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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】口腔内測定装置
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20240509BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240509BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20240509BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20240509BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61C19/04 Z
G01B11/24 K
G01B11/25 H
A61B1/24
A61B1/00 551
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020169153
(22)【出願日】2020-10-06
(65)【公開番号】P2022061258
(43)【公開日】2022-04-18
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義弘
(72)【発明者】
【氏名】長岡 敦
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-148860(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139110(WO,A1)
【文献】実開昭58-101604(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0015489(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/04
G01B 11/24
G01B 11/25
A61B 1/24
A61B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投光光を照射する投光系と、
前記投光光を測定対象物で反射させた撮像光を受光する撮像系と、
前記投光系と前記撮像系との間の光路上に配置され、前記投光系から照射された前記投光光を前記測定対象物に導くと共に、前記測定対象物で前記投光光を反射させた前記撮像光を前記撮像系に導くプリズムとを備え、
前記プリズムは、
前記投光光の入射面と前記撮像光の射出面とを同一の光透過面とし、かつ前記投光光の射出面と前記撮像光の入射面とを前記測定対象物に対向して配置される同一の撮像面としており、
前記撮像系の光軸は、前記プリズムにおける前記光透過面の法線および前記撮像面の法線に対して平行であり、
前記投光系は、前記投光光に投影パターンを生成するための表示素子を有し、
前記投光光の光路と前記撮像光の光路とは、共通の対称面に沿って設けられ、
前記表示素子は、前記対称面内において明るさが正弦波的に変化し、前記対称面と垂直方向に明るさが一定な前記投影パターンを生成し、
前記投光系の光軸に沿った前記投光光の中心線と、前記撮像系の光軸に沿った前記撮像光の中心線とは、前記プリズムにおける前記撮像面の外側で交わり、
前記撮像系は、撮像素子を備え、
前記対称面内において、前記投光光の中心線と前記撮像光の中心線とが前記プリズムにおける前記撮像面の外側で交わる点を通って前記撮像面に平行な直線上では、前記投光光において前記投影パターンが生成される範囲の方が、前記撮像光において前記撮像素子での撮像に用いられる範囲よりも広い
口腔内測定装置。
【請求項2】
前記投光系の光軸は、前記プリズムにおける前記光透過面の法線および前記撮像面の法線に対して傾きを有する
請求項1に記載の口腔内測定装置。
【請求項3】
前記投光系、前記プリズム、および前記撮像系を展開系で見た状態において、
前記投光系は前記投光系の光軸を回転対称軸とした軸対称であり、
前記撮像系と前記プリズムとを含む光学系は前記撮像系の光軸を回転対称軸とした軸対称である
請求項2に記載の口腔内測定装置。
【請求項4】
前記光透過面と前記撮像面とを含む前記プリズムの光学面は全て平面である
請求項1~3のうちの何れか1項に記載の口腔内測定装置。
【請求項5】
前記撮像系は、前記プリズム側から順に配置されたアパーチャーと撮像素子とを備え、
前記撮像面から前記プリズムに入射した前記撮像光は、前記撮像面に対して斜めに配置された前記プリズムの反射面において内部反射して前記撮像面に再入射し、少なくとも前記撮像面で全反射した後、前記光透過面から射出され、前記アパーチャーを通過した前記撮像光が前記撮像素子に入射される
請求項1~4のうちの何れか1項に記載の口腔内測定装置。
【請求項6】
前記光透過面から前記プリズムに入射した前記投光光は、少なくとも前記撮像面において全反射した後、前記撮像面に対して斜めに配置された前記プリズムの反射面で反射して前記撮像面に再入射し、前記撮像面から射出される
請求項4に記載の口腔内測定装置。
【請求項7】
前記撮像面に対して斜めに配置された前記プリズムの反射面に対して前記投光光が入射する点と前記撮像面との距離は、前記撮像面に対して斜めに配置された前記プリズムの反射面に対して前記撮像光が入射する点と前記撮像面との距離よりも小さい
請求項5に記載の口腔内測定装置。
【請求項8】
前記表示素子は、正弦波の周期が同一で位相が異なる4種類以上の前記投影パターンを生成する
請求項に記載の口腔内測定装置。
【請求項9】
前記表示素子は、周期が異なる2種類以上の前記投影パターンを生成する
請求項に記載の口腔内測定装置。
【請求項10】
前記投影パターンを構成する正弦波の空間周波数は、前記撮像系に設けられた撮像素子の撮像面において前記撮像素子の画素ピッチの逆数の1/4よりも小さい
請求項1~9のうちの何れか1項に記載の口腔内測定装置。
【請求項11】
前記投光系は、前記表示素子と共に偏向ビームスプリッターとを備え、前記投光光を直線偏光として前記プリズムに入射させ、
前記撮像系は、前記プリズム側から順に配置された偏光板と撮像素子とを備え、前記偏光板は前記撮像光のうち前記測定対象物において前記投光光を正反射した光を遮光するように設けられている
請求項1~10のうちの何れか1項に記載の口腔内測定装置。
【請求項12】
前記投光系および前記撮像系は、前記プリズムとの間に他の光学素子を介することなく設けられたアパーチャーを備えた
請求項1~11のうちの何れか1項に記載の口腔内測定装置。
【請求項13】
前記投光系のアパーチャーの開口径は、前記撮像系のアパーチャーの開口径よりも大きい
請求項12に記載の口腔内測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯および歯肉の口腔内形状を測定するための技術として口腔内測定装置がある。このような装置に関する技術として、下記特許文献1に開示の技術がある。この特許文献1には、光源からの光を、集光レンズを通過して、LCDシャッターなどで構成された縞パターンを生成するためのパターンマスクに照射し、生成した縞パターンを、絞りと対物集光レンズとを介して、被測定物である歯および歯肉に投影する構成が記載されている。また光源からの光束を、投影光経路と観察光経路とに分離する為、ビームスプリッターを設け、縞パターン光を、撮像レンズを介して、最終的にCCD等のイメージセンサーによって受光させる構成が記載されている。
【0003】
また口腔内測定装置においては、測定対象物に照射する投影光と、測定対象物から撮像素子に向かう観察光の光路上にプリズムを設け、これらの光をプリズムの内部で反射させることにより、測定対象物に対向させるプリズムの先端部の厚みを小さくする構成のものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-165558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プリズムを用いた構成の装置においては、投影光と観察光とを分離するために、投影光および観察光の少なくとも一方を、プリズムに対して斜め入射させることにより、二つの光学経路に角度差を持たせる必要がある。このため、プリズムへの斜め入射の影響を、収差補正素子を用いて補正しており、装置構成が複雑になる。また収差補正素子の部品精度や設置姿勢のばらつきが誤差要因となり、性能劣化を招く恐れがある。
【0006】
そこで本発明は、プリズムを用いた構成において、より簡便な装置構成でありながらも精度の高い形状測定が可能な口腔内測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するための本発明は、投光光を照射する投光系と、前記投光光を測定対象物で反射させた撮像光を受光する撮像系と、前記投光系と前記撮像系との間の光路上に配置され、前記投光系から照射された前記投光光を前記測定対象物に導くと共に、前記測定対象物で前記投光光を反射させた前記撮像光を前記撮像系に導くプリズムとを備え、前記プリズムは、前記投光光の入射面と前記撮像光の射出面とを同一の光透過面とし、かつ前記投光光の射出面と前記撮像光の入射面とを前記測定対象物に対向して配置される同一の撮像面としており、前記撮像系の光軸は、前記プリズムにおける前記光透過面の法線および前記撮像面の法線に対して平行な口腔内測定装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プリズムを用いた構成において、より簡便な装置構成でありながらも精度の高い形状測定が可能な口腔内測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る口腔内測定装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る口腔内測定装置における照明系および投光系の構成を説明するための構成図である。
図3】実施形態に係る口腔内測定装置で取り扱う光の概略光路を説明する図(その1)である。
図4】実施形態に係る口腔内測定装置で取り扱う光の概略光路を説明する図(その2)である。
図5】実施形態に係る口腔内測定装置の構成を説明するための展開系の図である。
図6】実施形態に係る口腔内測定装置において測定対象物に投影する投影パターンを示す図(その1)である。
図7】実施形態に係る口腔内測定装置において測定対象物に投影する投影パターンを示す図(その2)である。
図8】実施形態に係る口腔内測定装置を用いて撮像された撮像パターンを示す図(その1)である。
図9】実施形態に係る口腔内測定装置を用いて撮像された撮像パターンを示す図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した口腔内測定装置の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
≪口腔内測定装置の構成≫
図1は、実施形態に係る口腔内測定装置1の概略構成を示す斜視図である。図1に示す口腔内測定装置1は、光の光路の順に、照明系100、投光系200、プリズム300、および撮像系400の各光学要素を配置した構成である。図1においては、例えばプリズム300の長手方向をx方向、x方向と垂直な幅方向をy方向、x方向およびy方向と垂直な厚み方向をz方向として示している。また、図1においては、口腔内測定装置1において取り扱う光H0,H1,H2は、照明系100、投光系200、および撮像系400の光軸に沿った光線を代表的に示している。なお、口腔内測定装置1が有するプリズム300内の光の図示は省略した。
【0012】
この図に示す口腔内測定装置1は、プリズム300の形状、および各光学要素の配置状態が特徴的である。以下、これらの光学要素の構成を、光の光路に沿って照明系100、投光系200、プリズム300、および撮像系400の順に説明する。
【0013】
<照明系100>
図2は、実施形態に係る口腔内測定装置1における照明系100および投光系200の構成を説明するための構成図であって、図1のx方向とz方向の中間方向に向かって照明系100および投光系200を見た図である。図2においては、口腔内測定装置1において取り扱う光H0,H1を光束として示している。図2および先の図1に示すように、照明系100は、投光系200に照明光H0を供給する。このような照明系100は、照明光H0を発生する光源101を備え、光源101から照射された照明光H0の光路順に、照明系レンズ102およびミラー103を備えている。これらは次のようである。
【0014】
[光源101]
光源101は、例えばLED(light emitting diode)であって、照明系レンズ102に向かって照明光H0を照射する。光源101から照射される照明光H0は、広がりを有して照明系レンズ102に照射される(図2参照)。
【0015】
[照明系レンズ102およびミラー103]
照明系レンズ102は、光源101から広がりを持って発生した照明光H0を集光する。ミラー103は、照明系レンズ102を通過した照明光H0を、投光系200に向けて反射する。
【0016】
<投光系200>
投光系200は、照明系100から供給された照明光H0に対して所定の投影パターンを生成して投光光H1とし、投影パターンを生成した投光光H1をプリズム300に照射する。このような投光系200は、投光光H1の光路順に、偏光ビームスプリッター201、表示素子202、投光系レンズ203、および投光系アパーチャー204を備えている。
【0017】
ここで図3には、実施形態に係る口腔内測定装置1で取り扱う光の概略光路を説明する図(その1)を示す。この図3は、図1のy方向に向かって口腔内測定装置1を見た図である。図3においては、y方向において投光系200に重なる照明系100の図示は省略し、口腔内測定装置1において取り扱う光H1,H2は、投光系200、および撮像系400の光軸に沿った光線を代表的に示している。
【0018】
図3に示すように、投光系200は、次に説明するプリズム300に対して、投光光H1の入射角度が斜入射となるように設置されていることとする。ただし、投光系200の光軸は、例えばxz平面に対して平行であることが好ましい。なお、プリズム300において投光光H1が入射する入射面(以降に説明する第1面301)の法線301fと、投光系200の光軸との傾斜角度θ1は、以降に説明する投光光H1および撮像光H2の光路を実現可能な角度であって、例えば10度程度であることとする。以下、投光系200を構成する偏光ビームスプリッター201、表示素子202、投光系レンズ203、および投光系アパーチャー204を、この順に説明する。
【0019】
[偏光ビームスプリッター201]
図1図3を参照し、偏光ビームスプリッター201は、二つの三角柱を貼り合わせて立方体にしたもので、貼り合わせ面201a(図2参照)に誘電体多層膜が施され、誘電体多層膜に照射された光のうちP偏光を透過しS偏光を反射する構成のものである。このような偏光ビームスプリッター201は、照明系100から入射した照明光H0のうちのS偏光を、表示素子202に向かって反射するように設置されている。
【0020】
[表示素子202]
表示素子202は、二次元に画素を配列した二次元表示素子であり、例えばLCOS(Liquid Crystal On Silicon)のような反射型液晶素子である。図面においては、表示素子202の表示面のみを示している。このような表示素子202は、照明系100の偏光ビームスプリッター201から入射した照明光H0を、偏光ビームスプリッター201に向けて反射するように配置されている。
【0021】
表示素子202は、オンとした画素において反射させた照明光H0(S偏光)の偏光方向を回転させ、P偏光として偏光ビームスプリッター201の貼り合わせ面201aに入射させ、偏光ビームスプリッター201を透過させる。一方、表示素子202は、オフとした画素において反射させた照明光H0(S偏光)の偏光方向は回転させず、S偏光としたまま偏光ビームスプリッター201の貼り合わせ面201aに入射させ、偏光ビームスプリッター201で反射させる。
【0022】
これにより、表示素子202は、画素のオン・オフを制御することにより、偏光ビームスプリッター201に再入射した照明光H0に投影パターンを生成して投光光H1とする。このような表示素子202を用いることにより、物理的な駆動機構を設けることなく、様々な投影パターンが生成された投光光H1を得ることが可能であり、口腔内測定装置1の小型化および装置構成の簡略化を図ることができる。
【0023】
[投光系レンズ203]
投光系レンズ203は、偏光ビームスプリッター201を透過した投光光H1を集光する。投光系レンズ203は、投光系200の光軸を回転対称軸とした軸対称であることとする。
【0024】
[投光系アパーチャー204]
投光系アパーチャー204は、投光光H1を通過させる開口窓204a(図2参照)を備え、投光系レンズ203で集光した投光光H1の通過を規制する。なお、投光系200の光軸は、投光系アパーチャー204の開口窓204aの中心を通る。また、開口窓204aの開口形状は、投光系200の光軸を回転対称軸とした軸対称であることとする。図1および図3においては、この投光系アパーチャー204の開口窓204aの中心を通る投光系200の光軸に沿った投光光H1を光線として示している。また図2においては、この投光系アパーチャー204の開口窓204aを通過する投光光H1および撮像光H2の光束を示している。
【0025】
このような投光系アパーチャー204は、プリズム300との間に他の光学素子を介在させることなく配置されていることとする。投光系アパーチャー204とプリズム300との間隔は、以降に説明する撮像系アパーチャー401とプリズム300との間隔と同程度であって、例えば3mm程度であることとする。投光系アパーチャー204の開口窓204aの開口径は、1.5mm程度であって、以降に説明する撮像系アパーチャー401の開口窓の開口径よりも大きいことする。投光系アパーチャー204の配置状態については、以降に詳細に説明する。
【0026】
<プリズム300>
図1および図3に示すように、プリズム300は、長尺形状を有し、長尺形状の先端側が口腔内に挿入されるものである。またプリズム300は、長尺形状の先端側と逆の基端側に投光系200および撮像系400が配置される。このようなプリズム300は、基端側の投光系200から供給された投光光H1を、内部で複数回反射させて先端側に導いて測定対象物2に照射する。またプリズム300は、測定対象物2において投光光H1を反射させた撮像光H2を、内部で複数回反射させて撮像系400に導く。このようなプリズム300は、光学面が全て平面で構成されたものである。光学面は、光透過面と光反射面とである。
【0027】
ここでプリズム300は、一例として2つの底面が同一形状の角柱であり、角柱の側周壁がxz平面に対して垂直、y方向に対して平行に配置されることとするが、底面は互いに平行でなくてもよい。このようなプリズム300においては、xz平面に対して垂直に配置された側周壁を光学面としている。光学面は、例えば、投光光H1の到達順に、第1面301、第2面302、第3面303、および第4面304である。以下、このようなプリズム300の光学面の構成を、投光光H1の到達順に説明する。なお、これらの光学面は、撮像光H2の到達順が逆になる。
【0028】
[第1面301(光透過面)]
第1面301は、プリズム300の基端側に配置された面であって、この第1面301に対向して、照明系100、投光系200、および撮像系400が配置されている。この第1面301は、光透過面であって、投光系200からプリズム300に照射された投光光H1の入射面であり、かつプリズム300から撮像系400への撮像光H2の射出面でもある。つまり、プリズム300は、投光光H1の入射面と撮像光H2の射出面とを、同一の第1面301としている。
【0029】
このような第1面301は、投光系200の光軸に対して、第1面301の法線301fを斜めに傾けた状態で配置されている。これにより、投光系200は、プリズム300に対して斜め入射となっている。プリズム300における第1面301の法線301fと、投光系200の光軸との傾斜角度θ1は、先にも述べたように、以降に説明する投光光H1および撮像光H2の光路を実現可能な角度であって、例えば10度程度である。
【0030】
また第1面301は、撮像系400の光軸に対して、法線301fを平行にして配置される。これにより、プリズムから射出して撮像系400に入射する撮像光H2は、プリズム300に対する射出角度が垂直射出となっている。またプリズム300から射出される撮像光H2は、プリズム300に入射する投光光H1に対して、例えば10度程度の傾きを有することとなる。
【0031】
[第2面302]
第2面302は、プリズム300の基端側から先端側に向かってx方向に延設された長尺状の面であって、第1面301との間の内角が鋭角を成すxy平面である。このような第2面302は、第1面301を透過してプリズム300内に入射した投光光H1を、プリズム300内に反射する面であって、投光光H1を全反射させて第3面303に入射させる。また第2面302は、測定対象物2で反射してプリズム300に再入射した撮像光H2を全反射させ、プリズム300の内部から第1面301に撮像光H2を入射させる。
【0032】
[第3面303(撮像面)]
第3面303は、第2面302に対向して配置された面であって、第2面302に対して平行に配置された面であってよい。すなわち第3面303は、プリズム300の基端側から先端側に向かってx方向に延設された長尺状の面であって、第1面301との間の内角が鈍角を成すxy平面である。また第3面303は、先端側が測定対象物2に対向して配置される撮像面でもある。
【0033】
このような第3面303は、第2面302から入射した投光光H1を、第4面304に向かって全反射する。また第3面303には、第4面304で反射した投光光H1が再入射する。第3面303への投光光H1の再入射の角度は、全反射角度よりも小さい。このため、第3面303は、再入射した投光光H1をプリズム300の外に射出する。したがって、第3面303は、投光光H1の射出面でもある。第3面303から射出された投光光H1は、第3面303に対向して配置された測定対象物2に照射される。
【0034】
また第3面303は、測定対象物2において投光光H1が拡散反射した撮像光H2を透過する。このため、第3面303は、撮像光H2の入射面ともなる。ここで、撮像系400の光軸は、第3面303の法線303fに対して平行であることとし、プリズム300に対して撮像光H2は、垂直入射であることとする。
【0035】
以上のように、第3面303は、光透過面であり、光反射面でもある。また第3面303は、プリズム300から測定対象物2への投光光H1の射出面であり、測定対象物2からプリズム300への撮像光H2の入射面でもある。つまり、プリズム300は、投光光H1の射出面と撮像光H2の入射面とを、同一の第3面303であって、測定対象物2側に向いて配置される撮像面としている。
【0036】
なお、本実施形態においいては、第2面302と第3面303との間での投光光H1および撮像光H2の全反射の回数を1回ずつとしたが、プリズム300をさらにx方向に延設させることにより、全反射の回数を増加させた構成であってもよい。
【0037】
[第4面304]
第4面304は、プリズム300の先端側において第2面302と第3面303との間に配置された面であって、第2面302に対して鈍角をなし、第3面303に対して鋭角をなして配置されている。この第4面304は、第2面302と第3面303との間で全反射した投光光H1を、撮像面としての第3面303に向けて反射する。また、第4面304は、第3面303を透過してプリズム300内に再入射した光(すなわち撮像光H2)を、第3面303に向けて反射する。
【0038】
以上のような第4面304は、第1面301よりもx方向に大きい構成である。プリズム300は、このような第4面304で反射させた撮像光H2を、第3面303と第2面302との間で全反射させて、第1面301から撮像系400に向かって射出する構成としている。またプリズム300は、第3面303と第2面302との間で全反射させた投光光H1を、このような第4面304で反射させて撮像面である第3面303から射出させる構成となっている。これにより、プリズム300は、第4面304が配置された先端側を、より薄い構造とすることができる。この結果、口腔内にプリズム300の先端側を挿入し易く、口腔内に口腔内測定装置1が挿入される患者の負担を軽減することが可能になる。
【0039】
なお、本実施形態においいては、投光光H1の射出面および撮像光H2の入射面である撮像面を第3面303としたが、撮像面は第2面302であってもよい。この場合、第4面304は、第2面302に対して鋭角をなし、第3面303に対して鈍角をなして配置されることとする。
【0040】
<撮像系400>
撮像系400は、プリズム300から射出された撮像光H2を撮像するための光学系である。このような撮像系400は、プリズム300から射出された撮像光H2の光路順に、撮像系アパーチャー401、偏光板402、2枚の撮像系レンズ403,404、および撮像素子405を備えている。
【0041】
また撮像系400は、プリズム300の第1面301から垂直射出される撮像光H2の光束の中心線に対して光軸を一致させ、プリズム300の第1面301に対して光軸が垂直となるように設置されていることとする。すなわち、プリズム300において撮像光H2を射出する第1面301の法線301fと撮像系400の光軸とは平行である。また撮像系400の光軸は、xz平面に対して平行である。一方、先にも説明したように、撮像系400の光軸は、投光系200の光軸に対して斜めに傾いていることとする。これにより、投光系200は、撮像系400に対して物理的に干渉することなく配置される。以下、撮像系400を構成する各要素を、撮像系アパーチャー401、偏光板402、2枚の撮像系レンズ403,404、および撮像素子405の順に説明する。
【0042】
[撮像系アパーチャー401]
撮像系アパーチャー401は、撮像光H2を通過させる開口窓を備え、プリズム300の第1面301から射出された撮像光H2を規制する。なお、撮像系400の光軸は、撮像系アパーチャー401の開口窓の中心を通り、開口窓の開口形状は、撮像系400の光軸を回転対称軸とした軸対称であることとする。図1図3においては、この撮像系アパーチャー401の中心を通る撮像光H2のみを示している。
【0043】
また撮像系アパーチャー401は、プリズム300との間に他の光学素子を介在させることなく配置されていることとする。撮像系アパーチャー401とプリズム300との間隔は、先に説明した投光系アパーチャー204とプリズム300との間隔と同程度であって、例えば3mm程度であることとする。撮像系アパーチャー401の開口窓の開口径は、1.0mm程度であって、投光系アパーチャー204の開口窓の開口径よりも小さいことする。撮像系アパーチャー401の配置状態については、以降に詳細に説明する。
【0044】
[偏光板402]
偏光板402は、測定対象物2で拡散反射した撮像光H2のうち、測定対象物2において投光光H1を正反射した光を透過させない姿勢を保って、撮像系アパーチャー401と、撮像系レンズ403との間に配置されている。すなわち、投光系200からプリズム300に入射する投光光H1は、先に述べた通り直線偏光である。このため、偏光板402を所定状態で配置することにより、測定対象物2において投光光H1が反射した撮像光H2のうち、測定対象物2において正反射した光の通過を阻止し、測定対象物2においての散乱光のみを透過させることができるのである。
【0045】
これにより、特に光の強度が強い正反射光をカットし、安定した光強度の散乱光のみで構成された撮像光H2を、以降に説明する撮像素子405に入射させることができるため、撮像素子405で得られた画像の解析が容易である。
【0046】
ここで、測定対象物2で反射した撮像光H2の中には、散乱光と正反射光とが混在している。正反射光が撮像素子405に向かうのは、反射面における局所的な法線が、その点を通る投光光H1と撮像光H2の二等分線と一致した場合のみであり、視野の中ではごく限られた部分のみである。また、光量は、測定対象物2の表面状態に依存するが、特に濡れている場合などは、散乱光と比較して正反射光の光量が格段に多くなる。そこで、精度の高い撮像画を得るためには、正反射光をカットして、散乱光のみを撮像素子405に入射させることが望ましいのである。
【0047】
[撮像系レンズ403,404]
撮像系レンズ403,404は、偏光板402を通過した撮像光H2の光路に順に配置され、偏光板402を通過した撮像光H2を撮像素子405に入射させる。これらの撮像系レンズ403,404は、撮像系400の光軸を回転対称軸とした軸対称であることとする。
【0048】
[撮像素子405]
撮像素子405は、二次元に受光素子を配列したものであればよく、図面においては受光面のみを図示している。
【0049】
≪投光光H1および撮像光H2の光路≫
次に、図1図3、および他の図を用いて、実施形態に係る口腔内測定装置1において取り扱う光の光路を説明し、また口腔内測定装置1のさらに詳細な構成を説明する。
【0050】
<投光光H1の光路>
図1および先の図3に示すように、投光系200からプリズム300に照射された投光光H1は、xz平面に沿って、プリズム300の第1面301に対して斜め方向からプリズム300に入射される。プリズム300に入射した投光光H1は、プリズム300の第2面302で全反射し、さらに第2面302と平行に設けられた第3面303に入射して全反射し、第4面304に入射する。第4面304は、第3面303に対して鋭角に配置された面であって、第4面304に入射した投光光H1は、第3面303に対して全反射する臨界角を下回る角度で再入射し、第3面303を透過し、測定対象物2に照射される。
【0051】
これにより、測定対象物2に照射される投光光H1は、プリズム300において測定対象物2に対向して配置されたる撮像面としての第3面303から射出される前に、第3面303に対して鋭角に配置された第4面304で反射しており、さらにその前には、第3面303で全反射していることになる。
【0052】
以上のような投光光H1の経路は、プリズム300の内部も含めてxz平面に沿った経路となる。
【0053】
<撮像光H2の光路>
測定対象物2に照射された投光光H1は、測定対象物2で拡散反射し、撮像光H2として第3面303に入射する。第3面303に入射した撮像光H2は、第3面303を透過してプリズム300内に入射し、さらに第4面304に入射する。そして、第4面304で反射して第3面303に再入射した撮像光H2のうち、第3面303で全反射した撮像光H2が、第2面302に入射して第2面302で全反射し、第1面301に入射する。第2面302で全反射して第1面301に入射した撮像光H2は、第1面301を透過してプリズム300から射出され、撮像系400に入射する
【0054】
以上のように測定対象物Aで拡散反射し、プリズム300における撮像面としての第3面303を透過した撮像光H2は、第3面303に対して鋭角に配置された第4面304で反射した後、再び第3面303に入射して全反射し、その後さらに複数回の反射を経てプリズム300から射出され、そのうちの撮像系アパーチャー401を透過した撮像光H2が撮像素子405に入射することになる。
【0055】
以上のような撮像光H2の経路は、プリズム300の内部も含めてxz平面に沿った光路となる。そして、撮像系400の光軸と投光系200の光軸とは、同一のxz平面に沿った経路となり、そのxz平面は、投光系200、プリズム300、および撮像系400に共通の対称面であって、投光光H1および撮像光H2に共通の対称面となる。このような対称面を有する構成とすることにより、例えば測定対象物2の形状計算を行う場合の三角測量の計算に際し、表示素子202にどのような投影パターンを生成させるべきかを明確にすることができる。この場合、表示素子202が生成する投影パターンは、例えば測定対象物2の形状計算を行うための縞パターンであることとする。このような投影パターンの構成は、以降に詳細に説明する。
【0056】
また以上のような構成において、プリズム300の第4面304に対しての、投光光H1の入射点Pt1は、撮像光H2の入射点Pt2よりも、プリズム300の先端側であることが好ましい。すなわち、第4面304に対する投光光H1の入射点Pt1と第3面303との距離は、第4面304に対する撮像光H2の入射点Pt2と第3面303との距離よりも小さい。これにより、プリズム300の第4面304に対する投光光H1の入射位置に対し、比較的プリズム300の厚みがあって形状精度を保ち易い位置に、撮像光H2の入射点Pt2をずらすことで、撮像光H2の精度を高く保つことができる。
【0057】
また、プリズム300から射出される投光光H1と、プリズム300に入射する撮像光H2との交点Ptxは、プリズム300の外側であることが好ましい。これにより、投光光H1および撮像光H2の両方ともが、投光系200の光軸および撮像系400の光軸に沿った中心線に近くレンズ中心に近い範囲を、測定対象物2の撮像に対して有効に活用することができる。
【0058】
そして、プリズム300における第1面301、第2面302、第3面303、第4面304の相互の間隔および配置角度、さらにはプリズム300に対する投光系200および撮像系400の相互の配置関係は、以上のような光路となるように調整されていることとする。
【0059】
<投光光H1および撮像光H2の照射範囲>
図4は、実施形態に係る口腔内測定装置で取り扱う光の概略光路を説明する図(その2)であって、図1のy方向に口腔内測定装置1を見た図である。図4においては、口腔内測定装置1において取り扱う投光光H1および撮像光H2を光束として示している。投光光H1および撮像光H2は、それぞれ撮像に使用する範囲の両端及び中央の3点について、投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401の中央、および図面上の上下端を通る光線を図示した。また図4は、投光系200および撮像系400の光軸に沿ったxz平面であって、投光系200、プリズム300、および撮像系400に共通の対称面(xz平面)における投光光H1および撮像光H2の光路を示す図となっている。
【0060】
図4に示すように、この対称面(xz平面)内において、投光系200の光軸に沿った投光光H1の中心線と、撮像系400の光軸に沿った撮像光H2の中心線との交点Ptxを通り、第3面303に平行な直線L1上においては、投光光H1の範囲R1の方が、撮像光H2の範囲R2よりも広い。投光光H1の範囲R1とは、投光光H1において、以降に説明する投影パターンが生成される範囲である。また撮像光H2の範囲とは、撮像光H2において撮像素子405での撮像に用いられる範囲である。
【0061】
ここで、測定対象物2側の空間では、投光光H1の範囲と、撮像光H2の範囲とが重なった領域A1が、撮像可能な領域となる。投光光H1が、以降に説明するような投影パターンを測定対象物2に投影していても、撮像光H2の範囲の外は撮像素子405での撮像は不可能である。また撮像光H2の範囲内であっても、投光光H1が照射されなければ撮像は不可能である。
【0062】
そこで、光学系の要求精度が低く、照射角度の範囲を広げても性能上の悪影響を受けづらい投光光H1の範囲R1をより広めにする。これにより、投光光H1の中心線と撮像光H2の中心線とが交わる点Ptxから、z方向に測定対象物2がずれた場合であっても、投光光H1の範囲内に撮像光H2の範囲が含まれるようになり、撮像光H2の視野の範囲を最大限に活用することが可能になる。
【0063】
図5は、実施形態に係る口腔内測定装置の構成を説明するための展開系の図である。ここで展開系の図とは、反射面を省略して光が直進するように書き換えた図である。図5は、図4に対応する展開系の図であり、プリズム300内において投光光H1および撮像光H2が直進するように書き換えた図である。
【0064】
本実施例においては、プリズム300内においての投光光H1および撮像光H2の反射回数が奇数回であり(図4参照)、展開系において奇数回の反射後は鏡像になる。このため図5において、プリズム300の基端側であって投光系200および撮像系400が設けられた側の空間は、図4と一致させており、回転と移動で重なる状態としている。一方で、図4図5は、プリズム300の先端側であって測定対象物2が設けられる側の空間は鏡像になっており、何れか一方を裏返しにすることで重なる状態としている。ただし、図5は、図4に対して距離や角度の絶対値は一致させ、測定対象物2側の光線の長さは変えて描画しておいる。また図4では、想定している撮像領域A1のうち、プリズム300から最も遠いところまで光線を伸ばして図示しているのに対し、図5では想定している撮像領域A1の中心までを図示している。
【0065】
図5の展開系で見ると、プリズム300の二つの透過面、すなわち第1面301と第3面303が平行であることがわかる。また、撮像系400はプリズム300の透過面(第1面301および第3面303)に対して傾いていないことと、投光系200はプリズム300の透過面に対して傾いていることがわかる。投光系200はプリズム300以外については軸対称であり、その回転対称軸はプリズム300の透過面(第1面301および第3面303)の法線に対して10度傾いている。撮像系400は展開系で見ればプリズム300の透過面(第1面301および第3面303)を含めて軸対称である。
【0066】
<投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401の配置状態>
図5に示すように、投光光H1と撮像光H2とは、測定対象物2側の空間で重なっており、プリズム300に対して角度差がある。このため、投光光H1と撮像光H2とは、測定対象物2から遠ざかって投光系200および撮像系400側に近づくにつれて、間隔が開いていく。
【0067】
このような状態において、プリズム300との間に他の光学素子(主としてレンズ)を介在させることなく投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401を配置することにより、投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401とプリズム300との距離を小さくできる。この結果、プリズム300の第1面301における投光光H1の通過範囲と、撮像光H2の通過範囲をそれぞれ小さくすることができる。したがって、投光光H1と撮像光H2の通過範囲の間隔が大きくなったとしても、プリズム300における第1面301を小さく保つことができ、プリズム300の小型化、すなわち口腔内測定装置1の小型化を図ることができる。
【0068】
また、このような構成を採った場合、測定対象物2がプリズム300に近づくほど大きく見えることになり、撮像素子405で撮像された画像に基づいて測定対象物2の形状計算を行う場合には、計算上の補正が必要になる。このとき、プリズム300において投光系200および撮像系400が設けられた側の第1面301と、投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401との距離を等しくしておくことにより、計算上の補正が不要となる。これは、第1面301と投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401との距離を等しくしておくことにより、測定対象物2がプリズム300の第3面303に近づくほど、測定対象物2に照射される投光光H1に生成された投影パターンが小さくなることと、撮像光H2が拡大されることとがちょうどつり合うためである。撮像素子405で得たデプスデータから三次元の点群に変換する際に光線の傾き分を反映させることは必要であり、かつ実際の口腔内測定装置1には個体毎の製造誤差があるため、個体ごとにキャリブレーションすることが必須であるが、このような構成により、補正に伴う副作用が生じにくく有利である。
【0069】
また、投光系アパーチャー204および撮像系アパーチャー401の開口径は、広げるほど投光光H1および撮像光H2の光量的には有利であるが、測定対象物2までの距離が変化したときの結像状態の変化が大きくなる、というトレードオフの関係がある。そこで、以降に説明するように空間周波数の低い縞パターンしか投影しない投光系200の投光系アパーチャー204の開口径(例えば1.5mm)に対して、撮像系400の撮像系アパーチャー401の開口径を小さめ(例えば1.0mm)とすることで、焦点深度を保つことが好ましい。
【0070】
投光系200と撮像系400とを合わせて考えれば、第1面301の法線301fに対するこれらの光軸の傾きの差が空気中で10度であれば、プリズム300中では6.5度程度になる。これにともない、測定可能範囲の中心から遠ざかるほど二つの光学系の中心が離れてゆくことによって、面の幅をどれだけ使うかが決まっている状態となっている。例えばテレセントリックな光学系を使うと、それぞれの光学系が使う範囲はほぼ変わらないので、中心がずれた分、合わせた範囲が広がっていくことになる。これに対して、実施形態で説明した光学系では、投光系200と撮像系400とが使う範囲がアパーチャー204,401に近づくほど狭くなる効果が、中心が離れている影響よりも上回っており、測定可能範囲の中心から遠ざかるほど二つの光学系を合わせた範囲が狭くなっていく様子が見て取れる。
【0071】
このように、アパーチャー204,401をプリズム300の直後に置くことで、装置のサイズ面では有利になるが、その一方で問題になるのは、撮像面である第3面303からの距離に応じて、測定対象物2の大きさが変わって見えることである。テレセントリックな光学系であれば撮像面からの距離に関わらず同じ大きさに見えるが、今回の光学系では、測定対象物2が撮像面である第3面303に近いほど大きく、遠いほど小さく見える。また、投光光H1に発生させる投影パターンの縞の周期も、撮像面である第3面303と測定対象物2との距離に応じて変化し、距離が近いほど縞の周期が短くなる。そこで、本実施例では、プリズム300からアパーチャー204,401までの距離をほぼ等しくすることで、撮像系400で見た測定対象物2の大小の変化と、投光系200で生じる投影パターンの縞の周期の変化とがちょうど打ち消しあうようにしている。このため、以降に説明するように、投影パターンの縞の位相から、測定対象物2の高さへの変換の際に、距離による見かけ上の周期変化分を考慮しなくても良い。高さの2次元分布から3次元の点群に換算する際には、撮像光H2の光線が斜めに飛ぶ前提で計算する必要があるが、撮像素子405の画素ごとに決まった傾きで換算すればよいので、特に問題にはならない。なお、前述のように、プリズム300からアパーチャー204,401までの光軸に沿った距離がどちらも3mmで、投光系200の光軸が第1面301の法線301fに対して10度傾いている。このため、プリズム300の第1面301と投光系アパーチャー204との法線301f方向の距離は2.95mmとなるが、この程度の差はアパーチャー204,401から測定対象物2までの距離に比べて十分小さく問題にならない。
【0072】
≪投影パターン≫
次に、以上説明した口腔内測定装置1において測定対象物2に投影する投影パターンを説明する。ここで説明する投影パターンは、投光系200の表示素子202を構成する複数の画素のオン/オフによって投光光H1に生成されるパターンであって、測定対象物2の形状計算を行うためのパターンであることとする。
【0073】
図6は、実施形態に係る口腔内測定装置において測定対象物に投影する投影パターンを示す図(その1)である。図6に示すように、測定対象物に投影する投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…は、正弦波によって構成された縞模様のパターンである。口腔内測定装置1は、このような投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…を、位相をずらして順次に生成して測定対象物に投影する。
【0074】
位相の変更数は4以上が望ましいく、図示した例においては、正弦波の位相を90度ずつ変えた4つの投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…を示した。このように位相の変更数を4以上とすることにより、位相シフト法を適用した測定対象物の形状計算が可能となる。
【0075】
図7は、実施形態に係る口腔内測定装置において測定対象物に投影する投影パターンを示す図(その2)であって、図6に示した投影パターンよりも周期が大きいパターンである。口腔内測定装置1は、図6および図7に示す様に、周期が異なる投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…、および投影パターン[P2-1]、[P2-2]、…を、それぞれ位相をずらして順次に生成して測定対象物に投影することが好ましい。
【0076】
上述した位相シフト法では、測定対象物に照射した縞の位相がどれだけずれたかを高さに換算する。その際、投影パターンにおける縞が一本分ずれてしまうと、位相のずれは0となってしまい、高さを正しく計算することができない。それを防ぐためには、想定される高さの範囲での縞のずれが1本分に満たないように、縞を粗くすればよいが、一方で、縞の周期が大きいと、明るさの誤差による高さの測定誤差が大きくなってしまう。そこで図6および図7に示したように、周期が異なる複数種類の投影パターンを生成し、細かい縞と粗い縞を組み合わせることにより、高い精度と広い測定可能範囲とを両立することが可能となる。
【0077】
図8および図9は、実施形態に係る口腔内測定装置を用いて撮像された撮像パターンを示す図(その1)および(その2)である。これらの図に示す撮像パターン[P1’]、[P2’]は、正弦波パターンを口腔内の歯に投影した場合に得られる画像であって、3Dモデルを使ったシミュレーションによって作成した画像である。これらの図に見られるように、正弦波パターンを測定対象物で反射させて得られた画像は、測定対象物がプリズムに置に近いほど大きく見える効果を反映しているが、光学系のボケは反映していない。
【0078】
図8に示した周期が小さい縞の撮像パターン[P1’]は、5mmの高さの差があると1周期分位相がずれる。つまり、高さの差が5mmの場合、高さが同じ場合と見分けがつかない。高さの差が5mmよりずっと小さければ正しく測れるが、5mmに近くなると正しく測れない。
【0079】
図9に示した周期が大きい縞の撮像パターン[P2’]は、周期が小さい縞の10倍の周期となっており、測定可能範囲が広がった一方で、細かい差を測るには向かないので、この2種類を組み合わせて計算することで、十分な測定範囲と精度を両立することが可能になる。
【0080】
なお、撮像素子405(図4参照)の上で見た場合、撮像素子405に到達した投影パターンの縞模様の周期が、撮像素子405の画素ピッチに対して縞が細かすぎると位相を測ることが難しくなる。空間的に縞を測定する場合、最低でも画素ピッチの2倍の周期でないと縞を測れないが、2倍ちょうどでは位相を測ることはできない。位相シフト法では時間的に縞の位相を変化させるため、2倍であっても位相を計算することは可能だが、開口部の面積に起因するコントラストの低下が大きい。
【0081】
このため、以上のような投影パターンを構成する正弦波は、撮像素子405の撮像面においての空間周波数が、撮像素子405の画素ピッチの逆数の1/4より小さいことが好ましい。つまり、撮像素子405に到達した投影パターンの縞模様の周期は、撮像素子405の画素ピッチの4倍よりも大きいことが好ましく、これにより、コントラストの低下は抑えられ、位相を測ることが可能になる。一例として、縞状の投影パターンの周期の下限を、撮像素子405の画素ピッチの30倍程度とすることで、問題なく位相を計算でき、これにより、撮像素子405において、投影パターンの縞模様の位相を高精度に撮像することが可能となる。
【0082】
また表示素子202は、投光系200、プリズム300、および撮像系400に共通の対称面内において明るさを変化させ、また共通の対称面に垂直な方向には明るさが一様となるように、以上のような投影パターンを生成することが好ましい。ここで、共通の対称面は、図3および図5に示すxz平面であって、投光系200および撮像系400の光軸に沿った面である。
【0083】
表示素子202が生成する投影パターンを、このような正弦波をとすることにより、投光系200の光学系の性能が低い場合であっても、安定した投影パターンの照射を行うことができる。
【0084】
なお、図6および図7においては、各投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…および投影パターン[P2-1]、[P2-2]、…の上下に黒い部分があるが、この部分は測定対象物2の形状計算には使用しない部分である。
【0085】
また図6および図7においては、各投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…の照射形状を、プリズム300に対して投光光H1が斜め入射する方向に幅を広げた長方形としている。長方形の幅をどれだけ広げるかは、投光系200が、プリズム300の第1面301に対してどれだけ傾いているかと、想定する測定範囲の高さ(プリズム300の撮像面である第3面303との距離の範囲)とに依存する。一例として、各投影パターン[P1-1]、[P1-2]、…の照射形状の長方形は、およそ6:5であり、表示素子202の表示領域の長方形は16:9である場合、表示素子202の長手側が余ることになる。
【0086】
≪実施形態の効果≫
以上説明した実施形態の口腔内測定装置1は、プリズム300を用いて投光光H1を測定対象物2にまで導く構成において、撮像系400の光軸が、プリズム300における撮像光H2の入射面(第1面301)の法線301fおよび射出面(第3面303)の法線303fに対して平行としている。これにより、プリズム300を用いた構成でありながらも、撮像系400においては、収差補正のための複雑な構成を簡略化し、より簡便な装置構成でありながらも、精度の高い形状測定が可能である。
【実施例
【0087】
以下、上記実施形態において説明した口腔内測定装置1の具体的な実施例を下記表1に示す。表1は本発明の実施例を数値的に示したものである。
【0088】
【表1】
【符号の説明】
【0089】
1…口腔内測定装置
2…測定対象物
200…投光系
201…偏向ビームスプリッター
202…表示素子
204…投光系アパーチャー
300…プリズム
301…第1面(光透過面)
302…第3面(撮像面)
301f…第1面の法線
303f…撮像面の法線
304…第4面(撮像面に対して斜めに配置された前記プリズムの反射面)
400…撮像系
401…撮像系アパーチャー
402…偏光板
405…撮像素子
H1…投光光
H2…撮像光
L1…撮像面に平行な直線
Pt1…投光光が入射する点
Pt2…撮像光が入射する点
R1…投影パターンが生成された範囲
R2…撮像に用いられる範囲
[P1-1]、[P1-2]、…[P2-1]、[P2-2]、…投影パターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9