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特許7484618無線通信装置、無線通信方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 48/16 20090101AFI20240509BHJP
【FI】
H04W48/16 110
H04W48/16 134
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020159941
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053231
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高宮 和貴
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 一郎
【審査官】新井 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-129738(JP,A)
【文献】特開2016-195446(JP,A)
【文献】特表2009-507411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信圏内エリアにおいて所定のチャネルを用いて通信を行う通信部と、
複数の通信圏内エリアの位置を示すエリア情報を記憶する記憶部と、
自装置の位置情報および移動情報を検出する位置情報検出部と、
前記エリア情報と、前記位置情報と、前記移動情報とに基づいて、自装置が過去に通過した通信圏内エリアと今後通過する通信圏内エリアとを特定し、特定した通信圏内エリアにおける通過所要時間を算出し、算出した時間が所定時間未満である場合、新たなチャネル探索処理を行わずに過去の通信圏内エリアにおいて選択したチャネルを使用する制御を行う制御部と、
を備える、無線通信装置。
【請求項2】
通信圏内エリアにおいて所定のチャネルを用いて通信を行うステップと、
自装置の位置情報および移動情報を検出するステップと、
複数の通信圏内エリアの位置が記憶されたエリア情報を参照するステップと、
前記エリア情報と、前記位置情報と、前記移動情報とに基づいて、自装置が過去に通過した通信圏内エリアと今後通過する通信圏内エリアとを特定し、特定した通信圏内エリアにおける通過所要時間を算出し、算出した時間が所定時間未満である場合、新たなチャネル探索処理を行わずに過去の通信圏内エリアにおいて選択したチャネルを使用する制御を行うステップと、
を含む、無線通信方法。
【請求項3】
通信圏内エリアにおいて所定のチャネルを用いて通信を行うステップと、
自装置の位置情報および移動情報を検出するステップと、
複数の通信圏内エリアの位置が記憶されたエリア情報を参照するステップと、
前記エリア情報と、前記位置情報と、前記移動情報とに基づいて、自装置が過去に通過した通信圏内エリアと今後通過する通信圏内エリアとを特定し、特定した通信圏内エリアにおける通過所要時間を算出し、算出した時間が所定時間未満である場合、新たなチャネル探索処理を行わずに過去の通信圏内エリアにおいて選択したチャネルを使用する制御を行うステップと、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置、無線通信方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザの携帯端末の位置情報を取得し、一定時間後の位置を予測して、その位置が通信圏外エリアであれば、ユーザに対して通信圏外エリアに出ることを予告する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-364223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通信圏外エリアと通信圏内エリアが入り組んだ地域の通信圏外エリアを移動しているユーザにとって、次の通信圏内エリアに到達する時刻、及び次の通信圏内エリアの継続時間は貴重な情報となり得る。通信圏内エリアに滞在している時間が限られている場合には、この限られた時間を有効に利用して、適切に通信を行うことが求められている。
【0005】
本発明は、通信圏内エリアに滞在している時間を有効に利用して適切に通信を行うことのできる無線通信装置、無線通信方法、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る無線通信装置は、通信圏内エリアにおいて所定のチャネルを用いて通信を行う通信部と、複数の通信圏内エリアの位置を示すエリア情報を記憶する記憶部と、自装置の位置情報および移動情報を検出する位置情報検出部と、前記エリア情報と、前記位置情報と、前記移動情報とに基づいて、自装置が過去に通過した通信圏内エリアと今後通過する通信圏内エリアとを特定し、特定した通信圏内エリアに関する条件が所定条件を満たす場合、新たなチャネル探索処理を行わずに過去の通信圏内エリアにおいて選択したチャネルを使用する制御を行う制御部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様の無線通信方法は、通信圏内エリアにおいて所定のチャネルを用いて通信を行うステップと、自装置の位置情報および移動情報を検出するステップと、複数の通信圏内エリアの位置が記憶されたエリア情報を参照するステップと、前記エリア情報と、前記位置情報と、前記移動情報とに基づいて、自装置が過去に通過した通信圏内エリアと今後通過する通信圏内エリアとを特定し、特定した通信圏内エリアに関する条件が所定条件を満たす場合、新たなチャネル探索処理を行わずに過去の通信圏内エリアにおいて選択したチャネルを使用する制御を行うステップと、を含む。
【0008】
本発明の一態様に係るプログラムは、通信圏内エリアにおいて所定のチャネルを用いて通信を行うステップと、自装置の位置情報および移動情報を検出するステップと、複数の通信圏内エリアの位置が記憶されたエリア情報を参照するステップと、前記エリア情報と、前記位置情報と、前記移動情報とに基づいて、自装置が過去に通過した通信圏内エリアと今後通過する通信圏内エリアとを特定し、特定した通信圏内エリアに関する条件が所定条件を満たす場合、新たなチャネル探索処理を行わずに過去の通信圏内エリアにおいて選択したチャネルを使用する制御を行うステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信圏内エリアに滞在している時間を有効に利用して適切に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第1実施形態に係る無線通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図3図3は、第1実施形態に係る無線通信装置の処理の方法を説明するための図である。
図4図4は、エリア情報を説明するための図である。
図5図5は、第2実施形態に係る無線通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図6図6は、第3実施形態に係る無線通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含む。また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0012】
[第1実施形態]
図1を用いて、第1実施形態に係る無線通信装置の構成について説明する。図1は、第1実施形態に係る無線通信装置の構成例を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、無線通信装置10は、通信部12と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信部14と、操作部16と、表示部18と、位置情報特定部20と、記憶部22と、制御部24と、を備える。
【0014】
通信部12は、遠距離無線通信を実行する機能を有する。遠距離無線通信としては、例えば、APCO-P25(Association of Public safety Communications Officials international Project 25)およびNXDN(登録商標)といったデジタル業務無線が挙げられる。遠距離無線通信は、携帯電話網等による通信であってもよい。
【0015】
GNSS受信部14は、図示しないGNSS衛星からのGNSS信号を受信する。GNSS受信部14は、受信した信号(位置情報を特定するための情報)を位置情報特定部20に出力する。
【0016】
操作部16は、無線通信装置10に対する各種の操作を受け付ける。操作部16は、例えば、他の無線通信装置などとの間の通信を開始したり、通信を終了したりする操作を受け付ける。操作部16は、例えば、ボタン、スイッチ、レバー、テンキー、タッチパネル、およびPTT(Push to Talk)ボタンなどを含む。
【0017】
表示部18は、各種の情報を表示する。表示部18は、例えば、無線通信装置10の状態、及び通信状況などに関する各種の情報を表示する。本実施形態では、表示部18は、例えば、移動しているユーザに対して、通信圏内エリアとなる時刻、及び通信圏内エリアの継続時間などに関する情報を表示する。表示部18は、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどを含むディスプレイを含む。表示部18は、例えば、LED(Light Emitting Diode)などの発光部を含む。なお、タッチパネル等を用いて、表示部18と操作部16を一体的に構成してもよい。
【0018】
位置情報特定部20は、GNSS受信部14が受信した信号をもとに、無線通信装置10(ユーザ)の位置に関する位置情報を特定(検出)する。ここで、位置情報とは、緯度、経度などの地球座標であり、さらに高度を含んでいてもよい。また、位置情報特定部20は、無線通信装置10(ユーザ)の移動速度、及び移動方向に関する情報を含む移動情報を特定(検出)する。位置情報特定部20は、移動情報を検出するために、例えば、ジャイロセンサ、及び加速度センサなどを含む。位置情報特定部20は、特定した位置情報及び移動情報を制御部24に出力する。位置情報特定部20は、GNSS受信部14がGNSS信号を受信できないエリアにおいても、位置情報を特定可能である。例えば、位置情報特定部20は、GNSS受信部14がGNSS信号を受信して得た自装置の位置と、その後の自装置の移動情報とを組み合わせることにより、GNSS受信部14がGNSS信号を受信できないエリア(例えば、トンネル内部等)においても、自装置の位置を特定することができる。位置情報特定部20は、無線通信装置10(ユーザ)の位置情報を検出するため、位置情報検出部とも呼ばれる。
【0019】
記憶部22は、各種の情報を記憶するメモリである。記憶部22は、例えば、制御部24の演算内容及びプログラムなどの情報を記憶する。記憶部22は、例えば、無線通信装置10(ユーザ)の緯度情報、経度情報、及び高度情報を含む位置情報を記憶する。記憶部22は、例えば、直近の1時間において1秒ごとに判定された無線通信装置10(ユーザ)の位置情報を記憶する。記憶部22は、通信圏内エリアと通信圏外エリアとを区別可能なエリア情報を記憶している。エリア情報については、後述する。記憶部22は、例えば、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)のような主記憶装置、HDD(Hard Disk Drive)などの外部記憶装置とのうち、少なくとも1つ含む。
【0020】
制御部24は、無線通信装置10の各部の動作を制御する。制御部24は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部22などに記憶されたプログラムがRAM等を作業領域として実行されることにより実現される。制御部24は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。制御部24は、ハードウェアと、ソフトウェアとの組み合わせで実現されてもよい。
【0021】
制御部24は、取得部30と、位置情報判定部32と、推定部34と、通信制御部36と、を備える。
【0022】
取得部30は、各種の情報を取得する。取得部30は、例えば、操作部16に入力された操作情報を取得する。取得部30は、例えば、位置情報特定部20が特定した位置情報及び移動情報を取得する。
【0023】
位置情報判定部32は、取得部30が取得した位置情報に基づいて、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が所定の位置に該当するか否かを判定する。具体的には、位置情報判定部32は、無線通信装置10(ユーザ)が通信圏外エリアの近傍に位置しているか否かを判定する。つまり、所定の位置は、通信圏内と通信圏外との境界付近の位置である。本実施形態では、位置情報判定部32は、例えば、無線通信装置10(ユーザ)がトンネルの入口付近に位置しているか、又はトンネルの出口付近に位置しているか否かを判定する。ただし、所定の位置は、トンネル内部およびその近傍の位置に限られるものではない。位置情報判定部32は、判定した位置情報を記憶部22に記憶する。位置情報判定部32は、例えば、所定間隔ごとに判定された位置情報を時系列に沿って記憶部22に記憶する。所定間隔は、例えば、1秒であるがこれに限定されない。
【0024】
推定部34は、無線通信装置10(ユーザ)が現在の速度で走行を継続した場合の現時点以後の所定の時刻における、無線通信装置10(ユーザ)の位置が通信圏内エリアであるか通信圏外エリアであるかを推定する。推定部34は、位置情報特定部20が特定した位置情報および移動情報と、記憶部22が記憶するエリア情報とに基づいて、無線通信装置10(ユーザ)の位置が通信圏内エリアであるか通信圏外エリアであるかを推定する。推定部34は、例えば、無線通信装置10(ユーザ)の現在の速度や移動方向に基づき、次の通信圏内エリアを通過する条件が所定の条件を満たすか否かを判定する。推定部34が判定する条件については後述する。
【0025】
通信制御部36は、通信部12を制御して、無線通信装置10と、他の装置(基地局など)との間の通信を制御する。通信制御部36は、例えば、推定部34が次の通信圏内エリアまたは通信圏外エリアを通過する条件が所定の条件を満たすと判定した場合、チャネルのスキャンを行わずに、前回の通信圏内エリアにおいて決定したチャネル(通信周波数)を設定して通信を行う。なお、本実施形態では、無線通信装置10は周波数分割されたチャネルを用いて通信を行うが、これに限定されるものではない。
【0026】
無線通信装置10において、GNSS受信部14の機能、位置情報特定部20の機能、及び記憶部22がエリア情報を記憶する機能は、他の外部機器(例えば、車両に搭載される車載機器)が備えていてもよい。あるいは、他の外部機器がそれらの一部の機能を備えており、他の外部機器との間で分担して機能を実現してもよい。この場合、無線通信装置10は、他の外部機器から必要な情報のみを取得するように構成され得る。無線通信装置10は、他の外部機器と分担して各機能を実行することで、過去及び現在の正確な移動速度を他の外部機器から取得できるので、例えば、GNSS信号を受信できない通信圏外エリア(例えば、トンネル)において、ある時刻における無線通信装置10の位置をより精度よく推定することができる。
【0027】
[通信制御処理]
図2と、図3とを用いて、第1実施形態に係る無線通信装置の処理の流れについて説明する。図2は、第1実施形態に係る無線通信装置の処理の流れの一例を示すフローチャートである。図3は、第1実施形態に係る無線通信装置の処理の方法を説明するための図である。
【0028】
本実施形態では、無線通信装置10を所持するユーザが、車両で道路を移動する状況を想定するが、本発明はこれに限られない。例えば、ユーザは、無線通信装置10を所持して、徒歩、自転車、鉄道、及び船などで移動してもよい。また、道路上の移動に限らず、草原、森林、海上などを移動してもよい。
【0029】
制御部24は、無線通信装置10(ユーザ)の現在の位置情報(現在位置)を取得する(ステップS10)。具体的には、取得部30は、位置情報特定部20が特定した位置情報を取得する。そして、制御部24は、ステップS12に進む。
【0030】
制御部24は、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が通信圏外エリアの入口付近に位置しているか否かを判定する(ステップS12)。通信圏外エリアの入口付近とは、それまでの通信圏内から通信圏外に変わる切り替わる場所であり、例えば、トンネルの内部の入口付近である。具体的には、位置情報判定部32は、取得部30が取得した位置情報と、記憶部22が記憶しているエリア情報とに基づいて、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置がトンネル内部の入口付近に位置しているか否かを判定する。本実施形態では、トンネル内部の入口付近とは、トンネル内部の入口から所定距離未満のエリアのことを意味する。より具体的には、図3に示す例では、エリア情報として、エリアAと、エリアBと、エリアCと、エリアDと、エリアEとが示されている。図3に示す例では、左から右に向かう方向が、無線通信装置10(ユーザ)の移動方向である。ここで、エリアBと、エリアDとがトンネルである。位置情報判定部32は、エリアBの地点P1と地点P2との間の地点に位置しているか、又はエリアDの地点P5と地点P6との間の地点に位置しているか否かを判定する。このような判定は、制御部24が、後述するエリア情報22aを参照して行う。トンネル内部の入口付近は、通信圏外エリアの入口付近であるともいえるので、制御部24は、無線通信装置10の現在位置が通信圏外エリアの入口付近であるか否かを判定するともいえる。もちろん、位置情報特定部20が特定した移動情報をさらに用いて、通信圏外エリアの入口付近であるか否かを判定してもよい。つまり、位置情報特定部20が特定した位置情報および移動情報をもとに、通信圏外エリアの入口付近に位置しているか(今後通信圏外エリアに突入するか)否かを判定してもよい。なお、エリアBに含まれるエリアBaは完全に通信圏外エリアであるが、エリアBに含まれ、かつエリアBa以外の部分(つまり、エリアBの両端付近)は、条件によっては通信可能となる場所である。この条件とは、例えば、無線通信装置10の能力、あるいは電波状況である。例えば、無線通信装置10の送受信能力が高い場合には通信可能となるが、無線通信装置10の送受信能力が低い場合には通信不可となる。エリアDとエリアDaとの関係も同様である。無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が通信圏外エリアの入口付近であると判定された場合(ステップS12;Yes)、ステップS14に進む。無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が通信圏外エリアの入口付近でないと判定された場合(ステップS12;No)、ステップS30に進む。
【0031】
ステップS12でYesと判定された場合、制御部24は、チャネル情報を記憶し、スキャン動作を停止する(ステップS14)。具体的には、通信制御部36は、現在通信で使用しているチャネル情報を記憶部22に記憶し、スキャン動作を停止する。トンネルの入口付近に位置している場合、無線通信装置10(ユーザ)の位置は、トンネルの内部に移動することが想定される。トンネルの内部は通信圏外エリアなので、通信制御部36は、無駄なスキャン動作を停止することで、無線通信装置10のバッテリ消費を抑える。そして、ステップS16に進む。
【0032】
制御部24は、次の通信圏内エリアを特定する(ステップS16)。具体的には、位置情報判定部32は、位置情報特定部20が特定した無線通信装置10(ユーザ)の位置情報および移動方向(移動情報)と、記憶部22に記憶されたエリア情報とに基づいて、次の通信圏内エリアを特定する。すなわち、位置情報判定部32は、記憶部22に記憶されたエリア情報22aを参照し、次の通信圏内エリアを特定する。
【0033】
図4は、記憶部22に記憶されたエリア情報を説明するための図である。図4には、記憶部22に記憶されたエリア情報22aが示されている。図4に示すように、エリア情報22aには、エリア(エリア名あるいはエリア識別子)と、エリア範囲と、エリア属性と、距離と、通信状態が関連付けられている。エリア範囲は、エリアの範囲を示しており、エリアの緯度、経度を含む。本図において、例えば、エリアAのエリア範囲が「(NA1,EA1)~(NA2,EA2)」と示されている。これは、エリアAを矩形(長方形)領域として表現しており、「(NA1,EA1)」は、矩形領域の一方の対角頂点の(緯度,経度)、(「NA2,EA2)」は、もう一方の対角頂点の(緯度,経度)を示す。ただし、エリアの範囲を示す位置情報は、矩形に限らず任意の形状であってもよい。エリア属性は、エリアの属性を示す情報である。本実施形態では、「トンネル内部」と「トンネル外部」の2種類の値を用いるが、これらに限定されるものではなく。例えば、「トンネル内部:路面良い」、「トンネル内部:路面悪い」、「トンネル外部:路面良い」、「トンネル外部:路面悪い」といったように、3種類以上の値を用いてもよい。また、「トンネル内部:片側交互通行」、「トンネル内部:最高速度時速40km」、「トンネル外部:最高速度時速60km」、「トンネル外部:渋滞中」といった情報を用いてもよい。またこのように、エリア属性は、無線通信装置10(ユーザ)がエリア内で実現可能な移動速度を示す情報を含んでいてもよい。なお、「エリア属性」を省略することも可能である。
【0034】
距離は、エリアの長さを示す。説明を簡潔にするため、本実施形態では、エリア内の直線的な道路上を無線通信装置10(ユーザ)が移動する例を用いるため、この距離はエリア内の道路上の距離である。例えば図4において、エリアBの距離は1000m、エリアCの距離は200m、エリアDの距離は2000mである。なお、無線通信装置10(ユーザ)が草原等において任意の方向に移動できる場合は、無線通信装置10の移動方向に応じて、距離を動的に変更してもよい。通信状態は、そのエリアが通信圏内であるか通信圏外であるかを示す情報である。例えば図4において、エリアAの通信状態は通信圏内、エリアBの通信状態は通信圏外、エリアCの通信状態は通信圏内、エリアDの通信状態は通信圏外、エリアEの通信状態は通信圏内である。図4に示すように、エリア情報22aには、複数の通信圏内エリア(エリアA、エリアC、エリアEなど)の位置を示す情報が記憶(格納)されている。本実施形態では、通信状態として、「通信圏内」と「通信圏外」の2種類の値を用いるが、これに限定されるものではない。例えば、「通信圏内:電波強」、「通信圏内:電波中」、「通信圏内:電波弱」、「不定(不安定)」、「通信圏外」といったように、3種類以上の値(情報)を用いてもよい。位置情報判定部32は、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置がエリアBの入口付近である場合には、エリア情報22aに基づいて、エリアCが次の通信圏内エリアであると特定する。位置情報判定部32は、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置がエリアDの入口付近である場合には、エリア情報22aに基づいて、エリアEが次の通信圏内エリアであると特定する。なお、エリア情報22aに通信圏内エリアの情報のみを格納し、それ以外の場所は全て通信圏外エリアとみなしてもよい。つまり、エリア情報22aのレコード(行)は全て通信圏内エリアであってもよい。その場合、「通信状態」の格納を省略することができる。
【0035】
図2の説明に戻る。制御部24(推定部34)は、ステップS16で特定した通信圏内エリアの予想継続時間T1を算出する(ステップS18)。推定部34は、位置情報特定部20が特定した無線通信装置10(ユーザ)の移動速度(移動情報)と、エリア情報22aとに基づいて、次の通信圏内エリアを通過するのに要する予想時間(予想継続時間T1)を算出する。すなわち、推定部34は、記憶部22に記憶されたエリア情報22aを参照し、予想継続時間T1を算出する。例えば、図3に示す例において、現在位置が地点P1と地点P2との間に位置していると判定された場合、推定部34は、トンネルの出口(地点P4)から次のトンネルの入口(地点P5)まで到達するのに要する時間、すなわちエリアCを通過するのに要する時間を推定することで予想継続時間T1を算出する。図4に示す例の場合、推定部34は、エリア情報22aにおけるエリアCの距離である200mを、現在の移動速度で割った値を予想継続時間T1とする。予想継続時間T1は、次の通信圏内エリアに留まる時間、あるいは次の通信圏内エリアの通過に要する時間(通過の所要時間)であるともいえる。なお、予想継続時間T1を算出する際に、上述したエリア属性を用いてもよい。例えば、現在位置のエリアのエリア属性が「トンネル内部:路面良い」で、次の通信圏内のエリア属性が「トンネル外部:路面悪い」場合、次の通信圏内において移動速度が現在よりも低下すると想定されるため、それを加味して予想継続時間T1を通常よりも長く算出してもよい。逆に、次の通信圏内エリアにおいて、移動速度が現在より上昇すると想定される場合には、予想継続時間T1を通常よりも短く算出してもよい。また、エリア属性が最高速度情報や渋滞情報を含む場合には、それらを考慮して予想継続時間T1を算出してもよい。
【0036】
制御部24(推定部34)は、通信圏内エリアの予想継続時間は第1閾値時間未満であるか否かを判定する(ステップS20)。具体的には、推定部34は、ステップS18で算出された予想継続時間T1を所定の第1閾値時間t1と比較する。ここで、第1閾値時間t1は、通信に必要な最低限の時間に相当する値であり、例えば、30秒である。第1閾値時間t1の値は、通信の種別に応じて、設定してよい。例えば、PTT通話の場合は20秒、電話番号による通話の場合は40秒、予め入力されたテキストメッセージを送信する場合は10秒、ユーザが新たに入力するテキストメッセージを送信する場合は30秒、などと設定してよい。なお、第1閾値時間t1の値は、任意に変更し得る。予想継続時間は第1閾値時間未満であると判定された場合(ステップS20;Yes)、ステップS22に進む。予想継続時間は第1閾値時間未満でないと判定された場合(ステップS20;No)、ステップS24に進む。
【0037】
ステップS20でYesと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに「スキャン停止」を設定する(ステップS22)。ここで、スキャンモードとは、次の通信圏内が近づいたときの無線通信装置10のスキャン動作を示すデータ(情報)であり、記憶部22に記憶される。スキャンモードは、スキャン再開モードとも呼ばれる。つまり、通信制御部36は、ステップS16で特定した通信圏内エリア(次の通信圏内エリア)の予想継続時間T1が第1閾値時間t1未満であると予想される場合には、その通信圏内エリアでのスキャン動作を実行せず、通信も実行しないと決定する。これは、通信圏内エリアが短い、又は無線通信装置10(ユーザ)の移動速度が速いことにより、通信に最低限必要な時間が確保できないエリアについては、通信処理を開始したとしても通信が確立せずに、通信相手に情報が伝わらず、通信処理が無駄になる可能性が高いためである。このような場合、通信制御部36は、通信処理を停止して無線通信装置10のバッテリ消費を抑えた方がよい。なお、スキャン動作は、通信を開始するために必要な処理(通信準備処理)であり、通信処理の1つであるが、ここで対象とする通信処理は、スキャン動作に限られる訳ではなく、他の処理であってもよい。そして、ステップS40に進む。
【0038】
ステップS20でNoと判定された場合、制御部24は、予想継続時間は第1閾値時間以上かつ第2閾値時間未満であるか否かを判定する(ステップS24)。具体的には、推定部34は、ステップS18で算出された予想継続時間T1を所定の第1閾値時間t1以上であり、かつ第1閾値時間t1よりも大きい値の第2閾値時間t2未満であるか否かを判定する。第2閾値時間t2は、通信を完了することが可能な時間であるが、あまり多くの余裕はない時間である。第2閾値時間t2の値は、例えば、3分であるが、これに限定されない。また、第1閾値時間t1と同様に、通信種別に応じて、第2閾値時間t2を設定してもよい。予想継続時間は第1閾値時間以上かつ第2閾値時間未満であると判定された場合(ステップS24;Yes)、ステップS26に進む。一方、予想継続時間が第2閾値時間以上であると判定された場合(ステップS24;No)、ステップS28に進む。
【0039】
ステップS24でYesと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに「直近のチャネル使用」を設定する(ステップS26)。「直近のチャネル使用」とは、次の通信圏内エリアの近くにおいてスキャン動作を行わずに(スキャン動作を再開せずに)、直近で使用していたチャネルを用いて通信を行うことを示すモードである。通信圏内エリアの予想継続時間が、通信に最低限必要な時間以上であり、かつあまり長くない(あまり多くの余裕はない)場合には、その通信圏内エリアは通信を実行するうえで、貴重なチャンスとなり得る。このため、通信制御部36は、その通信圏内エリアにおいてスキャン動作を行わずに、直近で使用していたチャネルを使用した方が、通信前に行うスキャン動作に要する時間を節約できるため、通信により多くの時間を使うことができる。言い換えれば、通信制御部36は、現在位置が通信圏外エリアであると推定され、次の通信圏内エリアを通過する時間が所定時間未満(第2閾値時間未満)であると判定した場合には、スキャン動作を行わずに前回の通信圏内エリアにおいて決定したチャネルを使用する。具体的には、図3に示す例では、通信制御部36は、無線通信装置10(ユーザ)が通信圏外エリアであるエリアBの入口付近に位置していると特定され、通信圏内エリアであるエリアCを通過する時間が所定時間未満であると推定された場合には、エリアCではスキャン動作は行わずに、エリアAで設定されたチャネルを使用することを決定する。これにより、限られた通信圏内エリア(通信圏内エリアCを通過する限られた時間)を有効に利用して、効率よく適切に通信を行うことができる。そして、ステップS40に進む。
【0040】
ステップS24でNoと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに「スキャン実行」を設定する(ステップS28)。つまり、通信制御部36は、ステップS16で特定した通信圏内エリアの予想継続時間T1が第2閾値時間t2以上と予想される場合には、その通信圏内エリアにおいてスキャン動作を実行することを決定する。これは、通信圏内エリアが長い、又は無線通信装置10(ユーザ)の移動速度が遅いことにより、通信圏内エリア状態が十分長く持続する場合には、短時間で通信を完了する必要性が高くないためである。このようなエリアでは、スキャン動作に要する時間を節約するメリットがあまりないため、通信制御部36は、スキャン動作を実行し、最適なチャネルを選択する。通信制御部36は、スキャン動作を実行することで、より確実に基地局の電波を受信し、より確実に通信することができる。具体的には、図3に示す例では、通信制御部36は、無線通信装置10(ユーザ)が通信圏外エリアであるエリアDの入口付近に位置していると推定された場合に、地点P7に到達するとスキャン動作を実行する。そして、ステップS40に進む。
【0041】
ステップS12でNoと判定された場合、制御部24は、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が通信圏外エリアの出口付近に位置しているか否かを判定する(ステップS30)。通信圏外エリアの出口付近とは、それまでの通信圏外から通信圏内に変わる切り替わる場所であり、例えば、トンネルの内部の出口付近である。具体的には、位置情報判定部32は、取得部30が取得した位置情報と、記憶部22が記憶しているエリア情報とに基づいて、無線通信装置10(ユーザ)の現在位置がトンネル内部の出口から近いエリアに位置しているか否かを判定する。トンネル内部の出口から近いエリアとは、トンネルの出口からの距離が所定距離(例えば、300m)未満のエリアのことを意味する。所定距離は、無線通信装置10(ユーザ)の移動速度が速いほど、長くしてもよい。例えば、時速40kmの場合は所定距離を400m、時速80kmの場合は所定距離を800mとしてもよい。より具体的には、図3に示す例では、位置情報判定部32は、エリアBの地点P3と地点P4との間の地点に位置しているか、又はエリアDの地点P7と地点P8との間の地点に位置しているか否かを判定する。もちろん、位置情報特定部20が特定した移動情報をさらに用いて、通信圏外エリアの出口付近であるか否かを判定してもよい。つまり、位置情報特定部20が特定した位置情報および移動情報をもとに、通信圏外エリアの出口付近に位置しているか(今後通信圏内エリアに突入するか)否かを判定してもよい。無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が通信圏外エリアの出口付近であると判定された場合(ステップS30;Yes)、ステップS32に進む。無線通信装置10(ユーザ)の現在位置が通信圏外エリアの出口付近でないと判定された場合(ステップS30;No)、ステップS40に進む。
【0042】
ステップS30でYesと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードが「スキャン停止」であるか否かを判定する(ステップS32)。具体的には、通信制御部36は、記憶部22に記憶されたスキャンモードの状態(値)を確認する。スキャンモードが「スキャン停止」と判定された場合(ステップS32;Yes)、ステップS40に進む。すなわち、ステップS22において、スキャンモードに「スキャン停止」が設定されていた場合、通信制御部36は、次の通信圏内エリアにおいてスキャン動作を再開せずに、ステップS14で設定したスキャン停止状態を継続する。この場合、ユーザが操作部16を操作して通信を要求しても、通信制御部36は通信を実行しない。制御部24は、「次の通信圏内エリアを通過する時間が短いため、通信が完了しない可能性が高いです。バッテリ消費を抑えるため、ここでは通信を行いません」といったメッセージを表示部18に表示してもよい。スキャンモードが「スキャン停止」でないと判定された場合(ステップS32;No)、ステップS34に進む。
【0043】
ステップS32でNoと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードが「直近のチャネル使用」であるか否かを判定する(ステップS34)。スキャンモードが「直近のチャネル使用」である場合(ステップS34;Yes)、ステップS36に進み、スキャンモードが「直近のチャネル使用」でない場合(ステップS34;No)、ステップS38に進む。ステップS36において、制御部24(通信制御部36)は、スキャン動作を実行せずに(スキャン動作の停止を継続し)、直近で使用していたチャネルを用いて通信を行う(ステップS36)。これにより、例えば、無線通信装置10(ユーザ)がトンネルと、トンネルとの間の区間を移動する短い時間に、スキャン動作に要する時間を節約して通信することが可能になる。そして、ステップS40に進む。
【0044】
ステップS34でNoと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャン動作を開始する(ステップS38)。具体的には、通信制御部36は、通信部12を制御し、受信周波数を変えながら基地局からの信号を探索し、通信に使用するチャネルを選択するスキャン動作を開始する。スキャン動作は、通信データ(通信情報)を送受信する前に行う通信準備処理の1つである。なお、ステップS34でNoと判定されるのは、ステップS28でスキャンモードに「スキャン実行」が設定された場合である。そして、ステップS40に進む。
【0045】
制御部24は、通信制御処理を終了するか否かを判定する(ステップS40)。制御部24は、例えば、操作部16から通信制御処理を終了させる操作を受け付けた場合及び電源をオフにする操作を受け付けた場合に、通信制御処理を判定する。通信制御処理を終了すると判定された場合(ステップS40;Yes)、図2の処理を終了する。通信制御処理を終了しないと判定された場合(ステップS40;No)、ステップS10に戻って処理を繰り返す。以上が図2のフローチャートの説明である。
【0046】
図3の例を用いて具体的に説明する。通信制御部36は、エリアAではスキャン動作を実行し、無線通信装置10(ユーザ)の位置が地点P1に到達すると、スキャン動作を終了する。通信制御部36は、次の通信圏内エリアであるエリアCの距離(200m)と無線通信装置10の移動速度とをもとに、エリアCの予想継続時間T1を算出する。ここでは、予想継続時間T1は第1閾値時間t1以上であり、かつ第2閾値時間t2未満であるため、エリアCにおいて通信が行われる場合には直近のチャネルを使用する。すなわち、エリアCに関連するスキャン動作を行わない。この結果、通信圏内エリアであるエリアBの出口から近いエリアの地点P3から地点P4、エリアC、エリアDの地点P5から地点P6では、スキャン動作の停止を継続する。通信制御部36は、完全に通信圏外エリアであるエリアDaを通過後、条件によっては通信圏内エリアとなる可能性のある地点P7に到達すると、スキャン動作を開始する。完全な通信圏内エリアに入る前に、通信できる可能性のある地点でスキャン動作を開始するため、無線通信装置の10のバッテリ消費を抑えながら、より早く通信を開始できる。
【0047】
上述のとおり、第1実施形態は、現在位置が通信圏外エリアであると推定され、次の通信圏内エリアを通過する時間が所定時間未満(第1閾値未満)であると判定した場合には、その通信圏内エリアに対して、スキャン動作を行わずに、通信を実行しない。このため、通信が完了せず(情報伝達が行われず)に、バッテリが無駄に消費されたり、ユーザの操作が無駄になったりすることを防止することができる。また、第1実施形態では、現在位置が通信圏内エリアであると推定され、次の通信圏内エリアを通過する時間が所定時間未満(第2閾値未満)であると判定した場合、その通信圏内エリアに対して、スキャン動作を行わずに前回の通信圏内エリアにおけるチャネル(通信周波数)を使用して通信を実行する。これにより、バッテリ消費を抑えると同時に、より早く通信を開始することができる。すなわち、本実施形態によれば、限られた通信圏内エリアを有効に利用して、適切に通信を行うことができる。
【0048】
なお、本実施形態では、無線通信装置10が周波数分割チャネル(周波数分割多元接続方式)を用いて通信を実行すると例を説明したが、これ限られるものではない。例えば、無線通信装置10は、時分割チャネル(時分割多元接続方式)や、符号分割チャネル(符号分割多元接続方式)などを用いて通信を実行してもよい。すなわち、本実施形態で説明したスキャン動作(スキャン処理)は、通信に使用するチャネルを探索(選出、選択)するチャネル探索処理(チャネル選出処理、チャネル選択処理とも呼ぶ)の1つである。スキャン動作は、受信周波数を変えながら基地局からの信号を検出する処理に限定されるものではない。
【0049】
また、本実施形態では、無線通信装置10がある通信圏内エリアから別の通信圏外エリアに移動した際に、次の通信圏内エリア付近(近傍)におけるチャネル探索処理を決定しているが、これに限定されるものではない。例えば、今後通過すると予想される複数の通信圏内エリアそれぞれについて、チャネル探索処理を実行するか否かを決定してもよい。つまり、今後通過する通信圏内エリアに対して、チャネル探索処理を行うか否か、あるいは使用するチャネルを決定するタイミングは任意である。また、チャネル探索処理を実行しない場合に、前回の通信圏内エリア(直近で通過した通信圏内エリア)で選択した(使用した)チャネルを使用したが、これに限定されるものではない。例えば、通信圏内エリアと通信圏外エリアが短い周期で交互に続くような場合、過去に通過した複数の通信圏内エリアで選択(使用)したチャネルをもとに、今後通過する通信圏内エリアにおいて使用するチャネルを決定してもよい。例えば、直近で通過した通信圏内エリアにおいて、それぞれ「チャネル1」、「チャネル1」、「チャネル2」を使用した場合、それらの多数決をとって、最も使用回数の多い「チャネル1」を次の通信圏内エリアで使用すると決定してもよい。無線通信装置10の移動経路が直線状ではない場合には、過去に通過した複数の通信圏内エリアの情報を用いた方が適切にチャネルを選択できる場合がある。また、過去に通過した通信圏内エリアで使用した複数のチャネルを記憶し、次の通信圏内エリアでそれらを順次使用してもよい。例えば、過去に「チャネル1」と「チャネル2」を使用した場合、次の通信圏内エリア付近において、まず最初に「チャネル1」を使用して通信を試み、それが失敗した場合には、次に「チャネル2」を使用して通信を試みてもよい。また、過去に通過した通信圏内エリアの順番や距離に応じて、複数のチャネルを使用する順番を決めてもよい。例えば、直近(1つ前)の通信圏内エリアや過去に通過した最も近い通信圏内エリアで使用したチャネルを最初に使用して通信を試み、それが失敗した場合には、2つ前の通信圏内エリアや過去に通過した2番目に近い通信圏内エリアで使用したチャネルを使用してもよい。
【0050】
[第1実施形態の変形例1]
無線通信装置10は、次の通信圏内エリアに近づいたタイミングで、間もなく通信圏内エリアに入ることを示すメッセージを表示部18に表示してもよい。具体的には、ステップS36およびステップS38において、制御部24は、さらに表示部18を制御して、「10秒後(9時50分30秒)に通信圏内に入る見込みです。通信したい場合は準備してください」といったメッセージを表示する。制御部24は、位置情報特定部(位置情報検出部)20によって特定(検出)された位置情報および移動情報と、エリア情報22aとをもとに、通信圏内エリアに突入する時刻を算出し、現在時刻との差分値を算出し、メッセージに表示する。これを見たユーザは、予め通信相手を選択する等の準備ができるため、通信圏内エリアを通過する限られた時間を有効につかって通信を行うことができる。また、この際に、ユーザの注意を引くために「ポーン」といった報知音を出力してもよい。図3に示す例では、地点P3においてスキャンモードに「直近のチャネルを使用」が設定されている場合には、地点P3においてこのようなメッセージが表示される。また、地点P7においてスキャンモードに「スキャン実行」が設定されている場合には、地点P7においてこのようなメッセージが表示される。
【0051】
また、「10秒後(9時50分30秒)に60秒間だけ通信圏内に入る見込みです。通信したい場合は準備してください」といったメッセージを表示してもよい。すなわち、制御部24は、位置情報特定部(位置情報検出部)20によって特定(検出)された位置情報および移動情報と、エリア情報22aとをもとに、次の通信圏内状態が持続する時間(予想継続時間T1)を算出し、それをメッセージに入れてもよい。このようなメッセージを表示することにより、ユーザはさらに適切に通信準備を行うことができる。すなわち、ユーザは通信圏内の持続時間に応じて、適切な通信種別(通信方法、通信手段)を選択することができる。例えば、通信圏内の持続時間が比較的長い場合には、新規にテキストを入力するテキストメッセージ送信を選択し、通信圏内の持続時間が比較的短い場合には、PTT通話を選択するといったように、適切な通信種別(通信方法)を選択できる。
【0052】
また、制御部24は、通信圏内の持続時間に応じて、適切な通信種別(通信方法)を提示してもよい。例えば、「次の通信圏内は20秒間だけの見込みなので、定型メッセージ通信を推奨します」といったメッセージを表示部18に表示してもよい。また、「現在の速度だと次の通信圏内は20秒間の見込みなので、通信したい場合は、移動速度を落とすことを推奨します」といったように、通信に必要な時間を確保するための移動速度に関する情報をメッセージに入れてもよい。またエリア情報22aに関連させて、詳細な道路情報や施設情報を記憶部22に記憶した上で、「現在の速度だと通信圏内は30秒しかありません。トンネル出口から300m先の左側にある駐車場に止めれば、余裕をもって通信できます」といったメッセージを表示してもよい。すなわち、通信を確実に実行するために適した移動情報(移動速度や経路情報)や停止情報をユーザに提示してもよい。
【0053】
[第1実施形態の変形例2]
制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに応じて通信部12を制御し、送信電力を変えてもよい。例えば、通信制御部36は、スキャンモードが「直近のチャネル使用」である場合に、通常よりも送信電力が大きくなるように、通信部12を制御する。これにより、直近で使用したチャネルが現在位置において最適なチャネルでない場合であっても、通信できる可能性が向上する。また、次の通信圏内の持続時間(通過の所要時間)に応じて、送信電力の大きさを調整してもよい。例えば、通信圏内の持続時間が短いほど、送信電力を大きく設定してもよい。これは、通信圏内エリアの持続時間が短い場合には、バッテリ消費を抑えるよりも、限られた時間内で確実に通信を行うこと(通信相手に確実に情報を伝達すること)を優先させるべき、という知見に基づく処理である。
【0054】
[第2実施形態]
図5を用いて、第2実施形態に係る通信制御処理について説明する。図5は、第2実施形態に係る無線通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。第2実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1に示す無線通信装置10と同一の構成なので説明を省略する。
【0055】
第1実施形態は、通信圏内エリアが継続する予想継続時間に基づいて、スキャン動作の有無を判定する。第2実施形態は、ある通信圏内エリアと次の通信圏内エリアとの間の距離、すなわち、ある通信圏内エリアと次の通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離に基づいて、スキャン動作の有無を判定する点で、第1実施形態と異なる。
【0056】
ステップS50からステップS56の処理は、それぞれ、図2に示すステップS10からステップS16の処理と同一なので、説明を省略する。
【0057】
制御部24(推定部34)は、直近の通信圏内エリアと、ステップS56で特定した通信圏内エリア(次の通信圏内エリア)との間の通信圏外エリアの距離D1を算出する(ステップS58)。推定部34は、直近の通信圏内エリアと、特定した通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離を記憶部22が記憶するエリア情報22aから取得することで算出する。すなわち、推定部34は、記憶部22が記憶するエリア情報22aを参照し、通信圏外エリアの距離D1を算出する。例えば、図3に示す例において、現在位置が地点P1と地点P2との間に位置していると判定された場合、次の通信圏内エリアはエリアCであると特定される。この場合、推定部34は、直近の通信圏内であるエリアAと、次の通信圏内であるエリアCとの間の距離(つまりエリアBの距離)が1000mであると算出する。
【0058】
制御部24(推定部34)は、通信圏外エリアの距離D1は第1閾値距離未満であるか否かを判定する(ステップS60)。具体的には、推定部34は、ステップS58で算出された距離D1を所定の第1閾値距離d1と比較する。なお、第1閾値距離d1の値は、例えば1500mであるが、任意に変更し得る。通信圏外エリアの距離は第1閾値距離未満でないと判定された場合(ステップS60;No)、ステップS62に進む。通信圏外エリアの距離は第1閾値距離未満であると判定された場合(ステップS60;Yes)、ステップS64に進む。
【0059】
ステップS60でNoと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモード(スキャン再開モード)に「スキャン実行」を設定する(ステップS62)。つまり、通信制御部36は、通信圏外エリアの距離D1が第1閾値距離d1以上の長い場合、スキャンモードに「スキャン実行」を設定する。これは、通信圏外エリアの距離D1が第1閾値距離d1以上の場合、直近の通信圏内エリアで使用可能であったチャネルが次の通信圏内エリアで使用できない可能性が高いためである。この場合、通信制御部36は、スキャン動作を実行することで、より確実に基地局の電波を受信することができる。そして、ステップS74に進む。
【0060】
ステップS60でYesと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに「直近のチャネル使用」を設定する(ステップS64)。通信制御部36は、通信圏外エリアの距離D1が第1閾値距離d1未満である場合、スキャンモードに「直近のチャネル使用」を設定する。これは、通信圏外エリアの距離D1が第1閾値距離d1よりも短い場合、直近の通信圏内エリア使用可能であったチャネルが次の通信圏内エリアで引き続き使用できる可能性が高いためである。この場合、通信制御部36は、次の通信圏内エリアにおいてスキャン動作を停止して、直近で使用していたチャネルを使用した方が、通信前に行うスキャン動作に要する時間を節約できるため、通信により多くの時間を使うことができる。すなわち通信制御部36は、過去に通過した直近の通信圏内エリアと次の通信圏内エリアとの通信圏外エリアの距離が所定値(第1閾値距離d1)未満であると判定した場合、次の通信圏内エリアにおいてはスキャン動作を行わずに前回の通信圏内エリアにおけるチャネル(通信周波数)を使用する。なお、通信圏外エリアの距離(幅)の代わりに、通信圏外エリアを通過すると予想される時間を用いて判定を行ってもよい。具体的には、図3に示す例において、通信制御部36は、無線通信装置10(ユーザ)がエリアAに位置していると推定された場合には、通信圏外エリアであるエリアBを通過する時間を算出し、その時間が所定時間未満である場合には、エリアCではスキャン動作は行わずに、エリアAで設定されたチャネルを使用してもよい。そして、ステップS74に進む。
【0061】
ステップS66は、図2に示すステップS30と同じである。また、ステップS68からステップS74までの処理は、それぞれ、図2に示すステップS34からステップS40までの処理と同一なので、説明を省略する。
【0062】
上述のとおり、第2実施形態では、直近の通信圏内エリアと、次の通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離が所定距離以上である場合にはスキャン動作を行う。第2実施形態は、直近の通信圏内エリアと、次の通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離が所定距離未満であると判定した場合には、スキャン動作を行わずに直近の通信圏内エリアにおいて使用(決定)した通信周波数を設定する。これにより、スキャン動作を必要最小限に抑えることができるため、バッテリ消費を抑制し、かつより早く通信を開始することができる。すなわち、第2実施形態によれば、限られた通信圏内エリアを有効に利用して、適切に通信を行うことができる。
【0063】
[第3実施形態]
図6を用いて、第3実施形態に係る通信制御処理について説明する。図6は、第3実施形態に係る無線通信装置の処理の流れを示すフローチャートである。第3実施形態に係る無線通信装置の構成は、図1に示す無線通信装置10と同一の構成なので説明を省略する。
【0064】
第3実施形態は、第1実施形態と、第2実施形態との組み合わせの処理により、スキャン動作(チャネル探索処理)を制御する処理を行う。
【0065】
ステップS80からステップS94の処理は、それぞれ、図2に示すステップS10からステップS24の処理と同一なので、説明を省略する。
【0066】
ステップS94でYesと判定された場合、制御部24は、直近の通信圏内エリアと、ステップS86で特定した通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離(幅)D1を算出する(ステップS96)。推定部34は、直近の通信圏内エリアと、特定した通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離を記憶部22が記憶するエリア情報22aから取得することで算出する。すなわち、第3実施形態では、通信圏内エリアの継続時間が第1閾値時間以上第2閾値時間未満であると判定された場合、さらに、通信圏内エリアと、特定した通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離(幅)を算出する。そして、ステップS98に進む。
【0067】
制御部24は、通信圏外エリアの距離は第1閾値距離d1未満であるか否かを判定する(ステップS98)。具体的には、推定部34は、ステップS96で算出された距離D1を所定の第1閾値距離d1と比較する。すなわち、第3実施形態では、通信圏内エリアの継続時間を予測した後、さらに通信圏外エリアの距離(幅)が第1閾値距離d1未満であるか否かを判定する。通信圏外エリアの距離D1が第1閾値距離d1未満であると判定された場合(ステップS98;Yes)、ステップS100に進む。通信圏外エリアの距離は第1閾値距離d1未満でないと判定された場合(ステップS98;No)、ステップS102に進む。
【0068】
ステップS98でYesと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに「直近のチャネル使用」を設定する(ステップS100)。すなわち、第3実施形態では、特定された通信圏内エリアの予想継続時間T1が第1閾値時間t1以上かつ第2閾値時間t2未満、かつ通信圏外エリアの距離(幅)D1が第1閾値距離d1未満の場合に、次の通信圏内エリア付近において、スキャン動作を行わずに、直近で使用していたチャネルを用いて通信を行うことを決定する。このような条件の場合、通信圏内の時間が限られており、かつ直近の通信圏内エリアで使用可能であったチャネルが次の通信圏内エリアで使用できる可能性が高いためである。この場合、通信制御部36は、その通信圏内エリアにおいてスキャン動作を停止して、直近で使用していたチャネルを使用した方が、通信前に行うスキャン動作に要する時間を節約できるため、通信により多くの時間を使うことができる。そして、ステップS114に進む。
【0069】
ステップS98でNoと判定された場合、制御部24(通信制御部36)は、スキャンモードに「スキャン実行」を設定する(ステップS102)。すなわち、第3実施形態では、特定された通信圏内エリアの予想継続時間が第2閾値以上である場合、または通信圏外エリアの距離(幅)が第1閾値距離d1よりも長い場合に、次の通信圏内エリア付近において、スキャン動作を開始する(再開する)ことを決定する。このような条件の場合、直近の通信圏内エリア使用可能であったチャネルが次の通信圏内エリアで引き続き使用できる可能性が低い、あるいはスキャン動作を実行する時間が十分にあるためである。この場合、通信制御部36は、スキャン動作を実行することで、より確実に基地局の電波を受信することができるので、より確実に通信を行うことができる。そして、ステップS114に進む。
【0070】
ステップS104からステップS114の処理は、それぞれ、図2に示すステップS30からステップS40の処理と同一なので、説明を省略する。
【0071】
上述のとおり、第3実施形態では、次の通信圏内エリアの継続時間が所定範囲内(第2閾値時間以上)である場合、または次の通信圏内エリアの継続時間が所定範囲内(第1閾値時間以上かつ第2閾値時間未満)であり、かつ直近の通信圏内エリアと次の通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離(幅)が所定距離(第1閾値距離)以上である場合にはスキャン動作を行う。一方、次の通信圏内エリアの継続時間が所定範囲内(第1閾値時間以上かつ第2閾値時間未満)であり、かつ直近の通信圏内エリアと、次の通信圏内エリアとの間の通信圏外エリアの距離(幅)が所定距離(第1閾値距離)未満であると判定した場合には、スキャン動作を行わずに直近の通信圏内エリアにおいて決定したチャネル(ここでは通信周波数)を設定する。これにより、スキャン動作、すなわち通信に使用するチャネルを探索(選定、選択)する処理を必要最小限に抑えることができるため、無線通信装置10のバッテリ消費を抑えるとともに、通信をより早く開始することができる。このため、無線通信装置10(ユーザ)が限られた通信圏内を通過する際の貴重なチャンスを有効に利用して通信ができる。また、直近で使用したチャネルが使用できる可能性が低い場合やスキャン動作を実行する時間が十分にある場合には、直近で使用したチャネルを使用せずに、スキャン動作を実行する。このため、直近で使用したチャネルを無理に使用して通信できない状態に陥ることを防止でき、バッテリ―や時間を無駄に消費することを低減できる。すなわち、第3実施形態によれば、限られた通信圏内エリアを有効に利用して、適切に通信を行うことができる。
【0072】
これまでの各実施形態では、通信圏内エリアと通信圏外エリアとがトンネルによって生じる例を用いて説明したが、本発明はこれに限られない。本発明において、通信圏外エリアは、山や建物などの陰となるエリアであってもよい。通信圏外エリアは基地局からの距離が所定値よりも遠いエリアとし、通信圏外エリアは基地局からの距離が所定値よりも近いエリアとしてもよい。
【0073】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本発明が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0074】
10 無線通信装置
12 通信部
14 GNSS受信部
16 操作部
18 表示部
20 位置情報特定部
22 記憶部
24 制御部
30 取得部
32 位置情報判定部
34 推定部
36 通信制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6