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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】母屋野地パネル組付用治具
(51)【国際特許分類】
   B25B 11/02 20060101AFI20240509BHJP
   E04B 7/20 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B25B11/02
E04B7/20 511
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020197455
(22)【出願日】2020-11-27
(65)【公開番号】P2022085661
(43)【公開日】2022-06-08
【審査請求日】2023-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】柳 毅
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-1017(JP,A)
【文献】特開平5-16075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 11/02
E04B 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一辺縁部に沿って母屋野地パネルの軒先ラインを位置決めするための軒先ガイドが設けられた基体フレームと、
材長方向を前記軒先ラインと平行にして前記基体フレーム上に載架され、前記軒先ラインと直交する方向に移動する複数本の母屋受けベースと、
を具備し、
前記基体フレームには、
前記軒先ラインと直交する方向に延びて前記母屋受けベースを移動可能に支持する複数本のレールと、
前記レールと平行に延びて前記母屋受けベースを屋根勾配に応じた所定位置に位置決めする複数本の母屋位置決めガイドと、
が備えられ、
前記母屋受けベースは、その下面に取り付けられた走行車輪を介して前記レール上に支持され、
前記母屋受けベースの両側縁部には、母屋の両側面を把持する複数組の母屋支持片が母屋の材幅に相当する対向間隔をもって立設され、
前記母屋位置決めガイドと前記母屋受けベースとが重なり合う位置には、複数本の母屋受けベースを屋根勾配に応じた間隔で配置するための母屋位置決め手段が、複数種類の屋根勾配に対応し得るように設けられるとともに、
前記母屋受けベースの材長方向における中間部には、前記母屋受けベースが屋根勾配に応じた間隔に位置決めされた状態で母屋野地パネルの隅谷ラインを割り出すための隅谷位置決め手段が、複数種類のパネル形状に対応し得るように設けられており、
前記母屋位置決め手段および前記隅谷位置決め手段を介して前記母屋受けベース上に位置決めされた母屋の上に野地板を重ねて接合することにより母屋野地パネルが形成されるように構成された
ことを特徴とする母屋野地パネル組付用治具。
【請求項2】
請求項1に記載された母屋野地パネル組付用治具において、
前記母屋位置決め手段は、
前記母屋位置決めガイドに形成された複数箇所の母屋位置決めピン差込孔と、
前記母屋受けベースに取り付けられた母屋位置決めピン差込プレートと、
前記母屋位置決めピン差込プレートに形成された位置決めピン挿通孔と、
前記母屋位置決めピン差込孔および前記位置決めピン挿通孔に挿脱可能に差し込まれる位置決めピンと、
を含んで構成され、
前記母屋位置決めピン差込孔は、前記軒先ラインと直交する方向に、屋根勾配に応じて設定された所定間隔で一列に並ぶように形成されるとともに、その差込孔列が複数種類の屋根勾配に対応付けて複数列、形成される一方、
前記母屋位置決めピン差込プレートには前記複数列の差込孔列に合致する複数箇所の位置決めピン挿通孔が形成されている、
ことを特徴とする母屋野地パネル組付用治具。
【請求項3】
請求項2に記載された母屋野地パネル組付用治具において、
前記母屋位置決めガイドに形成される前記母屋位置決めピン差込孔の孔径と、
前記母屋位置決めピン差込プレートに形成される前記位置決めピン挿通孔の孔径と、
それらに差し込まれる前記位置決めピンの軸径と、
が互いに合致し、
かつ、前記母屋位置決めピン差込孔の差込孔列ごとに異なるように形成されている
ことを特徴とする母屋野地パネル組付用治具。
【請求項4】
請求項1、2または3に記載された母屋野地パネル組付用治具において、
前記隅谷位置決め手段は、
前記母屋受けベースが屋根勾配に応じて位置決めされた状態で、複数種類のパネル形状から割り出される隅谷ラインとの交差位置に形成された複数箇所の隅谷当たりピン差込孔と、
前記隅谷当たりピン差込孔に挿脱可能に差し込まれる隅谷当たりピンと、
を含んで構成され、
前記隅谷当たりピン差込孔が、複数種類の屋根勾配に対応付けられた複数種類の隅谷ラインとの交差位置に形成されている
ことを特徴とする母屋野地パネル組付用治具。
【請求項5】
請求項4に記載された母屋野地パネル組付用治具において、
前記隅谷当たりピン差込孔の孔径と前記隅谷当たりピンの軸径とが互いに合致し、かつ、屋根勾配の種類ごとに異なるように形成される一方、
前記隅谷当たりピンの頭部径が屋根勾配の種類を問わず統一されている
ことを特徴とする母屋野地パネル組付用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願が開示する発明は、母屋と野地板とが予め一体的に組み付けられた勾配屋根用の母屋野地パネルを工場でプレ加工するための治具に関する。
【背景技術】
【0002】
勾配屋根を有するプレファブ建物の屋根施工においては、小屋組架構の上に、あらかじめ工場でプレ加工した屋根パネルを載せ、その上に必要な防水処理を施して屋根葺き材を葺設する、という工法がよく採用されている。かかる屋根パネルとしては、例えば
・複数本の垂木(水平方向に適宜の間隔を設けて勾配方向に架設される部材)の上に野地板を接合した「垂木野地パネル」
・複数本の母屋(勾配方向に適宜の間隔を設けて水平方向に架設される部材)の上に野地板を接合した「母屋野地パネル」
等がある。
【0003】
この種の屋根パネルを工場でプレ加工する際には、作業者が適宜の作業台上で垂木または母屋を所定の位置に配置し、その上に野地板を載せて釘やビスで接合する。しかし、寄棟、入母屋等の屋根形式を有する建物や、曲り家その他の複雑な屋根面を組み合わせた建物では、屋根の隅部や谷部に接する屋根パネルの平面形状が三角形、台形、平行四辺形等になる。そのような非矩形の屋根パネルの各辺の寸法や斜辺の角度は、屋根勾配に応じて建物ごとに割り出されるものであるから、それらの部材を正確な寸法・形状にカットして、互いを正しい位置関係で接合するには、そのための組付用治具が必要になる。
【0004】
特許文献1には、木造建物の屋根パネル(垂木野地パネル)を加工するための治具として、複数の差込孔列が設けられた平台と、該平台の差込孔に嵌挿可能な各種受け具および先端受け具と、受け具および先端受け具に嵌脱可能な野地板規制具と、を具備する治具が開示されている。作製すべき屋根パネルの垂木や隅木等の柱状部材の配置に従って、平台に設けられた差込孔列に各種受け具および先端受け具を適宜配置し、該受け具および先端受け具に垂木や隅木等の柱状部材を嵌め込むことにより、各柱状部材を平台上に正しく位置決めすることができる、というものである。各柱状部材を平板上で位置決めした状態で釘打ち等により各柱状部材を連結し、その上に野地板を張り付けると、所望の屋根パネルを作製することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-001017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
屋根勾配が相違すると、軒先ライン(水平方向の基準線)に対する隅谷ラインの角度が変わる。また、母屋の上に野地板を接合する母屋野地パネルの場合は、屋根勾配に応じて母屋の配置間隔も変わることがある。
【0007】
しかし、前記特許文献1に開示された治具は、隅木または谷木が配置される差込孔列と軒先ラインに平行な差込孔列とのなす角度が一定であり、垂木が配置される差込孔列の配置間隔も変わらないので、一種類の屋根勾配にしか対応できない。屋根勾配の異なる建物には、隅谷ラインの角度や支持材(垂木または母屋)の配置間隔が異なる別の治具を使用しなければならないが、治具自体の平面サイズが大きいので、複数種類の治具を用意しておくとなると広いスペースが必要になって不経済である。
【0008】
本願が開示する発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、複数種類の屋根勾配に対応して様々な形状の母屋野地パネルを組み付けることのできる母屋野地パネル組付用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明の母屋野地パネル組付用治具は、一辺縁部に沿って母屋野地パネルの軒先ラインを位置決めするための軒先ガイドが設けられた基体フレームと、材長方向を前記軒先ラインと平行にして前記基体フレーム上に載架され、前記軒先ラインと直交する方向に移動する複数本の母屋受けベースと、を具備し、前記基体フレームには、前記軒先ラインと直交する方向に延びて前記母屋受けベースを移動可能に支持する複数本のレールと、前記レールと平行に延びて前記母屋受けベースを屋根勾配に応じた所定位置に位置決めする複数本の母屋位置決めガイドと、が備えられ、前記母屋受けベースは、その下面に取り付けられた走行車輪を介して前記レール上に支持され、前記母屋受けベースの両側縁部には、母屋の両側面を把持する複数組の母屋支持片が母屋の材幅に相当する対向間隔をもって立設され、前記母屋位置決めガイドと前記母屋受けベースとが重なり合う位置には、複数本の母屋受けベースを屋根勾配に応じた間隔で配置するための母屋位置決め手段が、複数種類の屋根勾配に対応し得るように設けられるとともに、前記母屋受けベースの材長方向における中間部には、前記母屋受けベースが屋根勾配に応じた間隔に位置決めされた状態で母屋野地パネルの隅谷ラインを割り出すための隅谷位置決め手段が、複数種類のパネル形状に対応し得るように設けられており、前記母屋位置決め手段および前記隅谷位置決め手段を介して前記母屋受けベース上に位置決めされた母屋の上に野地板を重ねて接合することにより母屋野地パネルが形成されるように構成された、との基本的構成を採用する。
【0010】
さらに、前記母屋位置決め手段の具体的構成としては、前記母屋位置決めガイドに形成された複数箇所の母屋位置決めピン差込孔と、前記母屋受けベースに取り付けられた母屋位置決めピン差込プレートと、前記母屋位置決めピン差込プレートに形成された位置決めピン挿通孔と、前記母屋位置決めピン差込孔および前記位置決めピン挿通孔に挿脱可能に差し込まれる位置決めピンと、を含んで構成され、前記母屋位置決めピン差込孔は、前記軒先ラインと直交する方向に、屋根勾配に応じて設定された所定間隔で一列に並ぶように形成されるとともに、その差込孔列が複数種類の屋根勾配に対応付けて複数列、形成される一方、前記母屋位置決めピン差込プレートには前記複数列の差込孔列に合致する複数箇所の位置決めピン挿通孔が形成されている、との構成を採用する。
【0011】
前述の構成においては、前記母屋位置決めガイドに形成される前記母屋位置決めピン差込孔の孔径と、前記母屋位置決めピン差込プレートに形成される前記位置決めピン挿通孔の孔径と、それらに差し込まれる前記位置決めピンの軸径と、が互いに合致し、かつ、前記母屋位置決めピン差込孔の差込孔列ごとに異なるように形成されていると、より好ましい。
【0012】
また、前記隅谷位置決め手段の具体的構成としては、前記母屋受けベースが屋根勾配に応じて位置決めされた状態で、複数種類のパネル形状から割り出される隅谷ラインとの交差位置に形成された複数箇所の隅谷当たりピン差込孔と、前記隅谷当たりピン差込孔に挿脱可能に差し込まれる隅谷当たりピンと、を含んで構成され、前記隅谷当たりピン差込孔が、複数種類の屋根勾配に対応付けられた複数種類の隅谷ラインとの交差位置に形成されている、との構成を採用する。
【0013】
前述の構成においては、前記隅谷当たりピン差込孔の孔径と前記隅谷当たりピンの軸径とが互いに合致し、かつ、屋根勾配の種類ごとに異なるように形成される一方、前記隅谷当たりピンの頭部径が屋根勾配の種類を問わず統一されていると、より好ましい。
【発明の効果】
【0014】
前述のように構成される母屋野地パネル組付用治具には、複数本の母屋受けベースを屋根勾配に応じた間隔で配置するための母屋位置決め手段と、母屋受けベースが位置決めされた状態で母屋野地パネルの隅谷ラインを割り出すための隅谷位置決め手段とが設けられているので、それら両手段を介して母屋受けベース上に母屋を位置決めした後、その母屋の上に野地板を重ねて接合することにより、母屋野地パネルを精度よく組み付けることができる。
【0015】
さらに、それら母屋位置決め手段および隅谷位置決め手段が複数種類の屋根勾配に対応し得るように設けられているので、一組の治具で複数種類の屋根勾配に応じた母屋野地パネルを組み付けることが可能になり、組付け工場における作業性が格段に向上する。
【0016】
複数種類の屋根勾配に対しては、母屋位置決め手段を構成する母屋位置決めピン差込孔の差込孔列と母屋位置決めピン差込プレートに形成する位置決めピン挿通孔の孔径、およびそれらに差し込まれる位置決めピンの軸径を屋根勾配ごとに相違させる構成を採用することで、母屋の位置決め作業におけるミスを防ぐことができる。
【0017】
また、隅谷位置決め手段を構成する母屋受けベースの隅谷当たりピン差込孔の孔径と、そこに差し込まれる隅谷当たりピンの軸径を屋根勾配ごとに相違させる構成を採用することで、隅谷ラインの位置決め作業におけるミスを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本願が開示する発明の一実施形態に係る母屋野地パネル組付用治具における、基体フレームの概略構成を示す上面図(a)、軒側から見た正面図(b)および側面図(c)である。
図2】前記基体フレームの上に3本の母屋受けベースを載架した状態の、上面図(a)、軒側から見た正面図(b)および側面図(c)である。
図3】前記母屋野地パネル組付用治具における母屋位置決めガイドの詳細な構成を示す上面図である。
図4】前記母屋野地パネル組付用治具の最も軒側に配置される母屋受けベースAの詳細な構成を示す上面図(a)、軒側から見た正面図(b)および側面図(c)である。
図5】前記母屋野地パネル組付用治具の軒側から二番目に配置される母屋受けベースBおよび三番目に配置される母屋受けベースCの上面図である。
図6】前記母屋野地パネル組付用治具を2.5寸の屋根勾配にセットして母屋二本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。
図7】前記母屋野地パネル組付用治具を2.5寸の屋根勾配にセットして母屋三本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。
図8】前記母屋野地パネル組付用治具を4寸の屋根勾配にセットして母屋二本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。
図9】前記母屋野地パネル組付用治具を4寸の屋根勾配にセットして母屋三本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。
図10】前記母屋野地パネル組付用治具を5寸の屋根勾配にセットして母屋二本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。
図11】前記母屋野地パネル組付用治具を5寸の屋根勾配にセットして母屋三本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】
図1および図2は、本願が開示する発明の一実施形態に係る母屋野地パネル組付用治具の全体的構成を示している。母屋野地パネル組付用治具1は、基体フレーム2と、その上に載架される複数本の母屋受けベース3と、を組み合わせて構成される。
【0021】
基体フレーム2は、図1に示すように、複数本の形鋼材を上面視略矩形に枠組みして形成され、複数個のジャッキベース21を介して作業床F上に水平に据え付けられる。基体フレーム2の長辺方向(桁行方向)に延びる一辺縁部(図1中の下辺)には、複数本の短い柱体22が適宜間隔で立設されており、それらの柱体22の側面が母屋野地パネルの軒先ラインEを位置決めするための軒先ガイドを形成している。各柱体22の側面には、母屋野地パネルの野地板7(図2参照)の縁部を所定の高さに支持する野地受けブラケット23も取り付けられている。
【0022】
基体フレーム2には、軒先ラインEと直交する方向(梁間方向)に延びる複数本(例示形態では6本)のレール24が備えられており、これらのレール24が母屋受けベース3を移動可能に支持する。レール24は、山形鋼の角部を上向きにして梁材に取り付けることにより形成されている。
【0023】
さらに基体フレーム2には、レール24と平行に延びて母屋受けベース3を屋根勾配に応じた所定位置に位置決めする母屋位置決めガイド4が複数本、備えられている。例示形態では、基体フレーム2の長辺方向における両端部分と中間部分に計4本の母屋位置決めガイド4が配置されている。
【0024】
図2は、図1に示した基体フレーム2の上に複数本の母屋受けベース3を載架した状態を示す。母屋受けベース3は、その材長方向を軒先ラインEと平行にしてレール24の上に載架されており、各母屋受けベース3は、それぞれの下面に取り付けられた走行車輪25を介して、軒先ラインEと直交する方向に個々独立して移動する。例示形態では、基体フレーム2の長辺の略半分の長さの母屋受けベース3(3A、3B、3C)が2本ずつ直線状に並ぶようにして3列に配置されている。
【0025】
母屋位置決めガイド4と母屋受けベース3とが重なり合う位置には、複数本の母屋受けベース3を屋根勾配に応じた間隔で配置するための母屋位置決め手段が設けられる。図3は母屋位置決めガイド4の詳細な構成を示し、図4および図5は母屋受けベース3の詳細な構成を示している。
【0026】
母屋位置決めガイド4は、形鋼材の上に取り付けられた平坦な帯状鋼板によって形成されており、その鋼板には複数箇所の母屋位置決めピン差込孔41が形成されている。母屋位置決めピン差込孔41は、複数本の母屋受けベース3を屋根勾配に応じて設定された所定間隔で配置するために、軒先ラインEと直交する方向に沿って一列に並ぶように形成されている。そして、その母屋位置決めピン差込孔41の差込孔列が、複数種類の屋根勾配に対応付けて複数列(例示形態では2.5寸、4寸、5寸の屋根勾配に対応する3列)形成されており、屋根勾配が大きくなると各差込孔列の孔間隔も拡がるように設定されている。さらに、3列の差込孔列は、列ごと(屋根勾配ごと)に孔径が異なっており、それぞれの差込孔列には、各列の孔径に合わせて軸径を相違させた位置決めピン51が挿脱可能に差し込まれる。
【0027】
一方、母屋受けベース3の両端部には、母屋位置決めガイド4と略同幅の平坦な鋼板からなる母屋位置決めピン差込プレート31が取り付けられている。母屋位置決めピン差込プレート31には、母屋位置決めガイド4に形成された母屋位置決めピン差込孔41の各差込孔列に重なり合う位置決めピン挿通孔32が、例示形態では3箇所ずつ形成されている。
【0028】
この母屋受けベース3をレール24に沿って軒先ラインEと直交する方向に移動させ、屋根勾配に対応付けられた差込孔列の母屋位置決めピン差込孔41に位置決めピン挿通孔32を重ねて、屋根勾配に対応付けられた位置決めピン51を差し込むことにより、母屋受けベース3が屋根勾配に応じて設定された所定間隔に位置決めされることとなる。屋根勾配に応じて使用する位置決めピン51の軸径を相違させることで、母屋の位置決め作業におけるポカミスを防ぐことができる。さらに、母屋位置決めピン差込孔41の差込孔列、母屋位置決めピン差込プレート31に形成する位置決めピン挿通孔32の周囲または内周面、および位置決めピン51の頭部を、屋根勾配ごとに異なる色で着色しておくのも好ましい。
【0029】
こうして位置決めされた母屋受けベース3には、母屋野地パネルを構成する母屋6が載置される。母屋6は、軽量形鋼材または木材からなり、その断面は矩形または溝形に形成されている。その母屋6の両側面を把持するために、母屋受けベース3の両側縁部には、母屋6の高さよりもやや低い母屋支持片33が母屋の材幅に相当する間隔で対向するように、複数組、立設されている。
【0030】
母屋受けベース3の材長方向における一端部近傍には、母屋端当たりピン差込孔34が形成されて、そこに母屋端当たりピン52が挿脱可能に取り付けられる。母屋野地パネルの屋根勾配に沿う辺部が軒先ラインEに直交する形になる場合は、この母屋端当たりピン52に母屋6の端部を突き当てるようにして母屋6が位置決めされる。
【0031】
母屋受けベース3の材長方向における中間部には、母屋野地パネルの屋根勾配に沿う辺部が軒先ラインEに対して斜めになるときの位置、つまり屋根の隅部または谷部に設置される母屋野地パネルの隅谷ラインを割り出すための隅谷位置決め手段が設けられている。隅谷位置決め手段は、母屋受けベース3が屋根勾配に応じて位置決めされた状態で、母屋野地パネルの形状から割り出される隅谷ラインとの交差位置に形成された複数箇所の隅谷当たりピン差込孔35と、そこに挿脱自在に差し込まれる隅谷当たりピン53と、によって構成される。
【0032】
さらに、隅谷当たりピン差込孔35は、複数種類の屋根勾配に対応付けられた複数種類の隅谷ラインとの交差位置に形成されている。それらの隅谷当たりピン差込孔35は、対応付けられた屋根勾配ごとに孔径が異なっており、そこに屋根勾配ごとに軸径の異なる隅谷当たりピン53が差し込まれる。ただし、隅谷当たりピン53の頭部径は屋根勾配の種類を問わず統一されている。
【0033】
隅谷当たりピン差込孔35は、図4および図5に示すように、最も軒側に配置される一段目の母屋受けベース3Aと、軒側から二段目に配置される母屋受けベース3Bと、最も棟側に配置される母屋受けベース3Cとで、互いに相違する位置に形成される。これらのうち、屋根勾配に対応付けられたいずれかの隅谷当たりピン差込孔35に隅谷当たりピン53を差し込んだ状態で母屋受けベース3に母屋を載せ、その母屋の端部を隅谷当たりピン53に突き当てることで母屋が位置決めされる。
【0034】
このように、隅谷ラインの位置決めについても、屋根勾配に応じて使用する隅谷当たりピン53の軸径を相違させることで作業中のポカミスを防ぐことができる。さらに、隅谷当たりピン差込孔35の周囲と隅谷当たりピン53の頭部を、屋根勾配ごとに異なる色で着色しておくのも好ましい。
【0035】
図6図11は、前述のように構成される母屋野地パネル組付用治具1を異なる屋根勾配にセットして、その上に三角形の母屋野地パネルを組み付ける態様を模式的に示す上面図である。各図において母屋位置決めピン差込プレート31および母屋受けベース3の上に黒丸(●)で示している箇所が、位置決めピン51および隅谷当たりピン53の差込位置である。また、一点鎖線で示す斜線が野地板7の辺部を合わせるべき位置を示している。
【0036】
図6は、母屋野地パネル組付用治具1を2.5寸の屋根勾配にセットして、母屋二本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を示している。また、図7は、母屋野地パネル組付用治具1を同じく2.5寸の屋根勾配にセットして、母屋三本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を示している。桁行方向(軒先ラインEに沿う方向)の長さが大きくなる場合は、2本の母屋受けベース3Aを直線状に並べて、その上に母屋6を位置決めしている。
【0037】
図8は、母屋野地パネル組付用治具1を4寸の屋根勾配にセットして、母屋二本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を示しており、図9は、母屋野地パネル組付用治具1を同じく4寸の屋根勾配にセットして、母屋三本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を示している。
【0038】
また、図10は、母屋野地パネル組付用治具1を5寸の屋根勾配にセットして、母屋二本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を示しており、図11は、母屋野地パネル組付用治具1を同じく5寸の屋根勾配にセットして、母屋三本分の高さの母屋野地パネルを組み付ける態様を示している。
【0039】
このように、本願が開示する発明に係る母屋野地パネル組付用治具1を使用すれば、母屋位置決めガイド4に沿って母屋受けベース3の配置間隔を変え、その母屋受けベース3に取り付ける隅谷当たりピン53の位置を変えることで、複数種類の屋根勾配に対応する複数パターンの形状の母屋野地パネルを効率的に組み付けることが可能になる。かくして、工場における屋根パネルのプレ加工の作業効率が向上する。
【0040】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。特許請求の範囲および明細書において使用している構成要素の名称は、発明を具体的に理解し易くするための便宜的なものであって、その名称が当該構成要素の概念や性状を必要以上に限定することはない。また、本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の形状、構造、材質、数量、接合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本願が開示する発明は、特にプレファブ住宅等の屋根施工において大いに活用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 母屋野地パネル組付用治具
2 基体フレーム
21 ジャッキベース
22 柱体
23 野地受けブラケット
24 レール
25 走行車輪
3 母屋受けベース
31 母屋位置決めピン差込プレート
32 位置決めピン挿通孔
33 母屋支持片
34 母屋端当たりピン差込孔
35 隅谷当たりピン差込孔
4 母屋位置決めガイド
41 母屋位置決めピン差込孔
51 位置決めピン
52 母屋端当たりピン
53 隅谷当たりピン
6 母屋
7 野地板
E 軒先ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11