(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/00 20160101AFI20240509BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240509BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20240509BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20240509BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20240509BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240509BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20240509BHJP
F16H 59/10 20060101ALI20240509BHJP
F16H 59/12 20060101ALI20240509BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60W20/00 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60K6/36
B60W10/06 900
B60L50/16
F16H61/02
F16H59/10
F16H59/12
F16H63/50
(21)【出願番号】P 2020182230
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 瞬
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-143501(JP,A)
【文献】特開2013-124032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/00
B60K 6/48
B60K 6/547
B60K 6/36
B60W 10/06
B60L 50/16
F16H 61/02
F16H 59/10
F16H 59/12
F16H 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、モータと、前進走行レンジと後進走行レンジを含む複数のシフト位置のいずれか一つを運転者の操作により選択させるシフトレバーと、前記エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、
前記モータのみを駆動源として走行を行なうEV走行モードと、前記エンジンと前記モータとを駆動源として走行を行なうHEV走行モードと、を切り替え、前記シフトレバーによって選択されたシフト位置に応じて前記自動変速機の変速段を自動で切り替える自動変速制御と、前記自動変速機の変速段を運転者の指示により切り替える手動変速制御と、を切り替えて制御する制御部と、
前記手動変速制御と前記自動変速制御とを運転者の操作により選択させる
パドルスイッチと、を備え、
前記制御部は、
前記シフトレバーにより前記前進走行レンジが選択され、かつ前記EV走行モードであるときに、前記パドルスイッチが操作された場合、前記自動変速制御から前記手動変速制御に切り替え、前記EV走行モードから前記HEV走行モードに切り替え、
前記シフトレバーにより前記後進走行レンジが選択され、かつ前記EV走行モードであるときに、前記
パドルスイッチが操作された場合、
前記自動変速制御に維持したまま、前記EV走行モードから前記HEV走行モードに切り替えるハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ使用走行モードで走行中に自動変速制御から手動変速制御へ切り替えられた場合、エンジンを始動させることで運転者が要求する加速応答性を満たすことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、後進走行レンジでは、自動変速や手動変速といったモードが存在しないため、運転者が変速制御を切り替えることでエンジンを始動させることができない。
【0005】
一般的に、モータ走行時に車速または要求駆動力が所定値以上となればエンジンが始動するが、そのタイミングは偶発的であり運転者自身が決定することはできない。
【0006】
また、後進走行レンジでは、運転者が車両の位置調整に細かな動きを要求している状況であり、その状況でエンジンの始動が偶発的に発生すると、運転者に煩わしさを感じさせてしまうことが考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、後進走行レンジが選択されている時であっても、運転者の意図するタイミングでエンジンを始動させることができるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明は、エンジンと、モータと、前進走行レンジと後進走行レンジを含む複数のシフト位置のいずれか一つを運転者の操作により選択させるシフトレバーと、前記エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、前記モータのみを駆動源として走行を行なうEV走行モードと、前記エンジンと前記モータとを駆動源として走行を行なうHEV走行モードと、を切り替え、前記シフトレバーによって選択されたシフト位置に応じて前記自動変速機の変速段を自動で切り替える自動変速制御と、前記自動変速機の変速段を運転者の指示により切り替える手動変速制御と、を切り替えて制御する制御部と、前記手動変速制御と前記自動変速制御とを運転者の操作により選択させるパドルスイッチと、を備え、前記制御部は、前記シフトレバーにより前記前進走行レンジが選択され、かつ前記EV走行モードであるときに、前記パドルスイッチが操作された場合、前記自動変速制御から前記手動変速制御に切り替え、前記EV走行モードから前記HEV走行モードに切り替え、前記シフトレバーにより前記後進走行レンジが選択され、かつ前記EV走行モードであるときに、前記パドルスイッチが操作された場合、前記自動変速制御に維持したまま、前記EV走行モードから前記HEV走行モードに切り替えるものである。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明によれば、後進走行レンジが選択されている時であっても、運転者の意図するタイミングでエンジンを始動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のパドルスイッチによる走行モード切替処理の手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のパドルスイッチによる走行モード切替処理によるRレンジが選択されている状態でパドルスイッチが操作された場合の走行モードの変化を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両の制御装置のパドルスイッチによる走行モード切替処理によるDレンジが選択されている状態でパドルスイッチが操作された場合の走行モードの変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、モータと、前進走行レンジと後進走行レンジを含む複数のシフト位置のいずれか一つを運転者の操作により選択させるシフトレバーと、エンジンの回転を変速して駆動軸に伝達する自動変速機と、を備えるハイブリッド車両の制御装置であって、モータのみを駆動源として走行を行なうEV走行モードと、エンジンとモータとを駆動源として走行を行なうHEV走行モードと、を切り替え、シフトレバーによって選択されたシフト位置に応じて自動変速機の変速段を自動で切り替える自動変速制御と、自動変速機の変速段を運転者の指示により切り替える手動変速制御と、を切り替えて制御する制御部と、手動変速制御と自動変速制御とを運転者の操作により選択させる変速制御切替部と、を備え、制御部は、シフトレバーにより後進走行レンジが選択され、かつEV走行モードであるときに、変速制御切替部が操作された場合、EV走行モードからHEV走行モードに切り替えるよう構成されている。
【0012】
これにより、本発明の一実施の形態に係るハイブリッド車両の制御装置は、後進走行レンジが選択されている時であっても、運転者の意図するタイミングでエンジンを始動させることができる。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施例に係る制御装置を搭載したハイブリッド車両について詳細に説明する。
【0014】
図1において、本発明の一実施例に係るハイブリッド車両1は、内燃機関としてのエンジン2と、自動変速機としてのトランスミッション3と、モータ4と、インバータ5と、高電圧バッテリ6と、エンジン2を制御するECM(Engine Control Module)7と、トランスミッション3を制御する制御部としてのTCM(Transmission Control Module)8と、インバータ5を制御するICM(Invertor Control Module)9とを含んで構成される。
【0015】
エンジン2には、複数の気筒が形成されている。本実施例において、エンジン2は、各気筒に対して、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行なうように構成されている。
【0016】
エンジン2には、ISG(Integrated Starter Generator)20が連結されている。ISG20は、ベルト21などを介してエンジン2のクランクシャフト22に連結されている。ISG20は、電力が供給されることにより回転することでエンジン2を回転駆動させる電動機の機能と、クランクシャフト22から入力された回転力を電力に変換する発電機の機能とを有する。
【0017】
本実施例では、ISG20は、ECM7の制御により、電動機として機能することで、エンジン2を始動させるようになっている。ISG20は、電動機として機能することで、ハイブリッド車両1の走行をアシストすることもできる。
【0018】
トランスミッション3は、エンジン2から出力された回転を変速し、駆動軸32を介して駆動輪10を駆動するようになっている。トランスミッション3は、平行軸歯車機構からなる常時噛合式の図示しない変速機構と、図示しないアクチュエータとを備えている。
【0019】
エンジン2とトランスミッション3の間には、ノーマルクローズタイプの乾式クラッチによって構成されるクラッチ31が設けられており、クラッチ31は、エンジン2とトランスミッション3との間の動力伝達を接続または切断する。
【0020】
トランスミッション3は、いわゆるAMT(Automated Manual Transmission)として構成されており、TCM8により制御されたアクチュエータにより変速機構における変速段の切換えとクラッチ31の接続及び解放が行なわれるようになっている。
【0021】
トランスミッション3と駆動軸32の間にはディファレンシャル機構33が設けられている。ディファレンシャル機構33は、トランスミッション3によって出力された動力を駆動軸32に伝達するようになっている。
【0022】
モータ4は、ディファレンシャル機構33に対して、チェーン41を介して連結されている。モータ4は、電動機として機能する。
【0023】
このように、ハイブリッド車両1は、エンジン2とモータ4の両方の動力を車両の駆動に用いることが可能なパラレルハイブリッドシステムを構成しており、エンジン2及びモータ4の少なくとも一方が出力する動力により走行するようになっている。
【0024】
モータ4は、発電機としても機能し、ハイブリッド車両1の走行によって発電を行なうようになっている。なお、モータ4は、エンジン2から駆動輪10までの動力伝達経路の何れかの箇所に動力伝達可能に連結されていればよく、必ずしもディファレンシャル機構33に連結される必要はない。
【0025】
インバータ5は、ICM9の制御により、高電圧バッテリ6などから供給された直流の電力を、三相の交流電力に変換してモータ4に供給する。
【0026】
インバータ5は、ICM9の制御により、モータ4によって生成された三相の交流電力を直流の電力に変換する。この直流の電力は、例えば、高電圧バッテリ6を充電する。
【0027】
高電圧バッテリ6は、例えばリチウムイオン蓄電池で構成されている。高電圧バッテリ6は、インバータ5に電力を供給する。
【0028】
ECM7、TCM8及びICM9は、それぞれCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、バックアップ用のデータなどを保存するフラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0029】
これらのコンピュータユニットのROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECM7、TCM8及びICM9としてそれぞれ機能させるためのプログラムが格納されている。
【0030】
すなわち、CPUがRAMを作業領域としてROMに格納されたプログラムを実行することにより、これらのコンピュータユニットは、本実施例におけるECM7、TCM8及びICM9としてそれぞれ機能する。
【0031】
ハイブリッド車両1には、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内LAN(Local Area Network)を形成するためのCAN通信線101が設けられている。
【0032】
ECM7は、TCM8及びICM9にCAN通信線101によって接続されている。ECM7、TCM8及びICM9は、CAN通信線101を介して制御信号等の信号の送受信を相互に行なう。
【0033】
ECM7の入力ポートには、変速制御切替部としてのパドルスイッチ83等の各種センサ類が接続されている。
【0034】
パドルスイッチ83は、例えば、アップシフトスイッチ、ダウンシフトスイッチを含んで構成される。パドルスイッチ83は、運転者の操作に応じて、アップシフトスイッチが操作されると手動アップシフト指令をECM7に送信する。パドルスイッチ83は、ダウンシフトスイッチが操作されると手動ダウンシフト指令をECM7に送信する。ECM7は、パドルスイッチ83から手動アップシフト指令または手動ダウンシフト指令を受信すると、受信した指令をTCM8に送信する。パドルスイッチ83は、例えば、ステアリングホイールに設けられる。パドルスイッチ83は、他の場所に設けられていてもよい。
【0035】
TCM8の入力ポートには、シフトポジションセンサ82等の各種センサ類が接続されている。
【0036】
シフトポジションセンサ82は、運転者によるシフトレバー81の操作により選択されたシフト位置を検出する。シフト位置は、例えば、前進走行レンジ(Dレンジ)、後進走行レンジ(Rレンジ)、停車レンジ(Nレンジ)、駐車レンジ(Pレンジ)のいずれかが選択される。
【0037】
TCM8は、シフトポジションセンサ82によって検出されたシフトレバー81の位置に応じて、トランスミッション3に形成させる変速段を変更するようにアクチュエータを制御する自動変速制御を変速モードとして実行する。
【0038】
TCM8は、例えば、シフトレバー81のシフト位置がDレンジである場合、車速やアクセル開度などに基づいて変速段を決定し、その変速段に変更するようにアクチュエータを制御する。
【0039】
TCM8は、ECM7を介してパドルスイッチ83から手動アップシフト指令または手動ダウンシフト指令を受信すると、現在の変速段から1段ハイ側、またはロー側へ変速段を変更するようにアクチュエータを制御する手動変速制御に変速モードを切り替える。
【0040】
TCM8は、ハイブリッド車両1の走行モードを切り替えるようになっている。本実施例における走行モードとしては、EV走行モードとHEV走行モードとが設定されている。
【0041】
EV走行モードは、クラッチ31を解放状態とし、モータ4の動力によりハイブリッド車両1を走行させる走行モードである。HEV走行モードは、クラッチ31を係合状態とし、エンジン2、又はエンジン2及びモータ4の動力によりハイブリッド車両1を走行させる走行モードである。
【0042】
TCM8は、例えば、アクセル開度とエンジン回転速度に基づいてEV走行モードとHEV走行モードとを切り替える。
【0043】
TCM8は、シフトレバー81によりRレンジが選択され、かつ走行モードがEV走行モードであるときに、パドルスイッチ83が操作された場合には、走行モードをEV走行モードからHEV走行モードに切り替える。
【0044】
このとき、TCM8は、パドルスイッチ83が操作された後も変速モードを自動変速制御に維持する。このようにすることで、シフトレバー81によりRレンジが選択され、かつEV走行モードであるときに、パドルスイッチ83が操作されてHEV走行モードに切り替えられた後に、Dレンジが選択されて走行を行なう場合に、変速モードを手動変速制御から自動変速制御に切り替える煩わしさを運転者に感じさせることを防止することができる。
【0045】
TCM8は、シフトレバー81によりDレンジが選択されて自動変速制御を実行していて、かつ走行モードがEV走行モードであるときに、パドルスイッチ83が操作された場合には、変速モードを自動変速制御から手動変速制御に切り替え、走行モードをEV走行モードからHEV走行モードに切り替える。
【0046】
以上のように構成された本実施例に係るハイブリッド車両の制御装置によるパドルスイッチによる走行モード切替処理について、
図2を参照して説明する。なお、以下に説明するパドルスイッチによる走行モード切替処理は、TCM8が動作を開始すると開始され、予め設定された時間間隔で実行される。
【0047】
ステップS1において、TCM8は、シフトレバー81によりRレンジが選択されているか否かを判定する。シフトレバー81によりRレンジが選択されていると判定した場合には、TCM8は、ステップS2の処理を実行する。
【0048】
シフトレバー81によりRレンジが選択されていないと判定した場合には、TCM8は、ステップS5の処理を実行する。
【0049】
ステップS2において、TCM8は、走行モードがEV走行モードであるか否かを判定する。走行モードがEV走行モードであると判定した場合には、TCM8は、ステップS3の処理を実行する。
【0050】
走行モードがEV走行モードでないと判定した場合には、TCM8は、ステップS1の処理を実行する。
【0051】
ステップS3において、TCM8は、パドルスイッチ83が操作されたか否かを判定する。パドルスイッチ83が操作されたと判定した場合には、TCM8は、ステップS4の処理を実行する。
【0052】
パドルスイッチ83が操作されていないと判定した場合には、TCM8は、ステップS1の処理を実行する。
【0053】
ステップS4において、TCM8は、走行モードをHEV走行モードに切り替える。ステップS4の処理を実行した後、TCM8は、パドルスイッチによる走行モード切替処理を終了する。
【0054】
ステップS5において、TCM8は、シフトレバー81によりDレンジが選択されているか否かを判定する。シフトレバー81によりDレンジが選択されていると判定した場合には、TCM8は、ステップS6の処理を実行する。
【0055】
シフトレバー81によりDレンジが選択されていないと判定した場合には、TCM8は、ステップS1の処理を実行する。
【0056】
ステップS6において、TCM8は、走行モードがEV走行モードであるか否かを判定する。走行モードがEV走行モードであると判定した場合には、TCM8は、ステップS7の処理を実行する。
【0057】
走行モードがEV走行モードでないと判定した場合には、TCM8は、ステップS1の処理を実行する。
【0058】
ステップS7において、TCM8は、自動変速制御を実行しているか否かを判定する。自動変速制御を実行していると判定した場合には、TCM8は、ステップS8の処理を実行する。
【0059】
自動変速制御を実行していないと判定した場合には、TCM8は、ステップS1の処理を実行する。
【0060】
ステップS8において、TCM8は、パドルスイッチ83が操作されたか否かを判定する。パドルスイッチ83が操作されたと判定した場合には、TCM8は、ステップS9の処理を実行する。
【0061】
パドルスイッチ83が操作されていないと判定した場合には、TCM8は、ステップS1の処理を実行する。
【0062】
ステップS9において、TCM8は、自動変速制御から手動変速制御に切り替える。ステップS9の処理を実行した後、TCM8は、ステップS10の処理を実行する。
【0063】
ステップS10において、TCM8は、走行モードをHEV走行モードに切り替える。ステップS10の処理を実行した後、TCM8は、パドルスイッチによる走行モード切替処理を終了する。
【0064】
このようなパドルスイッチによる走行モード切替処理による動作について
図3及び
図4を参照して説明する。
【0065】
図3は、シフトレバー81によりRレンジが選択されている状態でパドルスイッチ83が操作された場合を示している。
【0066】
シフトレバー81によりDレンジが選択されている状態からNレンジを通過してRレンジに切り替えられ、パドルスイッチ83が操作されパドルスイッチ83がオンになると、時刻t1において、走行モードがHEV走行モードに切り替えられ、エンジン2が始動され、トランスミッション3の変速段が後進段(図中「R」で示す)に切り替えられる。このとき、変速モードは自動変速制御が維持される。
【0067】
時刻t2において、シフトレバー81が操作され、Nレンジを通過して、時刻t3において、Dレンジに切り替えられると、トランスミッション3の変速段も1速段に切り替えられ、HEV走行モードでエンジン2が駆動状態で変速モードが自動変速制御のまま走行することができる。
【0068】
図4は、シフトレバー81によりDレンジが選択されている状態でパドルスイッチ83が操作された場合を示している。
【0069】
シフトレバー81によりDレンジが選択されEV走行モードで自動変速制御により走行中に、時刻t11において、パドルスイッチ83が操作されパドルスイッチ83がオンになると、変速モードが手動変速制御に切り替えられる。
【0070】
その後、時刻t12において、走行モードがHEV走行モードに切り替えられ、エンジン2が始動される。そして、例えばパドルスイッチ83の操作と車速とアクセル開度に基づいて選択された4速段にトランスミッション3の変速段が切り替えられる。
【0071】
このように、本実施例では、TCM8は、シフトレバー81によりRレンジが選択され、かつ走行モードがEV走行モードであるときに、パドルスイッチ83が操作された場合には、走行モードをEV走行モードからHEV走行モードに切り替える。
【0072】
Rレンジでは、変速モードには関係なく制御されるため、パドルスイッチ83を操作しても変速モードが切り替わることはないが、パドルスイッチ83の操作を条件としてEV走行モードからHEV走行モードに切り替えることで、Rレンジ時であっても運転者の意図するタイミングでエンジン2を始動させることができる。
【0073】
RレンジでEV走行モード時にエンジン2の駆動力を必要とする状況としては、例えば、降坂路におけるバック駐車などが挙げられる。
【0074】
また、TCM8は、シフトレバー81によりDレンジからRレンジに切り替えられた場合には、変速モードを自動変速制御に維持する。
【0075】
これにより、シフトレバー81によりRレンジが選択され、かつEV走行モードであるときに、パドルスイッチ83が操作されてHEV走行モードに切り替えられた後に、Dレンジが選択されて走行を行なう場合に、変速モードを手動変速制御から自動変速制御に切り替える煩わしさを運転者に感じさせることを防止することができる。
【0076】
また、TCM8は、シフトレバー81によりDレンジが選択されて自動変速制御を実行していて、かつ走行モードがEV走行モードであるときに、パドルスイッチ83が操作された場合には、変速モードを自動変速制御から手動変速制御に切り替え、走行モードをEV走行モードからHEV走行モードに切り替える。
【0077】
これにより、Dレンジでパドルスイッチ83が操作された際にエンジン2が始動され、Rレンジでもパドルスイッチ83が操作されるとエンジン2が始動される。このため、Dレンジ時のエンジン始動操作と、Rレンジ時の始動操作とを合わせることで、運転者に、RレンジであってもDレンジと同様の感覚でエンジン始動操作を意識させることができ、Rレンジ時であっても運転者の意図したタイミングでエンジン2を始動させることができる。
【0078】
なお、本実施例においては、パドルスイッチ83を変速制御切替部としたが、変速モードの切替を指示する装置を変速制御切替部として設けてもよい。
【0079】
また、エンジン2の自動停止機能を備えるハイブリッド車両において、エンジン2の自動停止の禁止を指示する装置が設けられていない車両においては、変速制御切替部をその代用として用いてもよい。
【0080】
本実施例では、各種センサ情報に基づきTCM8が各種の判定や算出を行なう例について説明したが、これに限らず、ハイブリッド車両1が外部サーバ等の車外装置と通信可能な通信部を備え、該通信部から送信された各種センサの検出情報に基づき車外装置によって各種の判定や算出が行なわれ、その判定結果や算出結果を通信部で受信して、その受信した判定結果や算出結果を用いて各種制御を行なってもよい。
【0081】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0082】
1 ハイブリッド車両
2 エンジン
3 トランスミッション(自動変速機)
4 モータ
7 ECM
8 TCM(制御部)
32 駆動軸
81 シフトレバー
82 シフトポジションセンサ
83 パドルスイッチ(変速制御切替部)