(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】吐水装置
(51)【国際特許分類】
E03C 1/042 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
E03C1/042 B
(21)【出願番号】P 2020176896
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 翔
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 陽一
【審査官】七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-159163(JP,A)
【文献】特開2017-95897(JP,A)
【文献】特開2018-135670(JP,A)
【文献】特開2019-13482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/00- 1/10
A47K 1/00- 1/14
A47K 13/00-17/02
E03D 9/00- 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水部と、
前記吐水部へ給水する給水部と、
設置面に対向するように設置されるパネル部と
を備え、
前記パネル部と前記設置面との間に前記給水部の少なくとも一部を収容する収容空間が形成され、
前記給水部は、
前記収容空間内に配置され、給水源に接続された第1給水路の下流側に接続される複数の第2給水路と、
前記第1給水路と複数の前記第2給水路との間に接続され、前記第1給水路からの水を複数の前記第2給水路へ分流する分流部と、
複数の前記第2給水路の下流側に接続され、複数の前記第2給水路の水を合流させる合流部と
を含み、
複数の前記第2給水路はそれぞれ、
外形寸法が前記第1給水路の外形寸法より小さくなるように形成されるとともに、可撓性を有し、
前記分流部および前記合流部の少なくとも一方は、
前記給水部を流れる水を整流する整流部
を備えることを特徴とする吐水装置。
【請求項2】
前記整流部は、
上流から流れてきた水が衝突する衝突壁部
を備えることを特徴とする請求項1に記載の吐水装置。
【請求項3】
前記分流部は、
複数の前記第2給水路がそれぞれ接続され前記第2給水路へ水を流出する複数の流出口における流路断面の中心軸線が、前記第1給水路が接続され前記第1給水路の水が流入する流入口における流路断面の中心軸線に対して偏心するように形成されること
を特徴とする請求項1または2に記載の吐水装置。
【請求項4】
前記分流部は、
複数の前記流出口における流路断面の中心軸線から、前記流入口における流路断面の中心軸線までの距離がそれぞれ同一となるように形成されること
を特徴とする請求項3に記載の吐水装置。
【請求項5】
前記流出口は、
前記流出口における流路断面の中心軸線方向から見た場合に前記流入口と重ならない位置に形成されること
を特徴とする請求項3または4に記載の吐水装置。
【請求項6】
複数の前記第2給水路は、
前記分流部との接続位置から前記合流部との接続位置までの長さが同一となるように形成されること
を特徴とする請求項1~5のいずれか一つに記載の吐水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の実施形態は、吐水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばトイレ室内などの壁面に設置される吐水装置が知られている(例えば特許文献1参照)。かかる吐水装置において、吐水部へ給水する給水管が壁面の表側に設けられて収容されることで、例えば壁面の裏側での給水工事を不要にし施工性の向上を図る技術も知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-029124号公報
【文献】特開2002-345662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した吐水装置にあっては、前後方向の奥行を薄型にするコンパクト化が望まれている。そこで、例えば給水管が収容される収容空間において給水管を複数の細い給水路に分流させ、吐水部付近で複数の給水路を合流させることで、収容空間の奥行を薄型にしてコンパクト化することが考えられる。
【0005】
しかしながら、上記のように複数の給水路に分流させ、分流した複数の給水路を合流させるように構成すると、各給水路の水の速度等が互いに異なることに起因して分流時や合流時に給水路等で水の流れが乱れ易くなり、よって吐水部から吐水される水が乱れるおそれがあった。このように、従来技術には、吐水装置において、奥行を薄型にするコンパクト化を図りつつ、吐水の乱れを抑制するという点で、さらなる改善の余地があった。
【0006】
実施形態の一態様は、前後方向の奥行を薄型にするコンパクト化を図りつつ、吐水の乱れを抑制することができる吐水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の一態様に係る吐水装置は、吐水部と、前記吐水部へ給水する給水部と、設置面に対向するように設置されるパネル部とを備え、前記パネル部と前記設置面との間に前記給水部の少なくとも一部を収容する収容空間が形成され、前記給水部は、前記収容空間内に配置され、給水源に接続された第1給水路の下流側に接続される複数の第2給水路と、前記第1給水路と複数の前記第2給水路との間に接続され、前記第1給水路からの水を複数の前記第2給水路へ分流する分流部と、複数の前記第2給水路の下流側に接続され、複数の前記第2給水路の水を合流させる合流部とを含み、複数の前記第2給水路はそれぞれ、外形寸法が前記第1給水路の外形寸法より小さくなるように形成されるとともに、可撓性を有し、前記分流部および前記合流部の少なくとも一方は、前記給水部を流れる水を整流する整流部を備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、収容空間の奥行を、例えば給水管が収容されるように構成した場合に比べて小さくして薄型にすることができ、よって吐水装置において奥行を薄型にしコンパクト化することができる。また、給水部にあっては、給水管より細い外形寸法の給水路を複数備えることで、例えば給水管から供給される水量を維持しつつ吐水部から吐出させることが可能となる。また、複数の給水路が可撓性を有することで、施工時やメンテナンス時において給水路を取り回し易くなり、施工性やメンテナンス性の低下を抑制することができ、よって施工性等をより向上させることができる。また、整流部での整流により、例えば各給水路に均等に水が流れ、各給水路で流れる水の速度等が同じあるいは同等になり易くなるため、分流時や合流時に水の流れが乱れにくく、よって吐水部からの吐水の乱れを抑制することができる。
【0009】
また、前記整流部は、上流から流れてきた水が衝突する衝突壁部を備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、簡易な構成で、給水部を流れる水を整流することができる。
【0011】
また、前記分流部は、複数の前記第2給水路がそれぞれ接続され前記第2給水路へ水を流出する複数の流出口における流路断面の中心軸線が、前記第1給水路が接続され前記第1給水路の水が流入する流入口における流路断面の中心軸線に対して偏心するように形成されることを特徴とする。
【0012】
これにより、例えば分流部から各給水路に対して水をより均等に流すことが可能になる。すなわち、仮に複数の流出口のうち、一部の流出口の中心軸線が、流入口の中心軸線に対して同軸であった場合、かかる一部の流出口に対して流入口からの水が流れ易くなる。そのため、一部の流出口に接続される給水路に水の流れが偏って、各給水路に均等に水が流れなくなり、吐水部の吐水が乱れるおそれがある。そこで、上記したように、複数の流出口の中心軸線が流入口の中心軸線に対して偏心するように構成されることで、分流部から各給水路に対して水をより均等に流すことが可能になり、結果として吐水の乱れを効果的に抑制することができる。
【0013】
また、前記分流部は、複数の前記流出口における流路断面の中心軸線から、前記流入口における流路断面の中心軸線までの距離がそれぞれ同一となるように形成されることを特徴とする。
【0014】
これにより、例えば分流部から各給水路に対して水をより均等に流すことが可能になる。すなわち、仮に流出口の中心軸線から流入口の中心軸線までの距離が、複数の流出口の間で異なる場合、例えば流入口から最も近い流出口に対して流入口からの水が流れ易くなる。そのため、流入口から最も近い流出口に接続される給水路に水の流れが偏って、各給水路に均等に水が流れなくなり、吐水部の吐水が乱れるおそれがある。そこで、上記したように、複数の流出口の中心軸線から流入口の中心軸線までの距離がそれぞれ同一となるように形成されることで、分流部から各給水路に対して水をより均等に流すことが可能になり、結果として吐水の乱れを効果的に抑制することができる。
【0015】
また、前記流出口は、前記流出口における流路断面の中心軸線方向から見た場合に前記流入口と重ならない位置に形成されることを特徴とする。
【0016】
これにより、例えば分流部から各給水路に対して水をより一層均等に流すことが可能になる。すなわち、仮に複数の流出口のうち、一部の流出口が中心軸線方向から見て流入口と重なる位置にあった場合、かかる一部の流出口に対して流入口からの水が流れ易くなって、各給水路に均等に水が流れなくなるおそれがある。そこで、上記したように、流出口が中心軸線方向から見た場合に流入口と重ならない位置に形成されることで、分流部から各給水路に対して水をより一層均等に流すことが可能になり、結果として吐水の乱れをより効果的に抑制することができる。
【0017】
また、複数の前記第2給水路は、前記分流部との接続位置から前記合流部との接続位置までの長さが同一となるように形成されることを特徴とする。
【0018】
これにより、例えば複数の給水路を流れる水が受ける圧力損失が、複数の給水路の間で同じになり、各給水路で均等に水が流れて水の速度等が同じあるいは同等になり易くなる。そのため、各給水路を流れる水が合流部で合流する際に水の流れが乱れにくく、吐水の乱れをより一層抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
実施形態の一態様によれば、吐水装置において、前後方向の奥行を薄型にするコンパクト化を図りつつ、吐水の乱れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る吐水装置を示す全体斜視図である。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係る吐水装置の正面図である。
【
図18】
図18は、第3の実施形態に係る吐水装置を示す全体斜視図である。
【
図19】
図19は、第3の実施形態に係る吐水装置の正面図である。
【
図23】
図23は、変形例に係る給水路等を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する吐水装置の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る吐水装置を示す全体斜視図である。なお、
図1および
図2以降に示す図は、いずれも模式図である。
【0023】
また、
図1では、説明の便宜のために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、後述の説明に用いる他の図面でも示す場合がある。また、以下の説明では、例えば吐水装置1が設置されたときの状態を基準として、直交座標系におけるX軸正方向を「右方」、X軸負方向を「左方」、Y軸正方向を「前方」あるいは「正面側」、Y軸負方向を「後方」あるいは「背面側」、Z軸正方向を「上方」、Z軸負方向を「下方」と記載する場合がある。
【0024】
図1に示すように、吐水装置1は、壁付け式であり、壁面Wに設置される。なお、吐水装置1は、例えばトイレ室内の壁面Wに設置される手洗い装置であるが、これに限定されるものではない。すなわち、吐水装置1は、例えば洗面所やキッチンなどその他の場所の壁面に設置されてもよい。なお、壁面Wは、設置面の一例である。
【0025】
図2は、吐水装置1の正面図であり、
図3は、吐水装置1の背面図である。
図1~
図3に示すように、吐水装置1は、手洗い器10と、カウンタ20と、吐水部30(
図3で見えず)と、給水部40(
図1で見えず)と、保持部60(
図1で見えず)とを備える。
【0026】
なお、
図2では、理解の便宜のため、手洗い器10およびカウンタ20を想像線で示し、手洗い器10等の背面側に位置する給水部40などが見えるようにした。また、
図3でも、カウンタ20を想像線で示している。
【0027】
手洗い器10は、水受け部11と、パネル部12とを備える。水受け部11は、例えばボウル状に形成され、吐水部30から吐水される水を受ける。水受け部11は、受けた水を排水孔13(
図3および後述する
図4参照)から、二点鎖線で示す排水管14(
図3参照)へ排水する。なお、「水」という表現は、上水(水道水)などの常温の水の他、湯や湯水混合水、冷水などを含む意味で用いる場合がある。
【0028】
パネル部12は、例えば平板状に形成され、水受け部11の背面側(後側。Y軸負側)に位置される。すなわち、パネル部12は、水受け部11の背面側の壁部でもある。具体的には、パネル部12は、背面壁部12aと、上壁部12bと、2つの側壁部12cとを備える。
【0029】
背面壁部12aは、平板状の部位であり、上下方向に立設するように形成される。また、パネル部12の背面壁部12aには、吐水部30が設けられる。上壁部12bは、背面壁部12aの上端から後方(Y軸負方向)へ延在するように形成される。側壁部12cは、背面壁部12aの左右の側端から後方(Y軸負方向)へ延在するように形成される。
【0030】
上記のように構成されたパネル部12は、設置面である壁面Wに対向するように設置(固定)される。詳しくは、パネル部12は、背面壁部12aが壁面Wに対向するように配置されて設置される。従って、パネル部12においては、背面壁部12a、上壁部12b、2つの側壁部12c、および、壁面Wによって囲まれる空間が形成されることとなり、かかる空間が給水部40の一部を収容する収容空間50として機能するが、これについては後述する。
【0031】
カウンタ20は、例えば板状の部材であり、水受け部11の下方に設けられる。カウンタ20は、例えば壁面Wあるいは図示しない床面などに固定されて設置される。そして、カウンタ20には、水受け部11が載置される。
【0032】
なお、カウンタ20は、載置部の一例である。上記では、カウンタ20を載置部の例としたが、これに限られず、載置部は、水受け部11を載置可能であれば、例えばキャビネットの天板(カウンタ)などその他のものであってもよい。また、カウンタ20には、給水部40の一部が挿通される挿通孔21(
図6参照)が形成されるが、これについては後に説明する。
【0033】
吐水部30は、水を手洗い器10に向けて吐水する。なお、吐水部30の詳細な構成については、
図10等を参照して後述する。
【0034】
給水部40は、吐水部30に接続され、吐水部30へ給水する。ここで、給水部40や収容空間50等について
図4~
図6も参照しつつ説明する。
【0035】
図4は、
図2のIV-IV線断面図である。
図5は、
図4の部分拡大断面図であり、詳しくは
図4において一点鎖線で囲まれた部分の拡大断面図である。
図6は、
図2のVI-VI線断面図である。
【0036】
図4~
図6に示すように、収容空間50は、パネル部12と壁面Wとの間に形成される。具体的には、収容空間50は、上記したように、パネル部12の背面壁部12a、上壁部12b、2つの側壁部12c、および、壁面Wによって囲まれる空間である。
【0037】
このような収容空間50には、給水部40の一部が設けられて収容される。すなわち、本実施形態においては、給水部40が壁面Wの表側に設けられることから、例えば壁面Wの裏側での給水工事などを不要にすることができる。これにより、比較的短期間でかつ低コストで吐水装置1を設置することが可能となり、吐水装置1の施工性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態にあっては、収容空間50の奥行D(
図6参照)を可及的に小さくして薄型にすることで、吐水装置1のコンパクト化を図るようにした。
【0039】
具体的に説明すると、
図2および
図3に示すように、給水部40は、給水管41と、給水路42と、分流部43と、合流部44とを備える。なお、給水管41は、第1給水路の一例であり、給水路42は第2給水路の一例である。
【0040】
給水管41は、壁面Wに設けられた止水栓100(
図2においてブロックで示す)を介して図示しない水道管などの給水源に接続される。また、給水管41と止水栓100との間には、自動水栓用の電磁弁101が接続される。かかる電磁弁101は、図示しない人体検知センサから、例えば吐水部30付近に使用者の手などが差し出されたことを示す検知信号が出力されている間、開弁して流路を開放する一方、検知信号の出力が停止すると、閉弁して流路を閉塞する。すなわち、吐水装置1は、例えば使用者が手を差し出すと自動的に水を吐出する自動水栓を備える。なお、給水管41は、可撓性を有する材質(例えばシリコンなどの樹脂)により製作されるが、材質はこれに限定されるものではない。
【0041】
給水路42は、複数(例えば3つ(3本))あり、給水管41の下流側に分流部43を介して接続される。また、給水路42の下流側には、合流部44を介して吐水部30が接続される。なお、上記では、給水路42を3つとしたが、これに限定されるものではなく、例えば2つあるいは4つ以上であってもよい。
【0042】
上記したように、複数の給水路42には、同一の給水管41から供給された水が流れるものとする。言い換えると、複数の給水路42には、同一の給水系統から供給された水が流れるものとするが、これに限定されるものではない。
【0043】
複数の給水路42はそれぞれ、上流側の給水管41より細くなるように形成される。具体的には、
図6に示すように、複数の給水路42はそれぞれ、外形寸法(外径)E2が給水管41の外形寸法(外径)E1より小さくなるように形成される(E2<E1)。ここで、給水路42の外形寸法E2は、例えば複数の給水路42を流れる水の流量の合計(総流量)が、上流側の給水管41を流れる水の流量と同じあるいは同等となるような値に設定される。なお、複数の給水路42は、全て同じ外形寸法E2に設定されるが、これに限られず、複数の給水路42の一部あるいは全部が、互いに異なる外形寸法となるように設定されてもよい。
【0044】
そして、上記のように構成された複数の給水路42は、
図5および
図6などに示すように、収容空間50内に配置される。これにより、収容空間50の奥行D(
図6参照)を、例えば給水管41が収容されるように構成した場合に比べて小さくして薄型にすることができ、よって吐水装置1において奥行を薄型にしコンパクト化することができる。
【0045】
また、本実施形態に係る給水部40にあっては、給水管41より細い外形寸法E2の給水路42を複数(ここでは3つ)備えることで、例えば給水管41から供給される水量を維持しつつ吐水部30から吐出させることが可能となる。
【0046】
また、複数の給水路42は、
図5などに示すように、左右方向(X軸方向)に並んで配置される。これにより、収容空間50の奥行D(
図6参照)をより小さくして薄型にすることができ、吐水装置1をよりコンパクト化することができる。
【0047】
ここで、上記のように、複数の給水路42を設ける構成とし、仮に給水路42が銅管など剛性の高い材料で製作された場合、例えば施工時における給水路42の接続やメンテナンス時における給水路42の取り外しなどの際に、給水路42を取り回しにくくなって、結果として施工性やメンテナンス性の低下を招くおそれがある。
【0048】
そこで、本実施形態に係る複数の給水路42はそれぞれ、可撓性を有するように構成される。なお、給水路42としては、例えば樹脂製(塩化ビニールやシリコンなど)のチューブを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
このように、複数の給水路42が可撓性を有することで、施工時やメンテナンス時において給水路42を取り回し易くなり、施工性やメンテナンス性の低下を抑制することができ、よって施工性等をより向上させることができる。
【0050】
分流部43は、給水管41と複数の給水路42との間に接続される。そして、分流部43は、給水管41からの水を複数の給水路42へ分流する。また、例えば分流部43は、
図6に示すように、一部がカウンタ20の挿通孔21に位置するように挿通されて配置される。また、分流部43は、上流側の給水管41との接続位置43xが挿通孔21の下端21aより下方になるように位置される一方、下流側の給水路42との接続位置43yが挿通孔21の上端21bより上方に位置される。なお、上記した分流部43が配置される位置は、あくまでも一例であって限定されるものではない。
【0051】
ここで、上記のように、分流部43において複数の給水路42に分流させ、後述するように、分流した複数の給水路42を合流部44において合流させるように構成すると、吐水部30から吐水される水が乱れるおそれがある。すなわち、上記のように構成すると、例えば各給水路42に均等に水が流れずに、各給水路42で流れる水の速度等が互いに異なり易く、これに起因して分流時や合流時に給水路42を含む給水部40内で水の流れが乱れ、よって吐水部30から吐水される水が乱れるおそれがある。
【0052】
そこで、本実施形態に係る分流部43や合流部44などにおいて、吐水部30における吐水の乱れを抑制することができるような構成とした。
【0053】
まず、分流部43について
図7~
図9を参照して詳しく説明する。
図7は、分流部43の正面図であり、
図8は、分流部43の平面図(上面図)である。また、
図9は、
図7のIX-IX線断面図である。なお、
図7~
図9においては、理解の便宜のため、分流部43に接続される給水管41および給水路42を想像線で示した。
【0054】
図7~
図9に示すように、分流部43は、流入部43aと、流出部43bと、整流部43cとを備える。流入部43aは、給水管41からの水が流入する部位である。例えば、流入部43aには、流入口43a1が形成される。流入口43a1には、給水管41が接続され給水管41の水が流入する。
【0055】
流出部43bは、給水路42へ水を流出する部位であり、複数ある。流出部43bは、給水路42と対応するため、給水路42と同じ数(ここでは3つ)ある。例えば、複数の流出部43bにはそれぞれ、流出口43b1が形成される。複数の流出口43b1には、給水路42が接続され給水路42へ水を流出する。
【0056】
整流部43cは、給水部40を流れる水を整流する、詳しくは給水管41から分流部43を介して給水路42へ流れる水を整流する。かかる整流部43cでの整流により、例えば各給水路42に均等に水が流れ、各給水路42で流れる水の速度等が同じあるいは同等になり易くなるため、分流時や合流時に水の流れが乱れにくく、よって吐水部30からの吐水の乱れを抑制することができる。
【0057】
以下、整流部43cについて詳説すると、例えば整流部43cは、流入部43aと流出部43bとの間に設けられる部位である。整流部43cは、中空状に形成され、
図9に示すように、側面視においてL字状に形成される。
【0058】
例えば、整流部43cは、第1流路43c1と、第2流路43c2と、衝突壁部43c3とを備える。第1流路43c1は、上流側が流入部43aと連通し、下流側が第2流路43c2と連通するように形成される。また、第1流路43c1は、
図8に示すように、第2流路43c2に近づくにつれて、言い換えると、下流側にいくにつれて左右方向(X軸方向)に拡幅するように形成される。
【0059】
第2流路43c2は、上流側が第1流路43c1と連通し、下流側が複数(ここでは3つ)の流出部43bと連通するように形成される。また、第2流路43c2は、上下方向に沿って延在するように形成される。
【0060】
衝突壁部43c3は、
図9に示すように、流入部43aの流入口43a1と対向する位置であって、第1流路43c1の上端側(天井側)に形成される。ここで、流入部43aの流入口43a1から流入する水は、下方から上方へ向けて流れるため、衝突壁部43c3には、流入口43a1から流入した水(言い換えると、上流から流れてきた水)が衝突することとなる(矢印G1参照)。
【0061】
衝突壁部43c3に衝突した水は、矢印G2で示すように、第2流路43c2へ流れた後、複数の流出部43bに分流(分岐)してそれぞれ対応する給水路42へ流れる。このように、整流部43cにおいては、給水管41からの水が衝突壁部43c3に衝突して整流され、整流された水が第2流路43c2、流出部43bを介して複数の給水路42へ分流して流れ込むこととなる。
【0062】
これにより、各給水路42の水の速度等が同じあるいは同等になるため、分流時や合流時に水の流れが乱れにくく、吐水の乱れを抑制することができることは既に述べた通りである。
【0063】
また、整流部43cは、給水管41からの水が衝突する衝突壁部43c3を備えるようにしたので、簡易な構成で、給水管41から分流部43を介して給水路42へ流れる水を整流することができる。
【0064】
ここで、分流部43における流出口43b1の流入口43a1に対する位置関係について
図8を参照して詳説する。分流部43の流出口43b1は、流入口43a1に対して、平面視において、言い換えると水の流れ方向と平行な上下方向から見た場合に、ずれるように位置される。
【0065】
詳しくは、分流部43は、複数の流出口43b1における流路断面の中心軸線B1が、流入口43a1における流路断面の中心軸線A1に対して偏心する(ずれる)ように形成される。
【0066】
上記を、流出口43b1に接続される給水路42および流入口43a1に接続される給水管41を用いて別言すると、分流部43の下流側に設けられる全ての給水路42の上流端の流路断面の中心軸線(上記した中心軸線B1と同位置)は、分流部43の上流側に設けられる給水管41の下流端の流路断面の中心軸線(上記した中心軸線A1と同位置)に対して偏心する(ずれる)ように位置される。
【0067】
これにより、例えば分流部43から各給水路42に対して水をより均等に流すことが可能になる。すなわち、仮に複数の流出口43b1のうち、一部の流出口43b1の中心軸線B1が、流入口43a1の中心軸線A1に対して同軸であった場合、かかる一部の流出口43b1に対して流入口43a1からの水が流れ易くなる。そのため、一部の流出口43b1に接続される給水路42に水の流れが偏って、各給水路42に均等に水が流れなくなり、上記したように吐水部30の吐水が乱れるおそれがある。
【0068】
本実施形態に係る分流部43にあっては、複数の流出口43b1の中心軸線B1が、流入口43a1の中心軸線A1に対して偏心するように構成されるため、分流部43から各給水路42に対して水をより均等に流すことが可能になり、結果として吐水の乱れを効果的に抑制することができる。
【0069】
また、流出口43b1は、流出口43b1における流路断面の中心軸線B1方向から見た場合に流入口43a1と重ならない位置に形成される。詳しくは、複数の流出口43b1は、流出口43b1を中心軸線B1方向(言い換えると水の流れ方向と平行な上下方向)に投影した投影面内に、流入口43a1が位置しないように形成される。
【0070】
これにより、例えば分流部43から各給水路42に対して水をより一層均等に流すことが可能になる。すなわち、仮に複数の流出口43b1のうち、一部の流出口43b1が中心軸線B1方向から見て流入口43a1と重なる位置にあった場合、かかる一部の流出口43b1に対して流入口43a1からの水が流れ易くなって、各給水路42に均等に水が流れなくなるおそれがある。
【0071】
本実施形態にあっては、流出口43b1が、中心軸線B1方向から見た場合に流入口43a1と重ならない位置に形成されるため、分流部43から各給水路42に対して水をより一層均等に流すことが可能になり、結果として吐水の乱れをより効果的に抑制することができる。
【0072】
次に、合流部44について説明する。
図2および
図6などに示すように、合流部44は、複数の給水路42の下流側に接続される。そして、合流部44は、複数の給水路42の水を合流させる。
【0073】
また、例えば合流部44は、
図6に示すように、収容空間50に収容される。詳しくは、合流部44は、収容空間50に給水路42とともに収容される。言い換えると、合流部44は、給水路42と同じ収容空間50に収容される。
【0074】
これにより、給水路42においてキンクが発生することを抑制することができる。すなわち、給水路42は可撓性を有するため、給水路42が剛性の高い材料で製作された場合に比べ、折れや捩れ等のキンクが発生し易い。そこで、本実施形態にあっては、合流部44が収容空間50に収容されるため、例えば給水路42が途中で折り曲げられて合流部44に接続されることなどを回避することが可能となり、よって給水路42においてキンクが発生することを抑制することができる。
【0075】
また、複数の給水路42は、収容空間50内において合流部44との接続位置44xまで上下方向に延在するように配置される。詳しくは、複数の給水路42は、収容空間50内において、上流側の分流部43との接続位置43yから、下流側の合流部44との接続位置44xまで上下方向に直線状に延在するように配置される。
【0076】
これにより、給水路42に不要な負荷がかかりにくく、よってキンクが発生することを効果的に抑制することができる。
【0077】
続いて、合流部44が備える、吐水の乱れを抑制することのできる構成等について
図10~
図12を参照して詳しく説明する。
図10は、合流部44の正面図であり、
図11は、合流部44の側面図である。また、
図12は、
図10のXII-XII線断面図である。なお、
図10~
図12においては、理解の便宜のため、合流部44に接続される給水路42を想像線で示した。
【0078】
図10~
図12に示すように、合流部44は、流入部44aと、流出部44b(
図12のみ示す)と、整流部44cとを備える。流入部44aは、複数の給水路42からの水が流入する部位であり、複数ある。流入部44aは、給水路42と対応するため、給水路42と同じ数(ここでは3つ)ある。例えば、複数の流入部44aにはそれぞれ、流入口44a1が形成される。複数の流入口44a1には、給水路42が接続され給水路42の水が流入する。
【0079】
流出部44bは、
図12に示すように、吐水部30へ水を流出する部位である。例えば、流出部44bには、流出口44b1が形成される。流出口44b1には、吐水部30の吐水口31(
図10参照)が接続され、吐水口31へ水を流出する。
【0080】
ここで、整流部44cの説明に入る前に、吐水部30について説明する。
図10に示すように、吐水部30は、合流部44で合流された水が供給されて吐水口31から吐水する。吐水口31は、左右方向(X軸方向)に幅広に形成される。従って、吐水口31からは、幅の広い滝状(言い換えると薄膜状)の水が吐水されることとなる。なお、流出部44bの流出口44b1は、吐水口31と対応することから、吐水口31と同様、左右方向に幅広に形成される(
図12参照)。
【0081】
また、本実施形態において、合流部44と吐水部30とは、一体に形成される。このように、給水部40の一部である合流部44と、吐水部30とが一体に形成されるため、合流部44と吐水部30とが別体である場合に比べて部品点数を削減することができ、吐水装置1をよりコンパクト化することができる。
【0082】
なお、上記では、合流部44と吐水部30とが一体に形成されるようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば合流部44と吐水部30とが別体に形成されてもよい。
【0083】
整流部44cの説明に戻ると、整流部44cは、給水部40を流れる水を整流する、詳しくは給水路42から合流部44を介して吐水部30へ流れる水を整流する。かかる整流部44cでの整流により、各給水路42や合流部44の流路44c1(
図12参照)で均等に水が流れ、各給水路42で流れる水の速度等が同じあるいは同等になり易くなるため、分流時や合流時に水の流れが乱れにくく、よって吐水部30からの吐水の乱れを抑制することができる。
【0084】
以下、整流部44cについて詳説すると、例えば整流部44cは、流入部44aと流出部44bとの間に設けられる部位である。整流部44cは、中空状に形成されるとともに、上下方向に沿って延在するように形成される。
【0085】
例えば、整流部44cは、
図12に示すように、流路44c1と、衝突壁部44c2と、ガイド部44c3とを備える。流路44c1は、上流側が流入部44a(詳しくは流入口44a1)と連通する。これにより、流路44c1には、複数の給水路42からの水が流入部44aを介して流入し、合流することとなる。
【0086】
流路44c1は、下流側が流出部44b(詳しくは流出口44b1)と連通するように形成される。また、流路44c1は、流出部44bに近づくにつれて、言い換えると、下流側にいくにつれて左右方向(X軸方向)に拡幅するように形成される。
【0087】
衝突壁部44c2は、流路44c1内において、流入部44aの流入口44a1と対向する位置に形成される。衝突壁部44c2は、複数ある。衝突壁部44c2は、流入口44a1と対応するため、流入口44a1と同じ数(ここでは3つ)ある。衝突壁部44c2は、例えば流路44c1内に立設される円柱状のボスであるが、これに限定されるものではなく、例えば板状などその他の形状の壁部であってもよい。
【0088】
ガイド部44c3は、流路44c1内において、衝突壁部44c2の下流側に形成され、流路44c1内の水を流出口44b1へガイドする。例えば、ガイド部44c3は、流路44c1内の中央付近に位置する衝突壁部44c2を中心にして、下流側へ向けて放射状となるように延在して形成される。
【0089】
ここで、流入部44aの流入口44a1から整流部44cの流路44c1へ流入する水は、下方から上方へ向けて流れるため、衝突壁部44c2には、流入口44a1から流路44c1へ流入した水(言い換えると、上流から流れてきた水)が衝突することとなる(矢印H1参照)。
【0090】
衝突壁部44c2に衝突した水は、矢印H2で示すように、ガイド部44c3によって放射状に広がりつつ、流出部44bの流出口44b1を介して吐水部30へ流れて吐出される。このように、整流部44cにおいては、複数の給水路42からの水が衝突壁部44c2に衝突して整流され、整流された水が流出部44bを介して吐水部30から吐出されることとなる。
【0091】
これにより、各給水路42や流路44c1で均等に水が流れ、各給水路42で流れる水の速度等が同じあるいは同等になり易くなるため、分流時や合流時に水の流れが乱れにくく、吐水の乱れを抑制することができることは既に述べた通りである。
【0092】
また、整流部44cは、給水路42からの水が衝突する衝突壁部44c2を備えるようにしたので、簡易な構成で、給水路42から合流部44を介して吐水部30へ流れる水を整流することができる。
【0093】
ここで、上記のように構成された合流部44に接続される複数の給水路42は、互いの長さが同じになるように形成される。これにより、吐水の乱れをより一層抑制することができる。
【0094】
詳しくは、
図2に示すように、複数の給水路42は、分流部43との接続位置43yから合流部44との接続位置44xまでの長さF1が同一となるように形成される。
【0095】
これにより、例えば複数の給水路42を流れる水が受ける圧力損失が、複数の給水路42の間で同じになり、各給水路42で均等に水が流れて水の速度等が同じあるいは同等になり易くなる。そのため、各給水路42を流れる水が合流部44で合流する際に水の流れが乱れにくく、吐水の乱れをより一層抑制することができる。
【0096】
なお、上記では、複数の給水路42の全てにおいて長さが同一となるように形成されるが、これに限られず、例えば複数の給水路42のうちの一部において長さが同一となるように形成されてもよい。
【0097】
次に、保持部60について
図2,3,5を参照して説明する。
図2,3,5に示すように、保持部60は、複数の給水路42を保持する部材である。例えば、保持部60は、
図5に示すように、平板部61と、湾曲部62とを備える。
【0098】
平板部61は、平板状の部材であり、パネル部12の背面壁部12aにおける壁面W側の面に沿って、上下方向に延在するように形成される。湾曲部62は、平板部61から壁面Wに向けて突出するように湾曲して形成される。湾曲部62において、湾曲によって形成される空間には給水路42が配置(配設)可能とされる。なお、湾曲部62は、給水路42に対応するため、複数(ここでは3つ)ある。
【0099】
上記のように構成された保持部60にあっては、湾曲部62に給水路42が配置された状態で、平板部61がパネル部12の背面壁部12aに取り付けられることで、複数の給水路42を保持することができる。
【0100】
このように、本実施形態に係る吐水装置1にあっては、保持部60を備えるように構成したので、例えば施工時に複数の給水路42がばらけて施工性が低下してしまうことを抑制することができる。また、本実施形態にあっては、保持部60を備えることで、例えば施工時に給水路42に対して意図しない力が作用して、給水路42にキンク等が発生することを抑制することができる。
【0101】
なお、上記した保持部60の構成は、一例であって限定されるものではない。すなわち、保持部60は、複数の給水路42を保持可能であればよく、例えば粘着テープやバンドなどで複数の給水路42を保持するようにしてもよい。
【0102】
上述してきたように、第1の実施形態に係る吐水装置1は、吐水部30と、給水部40と、パネル部12とを備える。給水部40は、吐水部30へ給水する。パネル部12は、壁面W(設置面)に対向するように設置される。パネル部12と壁面W(設置面)との間に給水部40の少なくとも一部を収容する収容空間50が形成される。給水部40は、収容空間50内に配置され、給水源に接続された給水管41(第1給水路)の下流側に接続される複数の給水路42(第2給水路)を含む。複数の給水路42はそれぞれ、外形寸法が給水管41の外形寸法より小さくなるように形成されるとともに、可撓性を有する。
【0103】
これにより、吐水装置1において、前後方向の奥行を薄型にするコンパクト化を図ることができる。
【0104】
また、第1の実施形態に係る吐水装置1は、吐水部30と、給水部40と、パネル部12とを備える。給水部40は、吐水部30へ給水する。パネル部12は、壁面W(設置面)に対向するように設置される。パネル部12と壁面W(設置面)との間に給水部40の少なくとも一部を収容する収容空間50が形成される。給水部40は、収容空間50内に配置され、給水源に接続された給水管41(第1給水路)の下流側に接続される複数の給水路42(第2給水路)と、給水管41と複数の給水路42との間に接続され、給水管41からの水を複数の給水路42へ分流する分流部43と、複数の給水路42の下流側に接続され、複数の給水路42の水を合流させる合流部44とを含む。複数の給水路42はそれぞれ、外形寸法が給水管41の外形寸法より小さくなるように形成されるとともに、可撓性を有する。分流部43および合流部44の少なくとも一方は、給水部40を流れる水を整流する整流部43c,44cを備える。
【0105】
これにより、吐水装置1において、前後方向の奥行を薄型にするコンパクト化を図りつつ、吐水の乱れを抑制することができる。
【0106】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下では、第2の実施形態において、第1の実施形態の構成と対応する構成は、符号の先頭に「1」を付して説明することがある。
【0107】
図13は、第2の実施形態に係る吐水装置1の正面図である。また、
図14は、
図13のXIV-XIV線断面図である。
図13および
図14に示すように、第2の実施形態に係る給水部40は、第1の実施形態の分流部43とは異なる構成の分流部143を備える。
【0108】
例えば、分流部143は、
図13に示すように、カウンタ20より下方に位置するように配置される。具体的には、分流部143は、下流側に接続される複数の給水路42との接続位置143yがカウンタ20の挿通孔21の下端21aより下方になるように位置される。また、分流部143は、上流側に接続される給水管41との接続位置143xがカウンタ20の挿通孔21の下端21aより下方になるように位置される。
【0109】
これにより、収容空間50に複数の給水路42が収容されるとともに、カウンタ20の挿通孔21の全てに複数の給水路42が挿通されることとなる。言い換えると、収容空間50およびカウンタ20の挿通孔21には、分流部143が配置されないように構成される。
【0110】
これにより、収容空間50の奥行Dを、例えば給水管41や分流部143が収容されるように構成した場合に比べて小さくして薄型にすることができ、よって吐水装置1の奥行を薄型にしコンパクト化することができる。
【0111】
また、上記したように、カウンタ20の挿通孔21に複数の給水路42が挿通されることから、吐水装置1の施工性をより一層向上させることができる。
【0112】
すなわち、例えば、手洗い器10をカウンタ20に載置する際、作業者は、パネル部12を前方に傾斜させた状態で、可撓性を有する給水路42を挿通孔21に挿通させ、その後、パネル部12を起こして壁面Wに設置することで、手洗い器10をカウンタ20に載置することが可能になる。これにより、例えばパネル部12等で壁面Wを傷付けたりしにくくなり、吐水装置1の施工性をより一層向上させることができる。
【0113】
次に、分流部143について
図15~
図17を参照してより詳しく説明する。
図15は、分流部143の正面図であり、
図16は、分流部143の平面図(上面図)である。また、
図17は、
図15のXVII-XVII線断面図である。
【0114】
図15~
図17に示すように、分流部143は、流入部143aと、流出部143bと、整流部143cとを備える。流入部143aには、流入口143a1が形成され、給水管41の水が流入する。複数の流出部143bにはそれぞれ、流出口143b1が形成され、給水路42へ水を流出する。
【0115】
整流部143cは、給水部40を流れる水を整流する、詳しくは給水管41から分流部143を介して給水路42へ流れる水を整流する。例えば、整流部143cは、流入部143aと流出部143bとの間に設けられる部位である。整流部143cは、中空状であり、また円筒状に形成される。
【0116】
例えば、整流部143cは、
図17に示すように、流路143c1と、衝突壁部143c2とを備える。流路143c1は、上流側が流入部143aと連通し、下流側が流出部143bと連通するように形成される。また、流路143c1は、流出部143bに近づくにつれて、言い換えると、下流側にいくにつれて部分的に拡径するように形成される。
【0117】
衝突壁部143c2は、流入部143aの流入口143a1と対向する位置であって、流路143c1の上端側(天井側)に形成される。流入部143aの流入口143a1から流入する水は、下方から上方へ向けて流れるため、衝突壁部143c2には、流入口143a1から流入した水(言い換えると、上流から流れてきた水)が衝突することとなる(矢印K1参照)。
【0118】
衝突壁部143c2に衝突した水は、矢印K2で示すように、複数の流出部143bに分流(分岐)してそれぞれ対応する給水路42へ流れる。このように、整流部143cにおいては、給水管41からの水が衝突壁部143c2に衝突して整流され、整流された水が流出部143bを介して複数の給水路42へ分流して流れ込むこととなる。
【0119】
これにより、各給水路42の水の速度等が同じあるいは同等になるため、分流時や合流時に水の流れが乱れにくく、吐水の乱れを抑制することができることは、第1の実施形態と同様である。
【0120】
ここで、分流部143における流出口143b1の流入口143a1に対する位置関係について
図16を参照して詳説する。分流部143の流出口143b1は、流入口143a1に対して、平面視において、言い換えると水の流れ方向と平行な上下方向から見た場合に、ずれるように位置される。
【0121】
詳しくは、分流部143は、複数の流出口143b1における流路断面の中心軸線B2が、流入口143a1における流路断面の中心軸線A2に対して偏心する(ずれる)ように形成される。
【0122】
より詳しくは、分流部143は、複数の流出口143b1における流路断面の中心軸線B2から、流入口143a1における流路断面の中心軸線A2までの距離J1がそれぞれ同一となるように形成される。また、分流部143は、平面視において、流出口143b1が流入口143a1における流路断面の中心軸線A2を中心に所定間隔(ここでは120度間隔)で形成される。
【0123】
これにより、例えば分流部143から各給水路42に対して水をより均等に流すことが可能になる。すなわち、仮に流出口143b1の中心軸線B2から流入口143a1の中心軸線A2までの距離が、複数の流出口143b1の間で異なる場合、例えば流入口143a1から最も近い流出口143b1に対して流入口143a1からの水が流れ易くなる。そのため、流入口143a1から最も近い流出口143b1に接続される給水路42に水の流れが偏って、各給水路42に均等に水が流れなくなり、吐水部30の吐水が乱れるおそれがある。
【0124】
第2の実施形態に係る分流部143にあっては、複数の流出口143b1の中心軸線B2から流入口143a1の中心軸線A2までの距離J1がそれぞれ同一となるように形成されるため、分流部143から各給水路42に対して水をより均等に流すことが可能になり、結果として吐水の乱れを効果的に抑制することができる。
【0125】
なお、上記では、複数の流出口143b1の全てにおいて距離J1が同一となるように形成されるが、これに限られず、例えば複数の流出口143b1のうちの一部において距離が同一となるように形成されてもよい。
【0126】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。なお、以下では、第3の実施形態において、第1の実施形態の構成と対応する構成は、符号の先頭に「2」を付して説明することがある。
【0127】
図18は、第3の実施形態に係る吐水装置1を示す全体斜視図であり、
図19は、第3の実施形態に係る吐水装置1の正面図である。
図18および
図19に示すように、第2の実施形態に係る吐水装置1は、第1の実施形態の合流部44とは異なる構成の合流部244と、吐水部230とを備える。
【0128】
なお、
図19に示すように、複数の給水路42は、従前の実施形態と同様、分流部43との接続位置43yから合流部244との接続位置244xまでの長さF2が同一となるように形成される。
【0129】
以下、合流部244および吐水部230について
図20~
図22を参照して説明する。
図20は、合流部244および吐水部230の正面図であり、
図21は、合流部244および吐水部230の側面図である。また、
図22は、
図20のXXII-XXII線断面図である。
【0130】
図20および
図21に示すように、吐水部230は、合流部244で合流された水が供給される。吐水部230は、供給された水に例えばフィルタにより空気を混ぜて吐水口231から泡沫状の吐水を行う、すなわち泡沫吐水を行う。なお、吐水部230は、上記した泡沫吐水するものに限られず、例えばシャワー吐水などその他の吐水形態のものであってもよい。
【0131】
図22に示すように、合流部244は、流入部244aと、流出部244bと、流路244cとを備える。流入部244aは、複数の給水路42からの水が流入する部位であり、複数ある。複数の流入部244aにはそれぞれ、流入口244a1が形成され、給水路42の水が流入する。流出部244bには、流出口244b1が形成され、吐水口231(
図20参照)へ水を流出する。
【0132】
流路244cは、上流側が流入部244a(詳しくは流入口244a1)と連通する。これにより、流路244cには、複数の給水路42からの水が流入部244aを介して流入し、合流することとなる。
【0133】
流路244cは、下流側が流出部244b(詳しくは流出口244b1)と連通するように形成される。また、流路244cは、流出部244bに近づくにつれて、言い換えると、下流側にいくにつれて左右方向(X軸方向)の幅が小さくなるように形成される。これにより、流路244cで合流した水は、下流側にいくにつれて速度を上げつつ、矢印L1で示すように、流出部244bの流出口244b1を介して吐水部30(
図20参照)へ流れて吐出される。
【0134】
このように、第3の実施形態に係る合流部244は、衝突壁部を備えず、衝突による整流が行われないようにした。これは、上記した泡沫吐水を行う吐水部230では、合流時に生じる水の乱れに起因した吐水の乱れは発生しにくいため、合流部244において衝突による整流が行われないような構成とした。
【0135】
このように、第3の実施形態にあっては、分流部43(
図19参照)において衝突による整流が行われる一方、合流部244において衝突による整流が行われない構成とすることで、吐水装置1を、吐水部230の吐水形態に応じた適切な構成とすることが可能になる。
【0136】
なお、第3の実施形態では、合流部244において衝突による整流が行われないようにしたが、これに限定されるものではなく、衝突による整流が行われるようにしてもよい。
【0137】
また、第3の実施形態に係る吐水装置1は、
図19に示すように、分流部43を備えるようにしたが、これに代えて、例えば第2の実施形態に係る分流部143を備えるようにしてもよい。
【0138】
(変形例)
次に、変形例について説明する。
図23は、変形例に係る給水路等を説明するための図である。変形例にあっては、上記した複数の給水路、分流部および合流部の機能を有する給水ユニット300を用いるようにした。なお、
図23では、吐水部30を模式的にブロックで示している。
【0139】
図23に示すように、給水ユニット300は、周囲が液密に密閉されたパウチ状(袋状)に形成される。例えば、給水ユニット300の内部には、区画壁345が水の流れ方向と平行な上下方向に沿って複数設けられる。
【0140】
給水ユニット300にあっては、内部空間がかかる区画壁345によって区画されることで、複数の給水路342が形成される。また、給水ユニット300にあっては、複数の給水路342の上流側に分流部343が形成され、複数の給水路342の下流側に合流部344が形成される。また、分流部343の上流側には、流入部343aを介して給水管41が接続される。合流部344の下流側には、流出部344aを介して吐水部30が接続される。
【0141】
これにより、変形例に係る給水ユニット300にあっては、給水管41から流入部343aを介して流入された水は、矢印M1で示すように、分流部343で複数の給水路342へ分流される。分流された水は、複数の給水路342を流れ、その後矢印M2で示すように、合流部344において合流し、流出部344aを介して吐水部30へ流れ吐出される。
【0142】
変形例においては、上記したようなパウチ状の給水ユニット300を用いた場合であっても、従前の実施形態と同様な効果を得ることができる。
【0143】
なお、上記した各実施形態および変形例では、収容空間50は、給水部40の一部を収容するようにしたが、これに限定されるものではなく、給水部40の全部を収容するようにしてもよい。すなわち、収容空間50は、給水部40の少なくとも一部を収容していればよい。
【0144】
なお、上記した第1および第2の実施形態では、分流部43,143および合流部44の両方が整流部を備えるようにしたが、分流部43,143および合流部44のいずれか一方が整流部を備えるようにしてもよい。すなわち、分流部43,143および合流部44の少なくとも一方が整流部を備えていればよい。
【0145】
また、上記では、吐水装置1が自動水栓を備えるようにしたが、これに限られず、手動水栓を備えるようにしてもよい。
【0146】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0147】
1 吐水装置
12 パネル部
30 吐水部
40 給水部
41 給水管(第1給水路)
42 給水路(第2給水路)
50 収容空間