(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】筒体の再生方法、回転体の製造方法、筒体の再生装置
(51)【国際特許分類】
G03G 5/00 20060101AFI20240509BHJP
G03G 5/05 20060101ALI20240509BHJP
G03G 5/10 20060101ALI20240509BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G03G5/00 101
G03G5/05 101
G03G5/05 102
G03G5/10 B
G03G21/16 171
(21)【出願番号】P 2020143926
(22)【出願日】2020-08-27
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】野々山 浩
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 博
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-202406(JP,A)
【文献】特開2005-140919(JP,A)
【文献】特開平10-115938(JP,A)
【文献】特開2010-231029(JP,A)
【文献】特開2007-286267(JP,A)
【文献】特開2004-101825(JP,A)
【文献】特開2017-003817(JP,A)
【文献】特開2009-083444(JP,A)
【文献】特開2006-208943(JP,A)
【文献】特開2017-218494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
G03G 13/00
G03G 15/00
G03G 21/16-21/18
B29B 17/00-17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に熱硬化性樹脂を主成分とする塗膜が形成され、内周面の両端部に接合材を介して熱可塑性樹脂を主成分とする一対の支持体が接合された金属製の筒体を準備する工程と、
該塗膜を介して該筒体の軸方向の中央部を把持し、該塗膜の架橋温度及び該支持体の融点よりも低く、該接合材の軟化点以上の温度で該筒体
の軸方向の両端部を加熱し、
該一対の支持体を該筒体の軸方向の外側に向けて移動させて該筒体から該一対の支持体を分離する工程と、
該内周面を把持し
、高圧の液体を該塗膜に噴射して該塗膜を剥離する工程と、
を有する筒体の再生方法。
【請求項2】
前記筒体から前記一対の支持体を分離する工程は、前記筒体の端部のみを電磁誘導加熱する、請求項1に記載の筒体の再生方法。
【請求項3】
前記筒体から前記一対の支持体を分離する工程は、前記筒体の前記端部を包囲するコイルであって、前記内周面と前記支持体との接合部の、前記筒体の軸方向における長さよりも前記軸方向における長さが長いコイルを用いて、前記端部を電磁誘導加熱する請求項2に記載の筒体の再生方法。
【請求項4】
前記筒体から前記一対の支持体を分離する工程は、前記コイルに対する前記端部の挿入量を調整してから、前記端部を電磁誘導加熱する、請求項3に記載の筒体の再生方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の再生方法により再生した前記筒体の外周面に、他の塗膜を形成する工程と、
前記他の塗膜が形成された前記筒体の内周面の両端部に、支持体を接合材で接合する工程と、
を有する回転体の製造方法。
【請求項6】
外周面に熱硬化性樹脂を主成分とする塗膜が形成され、内周面の両端部に接合材を介して熱可塑性樹脂を主成分とする一対の支持体が接合された金属製の筒体における軸方向の中央部を
、該塗膜を介して把持する把持手段と、
該把持手段により把持された該筒体の
軸方向の両端部を、該塗膜の架橋温度及び該支持体の融点よりも低く、該接合材の軟化点以上の温度で、電磁誘導加熱する加熱手段と、
該一対の支持体を該筒体の軸方向の外側に向けて
移動させて、該把持手段により把持された該筒体から
該一対の支持体を分離する分離手段と、
該内周面を把持し
、高圧の液体を該塗膜に噴射して該塗膜を剥離する剥離手段と、
を備える筒体の再生装置。
【請求項7】
前記加熱手段は、前記把持手段により把持された前記筒体の一方の端部を電磁誘導加熱するものであり、
前記把持手段は、前記筒体の前記加熱手段に対する向きを変える回転部を備える、請求項6に記載の筒体の再生装置。
【請求項8】
前記分離手段は、前記把持手段により把持された前記筒体の一方の端部から支持体を該筒体の軸方向の外側に向けて分離する、請求項7に記載の筒体の再生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒体の再生方法、回転体の製造方法及び筒体の再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、円筒状の導電性基体の表面に感光層が形成された感光体ドラムと、少なくとも一部に導電性部分を有するフランジとを備え、前記フランジは前記導電性部分と通電剥離性接着剤とを介して感光体ドラムの端に接着されることを特徴とする電子写真感光体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、筒体への傷等の損傷の発生を抑制すると共に、塗膜の架橋温度よりも高い温度に加熱した後に塗膜を剥離する工程を有する場合と比して、塗膜を剥離する工程における筒体への塗膜の残渣の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様に係る筒体の再生方法は、外周面に熱硬化性樹脂を主成分とする塗膜が形成され、内周面の両端部に接合材を介して熱可塑性樹脂を主成分とする一対の支持体が接合された金属製の筒体を準備する工程と、該塗膜を介して該筒体の軸方向の中央部を把持し、該塗膜の架橋温度及び該支持体の融点よりも低く、該接合材の軟化点以上の温度で該筒体の軸方向の両端部を加熱し、該一対の支持体を該筒体の軸方向の外側に向けて移動させて該筒体から該一対の支持体を分離する工程と、該内周面を把持し、高圧の液体を該塗膜に噴射して該塗膜を剥離する工程と、を有する。
【0006】
第2態様に係る筒体の再生方法は、第1態様に記載の筒体の再生方法において、前記筒体から前記一対の支持体を分離する工程は、前記筒体の端部のみを電磁誘導加熱する。
【0007】
第3態様に係る筒体の再生方法は、第2態様に記載の筒体の再生方法において、前記筒体から前記一対の支持体を分離する工程は、前記筒体の前記端部を包囲するコイルであって、前記内周面と前記支持体との接合部の、前記筒体の軸方向における長さよりも前記軸方向における長さが長いコイルを用いて、前記端部を電磁誘導加熱する。
【0008】
第4態様に係る筒体の再生方法は、第3態様に記載の筒体の再生方法において、前記筒体から前記一対の支持体を分離する工程は、前記コイルに対する前記端部の挿入量を調整してから、前記端部を電磁誘導加熱する。
【0009】
第5態様に係る回転体の製造方法は、第1態様~第4態様の何れか一態様に記載の筒体の再生方法により再生した前記筒体の外周面に、他の塗膜を形成する工程と、前記他の塗膜が形成された前記筒体の内周面の両端部に、支持体を接合材で接合する工程と、を有する。
【0010】
第6態様に係る筒体の再生装置は、外周面に熱硬化性樹脂を主成分とする塗膜が形成され、内周面の両端部に接合材を介して熱可塑性樹脂を主成分とする一対の支持体が接合された金属製の筒体における軸方向の中央部を、該塗膜を介して把持する把持手段と、該把持手段により把持された該筒体の軸方向の両端部を、該塗膜の架橋温度及び該支持体の融点よりも低く、該接合材の軟化点以上の温度で、電磁誘導加熱する加熱手段と、該一対の支持体を該筒体の軸方向の外側に向けて移動させて、該把持手段により把持された該筒体から該一対の支持体を分離する分離手段と、該内周面を把持し、高圧の液体を該塗膜に噴射して該塗膜を剥離する剥離手段と、を備える。
【0011】
第7態様に係る筒体の再生装置は、第6態様に記載の筒体の再生装置において、前記加熱手段は、前記把持手段により把持された前記筒体の一方の端部を電磁誘導加熱するものであり、前記把持手段は、前記筒体の前記加熱手段に対する向きを変える回転部を備える。
【0012】
第8態様に係る筒体の再生装置は、第7態様に記載の筒体の再生装置において、前記分離手段は、前記把持手段により把持された前記筒体の一方の端部から支持体を該筒体の軸方向の外側に向けて分離する。
【発明の効果】
【0013】
第1態様に係る筒体の再生方法によれば、筒体への傷等の損傷の発生を抑制すると共に、塗膜の架橋温度よりも高い温度で加熱した後に塗膜を剥離する工程を有する場合と比して、塗膜を剥離する工程における筒体への塗膜の残渣の発生を抑制することができる。
【0014】
第2態様に係る筒体の再生方法によれば、支持体を加熱して接合材を軟化させる場合と比して、短時間で接合材を軟化させることができる。
【0015】
第3態様に係る筒体の再生方法によれば、コイルの長さが接合部の長さよりも短い場合と比して、短時間で接合材を軟化させることができる。
【0016】
第4態様に係る筒体の再生方法によれば、同一のコイルを用いて、支持体との接合部の寸法が異なる様々な筒体の端部を加熱することができる。
【0017】
第5態様に係る回転体の製造方法によれば、再生した筒体を用いて回転体を製造することができる。
【0018】
第6態様に係る筒体の再生装置によれば、筒体への傷等の損傷の発生を抑制すると共に、塗膜の架橋温度よりも高い温度に加熱して塗膜を剥離する構成と比して、塗膜を剥離する工程における筒体への塗膜の残渣の発生を抑制することができる。
【0019】
第7態様に係る筒体の再生装置によれば、筒体の両端部を同時に電磁誘導加熱する構成と比して、筒体の再生装置を安価に構成することができる。
【0020】
第8態様に係る筒体の再生装置によれば、一対の支持体を同時に分離させる構成と比して、筒体の再生装置を安価に構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態に係る筒体の再生装置の概略構成を示す正面図である。
【
図2】(A)実施形態に係る感光体ドラムの正面図である。(B)実施形態に係る感光体ドラムの正面断面図である。
【
図4】実施形態に係る分離装置の概略構成を示す正面図である。
【
図5】実施形態に係る加熱装置を構成するコイルを示す正面図である。
【
図6】実施形態に係る加熱装置を構成するコイルを示す側面図である。
【
図7】実施形態に係る分離装置の把持部が感光体ドラムの端部をコイル挿入する動作を説明する動作説明図である。
【
図8】実施形態に係る分離装置の把持装置に把持された感光体ドラムのフランジを、引抜装置が把持する動作を説明する動作説明図である。
【
図9】実施形態に係る分離装置の把持装置及び引抜装置によって、感光体ドラムのフランジが感光体ドラムから分離される動作を説明する動作説明図である。
【
図10】実施形態に係る剥離装置の概略構成を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係る筒体の再生方法、回転体の製造方法、及び筒体の再生装置の一例について
図1~
図10に従って説明する。
【0023】
なお、以下に示す説明では、筒体の再生装置20(以降「再生装置20」と表記)をユーザ(図示省略)が立つ側から正面視して、装置上下方向(鉛直方向)、装置幅方向(水平方向)、装置奥行方向(水平方向)をそれぞれ、H方向、W方向、D方向と記載する。また、装置上下方向、装置幅方向、装置奥行方向のそれぞれ一方側と他方側を区別する必要がある場合は、再生装置20を正面視して、上側を+H側、下側を-H側、右側を+W側、左側を-W側、奥側を-D側、手前側を+D側と記載する。
【0024】
(再生装置20)
本実施形態に係る再生装置20は、後述する感光体ドラム10の再生に使用される装置である。本実施形態では、画像形成装置のメンテナンス等で回収された消耗後の感光体ドラム10が再生装置20に投入されることで後述する筒体12が再生され、筒体12が感光体ドラム10の製造ラインに投入されることで新たな感光体ドラム10が製造される。ここで、「再生」とは、リサイクルと同義であり、製品(例えば、本明細書に記載の感光体ドラム10)を全体的または部分的に再処理(例えば、本明細書に記載の方法)して、他の製品を製造するために再使用可能な部材(例えば、本明細書に記載の筒体12)を生成することをいう。
【0025】
(感光体ドラム10)
感光体ドラム10は、
図2(A)に示されるように、電子写真方式の画像形成装置に使用される円筒状の部材である。感光体ドラム10は、回転体の一例である。感光体ドラム10は、
図2(B)に示されるように、筒体12と、塗膜14と、内挿部材16と、一対のフランジ18と、接合材17と、を含んで構成されている。
【0026】
筒体12は、
図3に示されるように、金属で形成された、装置幅方向に延びる円筒状の部材である。本実施形態において、筒体12は、例えばアルミニウム合金等の導電性金属で形成されている。本実施形態においては、筒体12の外周面及び内周面を夫々外周面12a及び内周面12bという。また、筒体12の長手方向(装置幅方向)において、筒体12の端面から中央部側に向けて定められた長さLまでの部位を端部12cという。
【0027】
塗膜14は、
図2(B)に示されるように、筒体12の外周面12aに形成された、熱硬化性樹脂を主成分とする有機感光体層である。本発明における熱硬化性樹脂には、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。塗膜14は、熱硬化性樹脂を主成分としているため、架橋温度T1以上になると硬化する。塗膜14の架橋温度T1は、後述する接合材17の軟化点T2よりも高い。本実施形態における塗膜14の架橋温度T1は、190℃である。
【0028】
内挿部材16は、筒体12の内部に挿入されている部材である。本実施形態における内挿部材16は、画像形成装置で使用されるときにおける感光体ドラム10の振動を抑制する機能を有する。なお、内挿部材16は、振動を抑制する機能を有するものに限定されず、消音機能を有するものであってもよく、加熱機能を有するものであってもよい。また、本発明において、感光体ドラム10は内挿部材16を備えない構成であってもよい。
【0029】
フランジ18は、筒体12の長手方向の両側の端部12cに夫々設けられた、熱可塑性樹脂を主成分とする材料(例えば、ポリカーボネート)で形成された部材である。フランジ18は、感光体ドラム10における被支持体となる支持体の一例である。フランジ18は、円柱状の本体部18aと、本体部18aの端面18bと、端面18bから長さLだけ突出している円柱状の突出部18cと、を有する。本体部18a及び突出部18cは、装置幅方向から見て夫々の中心軸が筒体12の中心軸に対して定められた公差の範囲内に位置している。本体部18aの外径は、筒体12の内径よりも大きい。突出部18cは、その外径が筒体12の内径よりも小さく、筒体12の内周面12bに対して隙間嵌めとなっている。
【0030】
フランジ18は、筒体12の長手方向の両側の端部12cの内側に突出部18cが挿入されており、接合材17を介して突出部18cの外周部が筒体12の端部12cの内側に接合されている。換言すると、フランジ18は、突出部18cにおいて、接合材17を介して筒体12の内周面12bの両端部に接合されている。フランジ18の突出部18cと、筒体12の内周面12bの両端部が接合材17により接合されている部位は、接合部の一例である。また、本実施形態におけるフランジ18は、端面18bを筒体12の端面に接触した状態で筒体12に接合されており、筒体12の両側の端部12c側の開口を閉じている。
【0031】
フランジ18の融点T3は、接合材17の軟化点T2よりも高い。本実施形態におけるフランジ18の融点T3は、200℃である。本実施形態におけるフランジ18は、絶縁性を有する。ここで、「絶縁性」とは、体積抵抗率が1013Ωcm以上であることをいう。
【0032】
接合材17は、フランジ18の突出部18cの外周部を筒体12の端部12cの内側に接合させているホットメルト接着剤である。接合材17は、軟化点T2以上の温度になると軟化する。接合材17の軟化点T2は、感光体ドラム10の使用環境の温度よりも高い。感光体ドラム10の接合材17は、感光体ドラム10の使用環境において、硬化した状態でフランジ18を筒体12に接合させている。接合材17は、感光体ドラム10において、軟化点T2以上の温度になって軟化すると、フランジ18と筒体12とを接合する接合力を失う。本実施形態における接合材17の軟化点T2は、140℃である。
【0033】
本実施形態では、接合材17としてシアノアクリルレート系接着剤が使用される。なお、本発明における接合材17は、金属製の筒体12と熱可塑性樹脂を主成分とするフランジ18を接合することが可能で、且つ軟化点T2が塗膜14の架橋温度T1及びフランジ18の融点T3よりも低いのであれば、組成等に限定はない。本発明における接合材17は、エチレン酢酸ビニル系接着剤、ポリオレフィン系接着剤、ポリアミド系接着剤、アクリル系接着剤等であってもよい。
【0034】
(再生装置20の構成)
再生装置20は、
図1に示されるように、分離装置50と、分離装置50の装置幅方向右側(+W側)に配置された剥離装置40と、を備えている。また、再生装置20は、剥離装置40を挟んで分離装置50とは反対側に配置され、再生装置20で再生された筒体12を検査する検査カメラ等を含んで構成された検査装置30を備える。また、再生装置20は、分離装置50、剥離装置40、検査装置30の間でワークを搬送する産業用ロボット等を含んで構成された搬送装置(図示省略)を備える。搬送装置が搬送するワークは、感光体ドラム10、仕掛品10a及び筒体12である。仕掛品10aは、消耗後の感光体ドラム10からフランジ18が分離され且つ内挿部材16が押し出されたものであり、筒体12の外周面12aに消耗後の塗膜14が形成されているものである。
【0035】
分離装置50は、分離装置50に投入された感光体ドラム10からフランジ18及び内挿部材16を分離させることで、仕掛品10aを得る機能を有する。なお、分離装置50の詳細については後述する。
【0036】
[剥離装置40]
剥離装置40は、搬送装置(図示省略)によって分離装置50から搬送された仕掛品10aから塗膜14を剥離することで筒体12を再生する機能を有する。剥離装置40は、
図10に示されるように、把持部42と、位置決め部44と、剥離部46と、を備える。
【0037】
把持部42は、例えばコレットチャック等を含んで構成されており、装置幅方向に延びる姿勢の仕掛品10aの一方の端部12c側における、内周面12bの複数箇所に接触することで仕掛品10aを把持する。把持部42と接触する内周面12bの部位は、筒体12の長手方向において、筒体12の把持部42側の端面から筒体12の中央部側に向けて離間しており、その離間距離は長さLを超える。
【0038】
位置決め部44は、把持部42に把持された仕掛品10aを挟んで把持部42とは反対側に配置され、把持部42側に向けて先細る略円錐状の先端部44aを含んで構成されている。先端部44aの最大径は筒体12(仕掛品10a)の内径よりも大きく、先端部44aの最小径は該内径よりも小さい。位置決め部44は、把持部42で把持されていない側の仕掛品10aの端部の内側に先端部44aを挿入して仕掛品10aを軸方向に押すことで、剥離装置40における仕掛品10aの軸の位置を位置決めする。換言すると、剥離装置40は、把持部42及び位置決め部44によって、筒体12の内周面12bを把持する機能を有する。
【0039】
把持部42及び位置決め部44は、把持した仕掛品10aを軸周りに回転させる機能を有する。
【0040】
剥離部46は、把持部42及び位置決め部44に把持された仕掛品10aの外周面に向けて高圧の水等の液体(高圧液)を噴射するノズル46aと、ノズル46aを装置幅方向に移動させる移動部46bと、を備える。ノズル46aから仕掛品10aの外周面に向けて高圧液が噴射されると、筒体12から塗膜14が剥離される。
【0041】
また、剥離装置40は、筒体12の内周面12bの接合材17の残渣及び剥離部46で剥離した塗膜14の残渣を、洗浄液の噴射によって洗浄除去するノズル等を含んで構成された洗浄手段(図示省略)を備える。また、剥離装置40は、洗浄手段(図示省略)で洗浄除去された接合材17の残渣及び塗膜14の残渣を剥離部46から噴射された液体及び洗浄手段(図示省略)から噴射された洗浄液と共に回収する図示しない回収容器をさらに備える。
【0042】
剥離装置40は、把持部42及び位置決め部44によって把持されて軸周りに回転する仕掛品10aに対して、ノズル46a及び移動部46bによって仕掛品10aの外周面全体に高圧液を噴射することで、筒体12から塗膜14を剥離させる機能を有する。これにより、剥離装置40は、仕掛品10aから筒体12を再生させる。剥離装置40は、剥離手段の一例である。なお、剥離装置40は、仕掛品10aの、塗膜14が形成されている範囲にのみ高圧液を噴射することで筒体12から塗膜14を剥離させる構成であってもよい。
【0043】
[検査装置30]
検査装置30は、剥離装置40から搬送された筒体12に対して傷の有無等を検査し、筒体12が良品か不良品かを判定する機能を有する。
【0044】
[分離装置50]
次に、分離装置50の詳細について説明する。
【0045】
分離装置50は、
図4に示されるように、台部52と、把持装置60と、加熱装置70と、引抜装置80と、押出装置90と、を備える。また、分離装置50は、感光体ドラム10から分離されたフランジ18が収容される容器54と、感光体ドラム10から分離された内挿部材16が収容される容器56と、を備える。また、分離装置50は、各部の動作を制御する制御部58を備える。また、分離装置50は、分離装置50の各部を収容する筐体50aを備える。
【0046】
台部52は、感光体ドラム10及び仕掛品10aを装置幅方向に延びる姿勢で配置させる台である。台部52は、例えば装置幅方向に延びて上方に開口しているVブロック等を含んで構成されており、分離装置50におけるフランジ18の装置奥行方向及び装置上下方向の位置を位置決めする機能を有する。また、台部52は、装置幅方向においてフランジ18に接触することで分離装置50における感光体ドラム10の装置幅方向の位置を位置決めする位置決め部材52aを備える。
【0047】
[把持装置60]
把持装置60は、台部52に対して上方に設けられており、把持部62と、支持部64と、を備える。
【0048】
把持部62は、例えばロボットハンドで構成されており、感光体ドラム10の外周部を把持する機能を有する。換言すると、把持部62は、塗膜14を介して筒体12の外周面12aを把持する機能を有する。把持部62を備える把持装置60は、把持手段の一例である。把持部62は、その動作を制御部58によって制御され、感光体ドラム10及び仕掛品10aの外周部を把持又は解放する。
【0049】
支持部64は、複数のアクチュエータを含んで構成されており、把持部62を上方から支持する機能を有する。支持部64は、筐体50aの上部に設けられた移動手段64aと、移動手段64aに設けられた基部64bと、基部64bから下方に延びて把持部62を支持する昇降手段64cと、を含んで構成されている。
【0050】
移動手段64aは、例えばリニアアクチュエータ(図示省略)を含んで構成されており、基部64bを装置幅方向に移動させる機能を有する。移動手段64aが基部64bを移動させると、昇降手段64cと、把持部62と、把持部62に把持された感光体ドラム10及び仕掛品10aとは、基部64bと共に装置幅方向に移動する。
【0051】
基部64bは、例えばモータ等の回転手段(図示省略)を含んで構成されており、昇降手段64cを鉛直軸まわりに回転させる機能を有する。基部64bが昇降手段64cを回転させるとき、把持部62と、把持部62に把持された感光体ドラム10及び仕掛品10aと、は、昇降手段64cと共に回転する。基部64bは、回転部の一例である。
【0052】
昇降手段64cは、例えばリニアアクチュエータ(図示省略)を含んで構成されており、装置上下方向に伸縮することで把持部62を装置上下方向に移動させる機能を有する。昇降手段64cが把持部62を移動させるとき、把持部62に把持された感光体ドラム10及び仕掛品10aは、把持部62と共に装置上下方向に移動する。
【0053】
[加熱装置70]
加熱装置70は、装置幅方向において台部52と後述する引抜装置80との間に配置されており、感光体ドラム10の端部12cを加熱する加熱部72と、加熱部72に電力を供給する基部74と、を含んで構成されている。
【0054】
加熱部72は、
図5及び
図6に示されるように、装置幅方向を軸として装置幅方向における両側の端部が開口しており、感光体ドラム10の端部12cを包囲可能である金属製のコイル72aを備えている。具体的には、コイル72aは、両側の開口の離間距離が長さLよりも長く、内径が感光体ドラム10の外径よりも大きい。すなわち、コイル72aは、コイル72aの軸方向に沿う姿勢にある筒体12の端部12cを、コイル72aの開口から挿入してコイル72aの内側の空間に収めることができる。加熱部72は、コイル72aが筒体12の端部12cを包囲しているとき、基部74から供給された電力を用いてコイル72aに電流を流すことで、端部12cを電磁誘導加熱する機能を有する。加熱部72を備える加熱装置70は加熱手段の一例である。
【0055】
コイル72aの両側の開口に挟まれている、コイル72aの内側の空間は、本実施形態における加熱装置70による電磁誘導加熱の有効範囲である。本実施形態における加熱部72は、常温の状態でコイル72aの内側に配置された筒体12の端部12cに対して定められた時間TIだけ継続して加熱することで、端部12cの温度を定められた温度TEにさせる構造を有している。換言すると、加熱部72を備える加熱装置70は、筒体12の端部12cを定められた温度TEで電磁誘導加熱する。定められた温度TEは、塗膜14の架橋温度T1及びフランジ18の融点T3よりも低く、接合材17の軟化点T2以上の温度である。実施形態における定められた温度TEは、160℃である。
【0056】
本実施形態におけるコイル72aの軸方向の長さは、筒体12の軸方向の長さと把持装置60の把持部62の装置幅方向の長さとの差分を2で割った数値よりも短い。すなわち、本実施形態におけるコイル72aは、把持装置60の把持部62に軸方向における中央部を把持されている感光体ドラム10を、一方の開口から挿入させて他方の開口からフランジ18をコイル72aの外側に突出可能な構成を有している。
【0057】
なお、加熱部72が感光体ドラム10の筒体12の端部12cを加熱するとき、端部12cに接合されているフランジ18は、絶縁性を有するため、電磁誘導によって加熱されない。換言すると、加熱部72を有する加熱装置70は、筒体12の端部12cのみを電磁誘導加熱する。
【0058】
基部74は、制御部58によって加熱部72への電力の供給又は遮断を制御される構造を有している。
【0059】
[引抜装置80]
引抜装置80は、装置幅方向において加熱装置70を挟んで台部52とは反対側に配置されている。引抜装置80は、基部82と、回転手段84と、把持部88と、を備える。引抜装置80は、各部の動作を制御部58によって制御される。
【0060】
回転手段84は、基部82に設けられており、例えばモータ等(図示省略)を含んで構成され、装置幅方向において加熱装置70側に延びる軸部84aを有する。回転手段84は、軸部84aを装置幅方向に沿う軸周りに回転させる。
【0061】
把持部88は、例えばチャック等の把持機構を含んで構成され、軸部84aの端部に設けられている。把持部88は、突出部18cを本体部18aに対して把持部88とは反対側に向けているフランジ18の本体部18aを、本体部18aの外周部の複数個所で接触することで把持する。軸部84aに設けられた把持部88は、回転手段84によって回転する軸部84aと共に回転する。把持部88の下方には、容器54が配置されている。
【0062】
制御部58は、把持装置60及び引抜装置80を制御することでフランジ18を筒体12から引き抜いて分離させる。具体的には、制御部58は、フランジ18を把持する把持部88を回転手段84で回転させながら、感光体ドラム10を把持する把持部62を引抜装置80から離間する方向に長さLを超えて移動させるようになっている。把持装置60及び引抜装置80の組合せは、分離手段の一例である。
【0063】
[押出装置90]
押出装置90は、台部52に対して上方に配置されており、押出部92を備える。押出部92は、例えば油圧シリンダ(図示省略)を含んで構成されており、装置幅方向に伸縮する機能を有する。押出部92は、装置幅方向に最大限まで伸ばしたときの長さが筒体12の長さよりも長く、装置幅方向から見た最大幅が筒体12の内径よりも小さい。すなわち、押出部92は、筒体12の一方の端部の開口から筒体12の内側に挿入可能な構造を有している。
【0064】
筒体12の両側の端部12cが開放されて且つ内挿部材16が挿入されているとき、押出装置90は、押出部92を用いて筒体12から内挿部材16を分離させる機能を有する。具体的には、把持装置60によって把持された筒体12の一方の端部12cが装置幅方向において押出装置90に隣接している位置に配置されているとき、押出装置90は、押出部92を伸ばして一方の端部12c側の開口から挿入させる。そして押出装置90が押出部92を伸ばし続けると、筒体12に挿入されている内挿部材16は、押出部92によって筒体12の他方の端部12cから押し出される。筒体12から押し出された内挿部材16は、重力により容器56に落下して回収される。
【0065】
(筒体12の再生方法)
次に、本実施形態における筒体12の再生方法について説明する。本実施形態における筒体12の再生方法は、消耗後の感光体ドラム10を準備する準備工程と、感光体ドラム10からフランジ18を分離する分離工程と、感光体ドラム10から内挿部材16を押し出す押出工程と、を有する。また、本実施形態における筒体12の再生方法は、感光体ドラム10から得られた仕掛品10aから塗膜14を剥離して筒体12を再生する剥離工程と、再生された筒体12を検査する検査工程と、を有する。
【0066】
[準備工程]
準備工程では、図示しない搬送装置によって、感光体ドラム10が分離装置50に投入され、台部52上に配置される(
図4参照)。このとき、感光体ドラム10は、台部52及び位置決め部材52aによって、分離装置50に位置決めされる。この後、筒体12の再生方法は、準備工程から分離工程に移行される。
【0067】
[分離工程]
分離工程では、まず、制御部58が把持装置60を制御して把持部62を移動させ、把持部62で台部52に配置された感光体ドラム10の軸方向における中央部を把持する。このとき、把持部62は、塗膜14を介して筒体12の外周面12aを把持する。このため、把持部62は、感光体ドラム10及び仕掛品10aの外周部の把持に伴って筒体12に傷等の損傷を発生させることはない。
【0068】
その後、制御部58は、
図7に示されるように、感光体ドラム10を把持する把持部62を移動させ、加熱装置70側のフランジ18及び端部12cを加熱装置70のコイル72aの内側に挿入させる。このとき、制御部58は、コイル72aに対する端部12cの挿入量を調整する。具体的には、制御部58は、少なくとも筒体12の加熱装置70側の端面から筒体12の中央部に向けて長さLまでの部位が、加熱装置70による電磁誘導加熱の有効範囲内に配置されるようにコイル72aに対する端部12cの挿入量を調整する。なお、制御部58は、筒体12の端部12c以外の部位が、加熱装置70によって加熱され難いように、コイル72aに対する端部12cの挿入量を調整する。具体的には、制御部58は、筒体12の加熱装置70側の端面までの距離が少なくとも長さLの1.5倍を超えている部位が、加熱装置70による電磁誘導加熱の有効範囲外に配置されるようにコイル72aに対する端部12cの挿入量を調整する。換言すると、制御部58は、筒体12の加熱装置70側の端面から筒体12の中央部に向けて長さLの1.5倍を超えている部位が、加熱装置70による電磁誘導加熱の有効範囲外に配置されるようにコイル72aに対する端部12cの挿入量を調整する。
【0069】
その後、制御部58は、加熱装置70の基部74を制御して加熱部72に電力を供給することで、コイル72aの内側に挿入された感光体ドラム10の端部12cを定められた時間TIだけ加熱して定められた温度TEにさせる。換言すると、感光体ドラム10の筒体12の端部12cは、分離工程において定められた温度TEで加熱される。温度TEは接合材17の軟化点T2よりも高いため、この加熱によって端部12cは軟化点T2以上の温度状態となる。このため、接合材17は、軟化し、端部12cとフランジ18とを接合させる接合力を失う。感光体ドラム10の端部12cが加熱されてから定められた時間TIが経過した後、制御部58は、基部74を制御して加熱部72への電力を遮断する。
【0070】
その後、制御部58は、
図8に示されるように、感光体ドラム10を把持する把持装置60の把持部62を移動させ、引抜装置80の把持部88が感光体ドラム10の引抜装置80側のフランジ18を把持可能な位置に感光体ドラム10を移動させる。
【0071】
その後、制御部58は、引抜装置80を制御し、把持部88によって感光体ドラム10の引抜装置80側のフランジ18を把持する。その後、制御部58は、把持装置60及び引抜装置80をさらに制御し、
図9に示されるように、フランジ18を把持する把持部88を回転手段84で回転させながら、感光体ドラム10を把持する把持部62を引抜装置80から離間する方向に移動させる。換言すると、把持部62に把持された感光体ドラム10から見て、フランジ18を把持する把持部88は、筒体12の軸方向の外側に向けて離間する方向に移動する。このとき、感光体ドラム10の引抜装置80側の接合材17は、軟化点T2以上の温度状態であり、接合力を失っている。この状態において制御部58は、フランジ18を把持する把持部88を、把持部62に把持された筒体12に対して相対的に離間する方向に向けて長さLより長い距離を移動させることで、筒体12からフランジ18を分離させる。
【0072】
引抜装置80が筒体12からフランジ18を分離させた後、制御部58は感光体ドラム10を把持する把持部62を移動させ、感光体ドラム10をコイル72aの内側から離脱させる。また、制御部58は引抜装置80を制御し、把持部88によるフランジ18の把持を解除して、フランジ18を重力により落下させて容器54に回収させる。
【0073】
その後、制御部58は、把持装置60を制御して基部64bによって感光体ドラム10を把持している把持部62を鉛直軸まわりに回転させることで、把持部62に把持された感光体ドラム10の加熱装置70に対する向きを変える。具体的には、制御部58は、把持部62を鉛直軸まわりに180°回転させることで、感光体ドラム10のフランジ18が分離されていない側の端部12cを加熱装置70側に向ける。
【0074】
その後、制御部58は把持装置60と、加熱装置70と、引抜装置80と、を制御して、前述した感光体ドラム10の端部12cのコイル72aの内側への挿入からコイル72aの内側からの離脱及び分離させたフランジ18の回収までの動作を繰り返す。これにより、把持装置60に把持された感光体ドラム10の筒体12から一対のフランジ18が分離される。この後、筒体12の再生方法は、分離工程から押出工程に移行される。
【0075】
[押出工程]
押出工程では、制御部58は、把持装置60と、押出装置90と、を制御して、筒体12の内側から内挿部材16を押し出して、押し出された内挿部材16を容器56に回収させる。以上の動作により、把持装置60に把持された感光体ドラム10から仕掛品10aが得られる。
【0076】
把持装置60に把持された感光体ドラム10から仕掛品10aが得られた後、制御部58は把持装置60を制御して、仕掛品10aを台部52に配置させ、把持部62から解放させる。その後、図示しない搬送装置が仕掛品10aを台部52から剥離装置40に搬送することで、筒体12の再生方法は、押出工程から剥離工程に移行される。
【0077】
[剥離工程]
剥離工程では、
図10に示されるように、分離装置50から搬送された仕掛品10aを、剥離装置40が把持部42及び位置決め部44で内周面12bを把持して軸周りに回転させながら剥離部46で塗膜14を剥離することで、筒体12を再生させる。また、剥離装置40は、再生された筒体12の外周面12aの塗膜14の残渣及び内周面12bの接合材17の残渣を洗浄手段(図示省略)で洗浄除去する。その後、剥離装置40が把持部42及び位置決め部44による再生された筒体12の把持を解除し、図示しない搬送装置が筒体12を剥離装置40から検査装置30に搬送することで、筒体12の再生方法は、剥離工程から検査工程に移行する。
【0078】
[検査工程]
検査工程では、検査装置30が剥離装置40から搬送された筒体12に対して傷の有無等を検査し、良品か不良品かを判定する。検査装置30で良品と判定された筒体12は、感光体ドラム10の製造ラインに投入される。
【0079】
(感光体ドラム10の製造方法)
次に、本実施形態における感光体ドラム10の製造方法について説明する。本実施形態では、再生装置20で再生されて良品と判定された筒体12を感光体ドラム10の製造ラインに投入することで感光体ドラム10を製造する。本実施形態における感光体ドラム10の製造方法は、筒体12の外周面12aに新しい塗膜14を形成して筒体12と新しい塗膜14から成る中間品を得る形成工程を有する。また、本実施形態における感光体ドラム10の製造方法は、該中間品に新品のフランジ18及び内挿部材16を組み付けて新しい感光体ドラム10を得る組付工程と、を有する。
【0080】
形成工程で筒体12の外周面12aに形成される新しい塗膜14は、再生装置20で剥離される塗膜14とは別の塗膜14である。すなわち、本実施形態における感光体ドラム10の製造方法は、形成工程で、筒体12の外周面12aに、再生装置20で剥離される塗膜14ではない他の塗膜14を形成する。
【0081】
組付工程ではまず、形成工程で得られた中間品に内挿部材16を挿入する。その後、中間品の筒体12の内周面12bの両端部に接合材17を塗布し、フランジ18の突出部18cを挿入してフランジ18を接合させることで、感光体ドラム10が製造される。
【0082】
なお、組付工程においては、筒体12の再生で筒体12から分離されて回収されたフランジ18及び内挿部材16が新品のフランジ18及び内挿部材16と同様に機能するのであれば、その回収されたフランジ18及び内挿部材16を中間品に組み付けてもよい。また、中間品へのフランジ18の接合においては、筒体12の端部12cの内周面12bに接合材17を塗布してもよいし、フランジ18の突出部18cの外周部に接合材17を塗布してもよい。
【0083】
(作用及び効果)
次に、実施形態の作用及び効果について説明する。
【0084】
実施形態の筒体12の再生方法は、再生装置20を用いて、感光体ドラム10の筒体12を、定められた温度TEで加熱し、筒体12から一対のフランジ18を分離する工程を有する。
【0085】
筒体12の再生方法において、接合材17を軟化させるために、感光体ドラム10の筒体12をフランジ18の融点T3よりも高い温度で加熱した場合、フランジ18の一部が融解する虞がある。フランジ18が融解した状態で感光体ドラム10からフランジ18を分離させた場合、筒体12の内側に融解したフランジ18の残渣が発生する虞がある。
【0086】
一方、実施形態の筒体12の再生方法では、感光体ドラム10の筒体12を、フランジ18の融点T3よりも低く、接合材17の軟化点T2よりも高い温度TEで加熱するため、フランジ18の融解が抑制される。よって、実施形態の筒体12の再生方法は、フランジ18の融点T3よりも高い温度で加熱してフランジ18を分離する工程を有する場合と比して、フランジ18を分離する工程におけるフランジ18の残渣の発生を抑制することができる。また、実施形態の再生装置20は、フランジ18の融点T3よりも高い温度で加熱してフランジ18を分離する工程を有する場合と比して、フランジ18を分離する工程におけるフランジ18の残渣の発生を抑制することができる。
【0087】
また、筒体12の再生方法において、接合材17を軟化させるために、感光体ドラム10の筒体12を塗膜14の架橋温度T1よりも高い温度で加熱した場合、架橋が促進されて、塗膜14の一部が硬化する虞がある。また、塗膜14は、筒体12の外周面12aに形成されているため、筒体12の長手方向とは直交する断面ではリング状になっている。この塗膜14が硬化すると、縮径して(リングの径が小さくなって)、塗膜14がより強固に筒体12に付着する虞がある。塗膜14が硬化した状態で感光体ドラム10から仕掛品10aを成した後、仕掛品10aの塗膜14を剥離装置40で剥離させた場合、筒体12の表面に塗膜14の残渣が発生する虞がある。
【0088】
一方、実施形態の筒体12の再生方法では、感光体ドラム10の筒体12を、塗膜14架橋温度T1よりも低く、接合材17の軟化点T2よりも高い温度TEで加熱するため、塗膜14の硬化が抑制される。よって、実施形態の筒体12の再生方法は、塗膜14の架橋温度T1よりも高い温度で加熱した後に塗膜を剥離する工程を有する場合と比して、塗膜14を剥離する工程における塗膜14の残渣の発生を抑制することができる。また、実施形態の再生装置20は、塗膜14の架橋温度T1よりも高い温度で加熱した後に塗膜を剥離する工程を有する場合と比して、塗膜14を剥離する工程における塗膜14の残渣の発生を抑制することができる。
【0089】
また、実施形態の筒体12の再生方法は、分離工程において、加熱装置70によって、感光体ドラム10の筒体12の端部12cのみを電磁誘導加熱する。
【0090】
分離工程において、接合材17を加熱して軟化させるために接触式のヒータや温風ヒータ等を用いてフランジ18を加熱させ、加熱させたフランジ18を介して接合材17に熱を伝達させる場合、接合材17が軟化するまでにフランジ18も加熱されてしまう。すなわち、接触式のヒータや温風ヒータ等を用いる場合、フランジ18を加熱させるためにエネルギーが消費され、加熱時間が長くなる。
【0091】
一方、実施形態の筒体12の再生方法は、金属製の筒体12の端部12cのみを電磁誘導加熱するため、接合材17を軟化させるための加熱によってフランジ18が加熱されない。よって、実施形態の筒体12の再生方法は、フランジ18を加熱して接合材17を軟化させる場合と比して、短時間で接合材17を軟化させることができる。また、実施形態の筒体12の再生方法は、フランジ18を加熱して接合材17を軟化させる構成と比して、接合材17の軟化における省エネルギー化を図ることができる。
【0092】
また、実施形態の筒体12の再生方法は、分離工程において、軸方向における長さがフランジ18の突出部18cの長さLよりも長いコイル72aを用いて筒体12の端部12cを電磁誘導加熱する。
【0093】
筒体12の端部12cの電磁誘導加熱において、軸方向における長さが長さLよりも短いコイルを用いる場合、1回の加熱で突出部18cまわり全体を加熱させることができない。このコイルを用いて筒体12の端部12cを電磁誘導加熱して接合材17を軟化させるには、把持装置60によって筒体12を移動させて該コイルで包囲する筒体12の箇所を変えながら電磁誘導加熱する必要がある。
【0094】
一方、実施形態の筒体12の再生方法は、軸方向における長さが長さLよりも長いコイル72aを用いるため、接合材17を軟化させるためのコイル72aへの端部12cの挿入及びコイル72aによる電磁誘導加熱を夫々1回で済ませることができる。よって、実施形態の筒体12の再生方法は、コイルの長さが接合部の長さよりも短い場合と比して、短時間で突出部18cまわりの接合材17を軟化させることができる。
【0095】
また、実施形態の筒体12の再生方法は、分離工程において、コイル72aに対する筒体12の端部12cの挿入量を調整してから、端部12cを電磁誘導加熱する。よって、実施形態の筒体12の再生方法は、同一のコイル72aを用いて、実施形態の筒体12とは支持体との接合部の寸法が異なる様々な筒体の端部を加熱することができる。
【0096】
また、実施形態の筒体12の再生方法は、分離工程において、コイル72aに対する筒体12の挿入量を調整して制限する。コイル72aの長さが接合部の長さLよりも長い構成において、コイル72aの長さ分だけコイル72aに筒体12の挿入する比較方法では、筒体12の端部12aを含む端側部分が、コイル72aの長さ分だけ加熱されてしまう。これに対して実施形態の筒体12の再生方法では、コイル72aに対する筒体12の挿入量を調整して制限されるため、筒体12における加熱範囲が上記比較方法と比して狭く、加熱された筒体12の冷却時間を短縮することができる。より具体的には、実施形態の筒体12の再生方法は、筒体12の、加熱装置70側の端面までの距離が少なくとも長さLの1.5倍を超えている部位が、電磁誘導加熱の有効範囲外に配置されるようにコイル72aに対する端部12cの挿入量を調整する。よって、実施形態の筒体12の再生方法は、加熱装置70側の端面までの距離が少なくとも長さLの1.5倍を超えている部位が、電磁誘導加熱の有効範囲内に配置される場合と比して、加熱された筒体12の冷却時間を短縮することができる。
【0097】
また、実施形態の感光体ドラム10の製造方法は、実施形態の筒体12の再生方法で再生された筒体12を用いて感光体ドラム10を製造することができる。
【0098】
また、実施形態の再生装置20は、把持装置60が基部64bを備える構成を有している。そのため、実施形態の再生装置20は、基部64bを用いて把持部62に把持された感光体ドラム10の加熱装置70に対する向きを変えることで、感光体ドラム10の両側の端部12cを加熱装置70で電磁誘導加熱することができる。よって、実施形態の再生装置20は、感光体ドラム10の長手方向の両側に加熱装置70を配置することで筒体12の両端部を同時に電磁誘導加熱する構成と比して、再生装置20を安価に構成することができる。
【0099】
また、実施形態の再生装置20は、把持装置60が基部64bを備える構成において、ひとつの引抜装置80を用いて一対のフランジ18を筒体12の一方の端部12cからひとつずつ分離する構成を有している。よって、実施形態の再生装置20は、感光体ドラム10の長手方向の両側に引抜装置80を配置することで一対のフランジ18を同時に分離させる構成と比して、再生装置20を安価に構成することができる。
【0100】
以上のとおり、本発明の特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内にて種々の変形、変更、改良が可能である。
【0101】
例えば、実施形態におけるフランジ18は、円柱状の本体部18a及び突出部18cを有するものとした。しかしながら、本発明に係る感光体ドラム10の支持体は、この形状に限定されない。例えば、本発明における支持体は、円柱状の本体部の両側の端面から突出部が形成されている形状を有するものであってもよい。
【0102】
また、実施形態における筒体12の再生方法は、分離工程において、筒体12の端部12cのみを加熱するものとした。しかしながら、本発明に係る筒体12の再生方法は、架橋温度T1及び融点T3よりも低く、軟化点T2以上の温度で筒体12を加熱することができるのであれば、接触式ヒータや温風ヒータ等を用いて筒体12全体又はフランジ18を加熱してもよい。
【0103】
また、実施形態における筒体12の再生方法は、分離工程において、軸方向における長さがフランジ18の突出部18cの長さLよりも長いコイル72aを用いて筒体12の端部12cを電磁誘導加熱するものとした。しかしながら、本発明に係る筒体12の再生方法は、架橋温度T1及び融点T3よりも低く、軟化点T2以上の温度で筒体12の端部12cを加熱することができるのであれば、コイル72aの軸方向における長さは、長さLよりも短くてもよい。コイル72aの軸方向における長さが長さLよりも短い場合、筒体12を移動させてコイル72aで包囲する筒体12の箇所を変えながら電磁誘導加熱することで接合材17を軟化させてもよい。これにより、本発明は、様々な寸法の感光体ドラムから筒体を再生することができる。
【0104】
また、実施形態における筒体12の再生方法は、分離工程において、コイル72aに対する筒体12の端部12cの挿入量を調整してから、端部12cを電磁誘導加熱するものとした。しかしながら、本発明に係る筒体12の再生方法は、コイル72aに対する筒体12の端部12cの挿入量を調整するものに限定されない。例えば、本発明に係る筒体12の再生方法は、筒体12の端部12cの電磁誘導加熱において、再生する筒体(感光体ドラム)の寸法に合わせて加熱装置70のコイルを適切な寸法を有するものに交換してもよい。
【0105】
また、実施形態における再生装置20は、基部64bが把持部62に把持された感光体ドラム10の加熱装置70に対する向きを変える構成を有するものとした。しかしながら、本発明に係る再生装置は、基部64bが把持部62に把持された感光体ドラム10の加熱装置70に対する向きを変える構成を有するものに限定されない。例えば、本発明に係る再生装置は、感光体ドラム10の長手方向の両側に加熱装置70を配置することで筒体12の両端部を同時に電磁誘導加熱する構成を有するものであってもよい。また、本発明に係る再生装置は、感光体ドラム10の長手方向の両側に引抜装置80を配置することで一対のフランジ18を同時に分離させる構成であってもよい。
【0106】
また、実施形態における再生装置20の分離手段は、引抜装置80及び把持装置60によって構成されるものとした。しかしながら、本発明における分離手段は、引抜装置80及び把持装置60によって構成されるものに限定されない。本発明における分離手段は例えば、引抜装置80が把持部88を装置幅方向において往復移動させる往復手段を備える構成を有するものであってもよい。この場合、引抜装置80は、フランジ18を把持する把持部88を往復手段によって筒体12から離間する方向に移動させることでフランジ18を筒体12から分離させる。
【0107】
また、実施形態における引抜装置80は、回転手段84を備えるものとした。しかしながら、本発明における引抜装置80は、回転手段84を備えない構成であってもよい。
【0108】
また、実施形態における再生装置20は、押出装置90を備えるものとした。しかしながら、本発明に係る再生装置は、押出装置90を備えるものに限定されない。特に、感光体ドラムが内挿部材16を備えるものではないとき、再生装置は、押出装置90を備えないものであってもよい。このとき、本発明に係る筒体12の再生方法から、押出工程は省略される。
【0109】
また、実施形態における再生装置20は、再生装置20で再生された筒体12を検査する検査装置30を備えるものとした。しかしながら、本発明における再生装置は、検査装置30を備える構成に限定されない。例えば、本発明における再生装置は、検査装置30を備えず、検査装置30に代わってユーザ(図示省略)が目視等で再生された筒体12を検査する構成であってもよい。
【0110】
また、実施形態における再生装置20は、分離装置50、剥離装置40、検査装置30の間でワークを搬送する搬送装置(図示省略)を備えるものとした。しかしながら、本発明における再生装置は、搬送装置(図示省略)を備える構成に限定されない。例えば、本発明における再生装置は、搬送装置(図示省略)を備えず、搬送装置(図示省略)に代わってユーザ(図示省略)が台車等でワークを搬送する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0111】
10 感光体ドラム(回転体の一例)
12 筒体
12a 外周面
12b 内周面
12c 端部
14 塗膜
17 接合材
18 フランジ(支持体の一例)
18c 突出部(接合部の一例)
20 筒体の再生装置
60 把持装置(把持手段の一例)
64b 基部(回転部の一例)
70 加熱装置(加熱手段の一例)
80 引抜装置(分離手段の一例)
T1 架橋温度
T2 軟化点
T3 融点