(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】管理システム、管理装置、管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240509BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20240509BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
H05K13/08 B
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2021001113
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 弘之
(72)【発明者】
【氏名】佐事 敬太
(72)【発明者】
【氏名】田中 真由子
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-96232(JP,A)
【文献】国際公開第2015/115432(WO,A1)
【文献】特許第3772906(JP,B1)
【文献】特開2011-159699(JP,A)
【文献】国際公開第2019/013225(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/188774(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理システムであって、
表示手段と
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得手段と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得手段と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得手段と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得手段と、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成し前記表示手段に表示させる、管理作業支援手段と、
を備える、管理システム。
【請求項2】
前記一覧情報には、異常発生個所を示す情報、がさらに含まれる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記一覧情報には、前記装置部材の交換に係る情報、前記装置部材の保守に係る情報、がさらに含まれる、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記管理作業支援手段は、前記製品の製造時の異常及び/又は前記製品の検査時の異常の多い順、又は、前記製品の製造時の異常及び/又は前記製品の検査時の異常の原因としての可能性の高い順、に前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材を表示させる、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記管理作業支援手段は、前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類ごとに、色分け表示するとともに、前記異常の集計値の数に応じて前記色の濃度を変えて表示させる、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項6】
前記改善候補情報における前記改善の候補は、前記製品の製造時の異常及び/又は前記製品の検査時の異常の原因が特定された前記装置部材及び/又は前記製品部材のみが対象である、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項7】
前記製品は部品実装基板であり、前記製造装置はチップマウンタであり、前記製品部材は部品であり、
前記製品の製造時の異常には、少なくとも、部品実装時の部品未吸着不良、部品実装時の画像判定処理における不良、のいずれかが含まれ、
前記製品の検査時の異常には、少なくとも、前記部品実装基板の実不良、過検出、計測
値の異常、のいずれかが含まれる、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項8】
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理装置であって、
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得手段と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得手段と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得手段と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得手段と、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する、管理作業支援手段と、
を備える、管理装置。
【請求項9】
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理方法であって、
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得ステップと、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得ステップと、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得ステップと、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得ステップと、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得ステップと、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する、管理作業支援情報生成ステップと、
前記管理作業支援情報生成ステップで生成した一覧情報を出力する、管理作業支援情報出力ステップと、
を含む、管理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の管理方法の各ステップを情報処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおける品質管理及び工程改善の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化・省力化が進む製品の生産ラインでは、ラインの中間工程や最終工程に検査装置を設置し、不良の検出や不良品の仕分けなどを自動化しているものがある。また、検査装置の検査結果から不良の要因を推定し、品質管理や製造設備のメンテナンスに活用する試みも採られている。
【0003】
一例としてプリント基板の表面実装ラインに関する従来例を挙げると、特許文献1にはリフロー後の最終検査における不良率をチップマウンタ(以下、単にマウンタともいう)のノズル別に集計することで、品質レベルを低下させているノズルの情報を提示するというアイデアが開示されている。また、特許文献2には、リフロー後検査における部品の不良率をマウンタのノズル別・フィーダ別に算出し、正常時の不良率を超えているかどうかでノズルやフィーダの異常を検知する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-156156号公報
【文献】特開2006-332461号公報
【文献】特許第5767754号公報
【文献】特開2017-194921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来例のように、製造装置が具備する部材(装置部材と呼ぶ)別に不良率などの情報を提示すれば、不具合個所を推定する手がかりになる可能性がある。しかし、この情報から分かるのは、あくまで、その装置部材によって処理された製品に不良が多かったという事実関係だけであり、その不良の直接の原因が本当にその装置部材にあるのかどうかの確証は得られない。マウンタの例でいえば、ノズルやフィーダ以外の装置部材に原因がある可能性も考えられるし、はんだ印刷工程やリフロー工程など他のプロセスに原因がある可能性も考えられるからである。さらには、製造装置、装置部材には原因がなく、部品に原因がある場合や、特定の部品と装置部材の組み合わせが原因である場合も考えられる。
【0006】
また、仮にある装置部材が不良の原因であると特定できたとしても、従来の方法ではその装置部材にどのような異常が生じているのかまでは特定できない。したがって、たとえ不具合箇所が分かったとしても、実際に起きている異常を突き止め、それを解消するための適切な処置を行うには、エキスパートの知識及び経験が不可欠であったり、トライアンドエラーによる調整作業が必要であった。マウンタの例を挙げれば、あるノズルで不良が多発していることが分かったとしても、ノズルの交換が必要なのか、ノズルの洗浄や取り付け調整でよいのか、マウンタの実装プログラムの改変で対処すべきなのか、それとも、ノズル以外の装置部材、部品に処置を施すべきなのかといった判断を付けることができない。特に、不具合箇所において複数の種類のエラーが発生している際には、不良の原因分析及び対策の決定がより困難になってしまうという問題があった。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、製品の製造設備において、設備のメンテナンス及び品質管理を効率化するための技術を提供することに
ある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理システムであって、
表示手段と
前記製造装置における前記装置部材ごとに、前記製品の製造時の異常の情報を含む装置部材情報を取得する装置部材情報取得手段と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、前記製品の製造時の異常の情報を含む製品部材情報を取得する製品部材情報取得手段と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得手段と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得手段と、
前記装置部材情報と、製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成し前記表示手段に表示させる、管理作業支援手段と、
を備える、管理システムである。
【0009】
ここで、「製造設備」とは、製品を製造するための設備全般のことであり、例えば、製造工場、製造ライン、製造装置などである。また、「製造装置」とは、製品を製造する多様な装置のことであり、例えば、はんだ印刷機、マウンタ、リフロー炉などのプリント基板生産ラインの各装置や、プリント基板を構成する各種製品部材の製造装置、はんだの製造装置などを含む。また、「装置部材」とは、製造装置を構成する各種の部材、機構であり、例えば、マウンタにおいてはノズル、ヘッド、フィーダ、カメラ、ポンプ、ステージなどを含む。また、「製品部材」とは、製品を構成する各要素であり、例えばプリント基板においては、ICチップなどの電子製品部材、プリント配線板(いわゆる生基板)、はんだなどを含む。また、「検査装置」とは、例えば、自動光学検査(AOI)、自動X線検査(AXI)などの検査を実施する装置であり、目視検査の情報を反映させる検査装置であっても構わない。また、前記製造装置に検査装置が内蔵されていても構わない。
【0010】
また、「装置部材情報」には、例えば、装置部材の種類、装置部材の型式、装置部材ID、装置部材の稼働時間、装置部材の稼働回数、実装パラメータなどが含まれる。ここで、実装パラメータには、例えばマウンタにおいては、フィーダの位置、ノズルの吸着高さ、ヘッドの移動速度などが含まれていてもよい。
【0011】
また、「製品部材情報」には、例えば、部品品番、リールID、製品部材の製造ロット、製品部材種、製品部材の形状、基板上における製品部材の位置、などが含まれる。
【0012】
また、「製品の製造時の異常」とは、製造装置において製品が製造される際に検出されるエラーなどのことであり、例えばマウンタの例では、ノズルへの部品未吸着、部品吸着位置・角度の異常、フィーダから供給される部品自体の不良、などを含む。
【0013】
また、「製品の検査時の異常」には、検査装置において不良と判定され、かつ、目視検査でも不良と判断された「実不良」だけでなく、検査装置において不良と判定されたもの
の、目視検査においては良品と判断された、いわゆる「見過ぎ」(過検出)を含んでもよい。また、検査時に計測された計測値から算出される品質指標、例えば工程能力指数の低下など、不良予兆として捉えるべき異常を含んでいてもよい。
【0014】
なお、ここでいう「製品を構成する製品部材ごと」とは、一製品に用いられている部品そのもの一つ一つ、という意味では無く、例えば、所定製品の所定箇所に配置される同一種の製品部材、などの条件で特定しうる製品部材ごと、の意味を有する。
【0015】
また、「改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材」とは、製品の製造時又は検査時に異常が発生している場合に、当該異常の原因として推定される装置部材、製品部材である。なお、改善候補情報を「取得」することには、演算を行うことによって算出することも含まれる。例えば、部材ごとの異常の発生回数の正常値との比較、同種の異なる部材間での異常発生数の比較、などに基づいて改善候補を抽出することも、ここでいう取得に該当する。
【0016】
このような構成によると、製造設備の管理者は、改善の候補となった装置部材、製品部材ごとに、製品の製造時の異常及び製品の検査時の異常の種類別の集計値を一覧で確認することができるため、複数の異常が発生しているような場合であっても、効率的に異常の原因を絞り込んで改善策をとることができる。具体的には、異常の種類の組み合わせを考慮して、原因及びその対策を絞り込むことが容易になる。また、同時に発生している異常の状況から、どの部材から対策をとるべきなのかの優先度を判断することが容易になる。
【0017】
また、前記一覧情報には、異常発生個所を示す情報、がさらに含まれていてもよい。なお、「異常発生個所を示す情報」は、異常の発生したライン名、装置名、検査機名、又はこれらに対応するID、などが該当する。このような構成であると、より正確かつ容易に、異常の原因を特定することが可能になる。
【0018】
また、前記一覧情報には、前記装置部材の交換に係る情報、前記装置部材の保守に係る情報、がさらに含まれていてもよい。なお、「装置部材の交換に係る情報」には、該当する装置部材についての、最終交換日時、最終の交換時からの経過時間、交換回数の履歴、などが含まれていてもよい。また、「装置部材の保守に係る情報」には、該当する装置部材についての最終メンテンナス日時、メンテナンスの累計実施回数などの情報が含まれていてもよい。このような構成であると、より効率的に異常の原因を絞り込むことができる。
【0019】
また、前記管理作業支援手段は、前記製品の製造時の異常及び/又は前記製品の検査時の異常の多い順、又は、前記製品の製造時の異常及び/又は前記製品の検査時の異常の原因としての可能性の高い順、に前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材を表示させるようにしてもよい。
【0020】
ここで、異常の多い順は、各異常の単純な合計値の順であってもよいし、異常の種類によって予め定められる係数を掛けたうえで算出した合計値の順、であってもよい。また、「異常の原因としての可能性の高い順」とは、異常の種類に応じて予め定められるスコアのより高い異常が発生しているものの順としてもよい。このような構成であると、優先順位が明確になり、より効率的に製造設備の改善作業を行うことができる。
【0021】
また、前記管理作業支援手段は、前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類ごとに、色分け表示するとともに、前記異常の集計値の数に応じて前記色の濃度を変えて表示させるようにしてもよい。このような構成であると、表示された内容の視認性が向上するため、より効率的に異常の原因を絞り込む作業を行うことができる。
【0022】
また、前記改善候補情報における前記改善の候補は、前記製品の製造時の異常及び/又は前記製品の検査時の異常の原因が特定された前記装置部材及び/又は前記製品部材のみが対象であってもよい。
【0023】
例えば、異常の種類と発生箇所の組み合わせなどに基づいて、予め定められるルールから異常の原因が特定できるのであれば、当該原因が発生している装置部材、製品部材のみを表示させることが効率的である。これにより、設備の管理者は、原因に対する改善策の実行(その指示)のみを行えばよいため、異常の発生からその是正までの時間を大幅に短縮することができる。
【0024】
また、前記製品は部品実装基板であり、前記製造装置はチップマウンタであり、前記製品部材は前記部品であり、
前記製品の製造時の異常には、少なくとも、部品実装時の部品未吸着不良、部品実装時の画像判定処理における不良、のいずれかが含まれ、
前記製品の検査時の異常には、少なくとも、前記部品実装基板の実不良、過検出、計測値の異常、のいずれかが含まれる、ものであってもよい。
【0025】
なお、ここで「部品実装時の画像判定処理における不良」とは、ノズルに部品が吸着された際の状態(部品の吸着位置・角度)が所定の許容範囲から逸脱しているような場合、フィーダから供給される部品自体の不良(部品違い、端子欠損など)である場合、などをいう。部品実装基板の生産ラインにおけるチップマウンタには、異常の原因となりうる装置部材が多く存在しているため、このような構成は好適である。
【0026】
また、本発明は、製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理装置であって、
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得手段と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得手段と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得手段と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得手段と、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する、管理作業支援手段と、を備える管理装置としても捉えることが可能である。
【0027】
また、前記の目的を達成するため、本発明は、
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理方法であって、
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得ステップと、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得ステップと、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造
時異常情報取得ステップと、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得ステップと、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得ステップと、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する、管理作業支援情報生成ステップと、
前記管理作業支援情報生成ステップで生成した一覧情報を出力する、管理作業支援情報出力ステップと、
を含む、管理方法とすることもできる。
【0028】
また、本発明は、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。また、上記構成および処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、製品の製造設備において、設備のメンテナンス及び品質管理を効率化するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、適用例に係る製造設備管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、適用例に係る製造設備管理システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、適用例に係る製造設備管理システムで表示される管理作業支援画面の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る製造設備の概略構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る管理装置の機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係るマウンタの構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、製造ログデータの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る表示装置に表示される管理作業支援画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9Aは、実施形態に係る管理装置により、改善対象デバイスの異常の原因絞り込み方法に係る第1の図である。
図9Bは、実施形態に係る管理装置により、改善対象デバイスの異常の原因絞り込み方法に係る第2の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例について説明する。ただし、以下の各例に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0032】
<適用例>
本発明は例えば、
図1に示すような製造設備管理システム9として適用することができる。製造設備管理システム9は、プリント基板の表面実装ラインにおけるチップマウンタを管理するシステムであり、マウンタ91、検査装置92を構成要素として有している。
【0033】
マウンタ91は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置である。
【0034】
検査装置92は、マウンタ91から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を検査するための装置である。検査装置92では、はんだペーストの上に載置された部品(部品本体、電極など部品の一部でもよい)の配置状態を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。
【0035】
図1に示すように、製造設備管理システム9は、部品情報取得手段921、装置部材情報取得手段922、製造時異常情報取得手段923、検査情報取得手段924、改善候補情報取得手段925、管理作業支援手段926、表示手段927、を有しており、これらの機能は検査装置92に実装されている。
【0036】
部品情報取得手段921は、マウンタ91で用いられる各種電子部品、基板、はんだなどの部品に関する情報を取得する。装置部材情報取得手段922は、マウンタを構成する各種の部材や機構に関する情報を取得する。
【0037】
製造時異常情報取得手段923は、マウンタ91において基板に部品がマウントされる際に検出されるエラーの情報を取得する。具体的には、マウンタ91に配備されるカメラ(図示せず)でノズル吸着時の部品の画像を取得し、当該画像を処理することで、異常の有無が判定される。なお、当該エラー情報は、異常が発生した装置部材、部品と紐づけがなされる。
【0038】
検査情報取得手段924は、検査装置92による検査結果の情報、特に異常がある場合の情報を取得する。ここで、異常がある場合とは、検査装置92において不良と判定され、かつ、目視検査でも不良と判断された「実不良」だけでなく、検査装置92において不良と判定されたものの、目視検査においては良品と判断された、いわゆる「見過ぎ」の場合も含む。なお、当該異常の情報は、異常が発生した装置部材、部品と紐づけがなされる。
【0039】
改善候補情報取得手段925は、製造時又は検査時に異常が発生している場合に、当該異常の原因として推定される(即ち、何らかの改善が必要と考えられる)マウンタ91の構成要素、又は部品品番の情報を取得する。
【0040】
管理作業支援手段926は、部品情報取得手段921、装置部材情報取得手段922、製造時異常情報取得手段923、検査情報取得手段924、改善候補情報取得手段925が取得した情報に基づいて、改善の候補となる装置部材、部品ごとに、所定の集計期間内における、製造時の異常及び検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成し、表示手段927に出力する。
【0041】
次に、
図2に基づいて、製造設備管理システム9における、管理作業支援用画面の表示の処理の流れを説明する。まず、部品情報取得手段921が部品情報を取得し(S101)、装置部材情報取得手段922が装置部材情報を取得する(S102)。さらに、製造時異常情報取得手段923が、製造時異常情報を取得し(S103)、検査情報取得手段924が検査情報を取得する(S104)。さらに、改善候補情報取得手段925が、異常発生の原因と推定される装置構成、部品の情報を取得する(S105)。次に、管理作業支援手段926が、ステップS101からステップS105において取得した情報に基づいて、改善の候補となる装置部材、部品ごとに、所定の集計期間内における、製造時の異常及び検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する(S106)。そして、管理作業支援手段926がステップS106で生成した情報を表示手段927に表示させて(ステップS107)、一連の処理を終了する。
【0042】
図3に、表示手段927に表示される管理作業支援画面の一例を示す。
図3に示すように、管理作業支援手段926によって生成される一覧情報には、改善候補として抽出されたマウンタの部材(5つのフィーダ)と、部品(5品番)について、検査時の異常の種類ごと、部品製造時の異常の種類ごとに、その集計値が横一列に表示されている。具体的には、検査時の異常の種類として「見過ぎ」と「実不良」の各集計値が、製造時の異常の種類として、「画像処理エラー」、「部品未吸着エラー」の各集計値が、それぞれ表示されている。
【0043】
また、一覧情報には、異常の種類ごとの集計値の他にも、異常発生箇所を示す情報(ライン名、マウンタ名、検査機名)、装置部材のID、の情報が表示される。また、各異常の集計値の欄は、異常の種類に応じた色で表示され、集計値の数が多ければ、当該色が濃く表示される(集計値0の場合は彩色なし)。
【0044】
以上のような画面(以下、管理作業支援画面ともいう)を確認することで、製造設備の管理者は、効率的に異常の発生原因を絞り込むことが可能になる。
【0045】
<実施形態>
以下では、この発明を実施するための形態の一例を、さらに詳しく説明する。
【0046】
(システム構成)
図4は、本実施形態に係るプリント基板の表面実装ラインにおける製造設備の構成例を模式的に示している。表面実装(Surface Mount Technology:SMT)とはプリント基板の表面に電子部品をはんだ付けする技術であり、表面実装ラインは、主として、はんだ印刷~部品のマウント~リフロー(はんだの溶着)の三つの工程から構成される。
【0047】
図4に示すように、表面実装ラインでは、製造装置として、上流側から順に、はんだ印刷装置X1、マウンタX2、リフロー炉X3が設けられる。はんだ印刷装置X1は、スクリーン印刷によってプリント基板上の電極部(ランドと呼ばれる)にペースト状のはんだを印刷する装置である。マウンタX2は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置であり、チップマウンタとも呼ばれる。リフロー炉X3は、はんだペーストを加熱溶融した後、冷却を行い、電子部品を基板上にはんだ接合するための加熱装置である。基板に実装する電子部品の数や種類が多い場合には、表面実装ラインに複数台のマウンタX2が設けられることもある。
【0048】
また、表面実装ラインには、はんだ印刷~部品のマウント~リフローの各工程の出口で基板の状態を検査し、不良あるいは不良のおそれを自動で検出するシステムが設置されている。当該システムは、良品と不良品の自動仕分けの他、検査結果やその分析結果に基づき各製造装置の動作にフィードバックする機能(例えば、実装プログラムの変更など)も有している。
【0049】
はんだ印刷検査装置Y1は、はんだ印刷装置X1から搬出された基板に対し、はんだペーストの印刷状態を検査するための装置である。はんだ印刷検査装置Y1では、基板上に印刷されたはんだペーストを2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、はんだの体積・面積・高さ・位置ずれ・形状などがある。はんだペーストの2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0050】
部品検査装置Y2は、マウンタX2から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を
検査するための装置である。部品検査装置Y2では、はんだペーストの上に載置された部品(部品本体、電極など部品の一部でもよい)を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、角度(回転)ずれ、欠品(部品が配置されていないこと)、部品違い(異なる部品が配置されていること)、極性違い(部品側と基板側の電極の極性が異なること)、表裏反転(部品が裏向きに配置されていること)、部品高さなどがある。はんだ印刷検査と同様、電子部品の2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0051】
外観検査装置Y3は、リフロー炉X3から搬出された基板に対し、はんだ付けの品質を検査するための装置である。外観検査装置Y3では、リフロー後のはんだ部分を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、部品検査と同じ項目に加え、はんだフィレット形状の良否なども含まれる。はんだの形状計測には、上述したレーザ変位計、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などの他、いわゆるカラーハイライト方式(R、G、Bの照明を異なる入射角ではんだ面に当て、各色の反射光を天頂カメラで撮影することで、はんだの3次元形状を2次元の色相情報として検出する方法)を用いることができる。
【0052】
X線検査装置Y4は、X線像を用いて基板のはんだ付けの状態を検査するための装置である。例えば、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ部品や多層基板の場合には、はんだ接合部が部品や基板の下に隠れているため、外観検査装置Y3では(つまり外観画像では)はんだの状態を検査することができない。X線検査装置Y4は、このような外観検査の弱点を補完するための装置である。X線検査装置Y4の検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、はんだ高さ、はんだ体積、はんだボール径、バックフィレットの長さ、はんだ接合の良否などがある。なお、X線像としては、X線透過画像を用いてもよいし、CT(Computed Tomography)画像を用いることも好ましい。
【0053】
(管理装置)
上述した製造装置X1~X3および検査装置Y1~Y4は、ネットワーク(LAN)を介して管理装置1に接続されている。管理装置1は、製造装置X1~X3および検査装置Y1~Y4の管理や制御を担うシステムであり、図示しないが、CPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、表示装置10などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。後述する管理装置1の機能は、補助記憶装置に格納されたプログラムをCPUが読み込み実行することにより実現される。
【0054】
なお、管理装置1は、1台のコンピュータにより構成してもよいし、複数のコンピュータにより構成してもよい。あるいは、製造装置X1~X3や検査装置Y1~Y4のいずれかの装置が内蔵するコンピュータに、管理装置1の機能の全部又は一部を実装することも可能である。あるいは、管理装置1の機能の一部をネットワーク上のサーバ(クラウドサーバなど)により実現してもよい。
【0055】
本実施形態の管理装置1は、製造設備の管理者が設備のメンテナンス及び品質管理を効率化的に行うための機能を実現するための機能部を有している。
図5に、管理装置1が有する機能部のブロック図を示す。
【0056】
図5に示すように、管理装置1は、部品情報取得部11、部品情報DB(データベース)111、装置部材情報取得部12、装置部材情報DB121、製造時異常情報取得部1
3、製造時異常情報DB131、検査情報取得部14、検査情報DB141、改善候補情報取得部15、管理作業支援部16の各機能部を有している。
【0057】
以下では、マウンタX2の例を用いて、管理装置1の各機能部の動作を詳しく説明する。
【0058】
(マウンタ)
図6はマウンタX2の構成を模式的に示す図である。マウンタX2は、基板Bを載置するステージ20、電子部品Pを供給する複数のフィーダ21、電子部品Pをピックアップする可動式のヘッド22、ヘッド22に取り付けられた複数のノズル23、各ノズルのエア圧を制御する真空ポンプ24などを備えている。各列のフィーダ21には異なる品番の電子部品Pがセットされている。また、マウンタX2は、自機の動作の異常を検知するための観測系として、上カメラ25、下カメラ26、ノズル端面の接触圧を計測する接触センサ27、ノズルのエア圧を計測する圧力センサ28などを備えている。制御部29は、マウンタX2の各部の制御、演算、情報処理を担うブロックであり、CPU(プロセッサ)、メモリなどを備えている。また、情報を出力する出力装置を備えていてもよい。座標系については、基板面に平行にX軸とY軸をとり、基板面に垂直にZ軸をとる。
【0059】
ステージ20上に基板Bが搬入されると、制御部29が実装プログラムに従って各ノズル23を制御し、フィーダ21から必要な電子部品Pを吸着・搬送して、基板B上に順次配置していく。すべての電子部品Pの配置(実装)が完了すると、基板Bが下流工程(検査装置Y2)へと搬出される。また、基板Bの製造情報として、基板ID、各部品の部品品番、回路番号、各部品を処理した装置部材を示す情報(ノズルID、フィーダID)が対応付けられた製造時異常情報を含む製造ログ情報がマウンタX2のメモリ内に記録される。
【0060】
図7は、マウンタX2における製造ログ情報の一例である。各行が1つの部品に対する製造記録であり、基板ID、部品品番、回路番号、ノズルID、フィーダID、製造時異常情報(画像判定処理エラー数、部品未吸着エラー数)などの情報を含んでいる。製造ログ情報を参照することで、基板上の各部品がどの装置部材により製造されたかがわかる。
【0061】
(管理装置によるデータ収集)
部品情報取得部11は、生産ラインで用いられる各種電子部品、基板、はんだなどの部品に関する情報を取得し、部品情報DB111に格納する。情報の取得タイミングは任意である。例えば、部品が新規に生産ラインに導入される際、既存の部品品番の製造ロット違いの部品が生産ラインに投入される際、などに情報を取得するとよい。情報の取得方法は、例えば、ネットワークを経由して部品メーカーのサーバから自動で取得するのであってもよいし、ユーザによる入力によって取得するのであってもよい。
【0062】
装置部材情報取得部12は、マウンタX2などの製造装置を構成する各種の部材や機構に関する情報装を取得し、装置部材情報DB121に格納する。情報の取得タイミングは任意である。例えば、装置部材の交換、メンテナンスなどが行われた際、新規な装置部材が生産ラインに導入される際、などに情報を取得するとよい。情報の取得方法は、例えば、ネットワークを経由して製造装置メーカーのサーバから自動で取得するのであってもよいし、ユーザによる入力によって取得するのであってもよい。
【0063】
製造時異常情報取得部13は、マウンタX2から上述の製造ログ情報(これに含まれる製造時異常情報)を取得し、製造時異常情報DB131に格納する。製造ログ情報の取得タイミングは任意である。例えば、マウンタX2において基板の実装が完了するたびにマウンタX2の制御部29が管理装置1に対し製造ログ情報を送信してもよい。あるいは、
製造時異常情報取得部13が、あらかじめ決められた時刻または頻度で情報を取得してもよいし、ユーザからの取得要求に応じて情報を取得してもよい。
【0064】
検査情報取得部14は、部品検査装置Y2から、マウント後の基板に対する検査結果の情報(特に、実不良及び見過ぎの情報)を取得し、検査情報DB141に格納する。検査情報の取得タイミングは任意である。例えば、部品検査装置Y2において基板の検査が完了するたびに検査情報を取得してもよい。あるいは、あらかじめ決められた時刻または頻度で情報を取得してもよいし、ユーザからの取得要求に応じて情報を取得してもよい。
【0065】
改善候補情報取得部15は、製造時異常情報取得部13及び検査情報取得部14が取得した情報に基づいて、部品製造時のエラー、検査時の不良の原因と推定される(即ち、改善の候補となる)装置部材又は部品品番を抽出する。改善候補情報の取得タイミング、取得方法は特に限定されないが、例えば、装置部材、部品品番ごとの異常の発生回数の正常値との比較、同種の異なる部材・品番間での異常発生数の比較、などに基づいて、所定の集計期間ごとに改善候補を抽出してもよい。
【0066】
管理作業支援部16は、部品情報取得部11、装置部材情報取得部12、製造時異常情報取得部13、検査情報取得部14、改善候補情報取得部15が取得した情報に基づいて、改善の候補となる装置部材、部品品番ごとに、所定の集計期間内における、製造時の異常及び検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成し、表示装置10に出力する。なお、一覧情報が出力される表示装置10は、管理装置1本体とは別体に構成されていてもよい。即ち、通信手段(図示せず)を介して一覧情報が出力されるのであってもよい。
【0067】
表示装置10に表示される画面は、上述の適用例に係る製造設備管理システム9において出力される画面(
図3参照)と同様のものであってもよいが、これに限られない。
図8に、表示装置に表示される他の画面の例を示す。
【0068】
図8に示すように、他の画面表示例では、装置部材と部品が改善候補としてまとめて表示されている(以下、装置部材と部品をまとめてデバイスともいう)。また、改善候補の各デバイスについて異常の種類ごとに集計値が数値で表示されるとともに、横向きの棒グラフとしても表示されており、各デバイスは、実不良の多い順に、降順で表示されている。このため、設備管理担当者がより直感的に異常発生の状況を把握しやすくなっている。
【0069】
なお、管理担当者が表示された一覧情報に基づいて、異常の原因となっている事象の絞り込みを行う方法は、例えば以下のようにして行うことができる。
【0070】
(異常原因事例1)
例えば、改善対象として抽出されたデバイスの種別が「ノズル」であり、実不良の異常が計上されているような場合には、当該実不良が発生する原因は、以下の三つが考えられる。即ち、「ノズルの上下動作が鈍く、部品吸着・装着の高さが合わないため吸着ミスや装着時の部品ずれが起こる」、「ノズルが部品形状に適していないため、部品を安定して吸着できず、部品吸着後ヘッド移動中に部品がずれた」、「ノズルが詰まっており、真空圧が不足して部品を安定して吸着できず、部品吸着後ヘッド移動中に部品がずれた」の、いずれかである。
【0071】
図9Aは、ノズルに実不良がある場合のその発生原因と、当該ノズルについての製造時の異常である、画像判定処理エラー及び部品未吸着エラーの有無の関係を示す表である。ここで、改善対象として抽出されたノズルについて、実不良だけでなく、部品未吸着のエラーの件数も計上されているような場合には、
図9Aに示すように、その実不良の発生原
因は#1の「ノズルの上下動作が鈍く、部品吸着・装着の高さが合わないため吸着ミスや装着時の部品ずれが起こる」に絞り込めることになる。この場合には、管理担当者は、作業担当者に対して、ノズルの動きがスムースか確認するなどの指示を行えばよい。
【0072】
一方、実不良があり、画像判定処理エラー及び部品未吸着エラーのいずれもなしの場合には、実不良の原因は、#2「ノズルが部品形状に適していないため、部品を安定して吸着できず、部品吸着後ヘッド移動中に部品がずれた」か、#3「ノズルが詰まっており、真空圧が不足して部品を安定して吸着できず、部品吸着後ヘッド移動中に部品がずれた」のいずれか、という事になる。このため、管理担当者が行う改善のアクションは、作業担当者にノズルの詰まりを確認するように指示するとともに、部品の実装プログラム(パラメータ)の確認を行うなどといった内容になる。
【0073】
(異常原因事例2)
次に、改善対象のデバイス種別が「部品品番」であり、実不良なし、画像判定処理エラーあり、というような場合には、当該画像判定処理エラーの原因として、以下の四つの事象が考えられる。即ち、「部品の実寸がロット性変化した」、「部品位置が正確に検出できていない」、「部品サイズに対する許容範囲(トレランス)が厳しすぎる」、「部品吸着位置が大きくずれている」のいずれかである。
【0074】
図9Bは、部品品番に画像判定処理エラーがある場合のその発生原因と、当該部品品番についての、実不良及び部品未吸着エラーの有無の関係を示す表である。ここで、改善対象として抽出された部品品番について、画像判定処理エラー以外の異常が計上されていない場合には、
図9Bに示すように、その発生原因は#1「部品の実寸がロット性変化した」、又は、#3「部品サイズに対する許容範囲(トレランス)が厳しすぎる」のいずれか、という事になる。
【0075】
(本実施形態の利点)
上述した本実施形態の構成によれば、改善対象デバイスごとに基板の製造時の異常及び検査時の異常の種類別の集計値を含む一覧情報が表示されるため、設備の管理担当者は、容易に上述のような異常の原因の絞り込みを行うことができ、製造設備のメンテナンス及び品質管理を効率的に行うことが可能になる。
【0076】
<その他>
上記の実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態において、管理作業支援部16が生成する一覧情報には、対象デバイスの、最終交換日時、最終の交換時からの経過時間、交換回数の履歴、などが含まれていてもよい。また、対象デバイスの装置部材についての最終メンテンナス日時、メンテナンスの累計実施回数などの情報が含まれていてもよい。
【0077】
また、上記実施形態では、改善対象デバイスは、実不良の件数を重視してソートされていたが、必ずしもこのような順で表示する必要はなく、他の異常の情報等を踏まえて、異常の原因としての可能性の高い順に表示するのであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、管理作業支援部は一覧情報を含む画面を表示装置に出力させる構成となっていたが、このような構成に限られず、管理作業支援部が一覧情報を含む画面表示用のデータを生成するだけであっても構わない。生成されたデータは、通信手段を介して他の機器に送信してもよいし、記憶部に格納するのであってもよい。即ち、表示手段を備えない情報処理装置に対しても、本発明は適用可能である。
【0079】
また、上記実施形態における管理装置1は、製造ラインにおいて異常を検出し、当該異常の原因としての改善対象デバイスを抽出した場合には、管理担当者に対してその旨を報知する手段を備えていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、部品実装基板の製造ラインにおけるチップマウンタを例として説明したが、これ以外の製品の製造設備に対しても本発明を適用可能である。
【0081】
<付記>
本発明の一の実施形態は、
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理システム(1)であって、
表示手段(10)と
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得手段(12)と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得手段(11)と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得手段(13)と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段(14)と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得手段(15)と、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成し前記表示手段に表示させる、管理作業支援手段(16)と、
を備える、管理システムである。
【0082】
また、本発明の他の一の実施形態は、
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査装置とを有する製造設備の管理装置(1)であって、
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得手段(12)と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得手段(11)と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得手段(13)と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得手段(14)と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得手段(15)と、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する管理作業支援手段(16)と、
を備える、管理システムである。
【0083】
また、本発明の他の一の実施形態は、
製品を製造するための装置部材を一つ以上含む製造装置と、前記製品を検査する検査
装置とを有する製造設備の管理方法であって、
前記製造装置における前記装置部材ごとに、装置部材情報を取得する装置部材情報取得ステップ(S102)と、
前記製品を構成する製品部材ごとに、製品部材情報を取得する製品部材情報取得ステップ(S101)と、
前記製造装置における前記製品の製造時の異常に係る製造時異常情報を取得する、製造時異常情報取得ステップ(S103)と、
前記検査装置による前記製品の検査時の異常の情報を含む検査情報を取得する検査情報取得ステップ(S104)と、
前記製造設備において、改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材の情報である、改善候補情報を取得する、改善候補情報取得ステップ(S105)と、
前記装置部材情報と、前記製品部材情報と、前記製造時異常情報と、前記検査情報と、前記改善候補情報とに基づいて、前記改善の候補となる前記装置部材及び/又は前記製品部材ごとに、所定の集計期間内における前記製品の製造時の異常及び前記製品の検査時の異常の種類別の集計値、を含む一覧情報を生成する、管理作業支援情報生成ステップ(S106)と、
前記管理作業支援情報生成ステップで生成した一覧情報を出力する、管理作業支援情報出力ステップ(S107)と、
を含む、管理方法である。
【符号の説明】
【0084】
1・・・管理装置
10・・・表示装置
11・・・部品情報取得部
111・・・部品情報DB
12・・・装置部材情報取得部
121・・・装置部材情報DB
13・・・製造時異常情報取得部
131・・・製造時異常情報DB
14・・・検査情報取得部
141・・・検査情報DB
15・・・改善候補情報取得部
16・・・管理作業支援部
20・・・ステージ
21・・・フィーダ
22・・・ヘッド
23・・・ノズル
24・・・真空ポンプ
25・・・上カメラ
26・・・下カメラ
27・・・接触センサ
28・・・圧力センサ
29・・・制御部
X1・・・はんだ印刷装置
X2・・・マウンタ
X3・・・リフロー炉
Y1・・・はんだ印刷検査装置
Y2・・・部品検査装置
Y3・・・外観検査装置
Y4・・・X線検査装置
B・・・基板
P・・・電子部品