(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】クレーン走行支援装置
(51)【国際特許分類】
B66C 15/00 20060101AFI20240509BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B66C15/00 E
B66C13/00 D
(21)【出願番号】P 2020156567
(22)【出願日】2020-09-17
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 王彦
(72)【発明者】
【氏名】津田 和彰
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-024500(JP,A)
【文献】特開2016-013887(JP,A)
【文献】特開2020-100310(JP,A)
【文献】特開2018-021374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 15/00
B66C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの側方の旋回体又はキャビンに取り付けられている、走行中のクレーンの前方を撮影するカメラと、
前記ブームの姿勢を検知するブーム姿勢検知部と、
前記ブーム姿勢検知部の検知情報に基づいて、前記カメラのカメラ画像から前記ブームに関する情報をマスク処理するマスク処理部と、
前記マスク処理部によってマスク処理された前記カメラ画像に基づいて、物体を検知する物体検知部と、
前記物体検知部の検知情報に基づいて、前記物体との距離を検知する距離検知部と、
前記距離検知部の検知情報に基づいて、走行する前記クレーンを制動する制御をする制動制御部と、を備える
ことを特徴とする、クレーン走行支援装置。
【請求項2】
前記ブーム姿勢検知部は、前記カメラ画像に基づいて、前記ブームの姿勢を検知する
ことを特徴とする、請求項1に記載のクレーン走行支援装置。
【請求項3】
前記ブームの先端から垂れ下がる、前記カメラ画像に映る範囲のフックを検知するフック検知部を備え、
前記制動制御部は、前記フック検知部が前記フックを検知した場合、走行する前記クレーンを制動しない
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載のクレーン走行支援装置。
【請求項4】
前記ブームの先端から垂れ下がる、前記カメラ画像に映る範囲のフックを検知するフック検知部を備え、
前記フック検知部が前記フックを検知した場合、前記フックの検知情報を報知する報知手段を備える
ことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載のクレーン走行支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン走行支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車には、衝突被害軽減ブレーキを搭載することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、車両の前方の状況を連続してステレオ撮影する主カメラおよび副カメラと、主カメラおよび副カメラの画像に基づいて距離情報を算出する距離算出部と、距離算出部により算出された距離情報に基づいて、衝突被害軽減ブレーキ機能の動作を制御する車速調整判断部とを備える構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クレーンにおいては、ブームを伏せた伏姿勢で走行する場合と、ブームを起こした起姿勢で走行する場合がある。また、カメラをブームの近傍に設けた場合、ブームの伏状態と起状態とでは、カメラ画像に映り込むブームの形状が異なってしまい、走行するクレーンの障害となる物体の検知精度が悪化する、という問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、ブームの姿勢に応じて、走行するクレーンの障害となる物体の検知精度を向上させることができるクレーン走行支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のクレーン走行支援装置は、ブームの側方の旋回体又はキャビンに取り付けられている、走行中のクレーンの前方を撮影するカメラと、前記ブームの姿勢を検知するブーム姿勢検知部と、前記ブーム姿勢検知部の検知情報に基づいて、前記カメラのカメラ画像から前記ブームに関する情報をマスク処理するマスク処理部と、前記マスク処理部によってマスク処理された前記カメラ画像に基づいて、物体を検知する物体検知部と、前記物体検知部の検知情報に基づいて、前記物体との距離を検知する距離検知部と、前記距離検知部の検知情報に基づいて、走行する前記クレーンを制動する制御をする制動制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように構成された本発明のクレーン走行支援装置は、ブームの姿勢に応じて、走行するクレーンの障害となる物体の検知精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図3】実施例1のクレーン走行支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】実施例1のクレーンが伏姿勢で走行している場合のカメラ画像を示す図である。
【
図5】実施例1のクレーンが起姿勢で走行している場合のカメラ画像を示す図である。
【
図6】実施例1の制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】実施例2のクレーン走行支援装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図8】実施例2の制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】実施例3のカメラ画像にフックが映っている状態を示す図である。
【
図10】実施例3の制御部による処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明によるクレーン走行支援装置を実現する実施形態を、図面に示す実施例1~実施例3に基づいて説明する。
【実施例1】
【0011】
実施例1におけるクレーンは、クレーンとしてのラフテレーンクレーン(以下、単にクレーンという)に適用される。
【0012】
[クレーンの構成]
図1は、実施例1のクレーンを示す側面図である。
図2は、実施例1のクレーンを示す平面図である。以下、実施例1のクレーンの構成を説明する。なお、クレーンの前後方向を前後方向Dとする。
【0013】
図1及び
図2に示すように、クレーン1は、車体10と、旋回体20と、ブーム30とを備える。
【0014】
車体10は、アウトリガー11と、道路や作業現場を自走するための走行装置等を備える。
【0015】
アウトリガー11は、作業時に、水平方向及び垂直方向に張り出し、車体10全体を持ち上げて、姿勢を安定させる。
【0016】
旋回体20は、車体10の上方に設けられ、車体10に対して、鉛直軸C1回りに回転可能となっている。旋回体20は、キャビン21を備える。キャビン21は、クレーン1の進行方向を向いて、ブーム30の右側(側方の一例)に設けられている。なお、キャビン21は、クレーン1の進行方向を向いて、ブーム30の左側(側方の一例)に設けられてもよい。
【0017】
キャビン21は、車体10の走行を制御するための操作部(例えば、ステアリング、シフトレバー、アクセルペダル、及びブレーキペダル等)を有する。また、キャビン21は、旋回体20やブーム30やウィンチ24等を操作する操作部を有する。キャビン21に搭乗した運転者Mは、操作部を操作して、旋回体20を旋回させ、ブーム30を起伏及び伸縮させ、ウィンチ24を回転させて作業を行う。
【0018】
キャビン21には、報知手段72が設けられている。報知手段72は、例えば、表示モニタとすることができる。
【0019】
ブーム30は、基端側の基端ブーム31と、中間ブーム32と、先端側の先端ブーム33と、を備える。中間ブーム32と先端ブーム33は、順次、基端ブーム31の内部に格納される入れ子式になっている。
【0020】
基端ブーム31は、旋回体20に設けられた起伏シリンダ(不図示)に支持される。起伏シリンダが伸縮することで、ブーム30は起伏し、伸縮シリンダ(不図示)が伸縮することによって、ブーム30が伸縮する。
【0021】
ここで、ブーム30が縮んだ状態で、伏せた姿勢を伏姿勢という。ブーム30が縮んだ状態又は伸びた状態で、起きた姿勢を起姿勢という。
【0022】
先端ブーム33の先端に設けられたブームヘッド33aには、シーブ34が配置されている。旋回体20に設けられたウィンチ24には、吊り荷用のワイヤロープ35が巻かれている。ワイヤロープ35は、ウィンチ24からシーブ34までブーム30に沿って配置される。シーブ34に掛け回されたワイヤロープ35は、シーブ34から鉛直方向の下方に吊り下げられる。ワイヤロープ35の最下部には、フック36が設けられている。
【0023】
フック36には、荷物が吊られる。ウィンチ24によってワイヤロープ35が繰り出されることで、フック36が降下し、ワイヤロープ35が巻き上げられることで、フック36が上昇する。
【0024】
キャビン21の上部には、カメラ51が前方を向いた姿勢で設けられている。カメラ51は、前後方向Dで、ブーム30の先端より、後方に設けられている。カメラ51は、ステレオカメラとすることができる。カメラ51は、走行中のクレーン1の前方を撮影する。なお、カメラ51は、キャビン21内に取り付けられていてもよい。
【0025】
車体10には、ブーム姿勢検知部52が搭載される。ブーム姿勢検知部52は、ブーム30の姿勢としての起伏角度を検知する。ブーム姿勢検知部52は、例えば、起伏角センサ及びブーム長さ検出器とすることができる。
【0026】
車体10には、後述する制御部60により制御される制動装置71が搭載される。制動装置71は、制御部60からの情報によって、走行しているクレーン1を制動する。
【0027】
このように構成されたクレーン1は、ウィンチ24によるワイヤロープ35の繰り出し・巻き上げ、ブーム30の起伏及び伸縮、並びに旋回体20の旋回により、フック36に吊られた荷物を所定の位置に移動させる。
【0028】
[クレーン走行支援装置の機能構成]
図3は、実施例1のクレーン走行支援装置の機能構成を示すブロック図である。
図4は、実施例1のクレーン1が伏姿勢で走行している場合のカメラ画像を示す図である。
図5は、実施例1のクレーン1が起姿勢で走行している場合のカメラ画像を示す図である。以下、実施例1のクレーン走行支援装置の機能構成を説明する。
【0029】
図3に示すように、クレーン走行支援装置1Aは、カメラ51が撮影したカメラ画像と、ブーム姿勢検知部52が検知した情報とが制御部60に入力され、制御部60で制御された情報が制動装置71と報知手段72に出力される。
【0030】
カメラ51は、ステレオカメラであり、クレーン1の走行時に使用され、クレーン1の進行方向の前方を撮影する。カメラ51のカメラ画像は、制御部60に入力される。
【0031】
ブーム姿勢検知部52は、ブーム30の起伏角度を検知する。ブーム姿勢検知部52が検知した情報は、制御部60に入力される。
【0032】
制御部60は、記憶部61と、マスク処理部62と、物体検知部63と、距離検知部64と、フック検知部65と、制動制御部66と、を備える。
【0033】
記憶部61は、ブーム30の起伏角度に応じた、カメラ51のカメラ画像に映り込んだブーム30の領域を記憶する。例えば、ブーム30が伏姿勢や起姿勢における、カメラ51のカメラ画像に映り込んだブーム30の領域を記憶する。
【0034】
マスク処理部62は、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、記憶部61を参照して、カメラ51のカメラ画像からブーム30に関する情報をマスク処理する。
【0035】
具体的には、ブーム30が伏姿勢でクレーン1が走行している場合、
図4に示すように、マスク処理部62は、カメラ51のカメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を、記憶部61を参照して特定し、画像認識しないマスク領域Qとする。なお、マスク領域Qは、ブーム30の領域とワイヤーの領域とすることもできる。
【0036】
ブーム30が起姿勢でクレーン1が走行している場合、
図5に示すように、マスク処理部62は、カメラ51のカメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を、記憶部61を参照して特定し、画像認識しないマスク領域Qとする。
【0037】
物体検知部63は、マスク処理部62によってマスク処理されたカメラ画像Pに基づいて、走行するクレーン1の障害となる物体を検知する。
【0038】
具体的には、ブーム30が伏姿勢でクレーン1が走行している場合、
図4に示すように、物体検知部63は、カメラ画像Pのマスク処理がされていない対象領域Sから、画像認識によって、物体G(例えば、トラック)を検知する。
【0039】
ブーム30が起姿勢でクレーン1が走行している場合、
図5に示すように、物体検知部63は、カメラ画像Pのマスク処理がされていない対象領域Sから、画像認識によって、物体G(例えば、トラック)を検知する。
【0040】
距離検知部64は、物体検知部63の検知情報に基づいて、物体Gとの距離を検知する。
【0041】
具体的には、距離検知部64は、カメラ51としてのステレオカメラで撮影した複数のカメラ画像Pにおいて、物体検知部63が検知した物体Gの視差に基づいて、クレーン1から物体Gまでの距離を検知する。
【0042】
フック検知部65は、ブーム30の先端から垂れ下がる、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲のフック36を、例えば、画像認識によって検知する。なお、フック検知部65は、リミットスイッチやフック格納検出器等の入力を検知することで、カメラ画像Pに映る範囲のフック36を検知してもよい。
【0043】
制動制御部66は、距離検知部64の検知情報に基づいて、走行するクレーン1を制動する指示を制動装置71に出力する。
【0044】
制動装置71は、制動制御部66から出力された指示に基づいて、クレーン1の制動力を発生させる。すなわち、制動装置71は、制動制御部66から出力された指示に基づいて、走行しているクレーン1を停止させる。
【0045】
報知手段72は、フック検知部65がフック36を検知した場合、フック36の検知情報を報知する。
【0046】
[制御部による処理]
図6は、実施例1の制御部60による処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例1のクレーン走行支援装置1Aの制御部60による処理の流れを説明する。
【0047】
まず、制御部60は、カメラ51が撮影したカメラ画像Pを取得する(ステップS101)。
【0048】
次いで、制御部60は、ブーム姿勢検知部52が検知したブーム30の起伏角度を取得する(ステップS102)。
【0049】
次いで、マスク処理部62は、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、記憶部61を参照して、カメラ51のカメラ画像Pからブーム30に関する情報をマスク処理する(ステップS103)。
【0050】
次いで、物体検知部63は、マスク処理部62によってマスク処理されたカメラ画像Pに基づいて、物体Gを検知する(ステップS104)。
【0051】
次いで、距離検知部64は、物体検知部63の検知情報に基づいて、物体Gとの距離を検知する(ステップS105)。
【0052】
次いで、制動制御部66は、距離検知部64の検知情報に基づいて、走行するクレーン1を制動する指示を制動装置71に与え(ステップS106)、処理を終了する。
【0053】
[クレーン走行支援装置の作用]
実施例1のクレーン走行支援装置1Aは、ブーム30の側方のキャビン21に取り付けられている、走行中のクレーン1の前方を撮影するカメラ51と、ブーム30の姿勢を検知するブーム姿勢検知部52と、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、カメラ51のカメラ画像Pからブーム30に関する情報をマスク処理するマスク処理部62と、マスク処理部62によってマスク処理されたカメラ画像Pに基づいて、物体Gを検知する物体検知部63と、物体検知部63の検知情報に基づいて、物体Gとの距離を検知する距離検知部64と、距離検知部64の検知情報に基づいて、走行するクレーン1を制動する制御をする制動制御部66と、を備える(
図3)。
【0054】
例えば、ブーム30が伏した伏姿勢では、
図4に示すように、カメラ画像P中に伏姿勢で映っているブーム30の領域をマスク領域Qとするマスク処理することができる。また、ブーム30が起きた起姿勢では、
図5に示すように、カメラ画像P中に起姿勢で映っているブーム30の領域をマスク領域Qとするマスク処理することができる。
【0055】
そのため、ブーム30の姿勢に応じて変化する、カメラ画像P中のブーム30が映っている領域を、物体Gを検知する対象領域Sから除外することができる。
【0056】
その結果、ブーム30の姿勢に応じた極力広い領域から物体Gを検知することができる。そのため、ブーム30の姿勢に応じて、走行するクレーン1の障害となる物体Gの検知精度を向上させることができる。
【0057】
また、カメラ画像P中のブーム30を、走行するクレーン1の障害となる物体Gとして誤検知してしまうことを防止することができる。そのため、走行するクレーン1の障害となる物体Gの検知精度を向上させて、走行するクレーン1を制動することができる。
【実施例2】
【0058】
実施例2のクレーン走行支援装置は、制御部による処理が異なる点で、実施例1のクレーン走行支援装置と相違する。
【0059】
[クレーン走行支援装置の機能構成]
図7は、実施例2のクレーン走行支援装置の機能構成を示すブロック図である。以下、実施例2のクレーン走行支援装置の機能構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一の用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0060】
図7に示すように、クレーン走行支援装置1Aは、カメラ51が撮影したカメラ画像Pが制御部60に入力され、制御部60で制御された情報が制動装置71と報知手段72に出力される。
【0061】
制御部60は、記憶部61と、マスク処理部62と、物体検知部63と、距離検知部64と、フック検知部65と、制動制御部66と、ブーム姿勢検知部67と、を備える。
【0062】
ブーム姿勢検知部67は、カメラ51のカメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を、画像認識によって検知する。すなわち、ブーム姿勢検知部67は、カメラ画像Pに基づいて、ブーム30の姿勢を検知して、カメラ51のカメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を検知する。
【0063】
マスク処理部62は、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、カメラ51のカメラ画像Pからブーム30に関する情報をマスク処理する。
【0064】
具体的には、ブーム30が伏姿勢でクレーン1が走行している場合、
図4に示すように、マスク処理部62は、カメラ51のカメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、画像認識しないマスク領域Qとする。
【0065】
ブーム30が起姿勢でクレーン1が走行している場合、
図5に示すように、マスク処理部62は、カメラ51のカメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、画像認識しないマスク領域Qとする。
【0066】
[制御部による処理]
図8は、実施例2の制御部60による処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例2のクレーン走行支援装置1Aの制御部60による処理の流れを説明する。
【0067】
まず、制御部60は、カメラ51が撮影したカメラ画像Pを取得する(ステップS201)。
【0068】
次いで、ブーム姿勢検知部67は、カメラ画像Pに基づいて、ブーム30の姿勢を検知して、カメラ画像Pに映り込んだブーム30の領域を検知する(ステップS202)。
【0069】
次いで、マスク処理部62は、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、カメラ51のカメラ画像Pからブーム30に関する情報をマスク処理する。(ステップS203)。
【0070】
次いで、物体検知部63は、マスク処理部62によってマスク処理されたカメラ画像Pに基づいて、物体Gを検知する(ステップS204)。
【0071】
次いで、距離検知部64は、物体検知部63の検知情報に基づいて、物体Gとの距離を検知する(ステップS205)。
【0072】
次いで、制動制御部66は、距離検知部64の検知情報に基づいて、走行するクレーン1を制動する指示を制動装置71に与え(ステップS206)、処理を終了する。
【0073】
[クレーン走行支援装置の作用]
以下、実施例2のクレーン走行支援装置1Aの作用を説明する。
【0074】
実施例2のクレーン走行支援装置1Aにおいて、ブーム姿勢検知部52は、カメラ画像Pに基づいて、ブーム30の姿勢を検知する(
図7)。
【0075】
これにより、簡易な構成で、ブーム30の姿勢を検知することができる。そのため、簡易な構成で、ブーム30の姿勢に応じた極力広い領域から物体Gを検知することができる。その結果、ブーム30の姿勢に応じて、走行するクレーン1の障害となる物体Gの検知精度を簡易な構成で向上させることができる。
【0076】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0077】
実施例3のクレーン走行支援装置は、制御部による処理が異なる点で、実施例1のクレーン走行支援装置と相違する。
【0078】
[クレーン走行支援装置の機能構成]
図9は、実施例3のカメラ画像Pにフック36が映っている状態を示す図である。以下、実施例3のクレーン走行支援装置の機能構成を説明する。なお、上記実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については、同一の用語又は同一の符号を用いて説明する。
【0079】
図9に示すように、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲にフック36が侵入すると、フック検知部65が、ブーム30の先端から垂れ下がるフック36を検知する。フック検知部65は、カメラ画像Pに基づいて、画像認識によって、フック36を認識する。すなわち、フック検知部65は、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲にフック36が侵入したことを検知する。なお、フック検知部65は、フック36に吊られた吊り荷37を検知してもよい。
【0080】
フック検知部65が、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲にフック36が侵入したことを検知した場合、制御部60は、フック36がカメラ画像Pに映る範囲に侵入したことを報知手段72としての表示モニタに表示する指示を出す。なお、この際、報知手段72としての音声出力装置から警告音を出力することもできる。
【0081】
キャビン21に搭乗している運転者Mは、報知手段72からの報知によって、フック36がカメラ画像Pに映る範囲に侵入したことを認識し、操作部を操作することで、カメラ画像Pに映らない範囲にフック36を移動することができる。
【0082】
報知手段72の報知内容としては、フック36がカメラ画像Pに侵入したことの警告や、フック36をカメラ画像Pに映り込まない位置へ誘導する案内等とすることができる。なお、フック36をカメラ画像Pに映り込まない位置へ誘導は、運転者Mが操作して行ってもよいし、自動で行ってもよい。
【0083】
[制御部による処理]
図10は、実施例3の制御部60による処理の流れを示すフローチャートである。以下、実施例3のクレーン走行支援装置1Aの制御部60による処理の流れを説明する。
【0084】
まず、制御部60は、カメラ51が撮影したカメラ画像Pを取得する(ステップS301)。
【0085】
次いで、フック検知部65が、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲に、フック36を検知したか否かを判断する(ステップS302)。
【0086】
フック検知部65が、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲に、フック36を検知しない場合(ステップS302でNO)、制御部60は、ブーム姿勢検知部52が検知したブーム30の起伏角度を取得する(ステップS303)。
【0087】
次いで、マスク処理部62は、ブーム姿勢検知部52の検知情報に基づいて、記憶部61を参照して、カメラ51のカメラ画像Pからブーム30に関する情報をマスク処理する(ステップS304)。
【0088】
次いで、物体検知部63は、マスク処理部62によってマスク処理されたカメラ画像Pに基づいて、物体Gを検知する(ステップS305)。
【0089】
次いで、距離検知部64は、物体検知部63の検知情報に基づいて、物体Gとの距離を検知する(ステップS306)。
【0090】
次いで、制動制御部66は、距離検知部64の検知情報に基づいて、走行するクレーン1を制動する指示を制動装置71に与え(ステップS307)、処理を終了する。
【0091】
一方、フック検知部65が、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲に、フック36を検知した場合(ステップS302でYES)、制動制御部66は、走行するクレーン1を制動する指示を出さずに、制御部60は、フック36の検知情報を報知手段72に与え(ステップS308)、処理を終了する。
【0092】
[クレーン走行支援装置の作用]
以下、実施例3のクレーン走行支援装置1Aの作用を説明する。
【0093】
実施例3のクレーン走行支援装置1Aにおいて、ブーム30の先端から垂れ下がる、カメラ画像Pに映る範囲のフック36を検知するフック検知部65を備え、制動制御部66は、フック検知部65がフック36を検知した場合、走行するクレーン1を制動しない(
図9)。
【0094】
これにより、物体検知部63が、走行するクレーン1の障害となる物体Gとして、フック36を誤検知することを防止することができる。そのため、物体検知部63がフック36を誤検知することにより、クレーン1の走行が制動されてしまうことを防止することができる。その結果、走行するクレーン1の障害となる物体Gの検知精度を向上させることができる。
【0095】
実施例3のクレーン走行支援装置1Aにおいて、ブーム30の先端から垂れ下がる、カメラ画像Pに映る範囲のフック36を検知するフック検知部65を備え、フック検知部65がフック36を検知した場合、フック36の検知情報を報知する報知手段72を備える(
図10)。
【0096】
これにより、物体検知部63が、走行するクレーン1の障害となる物体Gとして、フック36を誤検知したとしても、カメラ画像Pに映る範囲にフック36が入っていることを運転者Mが知ることができる。そして、運転者Mは、操作部を操作して、カメラ画像Pに映る範囲にフック36が入らないように、フック36を移動することができる。
【0097】
なお、他の構成及び作用効果については、上記実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0098】
以上、本発明のクレーン走行支援装置を実施例1~実施例3に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、これらの実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や、追加や、各実施例の組み合わせ等は許容される。
【0099】
実施例1~実施例3では、カメラ51をステレオカメラとする例を示した。しかし、カメラは、この態様に限定されず、例えば単眼カメラであってもよい。
【0100】
実施例1~実施例3では、カメラ51は、キャビン21に設けられる例を示した。しかし、カメラ51は、ブーム30の側方の旋回体20に設けられてもよい。
【0101】
実施例1~実施例3では、報知手段72を表示モニタとする例を示した。しかし。報知手段72は、音声を出力する装置とすることもできる。
【0102】
実施例1~実施例3では、フック検知部65は、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲のフック36を、カメラ画像Pに基づいて画像認識によって検知する例を示した。しかし、フック検知部65は、ブーム30の長さと、ブーム30の起伏角度と、ブーム30の旋回角度と、ウィンチ24からのワイヤロープ35の繰り出し量等に基づいて、カメラ51が撮影したカメラ画像Pに映る範囲のフック36を検知してもよい。
【0103】
実施例1~実施例3では、フック検知部65は、フック36を検知する例を示した。しかし、フック検知部65は、吊り荷37を検知してもよい。
【0104】
実施例1及び実施例3では、ブーム姿勢検知部52を起伏角センサとする例を示した。また、実施例2では、ブーム姿勢検知部67は、カメラ画像Pに基づいて、ブーム30の姿勢を検知する例を示した。しかし、ブーム姿勢検知部は、専用のスイッチの入力に基づいて、ブーム30の姿勢を検知するようにしてもよい。
【0105】
実施例1~実施例3では、カメラ51が前方を向いた姿勢で設けられている例を示した。しかし、カメラ51は、多少上下方向(起伏方向)に傾いた姿勢で取り付けられてもよいし、左右方向(水平方向)に傾いた姿勢で取り付けられてもよい。
【0106】
実施例1~実施例3では、本発明をラフテレーンクレーン1に適用する例を示した。しかし、本発明は、走行可能なクレーンに適用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 クレーン
1A クレーン走行支援装置
21 キャビン
30 ブーム
36 フック
51 カメラ
52 ブーム姿勢検知部
62 マスク処理部
63 物体検知部
64 距離検知部
65 フック検知部
66 制動制御部
72 報知手段
G 物体
P カメラ画像