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特許7484717腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用によるがん療法並びにこれに用いるための医薬組成物及び組合せ医薬
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  • 特許-腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用によるがん療法並びにこれに用いるための医薬組成物及び組合せ医薬 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用によるがん療法並びにこれに用いるための医薬組成物及び組合せ医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/768 20150101AFI20240509BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20240509BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240509BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
A61K35/768
A61K48/00
A61K38/20
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P35/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020549251
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037448
(87)【国際公開番号】W WO2020067085
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】P 2018179632
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100173185
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 裕
(72)【発明者】
【氏名】中尾 慎典
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 竜也
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/209053(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/147554(WO,A1)
【文献】特表2012-527465(JP,A)
【文献】国際公開第2017/118866(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/079746(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワクシニアウイルスを有効成分として含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、ワクシニアウイルスは、インターロイキンー7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドとインターロイキンー12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドとを含み、ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)及びO1Lの機能を欠損しており、B5R細胞外領域のSCR(short consensus repeat)ドメインを欠失している、LC16mO株ワクシニアウイルスであり、かつ、
免疫チェックポイント阻害剤として、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び抗CTLA-4抗体からなる群から選択される抗体又はこれらの抗原結合フラグメントと併用されるものである、医薬組成物。
【請求項2】
がんが、固形がんである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
がんが、転移性のがんである、請求項1または2に記載の医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用によるがん療法並びにこれに用いるための医薬組成物及び組合せ医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウイルスをがん治療に用いる種々の技術が開発されており、がん治療に用いられるウイルスのひとつとしてワクシニアウイルスがある。ワクシニアウイルスはがん細胞において増殖しがん細胞を破壊する腫瘍溶解性ウイルスとして、また、治療用遺伝子をがん細胞に送達するためのベクターとして、又はがん抗原や免疫調節分子を発現するがんワクチンとして、がん治療法の開発を目的として研究されてきた(Expert Opinion on Biological Therapy、2011、Vol.11、p.595-608)。
【0003】
インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドとインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドの2つのポリヌクレオチドを含む遺伝子組換えワクシニアウイルス、及び、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換えワクシニアウイルスとIL-12をコードするポリヌクレオチドを含む遺伝子組換えワクシニアウイルスとの2つの遺伝子組換えワクシニアウイルスの混合物が、各種ヒトがん細胞に対して細胞溶解作用を示すこと、担がんヒト化マウスモデルにおいて腫瘍退縮作用を示すこと、同系担がんマウスモデルにおいて完全寛解を示すこと、さらに、獲得免疫を誘導して抗腫瘍効果を持続させることが報告されている(特許文献1)。
【0004】
他方で、近年、がん微小環境における抗腫瘍免疫制御を機序としたがん免疫療法の臨床研究が進められている。PD-1(programmed cell death-1)とPD-L1(programmed cell death-1 ligand-1)との結合を阻害して生体の免疫機構を活性化し、がん細胞を非自己と認識して排除する目的で、抗PD-1抗体であるニボルマブ及びペムブロリズマブ、並びに、抗PD-L1抗体であるアテゾリズマブ、アベルマブ及びデュルバルマブが、がんの治療薬として米国食品医薬品局(FDA)から承認を受けている(非特許文献1)。また、同様に生体の免疫システムによるがん細胞を非自己として排除する機構を賦活化する目的で、抗CTLA-4(cytotoxic T-lymphocyte associated antigen 4)抗体であるイピリムマブが、がんの治療薬として承認されている(非特許文献1)。これら免疫チェックポイント阻害剤を含むがん免疫治療薬は、単剤で使用されるだけでなく、既存の抗がん剤、あるいは他のがん免疫治療薬と併用される(非特許文献2)。免疫チェックポイント阻害剤による強い免疫応答によって免疫刺激分子を発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスが早期にクリアランスされる可能性があることが報告されている。強い免疫応答は、ワクシニアウイルス媒介がん治療法にとって敵とも味方ともなり得る(非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/209053号パンフレット
【0006】
【文献】Michael A. Postow et al.、The New England Journal of Medicine、2018、Vol.378、p.158-168
【文献】Daniel S. Chen and Ira Mellman、Nature、2017、Vol.541、p.321-330
【文献】Yuqiao Shen and John Nemunaitis、Molecular Therapy、2005、Vol.11、No.2、p.180-195
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、腫瘍溶解性ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用によるがん療法並びにこれに用いるための医薬組成物及び組合せ医薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、遺伝子組換えワクシニアウイルスの他のがん療法との併用用途の開発において、驚くべきことに、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドの2つのポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、抗PD-1抗体、及び、抗CTLA-4抗体)とを併用すると、優れた抗腫瘍効果を示し、ワクシニアウイルスを投与していない遠隔腫瘍に対しても優れた完全寛解導入効果を示すこと(実施例1)を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明によれば、例えば以下の発明が提供される。
[1]
ワクシニアウイルスを有効成分として含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、ワクシニアウイルスは、
(1)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;又は
(2)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチド及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス
であり、かつ、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、医薬組成物。
[2]
ワクシニアウイルスが、IL-7をコードするポリヌクレオチドとIL-12をコードするポリヌクレオチドとを含むワクシニアウイルスである、[1]に記載の医薬組成物。
[3]
ワクシニアウイルスが、ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)及びO1Lの機能を欠損している、[1]又は[2]に記載の医薬組成物。
[4]
ワクシニアウイルスが、B5R細胞外領域のSCR(short consensus repeat)ドメインを欠失している、[3]に記載の医薬組成物。
[5]
ワクシニアウイルスが、LC16mO株ワクシニアウイルスである、[1]~[4]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[6]
免疫チェックポイント阻害剤が、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、及び抗CTLA-4抗体からなる群から選択される抗体又はこれらの抗原結合フラグメントである、[1]~[5]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[7]
がんが、固形がんである、[1]~[6]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[8]
がんが、転移性のがんである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[9]
がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、インターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物を含み、かつ、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、組合せ医薬。
[10]
がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、[1]~[8]のいずれか一項に記載の医薬組成物又は[9]に記載の組合せ医薬と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、組合せ医薬。
[11]
免疫チェックポイント阻害剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、[1]~[8]のいずれか一項に記載の医薬組成物又は[9]に記載の組合せ医薬と併用されるものである、医薬組成物。
[12]
がんを処置する方法であって、該方法は、免疫チェックポイント阻害剤及びワクシニアウイルスを投与することを含み、該ワクシニアウイルスは、
(1)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;又は
(2)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチド及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス
である、方法。
[13]
がんを処置することに用いるためのワクシニアウイルスであって、該ワクシニアウイルスは、
(1)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;又は
(2)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチド及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス
であり、かつ、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、ワクシニアウイルス。
[14]
がんを処置することに用いるための医薬組成物の製造のためのワクシニアウイルスの使用であって、該ワクシニアウイルスは、
(1)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;又は
(2)インターロイキン-7(IL-7)をコードするポリヌクレオチド及びインターロイキン-12(IL-12)をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス
であり、かつ、該医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、使用。
【0010】
がんを処置することに用いるための腫瘍溶解性ワクシニアウイルス(特にIL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドの2つのポリヌクレオチドを含む腫瘍溶解性のワクシニアウイルス)は、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1とPD-L1との結合を阻害する抗体、あるいは抗CTLA-4抗体)と併用することにより、その抗腫瘍効果をさらに向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は担がんマウスにおける、IL-12及びIL-7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体との併用効果(腫瘍体積及び完全寛解した個体数)を示す図である。各グラフは、縦軸が腫瘍体積、横軸が移植したがん細胞のサイズによる群分け後の経過日数(日)を示す。図中の記号「CR」は、完全寛解を示し、その記号に付随する数字は10匹あたりの完全寛解数を分数で表示したものである。また、記号「IL-7/IL-12-VV」はIL-7とIL-12を搭載したワクシニアウイルスを意味する。各グラフ中の線は、個々のマウスにおける腫瘍体積の経時変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書では、「対象」とは、哺乳動物、特にヒトを意味する。対象は、がんを有する対象であり得、がんを有するヒトであり得、例えば、転移性がんを有するヒトであり得る。対象は、例えば、固形がん、例えば、転移性固形がんを有する対象であり得る。
【0013】
本明細書では、「併用」とは、同一対象に対して治療のために複数種の医薬有効成分を同時に又は別々に投与することを意味する。併用においては、当該複数種の医薬有効成分は、同一の組成物中に含まれていてもよいし、異なる組成物中に別々に含まれていてもよい。
【0014】
本明細書では、「医薬組成物」とは、1つの組成物中に1又は複数種の医薬有効成分を含む組成物を意味する。「組合せ医薬」とは、異なる組成物中に複数種の医薬有効成分が別々に含まれている各医薬組成物の組合せを意味する。
【0015】
本明細書では、「処置」とは、予防及び治療を含む意味で用いられる。
【0016】
本明細書では、「免疫チェックポイント阻害剤」とは、免疫チェックポイント分子による免疫細胞活性化抑制を解除する薬剤を意味する。免疫チェックポイント分子としては、PD-1、CTLA-4、TIM-3(T-cell immunoglobulin domain and mucin domain-3)、LAG-3(lymphocyte activation gene 3)、TIGIT(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)、BTLA(B and T lymphocyte associated)、及びVISTA(V-type immunoglobulin domain-containing suppressor of T-cell activation)などが挙げられる。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば免疫チェックポイント分子又はそのリガンドに結合して免疫抑制シグナルを阻害することにより、免疫チェックポイントの機能を阻害し得る。例えば、PD-1とPD-L1又はPD-L2との結合を阻害することにより、PD-1シグナルを阻害することができる。また、CTLA-4とCD80又はCD86との結合を阻害することにより、CTLA-4シグナルを阻害することができる(Matthieu Collin、Expert Opinion on Therapeutic Patents、2016、Vol.26、p.555-564)。
【0017】
本明細書では、「抗体」とは、免疫グロブリンを意味し、ジスルフィド結合で安定化された2本の重鎖(H鎖)と2本の軽鎖(L鎖)とを含む生体分子をいう。重鎖は、重鎖可変領域(VH)、重鎖定常領域(CH1、CH2、CH3)、及びCH1とCH2の間に位置するヒンジ領域からなり、軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)と軽鎖定常領域(CL)とからなる。この中で、VHとVLからなる可変領域断片(Fv)が、抗原結合に直接関与し、抗体に多様性を与える領域である。また、ヒンジ領域、CH2、CH3からなる領域をFc領域と呼ぶ。
【0018】
可変領域のうち、直接抗原と接触する領域は特に変化が大きく、相補性決定領域(complementarity-determining region: CDR)と呼ばれる。CDR以外の比較的変異の少ない部分をフレームワーク領域(framework region: FR)と呼ぶ。軽鎖と重鎖の可変領域には、それぞれ3つのCDRが存在し、それぞれN末端側から順に、重鎖CDR1~3及び軽鎖CDR1~3と呼ばれる。
【0019】
抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であってもよいが、本発明では、好ましくはモノクローナル抗体を用いることができる。抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEのいずれのアイソタイプであってもよい。抗体は、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ニワトリなどの非ヒト動物を免疫して作製したものであってもよいし、組換え抗体であってもよく、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体等であってもよい。ここでキメラ抗体とは、異なる種に由来する抗体の断片が連結された抗体をいい、ヒト化抗体とは、非ヒト動物(例えば、非ヒト哺乳動物)の抗体のCDRによりそれぞれと対応するヒト抗体のCDRそれぞれを置き換えた抗体をいう。ヒト化抗体は、CDRが非ヒト動物に由来し、それ以外の抗体部分はヒトに由来し得る。ヒト抗体は、完全ヒト抗体とも呼ばれ、抗体の各部分が全てヒト抗体遺伝子によってコードされるアミノ酸配列からなる抗体である。本発明では、1つの実施形態としては、キメラ抗体、別の実施形態としてはヒト化抗体、さらに別の実施形態としてはヒト抗体(完全ヒト抗体)を用いることができる。
【0020】
本明細書では、「抗原結合フラグメント」とは、抗体のフラグメントであって、抗原に結合することができるフラグメントを意味する。抗原結合フラグメントとしては、具体的には、VL、VH、CL及びCH1領域からなるFab、2つのFabがヒンジ領域でジスルフィド結合によって連結されたF(ab’)2、VL及びVHからなるFv、VL及びVHを人工のポリペプチドリンカーで連結した一本鎖抗体であるscFv、ダイアボディ、単鎖ダイアボディ(scDb)型、タンデムscFv型、及びロイシンジッパー型などの二重特異性抗体、並びに、VHH抗体などの重鎖抗体(MAbs、2017、Vol.9、No.2、p.182-212)等が挙げられる。
【0021】
本発明によれば、1種又は複数種のワクシニアウイルスにIL-7及びIL-12を発現可能に搭載させ、免疫チェックポイント阻害剤を併用することにより、がんを処置することが期待できる。
【0022】
以下では、上記発明の各構成要素について説明する。
【0023】
<本発明において使用され得るワクシニアウイルス>
本発明において使用され得る1種又は複数種のワクシニアウイルスは、以下の(1)及び(2)を含み得る:
(1)IL-7をコードするポリヌクレオチド;及び
(2)IL-12をコードするポリヌクレオチド。
(本明細書中、以下、当該ワクシニアウイルスを「本発明において使用されるワクシニアウイルス」ともいう。)
本発明では、上記(1)及び(2)に記載のポリヌクレオチドは、1つのワクシニアウイルス中に含まれていてもよく、複数のワクシニアウイルス中に別々に含まれていてもよい。
【0024】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含む。
【0025】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスである。
【0026】
IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドが複数種のワクシニアウイルス中に別々に含まれていている場合には、当該複数種のワクシニアウイルスは、1つの医薬組成物中に含まれていてもよく、異なる医薬組成物中に別々に含まれる組合せ医薬の形態であってよい。
【0027】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスであり、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスはまた、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスであり、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。
【0028】
本発明において使用されるワクシニアウイルスは、ポックスウイルス科オルトポックスウイルス属に属するウイルスである。本発明において使用されるワクシニアウイルスの株は限定されないが、例えば、リスター株、New York City Board of Health(NYBH)株、Wyeth株、コペンハーゲン株、Western Reserve(WR)株、EM63株、池田株、大連株、Tian Tan株などが挙げられ、リスター株は、アメリカンタイプカルチャーコレクションより入手可能である(ATCC VR-1549)。さらに、本発明において使用されるワクシニアウイルスとして、これらの株を由来にして確立されたワクシニアウイルス株も使用することができる。例えば、本発明において使用されるワクシニアウイルスとして、リスター株から確立された、LC16株、LC16m8株、及びLC16mO株を使用することもできる。LC16mO株はリスター株を親株として低温継代し、LC16株を経て作出された株である。LC16m8株は、LC16mO株をさらに低温継代して作出された、ウイルス膜蛋白質をコードする遺伝子であるB5R遺伝子にフレームシフト変異が認められ、この蛋白質が発現及び機能しなくなったことで弱毒化された株である(蛋白質 核酸 酵素、2003、Vol.48、p.1693-1700)。リスター株、LC16m8株及びLC16mO株の全ゲノム配列として、例えば、それぞれAccession No.AY678276.1、Accession No.AY678275.1及びAccession No.AY678277.1が知られている。したがって、リスター株から公知の相同組換えや部位特異的突然変異導入法により、LC16m8株、及びLC16mO株を作製することができる。
【0029】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスはLC16mO株ワクシニアウイルスである。
【0030】
本発明において使用されるワクシニアウイルスとして、弱毒化及び/又は腫瘍選択性ワクシニアウイルスを使用することができる。本明細書では、「弱毒化」とは、正常な細胞(例えば、非腫瘍細胞)に対する毒性(例えば、細胞溶解性)が低いことを意味する。本明細書では、「腫瘍選択性」とは、正常な細胞(例えば、非腫瘍細胞)よりも腫瘍細胞に対する毒性(例えば、腫瘍溶解性)が高いことを意味する。本発明において使用されるワクシニアウイルスとしては、特定の蛋白質の機能を欠損したり、特定の遺伝子又は蛋白質の発現を抑制したりするような遺伝子改変を加えたワクシニアウイルス(Expert Opinion on Biological Therapy、2011、Vol.11、p.595-608)を使用することができる。例えば、ワクシニアウイルスの腫瘍選択性を高めるために、チミジンキナーゼ(TK)の機能を欠損させたワクシニアウイルス(Cancer Gene Therapy、1999、Vol.6、p.409-422)、ワクシニアウイルス増殖因子(VGF)の機能を欠損させたワクシニアウイルス(Cancer Research、2001、Vol.61、p.8751-8757)、修飾TK遺伝子及び修飾ヘマグルチニン(HA)遺伝子並びに修飾F3遺伝子又は中断されたF3遺伝子座を含むワクシニアウイルス(国際公開第2005/047458号)、VGF及びO1Lの機能を欠損させたワクシニアウイルス(国際公開第2015/076422号)、がん細胞で発現低下しているマイクロRNAの標的配列をB5R遺伝子の3’非翻訳領域に挿入したワクシニアウイルス(国際公開第2011/125469号)、VGF及びTKの機能を欠損させたワクシニアウイルス(Cancer Research、2001、Vol.61、p.8751-8757)、TK及びHA並びにF14.5Lの機能を欠損させたワクシニアウイルス(Cancer Research、2007、Vol.67、p.10038-10046)、TK及びB18Rの機能を欠損させたワクシニアウイルス(PLoS Medicine、2007、Vol.4、p.e353)、TK及びリボヌクレオチド還元酵素の機能を欠損させたワクシニアウイルス(PLoS Pathogens、2010、Vol.6、p.e1000984)、SPI-1及びSPI-2の機能を欠損させたワクシニアウイルス(Cancer Research、2005、Vol.65、p.9991-9998)、SPI-1、SPI-2及びTKの機能を欠損させたワクシニアウイルス(Gene Therapy、2007、Vol.14、p.638-647)、又は、E3L及びK3L領域に変異を有するワクシニアウイルス(国際公開第2005/007824号)を使用することができる。また、O1Lの機能を欠損させたワクシニアウイルスを使用することができる(Journal of Virology、2012、Vol.86、p.2323-2336)。また、生体内において抗ワクシニアウイルス抗体の中和効果によるウイルスの排除を減弱させることを期待し、B5Rの細胞外領域を欠損させたワクシニアウイルス(Virology、2004、Vol.325、p.425-431)又はA34R領域を欠損させたワクシニアウイルス(Molecular Therapy、2013、Vol.21、p.1024-1033)を使用することができる。また、ワクシニアウイルスによる免疫細胞活性化作用を期待し、インターロイキン-1b(IL-1b)受容体を欠損させたワクシニアウイルス(国際公開第2005/030971号)を使用することができる。これらの外来遺伝子の挿入や遺伝子の欠失、変異は例えば公知の相同組換えや部位特異的突然変異導入法により行うことができる。また、本発明では、ワクシニアウイルスとしては、これらの遺伝子改変の組合せを有するワクシニアウイルスを使用することができる。本明細書では、「欠損」は、この用語により特定された遺伝子領域が機能を有しないことを意味し、この用語により特定された遺伝子領域を欠失していることを含む意味で用いられる。例えば、「欠損」は、特定された遺伝子領域からなる領域において欠失が生じていてもよいし、特定された遺伝子領域を含む周辺の遺伝子領域において欠失が生じていてもよい。
【0031】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、VGFの機能を欠損している。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、O1Lの機能を欠損している。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、VGF及びO1Lの機能を欠損している。国際公開第2015/076422号に記載の方法に基づいて、ワクシニアウイルスからVGF及び/又はO1Lの機能を欠損させることができる。
【0032】
VGFは上皮増殖因子(EGF)と高いアミノ酸配列相同性を有する蛋白質であり、EGFと同様に上皮増殖因子受容体に結合し、Ras、Raf、分裂促進因子活性化蛋白質キナーゼ(Mitogen-activated protein kinase、MAPK)/細胞外シグナル調節キナーゼ(the extracellular signal-regulated kinase、ERK) キナーゼ(MAPK/ERK キナーゼ、MEK)、そしてERKと続くシグナルカスケードの活性化を引き起こし、細胞分裂を促進する。
【0033】
O1LはERKの活性化を維持し、VGFと共に細胞の分裂に寄与する。
【0034】
ワクシニアウイルスのVGF及び/又はO1Lの機能の欠損とは、VGFをコードする遺伝子及び/又はO1Lをコードする遺伝子が発現しないか、又は発現してもその発現蛋白質がVGF及び/又はO1Lの正常な機能を保持していないことをいう。ワクシニアウイルスのVGF及び/又はO1Lの機能を欠損させるためには、VGFをコードする遺伝子及び/又はO1Lをコードする遺伝子の全て又は一部を欠失させればよい。また、塩基の置換、欠失、挿入又は付加により遺伝子を変異させ、正常なVGF及び/又はO1Lが発現できないようにしてもよい。また、VGFをコードする遺伝子及び/又はO1Lをコードする遺伝子中に外来遺伝子を挿入してもよい。本発明において、遺伝子の置換、欠失、挿入又は付加などの変異により正常な遺伝子産物が発現されない場合、遺伝子が欠損しているという。
【0035】
本発明において使用されるワクシニアウイルスがVGF及び/又はO1Lの機能を欠損しているか否かは、公知の方法を用いて判断することができる。例えば、VGF及び/又はO1Lの機能評価を行うこと、VGFに対する抗体又はO1Lに対する抗体を用いた免疫化学的手法によりVGF又はO1Lの存在を確認することや、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりVGFをコードする遺伝子やO1Lをコードする遺伝子の存在を決定することにより、判断することができる(Cancer Research、2001、Vol.61、p.8751-8757)。
【0036】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、VGF及びO1Lの機能を欠損しているLC16mO株ワクシニアウイルスである。
【0037】
B5R(Accession No.AAA48316.1)はワクシニアウイルスのエンベロープに存在する1型膜蛋白質であり、隣接の細胞又は宿主体内の他の部位にウイルスが感染及び伝播するときに、感染効率を高める働きをする。B5Rの細胞外領域には4つのSCR(short consensus repeat)ドメインと呼ばれる構造が存在する(Journal of Virology、1998、Vol.72、p.294-302)。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、B5Rの細胞外領域のSCRドメインを欠失している。
【0038】
ワクシニアウイルスのB5R細胞外領域のSCRドメインの欠失とは、B5R細胞外領域の4つのSCRドメインの一部又は全体の欠失を包含し、B5R細胞外領域内の4つのSCRドメインの一部又は全体をコードする遺伝子領域が発現しないか、又は発現したB5R蛋白質が細胞外領域の4つのSCRドメインの一部又は全体を保持していないことをいう。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスでは、B5Rが4つのSCRドメインを全て欠失している。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスで欠失される、4つのSCRドメインは上記Accession No.AAA48316.1のアミノ酸配列において22番目のアミノ酸から237番目のアミノ酸に対応するB5R細胞外領域内の領域である。
【0039】
本発明において使用されるワクシニアウイルスがB5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているか否かは、公知の方法を用いて判断することができる。例えば、SCRドメインに対する抗体を用いた免疫化学的手法によりSCRドメインの存在を確認することや、PCRによりSCRドメインをコードする遺伝子の存在又はサイズを決定することにより、判断することができる。
【0040】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているワクシニアウイルスである。
【0041】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているLC16mO株ワクシニアウイルスである。
【0042】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損しているワクシニアウイルスである。
【0043】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損しているLC16mO株ワクシニアウイルスである。
【0044】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているワクシニアウイルスである。
【0045】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているLC16mO株ワクシニアウイルスである。
【0046】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損しているワクシニアウイルスであり、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損しているワクシニアウイルスであり、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。
【0047】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損しているLC16mO株ワクシニアウイルスであり、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損しているLC16mO株ワクシニアウイルスであり、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。
【0048】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているワクシニアウイルスであり、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているワクシニアウイルスであり、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。
【0049】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているLC16mO株ワクシニアウイルスであり、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含み、VGF及びO1Lの機能を欠損し、かつ、B5R細胞外領域のSCRドメインを欠失しているLC16mO株ワクシニアウイルスであり、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである。
【0050】
IL-7は、IL-7受容体に対してアゴニストとして機能する分泌性蛋白質である。IL-7はT細胞やB細胞などの生存、増殖及び分化に寄与することが報告されている(Current Drug Targets、2006、Vol.7、p.1571-1582)。本発明において、IL-7には、天然に存在するIL-7及びその機能を有する改変体が包含される。1つの実施形態において、IL-7は、ヒトIL-7である。本発明において、ヒトIL-7には、天然に存在するヒトIL-7及びその機能を有する改変体が包含される。1つの実施形態において、ヒトIL-7は、以下の(1)~(3)からなる群より選択される:
(1)Accession No.NP_000871.1に示されるアミノ酸配列を含み、かつ、ヒトIL-7の機能を有するポリペプチド、
(2)Accession No.NP_000871.1に示されるアミノ酸配列において、1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ヒトIL-7の機能を有するポリペプチド、並びに
(3)Accession No.NP_000871.1に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含み、かつ、ヒトIL-7の機能を有するポリペプチド。
ここで、ヒトIL-7の機能とは、各種ヒト免疫細胞に対しての生存、増殖及び分化作用をいう。
【0051】
1つの実施形態において、本発明において使用されるヒトIL-7はAccession No.NP_000871.1に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。
【0052】
IL-12は、IL-12サブユニットp40とIL-12サブユニットαとのヘテロ二量体である。IL-12はT細胞及びNK細胞を活性化及び分化誘導する機能を有することが報告されている(Cancer Immunology Immunotherapy、2014、Vol.63、p.419-435)。本発明において、IL-12には、天然に存在するIL-12及びその機能を有する改変体が包含される。1つの実施形態において、IL-12は、ヒトIL-12である。本発明において、ヒトIL-12には、天然に存在するヒトIL-12及びその機能を有する改変体が包含される。1つの実施形態において、ヒトIL-12は、ヒトIL-12サブユニットp40とヒトIL-12サブユニットαとの組合せとして、以下の(1)~(3)からなる群より選択される。:
(1)(i-1)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(i-2)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は、(i-3)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、並びに、
(i i-1)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(i i-2)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は、(i i-3)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、かつ、
ヒトIL-12の機能を有するポリペプチド、
(2)(i-1)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、並びに、
(i i-1)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(i i-2)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は(i i-3)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含み、かつ、
ヒトIL-12の機能を有するポリペプチド、並びに、
(3)(i-1)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、(i-2)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、及び/若しくは付加されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又は、(i-3)Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列との同一性が90%以上であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、並びに、
(i i-1)Accession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含み、かつ、
ヒトIL-12の機能を有するポリペプチド。
ここで、ヒトIL-12の機能とは、T細胞やNK細胞の活性化作用、及び/又は分化誘導作用をいう。IL-12サブユニットp40及びIL-12サブユニットαは直接結合することでIL-12を形成することができる。また、IL-12サブユニットp40及びIL-12サブユニットαをリンカーを介して結合させることができる。
【0053】
1つの実施形態において、本発明において使用されるヒトIL-12は、Accession No.NP_002178.2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド及びAccession No.NP_000873.2に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドを含むポリペプチドである。
【0054】
本明細書における「同一性」とは、EMBOSS Needle(Nucleic Acids Res.、2015、Vol.43、p.W580-W584)を用いて、デフォルトで用意されているパラメータによって得られたIdentityの値を意味する。前記のパラメータは以下のとおりである。
Gap Open Penalty = 10
Gap Extend Penalty = 0.5
Matrix = EBLOSUM62
End Gap Penalty = false
【0055】
本発明において使用されるワクシニアウイルスは、腫瘍溶解活性を有する。被験ウイルスが腫瘍溶解活性を有するかどうかを評価する方法として、ウイルス添加によるがん細胞の生存率低下を評価する方法が挙げられる。評価に使用するがん細胞としては、例えば、悪性黒色腫細胞RPMI-7951(例えば、ATCC HTB-66)、肺腺がん細胞HCC4006(例えば、ATCC CRL-2871)、肺がん細胞A549(例えば、ATCC CCL-185)、小細胞肺がん細胞DMS 53(例えば、ATCC CRL-2062)、肺扁平上皮がん細胞NCI-H226(例えば、ATCC CRL-5826)、腎がん細胞Caki-1(例えば、ATCC HTB-46)、膀胱がん細胞647-V(例えば、DSMZ ACC 414)、頭頸部がん細胞Detroit 562(例えば、ATCC CCL-138)、乳がん細胞JIMT-1(例えば、DSMZ ACC 589)、乳がん細胞MDA-MB-231(例えば、ATCC HTB-26)、食道がん細胞OE33(例えば、ECACC 96070808)、グリア芽細胞腫U-87MG(例えば、ECACC 89081402)、神経芽細胞腫GOTO(例えば、JCRB JCRB0612)、骨髄腫RPMI 8226(例えば、ATCC CCL-155)、卵巣がん細胞SK-OV-3(例えば、ATCC HTB-77)、卵巣がん細胞OVMANA(例えば、JCRB JCRB1045)、大腸がん細胞RKO(例えば、ATCC CRL-2577)、大腸がん細胞HCT 116(例えば、ATCC CCL-247)、膵がん細胞BxPC-3(例えば、ATCC CRL-1687)、前立腺がん細胞LNCaP clone FGC(例えば、ATCC CRL-1740)、肝がん細胞JHH-4(例えば、JCRB JCRB0435)、中皮腫NCI-H28(例えば、ATCC CRL-5820)、子宮頸がん細胞SiHa(例えば、ATCC HTB-35)、及び、胃がん細胞Kato III(例えば、RIKEN BRC RCB2088)が挙げられる。
【0056】
本発明において使用されるワクシニアウイルスは、感染させた細胞においてIL-7及び/又はIL-12ポリペプチドを産生する。本発明において使用されるワクシニアウイルスを使用すると、IL-7及びIL-12ポリペプチドを産生することによって、抗腫瘍効果が顕著に向上する。IL-7及びIL-12の産生は、当該分野で公知の方法を用いて確認することができる。例えば、IL-7及びIL-12の各ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入したワクシニアウイルスをがん細胞と培養した後に、培養上清中のIL-7及びIL-12濃度を測定することや、細胞の免疫染色又は細胞溶解物のウェスタンブロット解析若しくは細胞溶解物中のIL-7及びIL-12の濃度を測定することにより確認できる。IL-7及びIL-12の各濃度は、例えば、Human IL-7 ELISA kit(レイバイオテック社)、Human IL-12 p70 DuoSet ELISA(R&Dシステムズ社)をそれぞれ用いて測定することができる。細胞の免疫染色又は細胞溶解物のウェスタンブロット解析はそれぞれ、市販の抗IL-7抗体、抗IL-12抗体を用いて行うことができる。
【0057】
IL-7及びIL-12の各々をコードするポリヌクレオチドは、公的に利用可能な配列情報に基づき、当該分野で公知のポリヌクレオチド合成方法を利用して合成することが可能である。また、各ポリヌクレオチドを一旦取得すれば、部位特異的変異誘発法(Current Protocols in Molecular Biology edition、1987、John Wiley & Sons Section 8.1-8.5)等の当業者に公知の方法を使用して、所定の部位に変異を導入することによって、各ポリペプチドの機能を有する改変体を作製することも可能である。
【0058】
IL-7及びIL-12の各々をコードするポリヌクレオチドは、公知の相同組換えや部位特異的突然変異導入法によりワクシニアウイルスへ導入することができる。例えば、導入したい部位の塩基配列中に当該ポリヌクレオチドを導入したプラスミド(トランスファーベクタープラスミドDNAとも称する)を作製し、ワクシニアウイルスを感染させた細胞の中に導入することができる。1つの実施形態において、外来遺伝子であるIL-7及びIL-12の各々をコードするポリヌクレオチドの導入領域は、ワクシニアウイルスの生活環に必須ではない遺伝子領域である。例えば、ある態様では、IL-7及び/又はIL-12の導入領域は、VGF機能欠損ワクシニアウイルスでは、該VGF遺伝子の内部とすることができ、O1L機能欠損ワクシニアウイルスでは、該O1L遺伝子の内部とすることができ、VGF機能欠損とO1L機能欠損の両方を有するワクシニアウイルスでは、該VGF遺伝子及び該O1L遺伝子のいずれか又は両方の内部とすることができる。上記において、外来遺伝子は、VGF及びO1L遺伝子の転写方向と同じ向き又は逆向きに転写されるように導入することができる。
【0059】
トランスファーベクタープラスミドDNAの細胞への導入方法は、特に限定されるものではないが、例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法等を用いることができる。
【0060】
外来遺伝子であるIL-7及びIL-12の各々をコードするポリヌクレオチドを導入する際に、外来遺伝子の上流に適当なプロモーターを作動可能に連結させることができる。これにより、本発明において使用されるワクシニアウイルスでは、外来遺伝子は、腫瘍細胞で発現可能なプロモーターに連結され得る。これらのプロモーターとしては、例えば、PSFJ1-10、PSFJ2-16、p7.5Kプロモーター、p11Kプロモーター、T7.10プロモーター、CPXプロモーター、HFプロモーター、H6プロモーター、及びT7ハイブリッドプロモーターなどが挙げられる。
【0061】
1つの実施形態において、本発明において使用されるワクシニアウイルスは、薬剤選択マーカー遺伝子を有しない。
【0062】
本発明において使用されるワクシニアウイルスの発現及び/又は増殖は、ワクシニアウイルスを宿主細胞に感染させ、感染させた宿主細胞を培養することにより行うことができる。ワクシニアウイルスの発現及び/又は増殖は、当該分野で公知の方法により行うことができる。本発明において使用されるワクシニアウイルスを発現又は増殖させるために用いる宿主細胞としては、本発明において使用されるワクシニアウイルスを発現し、増殖できるものである限り、特に制限されるものではない。このような宿主細胞としては、例えば、BS-C-1、A549、RK13、HTK-143、Hep-2、MDCK、Vero、HeLa、CV-1、COS、BHK-21、及び初代ウサギ腎臓細胞等の動物細胞が挙げられ、1つの実施形態として、BS-C-1(ATCC CCL-26)、A549(ATCC CCL-185)、CV-1(ATCC CCL-70)又はRK13(ATCC CCL-37)を使用することができる。宿主細胞の培養条件、例えば、温度、培地のpH、及び培養時間等は、適宜選択される。
【0063】
本発明において使用されるワクシニアウイルスを生産する方法は、本発明において使用されるワクシニアウイルスを宿主細胞に感染させ、感染させた宿主細胞を培養し、本発明において使用されるワクシニアウイルスを発現させる工程に加えて、さらには、本発明において使用されるワクシニアウイルスを回収、好ましくは精製する工程を含むことができる。精製方法としては、ベンゾナーゼを用いたDNA消化、ショ糖勾配遠心分離法、Iodixanol密度勾配遠心分離法、限外ろ過法、及びダイアフィルトレーション法などを用いることができる。
【0064】
<本発明において使用され得る免疫チェックポイント阻害剤>
本発明では、免疫チェックポイント阻害剤としては、例えば、PD-1を介するシグナルを遮断するチェックポイント阻害剤又はCTLA-4を介するシグナルを遮断するチェックポイント阻害剤を用いることができる。免疫チェックポイント阻害剤としては、PD-1とPD-L1又はPD-L2の結合を中和することができる抗体、及びCTLA-4とCD80又はCD86との結合を中和することができる抗体が挙げられる。PD-1とPD-L1の結合を中和することができる抗体としては、PD-1とPD-L1の結合を中和することができる抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体が挙げられる。PD-1とPD-L2との結合を中和することができる抗体としては、PD-1とPD-L2との結合を中和することができる抗PD-1抗体及び抗PD-L2抗体が挙げられる。CTLA-4とCD80又はCD86との結合を中和することができる抗体としては、CTLA-4とCD80又はCD86との結合を中和することができる抗CTLA-4抗体が挙げられる。
【0065】
本発明において使用され得る免疫チェックポイント阻害剤としては、特に限定されないが例えば、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、及びピジリズマブなどの抗PD-1抗体、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、及びアベルマブなどの抗PD-L1抗体、イピリムマブなどの抗CTLA-4抗体、TSR-022(国際公開第2016/161270号)、及びMBG453(国際公開第2015/117002号)などの抗TIM-3抗体、LAG525(米国公開第2015/0259420号)などの抗LAG-3抗体、MAB10(国際公開第2017/059095号)などの抗TIGIT抗体、BTLA-8.2(The Journal of Clinical Investigation、2010、Vol.120、No.1、p.157-167)などの抗BTLA抗体、JNJ-61610588(国際公開第2016/207717号)などの抗VISTA抗体などが挙げられる。本発明において使用され得る免疫チェックポイント阻害剤としてはまた、免疫チェックポイント分子又はそのリガンドに結合して免疫抑制シグナルを抑制する抗原結合フラグメントを産生する細胞、抗原結合フラグメントを生体内で発現させるベクター及び低分子化合物を含む免疫チェックポイント阻害剤を用いてもよい。
【0066】
本発明においては、上記免疫チェックポイント阻害剤を本発明において使用されるワクシニアウイルスと組み合わせて用いることができる。本発明においてはまた、上記免疫チェックポイント阻害剤を本発明において使用されるワクシニアウイルスの組合せ医薬と組み合わせて用いることができる。
【0067】
1つの実施形態において、本発明において使用される免疫チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体及び抗CTLA-4抗体からなる群から選択される抗体又はこれらの抗原結合フラグメントである。
【0068】
2つのタンパク質の結合を中和することができる抗体は、当該2つのタンパク質のいずれかに結合する抗体を得て、その後、当該2つのタンパク質の結合を中和する能力で得られた抗体を選別することにより得ることができる。例えば、PD-1とPD-L1の結合を中和することができる抗体は、PD-1及びPD-L1のいずれかに結合する抗体を得て、その後、得られた抗体をPD-1とPD-L1との結合を中和する能力で選別することができる。また、例えば、PD-1とPD-L2の結合を中和することができる抗体は、PD-1及びPD-L2のいずれかに結合する抗体を得て、その後、得られた抗体をPD-1とPD-L2との結合を中和する能力で選別することができる。また例えば、CTLA-4とCD80又はCD86との結合を中和することができる抗体は、CTLA-4に結合する抗体を得て、その後、得られた抗体をCTLA-4とCD80又はCD86との結合を中和する能力で選別することができる。あるタンパク質に結合する抗体は、例えば、当業者に周知の方法を用いて得ることができる。また、2つのタンパク質の結合を中和する抗体の能力は、その一方を固相化し、他方を液相から添加して、抗体がその結合量を低下させるか否かによって調べることができる。例えば、液相から添加するタンパク質を標識し、その標識量が抗体の添加により低下するならば、当該抗体は当該2つのタンパク質の結合を中和することができると決定することができる。
【0069】
PD-1は、Programmed cell death-1と名付けられたタンパク質であり、PDCD1又はCD279とも呼ばれることがある。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパク質であり、PD-L1又はPD-L2と結合することでT細胞の活性化を抑制する役割を担い、自己免疫疾患の防止に寄与していると考えられている。がん細胞はPD-L1を細胞表面に発現させることで、T細胞を負に制御し、T細胞からの攻撃を逃れている。PD-1としては、例えば、ヒトPD-1(例えば、GenbankでAccession No.NP_005009.1に登録されたアミノ酸配列を有するPD-1)が挙げられる。PD-1としては、例えば、GenbankでAccession No.NP_005009.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するPD-1が挙げられる。本明細書では、「に対応するアミノ酸配列」との表現は、オーソログや天然に生じ得るアミノ酸配列が完全に同一ではない機能的PD-1を含む意味で用いられる。
【0070】
PD-L1は、PD-1に対するリガンドであり、B7-H1又はCD274とも呼ばれることがある。PD-L1としては、例えば、ヒトPD-L1(例えば、GenbankでAccession No.NP_054862.1に登録されたアミノ酸配列を有するPD-L1)が挙げられる。PD-L1としては、例えばGenbankでAccession No.NP_054862.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するPD-L1が挙げられる。
【0071】
PD-L2は、PD-1に対するリガンドであり、B7-DC又はCD273とも呼ばれることがある。PD-L2としては、例えば、ヒトPD-L2(例えば、GenbankでAccession No.AAI13681.1に登録されたアミノ酸配列を有するPD-L2)が挙げられる。PD-L2としては、例えば、GenbankでAccession No.AAI13681.1に登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するPD-L2が挙げられる。
【0072】
CTLA-4は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパク質であり、活性化T細胞で発現している。CTLA-4は、CD28と類似しており、CD80及びCD86と抗原提示細胞上で結合する。CD28がT細胞に共刺激性シグナルを送るのに対してCTLA-4は、T細胞に抑制性シグナルを送ることが知られている。CTLA-4としては、例えば、ヒトCTLA-4(例えば、GenbankでAccession No.AAH74893.1で登録されたアミノ酸配列を有するCTLA-4)が挙げられる。CTLA-4としては、例えば、GenbankでAccession No.AAH74893.1で登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するCTLA-4が挙げられる。
【0073】
CD80及びCD86は、免疫グロブリンスーパーファミリーの膜タンパク質であり、様々な造血細胞に発現し、上述のように、T細胞表面上のCD28やCTLA-4と相互作用する。CD80としては、例えば、ヒトCD80(例えば、GenbankでAccession No.NP_005182.1で登録されたアミノ酸配列を有するCD80)が挙げられる。CD80としては、例えば、GenbankでAccession No.NP_005182.1で登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するCD80が挙げられる。また、CD86としては、例えば、ヒトCD86(例えば、GenbankでAccession No.NP_787058.4で登録されたアミノ酸配列を有するCD86)が挙げられる。CD86としては、例えば、ヒトCD86(例えば、GenbankでAccession No.NP_787058.4で登録されたアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するCD86が挙げられる。
【0074】
<本発明の医薬組成物及び組合せ医薬>
本発明によれば、以下の医薬組成物及び組合せ医薬(以下、「本発明の医薬組成物及び組合せ医薬」ということがある)のいずれかが提供され得る:
(a-1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと、免疫チェックポイント阻害剤とを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物;
(a-2)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと、免疫チェックポイント阻害剤とを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物;
(b-1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤と併用するものである、医薬組成物{ここで、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤は、同一の医薬組成物中に含まれていてもよいし、別個の医薬組成物中に別々に含まれていてもよい};
(b-2)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤と併用するものである、医薬組成物{ここで、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤は、同一の医薬組成物中に含まれていてもよいし、別個の医薬組成物中に別々に含まれていてもよい};
(b-3)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、免疫チェックポイント阻害剤と併用するものである、医薬組成物;
(b-4)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスとIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスとを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、免疫チェックポイント阻害剤と併用するものである、医薬組成物;
(b-5)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤とを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用するものである、医薬組成物;
(b-6)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤とを含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用するものである、医薬組成物;
(b-7)免疫チェックポイント阻害剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用するものである、医薬組成物;
(b-8)免疫チェックポイント阻害剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用するものである、医薬組成物{ここで、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスは、同一の医薬組成物中に含まれていてもよいし、別個の医薬組成物中に別々に含まれていてもよい};
(c-1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬;
(c-2)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬;
(c-3)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬;
(c-4)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物と、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬;
(c-5)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物と、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬;
(d-1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、免疫チェックポイント阻害剤と併用するものである、組合せ医薬;
(d-2)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用するものである、組合せ医薬;並びに
(d-3)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用するものである、組合せ医薬。
【0075】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、ワクシニアウイルスを有効成分として含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、ワクシニアウイルスは、
(1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;又は
(2)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス
であり、かつ、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、医薬組成物である。
【0076】
1つの実施形態において、本発明の組合せ医薬は、がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物を含み、かつ、免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、組合せ医薬である。
【0077】
1つの実施形態において、本発明の組合せ医薬は、がんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、本発明において使用されるワクシニアウイルスを含む本発明の医薬組成物又は本発明の組合せ医薬と、免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む、組合せ医薬である。
【0078】
1つの実施形態において、本発明の医薬組成物は、免疫チェックポイント阻害剤を含む、がんを処置することに用いるための医薬組成物であって、本発明において使用されるワクシニアウイルスを含む本発明の医薬組成物又は本発明の組合せ医薬と併用されるものである、医薬組成物である。
【0079】
本発明の医薬組成物及び組合せ医薬において、対象がヒトである場合には、IL-7及びIL-12はそれぞれ、ヒトIL-7及びヒトIL-12とすることができる。また、対象がヒトであり、免疫チェックポイント阻害剤として抗体を用いる場合には、抗体は、ヒトタンパク質に対する抗体であることが好ましく、また、ヒトキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体であり得る。また、本発明の組合せ医薬は、構成する各医薬組成物が1つのパッケージに含まれるキット(「組合せキット」とも称する)の形態であってもよい。
【0080】
本発明の医薬組成物又は組合せ医薬には、薬学的に許容される賦形剤がさらに含まれていてもよい。
【0081】
本発明の医薬組成物は、当該分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬学的に許容される賦形剤や薬学的に許容される担体等を用いて、通常使用される方法によって調製することができる。これら医薬組成物の剤型の例としては、例えば、注射剤、及び点滴用剤等の非経口剤が挙げられ、静脈内投与、皮下投与、又は腫瘍内投与等により投与することができる。製剤化にあたっては、薬学的に許容される範囲で、これら剤型に応じた賦形剤、担体、又は添加剤等を使用することができる。本発明の医薬組成物や、組合せキットは、それぞれ凍結乾燥製剤として提供されてもよい。凍結乾燥製剤は、注射用水を伴って提供され得る。
【0082】
本発明において使用されるワクシニアウイルスの有効投与量は患者の症状の程度や年齢、使用する製剤の剤型、又はウイルスの力価等により異なるが、例えば、単独ウイルスの有効投与量として、組合せキットにおける2種類のウイルスの合計有効投与量として、又は、併用投与される際の2種類のウイルスの合計有効投与量として、10~1010プラーク形成単位(PFU)程度を用いることができる。組合せキットにおける2種類のウイルス投与量の比率としては、例えば、1対10~10対1程度、1対5~5対1程度、1対3~3対1程度、1対2~2対1程度、又は約1対1で使用することができる。
【0083】
<がんの予防又は治療用途>
本発明の医薬組成物及び組合せ医薬は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いることができる。
【0084】
また、本発明は、がんをその必要のある対象(例えば、患者)において処置する方法であって、当該対象に本発明において使用されるワクシニアウイルスを含む医薬組成物及び免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含み、がんは、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択される、方法が提供される。
【0085】
1つの実施形態において、本発明は、がんをその必要のある対象(例えば、患者)において処置する方法であって、当該対象に以下の(1)、(2)及び(3)を投与することを含み、がんは、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択される、方法を提供する:
(1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;
(2)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;及び
(3)免疫チェックポイント阻害剤。
当該(1)及び(2)のワクシニアウイルス並びに(3)の免疫チェックポイント阻害剤は、対象に一緒に投与されてもよく、別々に投与されてもよい。当該(1)及び(2)のワクシニアウイルス並びに(3)の免疫チェックポイント阻害剤が別々に投与されるときには、同時に投与されてもよく、逐次的に投与されてもよい。当該(1)及び(2)のワクシニアウイルス並びに(3)の免疫チェックポイント阻害剤が逐次的に投与されるときには、連続的に投与されても、投与間隔を空けて投与されてもよい。1つの実施形態では、ワクシニアウイルスが投与された後に、免疫チェックポイント阻害剤が投与される。ワクシニアウイルスは、例えば、腫瘍内投与、静脈内投与、腹腔内投与等の投与経路によって投与することができる。免疫チェックポイント阻害剤は、例えば、腫瘍内投与、静脈内投与、腹腔内投与等の投与経路によって投与することができる。
【0086】
1つの実施形態において、本発明は、がんをその必要のある対象(例えば、患者)において処置する方法であって、当該対象に以下の(1)、及び(2)を投与することを含み、がんは、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択される、方法を提供する:
(1)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;並びに
(2)免疫チェックポイント阻害剤。
当該(1)のワクシニアウイルス及び(2)の免疫チェックポイント阻害剤は、対象に一緒に投与されてもよく、別々に投与されてもよい。当該(1)のワクシニアウイルス及び(2)の免疫チェックポイント阻害剤が別々に投与されるときには、同時に投与されてもよく、逐次的に投与されてもよい。当該(1)のワクシニアウイルス及び(2)の免疫チェックポイント阻害剤が逐次的に投与されるときには、連続的に投与されても、投与間隔を空けて投与されてもよい。1つの実施形態では、ワクシニアウイルスが投与された後に、免疫チェックポイント阻害剤が投与される。
【0087】
また、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための、本発明において使用されるワクシニアウイルス及び/又は免疫チェックポイント阻害剤を提供する。
【0088】
1つの実施形態において、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための、以下の(1)~(4)から選択されるワクシニアウイルスを提供する:
(1)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;
(2)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;
(3)免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;並びに
(4)免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスとIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスとの組合せ。
【0089】
1つの実施形態において、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための、
(1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである;又は
(2)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである、
免疫チェックポイント阻害剤を提供する。
【0090】
さらに、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための本発明の医薬組成物又は組合せ医薬の製造のための、以下の(1)~(4)から選択されるワクシニアウイルスの使用を提供する:
(1)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;
(2)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及び免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;
(3)免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス;並びに
(4)免疫チェックポイント阻害剤と併用されるものである、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスとIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスとの組合せ。
【0091】
さらにまた、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための本発明の医薬組成物又は組合せ医薬の製造のための、免疫チェックポイント阻害剤の使用であって、
当該医薬組成物又は組合せ医薬が、
(1)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである;
(2)IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである;
(3)IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含み、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである;又は
(4)IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含み、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスと併用されるものである
使用が提供される。
【0092】
さらに、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物と免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物とを含む組合せ医薬の製造のための、IL-7をコードするポリヌクレオチド及びIL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス並びに免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つ又は全部の使用を提供する。
【0093】
さらに、本発明は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんを処置することに用いるための組合せ医薬であって、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルスを含む医薬組成物、及び免疫チェックポイント阻害剤を含む医薬組成物を含む組合せ医薬の製造のための、IL-7をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス、IL-12をコードするポリヌクレオチドを含むワクシニアウイルス、及び免疫チェックポイント阻害剤からなる群から選択される少なくとも1つ又は全部の使用を提供する。
【0094】
本明細書では、「予防用」は「予防することに用いるための」と同義で用いられ、「治療用」は「治療することに用いるための」と同義で用いられる。
【0095】
本発明の医薬組成物又は組合せ医薬は、がん、例えば、固形がん、特に限定されないが例えば、悪性黒色腫、肺がん、肺腺がん、小細胞肺がん、肺扁平上皮がん、腎がん、膀胱がん、頭頸部がん、乳がん、食道がん、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、骨髄腫、卵巣がん、大腸がん、膵がん、前立腺がん、肝細胞がん、中皮腫、子宮頸がん、及び、胃がん等からなる群から選択されるがんに有効性を示す種々の更なる治療剤と併用することができる。ここで、種々の更なる治療剤は、非免疫療法薬であり得る。当該併用は、同時投与、又は別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。本発明の医薬組成物は、同時投与の場合には、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
【0096】
本発明で処置されるがんには、原発巣以外の臓器、例えばリンパ節や肝臓などへの転移性がんなども含まれる。従って、本発明では、対象には、転移性がんを有する対象が含まれる。
【0097】
<ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との投与の順番>
本発明では、ワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤は、同時に、連続的に又は逐次的に投与され得る。
【0098】
ある態様では、がんを有する対象へのワクシニアウイルスの投与を開始し、その後に免疫チェックポイント阻害剤の投与を開始する。ある態様では、がんを有する対象への免疫チェックポイント阻害剤の投与を開始し、その後にワクシニアウイルスの投与を開始する。
【0099】
ある態様では、がんを有する対象へのワクシニアウイルスの投与を完了させ、その後、免疫チェックポイント阻害剤の投与を開始する。ある態様では、がんを有する対象への免疫チェックポイント阻害剤の投与を完了させ、その後、ワクシニアウイルスの投与を開始する。
【0100】
ある態様では、がんを有する対象に対して、投与サイクルを含む投与計画に従ってワクシニアウイルスの投与及び免疫チェックポイント阻害剤の投与が行われ得る。ある態様において、少なくとも1つの投与サイクル又は全ての投与サイクルにおいて、がんを有する対象へのワクシニアウイルスの投与を開始し、その後に免疫チェックポイント阻害剤の投与を開始することができる。ある態様において、少なくとも1つの投与サイクル又は全ての投与サイクルにおいて、がんを有する対象へのワクシニアウイルスの投与を完了させ、その後、免疫チェックポイント阻害剤の投与を開始することができる。ある態様において、少なくとも1つの投与サイクル又は全ての投与サイクルにおいて、がんを有する対象への免疫チェックポイント阻害剤の投与を開始し、その後にワクシニアウイルスの投与を開始することができる。ある態様において、少なくとも1つの投与サイクル又は全ての投与サイクルにおいて、がんを有する対象への免疫チェックポイント阻害剤の投与を完了させ、その後、ワクシニアウイルスの投与を開始することができる。
【0101】
本発明では、IL-7をコードするポリヌクレオチドを有するワクシニアウイルスとIL-12をコードするポリヌクレオチドを有するワクシニアウイルスが別の場合、当該ワクシニアウイルスは、同時に投与しても、連続的に又は逐次的に投与してもよい。この態様においても、上述のような投与の順番に従ってワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との投与の順番を決定することができる。
【0102】
本発明について全般的に記載したが、さらに理解を得るために参照する特定の実施例をここに提供するが、これらは例示目的とするものであって、本発明を限定するものではない。
【実施例
【0103】
(実施例1:遺伝子組換えワクシニアウイルスと他のがん療法との併用による、担がんマウスにおける抗腫瘍効果)
【0104】
遺伝子組換えワクシニアウイルスとしては、WO2017/209053号の実施例2に記載のIL-12(IL12)及びIL-7(IL7)をコードするポリヌクレオチドを発現可能に含むワクシニアウイルス(LC16mO ΔSCR VGF―SP-IL12/O1L-SP-IL7)(以下、後記実施例において「IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス」と称する。)を選択して用いた。また、がん療法としては、がん免疫療法、特に、免疫チェックポイント阻害剤によるがん免疫療法を選択し、上記ワクシニアウイルスと併用した。免疫チェックポイント阻害剤としては、抗マウスPD-1抗体及び抗マウスCTLA-4抗体を用いた。
【0105】
抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体との併用による完全寛解導入効果については、同系のマウスがん細胞株を左右の脇腹にそれぞれ皮下移植したマウス(担がんマウス)を用いて評価した。
【0106】
具体的にはまず、BALB/cマウス(雄、5-6週齢、日本チャールズリバー社)の右脇腹及び左脇腹それぞれに、PBSで1×10個/mLに調製したマウス大腸がん細胞CT26.WT(ATCC CRL-2638)50μLを皮下移植した。がん細胞を皮下移植した7日後にノギスで腫瘍径を測定し、腫瘍体積(短径mm×短径mm×長径mm×0.52)の平均値がウイルス投与側(右脇腹)において24~29mm、ウイルス非投与側(左脇腹;遠隔腫瘍)において24~26mmになるように、以下の6つのグループに群分けを行った。
【0107】
投与群:
1)溶媒投与群
2)抗PD-1抗体単独投与群
3)抗CTLA-4抗体単独投与群
4)IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス単独投与群
5)IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体との併用群
6)IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗CTLA-4抗体との併用群
【0108】
溶媒投与群においては、群分けの1日後、3日後、6日後に溶媒(30mM Tris-HCl 10%sucrose)をマウス右脇腹の腫瘍内に30μL注射した。IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス単独投与群、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体との併用群、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗CTLA-4抗体との併用群においては、群分けの1日後、3日後、6日後に、溶媒で6.7×10PFU/mLの濃度に希釈したIL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスをマウス右脇腹の腫瘍内に30μL注射した(2×10PFU)。抗PD-1抗体単独投与群、抗CTLA-4抗体単独投与群、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体との併用群、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗CTLA-4抗体との併用群においては、群分けの6日後以降、週2回、PBSで1mg/mLの濃度に希釈した抗PD-1抗体(RMP1-14)(Bio X Cell社、BE0146)、あるいはPBSで2mg/mLの濃度に希釈した抗CTLA-4抗体(9D9)(Bio X Cell社、BE0164)をマウス腹腔内に100μL注射した。抗PD-1抗体(RMP1-14)は、PD-1とPD-L1及びPD-L2との結合を中和できる抗PD-1抗体であり、PD-1を介したシグナルを遮断できる。また、抗CTLA-4抗体(9D9)は、CTLA-4を介したシグナルを遮断できる。溶媒投与群とIL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス単独投与群においては、群分けの6日後以降、週2回、PBSをマウス腹腔内に100μL注射した。ノギスで左右の脇腹の腫瘍径を週に2回測定して腫瘍体積を算出し、最終的に群分けの37日後の観察で、触診によって腫瘍が認められない場合を完全寛解(CR)と定義し、完全寛解を示した個体の数を測定した。
【0109】
その結果、図1上段に示されるように、右脇腹(ウイルス投与側)の腫瘍においては、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス単独投与群では10例中9例が、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体との併用群では10例中10例が、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗CTLA-4抗体との併用群では10例中9例が完全寛解に至った。抗PD-1抗体単独投与群及び抗CTLA-4抗体単独投与群では、溶媒投与群に比べて明確な抗腫瘍作用は見られなかった。
【0110】
一方、図1下段に示されるように、左脇腹(ウイルス非投与側)の腫瘍においては、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス単独投与群では10例中1例のみが完全寛解に至ったのに対し、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体との併用群では10例中6例が、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗CTLA-4抗体との併用群では10例中4例が完全寛解に至った。
【0111】
以上の結果から、担がんマウスモデルにおいて、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗PD-1抗体との併用、並びに、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルスと抗CTLA-4抗体との併用には、ワクシニアウイルスの投与部位において、抗PD-1抗体単独、並びに、抗CTLA-4抗体単独の投与に比較して、優れた抗腫瘍効果があり、ワクシニアウイルスの投与部位から離れた部位の腫瘍(遠隔腫瘍)に対しては、抗PD-1抗体単独、抗CTLA-4抗体単独、並びに、IL12及びIL7搭載ワクシニアウイルス単独の投与に比較して、高い完全寛解導入効果があることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明で用いるワクシニアウイルスと免疫チェックポイント阻害剤との併用によるがん療法並びにこれに用いるための医薬組成物及び組合せ医薬は、各種がんの予防又は治療に有用であると期待できる。

図1