(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】通信制御システム及び照明制御システム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
H04L12/28 400
(21)【出願番号】P 2020132802
(22)【出願日】2020-08-05
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(72)【発明者】
【氏名】大脇 理
【審査官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-037936(JP,A)
【文献】特開平11-144881(JP,A)
【文献】特開2006-187438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0333207(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L12/00-12/66,13/00,41/00-49/9057,61/00-65/80,69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、該制御装置に直列に有線接続される複数のインターフェース基板とを備える通信制御システムであって、前記複数のインターフェース基板が前記制御装置側から見て第0から第n(nは自然数)のグループで構成され、
少なくとも第1から第nのグループの各々が、前記制御装置側の末端のインターフェース基板であるリピータ基板と、残余のインターフェース基板であるマルチドロップ基板とを含み、
前記マルチドロップ基板が、一斉監視要求信号に応じて第1監視応答データを生成する監視応答生成部と、前記第1監視応答データを所属グループ内の前記リピータ基板に送信する一斉監視応答部とを含み、
前記リピータ基板が、前記一斉監視要求信号に応じて第2監視応答データを生成する監視応答生成部と、前記第1監視応答データ及び前記第2監視応答データをメモリに記憶させるバッファリング部と、グループ監視要求信号に応じて前記メモリ内の前記第1監視応答データ及び前記第2監視応答データを監視応答信号として前記制御装置に送信するグループ監視応答部とを含み、
前記制御装置が、前記一斉監視要求信号を前記複数のインターフェース基板に送信する一斉監視要求部と、前記グループ監視要求信号を前記リピータ基板に送信するグループ監視要求部と、前記監視応答信号に基づいて前記複数のインターフェース基板の状態を判定する状態判定部とを含む、通信制御システム。
【請求項2】
前記リピータ基板が、正常時に存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を前記制御装置に送信する存在確認応答部をさらに含み、
前記マルチドロップ基板が、グループ変更信号に応じて所属グループを変更するとともに前
記第1監視応答データの送信タイミングを調整するグループ変更処理部をさらに含み、
前記制御装置が、前記存在確認要求信号を前記リピータ基板に送信する存在確認要求部と、1≦k1<k2≦n(k1及びk2は自然数)について、第k2のグループの前記リピータ基板から前記存在確認応答信号が受信されない場合に前記第k2のグループの前記マルチドロップ基板に前記所属グループを第k1のグループに変更させる前記グループ変更信号を送信するグループ変更指令部とをさらに含む、請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項3】
前記k1及び前記k2について、k2-k1=1である、請求項2に記載の通信制御システム。
【請求項4】
前記リピータ基板が、正常時に存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を前記制御装置に送信する存在確認応答部をさらに含み、
前記マルチドロップ基板が、設定変更信号に応じて当該マルチドロップ基板を前記リピータ基板に再設定する設定変更処理部をさらに含み、
前記制御装置が、前記存在確認要求信号を前記リピータ基板に送信する存在確認要求部と、前記リピータ基板のいずれかから前記存在確認応答信号が受信されない場合に所定のマルチドロップ基板に設定変更信号を送信して新たなリピータ基板を設定する設定変更指令部とをさらに含む、請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項5】
前記所定のマルチドロップ基板が、前記存在確認応答信号を送信しない前記リピータ基板が属するグループのマルチドロップ基板のうちの最も前記制御装置側に接続されたマルチドロップ基板である、請求項4に記載の通信制御システム。
【請求項6】
前記複数のインターフェース基板の各々が、前記マルチドロップ基板又は前記リピータ基板のいずれにも設定可能に構成され、設定変更信号に応じて前記マルチドロップ基板又は前記リピータ基板を再設定する設定変更処理部をさらに含み、
前記制御装置が、少なくとも1つの、前記マルチドロップ基板又は前記リピータ基板に前記設定変更信号を送信する設定変更指令部をさらに含む、請求項1に記載の通信制御システム。
【請求項7】
前記再設定後に存在する前記マルチドロップ基板が、グループ変更信号に応じて所属グループを変更するとともに前
記第1監視応答データの送信タイミングを調整するグループ変更処理部をさらに含み、
前記制御装置が、前記再設定後に存在する少なくとも1つのマルチドロップ基板に前記グループ変更信号を送信するグループ変更指令部をさらに含む、請求項6に記載の通信制御システム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の通信制御システムと、
前記複数のインターフェース基板の各々に接続された照明器具と
を備え、
前記制御装置が、前記照明器具を制御するための照明制御信号を前記インターフェース基板に送信する照明制御指令部をさらに含み、
前記インターフェース基板が、前記照明制御信号に基づいて前記照明器具を制御する照明制御部をさらに含む、照明制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御システム及びそれを用いる照明制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、制御装置に対してデイジーチェーン接続されたインターフェース基板を有する照明制御システムを開示する。このような照明制御システムなどの通信制御システムでは、RS485規格などに準拠する半二重通信が行われ得る。そして、インターフェース基板の接続がRS485規格における最大通信距離又は最大接続数を超える場合に、一部のインターフェース基板がリピータとして使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような半二重通信の通信制御システムにおいて、制御装置が各インターフェース基板の状態監視を行う場合がある。この状態監視では、制御装置が全インターフェース基板に監視要求信号を一斉送信し、これに応じて各インターフェース基板が監視応答信号を制御装置に順次送信し、制御装置がその監視応答信号に基づいて各インターフェース基板の状態を判定する。監視応答信号の送信において、各インターフェース基板は、他のインターフェース基板の監視応答信号との競合を回避するために、所定の間隔をあけて監視応答信号を順次送信する。そのため、システムの大規模化に伴いインターフェース基板の接続数が増大すると、監視要求信号が送信されてから監視応答信号が全インターフェース基板から受信されるまでの所要時間、すなわち、状態監視期間が増大する。
【0005】
さらに、上記のようにインターフェース基板にリピータが含まれる場合、監視要求信号及び監視応答信号がリピータ基板で遅延され、複数のリピータ基板が接続される場合にはその遅延の累積によって状態監視期間が増大するという問題があった。ここで、制御装置が監視要求信号を送信してから全インターフェース基板から監視応答信号を順次受信するまでは、制御装置から各インターフェース基板への割込み制御を行うことはできない。そのため、状態監視期間の増大のために、通信制御システムの制御性が損なわれるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、半二重通信における状態監視期間の短縮及び制御性の向上を可能とする通信制御システム及びそれを用いる照明制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の通信制御システムは、制御装置と、制御装置に直列に有線接続された複数のインターフェース基板とを備える。複数のインターフェース基板は制御装置側から見て第0から第n(nは自然数)のグループで構成され、少なくとも第1から第nのグループの各々は制御装置側の末端のインターフェース基板であるリピータ基板と、残余のインターフェース基板であるマルチドロップ基板とを含み、マルチドロップ基板は、一斉監視要求信号に応じて第1監視応答データを生成する監視応答生成部と、第1監視応答データを所属グループ内のリピータ基板に送信する一斉監視応答部とを含み、リピータ基板は、一斉監視要求信号に応じて第2監視応答データを生成する監視応答生成部と、第1監視応答データ及び第2監視応答データをメモリに記憶させるバッファリング部と、グループ監視要求信号に応じてメモリ内の第1監視応答データ及び第2監視応答データを監視応答信号として制御装置に送信するグループ監視応答部とを含む。制御装置は、一斉監視要求信号をインターフェース基板に送信する一斉監視要求部と、グループ監視要求信号をリピータ基板に送信するグループ監視要求部と、受信された監視応答信号に基づいてインターフェース基板の状態を判定する状態判定部とを含む。
【0008】
上記構成によると、複数のインターフェース基板がグループ分けされ、各グループにおいてマルチドロップ基板からの監視応答データがリピータ基板でバッファリングされ、バッファリングされた監視応答データが適時に監視応答信号として制御装置に送信される。これにより、グループ間での監視応答信号の競合を回避するための待ち時間が不要となり、かつバッファリングの完了とグループ監視要求信号の送信との間又は監視応答信号の受信と次のグループ監視要求信号の送信との間に割込み制御が可能となる。したがって、半二重通信において状態監視期間の短縮及び制御性の向上が可能となる。
【0009】
本発明の一態様による通信制御システムでは、リピータ基板は、正常時に存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を制御装置に送信する存在確認応答部をさらに含み、マルチドロップ基板は、グループ変更信号に応じて所属グループを変更するとともに監視応答データの送信タイミングを調整するグループ変更処理部をさらに含む。制御装置は、存在確認要求信号をリピータ基板に送信する存在確認要求部と、1≦k1<k2≦n(k1及びk2は自然数)について、第k2のグループのリピータ基板から存在確認応答信号が受信されない場合に第k2のグループのマルチドロップ基板に所属グループを第k1のグループに変更させるグループ変更信号を送信するグループ変更指令部とをさらに含む。これにより、リピータ基板の故障時においても、当該リピータ基板のグループに属していたマルチドロップ基板は他のリピータ基板のグループに属することができ、適切な状態監視動作が確保される。したがって、通信制御システムの保守性が向上する。
【0010】
上記態様において、上記k1及びk2について、k2-k1=1であることが望ましい。これにより、第k2のグループに属していたマルチドロップ基板からの監視応答データが直前の第k1のグループのリピータ基板に到達するまでにいずれのリピータ基板も通過することがなく、監視応答データの上り送信における遅延が回避される。
【0011】
本発明の一態様による通信制御システムでは、リピータ基板は、正常時に存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を制御装置に送信する存在確認応答部をさらに含み、マルチドロップ基板は、設定変更信号に応じて当該マルチドロップ基板をリピータ基板に再設定する設定変更処理部をさらに含む。制御装置は、存在確認要求信号をリピータ基板に送信する存在確認要求部と、いずれかのリピータ基板から存在確認応答信号が受信されない場合に所定のマルチドロップ基板に設定変更信号を送信して新たなリピータ基板を設定する設定変更指令部とをさらに含む。これにより、リピータ基板の故障時においても、マルチドロップ基板から再設定される新たなリピータ基板が当初のリピータ基板の機能を代替することができ、適切な状態監視動作が確保される。したがって、通信制御システムの保守性が向上する。
【0012】
上記態様において、所定のマルチドロップ基板は、存在確認応答信号を送信しないリピータ基板が属するグループのマルチドロップ基板のうちの最も制御装置側に接続されたマルチドロップ基板であることが望ましい。これにより、設定が変更されないインターフェース基板における各種アドレス設定の変更処理が実質的に発生せず、設定変更操作又は動作の簡素化が可能となる。
【0013】
本発明の一態様による通信制御システムでは、複数のインターフェース基板の各々は、マルチドロップ基板又はリピータ基板のいずれにも設定可能に構成され、設定変更信号に応じてマルチドロップ基板又はリピータ基板を再設定する設定変更処理部をさらに含み、制御装置は、少なくとも1つの、マルチドロップ基板又はリピータ基板に設定変更信号を送信する設定変更指令部をさらに含む。これにより、インターフェース基板全体のグループ分けを必要に応じてダイナミックに再構成することができる。
【0014】
上記態様において、再設定後に存在するマルチドロップ基板は、グループ変更信号に応じて所属グループを変更するとともに監視応答データの送信タイミングを調整するグループ変更処理部をさらに含み、制御装置は、再設定後に存在する少なくとも1つのマルチドロップ基板にグループ変更信号を送信するグループ変更指令部をさらに含む。これにより、インターフェース基板全体のグループ分けをよりダイナミックに再構成することができる。
【0015】
本発明の照明制御システムは、上記いずれかの通信制御システムと、複数のインターフェース基板の各々に接続された照明器具とを備える。制御装置は、照明器具を制御するための照明制御信号をインターフェース基板に送信する照明制御指令部をさらに含み、インターフェース基板は、照明制御信号に基づいて照明器具を制御する照明制御部をさらに含む。このように、本発明の通信制御システムは、照明制御システムに好適に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の通信制御システムを説明する概略図である。
【
図2A】通信制御システムにおける一般的な状態監視動作を説明する図である。
【
図2B】通信制御システムにおける一般的な状態監視動作を説明する図である。
【
図2C】通信制御システムにおける一般的な状態監視動作を説明する図である。
【
図3】第1の実施形態による通信制御システムを示すブロック図である。
【
図4A】第1の実施形態による通信制御システムの動作を説明する図である。
【
図4B】第1の実施形態による通信制御システムの動作を説明する図である。
【
図5】第2の実施形態による通信制御システムを示すブロック図である。
【
図6】第2の実施形態による通信制御システムの動作を説明する図である。
【
図7】第3の実施形態による通信制御システムを示すブロック図である。
【
図8】第3の実施形態による通信制御システムの動作を説明する図である。
【
図9】第4の実施形態による通信制御システムを示すブロック図である。
【
図10】第5の実施形態による照明制御システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
図1に、本発明の通信制御システム1の概略図を示す。通信制御システム1は、制御装置2及び複数のインターフェース基板(I/F基板)3を含む。なお、本開示において、インターフェース基板3を種々の名称及び符号で表現するが、各種インターフェース基板を総称して又はいずれか1つを代表してインターフェース基板3ということもある。インターフェース基板3は、制御装置2に対して、例えばデイジーチェーン接続により、配線L上に直列に有線接続される。制御装置2とインターフェース基板3との間では、例えば、RS485規格に従って半二重通信が行われる。各インターフェース基板3には、制御装置2の制御対象である負荷4が接続される。負荷4は、照明器具、表示装置、アクチュエータ、スイッチなど種々の機器であり得る。
【0018】
インターフェース基板3は、制御装置2の側から、第0~第nのグループG0~Gnに分けられる。グループG1~Gnの各グループにおいて、インターフェース基板3は制御装置2側の末端のインターフェース基板3R及び残余のインターフェース基板3Mを含む。本開示において、インターフェース基板3Rをリピータ基板3Rともいい、インターフェース基板3Mをマルチドロップ基板3Mともいう。詳細を後述するように、マルチドロップ基板3Mは、配線L上の制御装置2からの下り信号を処理せずに通過させつつデータを取り込む。一方、リピータ基板3Rは、配線L上の制御装置2からの下り信号からデータを取り込むとともに、下り信号をさらに下流のインターフェース基板3に送信するための中継処理を行う。なお、グループG0は、グループG1~Gnと同様に制御装置2側のリピータ基板3R及び残余のマルチドロップ基板3Mで構成されてもよいし、マルチドロップ基板3Mのみで構成されてもよい。本実施形態では、グループG0は、マルチドロップ基板3Mのみで構成される。
【0019】
ここで、本発明の実施形態を説明する前に、
図2A~
図2Cを参照して、
図1に示すような半二重通信における一般的な状態監視動作を説明する。状態監視動作には、
図2Aに示す個別状態監視動作並びに
図2B及び
図2Cに示す一斉状態監視動作がある。
【0020】
図2Aに示す個別状態監視動作では、制御装置2がインターフェース基板3-1に個別監視要求信号を送信し、個別応答開始期間T0の経過後にインターフェース基板3-1が個別監視要求信号に対応する個別監視応答信号を制御装置2に送信する。続いて、通常送信待ち期間T1の経過後に、制御装置2がインターフェース基板3-2に個別監視要求信号を送信し、期間T0の経過後にインターフェース基板3-2が個別監視要求信号に対応する個別監視応答信号を制御装置2に送信する。なお、期間T0は、例えば、100ms程度、期間T1は、例えば、500ms程度である。この動作が、接続終端のインターフェース基板3-Nまで行われ、制御装置2は、各監視応答信号に基づいて、各インターフェース基板3の状態を判断する。ただし、多数のインターフェース基板3が接続される場合には個別状態監視動作は状態監視動作全体に長時間を要するため、これを短縮する態様として、
図2Bに示すような一斉状態監視動作が適用される。
【0021】
図2Bに示す一斉状態監視動作では、制御装置2が、時刻t0に全インターフェース基板3-1~3-Nを対象とする一斉監視要求信号を送信する。なお、
図2Bにおいては、インターフェース基板3は全てマルチドロップ基板3Mである。一斉監視要求信号を受信したインターフェース基板3-1は、時刻t0から一斉監視応答開始期間T3の経過後に、一斉監視応答信号を制御装置2に送信する。なお、期間T3は、例えば、100ms程度である。続いて、インターフェース基板3-2は、時刻t0を基準として、期間T3に一斉監視応答間隔T4を加えた期間T3+T4の経過後に、一斉監視応答信号を制御装置2に送信する。間隔T4は、例えば、30ms程度である。この動作が、インターフェース基板3-Nまで行われ、制御装置2は、各一斉監視応答信号に基づいて、各インターフェース基板3の状態を判断する。すなわち、インターフェース基板3(全てマルチドロップ基板3M)の接続数がNである場合、一斉状態監視動作全体の所要時間は、T3+T4×(N-1)となる。
【0022】
図2Cは、
図2Bに示す構成において、マルチドロップ基板3Mのうちの一部がリピータ基板3Rに置き換えられた場合を示す。
図2Bと同様の一斉状態監視動作を行う場合、一斉監視要求信号及び一斉監視応答信号は、各リピータ基板3Rの中継処理に起因する遅延T2とともに伝送される。なお、遅延T2は、例えば、100ms程度である。したがって、リピータ基板3Rの接続数の増加によって遅延T2が蓄積されると、状態監視動作の所要時間(状態監視期間)の増大が顕著となる。さらに、この状態監視期間中は、制御装置2からの下り信号とインターフェース基板3からの上り信号との競合を防止する必要があるため、制御装置2からいずれかのインターフェース基板3への割込み制御、例えば、緊急制御を行うことができない。
【0023】
そこで、本実施形態の通信制御システム1は、概略として、一斉監視要求信号に対するマルチドロップ基板3Mからの上り応答信号を所定のリピータ基板3Rでバッファリングする処理を利用する。詳細を後述するように、制御装置2からの一斉監視要求信号に応じて、各インターフェース基板3の監視応答データは、各グループのリピータ基板3Rにおいて一旦バッファリングされる。その後、制御装置2からのグループ監視要求信号に応じて、バッファリングされた監視応答データは、監視応答信号として各リピータ基板3Rから制御装置2に送信される。
【0024】
図3に、本実施形態による通信制御システム1のブロック図を示す。なお、
図3は1つのリピータ基板3R及び1つのマルチドロップ基板3Mの詳細を示すが、他のリピータ基板3R及び他のマルチドロップ基板3Mもそれぞれ同様の構成を有する。また、第3の実施形態でも述べるように、インターフェース基板3は、設定の変更により、マルチドロップ基板3Mにもリピータ基板3Rにも構成され得る。言い換えると、リピータ基板3R及びマルチドロップ基板3Mの構成部材は同じである。したがって、双方に共通する構成については、重複する説明を省略する。
【0025】
各インターフェース基板3は、制御装置2側(上流側)の配線Luと接続終端側(下流側)の配線Ldの間に接続され、ハードウェア回路として、CPU30、ドライバ31及び32(RS485ドライバ)、リレー33及び34、終端抵抗35並びにメモリ36を含む。ドライバ31は配線LuとCPU30の間に接続され、ドライバ32はリレー33とCPU30の間に接続される。リレー33及び34は、CPU30によって双方ON又は双方OFFに制御される。リレー33は、OFF状態では配線Luと配線Ldとを接続し、ON状態では配線Luと配線Ldとを切り離すように構成される。すなわち、マルチドロップ基板3Mに示すマルチドロップ設定では、リレー33はOFF状態に固定され、配線Lu及び配線Ldは相互に短絡されるとともにドライバ31に接続され、ドライバ32から切り離される。一方、リピータ基板3Rに示すリピータ設定では、リレー33はON状態に固定され、配線Luと配線Ldとはドライバ31、CPU30及びドライバ32を介して接続される。リレー34は、OFF状態では配線Luを終端抵抗35から切り離し、ON状態では配線Luを終端抵抗35に接続する。メモリ36は、RAM及びROMを含み、CPU30の動作に関するデータ及びプログラムを記憶する。CPU30は、負荷4への出力配線Lo(例えば、PWM配線)及び負荷4からの入力配線Li(例えば、検出信号配線)に接続される。
【0026】
マルチドロップ基板3M(マルチドロップ設定)では、上述のように、リレー33及び34は、OFF状態に構成される。これにより、配線Luからの下り信号は、ドライバ31を介してCPU30に入力されるとともにリレー33を介して配線Ldに出力される。CPU30は、下り信号を取り込んで適宜の処理を実行する。また、配線Ldからの上り信号はリレー33を介して配線Luに出力される。また、CPU30は、内部で生成した上り信号をドライバ31を介して配線Luに出力し得る。このように、下り信号及び上り信号について、マルチドロップ基板3Mでは遅延は発生しない。
【0027】
リピータ基板3R(リピータ設定)では、上述のように、リレー33及び34は、ON状態に構成される。これにより、配線Luからの下り信号は、ドライバ31を介してCPU30に入力され、CPU30において処理され、ドライバ32及びリレー33を介して配線Ldに出力される。また、配線Ldからの上り信号は、リレー33及びドライバ32を介してCPU30に入力され、CPU30において処理され、ドライバ31を介して配線Luに出力される。このように、下り信号及び上り信号について、リピータ基板3Rでは、CPU30での処理に起因する遅延が発生する。
【0028】
CPU30は、例えばマイクロコンピュータなどのプロセッサであり、監視応答生成部301、一斉監視応答部302、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305及び負荷制御部309を含む。CPU30の各部及びメモリ36は、バスB3を介して相互にデータのやり取りが可能な態様で接続される。マルチドロップ基板3Mでは、監視応答生成部301、一斉監視応答部302及び負荷制御部309が有効化され、バッファリング部303、グループ監視応答部304及び中継処理部305は使用されない。一方、リピータ基板3Rでは、監視応答生成部301、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305及び負荷制御部309が有効化され、一斉監視応答部302は使用されない。なお、CPU30は、上記の各部以外の一般的なCPUとしての処理(通信処理、タイマ処理など)も適宜実行可能なものとする。
【0029】
監視応答生成部301(マルチドロップ基板3M及びリピータ基板3Rにおいて有効)は、制御装置2から送信される一斉監視要求信号に応じて監視応答データを生成する。具体的には、監視応答生成部301は、配線Luからドライバ31を介して入力される一斉監視要求信号からデータを取り込み、それに対応する監視応答データを生成する。対応する監視応答データは、当該基板のID、当該基板が所属するグループに関する所属グループアドレス、当該基板が所属するグループにおけるグループ内アドレス(以下、まとめて「アドレス構成情報」という)などを含む。
【0030】
一斉監視応答部302(マルチドロップ基板3Mにおいて有効)は、監視応答生成部301によって生成された監視応答データを所属グループ内のリピータ基板3Rに送信するように構成される。具体的には、一斉監視応答部302は、CPU30が一斉監視要求信号を受信してから所定期間後に、監視応答データを上り送信させる。
【0031】
バッファリング部303(リピータ基板3Rにおいて有効)は、各マルチドロップ基板3Mから送信された監視応答データ及び当該リピータ基板3Rにおいて生成された監視応答データをメモリ36に記憶させる。バッファリング部303は、バッファリングする監視応答データを個別に(すなわち、複数の個別のフレームのデータとして)メモリ36に記憶させてもよいし、統合して(すなわち、1つのフレームに収容されたデータとして)メモリ36に記憶させてもよい。
【0032】
グループ監視応答部304(リピータ基板3Rにおいて有効)は、制御装置2から送信されるグループ監視要求信号に応じて、メモリ36に記憶された全監視応答データを監視応答信号として制御装置2に送信するように構成される。
【0033】
中継処理部305(リピータ基板3Rにおいて有効)は、制御装置2から接続終端側に向かう下り信号に対して増幅、整形などの中継処理を行う。また、中継処理部305は、接続終端側から制御装置2に向かう上り信号に対して増幅、整形などの中継処理を行う。なお、下り信号における遅延と上り信号における遅延とは実質的に同じである。
【0034】
負荷制御部309(マルチドロップ基板3M及びリピータ基板3Rにおいて有効)は、状態監視動作においては使用されないが、通常の負荷制御動作において動作する。すなわち、負荷制御部309は、制御装置2から受信される負荷制御信号に応じて制御信号を生成し、その制御信号を出力配線Loを介して負荷4に出力する。また、負荷制御部309は、負荷4から入力配線Liを介して入力される検出信号を制御装置2に送信するように構成され得る。
【0035】
制御装置2は、処理部20、通信部21及び記憶部22を有する。処理部20はプロセッサであり、通信部21は、例えば、RS485規格に準拠した送受信機である。記憶部22は、RAM、ROMなどのメモリを含む。処理部20は、一斉監視要求部201、グループ監視要求部202、状態判定部203及び負荷制御指令部207を含む。処理部20の各部、通信部21及び記憶部22は、バスB2を介して相互にデータのやり取りが可能な態様で接続される。
【0036】
一斉監視要求部201は、一斉監視要求信号を通信部21から全インターフェース基板3に対して送信させる。グループ監視要求部202は、グループ監視要求信号を通信部21からリピータ基板3Rに対して送信させる。記憶部22には、インターフェース基板3のアドレス構成情報が予め記憶されている。
【0037】
状態判定部203は、リピータ基板3Rから通信部21を介して受信される監視応答信号に基づいてインターフェース基板3(リピータ基板3R及びマルチドロップ基板3M)の状態を判定する。状態判定部203は、例えば、監視応答信号に所定アドレスの監視応答データが含まれない場合に、当該所定アドレスに対応するインターフェース基板3の故障又は不在を判定することができる。状態の判定に必要なデータ(監視対象のインターフェース基板3のアドレスなど)は、記憶部22に予め記憶されているものとする。
【0038】
負荷制御指令部207は、負荷4の制御のための負荷制御信号を通信部21からインターフェース基板3に対して送信させる。制御対象のインターフェース基板3(又は負荷4)及び対応する制御内容は、記憶部22に予め記憶されているものとする。
【0039】
図4Aに、本実施形態の通信制御システム1の状態監視動作を示す。
図4Aに示すように、グループG1~GnのうちのグループG1及びG2に着目して説明を行う。グループG1はリピータ基板3R1及び複数のマルチドロップ基板3Mを含み、グループG2はリピータ基板3R2及び複数のマルチドロップ基板3Mを含む。グループG0は、上述のように、マルチドロップ基板3Mのみを含む。なお、グループG0というグループ分けは説明の便宜上のものであり、グループG0を構成する各インターフェース基板3はグループとして認識されなくてもよい。
【0040】
まず、時刻t1において、制御装置2(一斉監視要求部201)が、全インターフェース基板3を対象とする一斉監視要求信号S1を送信する。グループG0において、
図2Bの場合と同様に、一斉監視要求信号S1を受信した第1のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)が、時刻t1から一斉監視応答開始期間T3の経過後に、監視応答データS2を制御装置2に送信する。続いて、第2のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)が、時刻t1から期間T3+T4後に、監視応答データS2を制御装置2に送信する。更なるマルチドロップ基板3Mが接続される場合には、上記動作が、グループG0内の全てのマルチドロップ基板3Mに対して行われる。
【0041】
グループG1において、リピータ基板3R1では、一斉監視要求信号S1において中継処理に伴う遅延T2が発生する。グループG1の第1のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、時刻t1から期間T2+T3の経過後に、監視応答データS2をリピータ基板3R1に送信する。グループG1の第2のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、時刻t1から期間T2+T3+T4の経過後に、監視応答データS2をリピータ基板3R1に送信する。この動作が繰り返され、グループG1内のマルチドロップ基板3Mの接続数をxとすると、グループG1の最終段のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、時刻t1から期間T2+T3+T4×(x-1)後に、監視応答データS2をリピータ基板3R1に送信する。リピータ基板3R1(バッファリング部303)は、グループG1内のリピータ基板3R1及びマルチドロップ基板3Mの監視応答データをバッファリングする。
【0042】
グループG2においても同様に、リピータ基板3R2では、一斉監視要求信号S1において中継処理に伴う遅延T2が発生する。グループG2の第1のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、時刻t1から期間T2×2+T3後に、監視応答データS2をリピータ基板3R2に送信する。グループG2の第2のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、時刻t1から期間T2×2+T3+T4後に、監視応答データS2をリピータ基板3R2に送信する。この動作が繰り返され、グループG2内のマルチドロップ基板3Mの接続数をyとすると、グループG2の最終段のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、時刻t1から期間T2×2+T3+T4×(y-1)後に、監視応答データをリピータ基板3R2に送信する。リピータ基板3R2(バッファリング部303)は、グループG2内のリピータ基板3R2及びマルチドロップ基板3Mの監視応答データをバッファリングする。
【0043】
グループG1及びG2における動作と同様の動作が、グループGnまで行われる。このように、
図2B及び
図2Cに示す態様とは異なり、グループG2の各マルチドロップ基板3Mは、グループG1の各マルチドロップ基板3Mの監視応答データS2の上り送信の完了を待つことなく、監視応答データS2の上り送信を行うことができる。すなわち、各グループGにおいて、他のグループの監視応答データS2の送信の完了を待つことなく、監視応答データS2の監視応答データS2の送信を行うことができる。これにより、下記のグループ監視要求/応答動作を加味したとしても、状態監視期間の短縮が可能となる。
【0044】
時刻t2において、全てのグループのリピータ基板3Rのバッファリング処理が終了する。なお、
図4Aにおいては、最終段のグループGnのバッファリング終了時を時刻t2としているが、時刻t2は、グループGnのバッファリング処理の終了時とは限らない。例えば、リピータ基板3Rに対して相対的に多数のマルチドロップ基板3Mを含むグループのバッファリング処理の終了時が時刻t2となる場合もある。このことから、遅延T2を考慮して、各グループにおけるリピータ基板3Rに対するマルチドロップ基板3Mの接続数がグループG1からグループGnにかけて減少するようにインターフェース基板3が構成されてもよい。これにより、時刻t1~t2の期間を短縮又は最短化することができる。
【0045】
時刻t2からグループ監視要求送信待ち期間T5の経過後の時刻t3から、グループ監視要求/応答動作が行われる。期間T5は、例えば、1s程度である。時刻t3において、制御装置2(グループ監視要求部202)は、リピータ基板3R1を対象とするグループ監視要求信号S31を送信する。これに応じて、リピータ基板3R1(グループ監視応答部304)は、時刻t3から期間T3の経過後の時刻t4に、バッファリングしたグループG1内の監視応答データを監視応答信号S41として制御装置2に送信する。
【0046】
時刻t4から通常送信待ち期間T1の経過後の時刻t5において、制御装置2(グループ監視要求部202)は、リピータ基板3R2を対象とするグループ監視要求信号S32を送信する。これに応じて、リピータ基板3R2(グループ監視応答部304)は、時刻t5から期間T2×2+T3の経過後の時刻t6に、バッファリングしたグループG2内の監視応答データを監視応答信号S42として制御装置2に送信する。なお、本開示において、種々の符号が付されるグループ監視要求信号(本例ではS31~S3n)を総称して又はいずれか1つを代表してグループ監視要求信号S3ともいう。また、本開示において、種々の符号が付されるグループ監視応答信号(本例ではS41~S4n)を総称して又はいずれか1つを代表してグループ監視応答信号S4ともいう。
【0047】
リピータ基板3R及び3R2に対する動作と同様の動作が、グループGnのリピータ基板3Rnまで行われる。制御装置2(状態判定部203)は、各リピータ基板3Rから収集された監視応答信号S4に基づいて、インターフェース基板3(リピータ基板3R及びマルチドロップ基板3M)の状態を判定する。
【0048】
上記の一連の動作において、時刻t1~t6に着目すると、時刻t2(バッファリングの終了)と時刻t3(グループ監視要求信号S3の送信)の間又は時刻t4(監視応答信号S4の受信)と時刻t5(グループ監視要求信号S3の送信)の間においては、割込み制御が可能となる。すなわち、バッファリングの終了からグループ監視要求/応答動作の開始までの間又は個々のグループ監視要求/応答動作の間に、緊急制御などの割込み制御が可能となる。
【0049】
また、
図4Bに示すように、グループ監視要求/応答動作において、グループ監視要求信号を一斉送信してもよい。すなわち、時刻t3において、制御装置2(グループ監視要求部202)は、リピータ基板3R1~3Rnを対象とするグループ監視要求信号S3を一斉送信する。このグループ監視要求信号S3は、各リピータ基板3R(中継処理部305)における中継処理に伴う遅延T2を以て伝送される。これに応じて、リピータ基板3R1~3Rn(グループ監視応答部304)の各々は、グループ監視要求信号S3を受信してから期間T3の経過後に、バッファリングした当該グループ内の監視応答データをそれぞれ監視応答信号S41~S4nとして制御装置2に送信する。なお、
図4Bにおいて、期間T3は遅延T2よりも長い期間として図示されているが、期間T3は遅延T2と同じであってもよいし、遅延T2よりも短くてもよい。制御装置2(状態判定部203)は、各リピータ基板3Rから収集された監視応答信号S4に基づいてインターフェース基板3(リピータ基板3R及びマルチドロップ基板3M)の状態を判定する。ただし、
図4Bに示す態様においては、グループ監視要求/応答動作中(すなわち、制御装置2におけるグループ監視要求信号S3の送信から監視応答信号S4nの受信まで)は割込み制御を行うことはできない。
【0050】
以上のように、本実施形態の通信制御システム1は、制御装置2と、制御装置2に直列に有線接続された複数のインターフェース基板3とを備える。インターフェース基板3は、制御装置2側から見てグループG0~Gn(nは自然数)で構成される。少なくともグループG1~Gnの各々は、制御装置2側の末端のインターフェース基板3であるリピータ基板3Rと、残余のインターフェース基板3であるマルチドロップ基板3Mとを含む。マルチドロップ基板3Mは、一斉監視要求信号に応じて第1監視応答データを生成する監視応答生成部301と、第1監視応答データを所属グループ内のリピータ基板3Rに送信する一斉監視応答部302とを含む。リピータ基板3Rは、一斉監視要求信号に応じて第2監視応答データを生成する監視応答生成部301と、第1監視応答データ及び第2監視応答データをメモリ36に記憶させるバッファリング部303と、グループ監視要求信号に応じてメモリ36内の第1監視応答データ及び第2監視応答データを監視応答信号として制御装置2に送信するグループ監視応答部304とを含む。制御装置2は、一斉監視要求信号をインターフェース基板3に送信する一斉監視要求部201と、グループ監視要求信号をリピータ基板3Rに送信するグループ監視要求部202と、受信された監視応答信号に基づいてインターフェース基板3の状態を判定する状態判定部203とを含む。
【0051】
このように、インターフェース基板3がグループ分けされ、各グループにおいてマルチドロップ基板3Mからの監視応答データがリピータ基板3Rでバッファリングされ、バッファリングされた監視応答データが適時に監視応答信号として制御装置2に送信される。これにより、グループ間での監視応答信号の競合を回避するための待ち時間が不要となり、かつバッファリングの完了とグループ監視要求信号の送信との間又は監視応答信号の受信と次のグループ監視要求信号の送信との間に割込み制御が可能となる。したがって、半二重通信における状態監視期間の短縮及び制御性の向上を可能とする通信制御システム1が実現される。
【0052】
<第2の実施形態>
上記第1の実施形態では、全てのリピータ基板3Rが正常に動作することを前提とした構成を示したが、本実施形態では、あるリピータ基板3Rが故障した場合に対処するための構成を示す。なお、
図1に示した通信制御システム1の全体構成は、本実施形態においても同様である。
【0053】
図5に、本実施形態による通信制御システム1のブロック図を示す。本実施形態は、インターフェース基板3が存在確認応答部306及びグループ変更処理部307をさらに備え、制御装置2が存在確認要求部204及びグループ変更指令部205をさらに備える点が第1の実施形態と異なる。なお、上記第1の実施形態で説明した構成と同様の構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化する。なお、
図5では、負荷4の図示を省略するが、実際には負荷4は各インターフェース基板3に接続される。
【0054】
概略として、例えば、グループGk+1のリピータ基板3Rが故障した場合を想定する。この場合、グループGk+1内のマルチドロップ基板3Mからの監視応答データは、故障したリピータ基板3Rを通過してグループGkのリピータ基板3Rまで到達してしまう。これにより、グループGk内で送信される監視応答データと、グループGk+1から送信される監視応答データとが競合又は衝突してしまい、正しい状態監視動作が行われなくなる。そこで、本実施形態では、グループGk+1のリピータ基板3Rが故障した場合に、グループGk+1のマルチドロップ基板3Mからの監視応答データが他のグループにおいて適切に処理されるように構成される。
【0055】
図5には、インターフェース基板3として、グループGkのリピータ基板3R及びグループGk+1のマルチドロップ基板3Mを示す。マルチドロップ基板3Mでは、監視応答生成部301、一斉監視応答部302、グループ変更処理部307及び負荷制御部309が有効化され、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305及び存在確認応答部306は使用されない。一方、リピータ基板3Rでは、監視応答生成部301、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305、存在確認応答部306及び負荷制御部309が有効化され、一斉監視応答部302及びグループ変更処理部307は使用されない。
【0056】
リピータ基板3Rの存在確認応答部306は、正常時には、制御装置2から送信される存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を制御装置2に送信する。なお、存在確認応答部306は、当該リピータ基板3Rの故障時には、存在確認要求信号に対して何も応答しない。
【0057】
制御装置2の存在確認要求部204は、通信部21からリピータ基板3Rに対して存在確認要求信号を送信させる。この存在確認要求信号は各リピータ基板3Rを送信先とするものであるが、一斉監視要求信号と同様に全インターフェース基板3に対して一斉に送信される。存在確認要求部204は、対象とするリピータ基板3Rから存在確認応答信号が受信されない場合に、当該リピータ基板3Rが属するグループを特定する故障情報を生成する。本例では、グループGk+1のリピータ基板3Rが故障しているものとし、グループGk+1を特定する故障情報が生成される。
【0058】
制御装置2のグループ変更指令部205は、通信部21から、故障情報によって特定されるグループに属するマルチドロップ基板3Mに対して、所属グループを他の新たなグループに変更させるグループ変更信号を送信させる。本例では、グループGk+1に属するマルチドロップ基板3Mに対して、所属グループをグループGkに変更させるグループ変更信号が送信される。言い換えると、グループGkは、グループGk+1のマルチドロップ基板3Mの分だけ拡張される。
【0059】
マルチドロップ基板3Mのグループ変更処理部307は、グループ変更信号において指定されるグループGk(又はグループGkに含まれるリピータ基板3R)のアドレスをメモリ36に記憶させる。また、グループ変更処理部307は、グループ変更信号に応じて、各マルチドロップ基板3Mにおける監視応答データの上り送信タイミングを調整する。具体的には、グループGkに当初から属していたマルチドロップ基板3Mからの監視応答データの送信が終了した後に、グループGkに新たに加わったマルチドロップ基板3Mからの監視応答データの送信が行われるように送信タイミングが所定時間遅延される。この監視応答データの送信タイミングの調整は、グループ変更信号によって規定されてもよいし、グループ変更処理部307において自律的に行われてもよい。後者の場合、例えば、グループ変更処理部307が、各マルチドロップ基板3Mのメモリ36に予め記憶されるインターフェース基板3全体のアドレス構成情報を参照して自己の送信タイミングを変更し得る。
【0060】
その後の状態監視動作は、第1の実施形態と同様である。すなわち、所属グループを変更したマルチドロップ基板3Mの一斉監視応答部302は、一斉監視要求信号に応じて、変更後のグループGkのリピータ基板3Rに監視応答データを送信する。また、グループGkのリピータ基板3Rのバッファリング部303は、グループGkに当初から属しているマルチドロップ基板3Mからの監視応答データ及びグループGk+1から新たに加わったマルチドロップ基板3Mからの監視応答データをバッファリングする。その後、リピータ基板3Rのグループ監視応答部304は、グループ監視要求信号に応じて、バッファリングした監視応答データを監視応答信号として制御装置2に送信する。
【0061】
なお、グループGk+1のリピータ基板3Rが故障した場合の変更後のグループは、グループGkに限らず、グループGk-1などとすることも可能である。ただし、リピータ基板3Rに起因する上り信号の遅延を回避する観点から、本例で示すように、変更後の所属グループは変更前の所属グループの直前段のグループ(すなわち、グループGk+1に対するグループGk)であることが望ましい。
【0062】
また、
図5において、グループGkがグループG1であり、グループG1のリピータ基板3Rが故障した場合、グループG1のマルチドロップ基板3Mの変更後の所属グループはグループG0となる。この場合、グループ変更信号に起因して、グループG1のマルチドロップ基板3Mでは監視応答データの送信タイミングの変更だけが行われる。
【0063】
図6に、本実施形態による通信制御システム1における状態監視動作を示す。
図6に示すように、グループG1~Gnのうちの任意のグループGk及びGk+1に着目して説明を行う。グループGkはリピータ基板3Rk及びマルチドロップ基板3Mを含み、グループGk+1はリピータ基板3Rk+1及びマルチドロップ基板3Mを含む。
【0064】
まず、制御装置2(存在確認要求部204)は、存在確認要求信号S01をインターフェース基板3(実質的にはリピータ基板3Rのみ)に一斉送信する。存在確認要求信号S01は、各リピータ基板3R(中継処理部305)における中継処理に伴う遅延T2を以て伝送される。各リピータ基板3R(存在確認応答部306)は、正常な場合には、存在確認要求信号S01を受信してから期間T3の経過後に存在確認応答信号S02を制御装置2に送信する。ここで、グループGk+1のリピータ基板3Rk+1は、故障しているため、存在確認応答信号S02を送信しない。したがって、制御装置2(存在確認要求部204)は、故障したグループGk+1を特定する故障情報を生成する。制御装置2(存在確認要求部204)は、グループG1~Gnの全てのリピータ基板3Rについて存在確認要求を行う。
【0065】
次に、制御装置2(グループ変更指令部205)は、グループGk+1のマルチドロップ基板3Mに、所属グループをグループGkとするためのグループ変更信号S03を送信する。これに応じて、グループGk+1のマルチドロップ基板3M(グループ変更処理部307)は、監視応答データをグループGkのリピータ基板3Rkに所定のタイミングで送信するように再構成される。
【0066】
時刻t1以降の動作は、第1の実施形態での動作と同様である。すなわち、時刻t1において、制御装置2(一斉監視要求部201)が、全インターフェース基板3を対象とする一斉監視要求信号S1を送信する。グループGkの第1のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、監視応答データS2をリピータ基板3Rkに期間T3の経過後に送信する。グループGk及びGk+1の他のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、監視応答データS2をリピータ基板3Rkに一斉監視応答間隔T4で順次送信する。グループGkにおいて、リピータ基板3Rk(バッファリング部303)は、リピータ基板3Rk及びグループGk及びGk+1のマルチドロップ基板3Mの監視応答データS2をバッファリングする。同様の動作が、グループGnまで行われる。そして、時刻t3以降に、故障したリピータ基板3Rk+1以外の各リピータ基板3Rについて、第1の実施形態と同様のグループ監視要求/応答動作が行われる。すなわち、制御装置2(状態判定部203)は、故障したリピータ基板3Rk+1以外のそれぞれのリピータ基板3Rにグループ監視要求信号S3を順次送信し、これに応じて収集された監視応答信号S4に基づいて、インターフェース基板3の状態を判定する。なお、本実施形態においても、グループ監視要求/応答動作は、第1の実施形態の
図4Bに示したようにグループ監視要求信号S3の一斉送信を用いて行われてもよい。
【0067】
以上のように、本実施形態の通信制御システム1では、リピータ基板3Rは、正常時に存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を制御装置2に送信する存在確認応答部306をさらに含み、マルチドロップ基板3Mは、グループ変更信号に応じて所属グループを変更するとともに監視応答データの送信タイミングを調整するグループ変更処理部307をさらに含む。制御装置2は、存在確認要求信号をリピータ基板に送信する存在確認要求部204と、1≦k1<k2≦n(k1及びk2は自然数)について、第k2のグループGk2のリピータ基板3Rから存在確認応答信号が受信されない場合に第k2のグループGk2のマルチドロップ基板3Mに所属グループを第k1のグループGk1に変更させるグループ変更信号を送信するグループ変更指令部205とをさらに含む。これにより、リピータ基板3Rの故障時においても、当該リピータ基板3Rのグループに属していたマルチドロップ基板3Mは他のリピータ基板3Rのグループに属することができ、適切な状態監視動作が確保される。したがって、第1の実施形態における有利な効果に加えて、通信制御システム1の保守性の向上が実現される。
【0068】
また、上記構成において、k2-k1=1であることが望ましい。これにより、第k2のグループGk2に属していたマルチドロップ基板3Mからの監視応答データが第k1のグループGk1のリピータ基板3Rに到達するまでにいずれのリピータ基板3Rも通過することがなく、監視応答データの上り送信における遅延が回避される。
【0069】
<第3の実施形態>
上記第1の実施形態では、全てのリピータ基板3Rが正常に動作することを前提とした構成を示したが、本実施形態でも、あるリピータ基板3Rが故障した場合に対処するための構成を示す。なお、
図1に示した通信制御システム1の全体構成は、本実施形態においても同様である。
【0070】
図7に、本実施形態による通信制御システム1のブロック図を示す。本実施形態は、インターフェース基板3が存在確認応答部306及び設定変更処理部308をさらに備え、制御装置2が存在確認要求部204及び設定変更指令部206をさらに備える点が第1及び2の実施形態と異なる。なお、上記第1又は第2の実施形態で説明した構成と同様の構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化する。なお、
図7では、負荷4の図示を省略するが、実際には負荷4は各インターフェース基板3に接続される。
【0071】
図7には、インターフェース基板3として、グループGk+1のリピータ基板3R及びマルチドロップ基板3Mを示す。マルチドロップ設定では、監視応答生成部301、一斉監視応答部302、設定変更処理部308及び負荷制御部309が有効化され、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305及び存在確認応答部306は使用されない。一方、リピータ設定では、監視応答生成部301、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305、存在確認応答部306及び負荷制御部309が有効化されるべきであるが、リピータ基板3Rは故障しているものとする。
【0072】
第2の実施形態で説明したように、例えば、グループGk+1のリピータ基板3Rの故障が放置された場合、グループGk内で送信される監視応答データと、グループGk+1から送信される監視応答データとが競合又は衝突してしまい、正しい状態監視動作が行われなくなる。そこで、本実施形態では、グループGk+1のリピータ基板3Rが故障した場合に、他のマルチドロップ基板3Mの1つがリピータ基板に設定変更され、設定変更後のリピータ基板が当初のリピータ基板3Rの機能を代替する構成を示す。
【0073】
第1の実施形態で説明したように、インターフェース基板3は、リレー33及び34の設定によって、マルチドロップ基板3Mにもリピータ基板3Rにも構成され得る。すなわち、インターフェース基板3は、リレー33及び34がOFFの状態ではマルチドロップ基板3M(マルチドロップ設定)として構成され、リレー33及び34がONの状態ではリピータ基板3R(リピータ設定)として構成される。なお、マルチドロップ設定/リピータ設定は、インターフェース基板3が後述の設定変更信号を受信しない限り(インターフェース基板3の電源がオフとなっても)維持され、変更されない。
【0074】
制御装置2の存在確認要求部204は、第2の実施形態と同様に、通信部21からリピータ基板3Rに対して存在確認要求信号を送信させる。リピータ基板3Rの存在確認応答部306は、第2の実施形態と同様に、制御装置2から送信される存在確認要求信号に対して、正常時には存在確認応答信号を制御装置2に送信し、当該リピータ基板3Rの故障時には何も応答しない。存在確認要求部204は、対象とするリピータ基板3Rから存在確認応答信号が受信されない場合に、当該リピータ基板3Rが属するグループを特定する故障情報を生成する。本例では、グループGk+1のリピータ基板3Rが故障しているものとし、グループGk+1を特定する故障情報が生成される。
【0075】
制御装置2の設定変更指令部206は、故障情報で特定されるグループに属するマルチドロップ基板3Mのうちの、故障したリピータ基板3Rの直後のマルチドロップ基板3Mに設定変更信号を送信する。本例では、グループGk+1において最も制御装置2側(上流側)のマルチドロップ基板3Mの設定が変更される。
【0076】
マルチドロップ基板3Mの設定変更処理部308は、設定変更信号を受信すると、リレー33及び34をOFFからONに切り替える。これにより、当該マルチドロップ基板3Mは、新たなリピータ基板3Raとして再設定される。これにより、グループGk+1内の新たなリピータ基板3Raよりも後段の残余マルチドロップ基板3Mの一斉監視応答部302は、監視応答データを新たなリピータ基板3Raに送信することになる。なお、残余のマルチドロップ基板3Mにおいては、特に設定の変更は行われない。すなわち、残余のマルチドロップ基板3Mは、監視応答データを当初のリピータ基板3Rに送信したのと同様に上り信号として送信し、新たなリピータ基板3Raのバッファリング部303がリピータ基板3Ra及び残余のマルチドロップ基板3Mの監視応答データをメモリ36にバッファリングする。制御装置2のグループ監視要求部202はグループ監視要求信号を新たなリピータ基板3Raに送信し、リピータ基板3Raのグループ監視応答部304は監視応答信号を制御装置2に送信する。
【0077】
図8に、本実施形態による通信制御システム1における状態監視動作を示す。
図8に示すように、グループG1~Gnのうちの任意のグループGk及びGk+1に着目して説明を行う。グループGkはリピータ基板3Rk及びマルチドロップ基板3Mを含み、グループGk+1はリピータ基板3Rk+1及びマルチドロップ基板3Mを含む。
【0078】
まず、制御装置2(存在確認要求部204)は、存在確認要求信号S01をインターフェース基板3(実質的にはリピータ基板3Rのみ)に一斉送信する。存在確認要求信号S01は、各リピータ基板3R(中継処理部305)における中継処理に伴う遅延T2を以て伝送される。各リピータ基板3R(存在確認応答部306)は、正常な場合には、存在確認要求信号S01を受信してから期間T3の経過後に存在確認応答信号S02を制御装置2に送信する。ここで、グループGk+1のリピータ基板3Rk+1は、故障しているため、存在確認応答信号S02を送信しない。したがって、制御装置2(存在確認要求部204)は、故障したグループGk+1を特定する故障情報を生成する。制御装置2(存在確認要求部204)は、グループG1~Gnの全てのリピータ基板3Rについて存在確認動作を行う。
【0079】
次に、制御装置2(設定変更指令部206)は、グループGk+1のマルチドロップ基板3Mのうちの最も上流側の、すなわち、最も制御装置2側のマルチドロップ基板3Mに設定変更信号S04を送信する。設定変更信号S04を受信した当該マルチドロップ基板3M(設定変更処理部308)は、リレー33及び34をONに設定して、自己をリピータ基板3Raに再設定する。なお、上記以外の接続位置のマルチドロップ基板3Mが新たにマルチドロップ設定されることも可能であるが、この場合には、関与するマルチドロップ基板3Mにおいてアドレス設定の変更などが必要となる。
【0080】
時刻t1以降の動作は、第1の実施形態での動作と同様である。すなわち、時刻t1において、制御装置2(一斉監視要求部201)が、全インターフェース基板3を対象とする一斉監視要求信号S1を送信する。特に、グループGk+1の第1のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、監視応答データS2を新たなリピータ基板3Raに期間T3の経過後に送信する。グループGk+1の第2以降のマルチドロップ基板3M(一斉監視応答部302)は、監視応答データS2を新たなリピータ基板3Raに間隔T4で順次送信する。また、グループGk+1において、リピータ基板3Ra(バッファリング部303)は、リピータ基板3Ra及びマルチドロップ基板3Mの監視応答データをバッファリングする。同様の動作が、グループGnまで行われる。そして、時刻t3以降に、リピータ基板3Raを含む全リピータ基板3Rについて、第1の実施形態と同様のグループ監視要求/応答動作が行われる。すなわち、制御装置2(状態判定部203)は、リピータ基板3Raを含むそれぞれのリピータ基板3Rにグループ監視要求信号S3を順次送信し、これに応じて収集された監視応答信号S4に基づいて、インターフェース基板3の状態を判定する。なお、本実施形態においても、グループ監視要求/応答動作は、第1の実施形態の
図4Bに示したようにグループ監視要求信号S3の一斉送信を用いて行われてもよい。
【0081】
以上のように、本実施形態の通信制御システム1では、リピータ基板3Rは、正常時に存在確認要求信号に応じて存在確認応答信号を制御装置2に送信する存在確認応答部306をさらに含み、マルチドロップ基板3Mは、設定変更信号に応じて当該マルチドロップ基板3Mをリピータ基板3Rに再設定する設定変更処理部308をさらに含む。制御装置2は、存在確認要求信号をリピータ基板3Rに送信する存在確認要求部204と、いずれかのリピータ基板3Rから存在確認応答信号が受信されない場合に所定のマルチドロップ基板3Mに設定変更信号を送信して新たなリピータ基板3Raを設定する設定変更指令部206とをさらに含む。これにより、リピータ基板3Rの故障時においても、マルチドロップ基板3Mから再設定される新たなリピータ基板Raが当初のリピータ基板3Rの機能を代替することができ、適切な状態監視動作が確保される。したがって、第1の実施形態における有利な効果に加えて、通信制御システム1の保守性の向上が実現される。
【0082】
また、上記所定のマルチドロップ基板3Mは、存在確認応答信号を送信しないリピータ基板3Rが属するグループのマルチドロップ基板3Mのうちの最も制御装置2側に接続されたマルチドロップ基板3Mであることが望ましい。これにより、設定が変更されないインターフェース基板3における各種アドレス設定の変更処理が実質的に発生せず、設定変更操作又は動作の簡素化が可能となる。
【0083】
<第4の実施形態>
上記第2及び第3の実施形態では、一部のリピータ基板3Rの故障に対処する構成を示したが、本実施形態では、リピータ基板3Rの故障の有無にかかわらずグループ分けを動的に再構成する構成を示す。なお、
図1に示す通信制御システム1の全体構成は、本実施形態においても同様である。
【0084】
図9に、本実施形態による通信制御システム1のブロック図を示す。本実施形態は、インターフェース基板3がグループ変更処理部307及び設定変更処理部308を備え、制御装置2がグループ変更指令部205及び設定変更指令部206を備える点が第1乃至第3の実施形態と異なる。なお、上記第1乃至第3の実施形態で説明した構成と同様の構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化する。なお、
図9では、負荷4の図示を省略するが、実際には負荷4は各インターフェース基板3に接続される。
【0085】
図9には、インターフェース基板3として、任意のグループのリピータ基板3R及び任意のグループのマルチドロップ基板3Mを示す。マルチドロップ設定では、監視応答生成部301、一斉監視応答部302、グループ変更処理部307、設定変更処理部308及び負荷制御部309が有効化され、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305は使用されない。一方、リピータ基板設定では、監視応答生成部301、バッファリング部303、グループ監視応答部304、中継処理部305、設定変更処理部308及び負荷制御部309が有効化され、一斉監視応答部302及びグループ変更処理部307は使用されない。
【0086】
インターフェース基板3のグループ分けの再構成が必要となった場合、制御装置2の設定変更指令部206は、リピータ基板3Rに設定すべきマルチドロップ基板3Mに対して、マルチドロップ設定をリピータ設定に変更するための設定変更信号を送信する。また、設定変更指令部206は、マルチドロップ基板3Mに設定すべきリピータ基板3Rに対して、リピータ設定をマルチドロップ設定に変更するための設定変更信号を送信する。これにより、インターフェース基板3のグループ分けが所望の態様に再構成される。
【0087】
また、制御装置2のグループ変更指令部205は、所属グループの変更が必要となったマルチドロップ基板3Mに対して、第2の実施形態と同様に、グループ変更信号を送信する。これにより、各マルチドロップ基板3Mにおける監視応答データの上り送信のタイミングが調整され、グループ構成変更後の監視応答データなどの信号の競合又は衝突が回避される。なお、グループ分けの再構成の態様によっては、グループ変更信号の送信が不要な場合もある。例えば、一部又は全部のリピータ基板3Rがマルチドロップ基板3Mに再設定されるとともに、当該リピータ基板3Rの直後の(下り側の直近の)マルチドロップ基板3Mが新たなリピータ基板3Raとなる場合には、第3の実施形態と同様に、グループ変更信号は不要である。
【0088】
なお、本実施形態において、制御装置2が存在確認要求部204(不図示)をさらに備え、インターフェース基板3(リピータ基板3R)が存在確認応答部306(不図示)をさらに備えていてもよい。すなわち、いずれかのグループのリピータ基板3Rの故障又は不在の場合に、制御装置2の設定変更指令部206及びグループ変更指令部205が動作して、上記のグループ分け再構成動作を実行してもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態の通信制御システム1では、複数のインターフェース基板3の各々は、マルチドロップ基板3M又はリピータ基板3Rのいずれにも設定可能に構成され、設定変更信号に応じてマルチドロップ基板3M又はリピータ基板3Rを再設定する設定変更処理部308をさらに含み、制御装置2は、少なくとも1つの、マルチドロップ基板3M又はリピータ基板3Rに設定変更信号を送信する設定変更指令部206をさらに含む。これにより、インターフェース基板3全体のグループ分けを必要に応じてダイナミックに再構成することができる。
【0090】
また、再構成後に存在するマルチドロップ基板3Mは、グループ変更信号に応じて所属グループを変更するとともに監視応答データの送信タイミングを調整するグループ変更処理部307をさらに含み、制御装置2は、再構成後に存在する少なくとも1つのマルチドロップ基板3Mにグループ変更信号を送信するグループ変更指令部205をさらに含んでいてもよい。これにより、インターフェース基板3全体のグループ分けをよりダイナミックに再構成することができる。
【0091】
<第5の実施形態>
第5の実施形態として、通信制御システム1を照明制御システムに応用した例を示す。
図10に、本実施形態による照明制御システム5のブロック図を示す。なお、上記第1乃至第4の実施形態で説明した構成と同様の構成には同じ符号を付し、重複する説明を省略又は簡略化する。
【0092】
図10に示すように、照明制御システム5は、第1乃至第4の実施形態のいずれかの通信制御システム1、及び負荷4としての照明器具40を含む。照明器具40は、電源回路41及び光源42を含む。光源42は、例えば、LED、放電灯などで構成されるランプである。電源回路41は、例えば、不図示の商用電源を光源42の点灯に適した出力電流に変換し、その出力電流を光源42に供給する変換回路である。例えば、光源42がLEDランプである場合には、電源回路41は交流電圧を直流化する整流回路及び整流回路の直流出力から直流LED電流を生成するDC/DCコンバータを備える。
【0093】
制御装置2の負荷制御指令部207は、通信部21から照明制御信号をインターフェース基板3に送信させる。各インターフェース基板3のCPU30の負荷制御部309は、照明制御信号から制御信号を生成し、その制御信号を電源回路41に出力する。電源回路41は、負荷制御部309からの制御信号に応じて光源42の動作状態(点灯、消灯又は調光)を制御する。また、電源回路41は、光源42の動作状態又は接続状態を負荷制御部309に出力することもできる。すなわち、本実施形態では、制御装置2の負荷制御指令部207は照明制御指令部として機能し、インターフェース基板3の負荷制御部309は照明制御部として機能する。
【0094】
以上のように、本実施形態の照明制御システム5は、第1乃至第4の実施形態のいずれかの通信制御システム1と、複数のインターフェース基板3の各々に接続された照明器具40とを備える。制御装置2は、照明器具40を制御するための照明制御信号をインターフェース基板3に送信する照明制御指令部(負荷制御指令部207)をさらに含む。各インターフェース基板3は、照明制御信号に基づいて照明器具40を制御する照明制御部(負荷制御部309)を備える。このように、本発明の通信制御システム1は、例えば、照明制御システムに好適に適用可能である。
【0095】
<変形例>
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は、例えば以下に示すように種々の態様に変形可能である。
【0096】
(1)通信規格に関する変形
上記各実施形態ではRS485規格に準拠した通信制御システム1を示したが、本発明は、半二重通信方式の他の通信規格に準拠する通信制御システムにも同様に適用可能である。
【0097】
(2)グループの構成に関する変形
上記各実施形態では、グループG0はリピータ基板3Rを有さない構成を示したが、グループG0の最上流側(最も制御装置2側)のインターフェース基板3をリピータ基板3Rとして構成してもよい。また、グループG0が設けられない構成も可能である。また、各実施形態に示したグループ構成において、各グループに含まれるマルチドロップ基板3Mの接続数は例示であり、説明又は図示したものに限られない。
【符号の説明】
【0098】
1 通信制御システム
2 制御装置
3 インターフェース基板
3M マルチドロップ基板
3R、3Ra リピータ基板
4 負荷
5 照明制御システム
20 処理部
21 通信部
22 記憶部
30 CPU
36 メモリ
40 照明器具
201 一斉監視要求部
202 グループ監視要求部
203 状態判定部
204 存在確認要求部
205 グループ変更指令部
206 設定変更指令部
207 負荷制御指令部
301 監視応答生成部
302 一斉監視応答部
303 バッファリング部
304 グループ監視応答部
305 中継処理部
306 存在確認応答部
307 グループ変更処理部
308 設定変更処理部
309 負荷制御部