(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】目地側面形成部材、目地構造、及び増築方法
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240509BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20240509BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20240509BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
E04F13/08 Y
E04B1/682 A
E04B1/684 E
E04G23/02 J
(21)【出願番号】P 2020172395
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2023-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】中松 保二
(72)【発明者】
【氏名】川元 將揮
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187369(JP,A)
【文献】特開2000-257239(JP,A)
【文献】特開2009-057717(JP,A)
【文献】特開2019-082088(JP,A)
【文献】中国実用新案第205776962(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/00-13/30
E04B 1/62- 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁を形成する第一外装面材、及び当該第一外装面材の裏面に設けられる第一枠体、を有する第一外壁パネルと、前記第一外装面材よりも厚い第二外装面材、及び当該第二外装面材の裏面に設けられる第二枠体、を有し、前記第一外壁パネルに隣接して配置される第二外壁パネルと、の間に形成される縦目地の前記第一外壁パネル側の側面を形成する目地側面形成部材であって、
前記第一枠体に固定される固定基部と、
前記固定基部に支持されて、前記第一外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側の端縁から屋内方向に延びる側面部と、
を備え、
前記側面部は、その屋内側端縁が、前記第二外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側端縁と、屋内外方向に等しい位置まで延びることを特徴とする目地側面形成部材。
【請求項2】
前記固定基部と前記側面部とを接続する連結部をさらに備え、
前記第一枠体は、前記縦目地に向かって開口する溝形に形成されて、一方の側板が第一外装面材の裏面に固定されており、
前記固定基部は、平板状で前記第一枠体の底面に固定されており、
前記連結部は、前記固定基部から折れ曲がって形成されており、前記第一外装面材に対して角度をつけて、当該第一外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側の端縁に向かって延びて形成されており、
前記側面部は、前記連結部の先端から折れ曲がって、屋内方向に延びて形成されることを特徴とする請求項1に記載の目地側面形成部材。
【請求項3】
第一外装面材と、当該第一外装面材の裏面に設けられる第一枠体と、を有する第一外壁パネルと、
前記第一外装面材よりも厚い第二外装面材と、当該第二外装面材の裏面に設けられる第二枠体と、を有し、前記第一外壁パネルに隣接して配置される第二外壁パネルと、
請求項1又は請求項2に記載の目地側面形成部材と、
前記第二外装面材の前記縦目地に向き合う面と、前記側面部との間に充填される目地材と、
を備えることを特徴とする目地構造。
【請求項4】
請求項3に記載の目地構造を設けて外壁を新設する増築方法であって、
既設建物の躯体に隣接させて増築部の躯体を形成する工程と、
前記既設建物の前記第一外壁パネルに隣接させて、前記第二外壁パネルを新規に配置し、前記増築部の躯体に固定する工程と、
前記第一外壁パネルの前記第二外壁パネルに隣接する側に請求項1又は請求項2に記載の目地側面形成部材を固定する工程と、
前記第二外装面材の前記縦目地に向き合う面と、前記側面部との間に前記目地材を充填する工程と、
を含むことを特徴とする増築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さが異なる外装材が隣接して配置される目地の側面を形成する目地側面形成部材、当該目地側面形成部材を用いた目地構造、及び当該目地構造を用いて既設建物と増築部との間の防水性を保つ増築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、互いに隣接する外装材の間には目地が形成されて、外壁の変位を吸収している。このような目地には、湿式又は乾式の目地材が充填されており、主として目地の水密性を保っている。目地材によって目地の水密性を保つためには、当該目地材が密着する目地側面の屋内外方向の長さが必要となる。
【0003】
外壁は通常は同じ厚さの外装材により形成されるが、例えば特許文献1には、厚さの異なる外装材を用いて建物外観における質感を変化させることが提案されている。また、特許文献2においては外装材が薄くなって、目地材が十分に保持されない場合に、外壁の木製下地材に切り欠き溝を設けて、乾式の目地材を切り欠き溝にまで嵌入させることで目地材を保持し、当該目地の水密性を保つ発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-257239号公報
【文献】特開2001-336228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のような目地構造の場合、一方が厚く、他方が比較的薄い外装材で目地を形成しているが、薄い外装材でも少なくとも目地材の側面を十分に密着させる厚さは必要となるので、より薄い外装材で目地を形成する場合には十分な水密性を保つことができない。また、特許文献2のような目地構造は、目地の奥に木製の下地材が配置されていない外壁においては用いることができない。
【0006】
そこで本発明は、一方の外装材が薄く形成された目地においても、目地材を十分に保持し、目地の水密性を保つことができる目地側面形成部材、目地構造、及び当該目地構造を利用した増築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の目地側面形成部材は、建物の外壁を形成する第一外装面材と、当該第一外装面材の裏面に設けられる第一枠体と、を有する第一外壁パネルと、前記第一外装面材よりも厚い第二外装面材と、当該第二外装面材の裏面に設けられる第二枠体と、を有し、前記第一外壁パネルに隣接して配置される第二外壁パネルと、の間に形成される縦目地の前記第一外壁パネル側の側面を形成する目地側面形成部材であって、前記第一枠体に固定される固定基部と、前記固定基部に支持されて、前記第一外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側の端縁から屋内方向に延びる側面部と、を備え、前記側面部は、その屋内側端縁が、前記第二外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側端縁と、屋内外方向に等しい位置まで延びることを特徴としている。
【0008】
本発明の第二の目地側面形成部材は、前記固定基部と前記側面部とを接続する連結部をさらに備え、前記第一枠体は、前記縦目地に向かって開口する溝形に形成されており、前記固定基部は、平板状で前記第一枠体の底面に固定されており、前記連結部は、前記固定基部から折れ曲がって形成されており、前記第一外装面材に対して角度をつけて、当該第一外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側の端縁に向かって延びて形成されており、前記側面部は、前記連結部の先端から折れ曲がって、屋内方向に延びて形成されることを特徴としている。
【0009】
本発明の第一の目地構造は、第一外装面材と、当該第一外装面材の裏面に設けられる第一枠体と、を有する第一外壁パネルと、前記第一外装面材よりも厚い第二外装面材と、当該第二外装面材の裏面に設けられる第二枠体と、を有し、前記第一外壁パネルに隣接して配置される第二外壁パネルと、第一の目地側面形成部材又は第二の目地側面形成部材と、前記第二外装面材の前記縦目地に向き合う面と、前記側面部との間に充填される目地材と、を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明の増築方法は、第一の目地構造を設けて外壁を新設する増築方法であって、既設建物の躯体に隣接させて増築部の躯体を形成する工程と、前記既設建物の前記第一外壁パネルに隣接させて、前記第二外壁パネルを新規に配置し、前記増築部の躯体に固定する工程と、前記第一外壁パネルの前記第二外壁パネルに隣接する側に第一の目地側面形成部材又は第二の目地側面形成部材を固定する工程と、前記第二外装面材の前記縦目地に向き合う面と、前記側面部との間に前記目地材を充填する工程と、を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第一の目地側面形成部材によると、目地側面形成部材は、第一外壁パネルと第二外壁パネルとの間に形成される縦目地の第一外壁パネル側の側面を形成する部材である。第一外壁パネルの第一外装面材、及び第二外壁パネルの第二外装面材は、互いに厚さが異なっており、第一外装面材は第二外装面材よりも薄く形成されている。これによって、目地材を充填した場合に、目地材と第二外装面材との接触面積よりも目地材と第一外装面材との接触面積が小さくなる。そこで、目地側面形成部材の側面部の屋内側端縁が、第二外装面材の縦目地に向き合う面の屋内側端縁と、屋内外方向に等しい位置まで延びているので、目地側面形成部材の側面部と第二外装面材の縦目地に向き合う面との間に目地材を充填することで、第一外装面材の薄さを補って、縦目地を十分に水密性よく保つことができる。
【0012】
本発明の第二の目地側面形成部材によると、目地側面形成部材は、平板状の固定基部と、固定基部から折れ曲がって形成される連結部と、連結部の先端から折れ曲がって形成される側面部と、で形成されており、一枚の平板を折り曲げて形成することができる。そして、目地側面形成部材の連結部は、固定基部から折れ曲がって形成されており、第一外装面材に対して角度をつけて、第一外装面材の前記縦目地に向き合う面の屋内側の端縁に向かって延びて形成されている。連結部が第一外装面材に対して角度をつけて設けられているので、第一枠体の一方の側板と第一外装面材の裏面との接合に用いるビスやリベットの頭と、連結部とが干渉することがない。
【0013】
本発明の目地構造によると、上記いずれかの目地側面形成部材を用いて、縦目地の前記第一外壁パネル側の側面を屋内方向に延長するように形成しており、第二外装面材の縦目地に向き合う面と、目地側面形成部材の側面部との間に目地材を充填するので、第一外装面材が薄く、目地材の側面を十分に密着させることができない場合であっても、第一外装面材の薄さを補って、縦目地を十分に水密性よく保つことができる。
【0014】
本発明の増築方法によると、既設建物の第一外壁パネルに隣接させて、第二外壁パネルを新規に配置して増築部の躯体に固定し、第一外壁パネルの第二外壁パネルに隣接する側に目地側面形成部材を固定し、第二外装面材の縦目地に向き合う面と、側面部との間に目地材を充填するので、既設の第一外壁パネルが薄い場合であっても、増築部との境界となる縦目地の防水性能を十分なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】目地側面形成部材を配置する前の縦目地を説明する水平断面図。
【
図3】目地側面形成部材を取り付けた縦目地を説明する水平断面図。
【
図6】乾式の目地材を圧入した状態の縦目地を説明する水平断面図。
【
図7】湿式の目地材を充填した状態の縦目地を説明する水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る目地側面形成部材1、目地構造2、及び増築方法の実施形態について、各図を参照しつつ説明する。本実施形態の目地構造2は、
図1に示すように、既存建物4に増築部5を増築する際に、既存建物4と増築部5との境界に形成される外壁目地の目地構造2、及び当該目地構造2に用いられる目地側面形成部材1である。既存建物4は、
図2に示すように、例えば、矩形枠状の軸組9を綴って構造躯体8を形成した軽量鉄骨造であり、構造躯体8に第一外壁パネル6を固定することで外壁面を形成している。また、増築部5は既存建物4の構造躯体8に接合して形成される新設の構造躯体8に第二外壁パネル7を固定して外壁面を形成している。
【0017】
目地構造2は、
図6及び
図7に示すように、第一外装面材10と、第一外装面材10の裏面に設けられる第一枠体11と、を有する第一外壁パネル6と、第一外装面材10よりも厚い第二外装面材12と、第二外装面材12の裏面に設けられる第二枠体13と、を有し、第一外壁パネル6に隣接して配置される第二外壁パネル7と、第一外装面材10側の縦目地3の側面を補って、第一外壁パネル6の側面を形成する目地側面形成部材1と、第二外装面材12の縦目地3に向き合う面と、目地側面形成部材1によって形成される側面との間に充填される目地材14a,14bと、を備える構造である。
【0018】
第一外壁パネル6は、
図2及び
図3に示すように、既存建物4に用いられる古い仕様の外壁パネルである。第一外壁パネル6は、建物の外壁面を形成する第一外装面材10と、第一外装面材10の裏面に設けられる矩形の第一枠体11と、第一外壁パネル6の屋内側の面を形成する裏面板15と、を有しており、内部にポリスチレンの断熱材16が収納されている。第一外装面材10は、例えば表面に意匠性を有する模様及び塗装を付した、例えば厚さ4mm程度の薄板材である。第一枠体11及び断熱材16は、第一外壁パネル6の面外方向の厚さが30mm程度に形成されており、裏面板15は厚さ4mm程度に形成されている。第一枠体11は、溝形で第一外壁パネル6の周縁に沿って形成されており、第一外壁パネル6の面内方向で外側に向かって開口して形成されている。第一枠体11は、断熱材24に当接する底板11aと、第一外装面材10に当接して固定する屋外側板11bと、裏面板15に当接して固定する屋内側板11cと、を有している。第一枠体11は、第一外装面材10の屋外側板11bから第一外装面材10にリベットを打ち込んで固定されており、リベット頭16が第一枠体11の内側に露出している。
【0019】
また、第二外壁パネル7は、
図2から
図4に示すように、新たに増築される建物に用いられる現行仕様の外壁パネルである。第二外壁パネル7は、第一外装面材10よりも厚い第二外装面材12と、第二外装面材12の裏面に設けられる矩形の第二枠体13と、を有している。第二外装面材12は、例えば表面に凹凸模様及び塗装を付したて形成されており、少なくとも厚さが10mm以上の面材である。第二外装面材12は、目地を形成する側面の厚さαが少なくとも10mm以上である必要があり、例えば屋外側の外周縁に厚さ方向に例えば2mm程度が面取部17が形成されている場合は、第二外装面材12の厚さは少なくとも12mm以上である。第二枠体13は、第二外壁パネル7の面外方向の厚さが、例えば第二外装面材12の厚さと同程度の厚さに形成されている。第二外装面材12及び第二枠体13を含む第二外壁パネル7全体の厚さは、第一外装面材10及び第一枠体11を含む第一外壁パネル6の厚さと等しいことが好ましい。第二枠体13は、溝形で第二外壁パネル7の周縁に沿って形成されており、第二外壁パネル7の面内方向で外側に向かって開口して形成されている。
【0020】
第一外壁パネル6及び第二外壁パネル7は、
図2に示すように、建物の構造躯体8を構成する軸組9に取り付けられている。軸組9は、内側に開口するC形鋼で矩形枠状に形成されている。軸組9は、互いに隣接する軸組9同士を横綴りボルト18で連結しており、当該隣接する軸組9の間に挿入された外壁取付金物19によって、第一外壁パネル6の第一枠体11及び第二外壁パネル7の第二枠体13が係止されて固定されている。
【0021】
互いに隣接する第一外壁パネル6及び第二外壁パネル7の間には、
図4に示すように、例えば11mmの間隙δが形成されており、この間隙δが縦目地3である。
図2に示すように、第一外装面材10は第二外装面材12よりも薄いので、第一外装面材10の縦目地3と向き合う面βは第二外装面材12の縦目地3と向き合う面αよりも目地の奥行方向に短く形成されている。したがって、縦目地3に目地材14a,14bを充填する場合に、第一外装面材10により形成される縦目地3の側面が短く、目地材14a,14bが第一外装面材10と接触する面積が短くなって、目地材14a,14bを適切に充填することができない。
【0022】
目地側面形成部材1は、
図3及び
図5に示すように、第一外装面材10側の縦目地3の側面を補って、第一外壁パネル6の側面を形成するものである。目地側面形成部材1は、第一枠体11に固定される固定基部20と、固定基部20に支持されて、第一外装面材10の縦目地3に向き合う面の屋内側の端縁から屋内方向に延びる側面部21と、固定基部20と側面部21とを接続する連結部22を備えている。固定基部20は平板状で、第一枠体11の底板11aに当接されて、固定ビス23で固定される。
【0023】
側面部21は、
図3及び
図4に示すように、屋外側の端部が第一外装面材10の縦目地3に向き合う面の屋内側の端縁に接近して配置され、屋内側の端部が、第二外装面材12の縦目地3に向き合う面の屋内側端縁に、屋内外方向に等しい位置まで延びて形成されている。側面部21の屋内外方向の長さγは、本実施形態においては11.5mmである。なお、側面部21の屋内外方向の長さγは、少なくとも10mm以上必要となる。また側面部21の鉛直方向の長さは、第一外装面材10及び第二外装面材12の鉛直方向の長さに等しい。
【0024】
また、連結部22は、固定基部20から折れ曲がって形成されており、第一外装面材10に対して角度をつけて、第一外装面材10の縦目地3に向き合う面の屋内側の端縁に向かって延びて形成されている。側面部21は、連結部22の先端から折れ曲がって屋内方向に延びて形成されている。このように、目地側面形成部材1は、固定基部20と、固定基部20から折れ曲がって形成される連結部22と、連結部22の先端から折れ曲がって形成される側面部21と、で形成されているので、一枚の金属板を折り曲げて形成することができる。そして、目地側面形成部材1の連結部22は、第一外装面材10に対して角度をつけて設けられているので、第一枠体11の一方の側板と第一外装面材10の裏面との接合に用いるリベット頭16が、連結部22と干渉することを防止できる。
【0025】
縦目地3に充填される目地材14a,14bは、
図6に示すように、例えば乾式の目地材14aが用いられる。乾式の目地材14aは、縦目地3に圧入されて縦目地3を止水する弾性を有する樹脂製のガスケットである。乾式の目地材14aは、縦目地3に挿入される前の状態で目地幅方向の長さが縦目地3の幅よりも長く形成されており、縦目地3に圧入されることで、弾性変形して縦目地3の両側の側面にそれぞれ密着する。本実施形態においては、縦目地3の水密性を確保するためには、縦目地3の両側面が、奥行き方向の長さが10mm以上の平坦な面であり、当該縦目地3の両側面にそれぞれ乾式の目地材14aの両側面が当接する必要がある。
【0026】
縦目地3の奥には、目地クリップ材23が挿入される。目地クリップ材23は、目地材14aが圧入される際に位置決めを行い、目地材14aが第一外装面材10の屋内側に脱落を防止する位置決め材である。目地クリップ材23には中央に受け溝が形成されており、当該受け溝に、乾式の目地材14aの屋内側の先端に形成された凸部が嵌め込まれることで、目地材14aが適切な位置に保持される。そして、目地材14aの一方の側面は、目地側面形成部材1の側面部21に当接し、目地材14aの他方の側面は、第二外装面材12の縦目地3に向き合う側面に当接するようにして、縦目地3に圧入される。このとき、目地側面形成部材1の側面部21は、目地の奥行き方向の長さが10mm以上であり、第二外装面材12の縦目地3に向き合う側面の目地の奥行き方向の長さも10mm以上であるので、目地材14aの両側面がそれぞれ、奥行き方向の長さが10mm以上の平坦な面に当接することができ、縦目地3の水密性を確保することができる。
【0027】
なお、縦目地3に充填される目地材14a,14bは、乾式の目地材14aに限定されるものではなく、
図7に示すように、湿式の目地材14bを用いてもよい。湿式の目地材14bは、粘性の高い液状樹脂を縦目地3に充填させて縦目地3内で硬化させることにより縦目地3を止水する。湿式の目地材14bが、縦目地3の水密性を確保するためには、縦目地3の両側面が、奥行き方向の長さが10mm以上の平坦な面であり、当該縦目地3の両側面にそれぞれ湿式の目地材14bが接着する必要がある。
【0028】
縦目地3の奥には、目地バックアップ材26が挿入される。目地バックアップ材26は、湿式の目地材14bが充填される際に、当該目地材14bが第一外壁パネル6及び第二外壁パネル7の屋内側に脱落を防止するとともに目地材14bを均一に十分な量を充填するためのバックアップ材である。そして、湿式の目地材14bは、目地バックアップ材26と、目地側面形成部材1の側面部21と、第二外壁面材の縦目地3に向き合う側面と、によって形成されている溝内に充填されて、縦目地3を止水する。このとき、目地側面形成部材1の側面部21は、目地の奥行き方向の長さが10mm以上であり、第二外装面材12の縦目地3に向き合う側面の目地の奥行き方向の長さも10mm以上であるので、湿式の目地材14bを10mm以上の厚さで充填することができ、縦目地3の水密性を長期間にわたって確保することができる。
【0029】
建物を増築する際には、まず、既存建物4の構造躯体8に隣接させて増築部5の構造躯体8を形成する。このとき、増築後も外壁となる部分については、既存建物4の第一外壁パネル6を構造躯体8から取り外すことがない。そして、
図2に示すように、既存建物4の軸組9と増築部5の軸組9とが隣接する位置に外壁取付金物19を設置し、既存建物4の第一外壁パネル6に隣接させて、第二外壁パネル7を新規に配置し、当該第二外壁パネル7の第二枠体13を外壁取付金物19に係止させて、増築部5の構造躯体8に第二外壁パネル7を固定する。そして、
図3に示すように、第一外壁パネル6の第二外壁パネル7に隣接する側における第一枠体11の底板11aに目地側面形成部材1の固定基部20を当接させて、固定ビス23で固定して縦目地3を形成する。その後、
図6に示すように、乾式目地材14aの場合は、第二外装面材12の縦目地3に向き合う面と、目地側面形成部材1の側面部21との間を通して、目地クリップ材23を目地奥に挿入し、当該縦目地3に乾式の目地材14aを圧入して外壁を完成させる。湿式目地材14bの場合は、
図7に示すように、第二外装面材12の縦目地3に向き合う面と、目地側面形成部材1の側面部21との間を通して、目地バックアップ材26を目地奥に挿入し、当該縦目地3に湿式の目地材14bを充填して、硬化させて、外壁を完成させる。
【0030】
このように、第二外装面材12の縦目地3に向き合う面と、側面部21との間に目地材14a,14bを充填するので、既設の第一外壁パネル6が薄く、目地材14a,14bの防水性能を十分に発揮することができない場合であっても、目地側面形成部材1の側面部21によって、縦目地3の側面が形成されるので、既存建物4と増築部5との境界となる縦目地3の防水性能を十分なものとすることができる。
【0031】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明に係る目地側面形成部材1、目地構造2、及び増築方法は、既設の外壁パネルの外装面材と、新設の外壁パネルの外装面材との厚さが異なる場合に縦目地3の水密性を確保することができる目地側面形成部材1、目地構造2、及び増築方法として好適である。
【符号の説明】
【0033】
1 目地側面形成部材
2 目地構造
3 縦目地
4 既存建物
5 増築部
6 第一外壁パネル
7 第二外壁パネル
10 第一外装面材
11 第一枠体
12 第二外装面材
13 第二枠体
14a 目地材(乾式)
14b 目地材(湿式)
20 固定基部
21 側面部
22 連結部