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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】作業車両の制動装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/18 20060101AFI20240509BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240509BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20240509BHJP
   B62D 49/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60T17/18
B60T17/22 C
B60T13/74 H
B62D49/00 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020162657
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022055202
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003834
【氏名又は名称】弁理士法人新大阪国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(74)【代理人】
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 智志
(72)【発明者】
【氏名】塚本 清宏
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-202613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/18
B60T 17/22
B60T 13/74
B62D 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(321)の駆動力で前輪(301)と後輪(302)を駆動し、油圧ブレーキシリンダ(311)でブレーキ装置(312)を作動して走行速度を制御する作業車両において、油圧ブレーキシリンダ(311)を用いずにブレーキ装置(312)を作動する電動シリンダ(3)を設け、緊急時に電動シリンダ(3)でブレーキ装置(312)を作動させ
ブレーキ装置(312)にリンクで連結するリンクアーム(11)を設け、このリンクアーム(11)とパーキングレバー(4)をリジッド連結すると共に、電動シリンダ(3)はリンクアーム(11)に融通連結してなる、作業車両。
【請求項2】
入力としてのブレーキペダル(310)から油圧ブレーキシリンダ(311)を介して出力としてのブレーキ装置(312)に至る伝達系とは全く別に、入力としてのパーキングレバー(4)を出力としてのブレーキ装置(312)に連結する伝達系において、パーキングレバー(4)に対して並列とされる入力としての電動シリンダ(3)を設けて出力としてのブレーキ装置(312)に連結するものである、請求項1記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業機等の作業機を装着する作業車両の制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両として、特開2019-41619号公報に記載の耕耘作業車両がある。この耕耘作業車両は、予定走行経路を自動操縦で走行させるようにしたもので、走行速度を自動で制御しながら走行し、走行速度が速くならないように油圧で作動する油圧ブレーキで制動している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-41619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の耕耘作業車両は、エンジンが駆動する油圧ポンプで発生する圧油を用いて油圧ブレーキを作動して走行速度を抑制しているために、エンジンが何らかの原因で停止すると油圧ブレーキが作動せず、走行速度を抑制出来ないために、走行中に突然エンジンが停止すると惰性で走行して危険な状態となる。
【0005】
本発明は、油圧ブレーキを使用して自動走行する作業車両において、エンジンが突然停止しても安全に停止できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
【0007】
第1の本発明は、
エンジン(321)の駆動力で前輪(301)と後輪(302)を駆動し、油圧ブレーキシリンダ(311)でブレーキ装置(312)を作動して走行速度を制御する作業車両において、油圧ブレーキシリンダ(311)を用いずにブレーキ装置(312)を作動する電動シリンダ(3)を設け、緊急時に電動シリンダ(3)でブレーキ装置(312)を作動させ
ブレーキ装置(312)にリンクで連結するリンクアーム(11)を設け、このリンクアーム(11)とパーキングレバー(4)をリジッド連結すると共に、電動シリンダ(3)はリンクアーム(11)に融通連結してなる、作業車両である。
第2の本発明は、
入力としてのブレーキペダル(310)から油圧ブレーキシリンダ(311)を介して出力としてのブレーキ装置(312)に至る伝達系とは全く別に、入力としてのパーキングレバー(4)を出力としてのブレーキ装置(312)に連結する伝達系において、パーキングレバー(4)に対して並列とされる入力としての電動シリンダ(3)を設けて出力としてのブレーキ装置(312)に連結するものである、第1の本発明の作業車両ある。
本発明に関連する第1の発明は、エンジン321の駆動力で前輪301と後輪302を駆動し、油圧ブレーキシリンダ311でブレーキ装置312を作動して走行速度を制御する作業車両において、油圧ブレーキシリンダ311を迂回してブレーキ装置312を作動する電動シリンダ3を設け、緊急時に電動シリンダ3でブレーキ装置312を作動することを特徴とする作業車両とする。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、走行車体10に設けた搭乗フロア5上に電動シリンダ3を設けたことを特徴とする本発明に関連する第1の発明の作業車両とする。
【0009】
本発明に関連する第3の発明は、搭乗フロア5上に設けるパーキングレバー4をブレーキ装置312にメカ連結し、電動シリンダ3はパーキングレバー4に融通連結したことを特徴とする本発明に関連する第2の発明の作業車両とする。
【0010】
本発明に関連する第4の発明は、ブレーキ装置312にリンクで連結するリンクアーム11を設け、このリンクアーム11とパーキングレバー4をリジッド連結すると共に電動シリンダ3は融通連結してなる本発明に関連する第1の発明の作業車両とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、油圧ブレーキシリンダ311を介さず電動シリンダ3でブレーキ装置312を作動させて走行を停止させられるので、突然のエンジントラブルでも安全に走行を停止できる。さらに、ブレーキ装置312にリンクで連結するリンクアーム11をパーキングレバー4で直接操作してブレーキ装置312を制動作用させることが出来、電動シリンダ3はパーキングレバー4の操作位置に関係なく、融通範囲を越えて動作してブレーキ装置312を制動させることが出来る。
本発明に関連する第1の発明で、この作業車はエンジン321の駆動力で前輪301,301と後輪302,302を駆動して走行し、油圧ブレーキシリンダ311でブレーキ装置312を作動して走行速度を制御しているが、エンジン321が停止すると油圧が発生せず油圧ブレーキシリンダ311を使った制動が出来なくなる。しかし、その際には油圧ブレーキシリンダ311を介さず電動シリンダ3でブレーキ装置312を作動させて走行を停止させられるので、突然のエンジントラブルでも安全に走行を停止できる。
【0012】
本発明に関連する第2の発明で、本発明に関連する第1の発明の効果に加えて、電動シリンダ3を搭乗フロア5上に設けることで、搭乗フロア5の下側に生じる泥水に電動シリンダ3が晒されることが無く、故障が生じない。
【0013】
本発明に関連する第3の発明で、作業車両に搭乗した操縦者は、パーキングレバー4を操作すると融通連結した電動シリンダ3に作用することなく、メカ連結したブレーキ装置312を作動させて走行を停止出来き、自動的に電動シリンダ3が融通部を越えてパーキングレバー4に作用して、ブレーキ装置312を制動して走行を停止できる。
【0014】
本発明に関連する第4の発明で、ブレーキ装置312にリンクで連結するリンクアーム11をパーキングレバー4で直接操作してブレーキ装置312を制動作用させることが出来、電動シリンダ3はパーキングレバー4の操作位置に関係なく、融通範囲を越えて動作してブレーキ装置312を制動させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係るトラクタの概略側面図である。
図2】同トラクタの走行車体の説明図である。
図3】同トラクタの走行車体の動力伝達経路を示す図である。
図4】同トラクタの制御系を示すブロック図である。
図5】同トラクタのパーキングレバーとブレーキ装置との連結機構の側面図である。
図6】同トラクタの別実施例のパーキングレバー拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る作業車両の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る作業車両であるトラクタ1の構成について図1を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るトラクタ1の概略側面図である。
【0019】
トラクタ1は、走行車体10と、車両制御部100と、通信ユニット110とを備える。トラクタ1は、作業者が有する端末装置2、例えば、リモコンや、携帯通信端末から通信ユニット110によって信号を受信し、自動走行し、作業可能なトラクタである。すなわち、トラクタ1は、遠隔操作可能なトラクタである。
【0020】
走行車体10は、図示しないステアリングハンドルや操作ペダルおよび各種計器類が設けられた操縦部を備えるとともに、図示しない耕耘作業機を後部に連結可能に構成される。走行車体10の天井部には、複数の航法衛星60から送信される電波を受信するDGPS(Differential Global Positioning System)アンテナ6が設けられる。なお、走行車体10には、耕耘作業機以外の作業装置を連結することができる。
【0021】
走行車体10について図2および図3を参照して説明する。図2は、走行車体10の説明図である。図3は、走行車体10の動力伝達経路を示す図である。
【0022】
走行車体10は、図2および図3に示すような動力伝達機構をはじめとする各種機構を備える。すなわち、図2に示すように、走行車体10は、左右側それぞれに、左右の前車軸406L,406Rに取付けられた前輪301L,301Rと、左右の後車軸405L,405Rに取付られた左右の後輪302L,302Rとを備える。なお、以下では、符号にLを付して左側を、Rを付して右側を示すことにするが、左右を区別する必要が無い場合は、例えば、前輪301、後輪302などのように記す場合がある。
【0023】
走行車体10の前部には、動力源となるエンジン321が搭載されており、エンジン321から動力伝達機構を介して前輪301や後輪302へ動力が伝達される。なお、本実施形態に係るトラクタ1は、4WDクラッチ324を備えており、この4WDクラッチ324の切換えによって、後輪302のみ駆動する2WD方式と、前輪301および後輪302が共に駆動する4WD方式とに切換え自在に構成されている。
【0024】
後輪302への動力伝達機構は、エンジン321の後段に、前後進クラッチ322を介して主変速部323が配設され、さらにその後段に副変速部325が配設され、その後段には後輪差動歯車装置326が配設される。そして、この後輪差動歯車装置326と後輪302とを連結する後車軸405の基部には、それぞれブレーキ装置312を設けている。
【0025】
また、副変速部325の後段に設けられたアイドルギヤを介して変速軸404へ入力され、4WDクラッチ324、前輪差動歯車装置320を介して前輪301への動力伝達がなされる。
【0026】
本実施形態に係るトラクタ1は、自動走行ができるように、車両制御部100により制御される自動走行ユニット160(図4参照)を備えている。そして、車両制御部100には、前輪301の操舵角を検出する操舵角検出センサ304が接続されており、自動走行時は、検出された実際の前輪301の操舵角をフィードバックしながら車両制御部100がステアリングシリンダ303を制御して操舵するようにしている。
【0027】
後輪302に設けたブレーキ装置312は、機体に設けたブレーキペダル310を操縦者が踏み込むことで、ブレーキシリンダ311が油圧により作用して機能する。すなわち、左後車軸405Lの基部に設けた左ブレーキ装置312Lを左ブレーキシリンダ311Lに接続するとともに、右後車軸405Rの基部に設けた右ブレーキ装置312Rを右ブレーキシリンダ311Rに接続する。
【0028】
図示するように、左右のブレーキシリンダ311L,311Rは、車両制御部100に接続した左右のブレーキソレノイド330L,330Rと接続している。そのため、車両制御部100に所定のブレーキ信号が入力されると、車両制御部100は、ブレーキソレノイド330を駆動して、左右のブレーキ装置312L,312Rのいずれか一方または両方を作動させることができる。なお、ブレーキソレノイド330は、例えば、油圧ポンプ341、リリーフバルブ340などとともに油圧回路を構成する。
【0029】
図5は、トラクタ1の操縦者が搭乗する搭乗フロア5に設けるパーキングレバー4とブレーキ装置312の連動機構を示す側面図で、搭乗フロア5に取り付けるレバーブロック(登録商標)14にラチェット機構で取り付けたパーキングレバー4のレバーアーム4aと走行車体10の中継ブラケット17に枢支したリンクアーム11を第一リンク12で枢支連結し、搭乗フロア5の下に設けるシリンダブラケット13に枢支連結した電動シリンダ3のロッド側をリンクアーム11のピン15aに連結具15の長孔で連結している。
【0030】
さらに、リンクアーム11は第二リンク18でブレーキ装置312のブレーキアーム軸19に連結している。
【0031】
従って、パーキングレバー4を引き上げると、第一リンク12からリンクアーム11と第二リンク18を介してブレーキアーム軸19が引かれ、ブレーキ装置312が制動されて後輪302が制動される。この時、電動シリンダ3はリンクアーム11に連結具15の長孔で融通連結されているために、伸ばされることが無く抵抗にならない。
【0032】
しかし、パーキングレバー4が下げられた状態で電動シリンダ3が伸びると連結具15の長孔がピン16に係合してリンクアーム11が回動されて第二リンク18でブレーキ装置312のブレーキアーム軸19を押してブレーキ装置312が制動されて後輪302が制動される。
【0033】
図6は、電動シリンダ3の別取付実施例で、レバーブロック14の後部で搭乗フロア5の傾斜取付面5aに電動シリンダ3を取り付け、レバーブロック14のレバーアーム4aの取付ピン20に電動シリンダ3のロッド側の連結具15を長孔で融通連結した構成で、レバーブロック14のレバーアーム4aを前実施例と同様に第一リンク12とリンクアーム11と第二リンク18でブレーキ装置312のブレーキアーム軸19に連結している。
【0034】
従って、パーキングレバー4での手動ブレーキ操作時には電動シリンダ3が邪魔になることなく、電動シリンダ3が伸びてブレーキ作動する場合は、パーキングレバー4を押し上げてブレーキ作用位置に回動するようになる。
【0035】
電動シリンダ3は、エンジン321の停止と同時或いは停止ボタンを押すことで作動して走行を停止するようにする。
【0036】
なお、ブレーキ装置312の手動操作や電動シリンダ3での操作時には、右ブレーキシリンダ311Rと左ブレーキシリンダ311Lでの連動が断たれる機構としている。
【0037】
次に、図3を参照しながら、トラクタ1のエンジン321から前輪301、後輪302までの動力の伝達経路について説明する。図示するように、エンジン321の出力軸は、前・後進を切り換える前後進クラッチ322を介して動力伝達軸401と連結している。したがって、トラクタ1は、前後進クラッチ322を切換えることによって、動力伝達軸401を選択的に正逆転することができる。
【0038】
また、動力伝達軸401は、主変速部323、副変速部325に連結されている。すなわち、主変速部323および副変速部325は、エンジン321から後輪302(前輪301および後輪302)へ動力を伝達する動力伝達経路上に配置される。
【0039】
主変速部323には、第1クラッチギヤ361と第3クラッチギヤ363とを有する一速/三速切換用クラッチ402と、第2クラッチギヤ362と第4クラッチギヤ364とを有する二速/四速切換用クラッチ403とが装着され、エンジン321からの動力を1速~4速に変速して出力可能としている。
【0040】
さらに、主変速部323は、高低クラッチ365を装着しており、1速~4速を、それぞれさらに高速あるいは低速に切換え可能としている。
【0041】
主変速部323の動力が入力される副変速部325には、図示しない副変速レバーで操作される二連の副変速クラッチの第1のシフター381と第2のシフター382と複数の伝達ギヤとを備える。第1のシフター381と第2のシフター382とがいずれの伝達ギヤと係合するかにより、超低速、低速、中速および高速とに変速することができる。そして、副変速部325の出力軸の回転が、後輪差動歯車装置326から車軸および後輪遊星歯車機構391を介して後輪302へ伝動される。
【0042】
また、主変速部323から副変速部325へ入力される動力が、アイドルギヤを介して4WDクラッチ324を装備した変速軸404へ入力されることにより、前輪301への駆動力伝動がなされる。4WDクラッチ324の作用により、通常の前輪駆動から加速された前輪駆動への切り換えも可能となっている。なお、4WDクラッチ324を中立にすると、前輪301の駆動が断たれて後輪302のみの駆動、すなわち2WDとなる。
【0043】
こうして、4WDクラッチ324の後段部に伝達された動力は、前輪差動歯車装置320と前輪遊星歯車機構390とを介して前輪301へと伝達される。
【0044】
また、走行車体10は、主変速部323や副変速部325などの変速機構を介さずに、エンジン321から耕耘作業機に動力を伝達する作業用動力伝達機構360を備える。具体的には、走行車体10は、PTOクラッチ366を備えており、PTOクラッチ366を繋ぐことで、主変速部323などを介さずに、エンジン321からPTO軸392へ動力を伝達することができる。
【0045】
PTO軸392は、前段側にPTO変速第1シフター371およびPTO変速第2シフター372が設けられており、これらが操作されることにより、低速から高速でPTO軸392を順回転させることができるとともに、逆転させることも可能となっている。
【0046】
次に、本実施形態に係るトラクタ1の制御系について図4を参照し説明する。図4は、トラクタの制御系を示すブロック図である。
【0047】
本実施形態に係るトラクタ1は、電子制御によって各部を制御することが可能であり、制御系の中核をなす車両制御部100を備える。車両制御部100は、端末装置2からの指令信号を通信ユニット110を介して受信することにより、自動走行ユニット160を制御して自動走行することができる。
【0048】
トラクタ1が備える車両制御部100は、各種プログラムや各種の必要データ類が格納された、ハードディスクやROM、RAMなどで構成される記憶装置140と、CPU等を有する処理部をはじめROM,RAMなどで構成される複数のコントローラ120,130,150を備える。
【0049】
コントローラ120,130,150としては、例えば、走行系を制御する走行系コントローラ120、エンジン321を制御するエンジンコントローラ130、機体後部に連結する耕耘作業機を制御する作業機系コントローラ150などがある。
【0050】
走行系コントローラ120、エンジンコントローラ130、および作業機系コントローラ150は、これらについても、いずれもCPUなどを有する処理部や、制御プログラムが格納されるROM、作業領域用のRAMなどのストレージ部、さらには入出力部が設けられており、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能となっている。なお、ストレージ部のROMには、各コントローラ120,130,150の制御対象に応じた制御プログラムなどがそれぞれ格納される。
【0051】
また、車両制御部100には、非常停止スイッチ210、ステアリング駆動用モータ(不図示)や図2および図3に示した伝動機構を含む走行駆動装置220と、例えば第1障害物検出センサ231aや第2障害物検出センサ231bや、操舵角検出センサ304などを含む走行系各種センサ230が接続される。さらに、車両制御部100には、DGPSアンテナ6(図1参照)を含むナビシステム290や方位センサ295、車速センサ296などが接続される。
【0052】
第1障害物検出センサ231aは、例えば、超音波センサであり、走行車体10の進行方向、例えば、走行車体10の前方または側方の第1所定範囲内にある障害物を検出するセンサである。第2障害物検出センサ231bは、例えば、赤外線センサであり、走行車体10の進行方向、例えば、走行車体10の前方または側方の第2所定範囲内にある障害物を検出するセンサである。第1所定範囲および第2所定範囲は、予め設定された範囲であり、第2所定範囲は、第1所定範囲よりも狭い範囲である。なお、第1障害物検出センサ231aおよび第2障害物検出センサ231bは、障害物検出のための画像処理判定プログラム用の映像を撮影するカメラやその他のセンサであってもよい。
【0053】
方位センサ295は、走行車体10の進行方向の方位を検出する。車速センサ296は、走行車体10の速度を検出する。
【0054】
また車両制御部100には、作業機昇降装置(不図示)などを含む作業機昇降駆動装置240、PTOクラッチ366を入り切り操作するPTO入・切操作スイッチ250、耕耘作業機を制御するために必要な作業機系・PTO駆動用各種センサ260、また、エンジン駆動装置270やエンジン駆動用各種センサ280などが接続される。
【0055】
こうして、トラクタ1は、作業者が機体に搭乗して走行しながら所定の作業を実行するほか、端末装置2を操作して自動走行ユニット160の駆動を車両制御部100により制御することで、自動走行させながら所定の作業を実行させることができる。
【0056】
トラクタ1を自動走行させる場合、例えば、作業内容に応じた走行予定経路を予め圃場毎に定めておき、これをデータ化して記憶装置140に格納しておく。走行予定経路は、圃場の形状、大きさ、圃場内に形成された畝の幅、長さおよび本数、そして作物の種類などに応じて設定される。
【0057】
車両制御部100は、ナビシステム290からの信号に基づいて走行状態である走行車体10の現在位置を検出し、検出した現在位置に基づいて実際の走行経路を算出する。そして、車両制御部100は、実際の走行経路が走行予定経路に一致するようにステアリングシリンダ303およびエンジン321を制御する。
【0058】
なお、トラクタ1の自動走行については、本実施形態のように端末装置2を介して車両制御部100により実行させる他、適宜設定することができる。
【0059】
次に、トラクタ1を遠隔操作可能な端末装置2の構成について説明する。図4に示すように、端末装置2は、トラクタ1の通信ユニット110と無線通信が可能である。また、端末装置2は、操作部として、トラクタ1を走行させるための前進「入・切」スイッチ21および後進「入・切」スイッチ22と、エンジン321の回転数を切換えるENG回転数スイッチ24と、トラクタ1を緊急停止させることが可能な車両停止スイッチ26とを備える。
【0060】
また、端末装置2は、耕耘作業機を操作するためのPTO「入・切」スイッチ23と、作業機「上・下」スイッチ25とを備える。
【0061】
作業者は、端末装置2を操作することにより、トラクタ1を所定の速度で前進・後進させるとともに、停止させたりすることができるほか、耕耘作業機を上昇、下降させて所定の動力で作業させることができる。
【符号の説明】
【0062】
3 電動シリンダ
4 パーキングレバー
5 搭乗フロア
10走行車体
11 リンクアーム
301 前輪
302 後輪
311 油圧ブレーキシリンダ
312 ブレーキ装置
321 エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6