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特許7484672車両のモータ制御システム、および、車両のモータ制御方法
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  • 特許-車両のモータ制御システム、および、車両のモータ制御方法 図1
  • 特許-車両のモータ制御システム、および、車両のモータ制御方法 図2
  • 特許-車両のモータ制御システム、および、車両のモータ制御方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】車両のモータ制御システム、および、車両のモータ制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20240509BHJP
   B60L 1/00 20060101ALI20240509BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240509BHJP
   B60L 58/10 20190101ALI20240509BHJP
   H02P 29/02 20160101ALI20240509BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B60L1/00 L
B60L50/60
B60L58/10
H02P29/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020188702
(22)【出願日】2020-11-12
(65)【公開番号】P2022077726
(43)【公開日】2022-05-24
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】虫鹿 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】森本 昌介
(72)【発明者】
【氏名】中上 信宏
(72)【発明者】
【氏名】古川 真也
(72)【発明者】
【氏名】川成 翔
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-119746(JP,A)
【文献】特開2008-54433(JP,A)
【文献】特開2017-100639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 1/00
B60L 50/60
B60L 58/10
H02P 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動するモータを制御するモータ制御装置と、前記モータ制御装置にモータ要求トルクを出力する車両制御装置とを備える、車両のモータ制御システムであって、
前記車両制御装置は、
アクセルおよびブレーキの操作量を基にして、前記モータの目標トルクを演算する目標トルク演算部と、
モータ使用可能電力と、モータ回転数とを基にして、第1モータトルク制限値を算出する第1トルク制限算出部と、
前記目標トルク演算部によって演算された目標トルクと、前記第1トルク制限算出部によって算出された第1モータトルク制限値のうち小さい方を、モータ要求トルクとして設定する要求トルク設定部とを備え、
前記要求トルク設定部によって設定されたモータ要求トルクと、前記モータ使用可能電力または、前記モータ使用可能電力を電流に変換して得たモータ使用可能電流を、前記モータ制御装置に送り、
前記モータ制御装置は、
前記車両制御装置から送られた前記モータ使用可能電力または前記モータ使用可能電流と、モータ回転数とを基にして、第2モータトルク制限値を算出する第2トルク制限算出部と、
前記車両制御装置から送られた前記モータ要求トルクと、前記第2トルク制限算出部によって算出された前記第2モータトルク制限値のうち小さい方を、モータトルクとして設定するトルク設定部とを備え、
前記トルク設定部によって設定されたモータトルクをもって、前記モータを制御する
ことを特徴とする車両のモータ制御システム。
【請求項2】
請求項1記載の車両のモータ制御システムにおいて、
前記モータに電力を与えるバッテリの出力可能電力と、前記バッテリから電力を受ける補機の消費電力とを基にして、前記モータ使用可能電力を算出するモータ使用可能電力算出部を備える
ことを特徴とする車両のモータ制御システム。
【請求項3】
車両を駆動するモータを制御するモータ制御装置と、前記モータ制御装置にモータ要求トルクを出力する車両制御装置とを備える、車両のモータ制御システムにおいて、前記モータを制御する方法であって、
前記車両制御装置が、
アクセルおよびブレーキの操作量を基にして、前記モータの目標トルクを演算し、
モータ使用可能電力と、モータ回転数とを基にして、第1モータトルク制限値を算出し、
前記目標トルクと、前記第1モータトルク制限値のうち小さい方を、モータ要求トルクとして設定し、
前記モータ要求トルクと、前記モータ使用可能電力、または、前記モータ使用可能電力を変換して得たモータ使用可能電流を、前記モータ制御装置に送り、
前記モータ制御装置が、
前記車両制御装置から、前記モータ要求トルクと、前記モータ使用可能電力または前記モータ使用可能電流を受け、
前記モータ使用可能電力または前記モータ使用可能電流と、モータ回転数とを基にして、第2モータトルク制限値を算出し、
前記モータ要求トルクと、前記第2モータトルク制限値のうち小さい方を、モータトルクとして設定し、
設定した前記モータトルクをもって、前記モータを制御する
ことを特徴とする車両のモータ制御方法。
【請求項4】
請求項3記載の車両のモータ制御方法において、
前記モータに電力を与えるバッテリの出力可能電力と、前記バッテリから電力を受ける補機の消費電力とを基にして、前記モータ使用可能電力を算出する
ことを特徴とする車両のモータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両を駆動するモータの出力制御に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリ駆動のモータやモータジェネレータを搭載した電気自動車,ハイブリッド自動車等の車両では、バッテリの入出力電力が過大にならないようにモータ入出力を制限する制御が行われている。すなわち、バッテリのSOC(State Of Charge:充電率) やバッテリ温度に基づいてバッテリの最大入出力を算出し、この最大入出力に基づいてモータの力行トルクや回生トルクを調節する。これにより、バッテリの過放電や過充電を防止して、バッテリの性能劣化を抑制している。
【0003】
特許文献1では、モータ制御システムにおいて、通信遅れによるモータ出力のオーバーシュートを抑制するための技術が開示されている。具体的には、モータ制御装置において、算出部が、バッテリ制御装置から出力されるバッテリ出力可能電力に基づき、モータの出力可能トルクを算出する。制御部は、車両制御装置から伝達された要求トルク及び算出部で算出されたモータの出力可能トルクのうち絶対値の小さい一方を用いて、モータの出力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-119746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、車両制御装置からモータ制御装置に伝達される要求トルク自体には、バッテリ出力可能電力に基づく制限がかかっていない。このため、バッテリ制御装置からモータ制御装置に出力されるバッテリ出力可能電力に異常があった場合には、モータ制御装置内においてトルク制限が機能せず、これにより、バッテリの性能劣化を引き起こすおそれがある。
【0006】
ここに開示された技術は、車両のモータ制御システムにおいて、通信遅れによるモータ出力のオーバーシュートを抑制しつつ、かつ、モータ制御装置内でトルク制限が機能しない場合でも、バッテリを保護可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された技術では、車両を駆動するモータを制御するモータ制御装置と、前記モータ制御装置にモータ要求トルクを出力する車両制御装置とを備える、車両のモータ制御システムであって、前記車両制御装置は、アクセルおよびブレーキの操作量を基にして、モータの目標トルクを演算する目標トルク演算部と、モータ使用可能電力と、モータ回転数とを基にして、第1モータトルク制限値を算出する第1トルク制限算出部と、前記目標トルク演算部によって演算された目標トルクと、前記第1トルク制限算出部によって算出された第1モータトルク制限値のうち小さい方を、モータ要求トルクとして設定する要求トルク設定部とを備え、前記要求トルク設定部によって設定されたモータ要求トルクと、前記モータ使用可能電力または、前記モータ使用可能電力を電流に変換して得たモータ使用可能電流を、前記モータ制御装置に送り、前記モータ制御装置は、前記車両制御装置から送られた前記モータ使用可能電力または前記モータ使用可能電流と、モータ回転数とを基にして、第2モータトルク制限値を算出する第2トルク制限算出部と、前記車両制御装置から送られた前記モータ要求トルクと、前記第2トルク制限算出部によって算出された前記第2モータトルク制限値のうち小さい方を、モータトルクとして設定するトルク設定部とを備え、前記トルク設定部によって設定されたモータトルクをもって、モータを制御する。
【0008】
この構成によると、車両制御装置において、モータの目標トルクが演算されるとともに、モータの使用可能電力を基にして第1モータトルク制限値が算出される。そして、モータ目標トルクと第1モータトルク制限値のうち小さい方が、モータ要求トルクとして設定され、モータ制御装置に送られる。また、モータ使用可能電力、または、このモータ使用可能電力を変換して得られたモータ使用可能電流もモータ制御装置に送られる。モータ制御装置において、車両制御装置から送られたモータ使用可能電力またはモータ使用可能電流を基にして、第2モータトルク制限値が算出される。そして、車両制御装置から送られたモータ要求トルクと第2モータトルク制限値のうち小さい方が、モータトルクとして設定される。すなわち、車両制御装置とモータ制御装置の両方において、モータの使用可能電力に基づくモータのトルク制限が行われる。これにより、通信遅れによるモータ出力のオーバーシュートを抑制することができ、かつ、モータ制御装置内でトルク制限が行えなかった場合であっても、車両制御装置からすでにトルク制限がかかったモータ要求トルクが送られるため、バッテリを保護することができる。
【0009】
また、前記車両のモータ制御システムは、前記モータに電力を与えるバッテリの出力可能電力と、前記バッテリから電力を受ける補機の消費電力とを基にして、前記モータ使用可能電力を算出するモータ使用可能電力算出部を備える、としてもよい。
【0010】
これにより、モータの使用可能電力が、バッテリの出力可能電力と、補機の消費電力を基にして、精度良く算出される。
【0011】
また、ここに開示された技術では、車両を駆動するモータを制御するモータ制御装置と、前記モータ制御装置にモータ要求トルクを出力する車両制御装置とを備える、車両のモータ制御システムにおいて、前記モータを制御する方法であって、前記車両制御装置が、アクセルおよびブレーキの操作量を基にして、前記モータの目標トルクを演算し、モータ使用可能電力と、モータ回転数とを基にして、第1モータトルク制限値を算出し、前記目標トルクと、前記第1モータトルク制限値のうち小さい方を、モータ要求トルクとして設定し、前記モータ要求トルクと、前記モータ使用可能電力、または、前記モータ使用可能電力を変換して得たモータ使用可能電流を、前記モータ制御装置に送り、前記モータ制御装置が、前記車両制御装置から、前記モータ要求トルクと、前記モータ使用可能電力または前記モータ使用可能電流を受け、前記モータ使用可能電力または前記モータ使用可能電流と、モータ回転数とを基にして、第2モータトルク制限値を算出し、前記モータ要求トルクと、前記第2モータトルク制限値のうち小さい方を、モータトルクとして設定し、設定した前記モータトルクをもって、前記モータを制御する。
【0012】
この構成によると、車両制御装置において、モータの目標トルクが演算されるとともに、モータの使用可能電力を基にして第1モータトルク制限値が算出される。そして、モータ目標トルクと第1モータトルク制限値のうち小さい方が、モータ要求トルクとして設定され、モータ制御装置に送られる。また、モータ使用可能電力、または、このモータ使用可能電力を変換して得られたモータ使用可能電流もモータ制御装置に送られる。モータ制御装置において、車両制御装置から送られたモータ使用可能電力またはモータ使用可能電流を基にして、第2モータトルク制限値が算出される。そして、車両制御装置から送られたモータ要求トルクと第2モータトルク制限値のうち小さい方が、モータトルクとして設定される。すなわち、車両制御装置とモータ制御装置の両方において、モータの使用可能電力に基づくモータのトルク制限が行われる。これにより、通信遅れによるモータ出力のオーバーシュートを抑制することでき、かつ、モータ制御装置内でトルク制限が行えなかった場合であっても、車両制御装置からすでにトルク制限がかかったモータ要求トルクが送られるため、バッテリを保護することができる。
【0013】
また、前記車両のモータ制御方法は、前記モータに電力を与えるバッテリの出力可能電力と、前記バッテリから電力を受ける補機の消費電力とを基にして、前記モータ使用可能電力を算出する、としてもよい。
【0014】
これにより、モータの使用可能電力が、バッテリの出力可能電力と、補機の消費電力を基にして、精度良く算出される。
【発明の効果】
【0015】
ここに開示された技術によると、車両のモータ制御システムにおいて、通信遅れによるモータ出力のオーバーシュートを抑制しつつ、かつ、モータ制御装置内でトルク制限が機能しない場合でも、バッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る車両のモータ制御システムの主要部構成例
図2図1のモータ制御システムにおける車両制御装置の動作フローの例
図3図1のモータ制御システムにおけるモータ制御装置の動作フローの例
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明では、車両は、当該車両を駆動するモータと、モータに電力を供給するバッテリとを備えるものとする。また、当該車両は、エンジンを備えていてもよい。
【0018】
図1は実施形態に係る、車両のモータ制御システムの主要部構成例を示す機能ブロック図である。図1に示すモータ制御システムは、運転者の出力要求に基づきモータの要求トルクを算出する車両制御装置(PCU:Power Control Unit)10と、モータを制御するモータ制御装置(MCU:Motor Control Unit)20とを備える。なお、PCU10およびMCU20は、例えば、プロセッサとメモリを備えたマイクロコンピュータを備えており、このマイクロコンピュータによって、各機能を実現する。
【0019】
PCU10は、モータトルク算出に関する構成要素として、目標トルク演算部11、モータ使用可能電力算出部12、モータ効率演算部13、トルク制限算出部14、および、要求トルク設定部15を備える。また、これらの構成要素以外に、エンジン制御部16等を備えるが、ここではその詳細な説明は省略する。
【0020】
MCU20は、トルク制限算出部21、および、トルク設定部22を備える。また、モータの動作に関する物理量を計測するモータセンシング部23を備える。モータセンシング部23は例えば、モータ回転数、モータコイル温度、モータ端電圧などを計測する。
【0021】
PCU10において、目標トルク演算部11は、運転者の操作によるアクセルおよびブレーキの操作量を基にして、モータの目標トルクと、エンジン3の目標トルクを演算する。モータ目標トルクは、要求トルク設定部15に送られる。エンジン目標トルクはエンジン制御部16に送られる。
【0022】
モータ使用可能電力算出部12は、バッテリを制御するバッテリ制御装置(BCU:Battery Control Unit)から、バッテリの使用可能電力を受ける。また、バッテリから受けた電力によって作動する補機から、その消費電力を受ける。そして、バッテリ使用可能電力と補機の消費電力から、モータの使用可能電力を算出する。ここでは、例えば、バッテリ使用可能電力から補機の消費電力を減じることによって、モータの使用可能電力を算出するものとする。
【0023】
モータ効率演算部13は、MCU20のモータセンシング部23によって計測されたモータ回転数、モータコイル温度、モータ端電圧を基にして、モータの推定効率を求める。
【0024】
トルク制限算出部14は、モータ使用可能電力算出部12によって算出されたモータの使用可能電力と、モータセンシング部23から受けたモータ回転数、および、モータ効率演算部13によって求められたモータの推定効率を基にして、モータトルクの制限値(第1モータトルク制限値)を算出する。
【0025】
要求トルク設定部15は、目標トルク演算部11からモータ目標トルクを受けるとともに、トルク制限算出部14からモータトルクの制限値を受ける。そして、モータ目標トルクとモータトルク制限値のうち小さい方を、モータ要求トルクとして設定する。
【0026】
そして、PCU10からMCU20に、モータ要求トルクと、モータ使用可能電力が送信される。
【0027】
MCU20において、トルク制限算出部21は、PCU10から送信されたモータ使用可能電力と、モータセンシング部23によって計測されたモータ回転数とを基にして、モータトルクの制限値(第2モータトルク制限値)を算出する。
【0028】
トルク設定部22は、PCU10から送信されたモータ要求トルクを受けるとともに、トルク制限算出部21からモータトルクの制限値を受ける。そして、モータ要求トルクとモータトルク制限値のうち小さい方を、最終的なモータトルクとして設定する。MCU20は、このモータトルクをもって、モータを制御する。
【0029】
図2はPCU10の動作フローの例、図3はMCU20の動作フローの例である。PCU10は、所定のサイクル毎に、図2の動作を繰り返し実行する。MCU20は、所定のサイクル毎に、図3の動作を繰り返し実行する。
【0030】
図2に示すように、PCU10は、アクセルとブレーキの操作量に基づき、車両の目標トルクを演算する(S11)。そして、求めた車両の目標トルクから、モータの目標トルクと、エンジンの目標トルクを演算する(S12)。また、バッテリの出力可能電力と、補機の消費電力に基づき、モータ使用可能電力を演算し(S13)、モータの目標トルクと、モータ回転数、モータコイル温度、モータ端電圧に基づいて、モータ効率を推定する(S14)。そして、モータ使用可能電力、モータ回転数、モータ効率を基にして、第1モータトルク制限値を算出する(S15)。そして、ステップS12で求めたモータの目標トルクと、ステップS15で求めた第1モータトルク制限値のうち小さい方を、モータの要求トルクとして設定する(S16)。そして、PCU10は、モータの要求トルクと、モータの使用可能電力をMCU20に出力する(S17)。
【0031】
図3に示すように、MCU20は、PCU10からモータの要求トルクと、モータの使用可能電力を受信する(S21)。受信したモータの使用可能電力と、モータ回転数を基にして、第2モータトルク制限値を算出する(S22)。そして、受信したモータの要求トルクと、ステップS22で求めた第2モータトルク制限値のうち小さい方を、モータの最終的なトルクとして設定する(S23)。そして、MCU20は、ステップS23で設定したモータトルクに基づき、インバータを制御する(S24)。
【0032】
以上のように本実施形態によると、PCU10において、モータの目標トルクが演算されるとともに、モータの使用可能電力を基にして第1モータトルク制限値が算出される。そして、モータの目標トルクと第1モータトルク制限値のうち小さい方が、モータの要求トルクとして、MCU20に送られる。また、モータの使用可能電力もMCU20に送られる。MCU20において、PCU10から受信したモータの使用可能電力を基にして、第2モータトルク制限値が算出される。そして、PCU10から受信したモータの要求トルクと第2モータトルク制限値のうち小さい方が、モータの最終的なトルクとして設定される。すなわち、PCU10とMCU20の両方において、モータの使用可能電力に基づくモータのトルク制限が行われる。これにより、通信遅れによるモータ出力のオーバーシュートを抑制することができ、かつ、MCU20内でトルク制限が行えなかった場合であっても、PCU10からすでにトルク制限がかかったモータ要求トルクが送信されているため、バッテリを保護することができる。
【0033】
なお、図1の構成では、モータ使用可能電力算出部12はPCU10内に設けられているが、モータ使用可能電力算出部12はPCU10とは別に設けてもかまわない。例えば、モータ使用可能電力算出部12を、独立したユニットとして構成してもよいし、あるいは、バッテリ制御装置内に設けてもかまわない。
【0034】
また、上述の実施形態では、PCU10からMCU20にモータ使用可能電力を送信するものとしたが、これに代えて、モータ使用可能電流を送信するようにしてもかまわない。この場合、例えば、PCU10におけるトルク制限算出部14が、モータ使用可能電力を電流値に変換して、モータ使用可能電流とすればよい。
【0035】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0036】
10 車両制御装置(PCU)
11 目標トルク演算部
12 モータ使用可能電力算出部
14 第1トルク制限算出部
15 要求トルク設定部
20 モータ制御装置(MCU)
21 第2トルク制限算出部
22 トルク設定部
図1
図2
図3