(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、その硬化膜およびそれを具備する光学デバイス
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240509BHJP
G03F 7/022 20060101ALI20240509BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20240509BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240509BHJP
G02F 1/1333 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G03F7/004 503Z
G03F7/022
G03F7/075 511
G02B5/22
G02F1/1333 505
(21)【出願番号】P 2020517600
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013260
(87)【国際公開番号】W WO2020196601
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2019058133
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今西 世志美
(72)【発明者】
【氏名】日比野 利保
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 充史
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/142391(WO,A1)
【文献】特開2010-185991(JP,A)
【文献】特開2011-090164(JP,A)
【文献】国際公開第2017/188047(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004
G03F 7/022
G03F 7/023
G03F 7/075
G02B 5/22
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)および(2)で表される構造を有するポリシロキサン(A1)、ナフトキノンジアジド化合物(B)、ならびに200~360nmに極大吸収波長を有する光ラジカル発生剤(C1)および/または光酸発生剤(C1’)を含有することを特徴とする、ポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(R
1は水素原子もしくはメチル基、R
2およびR
3は単結合もしくは置換または無置換の炭素数1~8の炭化水素基。星印はケイ素原子に直結する。)
【請求項2】
前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’
)の200~360nmでの吸光係数の最大値が、360nm~450nmでの吸光係数の最大値の4倍以上である、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’
)の300nm~360nmでの吸光係数の最大値が、3000mL/g・cm以上である請求項1または2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’
)の360nm~450nmでの吸光係数の最大値が、500mL/g・cm未満である、請求項1~3のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサン(A1
)が、さらに下記一般式(3)で表される構造を有する、請求項1~4のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(R
4は単結合もしくは置換または無置換の2価の炭素数1~6の炭化水素基であって置換基を有していてもよい。)
【請求項6】
前記ポリシロキサン(A1
)がカルボキシル基またはカルボン酸無水物を有する有機基を有する請求項1~5のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記一般式(1)および(2)で表される構造の総量が、前記ポリシロキサン(A1
)中のケイ素原子の総量に対して30~60mоl%であることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
さらに酸無水物基を有する化合物(D)を含有する、請求項1~7のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
さらに不飽和二重結合を二つ以上有する多官能モノマー(E)を含有する、請求項1~8のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’
)が300nm~360nmに極大吸収波長を有する、請求項1~9のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項11】
以下の工程をこの順に行う硬化膜の製造方法。
(i)請求項1~10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程。
(ii)該塗膜を、365nm、405nm、436nmのうちいずれかの光の露光量が計10mJ/m
2以上となり、波長350nm未満の光の露光量が計1mJ/m
2以下となるようにパターン露光した後、現像液で現像することにより、塗膜の露光部分を除去する工程。
(iii)前記現像後、残った塗膜を前記光ラジカル発生剤(C1)および/または酸発生剤(C1’
)の、波長200~350nmでの露光量が、計10mJ/m
2以上となるよう、露光する工程。
(iv)前記露光後の塗膜を加熱する工程。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜。
【請求項13】
請求項12に記載の硬化膜を具備する光学デバイスもしくは電子材料。
【請求項14】
請求項12に記載の硬化膜からなる、光導波路、平坦化膜、保護膜、および層間絶縁膜からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、光学デバイスもしくは電子材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン加工性に優れており低温での硬化が可能でその硬化膜が耐薬品性に優れたポジ型感光性樹脂組成物、その硬化膜およびそれを具備する光学デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子等を用いた情報端末の急速な製品開発に伴い、電子回路、ディスプレイ、センサー等、従来ガラスや金属等の無機材料を使用していた部位に、有機材料を使用した製品の開発が進められている。これに伴い、素子の構成材料が熱劣化しないよう、有機材料の耐熱温度以下で成形・加工が可能である保護膜、平坦化膜、絶縁膜材料が必要となってきている。特に、有機EL発光材料の耐熱温度は100℃以下と言われており、100℃より低温条件での硬化が可能で、硬度、耐薬品性に優れ、パターン加工可能な感光性透明材料が求められているがこのような材料の例は少ない。
【0003】
保護膜等に利用される感光性透明材料として、特許文献1~3にはシロキサンポリマーとキノンジアジド化合物とを含有する光可溶化型のポジ型感光材料が記載されている。これらの材料では5μm以下の寸法のパターンを形成できる高い解像度を達成している。そして200~230℃で熱処理することによって、硬化し、その結果によって耐溶剤性(耐薬品性)を示す。また、特許文献4および特許文献5にはアルカリ可溶性ポリマー、重合開始剤、およびその他添加剤を含有する光硬化型のネガ型感光材料が記載されている。特許文献4に記載されている材料は解像度10μmを達成しており、120℃での加熱によって硬化し、耐薬品性を示す。また、特許文献5に記載されている材料は、さらに低温である100℃でも硬化し耐薬品性を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-293337号公報
【文献】特開2009-223293号公報
【文献】特開2017-173741号公報
【文献】特開2015-18226号公報
【文献】特開2018-91940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~4に記載されている材料では、100℃以下というこの種類の感光材料にしては低温で加熱した場合、硬化が不十分であり、耐薬品性が低下するという課題があった。また特許文献5に記載されている材料は、解像度が50μm以上であるという課題があった。
【0006】
以上の背景より、例えば有機EL発光材料の耐熱温度といわれている100℃以下という低温での硬化が可能で、耐薬品性、パターン加工性に優れた感光性透明材料が求められている。本発明はこれらを達成する感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するために、以下の感光性樹脂組成物を開示する。
(1)下記一般式(1)および(2)で表される構造を有するポリシロキサン(A1)、ナフトキノンジアジド化合物(B)、ならびに200~360nmに極大吸収波長を有する光ラジカル発生剤(C1)および/または光酸発生剤(C1’)を含有することを特徴とする、ポジ型感光性樹脂組成物。
【0008】
【0009】
(R1は水素原子もしくはメチル基、R2およびR3は単結合もしくは置換または無置換の炭素数1~8の炭化水素基。星印はケイ素原子に直結する。)
(2)繰り返し単位中に不飽和二重結合を含有する有機基を有するポリシロキサン(A2)、ナフトキノンジアジド化合物(B)、ならびに光ラジカル発生剤(C2)および/または光酸発生剤(C2’)を含有し、光ラジカル発生剤(C2)および/または光酸発生剤(C2’)の200~360nmでの吸光係数の最大値が、360nm~450nmでの吸光係数の最大値の2倍以上であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【0010】
これら感光性樹脂組成物の好ましい態様として以下の感光性樹脂組成物を開示する
(3)前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’)、または前記光ラジカル発生剤(C2)もしくは光酸発生剤(C2’)の200~360nmでの吸光係数の最大値が、360nm~450nmでの吸光係数の最大値の4倍以上である、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(4)前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’)、または前記光ラジカル発生剤(C2)もしくは光酸発生剤(C2’)の300nm~360nmでの吸光係数の最大値が、3000mL/g・cm以上である前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(5)前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’)、または前記光ラジカル発生剤(C2)もしくは光酸発生剤(C2’)の360nm~450nmでの吸光係数の最大値が、500mL/g・cm未満である、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(6)前記ポリシロキサン(A1)または前記ポリシロキサン(A2)が、さらに下記一般式(3)で表される構造を有する、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
【0011】
【0012】
(R4は単結合もしくは置換または無置換の2価の炭素数1~6の炭化水素基であって置換基を有していてもよい。)
(7)前記ポリシロキサン(A1)または前記ポリシロキサン(A2)がカルボキシル基またはカルボン酸無水物を有する有機基を有する前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(8)前記一般式(1)および(2)で表される構造の総量が、前記ポリシロキサン(A1)または前記ポリシロキサン(A2)中のケイ素原子の総量に対して30~60mоl%であることを特徴とする、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(9)さらに酸無水物基を有する化合物(D)を含有する、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(10)さらに不飽和二重結合を二つ以上有する多官能モノマー(E)を含有する、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
(11)前記光ラジカル発生剤(C1)もしくは光酸発生剤(C1’)または前記光ラジカル発生剤(C2)もしくは光酸発生剤(C2’)が300nm~360nmに極大吸収波長を有する、前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物。
【0013】
そして本発明の感光性樹脂組成物の利用方法および利用したものとして以下のものがある。
(12)以下の工程をこの順に行う硬化膜の製造方法。
(i)請求項1~11のいずれかに記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程。
(ii)該塗膜を、365nm、405nm、436nmのうちいずれかの光の露光量が計10mJ/m2以上となり、波長350nm未満の光の露光量が計1mJ/m2以下となるようにパターン露光した後、現像液で現像することにより、塗膜の露光部分を除去する工程。
(iii)前記現像後、残った塗膜を前記光ラジカル発生剤(C1)および/または酸発生剤(C1’)、または、前記光ラジカル発生剤(C2)および/または酸発生剤(C2’)の、波長200~350nmでの露光量が、計10mJ/m2以上となるよう、露光する工程。
(iv)前記露光後の塗膜を加熱する工程。
(13)前記いずれかのポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜。
(14)前記硬化膜を具備する光学デバイスもしくは電子材料。
(15)前記硬化膜からなる、光導波路、平坦化膜、保護膜、および層間絶縁膜からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、光学デバイスもしくは電子材料。
【発明の効果】
【0014】
本発明の樹脂組成物はパターン加工性に優れており低温条件での硬化が可能で、その硬化膜が耐薬品性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(1)および(2)で表される構造を有するポリシロキサン(A)、ナフトキノンジアジド化合物(B)および200~360nmに極大吸収波長を有する(C1)および/または光酸発生剤(C1’)を含有することを特徴とする、ポジ型感光性樹脂組成物である。
【0016】
【0017】
(R1は水素原子もしくはメチル基、R2およびR3は単結合もしくは置換または無置換の炭素数1~8の炭化水素基であってそれぞれ置換基を有していてもよい。前記置換基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。)
また本発明の別の態様の感光性組成物は、繰り返し単位中に不飽和二重結合を含有する有機基を有するポリシロキサン(A2)、ナフトキノンジアジド化合物(B)、ならびに光ラジカル発生剤(C2)および/または光酸発生剤(C2’)を含有し、光ラジカル発生剤(C2)および/または光酸発生剤(C2’)の200~360nmでの吸光係数の最大値が、360nm~450nmでの吸光係数の最大値の2倍以上であることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
<ポリシロキサン(A1)およびポリシロキサン(A2)>
本発明に用いられるポリシロキサン(A1)は、上記一般式(1)および(2)で表される構造を有する。ポリシロキサンが共重合性の高い上記一般式(1)および(2)で表される構造を有することで、熱硬化時の熱重合により、高耐熱性、耐薬品性を付与できる。さらに必要に応じて、必要な耐熱性、耐薬品性が、より低い温度での硬化で実現できる。
【0018】
上記ポリシロキサン(A1)の例としては、スチリル基を含有するアルコキシシラン化合物と(メタ)アクリル基を含有するアルコキシシラン化合物を加水分解および縮合させることによって得ることができるポリシロキサンが挙げられる。
【0019】
また上記ポリシロキサン(A2)の例としては、スチリル基を含有するアルコキシシラン化合物または(メタ)アクリル基を含有するアルコキシシラン化合物を加水分解および縮合させることによって得ることができるポリシロキサンが挙げられる。ポリシロキサン(A2)においても、ポリシロキサン(A1)のように一般式(1)および(2)の両方の構造を有していることが好ましい。
【0020】
これらの原料となるアルコキシシラン化合物は、市販されているため、入手が容易である。スチリル基を有するアルコキシシラン化合物の例としては、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルトリ(メトキシエトキシ)シラン、スチリルトリ(プロポキシ)シラン、スチリルトリ(ブトキシ)シラン、スチリルメチルジメトキシシラン、スチリルエチルジメトキシシラン、スチリルメチルジエトキシシラン、スチリルメチルジ(メトキシエトキシ)シラン等が挙げられる。(メタ)アクリル基を含有するアルコキシシラン化合物の例としては、γ-アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリロイルプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリロイルプロピルメチルジエトキシシラン、等が挙げられる。
【0021】
ポリシロキサン(A1)に含まれる一般式(1)および(2)で表される構造が占める割合は特に制限しないが、上記一般式(1)および(2)で表される構造が直結したケイ素原子が、ポリシロキサン中のケイ素原子の総量に対して20~80mol%が好ましく、より好ましくは上記一般式(1)および(2)で表される構造の総量がポリシロキサン中のケイ素原子の総量に対して30~60mol%である。さらに(1)で表される構造の総量が(2)で表される構造の総量に対し、mоl比で1.0~3.0であることが好ましい。
【0022】
ポリシロキサン(A2)に含まれる不飽和二重結合はラジカル重合性を有するものが好ましい。そしてポリシロキサン(A2)に含まれる不飽和二重結合を含有する有機基が結合したケイ素原子が、ポリシロキサン中のケイ素原子の総量に対して20~80mol%が好ましく、より好ましくは30~60mol%である。ポリシロキサン(A2)において一般式(1)および(2)の構造の両方をもつときは(1)で表される構造の総量が(2)で表される構造の総量に対し、mоl比で1.0~3.0であることが好ましい。
【0023】
以下、ポリシロキサン(A1)およびポリシロキサン(A2)に共通して説明する。上では一般式(1)および(2)が結合するケイ素の割合、ならびに不飽和二重結合を有する有機基が結合するケイ素の好ましい割合を説明した。
【0024】
残りの20~60mоl%、より好ましくは40~70mоl%は後述するアルコキシシラン化合物を原料として用いた場合に導入されうる構造が挙げられ、具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロポキシ基、アセトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、フェニル基、ビニル基がケイ素原子に直結した構造、もしくは後述の一般式(3)で表される構造、後述の一般式(4)~(6)のR5~R7、R9~R11、R13~R15のうち一つ以上が酸素原子に連結した構造、などが挙げられる。
【0025】
一般式(1)で表される構造、例えばスチリル基などを有するポリシロキサンは、Diels-Alder反応によって、パターン加工した際に残渣が発生しやすくなる。残渣の発生を抑制するためには、さらに一般式(3)で表される構造を含有させることが望ましい。
【0026】
【0027】
(R4は単結合もしくは置換または無置換の炭素数1~6の飽和炭化水素基であって置換基を有していてもよい。前記置換基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシ基等が挙げられる。星印はケイ素原子に直結する。)
この一般式(3)を有するポリシロキサンの原料であるアルコキシシラン化合物は市販されているため、入手が容易である。そのようなアルコキシシラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル-n-プロポキシシラン、ビニルトリ-1-プロポキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジ-n-プロポキシシラン、ビニルメチルジ-1- プロポキシシラン、ビニルメチルジアセトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルエチルジ-n-プロポキシシラン、ビニルエチルジ-1-プロポキシシラン、ビニルエチルジアセトキシシラン、ビニルフェニルジメトキシシラン、ビニルフェニルジエトキシシラン、ビニルフェニル-n-プロポキシシラン、ビニルフェニル-1-プロポキシシラン、ビニルフェニルジアセトキシシラン、等が挙げられる。
【0028】
一般式(1)、(2)および(3)で表される構造、例えばスチリル基および(メタ)アクリル基およびビニル基は、耐熱性、耐薬品性に寄与する一方で、疎水性が高いため、基板の外周部では、濡れ広がりが悪く、歩留まりが低下する恐れがある。基板の外周部まで均一に塗布し、歩留まりを向上させるために、ポリシロキサン中に親水性基を導入することが望ましい。また、ポリシロキサン中に親水性基を有することにより、現像液であるアルカリ溶液への溶解性を向上させ、現像後の残さを抑制して、室温における長期保管後にも露光における感度、解像度を高く保つことが可能になる。この親水性基としては、カルボキシル基もしくはカルボン酸無水物を有する有機基がより好ましい。
【0029】
このカルボキシル基もしくはカルボン酸無水物を有する有機基を有するポリシロキサンの原料であるアルコキシシラン化合物は市販されているため、入手が容易である。そのようなアルコキシシラン化合物の例としては、下記一般式(4)~(6)のいずれかで表されるオルガノシラン化合物が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0030】
【0031】
(一般式(4)~(6)中、R5~R7、R9~R11およびR13~R15は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、フェニル基、フェノキシ基または炭素数2~6のアルキルカルボニルオキシ基を表す。なお、R5~R7、R9~R11およびR13~R15のうち少なくとも一つは炭素数1~6のアルコキシ基であるとする。R8、R12およびR16は、単結合、または炭素数1~10の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3~16の環状脂肪族炭化水素基、炭素数2~6のアルキルカルボニルオキシ基、カルボニル基、エーテル基、エステル基、アミド基、芳香族基、もしくはこれらのいずれかを有する2価の基を表す。これらの基は置換されていてもよい。hおよびkは0~3の整数を表す。 R8、R12およびR16の具体例としては、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-O-、-C3H6OCH2CH(OH)CH2O2C-、-CO-、-CO2-、-CONH-、以下にあげる有機基等が挙げられる。)
一般式(4)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、[3-(トリメトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物、[3-(トリエトキシシシリル)プロピル]コハク酸無水物、3-トリフェノキシシリルプロピルコハク酸無水物等が挙げられる。一般式(5)で表されるオルガノシラン化合物の具体例としては、3-トリメトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物等が挙げられる。一般式(6)で表されるアルコキシシラン化合物の具体例としては、3-トリメトキシシシリルプロピルフタル酸無水物等が挙げられる。
【0032】
さらに、上記アルコキシシラン化合物に加えて、他のアルコキシシラン化合物を原料としてもよい。これらのアルコキシシラン化合物としては、3官能アルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-(N,N-ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、β-シアノエチルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロプロピルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロペンチルエチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリプロポキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリイソプロポキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
【0033】
2官能アルコキシシラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルエチルジエトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルビニルジエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、3-クロロプロピルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0034】
3官能性アルコキシシラン化合物としては、例えば、これらのうち、得られる塗膜の耐薬品性の観点から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、およびフェニルトリエトキシシランが好ましい。
【0035】
2官能性アルコキシシラン化合物としては、これらのうち、得られる塗膜に可とう性を付与させる目的には、ジメチルジアルコキシシランが好ましく用いられる。
これら以外に4官能性アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
これらアルコキシシラン化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるポリシロキサン(A1)またはポリシロキサン(A2)は、アルコキシシラン化合物を加水分解した後、該加水分解物を溶媒の存在下、あるいは無溶媒で縮合反応させることによって得ることができる。
【0038】
加水分解における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状等を考慮して、たとえば酸(塩基)濃度、反応温度、反応時間等を設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0039】
加水分解反応に用いる触媒としては、酸触媒と塩基触媒が挙げられる。酸触媒としては、塩酸、酢酸、蟻酸、硝酸、蓚酸、塩酸、硫酸、リン酸、ポリリン酸、多価カルボン酸またはその無水物、そしてイオン交換樹脂等が挙げられる。塩基触媒としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロピルアミン、トリプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジイソアミルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、トリペンチルアミン、トリイソペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。触媒の好ましい含有量としては、加水分解反応時に使用される全アルコキシシラン化合物100重量部に対して、好ましくは、0.05重量部以上、より好ましくは0.1重量部以上であり、また、好ましくは10重量部以下、より好ましくは5重量部以下である。ここで、全アルコキシシラン化合物量とは、アルコキシシラン化合物、その加水分解物およびその縮合物の全てを含んだ量のことを言い、以下同じとする。触媒の量を0.05重量部以上とすることでスムーズに加水分解が進行し、また10重量部以下とすることで加水分解反応の制御が容易となる。
【0040】
加水分解反応に用いる溶媒は特に限定されないが、樹脂組成物の安定性、濡れ性、揮発性等を考慮して適宜選択する。溶媒は1種類のみならず2種類以上用いることも可能である。溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2-ヘプタノン等のケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の芳香族あるいは脂肪族炭化水素;および、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド等を挙げることができる。
【0041】
これらのうち、硬化膜の透過率、クラック耐性、重合安定性等の観点から、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ-t-ブチルエーテル、γ-ブチロラクトン等が好ましく用いられる。
【0042】
加水分解反応終了後に、さらに溶媒を添加することにより、樹脂組成物として適切な濃度に調整することも好ましい。また、加水分解後に加熱および/または減圧下により生成アルコール等の全量あるいは一部を留出、除去し、その後好適な溶媒を添加することも可能である。
【0043】
加水分解反応時に使用される溶媒の量は、全アルコキシシラン化合物100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは80質量部以上であり、また、好ましくは500質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。溶媒の量を50質量部以上とすることでゲルの生成を抑制できる。また500質量部以下とすることで加水分解反応が速やかに進行する。また、加水分解反応に用いる水としては、イオン交換水が好ましい。水の量は任意に選択可能であるが、アルコキシシラン化合物1モルに対して、1.0~4.0モルの範囲で用いることが好ましい。
【0044】
また、組成物の貯蔵安定性の観点から、加水分解、部分縮合後のポリシロキサン溶液には上記触媒が含まれないことが好ましく、必要に応じて触媒の除去を行うことができる。除去方法に特に制限は無いが、操作の簡便さと除去性の点で、水洗浄、および/またはイオン交換樹脂の処理が好ましい。水洗浄とは、ポリシロキサン溶液を適当な疎水性溶剤で希釈した後、水で数回洗浄して得られた有機層をエバポレーター等で濃縮する方法である。イオン交換樹脂での処理とは、ポリシロキサン溶液を適当なイオン交換樹脂に接触させる方法である。
【0045】
本発明の感光性樹脂組成物に用いられるポリシロキサン(A1)またはポリシロキサン(A2)の重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、ゲルパーエミッションクロマトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算で、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上である。また、好ましくは100,000以下、さらに好ましくは50,000以下である。Mwを上記範囲とすることで、良好な塗布特性が得られ、パターン形成する際の現像液への溶解性も良好になる。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物において、ポリシロキサン(A1)またはポリシロキサン(A2)の含有量に特に制限はなく、所望の膜厚や用途により任意に選ぶことができるが、本発明の樹脂組成物の固形分100質量部に対して10質量部~80質量部が一般的である。
【0047】
<ナフトキノンジアジド化合物(B)>
本発明の感光性樹脂組成物はナフトキノンジアジド化合物(B)を含有する。ナフトキノンジアジド化合物を用いることにより、露光部が現像液で除去されるポジ型の感光性を示す。ナフトキノンジアジド化合物としては、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。
【0048】
用いるナフトキノンジアジド化合物は特に制限されないが、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合した化合物が好ましい。ここで用いられるフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、Bis-Z、BisOC-Z、BisOPP-Z、BisP-CP、Bis26X-Z、BisOTBP-Z、BisOCHP-Z、BisOCR-CP、BisP-MZ、BisP-EZ、Bis26X-CP、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisCR-IPZ、BisOCP-IPZ、BisOIPP-CP、Bis26X-IPZ、BisOTBP-CP、TekP-4HBPA(テトラキスP-DO-BPA)、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisOFP-Z、BisRS-2P、BisPG-26X、BisRS-3P、BisOC-OCHP、BisPC-OCHP、Bis25X-OCHP、Bis26X-OCHP、BisOCHP-OC、Bis236T-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BisRS-OCHP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR-OC、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-PCHP、BIP-BIOC-F、4PC、BIR-BIPC-F、TEP-BIP-A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、4,4’-スルホニルジフェノール(和光純薬(株)社製)、BPFL(商品名、JFEケミカル(株)製)が挙げられる。
【0049】
これらのうち、好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis-Z、BisP-EZ、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisOCHP-Z、BisP-MZ、BisP-PZ、BisP-IPZ、BisOCP-IPZ、BisP-CP、BisRS-2P、BisRS-3P、BisP-OCHP、メチレントリス-FR-CR、BisRS-26X、BIP-PC、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-BIPC-F等が挙げられる。これらのうち、特に好ましいフェノール性水酸基を有する化合物としては、たとえば、Bis-Z、TekP-4HBPA、TrisP-HAP、TrisP-PA、BisRS-2P、BisRS-3P、BIR-PC、BIR-PTBP、BIR-BIPC-F、4,4’-スルホニルジフェノール、BPFLである。これらフェノール性水酸基を有する化合物に、1,2-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸、2,1-ナフトキノンジアジド-4-スルホン酸、1,2-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸、2,1-ナフトキノンジアジド-5-スルホン酸など、4-(または5-)ナフトキノンジアジドスルホン酸をエステル結合で導入したものが好ましいものとして例示することができる。これ以外の化合物を使用することもできる。ナフトキノンジアジド化合物の分子量は、好ましくは300~1500、さらに好ましくは350~1200である。分子量を300以上とすることで、未露光部の溶解抑止効果が得られる。また、分子量を1500以下とすることでスカム等のない良好なレリーフパターンが得られる。
【0050】
これらのナフトキノンジアジド化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
これらの化合物の含有量は、本発明の樹脂組成物の固形分100質量部に対して1~50質量部、より好ましくは2~10質量部である。1質量部以上とすることで、実用的な感度でパターン形成を行うことができる。また、50質量部以下とすることで、透過率やパターン解像性に優れた樹脂組成物が得られる。
【0052】
ナフトキノンジアジド化合物を添加した場合、未露光部に未反応の感光剤が残留し、加熱硬化後に膜の着色が生じることがある。透明な硬化膜を得るためには、現像後の膜全面に紫外線を照射してナフトキノンジアジド化合物を分解し、その後に加熱硬化を行うことが好ましい。
【0053】
<光ラジカル発生剤(C1またはC2)、および光酸発生剤(C1’またはC2’)>
本発明の樹脂組成物は、光ラジカル発生剤(C1またはC2)、および/または光酸発生剤(C1’またはC2’)を含有する。光ラジカル発生剤とは、可視光線、紫外線、遠紫外線、電子線、X線等の放射線の露光により、スチリル基、(メタ)アクリル基またはビニル基の付加重合を開始し得る活性種であるラジカルを発生することができる化合物である。また、光酸発生剤とは、上記放射線の露光により酸を放出し得る化合物である。発生した活性種または酸は、ポリシロキサンおよび後述する酸無水物基を有する化合物の付加反応または重縮合といった架橋反応に寄与すると考えられる。
【0054】
これらの化合物は、現像工程より前の露光ではなく、現像工程より後の露光によって分解し、活性種もしくは酸を発生することが好ましく、現像工程より前の露光時の波長には吸収が少ないことが望ましい。ナフトキノンジアジド化合物(B)はg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)領域に吸収をもつ。そこで、これらの光源によってパターン露光を行い、現像してパターンの形成を行い、さらに、より短波長の光も含む光源で露光し、パターンを硬化させることができる。本発明で使用できる光ラジカル発生剤(C1)および光酸発生剤(C1’)は、波長200nmと360nmとの間に吸収の極大値を有する。さらに300nmと360nmとの間に吸収の極大値を有することがより好ましい。もし200nmと~360nmとの間に極大吸収波長の極大値がなく、360nmを超えた波長に極大値がある場合、現像工程より前にあるパターン露光時に硬化が過剰に進み、パターン加工性が低下するおそれがある。
【0055】
また、耐薬品性の向上と高解像度を両立するため、本発明で使用できる光ラジカル発生剤(C2)および光酸発生剤(C2’)では、200~360nmでの吸光係数の最大値が、360nm~450nmでの吸光係数の最大値の2倍以上であることが好ましく、200~360nmでの吸光係数の最大値が、360nm~450nmでの吸光係数の最大値の4倍以上であることがさらに好ましい。この要望は第一の発明で使用できる光ラジカル発生剤(C1)および光酸発生剤(C1’)においても同様である。
【0056】
この、波長200~360nmでの吸光係数の最大値と、360nm~450nmでの吸光係数の最大値、との関係では、最大値は各範囲における吸光係数の極大値と、各範囲の端部となる波長における吸光係数のうち大きい方となる。極大値が存在しない場合は各範囲の端部となる波長における吸光係数のうち大きい方となる。
【0057】
なお、360nmを超えた波長に極大値がない場合や200~360nmでの吸光係数の最大値と360nm~450nmでの吸光係数の最大値が上記比率を満たしている場合でも、360nm~450nmでの吸光係数の大きすぎる場合、パターン加工性が低下するおそれがあるため、360nm~450nmでの吸光係数の最大値が500mL/g・cm未満であることが好ましい。また、300nm~360nmとの間に吸収の極大値を有している場合や200~360nmでの吸光係数の最大値と360nm~450nmでの吸光係数の最大値が上記比率を満たしている場合でも、300~360nmでの吸光係数の最大値が3000mL/g・cm未満である場合は耐薬品性が悪化するおそれがあるため、300~360nmでの吸光係数の最大値が3000mL/g・cm以上であることが好ましい。
【0058】
上記を満たす化合物の例としては、光ラジカル発生剤の例としては、NCI-930、N-1919、NCI-831(商品名、ADEKA(株)製)、Irgacure127、Irgacure184、Irgacure500、Irgacure651、IrgacureMBF、Irgacure754、Irgacure907、Darccur1173(商品名、BASFジャパン(株)製)、等、光酸発生剤の例としては、SP-082、SP-606、SP-171(商品名、ADEKA(株)製)、PAG169、CGI725、等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、特にベンゾフェノン系光ラジカル発生剤を用いることが好ましく、このような化合物の例としてはフェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、オキシフェニルアセチックアシッド2-[2-ヒドロキシ-エトキシ]-エチルエステル、オキシフェニルアセチックアシッド2-[2-オキソ-2-フェニル-アセトキシ-エトキシ]-エチルエステル、等が挙げられる。
【0059】
これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0060】
光ラジカル発生剤および光酸発生剤の含有量は、本発明の樹脂組成物の固形分100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。上記範囲とすることで、硬化が促進され耐薬品性の向上が期待でき、かつ過剰な硬化を防ぐことができる。
【0061】
<酸無水物基を有する化合物(D)>
本発明の感光性樹脂組成物は、さらに酸無水物基を有する化合物を含んでもよい。この化合物は比較的低温での加熱によって加水分解し、酸を放出するため、ポリシロキサンの縮合反応を促進し、得られる硬化膜の耐薬品性向上に寄与する。また、比較的低温での加熱によってポリシロキサン中の官能基や添加剤と反応し、架橋構造を形成することができうるため、硬化膜の耐薬品性向上に寄与する。
【0062】
酸無水物基を有する化合物の例としては、無水コハク酸、オクチル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、無水メチルナジック酸、無水マレイン酸、cis-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、cis-1,2-シクロヘキセンジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸無水物、3,4-ジカルボキシ-1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフタレンコハク酸二無水物、ビシクロ[3.3.0]オクタン-2,4,6,8-テトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物等が挙げられるが、これらに限定されない。これらのなかでも、溶解性(現像性)や耐薬品性の観点から、無水コハク酸、無水フタル酸、cis-1,2-シクロヘキセンジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等が特に好ましい。
【0063】
これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0064】
酸無水物基を有する化合物の含有量は、本発明の樹脂組成物の固形分100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、0.5質量部以上がさらに好ましい。また、20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。上記範囲内とすることで硬化が促進され耐薬品性の向上が期待でき、また、保存安定性の低下を防ぐ。
【0065】
<不飽和二重結合を二つ以上有する多官能モノマー(E)>
本発明の感光性樹脂組成物は、不飽和二重結合を有するポリシロキサン以外にも、不飽和二重結合を二つ以上有する多官能モノマー(E)を含有してもよい。この化合物は露光や前述の光ラジカル発生剤によってモノマーどうし、およびポリシロキサン中の官能基と反応を起こし、硬化を促進する。このような化合物は、特に限定されないが、ラジカル重合性のしやすさを考えると(メタ)アクリル基を有する多官能モノマーが好ましい。このような化合物の例としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタアクリレート、トリペンタエリスリトールオクタアクリレート、テトラペンタエリスリトールノナアクリレート、テトラペンタエリスリトールデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカアクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカアクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタメタクリレート、トリペンタエリスリトールオクタメタクリレート、テトラペンタエリスリトールノナメタクリレート、テトラペンタエリスリトールデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールウンデカメタクリレート、ペンタペンタエリスリトールドデカメタクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0066】
これらの化合物は単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
これらの化合物の含有量は、本発明の樹脂組成物の固形分100質量部に対して3質量部以上が好ましく、30質量部以下が好ましい。
【0068】
<その他の成分>
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を含有してもよい。本発明の感光性樹脂組成物は、大気圧下の沸点が250℃以下の溶剤を好適に使用でき、これらを2種類以上用いてもよい。また、本発明の感光性樹脂組成物を加熱硬化させた硬化膜中に溶剤が残存すると、耐薬品性や基板との密着性が経時的に損なわれることから、大気圧下の沸点が150℃以下の溶剤が感光性樹脂組成物中における、溶剤全体の50質量部以上であることが好ましい。
【0069】
大気圧下の沸点が150℃以下の溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソペンチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸メトキシメチル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1-メトキシプロピル-2-アセテート、アセトール、アセチルアセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、乳酸メチル、トルエン、シクロペンタノン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン、ベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、3-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブタノン、5-ヒドロキシ-2-ペンタノンが挙げられる。
【0070】
大気圧下の沸点が150~250℃の溶剤としては、例えば、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、エチレングリコールモノ-tert-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノn-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテル、酢酸2-エトキシエチル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、乳酸エチル、乳酸ブチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、炭酸プロピレン、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテルが挙げられる。
【0071】
これらの溶剤は2種以上含有してもよい。また、溶剤の含有量に特に制限はなく、塗布方法等に応じて任意の量を用いることができる。例えば、スピンコーティングにより膜形成を行う場合には、本発明の感光性樹脂組成物全体の50質量部以上、95質量部以下とすることが一般的である。
【0072】
本発明の感光性樹脂組成物は、塗布時におけるフロー性や膜厚の均一性向上のために、各種界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の種類に特に制限はなく、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ポリアルキレンオキシド系界面活性剤、ポリ(メタ)アクリレート系界面活性剤等を用いることができる。これらのうち、フロー性や膜厚均一性の観点から、フッ素系界面活性剤が特に好ましく用いられる。
【0073】
界面活性剤の含有量は、樹脂組成物に含まれるポリシロキサン100質量部に対して、通常、0.001~10質量部である。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0074】
さらに、本発明の感光性樹脂組成物は、例えばプリベーク時の熱重合を抑制する目的で、重合禁止剤を含有しても構わない。本発明の感光性樹脂組成物中の重合禁止剤含有量は、感光性樹脂組成物全体に対して0.000005~0.2質量部であることが好ましく、0.00005~0.1質量部であることがより好ましい。また、有機溶媒以外の全成分に対して0.0001~0.5質量部が好ましく、0.001~0.2質量部がより好ましい。
さらに本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、粘度調整剤、安定化剤、着色剤、増感剤、紫外線吸収剤等を含有することができる。
【0075】
<硬化膜の形成方法>
本発明の感光性樹脂組成物を用いた硬化膜の形成方法について、例を挙げて説明する。本発明の感光性樹脂組成物を、マイクログラビアコーティング、スピンコーティング、ディップコーティング、カーテンフローコーティング、ロールコーティング、スプレーコーティング、スリットコーティング等の公知の方法によって下地基板上に塗布し、ホットプレート、オーブン等の加熱装置でプリベークする。プリベークは、50~130℃の範囲で30秒~30分間行い、プリベーク後の膜厚は、0.1~15μmとすることが好ましい。
【0076】
プリベーク後、ステッパー、ミラープロジェクションマスクアライナー(MPA)、パラレルライトマスクアライナー(PLA)等の露光機を用いて露光する。露光量は10~4000J/m2程度で、この光を所望のマスクを介してあるいは介さずに照射する。露光光源に制限はなく、i線、g線、h線等の紫外線や、KrF(波長248nm)レーザー、ArF(波長193nm)レーザー等を用いることができるが、パターン加工性の観点から、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)もしくはこれらの混合光源で行うことが望ましい。
【0077】
次に、現像により露光部を溶解させ、ポジ型のパターンを得ることができる。現像方法としては、シャワー、ディッピング、パドル等の方法で現像液に5秒~10分間浸漬することが好ましい。現像液としては、公知のアルカリ現像液を用いることができる。具体例としてはアルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩等の無機アルカリ、2-ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、コリン等の4級アンモニウム塩を1種あるいは2種以上含む水溶液等が挙げられる。現像後、水でリンスすることが好ましく、つづいて50~130℃の範囲で乾燥ベークを行うこともできる。
【0078】
その後、この膜を波長360nm以下の光を含む光源によって全面露光し、ホットプレート、オーブン等の加熱装置で60~200℃の範囲で15分~3時間程度加熱する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。合成例、実施例および比較例に用いた化合物のうち、略語を使用しているものについて、以下に示す。
【0080】
<アルコキシシラン化合物>
MeTMS:メチルトリメトキシシラン
PhTMS:フェニルトリメトキシシラン
StTMS:スチリルトリメトキシシラン
AcTMS:3-(トリメトキシシリル)プロピルアクリレート
SucTMS:[3-(トリメトキシシリル)プロピル]コハク酸無水物
VnTMS:ビニルトリメトキシシラン。
【0081】
<溶媒および添加剤>
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DAA:ジアセトンアルコール
TMAH:水酸化テトラメチルアンモニウム
IPA:イソプロパノール。
【0082】
<固形分濃度の測定>
ポリシロキサン溶液の固形分濃度は、以下の方法により求めた。アルミカップにポリシロキサン溶液を1.0g秤取し、ホットプレートを用いて250℃で30分間加熱して液分を蒸発させた。加熱後のアルミカップに残った固形分を秤量して、ポリシロキサン溶液の固形分濃度を求めた。
【0083】
<スチリル基およびアクリル基の存在割合の測定>
29Si-NMRの測定を行い、ケイ素原子全体の積分値とそれぞれの官能基に直結しているケイ素原子の積分値とから目的とする官能基の存在割合を計算した。試料となるポリシロキサン溶液を直径10mmの“テフロン”(登録商標)製NMRサンプル管に注入し、測定にした。29Si-NMRの測定条件を以下に示す。
【0084】
装置:日本電子社製JNM GX-270、測定法:ゲーテッドデカップリング法
測定核周波数:53.6693MHz(29Si核)、スペクトル幅:20000Hz
パルス幅:12μsec(45°パルス)、パルス繰り返し時間:30.0sec
溶媒:アセトン-d6、基準物質:テトラメチルシラン
測定温度:室温、試料回転数:0.0Hz。
【0085】
<光ラジカル発生剤および光酸発生剤の極大吸収波長および吸光係数の測定>
各光ラジカル発生剤および光酸発生剤につき、0.03gを10mLメスフラスコに秤取し、標線までアセトニトリルを加えて溶液を調整した。さらにこの溶液を0.5mLホールピペットで10mLメスフラスコに移し、標線までアセトニトリルを加える操作を2回行い、400倍希釈した。各希釈液のUVスペクトルを、紫外-可視分光光度計「UV-260」(島津製作所(株)製)により、1cm角の石英セルを用いて波長200~800nmについて測定した。なお、バックグラウンド測定として、アセトニトリルのみで測定を行い、各溶液の吸光度からアセトニトリルの吸光度を差し引くことで光ラジカル発生剤および光酸発生剤の吸光度を求めた。さらに各吸光度を濃度(g/mL)で除することで吸光係数(mL/g・cm)を算出した。
【0086】
<実施例で用いるポリマー合成>
合成例1 P-1の合成
500mLの三口フラスコにMeTMSを26.74g(0.20mоl)、StTMSを58.71g(0.26mоl)、AcTMSを46.00(0.20mоl)、DAAを129.44g仕込み、室温で攪拌しながら水35.34gとリン酸0.58gの混合液を30分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間攪拌した後、オイルバスを30分かけて110℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから1時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。フラスコ内に残留したポリシロキサンのDAA溶液に固形分濃度が40%となるようにDAAを追加し、これをP-1のDAA溶液とした。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ40mol%、30mol%だった。
【0087】
合成例2 P-2の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを71.30g(0.52mol)、StTMSを14.68g(0.065mol)、AcTMSを15.33g(0.065mol)DAAを84.24g仕込み、水35.34gとリン酸0.50gの混合液を添加し、P-2を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ10mol%、10mol%だった。
【0088】
合成例3 P-3の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを49.02g(0.36mol)、StTMSを44.03g(0.20mol)、AcTMSを23.00g(0.10mol)DAAを106.35g仕込み、水35.34gとリン酸0.58gの混合液を添加し、P-3を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ30mol%、15mol%だった。
【0089】
合成例4 P-4の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを49.02g(0.36mol)、StTMSを44.03g(0.20mol)、AcTMSを15.33g(0.065mol)DAAを98.24g仕込み、水33.57gとリン酸0.54gの混合液を添加し、P-4を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ30mol%、10mol%だった。
合成例5 P-5の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを62.39g(0.45mol)、StTMSを29.36g(0.13mol)、AcTMSを15.33g(0.065mol)DAAを92.89g仕込み、水35.34gとリン酸0.54gの混合液を添加し、P-5を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ20mol%、10mol%だった。
合成例6 P-6の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを53.48g(0.39mol)、StTMSを29.36g(0.13mol)、AcTMSを30.67g(0.13mol)DAAを102.52g仕込み、水35.34gとリン酸0.57gの混合液を添加し、P-6を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ20mol%、20mol%だった。
【0090】
合成例7 P-7の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを35.65g(0.26mol)、StTMSを58.71g(0.26mol)、AcTMSを30.67g(0.13mol)DAAを122.27g仕込み、水35.34gとリン酸0.63gの混合液を添加し、P-7を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ40mol%、20mol%だった。
【0091】
合成例8 P-8の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを44.57g(0.33mol)、StTMSを44.03g(0.20mol)、AcTMSを23.00g(0.10mol)、VnTMSを4.85g(0.03mol)、DAAを106.94g仕込み、水35.34gとリン酸0.58gの混合液を添加し、P-8を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ30mol%、15mol%だった。
【0092】
合成例9 P-9の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを40.11g(0.29mol)、StTMSを44.03g(0.20mol)、AcTMSを23.00g(0.10mol)、VnTMSを4.85g(0.03mol)、SucTMSを8.58g(0.03mol)、DAAを114.02g仕込み、水35.93gとリン酸0.56gの混合液を添加し、P-9を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ30mol%、15mol%だった。
【0093】
合成例10 P-10の合成
合成例1と同様の手順で、MeTMSを44.57g(0.33mol)、StTMSを44.03g(0.20mol)、AcTMSを23.00g(0.10mol)、SucTMSを8.58g(0.03mol)、DAAを113.43g仕込み、水35.93gとリン酸0.56gの混合液を添加し、P-10を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基、アクリル基のケイ素原子に対するモル量はそれぞれ30mol%、15mol%だった。
【0094】
<比較例のポリマー合成>
合成例11 R-1の合成
500mLの三口フラスコにMeTMSを49.02g(0.36mol)、PhTMSを38.93g(0.20mol)、AcTMSを23.00g(0.10mol)、DAAを98.70g仕込み、室温で攪拌しながら水35.34gとリン酸0.56gの混合液を30分かけて添加した。その後、フラスコを70℃のオイルバスに浸けて1時間攪拌した後、オイルバスを30分かけて110℃まで昇温した。昇温開始1時間後に溶液の内温が100℃に到達し、そこから1時間加熱攪拌した(内温は100~110℃)。フラスコ内に残留したポリシロキサンのDAA溶液に固形分濃度が40%となるようにDAAを追加し、R-1のDAA溶液とした。29Si-NMRで測定したアクリル基のモル量は15mol%だった。
【0095】
合成例12 R-2の合成
合成例11と同様の手順で、MeTMSを49.02g(0.36mol)、AcTMSを69.00g(0.29mol)、DAAを109.30g仕込み、水35.34gとリン酸0.59gの混合液を添加し、R-2を合成した。29Si-NMRで測定したアクリル基のモル量は45mol%だった。
【0096】
合成例13 R-3の合成
合成例11と同様の手順で、MeTMSを62.39g(0.46mol)、PhTMSを38.93g(0.20mol)、DAAを84.25g仕込み、水35.34gとリン酸0.51gの混合液を添加し、R-3を合成した。
【0097】
合成例14 R-4の合成
合成例11と同様の手順で、MeTMSを62.39g(0.46mol)、StTMSを44.03g(0.20mol)、DAAを91.91g仕込み、水35.34gとリン酸0.53gの混合液を添加し、R-4を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基のモル量は30mol%だった。
【0098】
合成例15 R-5の合成
合成例11と同様の手順で、MeTMSを49.02g(0.36mol)、StTMSを66.05g(0.29mol)、DAAを104.88g仕込み、水35.34gとリン酸0.58gの混合液を添加し、R-5を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基のモル量は45mol%だった。
【0099】
合成例16 R-6の合成
合成例11と同様の手順で、MeTMSを44.57g(0.33mol)、StTMSを66.05g(0.29mol)、VnTMSを4.85g(0.03mol)、DAAを105.47g仕込み、水35.34gとリン酸0.58gの混合液を添加し、R-6を合成した。29Si-NMRで測定したスチリル基のモル量は45mol%だった。
合成例1~16の組成をまとめて表1に示す。
【0100】
【0101】
<樹脂組成物の作製>
実施例1
ポリシロキサン(A)としてP-1のDAA溶液(40%)を6.90g、ナフトキノンジアジド化合物(B)としてSTP-528(商品名、AZエレクトロニックマテリアルズ(株))を0.23g、光ラジカル発生剤(C)としてNCI-831(商品名、BASFジャパン(株))を0.15g、溶媒としてPGMEAおよびDAAを1.28gおよび1.39g、黄色灯下で混合し、振とう撹拌した後0.2μm径のフィルタで濾過して樹脂組成物を得た。組成を表2に示す。
【0102】
実施例2~25、比較例1~8
実施例1と同様の手順で表2に示す組成に従って樹脂組成物を作製した。
【0103】
表2に示した化合物の番号は以下のものを示す。
B-1:STP-528 AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製
C-1:NCI-831 ADEKA(株)製
C-2:Darocur1173 BASFジャパン(株)製
C-3;Irgacure819 BASFジャパン(株)製
C-4:Irgacure907 BASFジャパン(株)製
C-5:Irgacure754 BASFジャパン(株)製
C-6:SP-606 ADEKA(株)製
C-7:SP-082 ADEKA(株)製
C-8:SP-056 ADEKA(株)製
C-9:Irgacure OXE02 BASFジャパン(株)製
D-1:無水マレイン酸 富士フィルム和光純薬(株)製
D-2:無水コハク酸 富士フィルム和光純薬(株)製
E-1:DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート) 日本化薬(株)製
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DAA:ジアセトンアルコール。
【0104】
なお、NCI-831の極大吸収波長は276,370nm、Darocure-1173の極大吸収波長は247,273nm、Irgacure-819の極大吸収波長は203,291,368,390nm、Irgacure-907の極大吸収波長は228,302nm、Irgacure-754の極大吸収波長は253,336nm、SP-606の極大吸収波長は231,344nm、SP-082の極大吸収波長は228, 337nm、SP-056の極大吸収波長は231,266,274nmである。また、各光ラジカル発生剤および光酸発生剤の200~360nmでの吸光係数の最大値、300~360nmでの吸光係数の最大値、360~450nmでの吸光係数の最大値を表3に示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
<硬化膜の形成および評価>
作製した樹脂組成物を用いて、以下の方法により硬化膜を作成した。また、硬化膜の評価を以下の方法で行った。評価結果を表4に示す。
【0109】
(1)硬化膜の形成
感光性樹脂組成物を4インチシリコンウェハ基板上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)製 型式名クリーントラックマーク7)を用いて目的となる膜厚となる回転数で塗布した。塗布後、基板をホットプレートSCW-636(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて80℃で3分間プリベークした。それを自動現像装置AD-2000(滝沢産業(株)製)を用いて2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM-D(三菱ガス化学(株)製)で90秒間パドル現像し、次いで水で30秒間リンスした。作製した膜全面をパラレルライトマスクアライナーPLA-501F(キヤノン(株)製)を用いて露光した後、最後にオーブンIHPS-222(タバイエスペック(株)製)を用いて大気下、80℃で120分間キュアし、約1.5μmの硬化膜を得た。
【0110】
(2)耐薬品性の評価
前記(1)記載の方法で得られた各硬化膜の膜厚(T1)をラムダエースSTM-602(大日本スクリーン(株)製)を用いて測定した。次いで、この硬化膜付き基板をIPA、PGME、またはNMPに23℃、1分で浸漬させた。各溶剤に浸漬後の膜厚(T2)を測定し、浸漬前後の膜厚変化率を下記式より算出し、以下のように判定した。また、浸漬後、部分的な剥離の有無を目視で確認・評価した。
膜厚変化率(%) = (T2/T1)×100
A:98%以上
B:50%以上、98%未満
C:50%未満。
【0111】
(3)パターン加工性(解像度)の評価
樹脂組成物を4インチシリコンウェハ基板上に、スピンコーター(東京エレクトロン(株)製 型式名クリーントラックマーク7)を用いて目的となる膜厚となる回転数で塗布した。塗布後、基板をホットプレートSCW-636(大日本スクリーン製造(株)製)を用いて80℃で3分間プリベークした。i線ステッパー露光機によってパターン露光を行った。自動現像装置AD-2000(滝沢産業(株)製)を用いて2.38wt%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液であるELM-D(三菱ガス化学(株)製)で90秒間パドル現像し、次いで水で30秒間リンスして、樹脂組成物からなるパターンを得た。このパターン形成はポジ型である。作製した膜全面をパラレルライトマスクアライナーPLA-501F(キヤノン(株)製)を用いて露光した後、最後にオーブンIHPS-222(タバイエスペック(株)製)を用いて大気下80℃で120分間キュアし、約1.5μmの硬化膜を得た。各硬化膜について、40μmのL/Sパターンを1対1の幅に形成する露光量における現像後の最小パターン寸法xを解像度とし、以下のように判定した。
A:x<10μm
B:10μm≦x<30μm
C:30μm≦x
また、顕微鏡観察における残渣の有無を次のように判定した。
・最小パターン寸法xもしくは30umの小さい方のパターンについて
A:顕微鏡観察において残渣がない。
B:顕微鏡観察において残渣がある。
・最小パターン寸法xもしくは10umの小さい方のパターンについて(ただし解像度判定AもしくはBの場合のみ評価)
A:顕微鏡観察において残渣がない。
B:顕微鏡観察において残渣がある。
【0112】
実施例と比較例の対比により、本発明の感光性樹脂組成物が低温硬化性およびパターン加工性に優れていることがわかる。また、その硬化膜が耐薬品性に優れていることがわかる。
【0113】
【0114】
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の感光性樹脂組成物により形成された硬化膜は、各種電子部品、中でも、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルタ、ディスプレイ等の光学デバイス等に用いられる。具体的な使用例としては、固体撮像素子等に形成される光導波路、マイクロレンズ、平坦化材、液晶ディスプレイやカラーフィルタの保護膜、有機EL素子や液晶表示素子等の層間絶縁膜等が挙げられる。