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特許7484595液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20240509BHJP
   B05B 12/12 20060101ALI20240509BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20240509BHJP
【FI】
A61F13/15 300
B05B12/12
B05B12/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020148393
(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公開番号】P2022042797
(43)【公開日】2022-03-15
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花生 裕之
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-097932(JP,A)
【文献】特表2003-500115(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0148018(US,A1)
【文献】実開平07-009454(JP,U)
【文献】特開2001-276686(JP,A)
【文献】特開2013-110970(JP,A)
【文献】特開昭61-114766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
B65B12/00-12/14
B65B13/00-13/06
B05B12/16-12/36
B05B14/00-16/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置によって一定方向に搬送される繊維材料からなる資材に液体散布装置から液体を散布することによって、前記資材に前記液体を付着させる液体付着方法であって、
前記液体散布装置は、前記液体を噴霧するノズルを有し、
前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を調整することと、
前記噴霧圧に応じて前記液体の付着幅を調整することと、
を含む、液体付着方法。
【請求項2】
前記資材と前記ノズルとの相対距離によって前記付着幅を調整する、
請求項1に記載の液体付着方法。
【請求項3】
垂直方向に対する前記ノズルの角度によって前記付着幅を調整する、
請求項1に記載の液体付着方法。
【請求項4】
前記搬送装置の搬送方向と水平方向の角度によって前記付着幅を調整する、
請求項1に記載の液体付着方法。
【請求項5】
前記資材の幅方向端部を前記資材の内側又は外側に傾けることによって前記付着幅を調整する、
請求項1に記載の液体付着方法。
【請求項6】
前記ノズルから放出された前記液体に向かって圧縮空気を噴射することによって前記付着幅を調整する、
請求項1に記載の液体付着方法。
【請求項7】
前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を調整する噴霧圧調整部と、前記噴霧圧に応じて前記液体の付着幅を調整する付着幅調整部と、を有する制御装置を用いて前記付着幅を調整する、
請求項1から6のいずれか一項に記載の液体付着方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の液体付着方法を用いて吸収性物品に用いる前記資材に液体を付着させる液体付着工程を含む、
吸収性物品の製造方法。
【請求項9】
繊維材料からなる資材を一定方向に搬送する搬送装置と、
液体を噴霧するノズルを有し、前記搬送装置上の前記資材に向かって前記液体を散布する液体散布装置と、
前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を調整する噴霧圧調整部と、
前記噴霧圧に応じて前記液体の付着幅を調整する付着幅調整部と、
を備える、吸収性物品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体付着方法、それを用いた吸収性物品の製造方法および吸収性物品の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使い捨ておむつ、尿パッド、生理用品等の吸収性物品が知られている。一般的に、吸収性物品は、薄いシート状、マット状等の形状に成形され、着用者が排出した体液を吸収する吸収体を備えている。特許文献1には、吸収体を備える吸収性物品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-213855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の製造工程において、吸収体に用いられる資材は、搬送装置によって搬送される。吸収性物品の製造工程では、搬送装置による搬送中の資材に液体を付着する工程が含まれる場合がある。吸収性物品において必要な機能を実現するために、所定の付着幅で資材に液体を付着させる必要がある。しかしながら、液体の付着方法については、具体的な提案がなされていない。
【0005】
本発明は、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、液体の噴霧圧に応じて液体の付着幅を調整することとした。
【0007】
詳細には、本発明は、搬送装置によって一定方向に搬送される繊維材料からなる資材に液体散布装置から液体を散布することによって、前記資材に前記液体を付着させる液体付着方法であって、前記液体散布装置は、前記液体を噴霧するノズルを有し、前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を調整することと、前記噴霧圧に応じて前記液体の付着幅を調整することと、を含む。
【0008】
上記の液体付着方法において、前記資材と前記ノズルとの相対距離によって前記付着幅を調整してもよい。
【0009】
上記の液体付着方法において、垂直方向に対する前記ノズルの角度によって前記付着幅を調整してもよい。
【0010】
上記の液体付着方法において、前記搬送装置の搬送方向と水平方向の角度によって前記付着幅を調整してもよい。
【0011】
上記の液体付着方法において、前記資材の幅方向端部を前記資材の内側又は外側に傾けることによって前記付着幅を調整してもよい。
【0012】
上記の液体付着方法において、前記ノズルから放出された前記液体に向かって圧縮空気を噴射することによって前記付着幅を調整してもよい。
【0013】
上記の液体付着方法において、前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を調整する噴霧圧調整部と、前記噴霧圧に応じて前記液体の付着幅を調整する付着幅調整部と、を有する制御装置を用いて前記付着幅を調整してもよい。
【0014】
また、本発明を吸収性物品の製造方法の側面から捉えることができる。例えば、本発明は、吸収性物品の製造方法であって、上記の液体付着方法を用いて吸収性物品に用いる前記資材に液体を付着させる液体付着工程を含んでいてもよい。
【0015】
また、本発明を吸収性物品の製造装置の側面から捉えることができる。例えば、本発明は、吸収性物品の製造装置であって、繊維材料からなる資材を一定方向に搬送する搬送装置と、液体を噴霧するノズルを有し、前記搬送装置上の前記資材に向かって前記液体を散布する液体散布装置と、前記搬送装置の搬送速度に応じて前記ノズルの噴霧圧を調整する噴霧圧調整部と、前記噴霧圧に応じて前記液体の付着幅を調整する付着幅調整部と、を備えていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、所定の付着幅で液体を資材に付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、液体付着方法の概要を示したフローチャートである。
図2図2は、吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。
図3図3は、制御装置の機能部を示すブロック図である。
図4図4は、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例2を示す図である。
図5A図5Aは、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例3を示す図(その1)である。
図5B図5Bは、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例3を示す図(その2)である。
図6A図6Aは、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例4を示す図(その1)である。
図6B図6Bは、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例4を示す図(その2)である。
図7A図7Aは、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例5を示す図(その1)である。
図7B図7Bは、吸収性物品の製造装置による液体付着方法の具体例5を示す図(その2)である。
図8図8は、テープ型使い捨ておむつの斜視図である。
図9図9は、おむつの分解斜視図である。
図10図10は、股下領域をその幅方向に切断した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。
【0019】
<液体付着方法の概要>
吸収性物品の吸収体には、繊維材料からなる資材が用いられる。繊維材料としては、パ
ルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維等が挙げられる。資材は、シート状に形成されており、所定サイズに切断されて吸収体として用いられる。この資材は、切断される前における搬送装置による搬送中に液体が付着される。この液体は、例えば、水や薬液等である。例えば、資材上に高吸収性重合体(Super Absorbent Polymer:SAP)の粒子を撒く場合には、SAPの粒子を資材へ保持させるために、SAPの粒子を撒く工程の前段階で水や薬液等の液体が資材に付着される。SAPの粒子群は資材に付着された水によって当該資材に保持されるため、SAPの粒子を適切な位置に配置することができる。また、吸収性物品の着用感を向上するために、肌ケア剤や抗菌剤等の薬液が資材に付着される場合もある。
【0020】
吸収性物品において必要な機能を実現するために、所定の付着幅で資材に液体を付着させる必要がある。なお、付着幅は、資材の長手方向に直交する幅方向における液体の付着幅である。
【0021】
本実施形態に係る液体付着方法は、搬送装置によって一定方向に搬送される資材に液体散布装置から液体を散布することによって、資材に液体を付着させる方法である。液体散布装置は、搬送中の資材に向けて液体を噴霧するノズルを有する。例えば、液体の付着量はノズルからの液体の噴霧圧によって調整可能である。具体的には、噴霧圧を高くすることによって付着量を増やすことができ、噴霧圧を低くすることによって付着量を減らすことができる。しかしながら、資材を搬送する搬送装置の搬送速度によっても液体の付着量が変化してしまう。例えば、噴霧圧が一定の場合には、搬送速度が大きくなるにつれて単位面積当たりの液体の付着量は減り、搬送速度が小さくなるにつれて単位面積当たりの液体の付着量は増える。このため、単位面積当たりの液体の付着量を一定に保つためには、搬送速度に応じて噴霧圧を調整する必要がある。一般的にノズルは、噴霧圧が大きいほど液体の散布幅が広くなり、噴霧圧が小さいほど液体の散布幅が狭くなるため、噴霧圧を調整すると今度は資材における液体の付着幅が変化してしまう。
【0022】
また、吸収性物品の生産速度を増加させるために搬送速度を大きくすると、単位面積当たりの液体の付着量が減ってしまうため、液体の付着量を一定に保つために噴霧圧を高くすることが考えられるが、噴霧圧を高くすると液体の散布幅が広がってしまうために資材における液体の付着幅が広がってしまう。また、液体の散布幅が広くなりすぎると、資材の幅方向端部の外側に液体が散布されてしまう虞もある。
【0023】
また、吸収性物品の生産速度を減少させるために搬送速度を小さくすると、単位面積当たりの液体の付着量が減ってしまうため、液体の付着量を一定に保つために噴霧圧を高くすることが考えられるが、噴霧圧を低くすると液体の散布幅が狭くなってしまうために資材における液体の付着幅が狭くなってしまう。SAPの粒子を資材へ保持させるために資材に液体を付着させる場合には、SAPの粒子の配置幅より液体の付着幅が狭くなるとSAPの粒子を資材に保持させることができなくなってしまう。また、資材に肌ケア剤や抗菌剤等の薬液を付着させる場合には、薬液を必要な領域に付着させることができなくなるため、この薬液による効果が十分に得られなくなってしまう。また、搬送速度に応じて適切な付着幅で液体を散布できるノズルに交換することも考えられるが、ノズル交換の際には製造装置を一時的に停止させる必要があるため、搬送速度に応じてノズルを交換すると、吸収性物品の生産性が低下してしまう。
【0024】
そこで、本実施形態に係る液体付着方法では、搬送装置の搬送速度に応じてノズルの噴霧圧を調整し、この噴霧圧に応じて液体の付着幅を調整する。本実施形態に係る液体付着方法によれば、ノズルを交換する必要がなく、所定の付着幅で液体を資材に付着させるこ
とができる。
【0025】
図1は、本実施形態に係る液体付着方法の概要を示したフローチャートである。本実施形態に係る液体付着工程では、まず、搬送装置の搬送速度に応じてノズルの噴霧圧を調整する(ステップS101)。次に、ノズルの噴霧圧に応じて液体の付着幅を調整する(ステップS102)。搬送速度が大きいほどノズルの噴霧圧を高くすることで単位時間当たりにノズルから噴霧される液量を増加させ、搬送速度が小さいほどノズルの噴霧圧を低くすることで単位時間当たりにノズルから噴霧される液量を減少させ、資材の単位面積あたりに散布される液量を一定に保つ。また、ノズルの噴霧圧を高くすると液体の散布幅が広くなり、ノズルの噴霧圧を低くすると液体の散布幅が狭くなる。本実施形態に係る液体付着方法は、ノズルの噴霧圧によって液体の散布幅が変化しても資材における液体の付着幅をほぼ一定に維持することができる。
【0026】
次に、図2に基づいて、本実施形態に係る液体付着方法についてより詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る液体付着方法が用いられる吸収性物品の製造方法に使用される吸収性物品の製造装置の一例を示した図である。吸収性物品の製造に用いる本製造装置Mは、搬送ラインM1(本願でいう「搬送装置」の一例)、液体散布装置M2、制御装置M3を備える。搬送ラインM1は、所謂連続シートである資材Aを一定方向(図中、矢印の指す方向)に搬送するコンベアである。資材Aは、繊維材料からなり、所定のサイズに切断されることで吸収性物品の吸収体として用いられる。液体散布装置M2は、資材Aに向けて液体Lを噴霧するノズル200を有し、搬送ラインM1上の資材Aに液体Lを散布する。液体Lが資材Aに向かって散布されることによって液体Lが資材Aに付着される。なお、ノズル200の噴霧圧は、搬送速度に応じて所定の付着量で液体が付着されるように、0.01MPa~0.5MPaに調整される。
【0027】
制御装置M3は、マイクロコンピュータによって構成されており、記憶手段(ROM(Read Only Memory)等であり不図示)に記憶されたプログラムをCPU(Central Processing Unit)(不図示)によって実行させることで各機能を実現する。図3は、制御装置
M3の機能部を示すブロック図である。制御装置M3は、機能部として、噴霧圧調整部301、付着幅調整部302を有する。噴霧圧調整部301は、資材Aの所定量の液体が付着されるように、搬送ラインの搬送速度に応じてノズル200の噴霧圧を調整する機能部である。付着幅調整部302は、ノズル200の噴霧圧に応じて液体の付着幅を調整する機能部である。
【0028】
次に、液体Lの付着幅を調整する具体例について説明する。本実施形態では、具体例1~5の5つの方法によって液体Lの付着幅を調整する。
【0029】
<具体例1>
具体例1は、資材Aとノズル200との相対距離を調整することによって付着幅を調整する方法である。液体Lは、ノズル200のノズル口から資材Aに向かってノズル口を頂点とする円錐状に散布される。なお、液体Lは、ノズル口からフラット状に散布されてもよい。したがって、この円錐状の底面の直径によって付着幅を調整することができる。資材Aにおける液体Lの付着幅は、資材Aとノズル200との相対距離が近くなるほど狭くなり、資材Aとノズル200との相対距離が遠くなるほど広くなる。このため、資材Aとノズル200との相対距離によって付着幅を調整することができる。制御装置M3には、ノズル200の噴霧圧と、資材Aとノズル200との相対距離に基づく液体Lの付着幅が記憶されており、付着幅調整部302は、所定の付着幅で液体を付着させるために、この相対距離を調整する。具体的には、付着幅調整部302は、液体散布装置M2又は搬送ラインM1のいずれか一方を垂直方向に移動させる駆動機構を動作させることによってこの相対距離を調整する。なお、資材Aとノズル200との相対距離は、ノズル200を含む
液体散布装置M2を垂直方向に移動することによって調整されてもよいし、搬送ラインM1を垂直方向に移動することによって調整されてもよい。駆動機構には、公知のものを用いることができる。
【0030】
<具体例2>
具体例2は、垂直方向に対するノズル200の角度によって付着幅を調整する方法である。図4は、垂直方向に対してノズル200を傾けた状態の製造装置Mを示す図である。なお、図4では制御装置M3の図示は省略する。図2に示すように、ノズル200が垂直方向に向いている場合には、液体Lはノズル口から資材Aに向かノズル口を頂点とする円錐状に散布される。垂直方向に対してノズル200が傾いている場合には、液体Lはノズル口から資材Aに向かノズル口を頂点とする斜円錐状に散布される。垂直方向に対するノズル200の角度が大きくなるほど資材Aにおける液体の付着幅は広くなる。このため、垂直方向に対するノズル200の角度によって付着幅を調整することができる。制御装置M3には、ノズル200の噴霧圧と、垂直方向に対するノズル200の角度に基づく液体Lの付着幅が記憶されており、付着幅調整部302は、所定の付着幅で液体を付着させるために、この角度を調整する。具体的には、付着幅調整部302は、図中で示す搬送方向、又は搬送方向及び垂直方向に直交する資材Aの幅方向にノズル200を含む液体散布装置M2を傾ける駆動機構を動作させることによってこの角度を調整する。なお駆動機構には、公知のものを用いることができる。
【0031】
<具体例3>
具体例3は、搬送ラインM1の搬送方向と水平方向の角度によって付着幅を調整する方法である。図5Aは、搬送方向下流側が搬送方向上流側よりも上方になるように水平方向に対して搬送方向を傾けた状態の製造装置Mを示す図である。図5Bは、搬送方向下流側が搬送方向上流側よりも下方になるように水平方向に対して搬送方向を傾けた状態の製造装置Mを示す図である。なお、図5Aおよび図5Bでは制御装置M3の図示は省略する。図5Aに示すように、搬送方向下流側が搬送方向上流側よりも上方になるように水平方向に対して搬送方向を傾けることで、付着幅を狭くすることができる。一方、図5Bに示すように、搬送方向下流側が搬送方向上流側よりも下方になるように水平方向に対して搬送方向を傾けることで、付着幅を広くすることができる。このため、搬送ラインM1の搬送方向と水平方向の角度によって付着幅を調整することができる。制御装置M3には、ノズル200の噴霧圧と、搬送ラインM1の搬送方向と水平方向の角度に基づく液体Lの付着幅が記憶されており、付着幅調整部302は、所定の付着幅で液体を付着させるために、この角度を調整する。具体的には、付着幅調整部302は、搬送方向が水平方向に対して傾くように搬送ラインM1を傾ける駆動機構を動作させることによってこの角度を調整する。なお駆動機構には、公知のものを用いることができる。
【0032】
<具体例4>
具体例4は、資材Aの幅方向端部を資材Aの内側又は外側に傾けることによって付着幅を調整する方法である。図6Aは、製造装置Mを下流側から上流側に向かって見た場合に、資材Aの幅方向端部を資材Aの内側に傾けた状態の製造装置Mを示す図である。図6Bは、製造装置Mを下流側から上流側に向かって見た場合に、資材Aの幅方向端部を資材Aの外側に傾けた状態の製造装置Mを示す図である。本例では、資材Aの幅方向に2基のノズル200が並ぶように液体散布装置M2に配置されている。このように、液体散布装置M2は、ノズル200を2基以上有していてもよい。なお、図6Aおよび図6Bでは制御装置M3の図示は省略する。図6Aに示すように、資材Aの幅方向端部を資材Aの内側に傾けることで付着幅を狭くすることができる。また、図6Bに示すように、資材Aの幅方向端部を資材Aの外側に傾けることで付着幅を広くすることができる。付着幅調整部302は、資材Aの幅方向端部を資材Aの内側に傾けるためのガイドG1、又は資材Aの幅方向端部を資材Aの外側に傾けるためのガイドG2を搬送ラインM1上に進出させる制御を
行うことによって資材Aを傾け、液体の付着幅を調整することができる。付着幅調整部302は、ガイドG1、G2を搬送ラインM1上に進出させる駆動機構を制御することによって液体の付着幅を調整する。なお駆動機構には、公知のものを用いることができる。
【0033】
<具体例5>
具体例5は、ノズル200から放出された液体Lに向かって圧縮空気を噴射することによって付着幅を調整する方法である。図7Aは、製造装置Mを下流側から上流側に向かって見た場合に、液体Lの付着幅が狭くなるように、液体Lの幅方向端部の下端に向かって圧縮空気を噴射した状態の製造装置Mを示す図である。図7Bは、製造装置Mを下流側から上流側に向かって見た場合に、液体Lの付着幅が広くなるように、液体Lの幅方向端部の上端に向かって圧縮空気を噴射した状態の製造装置Mを示す図である。本例の製造装置Mは、圧縮空気を噴射する空気噴射装置M4を備えている。また本例では、資材Aの幅方向に2基のノズル200が並ぶように液体散布装置M2に配置されている。図7A図7Bにおいて、白抜きの矢印は圧縮空気の流れを表している。図7Aに示すように、液体Lの幅方向端部の下端に向かって圧縮空気を噴射することで液体Lの付着幅を狭くすることができる。一方、図7Bに示すように、液体Lの幅方向端部の上端に向かって圧縮空気を噴射することで、この圧縮空気が液体Lで跳ね返ることで幅方向外側に流れる。跳ね返った圧縮空気によって液体Lを幅方向外側に流すことで、液体Lの付着幅を広くすることができる。付着幅調整部302は、空気噴射装置M4の動作を制御することで、図7A図7Bに示すように液体Lに向かって圧縮空気を噴射させることによって液体Lの付着幅を調整することができる。制御装置M3には、ノズル200の噴霧圧と、圧縮空気の噴射圧及び噴射方向に基づく液体Lの付着幅が記憶されており、付着幅調整部302は、所定の付着幅で液体を付着させるために、噴射圧及び噴射方向を調整する。
【0034】
本実施形態に係る液体付着方法は、具体例1~5のいずれかを採用することによって、液体Lの噴霧圧に応じて液体の付着幅を調整することができるので、所定の付着量、付着幅で液体を資材に付着させることができる。また、本実施形態に係る液体付着方法は、吸収性物品に用いられる資材に液体を付着させる液体付着工程に用いることができる。このため、本実施形態に係る液体付着方法は、吸収性物品の製造方法に用いることができる。
【0035】
上記の製造方法を利用した吸収性物品の一例として、テープ型使い捨ておむつについて説明する。図8は、テープ型使い捨ておむつ(以下、単に「おむつ」という)1の斜視図である。本実施形態では、おむつ1について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、紙おむつが着用者に装着された状態(以下「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0036】
おむつ1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置する前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置する後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。よって、おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。
【0037】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を
中心に配置されている。当該吸収体に、上述した液体付着方法によって液体が付着されたものを用いる。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の大腿部を取り巻く部位に立体ギャザー3BL、3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。立体ギャザー3BL、3BRとウェストギャザー3Rは、糸ゴムの弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。
【0038】
図9は、おむつ1の分解斜視図である。また、図10は、股下領域1Bをその幅方向に切断した場合の断面図である。おむつ1は、装着状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材である。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する箇所に設けられる。カバーシート4は、バックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。
【0039】
そして、おむつ1は、カバーシート4の着用者側の面において順に積層されるバックシート5、吸収体6C、トップシート7を有する。バックシート5、吸収体6C、トップシート7は、何れも長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。また、トップシート7は、吸収体6Cの吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、おむつ1が装着された状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6Cに進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。さらにトップシート7も親水性を有していてもよい。
【0040】
そして、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6Cとトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6Cに覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに触れることになる。
【0041】
また、おむつ1は、上述した立体ギャザー3BL,3BRを形成するための細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる。サイドシート8L,8Rには、おむつ1の立体ギャザー3BL,3BRと同様、着用者の大腿部が位置する箇所に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、括れ8KL,8KRには糸ゴム8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。よって、括れ8KL,8KRは、おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、糸ゴム8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザーとなる。
【0042】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための糸ゴム9ERは、吸収体6Cの端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。糸ゴム9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、糸ゴム9ERの左右両側に設けられ
るテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、糸ゴム9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。なお、吸収体6Cの両側にも、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ糸ゴム9SL,9SRが設けられている。
【0043】
吸収体6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。
【0044】
このように構成されるおむつ1において、着用者から液体が排泄されると、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6Cに接触する。その結果、吸収体6Cは、着用者から排出された液体を吸収し、液体がおむつ1から外部に漏れ出すのを好適に抑制する。
【0045】
このようなおむつ1の製造工程において、例えば、上述の液体付着方法を用いることができる。例えば、吸収体6Cを作成する工程において、吸収体6C用の資材に上述の液体付着方法を用いてよい。上述の液体付着方法を用いたおむつ1の製造方法によれば、吸収体6C用の資材に所定の付着量、付着幅で液体を付着させることができる。
【0046】
<その他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した種々の実施形態は可能な限り組み合わせることができる。また、上記実施形態では、制御装置M3が、搬送ラインの搬送速度に応じてノズル200の噴霧圧を調整し、ノズル200の噴霧圧に応じて液体の付着幅を調整しているが、本発明はこれに限られない。例えば、工場の作業員が、搬送ラインの搬送速度に応じてノズル200の噴霧圧を調整し、ノズル200の噴霧圧に応じて液体の付着幅を具体例1~5の方法で調整してもよい。また、上記の製造方法を利用して製造されたおむつ1の吸収体6Cは、繊維材料からなる吸収コアが2層に積層された構造を有していてもよい。この場合には、下層の吸収コア上にSAPの粒子が撒かれていてもよい。下層の吸収コア用の資材に水等の液体を付着させることで、SAPの粒子を当該資材上に保持させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・おむつ
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2F・・フロントパッチ
2L,2R・・テープ
3BL,3BR・・立体ギャザー
3R・・ウェストギャザー
4・・カバーシート
4KL,4KR・・括れ
5・・バックシート
6C・・吸収体
7・・トップシート
8L,8R・・サイドシート
8KL,8KR・・括れ
4C,4SL,4SR,8EL,8ER,9ER・・糸ゴム
M・・製造装置
M1・・搬送ライン
M2・・液体散布装置
M3・・制御装置
M4・・空気噴射装置
200・・ノズル
301・・噴霧圧調整部
302・・付着幅調整部
A・・資材
L・・液体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10