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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】停止指示システム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20240509BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020161128
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054118
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】野田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 将貴
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020155(JP,A)
【文献】特開平09-105156(JP,A)
【文献】特開2020-060032(JP,A)
【文献】特開2017-016477(JP,A)
【文献】特開2021-055256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/18
9/24-9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に近づく運搬車を停止させるための指示を行う停止指示システムであって、
前記作業機械に対する前記運搬車の距離を検出する距離検出部と、
前記運搬車の運転手が知覚可能な指示である停止指示を出力する停止指示出力部と、
前記運搬車とは異なる位置に設けられたコントローラと、
を備え、
前記コントローラには、前記距離検出部に検出された距離に関する閾値である停止指示判定閾値が設定され、
前記コントローラは、
前記距離検出部に検出された距離が前記停止指示判定閾値よりも大きいことを必要条件として、前記運搬車の状態が離反状態であると判定し、
前記距離検出部に検出された距離が前記停止指示判定閾値以下であることを必要条件として、前記運搬車の状態が接近状態であると判定し、
前記運搬車の状態が前記離反状態から前記接近状態に変化した場合、前記停止指示出力部に前記停止指示を出力させるとともに、前記停止指示出力部による新たな前記停止指示の出力を禁止する状態とし、
前記運搬車の状態が前記接近状態から前記離反状態に変化した場合、前記停止指示出力部による新たな前記停止指示の出力を許可する状態とする、
停止指示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の停止指示システムであって、
前記コントローラには、前記距離検出部が検出した距離の変化量に関する閾値である誤検出判定閾値が設定され、
前記コントローラは、前記距離検出部が検出した距離が所定時間内に前記誤検出判定閾値以上変化した場合、前記運搬車の状態が前記離反状態か前記接近状態かの判定結果であって前記所定時間前の判定結果を維持する、
停止指示システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の停止指示システムであって、
前記作業機械に対する前記運搬車の速度を検出する運搬車速度検出部を備え、
前記コントローラは、前記運搬車速度検出部に検出された速度の大きさに基づいて、前記停止指示判定閾値を変化させる、
停止指示システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の停止指示システムであって、
前記運搬車に対する前記作業機械の下部走行体の姿勢を検出する下部走行体姿勢検出部を備え、
前記コントローラは、前記下部走行体の寸法および形状の情報と、前記下部走行体姿勢検出部に検出された姿勢と、に基づいて前記停止指示判定閾値を変化させる、
停止指示システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の停止指示システムであって、
前記作業機械のアタッチメントの姿勢を検出するアタッチメント姿勢検出部を備え、
前記コントローラは、前記アタッチメントの寸法および形状の情報と、前記アタッチメント姿勢検出部に検出された姿勢と、に基づいて前記停止指示判定閾値を変化させる、
停止指示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に近づく運搬車を停止させるための指示を行う停止指示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1などに、運搬車を目標停止位置に自動的に停止させる技術が記載されている(同文献の図1などを参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-60032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同文献に記載の技術では、運搬車を停止させるためのコントローラを運搬車に設ける必要がある。そのため、コントローラが設けられていない運搬車を適切な位置に停止させることができない場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、運搬車を停止させるためのコントローラを運搬車に設けなくても、運搬車を適切な位置に停止させるための指示を行うことができる、停止指示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
停止指示システムは、作業機械に近づく運搬車を停止させるための指示を行うものである。停止指示システムは、距離検出部と、停止指示出力部と、コントローラと、を備える。前記距離検出部は、前記作業機械に対する前記運搬車の距離を検出する。前記停止指示出力部は、前記運搬車の運転手が知覚可能な指示である停止指示を出力する。前記コントローラには、前記距離検出部に検出された距離に関する閾値である停止指示判定閾値が設定される。前記コントローラは、前記距離検出部に検出された距離が前記停止指示判定閾値よりも大きいことを必要条件として、前記運搬車の状態が離反状態であると判定する。前記コントローラは、前記距離検出部に検出された距離が前記停止指示判定閾値以下であることを必要条件として、前記運搬車の状態が接近状態であると判定する。前記コントローラは、前記運搬車の状態が前記離反状態から前記接近状態に変化した場合、前記停止指示出力部に前記停止指示を出力させるとともに、前記停止指示出力部による新たな前記停止指示の出力を禁止する状態とする。前記コントローラは、前記運搬車の状態が前記接近状態から前記離反状態に変化した場合、前記停止指示出力部による新たな前記停止指示の出力を許可する状態とする。
【発明の効果】
【0007】
上記構成により、運搬車を停止させるためのコントローラを運搬車に設けなくても、運搬車を適切な位置に停止させるための指示を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】停止指示システム30などを示す図であり、運搬車10および作業機械20を横から見た図である。
図2図1に示す停止指示システム30のブロック図である。
図3図1に示す停止指示システム30の作動を示すフローチャートである。
図4図1に示す運搬車10の速度の大きさと図3に示す停止指示判定閾値T1との関係を示すグラフである。
図5図1に示す運搬車10および作業機械20を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図5を参照して、図1に示す運搬車10、作業機械20、および停止指示システム30について説明する。
【0010】
運搬車10は、荷台13を備える車両である。運搬車10は、作業機械20によって積み込まれた運搬物を輸送するための車両である。運搬車10は、ダンプカーでもよく、トラックでもよい。運搬車10は、運搬車本体部11と、荷台13と、を備える。運搬車本体部11は、走行可能であり、荷台13を支持する。運搬車本体部11は、運搬車運転室11aを備える。荷台13は、運搬物を収容する。荷台13に収容される運搬物は、例えば土砂でもよく、石でもよく、廃棄物などでもよい。荷台13は、運搬車運転室11aよりも、運搬車10における後側に配置される。以下では、運搬車運転室11aから荷台13に向かう側を「運搬車10後側」、荷台13から運搬車運転室11aに向かう側を「運搬車10前側」という。荷台13は、運搬車本体部11に対して可動でもよく、運搬車本体部11に固定されてもよい。
【0011】
作業機械20は、作業を行う機械であり、例えば建設作業を行う建設機械であり、例えばショベルなどである。作業機械20は、運搬物の捕捉(例えば土砂の掘削)、および、捕捉した運搬物の運搬車10への積み込み(例えば排土)を行う。作業機械20は、下部走行体21と、上部旋回体23と、アタッチメント25と、を備える。
【0012】
下部走行体21は、作業機械20を走行させる。下部走行体21は、例えば左右のクローラ21c・21c(図5参照)を備える。上部旋回体23は、下部走行体21に旋回可能に搭載される。
【0013】
アタッチメント25は、上部旋回体23に起伏可能に取り付けられる。アタッチメント25は、ブーム25aと、アーム25bと、先端アタッチメント25cと、を備える。ブーム25aは、上部旋回体23に起伏可能(上下に回転可能)に取り付けられる。アーム25bは、ブーム25aに回転可能(押し引き可能)に取り付けられる。先端アタッチメント25cは、アタッチメント25の先端部に設けられ、アーム25bに回転可能に取り付けられる。先端アタッチメント25cは、運搬物(例えば土砂など)をすくうバケットでもよく、運搬物を挟んで掴む装置(グラップルなど)でもよい。
【0014】
停止指示システム30は、作業機械20に近づく運搬車10を停止させるための停止指示を自動的に行うシステム(例えば自動ホーン吹鳴システム)である。図2に示すように、停止指示システム30は、距離検出部41と、運搬車速度検出部42と、下部走行体姿勢検出部43と、アタッチメント姿勢検出部44と、停止指示出力部47と、コントローラ50と、を備える。
【0015】
距離検出部41は、図1に示す作業機械20に対する運搬車10の距離を検出する。距離検出部41は、作業機械20に関連付けられた基準位置20aから、運搬車10の特定位置10aまでの距離を検出する。基準位置20aは、例えば上部旋回体23の位置から一意に決まる位置であり、例えばブーム25aの基端部(上部旋回体23側の端部)でもよく、下部走行体21に対する上部旋回体23の旋回の中心軸上の特定の点でもよい。運搬車10の特定位置10aは、例えば運搬車10のうち作業機械20から最も位置でもよい。特定位置10aは、荷台13の特定の位置でもよく、例えば荷台13の運搬車10後側の面(後あおり板)の特定の位置でもよく、荷台13の運搬車10前側の面(鳥居面)の特定の位置でもよい。距離検出部41が検出した、作業機械20に対する運搬車10の距離を、検出距離L1とする。
【0016】
この距離検出部41(位置検出部)は、作業機械20に対する運搬車10の三次元の位置情報を検出してもよく、運搬車10の三次元の形状情報を検出してもよい。この場合、距離検出部41は、距離の情報(奥行きの情報)を有する画像(距離画像)を取得する。距離検出部41は、三次元の情報と二次元の情報(画像)とに基づいて、運搬車10の三次元の位置および形状を検出してもよい。
【0017】
この距離検出部41は、運搬車10の一部のみの位置(三次元の位置情報)を検出してもよく、例えば運搬車10のうち荷台13のみの位置を検出してもよい。距離検出部41は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。距離検出部41は、作業機械20に搭載されてもよく、作業機械20の外部(例えば作業現場)に配置されてもよい。距離検出部41が作業機械20の外部に配置される場合は、距離検出部41が作業機械20のみに搭載された場合には検出できない位置(例えばアタッチメント25の陰になる部分など)を検出できる場合がある。また、距離検出部41が作業機械20の外部に配置される場合は、作業機械20が距離検出部41を備えていなくても、本実施形態の停止指示システム30を適用することができる。
【0018】
この距離検出部41は、非接触で距離を検出可能なセンサである。距離検出部41は、レーザー光を用いて三次元の情報を検出する装置を備えてもよく、例えばLiDAR(Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)を備えてもよく、TOF(Time Of Flight)センサを備えてもよい。距離検出部41は、電波を用いて三次元の情報を検出する装置(例えばミリ波レーダなど)を備えてもよい。距離検出部41は、ステレオカメラを備えてもよい。距離検出部41が三次元の情報と二次元の情報とに基づいて運搬車10の三次元の位置および形状を検出する場合などには、距離検出部41は、二次元の画像を検出可能なカメラを備えてもよい。
【0019】
運搬車速度検出部42(図2参照)は、運搬車10の速度を検出する。運搬車速度検出部42は、作業機械20に搭載されてもよく、作業機械20の外部に配置されてもよい(図2に示す下部走行体姿勢検出部43、アタッチメント姿勢検出部44、停止指示出力部47、およびコントローラ50も同様)。運搬車速度検出部42は、距離検出部41と兼用されてもよく、兼用されなくてもよい(図2に示す下部走行体姿勢検出部43、およびアタッチメント姿勢検出部44も同様)。例えば、運搬車速度検出部42は、図1に示す作業機械20から運搬車10までの単位時間当たりの距離の変化から、運搬車10の速度を検出(算出)してもよい。例えば、運搬車速度検出部42(図2参照)は、運搬車10の三次元の位置情報に基づいて、運搬車10の速度を算出してもよい。例えば、運搬車速度検出部42は、運搬車10に設けられた速度センサでもよい。
【0020】
下部走行体姿勢検出部43(図2参照)は、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢(例えば角度)を検出する。例えば、下部走行体姿勢検出部43(図2参照)は、上部旋回体23に対する運搬車10の姿勢と、下部走行体21に対する上部旋回体23の姿勢(旋回角度)と、に基づいて、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢を算出してもよい。例えば、下部走行体姿勢検出部43(図2参照)は、運搬車10および下部走行体21の距離画像(三次元の位置および形状の情報)に基づいて、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢を検出してもよい。
【0021】
アタッチメント姿勢検出部44(図2参照)は、アタッチメント25の姿勢を検出する。例えば、アタッチメント姿勢検出部44(図2参照)は、作業機械20に搭載された角度センサでもよい。この場合、アタッチメント姿勢検出部44(図2参照)は、上部旋回体23に対するブーム25aの角度と、ブーム25aに対するアーム25bの角度と、アーム25bに対する先端アタッチメント25cの角度と、を検出する。例えば、アタッチメント姿勢検出部44(図2参照)は、アタッチメント25の距離画像に基づいて、アタッチメント25の姿勢を検出してもよい。
【0022】
停止指示出力部47(図2参照)は、停止指示を出力する。この「停止指示」は、運搬車10の運搬車運転室11a内の運転手が知覚可能な指示であり、例えば音、光、および振動の少なくともいずれかの指示である。停止指示出力部47は、ホーン(例えば作業機械20に搭載されたホーンなど)でもよく、スピーカでもよく、ライトでもよく、表示装置(モニタなど)でもよい。
【0023】
コントローラ50は、信号の入出力、判定や算出などの演算、情報の記憶などを行うコンピュータである。コントローラ50は、距離検出部41に検出された検出距離L1と、検出距離L1に関する閾値である停止指示判定閾値T1と、を比較することで、運搬車10の状態が離反状態か接近状態かを判定する(図3に示すステップS11、ステップS21)。以下では、停止指示判定閾値T1については、図3に示すステップS11、ステップS21を参照して説明する。
【0024】
(離反状態)
運搬車10の状態が離反状態である場合は、例えば、作業機械20による運搬車10への運搬物の積込が不可能な状態、または積込に適していない状態である。コントローラ50は、検出距離L1が停止指示判定閾値T1よりも大きいこと(「L1>T1」ともいう)を必要条件として、「運搬車10の状態が離反状態である」と判定する(図3に示すステップS11でNOの場合を参照)。「L1>T1」であることは、少なくとも必要条件であり、十分条件でもよい。コントローラ50は、「L1>T1」とは異なる条件がさらに満たされた場合に、「運搬車10の状態が離反状態である」と判定してもよい(図3に示すステップS101参照)。「運搬車10の状態が離反状態である」とコントローラ50が判定する条件は、「L1>T1」であることを含む。
【0025】
(接近状態)
運搬車10の状態が接近状態である場合は、例えば、作業機械20による運搬車10への運搬物の積込に適した状態である。コントローラ50は、検出距離L1が停止指示判定閾値T1以下であること(「L1≦T1」ともいう)を必要条件として、「運搬車10の状態が接近状態である」と判定する(図3に示すステップS11でYESの場合を参照)。「L1≦T1」であることは、少なくとも必要条件であり、十分条件でもよい。コントローラ50は、「L1≦T1」とは異なる条件がさらに満たされた場合に、「運搬車10の状態が接近状態である」と判定してもよい(図3に示すステップS101参照)。「運搬車10の状態が接近状態である」とコントローラ50が判定する条件は、「L1≦T1」であることを含む。
【0026】
(停止指示システム30などの作動)
運搬車10、作業機械20、および停止指示システム30は、次のように作動するように構成される。これらの作動を、図3に示すフローチャートを参照して説明する。以下では、各ステップについては図3を参照して説明する。図3のステップS11~S13およびS21~S23を説明した後、ステップS101、S102、S201、およびS202について説明する。この例では、ステップS11の判定が行われるときに、図1に示す運搬車10が離反状態であり、運搬車10が作業機械20に向かって移動している場合について説明する。
【0027】
コントローラ50は、運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化したか否かを判定する(図3に示すステップS11)。具体的には、コントローラ50は、検出距離L1が、停止指示判定閾値T1よりも大きい値から停止指示判定閾値T1以下の値に変化したか否かを判定する。運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化した場合(図3に示すステップS11でYESの場合)、コントローラ50は、ステップS12(図3参照)の処理を行う。運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化していない場合(ステップS11でNOの場合)、フローはステップS101(図3参照)に戻る。
【0028】
運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化した場合(図3に示すステップS11でYESの場合)、コントローラ50は、停止指示出力部47(図2参照)に停止指示を出力させる。具体的には例えば、コントローラ50は、停止指示出力部47(図2参照)であるホーンを所定時間だけ鳴らす(吹鳴させる)。運搬車10の運転手は、停止指示を知覚し(例えばホーンの音を聞き)、運搬車10を停止させる。このとき、運搬車10が自動的に停止するのではなく、運転手が運搬車10を停止させる。そのため、運搬車10には、運搬車10を停止させるためのコントローラを設ける必要がない。
【0029】
運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化した場合(図3に示すステップS11でYESの場合)、コントローラ50は、停止指示出力部47(図2参照)による新たな停止指示の出力を禁止する状態とする(図3に示すステップS13)。「新たな停止指示」は、ステップS12(図3参照)での停止指示出力部47(図2参照)による停止指示が完了した後の、停止指示出力部47による新たな停止指示である。具体的には例えば、コントローラ50は、停止指示が完了したか否かを示す変数である停止指示完了フラグを「オン」に設定する。
【0030】
運搬車10が停止した状態で、作業機械20は、運搬車10への運搬物の積込作業を行う。運搬車10への運搬物の積込量が所定量になると、作業機械20は、積込作業を終了し、運搬車10は、作業機械20から離れるように走行する。
【0031】
運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化した後(図3に示すステップS11でYESとなった後)、コントローラ50は、運搬車10の状態が接近状態から離反状態に変化したか否かを判定する(図3に示すステップS21)。具体的には、コントローラ50は、検出距離L1が、停止指示判定閾値T1以下の値から停止指示判定閾値T1よりも大きい値に変化したか否かを判定する。運搬車10の状態が接近状態から離反状態に変化した場合(図3に示すステップS21でYESの場合)、コントローラ50は、ステップS23(図3参照)の処理を行う。運搬車10の状態が接近状態から離反状態に変化していない場合(図3に示すステップS21でNOの場合)、フローはステップS102(図3参照)に戻る。
【0032】
運搬車10の状態が接近状態から離反状態に変化した場合(図3に示すステップS21でYESの場合)、コントローラ50は、停止指示出力部47(図2参照)による新たな停止指示の出力を許可する状態とする(図3に示すステップS23)。具体的には例えば、コントローラ50は、停止指示完了フラグを「オフ」に設定する(リセットする、解除する)。よって、この後(図3に示すステップS23の後)、運搬車10が離反状態から接近状態になったときに、コントローラ50は、停止指示出力部47(図2参照)に停止指示を出力させることができる。
【0033】
(誤検出の判定)
距離検出部41に検出された検出距離L1が誤検出された値である場合が想定される。検出距離L1が誤検出された値である場合は、運搬車10の状態が離反状態か接近状態かを正確に判定することはできない。そこで、コントローラ50は、検出距離L1が誤検出された値か否かを判定する(図3に示すステップS101、S102)。この判定の詳細は次の通りである。コントローラ50には、検出距離L1の変化量に関する閾値である誤検出判定閾値T2が設定される(図3に示すステップS101、S102を参照(以下の誤検出判定閾値T2について同様))。誤検出判定閾値T2は、検出距離L1が誤検出された値か否かを判定するための閾値である。なお、図3では、誤検出判定閾値T2を「閾値T2」と記載した。
【0034】
図1に示す検出距離L1が所定時間τ内に誤検出判定閾値T2以上変化した場合(図3に示すステップS101またはS102でYESの場合)、コントローラ50は、所定時間τだけ前の離反状態か接近状態かの判定結果を維持する。この場合、コントローラ50は、誤検出された値であると考えられる検出距離L1の値を、離反状態か接近状態かの判定(図3に示すステップS11、S21)に用いない。例えば、所定時間τは、コントローラ50の1制御周期でもよく、コントローラ50の複数回分の制御周期でもよい。例えば、所定時間τは、距離検出部41からコントローラ50に入力される検出距離L1を、コントローラ50が更新する時間でもよい。
【0035】
検出距離L1が所定時間τ内に誤検出判定閾値T2以上変化しなかった場合(図3に示すステップS101またはS102でNOの場合)、コントローラ50は、ステップS11、S21(図3参照)の判定を行う。さらに詳しくは、図3に示すステップS101でNOの場合は、ステップS11に進み、ステップS102でNOの場合は、ステップS21に進む。この場合、図1に示すコントローラ50は、検出距離L1と停止指示判定閾値T1との比較に基づいて、離反状態か接近状態かの判定結果を変える場合がある。
【0036】
(停止指示判定閾値T1の算出)
コントローラ50は、停止指示判定閾値T1を様々な条件に基づいて算出(変更)してもよい。
【0037】
(運搬車10の速さに基づく停止指示判定閾値T1の算出)
停止指示出力部47(図2参照)が停止指示を出力した時(図3に示すステップS12参照)から、運搬車10の運転手が停止指示に反応して運搬車10が停止する時までに、タイムラグが生じる。停止指示が出力された時の運搬車10の速度が大きいほど、タイムラグが長くなり、運搬車10が適切な位置に停止しない場合が想定される。そこで、コントローラ50は、作業機械20に対する運搬車10の速度の大きさに基づいて、停止指示判定閾値T1を変化させる(停止指示を出力するタイミングを変える)。作業機械20に対する運搬車10の速度は、運搬車速度検出部42(図2参照)に検出される。コントローラ50は、運搬車10の速度がより大きい場合に、より早いタイミングで停止指示が出力されるように、停止指示判定閾値T1をより大きく設定する(図4参照)。コントローラ50は、運搬車10の速さに対して、停止指示判定閾値T1を、段階的に変えてもよく(図4参照)、連続的に変えてもよい。
【0038】
(作業機械20の姿勢に基づく停止指示判定閾値T1の算出)
作業機械20の姿勢によって、運搬車10が作業機械20にどこまで接近できるか(接触せずに接近できるか)が変わる。そこで、コントローラ50は、作業機械20の姿勢に応じて停止指示判定閾値T1を変化させる。
【0039】
(下部走行体21の姿勢に基づく停止指示判定閾値T1の算出)
コントローラ50は、下部走行体21の寸法および形状の情報と、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢(例えば角度)と、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させる。運搬車10に対する下部走行体21の姿勢は、下部走行体姿勢検出部43(図2参照)に検出される(検出の詳細は上記の通り)。下部走行体21の寸法および形状の情報(諸元情報)は、コントローラ50に設定される。下部走行体21の寸法および形状の情報は、通信によりコントローラ50に入力されてもよく、例えば作業機械20の製造時などにコントローラ50に記憶されてもよい。下部走行体21の寸法および形状の情報は、二次元画像や距離画像に基づいて算出されてもよい。この場合、画像や距離画像を取得するものは、距離検出部41でもよく、下部走行体姿勢検出部43(図2参照)でもよく、これらとは別のセンサでもよい。
【0040】
具体的には例えば、図5に示すように、上から見たときの、作業機械20の基準位置20aと、運搬車10の特定位置10aと、を結ぶ直線を直線A1とする。下部走行体21の中心軸を下部走行体中心軸21aとする。下部走行体中心軸21aは、クローラ21cが延びる方向に延びる直線であって、左右のクローラ21c・21cの中央を通る直線である。このとき、直線A1と下部走行体中心軸21aとがなす角度θによって、下部走行体21と運搬車10との距離が変わり、運搬車10が作業機械20にどこまで接近できるか(接触せずに接近できるか)が変わる。例えば、コントローラ50(図1参照)は、角度θが0°と90°との間の角度(45°など)の場合に比べ、角度θが0°や90°などの場合に、停止指示判定閾値T1を小さく設定する。例えば、下部走行体21の前後方向長さ(下部走行体中心軸21aが延びる方向の長さ)が、下部走行体21の幅方向長さ(左右のクローラ21c・21cが対向する方向の長さ)よりも長い場合がある。この場合は、コントローラ50(図1参照)は、角度θが0°の場合に比べ、角度θが90°である場合に、停止指示判定閾値T1を小さく設定する。なお、この停止指示判定閾値T1の設定方法は一例であり、停止指示判定閾値T1は様々に設定され得る(下記の設定方法の例も同様)。
【0041】
(アタッチメント25の姿勢に基づく停止指示判定閾値T1の算出)
図1に示すコントローラ50は、アタッチメント25の寸法および形状の情報と、アタッチメント25の姿勢と、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させる。アタッチメント25の姿勢は、アタッチメント姿勢検出部44(図2参照)に検出される(検出の詳細は上記の通り)。アタッチメント25の寸法および形状の情報は、下部走行体21の寸法および形状の情報と同様に、コントローラ50に設定される。コントローラ50は、さらに運搬車10の情報(例えば三次元の形状情報など)に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させてもよい。運搬車10の情報は、二次元画像や距離画像に基づいて算出されてもよい。この場合、画像や距離画像を取得するセンサは、距離検出部41でもよく、距離検出部41とは別のセンサでもよい。
【0042】
具体的には例えば、コントローラ50は、アタッチメント25(例えば先端アタッチメント25c)の地面からの高さと、運搬車10の荷台13の地面からの高さと、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させてもよい。例えば、コントローラ50は、荷台13の高さから決まる所定高さHよりも先端アタッチメント25cが上側にのみある場合は、先端アタッチメント25cが所定高さHよりも下側にある場合に比べ、停止指示判定閾値T1を小さく設定する。例えば、コントローラ50は、アタッチメント25の三次元の位置および形状の情報と、運搬車10の三次元の位置および形状と、を比較して、運搬車10が作業機械20との間に所定の間隔をあけて停止できるように、停止指示判定閾値T1を設定してもよい。
【0043】
(第1の発明の効果)
図1に示す停止指示システム30による効果は、次の通りである。停止指示システム30は、作業機械20に近づく運搬車10を停止させるための指示を行うものである。停止指示システム30は、距離検出部41と、停止指示出力部47(図2参照)と、コントローラ50と、を備える。距離検出部41は、作業機械20に対する運搬車10の距離を検出する。
【0044】
[構成1-1]停止指示出力部47(図2参照)は、運搬車10の運転手が知覚可能な指示である停止指示を出力する。
【0045】
[構成1-2]コントローラ50には、距離検出部41に検出された距離(検出距離L1)に関する閾値である停止指示判定閾値T1(図3に示すステップS11、S21参照)が設定される。コントローラ50は、距離検出部41に検出された距離(検出距離L1)が停止指示判定閾値T1よりも大きいことを必要条件として、運搬車10の状態が離反状態であると判定する。コントローラ50は、距離検出部41に検出された距離(検出距離L1)が停止指示判定閾値T1以下であることを必要条件として、運搬車10の状態が接近状態であると判定する。
【0046】
[構成1-3]コントローラ50は、運搬車10の状態が離反状態から接近状態に変化した場合、停止指示出力部47(図2参照)に停止指示を出力させるとともに、停止指示出力部47による新たな停止指示の出力を禁止する状態とする。
【0047】
[構成1-4]コントローラ50は、運搬車10の状態が接近状態から離反状態に変化した場合、停止指示出力部47(図2参照)による新たな停止指示の出力を許可する状態とする。
【0048】
上記[構成1-1]の停止指示(図3に示すステップS12参照)は、運搬車10の運転手が知覚可能な指示である。よって、運転手に停止指示を知覚させることで、運転手に運搬車10を停止させることができる。よって、運搬車10には、運搬車10を停止させるコントローラを設ける必要がない。
【0049】
上記[構成1-3]では、停止指示出力部47(図2参照)が停止指示を出力した後、停止指示出力部47による新たな停止指示の出力が禁止される(図3に示すステップS13参照)。一方、上記[構成1-4]では、運搬車10の状態が接近状態から離反状態に変化した場合、停止指示出力部47による新たな停止指示の出力が許可される(図3に示すステップS23参照)。よって、新たな停止指示の出力が許可された後、運搬車10が離反状態から接近状態に変化したときに、停止指示出力部47(図2参照)に新たに停止指示を出力させることができる(上記[構成1-2]および[構成1-3])。したがって、運搬車10を停止させるためのコントローラを運搬車10に設けなくても、運搬車10を適切な位置に停止させるための指示を行うことができる。
【0050】
(第2の発明の効果)
[構成2]コントローラ50には、距離検出部41が検出した距離(検出距離L1)の変化量に関する閾値である誤検出判定閾値T2(図3に示すステップS101、S102参照)が設定される。コントローラ50は、距離検出部41が検出した距離(検出距離L1)が所定時間τ内に誤検出判定閾値T2以上変化した場合、運搬車10の状態が離反状態か接近状態かの判定結果であって所定時間τ前の判定結果を維持する。
【0051】
上記[構成2]では、所定時間τ内に誤検出判定閾値T2以上変化したときの検出距離L1は、運搬車10の状態の判定に用いられない(図3に示すステップS101、S102でYESの場合を参照)。よって、誤検出判定閾値T2を適切に設定した場合、誤検出された値の検出距離L1を、運搬車10の状態の判定に用いないようにできる。よって、運搬車10の状態を適切に判定することができる。
【0052】
(第3の発明の効果)
[構成3]停止指示システム30は、作業機械20に対する運搬車10の速度を検出する運搬車速度検出部42(図2参照)を備える。コントローラ50は、運搬車速度検出部42に検出された速度の大きさに基づいて、停止指示判定閾値T1を変化させる(図4参照)。
【0053】
上記[構成3]により、次の効果が得られる。停止指示出力部47(図2参照)が停止指示を出力してから、運搬車10の運転手が停止指示を知覚し、運搬車10が実際に停止するまでに、タイムラグが生じる。このタイムラグは、停止指示出力部47(図2参照)が停止指示を出力したときの運搬車10の速度の大きさによって変わる。そこで、上記[構成3]では、コントローラ50は、運搬車速度検出部42(図2参照)に検出された速度の大きさに基づいて、停止指示判定閾値T1を変化させる(図4参照)。よって、運搬車10を適切な位置に停止させるように、停止指示を行うことができる。
【0054】
(第4の発明の効果)
[構成4]停止指示システム30は、運搬車10に対する、作業機械20の下部走行体21の姿勢を検出する下部走行体姿勢検出部43(図2参照)を備える。コントローラ50は、下部走行体21の寸法および形状の情報と、下部走行体姿勢検出部43(図2参照)に検出された姿勢と、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させる。
【0055】
上記[構成4]により、次の効果が得られる。下部走行体21の寸法および形状、ならびに、運搬車10に対する下部走行体21の姿勢(例えば角度)によって、運搬車10が作業機械20に接触せずにどこまで接近できるかが変わる(図5参照)。そのため、運搬車10が作業機械20にどこまで接近したときに、停止指示出力部47(図2参照)に停止指示を出力させるべきかが変わる。そこで、上記[構成4]では、コントローラ50は、下部走行体21の寸法および形状の情報と、下部走行体姿勢検出部43(図2参照)に検出された姿勢と、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させる。よって、運搬車10を適切な位置に停止させるように、停止指示を行うことができる。
【0056】
(第5の発明の効果)
[構成5]停止指示システム30は、作業機械20のアタッチメント25の姿勢を検出するアタッチメント姿勢検出部44(図2参照)を備える。コントローラ50は、アタッチメント25の寸法および形状の情報と、アタッチメント姿勢検出部44に検出された姿勢と、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させる。
【0057】
上記[構成5]により、次の効果が得られる。アタッチメント25の寸法および形状、ならびに、アタッチメント25の姿勢によって、運搬車10が作業機械20に接触せずにどこまで接近できるかが変わる。そのため、運搬車10が作業機械20にどこまで接近したときに、停止指示出力部47(図2参照)に停止指示を出力させるべきかが変わる。そこで、上記[構成5]では、コントローラ50は、アタッチメント25の寸法および形状の情報と、アタッチメント姿勢検出部44(図2参照)に検出された姿勢と、に基づいて停止指示判定閾値T1を変化させる。よって、運搬車10を適切な位置に停止させるように、停止指示を行うことができる。
【0058】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、上記実施形態の各構成要素の配置、形状、接続などが変更されてもよい。例えば、図3に示すフローチャートのステップの順序が変更されてもよく、ステップの一部が行われなくてもよい。例えば、構成要素の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、互いに異なる複数の部分として説明したものが、一つの部分とされてもよい。例えば、一つの部分として説明したものが、互いに異なる複数の部分に分けて設けられてもよい。例えば、図2に示すコントローラ50は、1つの装置でもよく、複数の装置でもよい。例えば、誤検出判定閾値T2や所定高さH(図1参照)などの閾値や範囲などは、一定でもよく、手動操作により変えられてもよく、何らかの条件に応じて自動的に変えられてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 運搬車
20 作業機械
25 アタッチメント
30 停止指示システム
41 距離検出部
42 運搬車速度検出部
43 下部走行体姿勢検出部
44 アタッチメント姿勢検出部
47 停止指示出力部
50 コントローラ
T1 停止指示判定閾値
T2 誤検出判定閾値
図1
図2
図3
図4
図5