(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
F24F 11/86 20180101AFI20240509BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240509BHJP
F24F 140/10 20180101ALN20240509BHJP
【FI】
F24F11/86
F25B1/00 361A
F24F140:10
(21)【出願番号】P 2020179205
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(72)【発明者】
【氏名】廣内 優
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆志
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/088212(WO,A1)
【文献】特開2009-144940(JP,A)
【文献】特開2014-047935(JP,A)
【文献】特開2007-225264(JP,A)
【文献】特開平01-131855(JP,A)
【文献】特開2018-054230(JP,A)
【文献】特開2019-138486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00-11/89
F25B 1/00
F24F 140/10
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の圧縮機を有する複数の室外機と、同複数の室外機に冷媒配管で接続される複数の室内機と、前記複数の圧縮機を制御する制御手段と、
を有する空気調和装置であって、
前記制御手段は、冷房運転を開始するとき、
前記複数の
室内機のうちの運転する室内機が要求する冷房能力の合計値である要求能力を前記複数の室外機の台数で除して、各々の前記室外機が担う室外機供給能力を算出し、算出した各々の前記室外機が担う前記室外機供給能力を、当該各室外機が有する駆動可能な圧縮機の台数で除して、各々の前記室外機において駆動可能な圧縮機の各々が担う圧縮機供給能力を算出し、
算出された前記圧縮機供給能力を前記駆動可能な圧縮機に発揮させるように、当該各圧縮機の回転数を制御する、
ことを特徴とする空気調和装置。
【請求項2】
前記複数の圧縮機に吸入される冷媒の圧力である吸入圧力を検出する吸入圧力センサを有し、
前記制御手段は、冷房運転を開始してから定期的に前記吸入圧力センサで検出した前記吸入圧力を取り込み、取り込んだ同吸入圧力の値の変化量が所定の範囲内の値となれば、前記圧縮機供給能力に基づく前記各圧縮機の回転数制御を終了する、
ことを特徴とする請求項1に記載の空気調和装置。
【請求項3】
前記複数の室外機のうち、発揮できる最大能力が前記室外機供給能力よりも小さい室外機がある場合は、当該室外機の最大能力を前記各室外機の各々が担う室外機供給能力とする、
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多室型の空気調和装置に関かり、特に、冷房運転開始時の圧縮機の起動制御に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の室外機と、複数の室内機とが液管およびガス管で接続された多室型の空気調和装置では、各室外機に能力可変型の圧縮機が複数搭載されるものがある。このような空気調和装置では、各室内機が要求する空調能力の合計値に応じて室外機の運転台数が決定される。また、運転する室外機では、当該室外機が担う能力に応じて、圧縮機の運転台数や回転数が決定される(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のような空気調和装置では、空気調和装置の停止時に各室内機の室内熱交換器や、各室内機と各室外機とを接続するガス管に液冷媒が滞留している場合がある。室内熱交換器やガス管に液冷媒が滞留した状態で一部の室外機のみを起動して冷房運転を開始すれば、当該起動する室外機に空気調和装置の停止時に室内熱交換器やガス管に滞留していた液冷媒が多量に流入し、当該室外機に備えられたアキュムレータで収容できる量を超えた液冷媒が圧縮機に吸入される、所謂圧縮機への液バックが発生する恐れがある。そこで、上記のような圧縮機への液バックへの対策として、冷房運転を開始する際は、全ての圧縮機を各室内機の要求能力の合計値に応じた回転数で起動する、つまり、全ての室外機を起動することが考えられる。このように、冷房運転の起動時に全ての圧縮機を起動すれば、流入する液冷媒の量を各室外機に分散できるので、圧縮機への液バックの発生を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した空気調和装置では、他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機が存在する場合がある。ここで、発揮される能力が低い室外機とは、例えば、各室外機に搭載される複数の圧縮機の能力が同じであるときに、搭載される複数の圧縮機のうちの1台が故障して駆動できない室外機や、各室外機に搭載される複数の圧縮機の能力が同じであるが他の室外機と比べて搭載されている圧縮機の台数が少ない室外機である。このように、他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機が存在する場合に、冷房運転開始時に全ての圧縮機を各室内機の要求能力の合計値に応じた同じ回転数で起動すると、発揮される能力が低い室外機以外の他の室外機に流入する液冷媒量が多くなって、当該他の室外機で圧縮機への液バックが発生する恐れがあった。
【0006】
本発明は以上述べた問題点を解決するものであって、他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機が存在する場合であっても、圧縮機への液バックの発生を抑制して冷房運転の起動が行える空気調和装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の空気調和装置は、複数の圧縮機を有する複数の室外機と、複数の室外機に冷媒配管で接続される複数の室内機と、複数の圧縮機を制御する制御手段とを有する。制御手段は、冷房運転を開始するとき、複数の室内機のうちの運転する室内機が要求する冷房能力の合計値である要求能力を複数の室外機の台数で除して、各々の室外機が担う室外機供給能力を算出する。制御手段は、算出した各々の室外機が担う室外機供給能力を、当該室外機が有する駆動可能な圧縮機の台数で除して、各々の室外機において駆動可能な圧縮機の各々が担う圧縮機供給能力を算出する。そして、制御手段は、算出された圧縮機供給能力を駆動可能な圧縮機に発揮させるように、駆動可能な圧縮機の回転数を制御する。
【発明の効果】
【0008】
上記のような本発明の空気調和装置では、他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機が存在する場合であっても、圧縮機への液バックの発生を抑制して冷房運転の起動が行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における空気調和装置の冷媒回路図であり、(A)は冷媒回路の全体図、(B)は室外機制御手段の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態における、室外機の構成を説明する図面である。
【
図3】本発明の実施形態における、冷房運転開始時の各圧縮機の制御を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。実施形態としては、10台の室内機と4台の室外機とが冷媒配管で接続され、全ての室内機で同時に冷房運転あるいは暖房運転が行える多室型空気調和装置を例に挙げて説明する。尚、本発明は以下の実施形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【実施例】
【0011】
図1(A)に示すように、本実施形態における多室型の空気調和装置1は、4台の室外機2a~2dと、4台の室外機2a~2dに液管8、液分管8a~8d、ガス管9、ガス分管9a~9d、および、分流器110,120で接続された10台の室内機5-1~5-10(
図1では、これらのうちの2台の室内機5-1と5-10のみを描画している)とを備えている。より詳細には、各室外機2a~2dの閉鎖弁25a~25bと分流器110とが液分管8a~8dで接続され、分流器110と各室内機5の液管接続部53とが液管8で接続されている。また、各室外機2a~2dの閉鎖弁26a~26bと分流器120とがガス分管9a~9dで接続され、分流器120と各室内機5のガス管接続部54とがガス管9で接続されている。このように、4台の室外機2a~2dと10台の室内機5とが液管8、液分管8a~8d、ガス管9、ガス分管9a~9d、および、分流器110,120で接続されて、空気調和装置1の冷媒回路10が形成されている。
【0012】
<各室外機の構成>
まずは、
図2を用いて、4台の室外機2a~2dについて説明する。4台の室外機2a~2dは、第1圧縮機20-1a~20-1dと、第2圧縮機20-2a~20-2dと、オイルセパレータ21a~21dと、四方弁22a~22dと、室外熱交換器23a~23dと、室外機膨張弁24a~24dと、液分管8a~8dがそれぞれ接続された閉鎖弁25a~25dと、ガス分管9a~9dがそれぞれ接続された閉鎖弁26a~26dと、アキュムレータ27a~27dと、室外機ファン28a~28dとを備えている。そして、室外機ファン28a~28dを除くこれら各装置が、以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて冷媒回路10の一部をなす室外機冷媒回路30a~30dを形成している。
【0013】
なお、室外機2a~2dの構成は本実施形態では全て同じであるため、以下の説明では、
図2は室外機2aのみの描画として室外機2aの構成についてのみ説明を行い、その他の室外機2b~2dについては説明を省略する。なお、室外機2aの各構成に付与した番号の末尾をaからb~dにそれぞれ変更したものが、室外機2aの各構成と対応する室外機2b~2dの各構成となる。
【0014】
第1圧縮機20-1aは、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。第1圧縮機20-1aの冷媒吐出口は、吐出管40aの一端に吐出分管40-1aで接続されている。吐出管40aの他端は、後述するオイルセパレータ21aに接続されるため、第1圧縮機20-1aの冷媒吐出口は、吐出分管40-1aおよび吐出管40aを介してオイルセパレータ21aに接続される。また、第1圧縮機20-1aの冷媒吸入口は、吸入管42aの一端に吸入分管42-1aで接続されている。吸入管42aの他端は、後述するアキュムレータ27aに接続されるため、第1圧縮機20-1aの冷媒吸入口は、吸入分管42-1aおよび吸入管42aを介してアキュムレータ27aに接続される。
【0015】
第2圧縮機20-2aは、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動されることで、運転容量を可変できる能力可変型圧縮機である。第2圧縮機20-2aの冷媒吐出口は、吐出管40の一端に吐出分管40-2aで接続されている。吐出管40aの他端は、後述するオイルセパレータ21aに接続されるため、第2圧縮機20-2aの冷媒吐出口は、吐出分管40-2aおよび吐出管40aを介してオイルセパレータ21aに接続される。また、第2圧縮機20-2aの冷媒吸入口は、吸入管42の一端に吸入分管46-2aで接続されている。吸入管42aの他端は、後述するアキュムレータ27aに接続されるため、第2圧縮機20-2aの冷媒吸入口は、吸入分管42-2aおよび吸入管42aを介してアキュムレータ27aに接続される。
【0016】
なお、本実施形態では、第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aは、同じ能力を発揮できるものである。また、第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aは、冷房運転時は後述する吸入圧力センサ32で検出した吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度が、室内機5-1~5-10のそれぞれで要求される冷房能力の合計値に応じて定められる目標低圧飽和温度となるように各々の回転数が制御され、暖房運転時は後述する吐出圧力センサ31で検出した吐出圧力を用いて求めた高圧飽和温度が、室内機5-1~5-10のそれぞれで要求される暖房能力の合計値に応じて定められる目標高圧飽和温度となるように各々の回転数が制御される。
【0017】
オイルセパレータ21aは、円筒形状の密閉容器を有する遠心分離式のオイルセパレータである。オイルセパレータ21aには油戻し管47aの一端が接続されており、油戻し管47aの他端は吸入管42aに接続されている。そして、油戻し管47aにはキャピラリーチューブ29aが設けられている。また、オイルセパレータ21aは、後述する四方弁22aのポートaと流出管41aで接続されている。オイルセパレータ21aは、第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各々から吐出され吐出分管40-1a、吐出分管40-2a、および、吐出管40aを介して流入した冷凍機油を含む冷媒を冷媒と冷凍機油とに分離し、分離された冷凍機油を油戻し管47a、吸入管42a。吸入分管42-1a、および、吸入分管42-2aを介して第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各々に戻すとともに、分離された冷媒を流出管41aへと流出させる。なお、油戻し管47aへは、冷凍機油とともに冷媒も流入するが、油戻し管47aに設けられたキャピラリーチューブ29aにより第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各々に戻る冷媒量が規制される。
【0018】
四方弁22aは、冷媒回路10における冷媒の流れる方向を切り換えるための弁であり、a、b、c、dの4つのポートを備えている。ポートaは、上述したようにオイルセパレータ21aと流出管41aで接続されている。ポートbは、室外熱交換器23aの一方の冷媒出入口と冷媒配管43aで接続されている。ポートcは、アキュムレータ27aの冷媒流入口と冷媒配管46aで接続されている。そして、ポートdは、閉鎖弁26aと室外機ガス管45aで接続されている。
【0019】
室外熱交換器23aは、冷媒と、後述する室外機ファン28aの回転により室外機2aの内部に取り込まれた外気を熱交換させるものである。上述したように、室外熱交換器23aの一方の冷媒出入口と四方弁22aのポートbが冷媒配管43aで接続されている。また、室外熱交換器23aの他方の冷媒出入口と閉鎖弁25aが室外機液管44aで接続されている。室外熱交換器23aは、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は凝縮器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は蒸発器として機能する。
【0020】
室外機膨張弁24aは、室外機液管44aに設けられている。室外機膨張弁24aは、図示しないパルスモータにより駆動される電子膨張弁であり、パルスモータに与えられるパルス数によって開度が調整されることで、室外熱交換器23aに流入する冷媒量、あるいは、室外熱交換器23aから流出する冷媒量が調整される。室外機膨張弁24aの開度は、空気調和装置1が暖房運転を行っている場合は、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出される冷媒の温度である吐出温度が、室内機5-1~5-1の各々で要求される暖房能力に基づいて決定される目標吐出温度となるように、その開度が調整される。また、室外機膨張弁24aの開度は、冷房運転を行っている場合は全開とされる。
【0021】
アキュムレータ27aは、前述したように、冷媒流入口が四方弁22aのポートcと冷媒配管46aで接続されるとともに、冷媒流出口が第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aの各冷媒吸入口と吸入分管46-1a、吸入分管46-2a、および、吸入管42aで接続されている。アキュムレータ27aは、冷媒配管46aからアキュムレータ27aの内部に流入した冷媒をガス冷媒と液冷媒に分離してガス冷媒のみを第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入させる。
【0022】
室外機ファン28aは樹脂材で形成されており、室外熱交換器23aの近傍に配置されている。室外機ファン28aは、図示しないファンモータによって回転することで、室外機2aの図示しない筐体に設けられた吸込口から室外機2aの内部へ外気を取り込み、室外熱交換器23aにおいて冷媒と熱交換した外気を室外機2aの図示しない筐体に設けられた吹出口から室外機2aの外部へ放出する。
【0023】
以上説明した構成の他に、室外機2aには各種のセンサが設けられている。
図1(A)に示すように、吐出管40aには、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出される冷媒の圧力である吐出圧力(以降、高圧圧力と記載する場合がある)を検出する吐出圧力センサ31aと、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出される冷媒の温度を検出する吐出温度センサ33aが設けられている。冷媒配管46におけるアキュムレータ28の冷媒流入口近傍には、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入される冷媒の圧力である吸入圧力(以降、低圧圧力と記載する場合がある)を検出する吸入圧力センサ32aと、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入される冷媒の温度を検出する吸込温度センサ34aとが設けられている。
【0024】
室外機液管44aにおける室外熱交換器23aと室外機膨張弁24aとの間には、室外熱交換器23aに流入する冷媒の温度、あるいは、室外熱交換器23aから流出する冷媒の温度を検出するための熱交温度センサ35aが設けられている。そして、室外機2aの図示しない筐体の吸込口付近には、室外機2aの内部に流入する外気の温度、すなわち外気温度を検出する外気温度センサ36aが備えられている。
【0025】
また、室外機2には、本発明の制御手段である室外機制御手段200aが備えられている。室外機制御手段200aは、室外機2aの図示しない筐体の内部に設けられる電装品箱に格納された制御基板に搭載されており、
図1(B)に示すように、CPU210aと、記憶部220aと、通信部230aと、センサ入力部240aとを備えている。
【0026】
記憶部220aは、例えばフラッシュメモリであり、室外機2aの制御プログラムや前述した各種センサから取り込んだ検出信号に対応した検出値、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aや室外機ファン28aの駆動状態、室外機膨張弁24aの開度、室内機5-1~5-10の各々から受信した運転情報(運転/停止情報、冷房/暖房等の運転モード、室内機5-1~5-10のそれぞれが要求する冷房能力あるいは暖房能力などを含む)、冷房運転時の低圧圧力の目標値となる目標低圧飽和温度などを記憶する。通信部230aは、室内機5-1~5-10の各々と通信を行うインターフェイスである。センサ入力部240aは、前述した室外機2aの各種センサでの検出結果を取り込んでCPU210aに出力する。
【0027】
CPU210aは、センサ入力部240aを介して各種センサでの検出値を定期的(例えば、30秒毎)に取り込むとともに、室内機5-1~5-10のそれぞれから送信される運転情報を含む信号を、通信部230aを介して取り込む。CPU210aは、これら入力された各種情報に基づいて、室外機膨張弁24aの開度調整、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aや室外機ファン28aの駆動制御などを行う。なお、室外機制御手段200aが、本発明の制御手段に相当する。
【0028】
<各室内機の構成>
次に、
図1(A)を用いて
10台の室内機5-1~5-10について説明する。10台の室内機5-1~5-10は全て同じ構成を有しており、室内熱交換器51と、室内機膨張弁52と、液管接続部53と、ガス管接続部54と、室内機ファン55とを備えている。そして、室内機ファン55を除くこれら各構成装置が以下で詳述する各冷媒配管で相互に接続されて、冷媒回路10の一部をなす室内機冷媒回路50を構成している。
【0029】
室内熱交換器51は、冷媒と、後述する室内機ファン55の回転により図示しない吸込口から室内機5の内部に取り込まれた室内空気を熱交換させるものである。室内熱交換器51の一方の冷媒出入口と液管接続部53とが室内機液管71で接続され、他方の冷媒出入口とガス管接続部54とが室内機ガス管72で接続されている。室内熱交換器51は、空気調和装置1が冷房運転を行う場合は蒸発器として機能し、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は凝縮器として機能する。尚、液管接続部53やガス管接続部54は、各冷媒配管が溶接やフレアナット等により接続されている。
【0030】
室内機膨張弁52は、室内機液管71に設けられている。室内機膨張弁52は電子膨張弁であり、室内熱交換器51が蒸発器として機能する場合すなわち室内機5が冷房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(ガス管接続部54側)での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように調整される。また、室内機膨張弁52は、室内熱交換器51が凝縮器として機能する場合すなわち室内機5が暖房運転を行う場合は、その開度は、室内熱交換器51の冷媒出口(液管接続部53側)での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように調整される。ここで、目標冷媒過熱度や目標冷媒過冷却度とは、室内機5-1~5-10の各々で十分な冷房能力あるいは暖房能力を発揮するのに必要な冷媒過熱度および冷媒過冷却度である。
【0031】
室内機ファン55は樹脂材で形成されており、室内熱交換器51の近傍に配置されている。室内機ファン55は、図示しないファンモータによって回転することで、図示しない吸込口から室内機5の内部に室内空気を取り込み、室内熱交換器51において冷媒と熱交換した室内空気を図示しない吹出口から室内へ放出する。
【0032】
以上説明した構成の他に、室内機5には各種のセンサが設けられている。室内機液管71における室内熱交換器51と室内機膨張弁52との間における室内熱交換器51の近傍には、冷房運転時は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度を、また、暖房運転時は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度をそれぞれ検出する液側温度センサ61が設けられている。室内機ガス管72における室内熱交換器51の近傍には、冷房運転時は室内熱交換器51から流出する冷媒の温度を、また、暖房運転時は室内熱交換器51に流入する冷媒の温度をそれぞれ検出するガス側温度センサ62が設けられている。また、室内機5の図示しない吸込口付近には、室内機5の内部に流入する室内空気の温度を検出する室内温度センサ63が備えられている。なお、液側温度センサ61と室外機制御手段200a~200dとが本発明の液側圧力検出手段である。
【0033】
<冷媒回路の動作>
次に、本実施形態における空気調和装置1の空調運転時の冷媒回路10における冷媒の流れや各部の動作について、
図1(A)および
図2を用いて説明する。以下の説明ではまず、空気調和装置1が暖房運転を行う場合について説明し、次に、空気調和装置1が冷房運転を行う場合について説明する。なお、
図1(A)および
図2における実線矢印は、暖房運転時の冷媒の流れを示しており、破線矢印は、冷房運転時の冷媒の流れを示している。また、室外機2a~2dにおける冷媒の流れや各装置の動作については各室内機2a~2dで同じであるため、以下の説明では代表として室外機2aにおける冷媒の流れや各装置の動作を説明する。さらには、以下の説明では、第1圧縮機21-1aと第2圧縮機21-2aとがともに駆動する場合を説明するが、室内機5-1~5-10のそれぞれから要求される空調能力の総和が小さく、第1圧縮機21-1aあるいは第2圧縮機21-2aのいずれか一方の駆動で要求される能力が賄える場合でも、冷媒の流れや圧縮機を除く他の各装置の動作は同じである。
【0034】
<暖房運転>
図2に示すように、空気調和装置1が暖房運転を行う場合は、四方弁22aが実線で示す状態、すなわち、四方弁22aのポートaとポートdとが連通するように、また、ポートbとポートcとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が凝縮器として機能するとともに、室外熱交換器23aが蒸発器として機能する暖房サイクルとなる。
【0035】
冷媒回路10が暖房サイクルとして機能する状態で第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aが駆動すると、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷媒は、吐出分管40-1aおよび吐出分管40-2aから吐出管40aへと流れてオイルセパレータ21aへと流入し、オイルセパレータ21aから流出管41aへと流れて四方弁22aに流入する。そして、四方弁22aから流出した冷媒は、室外機ガス管45aを流れて、閉鎖弁26aを介してガス分管9aへと流入する。なお、オイルセパレータ21aでは、冷媒とともに第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、
図1(A)に一点鎖線矢印で示すように、オイルセパレータ21aから流出して油戻し管47aを流れ、吸入管42a、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aを介して第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aへと戻される。
【0036】
ガス分管9aを流れる冷媒は、分流器120を介してガス管9へと流れ、ガス管9から各ガス管接続部54を介して室内機5-1~5-10に分流する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は、各室内機ガス管72を流れて各室内熱交換器51に流入する。各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により各室内機5の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って凝縮する。
【0037】
このように、各室内熱交換器51が凝縮器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って加熱された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の暖房が行われる。
【0038】
各室内熱交換器51から各室内機液管71に流入した冷媒は、各室内熱交換器51の冷媒出口側での冷媒過冷却度が目標冷媒過冷却度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過冷却度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される暖房能力に基づいて定められるものである。また、暖房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0039】
各室内機膨張弁52で減圧された冷媒は、各室内機液管71から各液管接続部53を介して液管8に流出する。液管8で合流した冷媒は分流器110を介して液分管8aへと流れ、閉鎖弁25aを介して室外機2aに流入する。室外機2aに流入した冷媒は、室外機液管44aを流れて室外機膨張弁24aを通過する際にさらに減圧される。室外機膨張弁24aの開度は、吐出温度センサ33aで検出する吐出温度が目標吐出温度となるように調整される。
【0040】
室外機膨張弁24aで減圧された冷媒は、室外機液管44を流れて室外熱交換器23aに流入し、室外機ファン28aの回転によって室外機2aの内部に取り込まれた外気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器23aから冷媒配管43aへと流入した冷媒は、四方弁22a、冷媒配管46a、アキュムレータ27a、吸入管42a、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aの順に流れ、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入されて再び圧縮される。
【0041】
<冷房運転>
空気調和装置1が冷房運転を行う場合は、
図2に示すように、四方弁22aが破線で示す状態、すなわち、四方弁22aのポートaとポートbとが連通するように、また、ポートcとポートdとが連通するように切り換えられる。これにより、冷媒回路10は、各室内熱交換器51が蒸発器として機能するとともに、室外熱交換器23aが凝縮器として機能する冷房サイクルとなる。
【0042】
冷媒回路10が冷房サイクルとして機能する状態で第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aが駆動すると、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷媒は、吐出分管40-1aおよび吐出分管40-2aから吐出管40を流れてオイルセパレータ21aへと流入し、オイルセパレータ21aから流出管41aへと流れて四方弁22aに流入する。四方弁22aから流出した冷媒は、冷媒配管43aを流れて室外熱交換器23aへと流入する。室外熱交換器23aへと流入した冷媒は、室外機ファン28aの回転によって室外機2の内部に取り込まれた外気と熱交換を行って凝縮する。室外熱交換器23aから室外機液管44aへと流出した冷媒は、開度が全開とされている室外機膨張弁24aを通過し、閉鎖弁25aを介して液分管8aに流出する。なお、オイルセパレータ21aでは、冷媒とともに第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aから吐出された冷凍機油が冷媒から分離され、分離された冷凍機油は、
図2に一点鎖線矢印で示すようにオイルセパレータ21aから流出して油戻し管47aを流れ、吸入管42、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aを介して第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aへと戻される。
【0043】
液分管8aを流れる冷媒は、分流器110を介して液管8へと流れ、液管8から各液管接続部53を介して室内機5-1~5-10に流入する。室内機5-1~5-10に流入した冷媒は各室内機液管71を流れ、各室内熱交換器51の各々の冷媒出口での冷媒過熱度が目標冷媒過熱度となるように開度が調整された各室内機膨張弁52を通過する際に減圧される。ここで、目標冷媒過熱度は、室内機5-1~5-10の各々で要求される冷房能力に基づいて定められるものである。また、冷房能力は、各室内機5-1~5-10において、設定された設定温度と検出した室内温度との温度差に基づいて決定されるものである。
【0044】
各室内機液管71から各室内熱交換器51に流入した冷媒は、各室内機ファン55の回転により室内機5-1~5-10の内部に取り込まれた室内空気と熱交換を行って蒸発する。このように、各室内熱交換器51が蒸発器として機能し、各室内熱交換器51で冷媒と熱交換を行って冷却された室内空気が図示しない吹出口から室内に吹き出されることによって、室内機5-1~5-10が設置された室内の冷房が行われる。
【0045】
各室内熱交換器51から各室内機ガス管72に流出した冷媒は、各ガス管接続部54を介してガス管9に流出する。ガス管9で合流した冷媒は、分流器120を介してガス分管9aへと流れ、閉鎖弁26aを介して室外機2aに流入する。室外機2aに流入した冷媒は、室外機ガス管45a、四方弁22a、冷媒配管46a、アキュムレータ27a、吸入管42、吸入分管42-1aおよび吸入分管42-2aの順に流れ、第1圧縮機21-1aおよび第2圧縮機21-2aに吸入されて再び圧縮される。
【0046】
<冷房運転開始時の各圧縮機の動作について>
次に、主に
図3を用いて、本実施形態の空気調和装置1が冷房運転を開始する際の、第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの動作について詳細に説明する。
図3では、各室外機2a~2dについて、
図1(A)で描画した各閉鎖弁や室外機配管の代わりに、第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dを描画している。また、各室内機5-1~5-10のそれぞれから要求される冷房能力の総和を要求能力XCn(単位:W)とし、第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dのそれぞれが発揮する能力を圧縮機供給能力XCs(単位:W)とし、第1圧縮機20-1a~20-1dの各々の圧縮機供給能力XCsと第2圧縮機20-2a~20-2dの各々の圧縮機供給能力XCsを室外機2a~2d毎に加算した値を、各室外機2a~2dのそれぞれが発揮する能力を室外機供給能力XCt(単位:W)としている。
【0047】
本実施形態では、要求能力XCnが560Wである場合を例に挙げて説明する。また、要求能力XCnが560Wである場合の、第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの各圧縮機供給能力XCsを、
図3に描画した第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの中に記載している。そして、記載する各圧縮機供給能力XCsの値については、従来の方法、すなわち、駆動する第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの台数で要求能力XCn=560Wを除して圧縮機供給能力XCsを求める場合、求めた圧縮機供給能力XCsの値を破線の上方に記載(
図3における「従来のXCs」が相当)し、本実施形態の方法、すなわち、室外機2a~2dの台数で除した値をさらに室外機2a~2d毎に駆動する第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの台数で除して圧縮機供給能力XCsを求める場合、求めた圧縮機供給能力XCsの値を破線の下方に記載(
図3における「本願のXCs」が相当)している。
【0048】
また、要求能力XCnが560Wである場合の、室外機2a~2dの各室外機供給能力XCtを、
図3に描画した室外機2a~2dの右上に記載している。そして、記載する各室外機供給能力XCtの値については、従来の方法、すなわち、駆動する第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの台数で要求能力XCn=560Wを除して圧縮機供給能力XCsを求める場合、求めた圧縮機供給能力XCsの値を室外機2a~2dごとに加算して求めた室外機供給能力XCtを破線の上方に記載(
図3における「従来のXCt」が相当)し、本実施形態の方法、すなわち、室外機2a~2dの台数で除した値をさらに室外機2a~2d毎に駆動する第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの台数で除して圧縮機供給能力XCsを求める場合、求めた圧縮機供給能力XCsの値を室外機2a~2dごとに加算して求めた室外機供給能力XCtを破線の下方に記載(
図3における「本願のXCt」が相当)している。
【0049】
空気調和装置1で冷房運転を開始するとき、冷房運転を開始した時点から冷媒回路10が安定するまでの間、要求能力XCnの値に関わらず全ての室外機2a~2dを起動させる。ここで、「冷媒回路10が安定する」とは、定期的(例えば、5秒毎)に吸入圧力センサ32a~32dで検出する吸入圧力の変化量が所定の範囲、例えば±0.1MPaの範囲に収まるようになる状態を意味する。冷媒回路10が安定すれば、全ての室外機2a~2dを駆動させている状態から、吸入圧力センサ32a~32dで検出した吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度が、要求能力XCnに応じて定められる目標低圧飽和温度となるように、駆動する室外機2a~2dの台数、および、駆動する室外機2a~2dにおける第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの駆動台数や回転数を決定する。
【0050】
ここで、冷房運転を開始した時点から冷媒回路10が安定するまでの間、要求能力XCnの値に関わらず全ての室外機2a~2dを起動させるのは、以下の理由による。
【0051】
空気調和装置1の停止時に、各室内機5-1~5-10の室内熱交換器51やガス管9および各ガス分管9a~9dに液冷媒が滞留している場合がある。各室内熱交換器51やガス管9および各ガス分管9a~9dに液冷媒が滞留した状態で、冷房運転を開始して室外機2a~2dのうちの一部のみを起動すると、当該起動する室外機に空気調和装置1の停止時に各室内機5-1~5-10の室内熱交換器51やガス管9および各ガス分管9a~9dに滞留していた液冷媒が多量に流入し、その流入量がアキュムレータ27a~27dで収容できる量を超えてしまい、当該室外機の圧縮機に液冷媒が吸入される所謂圧縮機への液バックが発生する恐れがある。
【0052】
上記のような冷房運転開始時の圧縮機への液バックの発生を抑制するためには、従来の空気調和装置では、冷房運転を開始する際に全ての室外機2a~2dを起動して各室外機2a~2dの各々で発揮される室外機供給能力XCtを同じとしていた。具体的には、各第1圧縮機20-1a~20-1dおよび各第2圧縮機20-2a~20-2dの回転数を、要求能力XCsを駆動できる圧縮機の台数で除した圧縮機供給能力XCsを各圧縮機で発揮できるように制御していた。例えば、本実施形態のように、冷房運転開始時の要求能力XCnが560Wであった場合、空気調和装置1の第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの台数は8台(駆動できる圧縮機)であり、かつ、前述したように各圧縮機は全て同じ能力であるため、要求能力XCnである560Wを台数8台で除した値である70Wを圧縮機供給能力XCsとし、各第1圧縮機20-1a~20-1dおよび各第2圧縮機20-2a~20-2dにおいて圧縮機供給能力XCs=70Wとなるように回転数を制御すればよい。
【0053】
しかし、冷房運転開始時に起動可能な圧縮機の台数が各室外機2a~2dに搭載されている圧縮機の台数より少ない場合、例えば、
図3に示すように、室外機2dの第2圧縮機20-2dが故障により起動できない場合は、要求能力XCnである560Wを起動可能な台数7台で除した値である80Wを圧縮機供給能力XCsとし(
図3に示す「従来のXCs」)、各第1圧縮機20-1a~20-1dおよび各第2圧縮機20-2a~20-2cにおいて求めた圧縮機供給能力XCs=80Wとなるように各圧縮機の回転数を制御することとなる。
【0054】
上記のように圧縮機供給能力XCs=80Wとなるように各圧縮機の回転数を制御する場合、各室外機2a~2dの室外機供給能力XCtは、
図3の「従来のXCt」に記載の通り、室外機2a~2cではそれぞれの室外機供給能力XCtが160Wとなるのに対し、室外機2dでは室外機供給能力XCtが80Wとなる。この場合、室外機2a~2cには室外機2dと比べて多量の液冷媒が流入して室外機2a~2cで圧縮機への液バックが発生する可能性がある。
【0055】
以上に説明した問題点に対し、本実施形態の空気調和装置1では、冷房運転を開始する際に、冷媒回路10が安定するまでの間、まずは要求能力XCnを室外機2a~2dの台数(=4台)で除して各室外機2a~2dの室外機供給能力XCtを同じ値とし、次に室外機2a~2d毎に室外機供給能力XCtを、故障している第2圧縮機202d以外の起動できる圧縮機(第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2c)の台数である7台で除して、圧縮機供給能力XCsを決定する。
【0056】
具体的には、本実施形態では、冷房運転開始時の指示を受けた室外機制御手段200aのCPU210a(他の室外機2b~2cの室外機制御手段200b~200dのいずれかでも構わないが、ここでは室外機2aを親機として、室外機制御手段200aの指示により他の室外機制御手段200b~200dが各々の室外機2b~2cを制御するとして、以下の説明を行う)は、各室内機5-1~5-10のそれぞれが要求する冷房能力を、通信部230aを介して受信し、受信した各冷房能力を加算して要求能力XCn(本実施形態では、560W)を算出する。
【0057】
次に、CPU210aは、算出した要求能力XCn=560Wを室外機2a~2dの台数である4台で除して、各室外機2a~2dの室外機供給能力XCtを算出する。本実施形態では、各室外機2a~2dの室外機供給能力XCtは、560÷4=140Wとなる(
図3の「本願のXCt」に相当)。室外機供給能力XCtを算出したCPU210aは、算出した室外機供給能力XCtを他の室外機2b~2dに通信部230aを介して送信する。
【0058】
次に、CPU210aは、第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの状態(いずれかが故障しているか否か)を判断し、起動できる圧縮機の台数と室外機供給能力XCtとを用いて、第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各圧縮機供給能力XCsを算出する。本実施形態の場合は、室外機2aでは第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aはともに故障しておらず起動可能なので、室外機供給能力XCtである140を起動可能な圧縮機台数である2で除した値である70W(
図3の室外機2aにおける「本願のXCs」に相当)を第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aの圧縮機供給能力XCsと決定し、第1圧縮機20-1aおよび第2圧縮機20-2aの各回転数を、求めた圧縮機供給能力XCs=70Wが発揮できるように制御する。
【0059】
一方、室外機2aの室外機制御手段200aから通信部230b~230dを介して室外機供給能力XCtを受信した、室外機2b~2dの室外機制御手段200b~200dのCPU210b~210dは、室外機制御手段200aのCPU210aと同様に、各々に搭載されている第1圧縮機20-1b~20-1dおよび第2圧縮機20-2b~20-2dのうち、起動できる圧縮機の台数と室外機供給能力XCtとを用いて、第1圧縮機20-1b~20-1dおよび第2圧縮機20-2b~20-2dの各圧縮機供給能力XCsを算出する。
【0060】
本実施形態では、室外機2bと室外機2cは、これら各室外機に搭載されている第1圧縮機20-1bと20-1c、および、第2圧縮機20-2bと20-2cがともに故障しておらず起動可能である。従って、CPU210bは、室外機供給能力XCtである140Wを起動可能な圧縮機台数である2台で除した値である70W(
図3の室外機2bにおける「本願のXCs」に相当)を第1圧縮機20-1bと第2圧縮機20-2bの圧縮機供給能力XCsと決定し、第1圧縮機20-1bおよび第2圧縮機20-2bの各回転数を、求めた圧縮機供給能力XCs=70Wが発揮できるように制御する。また、CPU210cは、室外機供給能力XCtである140Wを起動可能な圧縮機台数である2台で除した値である70W(
図3の室外機2cにおける「本願のXCs」に相当)を第1圧縮機20-1cと第2圧縮機20-2cの圧縮機供給能力XCsと決定し、第1圧縮機20-1cおよび第2圧縮機20-2cの各回転数を、求めた圧縮機供給能力XCs=70Wが発揮できるように制御する。
【0061】
上記室外機2bおよび室外機2cに対し、室外機2dは本実施形態では第2圧縮機20-2dが故障により起動できない状態である。従って、室外機制御手段200dのCPU210dは、室外機供給能力XCtである140Wを起動可能な圧縮機台数である1台で除した値である140W(
図3の室外機2dにおける「本願のXCs」に相当)を第1圧縮機20-1dの圧縮機供給能力XCsと決定し、第1圧縮機20-1dの回転数を、求めた圧縮機供給能力XCs=140Wが発揮できるように制御する。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態の空気調和装置1では、冷房運転を開始してから冷媒回路10が安定するまでの間、要求能力XCnを室外機2a~2dの台数で除して室外機供給能力XCtを算出し、各室外機2a~2dにおいて起動できる圧縮機の台数で除して求めた圧縮機供給能力XCsを各圧縮機で発揮できるように、第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの各々の回転数を制御する。このように、冷房運転開始時に第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの各々の回転数を制御することによって、空気調和装置1の停止時に、各室内機5-1~5-10の室内熱交換器51やガス管9および各ガス分管9a~9dに滞留していた液冷媒が偏ることなく均等に各室外機2a~2dに流入するため、各室外機2a~2dのいずれかに多量の液冷媒が流入して当該室外機で圧縮機への液バックが発生することを抑制できる。
【0063】
また、以上に説明した冷房運転開始時の第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの各々の回転数制御は、冷媒回路10が安定するまでの間のみ行い、冷媒回路10が安定した後は冷房運転時の通常の制御、すなわち、前述したように要求能力XCnに応じて目標低圧飽和温度を定め、吸入圧力センサ32a~32cで検出した吸入圧力を用いて求めた低圧飽和温度が目標低圧飽和温度となるように、室外機2a~2dの駆動台数を決定するとともに駆動する室外機2a~2dの第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの制御を行う。冷媒回路10が安定した後は、空気調和装置1の停止時に各室内機5-1~5-10の室内熱交換器51やガス管9および各ガス分管9a~9dに滞留していた液冷媒が各室外機2a~2dに流入し、再び冷媒回路10に流出しているため、要求能力XCnに応じて一部の室外機を駆動しない場合でも、駆動している室外機に液冷媒が多量に流入することはないためである。
【0064】
なお、冷房運転開始時から冷媒回路10が安定するまでの間に、上述した本実施形態の第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2cの各々の回転数制御をしているとき、第1圧縮機と第2圧縮機を2台とも駆動させる室外機2a~2c(例えば、室外機2aでは、第1圧縮機20-1aと第2圧縮機20-2aを2台とも駆動させる)では、当該駆動させる2台の圧縮機の回転数を求めた圧縮機供給能力XCsが発揮されるように制御する場合に、各圧縮機の回転数が所定の低回転数以下となる場合は、室外機2a~2d毎にそれぞれが有する第1圧縮機20-1a~20-1dあるいは第2圧縮機20-2a~20-2dのうちのいずれか一方のみを起動し、かつ、起動する圧縮機の回転数を、2台とも起動する場合の回転数の2倍の回転数としてもよい。
【0065】
一般的に、圧縮機は回転数が小さくなるほど冷媒とともに吐出される冷凍機油の量が少なくなり、所定の低回転数以下、例えば30rps以下となれば、ほとんど冷凍機油が吐出されなくなる。本実施形態の空気調和装置1のように、1台の室外機に2台の圧縮機が搭載されている場合、室外機2a~2d毎にそれぞれが有する第1圧縮機20-1a~20-1dあるいは第2圧縮機20-2a~20-2dのいずれかの運転積算時間が他方に比べて長い場合に、運転積算時間が長い方の圧縮機に多量の冷凍機油が滞留し、他方の圧縮機で冷凍機油量が不足していることがある。冷凍機油量が不足している圧縮機では、当該圧縮機の潤滑不良が発生する恐れがあるため、2台の圧縮機間で冷凍機油量に偏りがないことが好ましい。
【0066】
上記のような冷凍機油量の偏りの発生を抑制するために、冷房運転開始時から冷媒回路10が安定するまでの間に行う本実施形態の第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2dの各々の回転数制御において、各室外機2a~2dで2台の圧縮機を起動しかつ各圧縮機の回転数が所定の低回転数以下となる場合は、第1圧縮機20-1a~20-1dあるいは第2圧縮機20-2a~20-2dのうちのいずれか一方のみを起動し、かつ、起動する圧縮機の回転数を、2台とも起動する場合の回転数の2倍の回転数とすればよい。このように、起動する圧縮機の台数を1台として回転数を2台とも起動する場合の回転数の2倍の回転数とすれば、当該圧縮機の内部で高圧と低圧との圧力差が大きくなって冷媒とともに冷凍機油が吐出されるので、当該圧縮機で冷凍機油が過剰となることがない。
【0067】
以上に説明した本発明の実施形態では、他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機が存在する例として、4台の室外機2a~2dの各々に2台の同じ能力の圧縮機(第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2d)を搭載し、室外機2dの第2圧縮機20-2dが故障して起動できない場合、つまり、1台の室外機で発揮できる室外機供給能力が他の室外機と比べて小さい場合に、冷房運転開始時の第1圧縮機20-1a~20-1dおよび第2圧縮機20-2a~20-2cの各々の回転数を制御する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限られるものではなく、搭載される圧縮機の能力は同じであるが室外機によって搭載される台数が異なることで、他と比べて発揮できる室外機供給能力が小さい室外機が存在する場合や、全ての室外機に同じ台数の圧縮機が搭載されているものの、他の室外機に搭載されている圧縮機と比べて能力が低い圧縮機が搭載されていることで他と比べて発揮できる室外機供給能力が小さい室外機が存在する室外機が存在する場合でも、本発明を適用可能である。
【0068】
また、本発明の実施形態では、室外機2dのように他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機がある場合に、当該室外機で要求能力XCnに応じた室外機供給能力XCtが賄える場合を説明した。これに対し、他の室外機と比べて発揮される能力が低い室外機で室外機供給能力XCtが賄えない場合、つまり、発揮される能力の最大値(以降、最大能力と記載する)が要求能力XCnに応じた室外機供給能力XCtよりも小さい室外機が存在する場合は、当該室外機の最大能力を室外機供給能力XCtとすればよい。例えば、本実施形態で説明した室外機2dにおいて、発揮できる最大の室外機供給能力XCが120Wである場合は、室外機2dが担う室外機供給能力XCを120Wとし、他の室外機2a~2dの各々の室外機供給能力XCも120Wとし、室外機2dの第1圧縮機20-1dの回転数を120Wの能力が発揮できる回転数とするとともに、室外機2a~2dの各々では第1圧縮機20-1a~20-1cおよび第2圧縮機20-2a~20-2cの各々の回転数を60Wの能力が発揮できるようにすればよい。そして、冷媒回路10が安定した後は、室外機2a~2cで要求能力XCnに足りない分を賄うように各圧縮機の回転数を制御すればよい。
【符号の説明】
【0069】
1 空気調和装置
2a~2d 室外機
5-1~5-10 室内機
20-1a~20-1d 第1圧縮機
20-2a~20-2d 第2圧縮機
22a~22d 四方弁
23a~23d 室外熱交換器
24a~24d 室外機膨張弁
32a~32d 吸入圧力センサ
51 室内熱交換器
52 室内機膨張弁
200a~200d 室外機制御手段
210a~210d CPU
XCn 要求能力
Xct 室外機供給能力
Xcs 圧縮機供給能力