、T字状、コの字状の形態を樹脂の成型技術を使用して作製しても良い。
【符号の説明】
【0041】
1・・・アンテナ
2・・・ICチップおよび電池
3・・・温度センサ
4・・・配線
5・・・折り曲げ線
6・・・電池
7・・・保持体
7-1、7-2・・・平板状部材
10・・・温度管理用非接触ICタグ
20、20-1、20-2・・・温度管理用物品
図1
図2
図3
図4