(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】熱音響装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/00 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
F25B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020140675
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河内 達磨
(72)【発明者】
【氏名】武井 智行
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-002119(JP,A)
【文献】特開2015-200422(JP,A)
【文献】登録実用新案第3216536(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0231341(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00
F02G 1/055
F02G 1/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱音響装置であって、
スタックユニットの一端に配され、前記スタックユニットの前記一端を加熱する、または、前記一端によって冷却される第1熱交換器と、
前記スタックユニットの他端に配され、前記スタックユニットの前記他端を一定の温度に保つ第2熱交換器と、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に配され、熱エネルギーと振動エネルギーとを変換する前記スタックユニットと、を備え、
前記スタックユニットは、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに連通する複数の保持孔を有するホルダと、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに連通する複数の流路を有し、前記保持孔のそれぞれに少なくとも一部が収容される複数のスタック部材と、を有する、熱音響装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱音響装置であって、
前記スタック部材は、セラミックで構成されており、
前記ホルダは、セラミックよりも熱伝導率の高い素材で構成されている、熱音響装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の熱音響装置であって、
前記ホルダは、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに連通する方向について異なる位置に配されており、前記複数の保持孔の一部を構成する孔をそれぞれ有する、複数の金属の板状部材を、予め定められた隙間をあけて備える、熱音響装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の熱音響装置であって、
前記ホルダは、前記スタックユニットの外部から熱エネルギーが供給され、前記熱エネルギーを前記スタック部材に供給する、熱音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱音響効果に基づき、エネルギー交換を行うスタックを備える熱音響装置が知られている。特許文献1には、押し出し成形によってセラミックで構成されるスタックを製造する技術が記載されている。この製造方法によって、複数の流路を有するスタックを製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-249223号公報
【文献】特開2020-12601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、スタックの直径を大きくすることで、変換できるエネルギーを大きくできる。しかし、押し出し成形によってセラミックで構成されるスタックを製造する場合、スタックの直径を大きくすると、焼成前の自重による変形や、焼成における温度のムラによって、スタックにひずみが生じるおそれがある。この場合、スタックの各流路の内径が均一にならず、変換できるエネルギーの量および変換の効率が低下するおそれがある。また、セラミック以外の素材で構成されるスタックを製造する場合においても、同様の問題が生じ得る。
【0005】
また、単純にスタックを大きくした場合、熱音響装置の使用時にスタック内において周縁部分と中央部分とにおける温度差が大きくなり、変換できるエネルギーが低下するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本開示の一形態によれば、熱音響装置が提供される。この熱音響装置は、スタックユニットの一端に配され、前記スタックユニットの前記一端を加熱する、または、前記一端によって冷却される第1熱交換器と、前記スタックユニットの他端に配され、前記スタックユニットの前記他端を一定の温度に保つ第2熱交換器と、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間に配され、熱エネルギーと振動エネルギーとを変換する前記スタックユニットと、を備える。前記スタックユニットは、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに連通する複数の保持孔を有するホルダと、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに連通する複数の流路を有し、前記保持孔のそれぞれに少なくとも一部が収容される複数のスタック部材と、を有する。
このような態様とすれば、スタック部材の数を増大させることにより、スタック部材を大きくすることなく、スタックユニットの機能を向上させることができる。そのため、単純にスタック部材を大きくすることでスタックを大きくする態様と比べて、スタックユニットが変換できるエネルギーが低下することを抑制できる。
(2)上記形態の熱音響装置において、前記スタック部材は、セラミックで構成されており、前記ホルダは、セラミックよりも熱伝導率の高い素材で構成されている、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、ホルダは、セラミックよりも熱伝導率の高い素材で構成されているので、ホルダによって、スタック部材のスタックの軸方向に直行する方向における断面方向において温度差が生じることを抑制できる。そのため、スタックユニット内において周縁部分と中央部分とに温度差が生じることを抑制できるため、スタックユニットが変換できるエネルギーが低下することを抑制できる。
(3)上記形態の熱音響装置において、前記ホルダは、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに連通する方向について異なる位置に配されており、前記複数の保持孔の一部を構成する孔をそれぞれ有する、複数の金属の板状部材を、予め定められた隙間をあけて備える、態様とすることもできる。
このような態様とすれば、ホルダによるスタック部材の第1熱交換器と第2熱交換器とに連通する方向における温度勾配への影響が小さくできる。そのため、スタックユニットが変換できるエネルギーが低下することを抑制できる。
(4)上記形態の熱音響装置において、前記ホルダは、前記スタックユニットの外部から熱エネルギーが供給され、前記熱エネルギーを前記スタック部材に供給する、態様とすることもできる。
このような形態とすれば、スタックユニットの外部から熱エネルギーが供給されない態様に比べて、スタック部材の温度勾配を容易に制御することができる。
【0008】
本開示は、熱音響装置以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、熱音響装置用のスタックユニットや、熱音響装置用のスタックユニットを備えた原動機、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の熱音響装置の概略構成を示す説明図である。
【
図3】スタックユニットの概略構成を示す説明図である。
【
図5】他の実施形態におけるスタックユニットの概略構成を示す斜視図である。
【
図6】他の実施形態におけるスタックユニットの概略構成を示す平面図である。
【
図7】更に他の実施形態におけるスタックユニットの概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態の熱音響装置TAの概略構成を示す説明図である。なお、
図1は、熱音響装置TAの各構成要素の形状を正確に示すものではない。熱音響装置TAは、ループ管型の熱音響装置である。熱音響装置TAは、熱源HSと冷却対象COとに接続されている。熱音響装置TAは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、冷却対象COを冷却することができる。
【0011】
熱音響装置TAは、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1,LT2と、を備える。原動機PMの一端とヒートポンプHPの一端とは、ループ管LT1によって接続されている。原動機PMの他端とヒートポンプHPの他端とは、ループ管LT2によって接続されている。その結果、原動機PMと、ヒートポンプHPと、ループ管LT1,LT2とは、輪状の配管構造PAを構成している。この輪状の配管構造PA内には、流体FL1が満たされている。本実施形態において、流体FL1は、空気である。輪状の配管構造PAは、内部の流体FL1が、輪状の配管構造PA内を流通可能であるように構成されている。
【0012】
原動機PMは、熱源HSから熱エネルギーを供給されて、音波を発生させる(
図1の下段左部参照)。原動機PMは、第1熱交換器40と、第2熱交換器20と、スタックユニット30と、を備える。
【0013】
図2は、原動機PMの概略構成を示す説明図である。なお、
図2は、原動機PMの各構成要素の形状を正確に示すものではない。本実施形態において、スタックユニット30は配管を有しているが、図示の便宜上省略している。スタックユニット30は、第1熱交換器40と第2熱交換器20との間の部位に設置されている(
図1の下段左部および
図2参照)。スタックユニット30は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、流体FL1を流通させる流路32を構成する。スタックユニット30は、流体FL1を流通可能であるように第1熱交換器40および第2熱交換器20と接続されている。スタックユニット30は、温度勾配を形成されて、熱エネルギーと振動エネルギーとを変換する。より具体的には、スタックユニット30は、ループ管LT1内に音波を発生させる。
【0014】
図3は、スタックユニット30の概略構成を示す説明図である。なお、
図3は、スタックユニット30の各構成要素の形状を正確に示すものではない。スタックユニット30は、ホルダ31と、7個のスタック部材33と、を備える。本実施形態において、スタックユニット30とホルダ31とスタック部材33とは、流路32方向に直交する方向における断面が略円形状である。スタックユニット30の直径は、スタック部材33の直径の3倍程度である。
【0015】
ホルダ31は第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する7個の保持孔31hを有する。ホルダ31の中心に配置された1個の保持孔31hの周囲に、6個の保持孔31hが互いに均等の距離になるように配置されている。本実施形態において、ホルダ31は、セラミックよりも熱伝導率の高い金属素材で構成されている。また、ホルダ31は、第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する方向について異なる位置に配されており、複数の保持孔31hの一部を構成する孔をそれぞれ有する、2枚の金属の板状部材31mを、予め定められた隙間をあけて備える。各板状部材31mの第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する方向の寸法は、スタック部材33の第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する方向の寸法の1/2より小さい。
【0016】
スタック部材33は、第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する複数の流路33Pを有する。各スタック部材33の流路33Pを合わせて流路32という。各スタック部材33は、2枚の板状部材31mが有する保持孔31hのそれぞれに少なくとも一部が収容されるように配置される。(
図2参照)。図示の便宜上、
図3において、スタック部材33は、ホルダ31に収容されていない状態で示されている。本実施形態において、スタック部材33は、セラミックで構成されている。
【0017】
ホルダ31が有する保持孔31hの内径とスタック部材33の外径とは同程度の形状である。そのため、保持孔31hにスタック部材33が収容された場合、保持孔31hとスタック部材33との間の隙間はほぼゼロである。また、保持孔31hにスタック部材33が収容された場合において、スタック部材33同士が互いに接触しないように形成されている。
【0018】
図4は、原動機PMの概略構成を示す断面図である。なお、
図4は、原動機PMの各構成要素の形状を正確に示すものではない。
【0019】
第1熱交換器40は、原動機PMの一端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されており、かつ、第1熱交換器40は、スタックユニット30の一端38に配されている(
図4の下段参照)。第1熱交換器40は、さらに、熱源HSに接続されている。熱源HSは、例えば、抵抗加熱方式の棒状のヒータである。第1熱交換器40は、熱源HSから熱を供給されて、配管構造PA内の流体FL1であって、第1熱交換器40に接する流体FL1に、熱を付与する。
【0020】
第1熱交換器40は、伝熱リング43と、フィンモジュール44と、を備える(
図4の下段参照)。伝熱リング43は、熱源HSに接続されており、熱源HSから熱を受け取る。フィンモジュール44は、伝熱リング43の中央の穴に配されている。フィンモジュール44は、多数のフィンを備えている。フィンモジュール44における隣り合うフィンの間隙は、流体FL1を流通させる流路42を構成する。フィンモジュール44は、伝熱リング43から熱を受け取って、流路42を流れる流体FL1に熱を与える。これにより、第1熱交換器40は、スタックユニット30の一端38を加熱する。
【0021】
第2熱交換器20は、原動機PMの他端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されており、かつ、第2熱交換器20は、スタックユニット30の他端39に配されている(
図4の上段参照)。第2熱交換器20は、図示しないチラーを備える。第2熱交換器20は、チラーによって温度を一定に保たれている。第2熱交換器20は、配管構造PA内の流体FL1であって、第2熱交換器20に接する流体FL1を、あらかじめ定められた範囲の温度に制御する。これにより、第2熱交換器20は、スタックユニット30の他端39を一端38よりも低い温度にする。すなわち、第2熱交換器20は、スタックユニット30の他端39を一端38よりも低い温度にすることができる温度に保たれている。
【0022】
スタックユニット30は、第2熱交換器20と第1熱交換器40との間に配されている。本実施形態において、スタックユニット30は、ループ管LT1およびループ管LT2と同径の配管T1を備え、配管T1の中にホルダ31およびスタック部材33が収容されている。
【0023】
第2熱交換器20は、ジャケット23と、フィンモジュール24と、を備える(
図4の上段参照)。ジャケット23は、流体FL2を流通させる流路26を構成する環状の構造物である。ジャケット23は、チラーに接続され、チラーによって流体FL2を流通される。フィンモジュール24は、ジャケット23の中央の穴に配されている。フィンモジュール24は、多数のフィンを備えている。フィンモジュール24における隣り合うフィンの間隙は、流体FL1を流通させる流路22を構成する。フィンモジュール24は、ジャケット23との間で熱交換を行う。チラーによる流体FL2の流通によって、ジャケット23およびフィンモジュール24は、あらかじめ定められた範囲の温度に制御される。その結果、流路22を流れる流体FL1は、あらかじめ定められた範囲の温度に制御される。
【0024】
原動機PMは、以下のように動作する。第1熱交換器40によって加熱された流体FL1が、スタックユニット30の一端38およびその近傍の部分に熱を与えることにより、スタックユニット30の一端38の近傍が高温となる。第2熱交換器20によって一定の温度に保たれている流体FL1が、スタックユニット30の他端39およびその近傍の部分から熱を奪うことにより、スタックユニット30の他端39の近傍が一端38の近傍よりも低温となる。その結果、スタックユニット30に、温度勾配が形成される。すると、スタックユニット30は、熱音響自励振動を起こし、流路32内で定常波を発生させる。スタックユニット30が発生させた定常波の音波は、ループ管LT1内の流体FL1を介して、原動機PMの一端からヒートポンプHPの一端に伝えられる(
図1の矢印K1参照)。
【0025】
スタックユニット30に形成される温度勾配とは、より具体的には、各スタック部材33に形成される温度勾配である。第1熱交換器40によって加熱された流体FL1によって、各スタック部材33の一端38の近傍が高温となる。第2熱交換器20によって一定の温度に保たれている流体FL1によって、スタック部材33の他端39の近傍が低温となる。その結果、スタック部材33に、温度勾配が形成される。すると、各スタック部材33は、熱音響自励振動を起こし、流路33P内で定常波を発生させる。複数のスタック部材33のうち、スタックユニット30における周縁部分に配置されたスタック部材33は、周縁から熱がスタックユニット30の外部に移動しやすいため、スタックユニット30における中央部分に配置されたスタック部材33よりも温度が低くなる傾向がある。本実施形態において、ホルダ31は、スタック部材33よりも熱伝導率の高い素材で構成されているので、ホルダ31によって、各スタック部材33間に生じる温度差を抑制することができる。
【0026】
ヒートポンプHPは、原動機PMから音波を供給されて、冷却対象COを冷却する(
図1の上段右部参照)。ヒートポンプHPは、原動機PMと略同様の構成を有する。ヒートポンプHPは、第3熱交換器90と、第4熱交換器70と、スタックユニット80と、を備える。第4熱交換器70が、第1熱交換器40に対応する。第3熱交換器90が、第2熱交換器20に対応する。スタックユニット80が、スタックユニット30に対応する。
【0027】
第3熱交換器90は、ヒートポンプHPの一端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT1に接続されている(
図1の上段右部参照)。第3熱交換器90は、図示しないチラーを備える。第3熱交換器90は、チラーによって流体を流通されて、温度を一定に保たれている。第3熱交換器90は、配管構造PA内の流体FL1であって、第3熱交換器90に接する流体FL1を、あらかじめ定められた範囲の温度に制御する。なお、第3熱交換器90は、第2熱交換器20に備えられたチラーに接続されていてもよい。
【0028】
第4熱交換器70は、ヒートポンプHPの他端において、流体FL1を流通可能であるようにループ管LT2に接続されている(
図1の上段右部参照)。第4熱交換器70は、さらに、冷却対象COに接続されている。第4熱交換器70は、配管構造PA内の流体FL1であって、第4熱交換器70に接する流体FL1から熱を奪われて、冷却対象COから熱を奪う。その結果、冷却対象COが冷却される。
【0029】
スタックユニット80は、第4熱交換器70と第3熱交換器90との間の部位に設置されている(
図1の上段右部参照)。スタックユニット80は、多数の貫通孔を備えている。それらの貫通孔は、流体FL1を流通させる流路82を構成する。スタックユニット80は、流体FL1を流通可能であるように第4熱交換器70および第3熱交換器90と接続されている。スタックユニット80は、ループ管LT1内の流体FL1によって伝達される定常波の音波によって、温度勾配を形成される。
【0030】
ヒートポンプHPは、以下のように動作する。スタックユニット80の流路82内において、流体FL1は定常波で振動する。流体FL1の微小部分がスタックユニット80の一端88から他端89に向かう向きに移動する際に、流体FL1は断熱膨張する。そして、流体FL1の微小部分の温度は低下する。流体FL1の微小部分は、スタックユニット80の構造から熱を奪う。一方、流体FL1の微小部分がスタックユニット80の他端89から一端88に向かう向きに移動する際に、流体FL1は断熱圧縮される。そして、流体FL1の微小部分の温度は上昇する。流体FL1の微小部分は、スタックユニット80の構造に熱を与える。その結果、流体FL1の振動によって、スタックユニット80の流路82内において、スタックユニット80の他端89から一端88に向かう向きに、熱の移動が生じる。よって、スタックユニット80において、温度勾配が形成される。また、第3熱交換器90によって、スタックユニット80の一端88の近傍の温度は、一定に保たれている。その結果、流体FL1の振動による熱の移動によって、スタックユニット80の他端89の近傍は、冷却される。すると、第4熱交換器70を介して、冷却対象COが冷却される。
【0031】
流体FL1がスタックユニット80の他端89の近傍から一端88の近傍に移動する際に、流体FL1は断熱圧縮される。その結果、流体FL1の温度が上昇する。流体FL1は、スタックユニット80の一端88の近傍において、第3熱交換器90に熱を与える。第3熱交換器90に与えられた熱は、第3熱交換器90のチラーを介して、外部に放出される。
【0032】
本実施形態におけるスタックユニット30は、第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する複数の保持孔31hを有するホルダ31と、第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する複数の流路32を有し、保持孔毎に少なくとも一部が収容されるスタック部材33と、を有する。このような態様とすれば、スタック部材33の数を増大させることにより、スタック部材33を大きくすることなく、スタックユニット30の機能を向上させることができる。そのため、単純にスタック部材33を大きくすることでスタックを大きくする態様と比べて、スタック部材33にひずみが生じることを抑制できるため、スタック部材33の各流路33Pの内径が不均一になることを抑制できる。従って、スタックユニット30が変換できるエネルギーが低下することを抑制できる。
【0033】
また、本実施形態において、スタック部材は、セラミックで構成されている。そのため、スタック部材33が、セラミックよりも熱伝導率が高い金属で構成されている態様と比べて、エネルギーの変換の効率が高い。一方で、ホルダ31は、セラミックよりも熱伝導率の高い素材で構成されているので、ホルダ31によって、スタック部材33の流路33P方向に直交する方向における断面方向において温度差が生じることを抑制できる。そのため、スタックユニット30内において周縁部分と中央部分とに温度差が生じることを抑制できるため、スタックユニット30が変換できるエネルギーが低下することを抑制できる。
【0034】
また、ホルダ31は、第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する方向において、複数の金属の板状部材31mが予め定められた隙間を有するように並べられて構成されている。このため、ホルダ31によるスタック部材33の第1熱交換器40と第2熱交換器20とに連通する方向における温度勾配への影響が小さくできる。そのため、スタックユニット30が変換できるエネルギーが低下することを抑制できる。
【0035】
B.他の実施形態:
(B1)
図5は、他の実施形態におけるスタックユニット30の概略構成を示す斜視図である。上記実施形態において、ホルダ31は、2つの板状部材31mを備えている。これに限らず、ホルダ31は、
図5に示すように、4枚など、3枚以上の板状部材31mを備えていてもよい。また、ホルダ31は、板状部材31mを1枚のみ備えていてもよい。
【0036】
(B2)
図6および
図7は、他の実施形態におけるスタックユニット30の概略構成を示す平面図である。
図6および
図7は、スタックユニット30を流路33P方向に見た場合の平面図である。上記実施形態において、スタックユニット30は、流路33P方向に直交する方向における断面が円形状であり、半径の大きさが同一のスタック部材33を備えている。この代わりに、スタックユニット30は、
図6に示すように、流路33P方向に直交する方向における断面の半径の大きさが異なるスタック部材33を備えていてもよい。また、スタックユニット30は、
図7に示すように、流路33P方向に直交する方向における断面が六角形の形状であるスタック部材33を備えていてもよい。
【0037】
(B3)上記実施形態において、ホルダ31は、スタックユニット30の外部から熱エネルギーが供給され、熱エネルギーをスタック部材33に供給してもよい。例えば、ホルダ31は、熱源HSに接続され、熱源HSから熱エネルギーが供給される。ホルダ31は、熱源HSから供給された熱エネルギーをスタック部材33に供給し、スタック部材33の温度勾配を制御する。このような形態とすれば、スタックユニット30の外部から熱エネルギーを取得しない態様に比べて、スタック部材33の温度勾配を容易に制御することができる。
【0038】
(B4)上記実施形態において、ヒートポンプHPにおけるスタックユニット80は、スタックユニット30と同様の構成である。この代わりに、スタックユニット80は、スタック部材33を単純に大きくした構成であってもよい。すなわち、原動機PMにおけるスタックユニット30のみが、ホルダ31と複数のスタック部材33とを備える構成であってもよい。
【0039】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
20…第2熱交換器、22…流路、23…ジャケット、24…フィンモジュール、26…流路、30…スタックユニット、31…ホルダ、31h…保持孔、31m…板状部材、32…流路、33…スタック部材、33P…流路、38…一端、39…他端、40…第1熱交換器、42…流路、43…伝熱リング、44…フィンモジュール、70…第4熱交換器、80…スタックユニット、82…流路、88…一端、89…他端、90…第3熱交換器、CO…冷却対象、FL1…流体、FL2…流体、HP…ヒートポンプ、HS…熱源、K1…音波の進行方向を示す矢印、LT1…ループ管、LT2…ループ管、PA…配管構造、PM…原動機、T1…配管、TA…熱音響装置