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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20240509BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240509BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240509BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240509BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/30 R
H01L23/12 501P
H05K7/20 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020214119
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022100009
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-06-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発/基地局RUの高性能化技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸也
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-23587(JP,A)
【文献】特開2004-273570(JP,A)
【文献】特開平9-45827(JP,A)
【文献】特開2017-103433(JP,A)
【文献】特開2016-63178(JP,A)
【文献】特開2015-26670(JP,A)
【文献】特開平7-321257(JP,A)
【文献】特開2000-232284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 23/29
H01L 23/12
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の半導体チップと、
前記第1の半導体チップよりも発熱量の小さい第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップの少なくとも一部の上層に配置された第1の熱伝導部材と、
前記第2の半導体チップの上層及び前記第1の熱伝導部材の周囲に配置された第2の熱伝導部材と、
前記第2の熱伝導部材の上層で、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップが並ぶ方向である平面方向に沿って配置された放熱部材と、
を含み、
前記第1の熱伝導部材の熱伝導率は、前記第2の熱伝導部材の、前記平面方向における熱伝導率よりも低い
半導体装置。
【請求項2】
前記第2の熱伝導部材は、前記平面方向と交差する方向である高さ方向における熱伝導率が、前記平面方向における熱伝導率よりも低い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第2の熱伝導部材の前記高さ方向における熱伝導率は、前記第1の熱伝導部材の熱伝導率よりも低い
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の熱伝導部材の上層の、前記第2の熱伝導部材の厚さが1mm以下である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップを封止する封止部材を更に含み、
前記第1の熱伝導部材は、前記封止部材から露出した前記第1の半導体チップの表面を覆っており、
前記第2の熱伝導部材は、前記封止部材から露出した前記第2の半導体チップの表面を覆っている
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとを電気的に接続する再配線層を更に含む
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1の半導体チップ及び前記第1の半導体チップよりも発熱量の小さい第2の半導体チップを封止部材で封止する工程と、
前記封止部材を研削して前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップの表面を前記封止部材から露出させる工程と、
前記第1の半導体チップの前記封止部材から露出した上層に第1の熱伝導部材を配置する工程と、
前記第2の半導体チップの前記封止部材から露出した上層及び前記第1の熱伝導部材の周囲に第2の熱伝導部材を配置する工程と、
前記第2の熱伝導部材の上層で、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップが並ぶ方向である平面方向に沿って放熱部材を配置する工程と、
を含み、
前記第1の熱伝導部材の熱伝導率は、前記平面方向における熱伝導率よりも低い
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の放熱構造に関する技術として、以下の技術が知られている。例えば、配線基板上に実装された第1半導体チップと、配線基板上に実装され、第1半導体チップと比べて発熱量が小さい第2半導体チップと、第1半導体チップ及び第2半導体チップの上方に配置された放熱板と、を有する半導体装置が知られている。放熱板は、第1半導体チップに接続され、第2半導体チップと対向する位置に開口部が形成されている。第2半導体チップと開口部の内壁との間に断熱樹脂が形成されている。
【0003】
また、配線基板と、配線基板に搭載される複数の電子部品と、電子部品に取り付けられ、電子部品で発生する熱を冷却部品に伝える熱伝導体と、を含む半導体装置が知られている。熱伝導体の少なくとも一つは他の熱伝導体とは異なる熱伝導率を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-42030号公報
【文献】特開平9-45827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発熱量が互いに異なる複数の半導体チップをパッケージングした半導体装置においては、半導体チップ間における熱の移動が問題となる場合がある。例えば、複数の半導体チップの各々から発せられる熱を単一の放熱部材を用いて放熱する場合、発熱量が相対的に大きい半導体チップから発せられる熱が、放熱部材を介して発熱量が相対的に小さい半導体チップに移動する。これにより発熱量が相対的に小さい半導体チップが耐熱温度を超える温度で加熱されると、当該半導体チップにおいて、動作異常又は故障が発生するおそれがある。
【0006】
例えば半導体装置が、FOWLP(Fan-Out Wafer Level Package)の形態を有する場合、複数の半導体チップは、互いに近接して配置されるため、半導体チップ間における熱の移動はより顕著となる。
【0007】
開示の技術は、発熱量が互いに異なる複数の半導体チップを有する半導体装置において、半導体チップ間の熱の移動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術に係る半導体装置は、第1の半導体チップと、前記第1の半導体チップよりも発熱量の小さい第2の半導体チップとを有する。半導体装置は、前記第1の半導体チップの少なくとも一部の上層に配置された第1の熱伝導部材と、前記第2の半導体チップの上層及び前記第1の熱伝導部材の周囲に配置された第2の熱伝導部材とを有する。半導体装置は、前記第2の熱伝導部材の上層で、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップが並ぶ方向である平面方向に沿って配置された放熱部材と、を有する。前記第1の熱伝導部材の熱伝導率は、前記第2の熱伝導部材の前記平面方向における熱伝導率よりも低い。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、発熱量が互いに異なる複数の半導体チップを有する半導体装置において、半導体チップ間の熱の移動を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の構成の一例を示す断面図である。
図2】第1の半導体チップ及び第2の半導体チップをそれぞれ発熱させたときの、第1の熱伝導部材の熱伝導率と各半導体チップの温度との関係をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである
図3A】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3B】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3C】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3D】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3E】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3F】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図3G】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の製造工程の一例を示す断面図である。
図4】開示の技術の実施形態に係る半導体装置の他の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0012】
図1は、開示の技術の実施形態に係る半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。半導体装置1は、複数の半導体チップをパッケージングしたFOWLPの形態を有する。第1の半導体チップ11A及び11Bは、発熱量が相対的に大きく、第2の半導体チップ12は、発熱量が相対的に小さい。第1の半導体チップ11A及び11Bは、例えば、GaN及びSiC等の化合物半導体からなる基板を有するパワーデバイスであってもよい。第2の半導体チップ12は、例えば、単結晶シリコンからなる基板を有し、第1の半導体チップ11A、11Bを制御するCMOS回路を含むコントロールデバイスであってもよい。半導体装置1は、例えば、ミリ波等の高周波信号の位相制御を行うフェーズシフタを構成するものであってもよい。
【0013】
第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12は、封止部材30によって一体的に封止されている。封止部材30として、エポキシ樹脂等の一般的なモールド樹脂を用いることが可能である。
【0014】
封止部材30の下面S2には、再配線層40が設けられている。第1の半導体チップ11A、11Bと第2の半導体チップ12は、再配線層40に形成された配線41を介して互いに電気的に接続されている。第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12は、半田バンプを用いることなく配線41に直接接続されている。従って、パッケージ基板上に半田バンプを用いて半導体チップを搭載する従来のフリップチップ実装タイプの半導体装置と比較して、高周波信号の伝送損失を抑制することができる。本実施形態に係る半導体装置1において、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12のチップ間距離として、例えば、50μm以上500μm以下が想定される。
【0015】
再配線層40の、半導体チップの搭載側とは反対側の表面には、配線41に接続された半田ボール42が設けられている。半導体装置1は、半田ボール42を介して図示しない配線基板に搭載される。
【0016】
第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12の表面は、封止部材30の上面S1から露出している。封止部材30の上面S1には、第1の熱伝導部材21及び第2の熱伝導部材22を介して放熱部材50が設けられている。第1の熱伝導部材21及び第2の熱伝導部材22は、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12から発せられた熱の移動を促進させるために用いられる。
【0017】
第1の熱伝導部材21は、封止部材30から露出した第1の半導体チップ11A、11Bの表面を覆っている。換言すれば、第1の熱伝導部材21は、第1の半導体チップ11A、11Bの上層に配置されている。第1の熱伝導部材21は、第1の半導体チップ11A、11Bの表面の少なくとも一部を覆っていればよい。図1に示す例では、第1の熱伝導部材21の平面方向のサイズが、第1の半導体チップ11A、11Bのサイズと同じである場合が例示されている。しかしながら、第1の熱伝導部材21の平面方向のサイズは、第1の半導体チップ11A、11Bのサイズよりも小さくてもよい。また、第1の熱伝導部材21の平面方向のサイズは、第1の半導体チップ11A、11Bのサイズよりも大きくてもよい。この場合、第1の熱伝導部材21が、第2の半導体チップ12にまで達していないことが好ましい。なお、平面方向とは、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12が並ぶ面の方向である。また、第1の半導体チップ11A、11Bと、第1の熱伝導部材21との間に別の層が設けられていてもよい。
【0018】
第2の熱伝導部材22は、封止部材30から露出した第2の半導体チップ12の表面及び第1の熱伝導部材21を一体的に覆っている。すなわち、第1の熱伝導部材21は、第2の熱伝導部材22内に埋設されている。換言すれば、第2の熱伝導部材22は、第2の半導体チップの上層及び第1の熱伝導部材21の周囲に配置されている。第2の熱伝導部材22は、平面方向における熱の移動を促進させるために、平面方向における熱伝導率TC2XYが比較的高いこと(例えば10W/m・k以上)が好ましい。第2の熱伝導部材22の熱伝導率は異方性を有していてもよい。すなわち、第2の熱伝導部材22は、平面方向と交差する方向である高さ方向における熱伝導率TC2Zが、平面方向にける熱伝導率TC2XYよりも低くてもよい(TC2XY>TC2Z)。TC2XY>TC2Zとすることで、平面方向における熱の移動を促進させつつ放熱部材50から第2の半導体チップ12への熱の移動を抑制することができる。なお、第2の半導体チップ12と、第2の熱伝導部材22との間に別の層が設けられていてもよい。
【0019】
第2の熱伝導部材22として、例えば市販のグラファイトシートを好適に用いることが可能である。グラファイトシートは、二次元に結晶化した炭素が層状に積み重ねられたシート状の部材である。グラファイトシートの平面方向にける熱伝導率TC2XYは、例えば1000W/m・k程度であり、高さ方向における熱伝導率TC2zは、例えば5W/m・k程度である。また、第2の熱伝導部材22として、PET(Polyethyleneterephthalate)及び銅を含むヒートスプレッダーテープを用いることも可能である。PET及び銅を含むヒートスプレッダーテープの平面方向にける熱伝導率TC2XYは、例えば200W/m・k程度であり、高さ方向における熱伝導率TC2zは、例えば5W/m・k程度である。
【0020】
一方、第1の熱伝導部材21は、平面方向及び高さ方向における熱伝導率が均一である部材を用いることが可能である。本実施形態に係る半導体装置1において、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCは、第2の熱伝導部材22の平面方向における熱伝導率TC2xyよりも低い(TC2XY>TC)ものとされている。TC2XY>TCとすることで、第1の半導体チップ11A、11Bから発せられた熱の第2の半導体チップ12への移動が抑制される。第1の熱伝導部材21として、例えば、シリコーン樹脂及びエポキシ樹脂等の樹脂材料にフィラーを含有させた市販の放熱グリスを用いることが可能である。
【0021】
第2の熱伝導部材22の高さ方向における熱伝導率TC2Zは、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCよりも低くてもよい(TC2Z<TC)。TC2Z<TCである場合、第2の熱伝導部材22が、第1の熱伝導部材21の上面を覆う部分の厚さLは1mm以下であることが好ましい。これにより、第1の半導体チップ11A、11Bから発せられる熱の放熱部材50への移動が過度に抑制されることを防止することができ、第1の半導体チップ11A、11Bの温度が過度に高くなることを防止することができる。
【0022】
放熱部材50は、第2の熱伝導部材22の上面全体を覆っており、平面方向に沿って配置されている。放熱部材50は、第1の熱伝導部材21及び第2の熱伝導部材22を介して伝わる各半導体チップからの熱を外部に放出する機能を有する。放熱部材50は、例えばアルミニウム及び銅等の熱伝導率が比較的高い金属を含んで構成されていてもよい。なお、第2の熱伝導部材22と放熱部材50との間に別の層が設けられていてもよい。
【0023】
図2は、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12をそれぞれ発熱させたときの、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCと各半導体チップの温度との関係をシミュレーションによって求めた結果を示すグラフである。なお、第1の半導体チップ11A及び11Bを10Wで発熱させ、第2の半導体チップ12を0.1Wで発熱させた。第2の熱伝導部材22の平面方向における熱伝導率TC2XYを45W/m・kとし、高さ方向における熱伝導率TC2Zを5W/m・kとした。
【0024】
図2に示すように、第1の熱伝導部材21の熱伝導率が高くなるにつれて、第1の半導体チップ11A、11Bと第2の半導体チップ12の温度差が小さくなった。これは、第1の熱伝導部材21の熱伝導率が高くなる程、第1の半導体チップ11A、11Bから第2の半導体チップ12への熱の移動が促進されること示している。
【0025】
また、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCを第2の熱伝導部材22の平面方向における熱伝導率TC2XY(45W/m・k)よりも低くすることで、第2の半導体チップ12の温度が過度に高くなることを防止できることが確認された。これは、TC<TC2XYとすることで、第1の半導体チップ11A、11Bから第2の半導体チップ12への熱の移動が抑制されるためである。
【0026】
以下において、半導体装置1の製造方法について説明する。図3A図3Gは、半導体装置1の製造工程の一例を示す断面図である。
【0027】
初めに、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12を支持テープ60の表面に搭載する(図3A)。なお、支持テープ60には、これらの半導体チップからなる組が複数搭載される。
【0028】
次に、支持テープ60の表面に搭載された状態の第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12を封止部材30によって封止する。封止部材30は、公知のトランスファーモールド技術を用いて形成される。封止部材30の形成後、支持テープ60は除去される(図3B)。
【0029】
次に、封止部材30の下面S2に、再配線層40を形成する。再配線層40は、公知の再配線プロセスを用いて形成される。再配線プロセスは、例えば、ポリイミド塗布、ポリイミドパターニング、シード層形成、めっきレジスト形成、電解Cuめっき、レジスト除去、シード層エッチング、配線保護膜形成の各工程を含み得る。第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12は、再配線層40に形成された配線41を介して互いに電気的に接続される(図3C)。
【0030】
次に、公知のバックグラインド技術を用いて封止部材30の上面S1を研削することにより、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12の表面を露出させる(図3D)。
【0031】
次に、封止部材30から露出した、第1の半導体チップ11A、11Bの表面を覆うように第1の熱伝導部材21を形成する。第1の熱伝導部材21が液状である場合、例えばディスペンス法によって第1の熱伝導部材21が形成される。第1の熱伝導部材21がシート状である場合、第1の半導体チップ11A、11Bのサイズに応じてカットされたシート状の第1の熱伝導部材21が、第1の半導体チップ11A、11Bの表面にそれぞれ設けられる(図3E)。
【0032】
次に、封止部材30から露出した第2の半導体チップ12の表面及び第1の熱伝導部材21を一体的に覆うように第2の熱伝導部材22を形成する。第2の熱伝導部材22が液状である場合、例えばディスペンス法によって第2の熱伝導部材22が形成される。第2の熱伝導部材22がシート状である場合、例えばラミネート法によって第2の熱伝導部材22が形成される(図3F)。
【0033】
次に、第2の熱伝導部材22の表面を覆うように放熱部材50が設けられる。次に、再配線層40の半導体チップの搭載側とは反対側の表面に半田ボール42を形成する。その後、半導体装置1は、ダイシングによって個片化される(図3G)。個片化された半導体装置1は、図示しない実装基板上に搭載される。
【0034】
以上のように、開示の技術の実施形態に係る半導体装置1は、FOWLPの形態を有するので、従来のフリップチップ実装タイプの半導体装置と比較して高周波信号の伝送損失を抑制することができる。一方、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12のチップ間距離が比較的短いので、発熱量が相対的に大きい第1の半導体チップ11A、11Bから発熱量が相対的に小さい第2の半導体チップ12への熱の移動が問題となる。
【0035】
開示の技術の実施形態に係る半導体装置1によれば、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCが、第2の熱伝導部材22の平面方向における熱伝導率TC2XYよりも低い。これにより、発熱量が相対的に大きい第1の半導体チップ11A、11Bから発熱量が相対的に小さい第2の半導体チップ12への熱の移動を抑制することができる。従って、第2の半導体チップ12が耐熱温度を超える温度で加熱されるリスクを抑制することができるので、第2の半導体チップ12において、動作異常及び故障が発生するリスクを抑制することができる。
【0036】
例えば、第1の半導体チップ11A、11Bの耐熱温度が125℃、発熱量が1~50Wであり、第2の半導体チップ12の耐熱温度が125℃、発熱量が1~5Wである場合を想定する。この場合、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCを一例として1~3W/m・kとすることができる。第2の熱伝導部材22の平面方向における熱伝導率TC2XYを一例として10~1500W/m・kとすることができ、高さ方向における熱伝導率TC2zを一例として10W/m・k以下とすることができる。第1の熱伝導部材21及び第2の熱伝導部材22の熱伝導率を上記の範囲とすることで、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12の温度が、耐熱温度を超えること防止できる。
【0037】
図4は、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12の厚さが異なる場合の半導体装置1の構成の一例を示す断面図である。図4には、第1の半導体チップ11A、11Bの厚さが、第2の半導体チップ12の厚さよりも薄い場合が例示されている。この場合、第1の熱伝導部材21は、その一部が封止部材30に埋設されるように、封止部材30側にずらして設けられる。
【0038】
図4に示す構成の半導体装置1を製造する場合、封止部材30の研削工程(図3D)において、第2の半導体チップ12の表面が露出した段階で研削を終了させる。その後、封止部材30の第1の半導体チップ11A、11Bの表面を覆う部分を例えばプラズマ処理によって除去することにより、封止部材30の表面に凹部を形成し、該凹部の底面において第1の半導体チップ11A、11Bの表面を露出させる。その後、凹部の底面において露出している第1の半導体チップ11A、11Bの表面に、それぞれ第1の熱伝導部材21を形成する。
【0039】
なお、本実施形態においては、半導体装置1が、発熱量が相対的に大きい2つの半導体チップを備え、発熱量が相対的に小さい1つの半導体チップを備える構成を例示したが、これらの半導体チップの数は適宜増減することが可能である。また、半導体装置1は、チップコンデンサ等の半導体チップ以外の部品を備えていてもよい。また、本実施形態においては、半導体装置1がFOWLPの形態を有する場合を例示したが、半導体装置1は、フリップチップ実装タイプ等の他の形態を有するものであってもよい。
【0040】
[実施例]
開示の技術の実施例について以下に説明する。下記の表1に示す実施例1~3及び比較例に係るサンプルを作製し、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12を発熱させたときの、各半導体チップの温度を測定した。各サンプルにおいて、第1の半導体チップ11A、11Bの発熱量を10Wとし、第2の半導体チップ12の発熱量を0.1Wとした。また、各サンプルにおいて、第2の熱伝導部材22として使用した材料は全て同じであり、グラファイトシート(パナソニック製 TC2XY=1500W/m・k、TC2Z=5W/m・k)を使用した。
【0041】
【表1】
【0042】
実施例1に係るサンプルにおいては、第1の熱伝導部材21としてCGW(登録商標)(積水ポリマテック製 TC=3W/m・k)を使用した。第1の半導体チップ11A、11Bの温度は109℃であり、第2の半導体チップ12の温度は64℃であり、チップ間の温度差は45℃であった。
【0043】
実施例2に係るサンプルにおいては、第1の熱伝導部材21としてManion(積水ポリマテック製 TC=19W/m・k)を使用した。第1の半導体チップ11A、11Bの温度は98℃であり、第2の半導体チップ12の温度は68℃であり、チップ間の温度差は30℃であった。
【0044】
実施例3に係るサンプルにおいては、第1の熱伝導部材21としてインジウムシート(TC=81W/m・k)を使用した。第1の半導体チップ11A、11Bの温度は92℃であり、第2の半導体チップ12の温度は76℃であり、チップ間の温度差は16℃であった。
【0045】
比較例に係るサンプルにおいては、第1の熱伝導部材21を不使用とした。すなわち、比較例に係るサンプルにおいて、第1の半導体チップ11A、11B及び第2の半導体チップ12の表面を第2の熱伝導部材22によって一体的に覆う構成とした。第1の半導体チップ11A、11Bの温度は83℃であり、第2の半導体チップ12の温度は81℃であり、チップ間の温度差は2℃であった。
【0046】
以上のように、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCが低くなる程、第1の半導体チップ11A、11Bから第2の半導体チップ12への熱の移動が抑制されることが確認された。すなわち、第1の熱伝導部材21の熱伝導率TCを第2の熱伝導部材22の平面方向における熱伝導率TC2XYよりも低くすることは、第1の半導体チップ11A、11Bから第2の半導体チップ12への熱の移動の抑制に有効であることが確認された。
【0047】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0048】
(付記1)
第1の半導体チップと、
前記第1の半導体チップよりも発熱量の小さい第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップの少なくとも一部の上層に配置された第1の熱伝導部材と、
前記第2の半導体チップの上層及び前記第1の熱伝導部材の周囲に配置された第2の熱伝導部材と、
前記第2の熱伝導部材の上層で、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップが並ぶ方向である平面方向に沿って配置された放熱部材と、
を含み、
前記第1の熱伝導部材の熱伝導率は、前記第2の熱伝導部材の前記平面方向における熱伝導率よりも低い
半導体装置。
【0049】
(付記2)
前記第2の熱伝導部材は、前記平面方向と交差する方向である高さ方向における熱伝導率が、前記平面方向における熱伝導率よりも低い
付記1に記載の半導体装置。
【0050】
(付記3)
前記第2の熱伝導部材の前記高さ方向における熱伝導率は、前記第1の熱伝導部材の熱伝導率よりも低い
付記2に記載の半導体装置。
【0051】
(付記4)
前記第1の熱伝導部材の上層の、前記第2の熱伝導部材の厚さが1mm以下である
付記3に記載の半導体装置。
【0052】
(付記5)
前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップを封止する封止部材を更に含み、
前記第1の熱伝導部材は、前記封止部材から露出した前記第1の半導体チップの上層に配置されており、
前記第2の熱伝導部材は、前記封止部材から露出した前記第2の半導体チップの上層に配置されている
付記1から付記4のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0053】
(付記6)
前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとを電気的に接続する再配線層を更に含む
付記1から付記5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0054】
(付記7)
前記第1の半導体チップは単結晶シリコンからなる基板を有し、前記第2の半導体チップは化合物半導体からなる基板を有する
付記1から付記6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0055】
(付記8)
前記第2の熱伝導部材は、グラファイトシートである
付記1から付記7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0056】
(付記9)
第1の半導体チップ及び前記第1の半導体チップよりも発熱量の小さい第2の半導体チップを封止部材で封止する工程と、
前記封止部材を研削して前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップの表面を前記封止部材から露出させる工程と、
前記第1の半導体チップの前記封止部材から露出した上層に第1の熱伝導部材を配置する工程と、
前記第2の半導体チップの前記封止部材から露出した上層及び前記第1の熱伝導部材の周囲に第2の熱伝導部材を配置する工程と、
前記第2の熱伝導部材の上層で、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップが並ぶ方向である平面方向に沿って放熱部材を配置する工程と、
を含み、
前記第1の熱伝導部材の熱伝導率は、前記平面方向における熱伝導率よりも低い
半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体装置
11A、11B 第1の半導体チップ
12 第2の半導体チップ
21 第1の熱伝導部材
22 第2の熱伝導部材
30 封止部材
40 再配線層
41 配線
50 放熱部材
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4