(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラム
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20240509BHJP
G03G 21/20 20060101ALI20240509BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
G03G15/16 103
G03G21/20
G03G21/00 370
(21)【出願番号】P 2021008720
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 大樹
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-057968(JP,A)
【文献】特開2011-053435(JP,A)
【文献】特開2010-002753(JP,A)
【文献】特開2010-072074(JP,A)
【文献】特開2018-097106(JP,A)
【文献】特開2017-116805(JP,A)
【文献】特開2008-152165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に形成されたトナー像を、定電圧制御した転写電圧で被転写体へ転写する転写部と、
所定の転写電流を生じさせるための前記転写電圧を決定する決定処理を行い、前記転写電圧により生じた前記転写電流を変動させる変動要因の、前記決定処理時からの変化量に応じた補正割合に基づいて、前記転写電圧を補正する制御部と、
を有する画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、決定された前記転写電圧の、前記変動要因により変動しない不変部分を除く変動部分を、前記補正割合で補正することで、前記転写電圧を補正する、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記変動要因は温度であり、
前記制御部は、温度の変化割合に基づいて前記変動部分を補正する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記変動要因は相対湿度であり、
前記制御部は、相対湿度の変化割合に基づいて前記変動部分を補正する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記変動要因は絶対湿度であり、
前記制御部は、絶対湿度の変化割合に基づいて前記変動部分を補正する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、温度が所定の閾値以上になったときに前記決定処理を行うことで決定された前記転写電圧を前記不変部分として算出する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、印刷ジョブによる画像形成の終了後に前記決定処理を行うことで決定された前記転写電圧を前記不変部分として算出する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記印刷ジョブには両面印刷が含まれる、請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記転写電流が流れる経路の抵抗が異なる複数の条件にされたときに前記決定処理によりそれぞれ前記転写電圧を決定し、決定された前記転写電圧に基づいて前記不変部分を算出する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記不変部分に影響する、前記変動要因とは異なる影響因子が変化したときに前記不変部分を変更する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記影響因子は温度であり、
前記制御部は、温度に基づいて前記不変部分を算出する、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記影響因子は相対湿度であり、
前記制御部は、相対湿度に基づいて前記不変部分を算出する、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記影響因子は絶対湿度であり、
前記制御部は、絶対湿度に基づいて前記不変部分を算出する、請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項14】
像担持体に形成されたトナー像を、定電圧制御した転写電圧で被転写体へ転写する段階(a)と、
所定の転写電流を生じさせるための前記転写電圧を決定する決定処理を行い、決定された前記転写電圧により生じた前記転写電流を変動させる変動要因の、前記決定処理時からの変化量に応じた変化割合に基づいて、前記段階(a)において前記トナー像を前記被転写体へ転写する前記転写電圧を補正する段階(b)と、
を有する画像形成方法。
【請求項15】
像担持体に形成されたトナー像を、定電圧制御した転写電圧で被転写体へ転写する手順(a)と、
所定の転写電流を生じさせるための前記転写電圧を決定する決定処理を行い、決定された前記転写電圧により生じた前記転写電流を変動させる変動要因の、前記決定処理時からの変化量に応じた変化割合に基づいて、前記手順(a)において前記トナー像を前記被転写体へ転写する前記転写電圧を補正する手順(b)と、
をコンピューターに実行させるための画像形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、例えば、帯電させた感光体を露光することで形成した静電潜像をトナーで現像して感光体表面にトナー画像を形成し、トナー画像を中間転写体へ転写した後、中間転写体から用紙へ転写する。その後、用紙上のトナー画像を加熱および加圧する定着処理を行うことで、用紙に画像を形成する。
【0003】
感光体から中間転写体へトナー画像を転写する転写プロセスでは、定電圧制御された電圧を転写ローラー等の転写部に印加することで生じさせた電流によりトナー画像の転写を行い得る。定電圧制御による転写プロセスでは、主走査方向のトナー付着量が異なる場合でも一定の転写率が得られる。定電圧制御される電圧は、ATVC(Active Transfer Voltage Control)により決定される。ATVCは、転写部に定電流制御された所定の電流を転写部に印加したときの電圧値を読み取ることで、転写電圧を決定する処理である。
【0004】
ATVCは、通常、画像形成開始時に行うが、画像形成を継続することで、定着装置からの熱や外部環境の変化等により画像形成装置の機内の温度や湿度が変化し、転写部の部材の抵抗が変動する。これにより、定電圧制御による定電圧が転写部に印加されることでトナーに印加される電流が減少して、転写率が低下し、色調不良等の不具合が生じる可能性がある。この対策として、従来、画像形成開始後、紙間等の非画像形成時に、再度ATVCを実施し、印加電圧の補正をして、転写部に印加する定電圧制御された電圧を変えることにより、トナーに印加される電流を維持している。
【0005】
しかし、紙間等の非画像形成時でATVC等を実施すると、転写部材等を1周以上回転させる必要があること等により、生産性が低下する。
【0006】
下記特許文献1には次の先行技術が開示されている。画像形成前のATVC実施時の転写ローラーにおける電圧降下を、画像形成時の温度変化に基づいて、画像形成時の当該電圧降下に補正する補正式を湿度レベルごとに予め登録する。画像形成時の湿度レベルがATVC実施時と同じ場合は、上記補正式を用いて算出した補正後の電圧降下に応じた印加電圧を定電圧制御により転写ローラーに印加して転写プロセスを実施する。画像形成時の湿度レベルがATVC実施時と異なる場合は、再度ATVCを実施し、決定した印加電圧による転写プロセスを実施する。これにより、生産性の低下を抑制しつつ、定電圧制御による転写プロセスにおける静電気力を適正に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、転写部に使用される転写部材にはロット差による抵抗のバラツキがあり、また耐久による劣化、帯電や転写後除電等におけるコロナ放電による放電生成物の付着、およびクリーニング部の潤滑性を高めるための滑剤の付着による抵抗変化も発生する。上記先行技術は、このような抵抗変化等による転写率の低下等への影響を防止できないという問題がある。また、上記先行技術は、絶対湿度が比較的大きく変化して画像形成時の湿度レベルがATVC実施時と異なるようになった場合は、再度ATVCを実施する。しかし、再度ATVCを実施することで生産性が低下し、また連続紙に画像形成する場合等の非画像形成時間が設けられない場合に対応できないという問題もある。
【0009】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものである。すなわち、転写部の抵抗の製造バラツキや経時的変動に起因した転写性能の劣化を抑制できるとともに、生産性の低下を防止できる画像形成装置、画像形成方法、および画像形成プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記課題は、以下の手段によって解決される。
【0011】
(1)像担持体に形成されたトナー像を、定電圧制御した転写電圧で被転写体へ転写する転写部と、所定の転写電流を生じさせるための前記転写電圧を決定する決定処理を行い、前記転写電圧により生じた前記転写電流を変動させる変動要因の、前記決定処理時からの変化量に応じた補正割合に基づいて、前記転写電圧を補正する制御部と、を有する画像形成装置。
【0012】
(2)前記制御部は、決定された前記転写電圧の、前記変動要因により変動しない不変部分を除く変動部分を、前記補正割合で補正することで、前記転写電圧を補正する、上記(1)に記載の画像形成装置。
【0013】
(3)前記変動要因は温度であり、前記制御部は、温度の変化割合に基づいて前記変動部分を補正する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0014】
(4)前記変動要因は相対湿度であり、前記制御部は、相対湿度の変化割合に基づいて前記変動部分を補正する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0015】
(5)前記変動要因は絶対湿度であり、前記制御部は、絶対湿度の変化割合に基づいて前記変動部分を補正する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0016】
(6)前記制御部は、温度が所定の閾値以上になったときに前記決定処理を行うことで決定された前記転写電圧を前記不変部分として算出する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0017】
(7)前記制御部は、印刷ジョブによる画像形成の終了後に前記決定処理を行うことで決定された前記転写電圧を前記不変部分として算出する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0018】
(8)前記印刷ジョブには両面印刷が含まれる、上記(7)に記載の画像形成装置。
【0019】
(9)前記制御部は、前記転写電流が流れる経路の抵抗が異なる複数の条件にされたときに前記決定処理によりそれぞれ前記転写電圧を決定し、決定された前記転写電圧に基づいて前記不変部分を算出する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0020】
(10)前記制御部は、前記不変部分に影響する、前記変動要因とは異なる影響因子が変化したときに前記不変部分を変更する、上記(2)に記載の画像形成装置。
【0021】
(11)前記影響因子は温度であり、前記制御部は、温度に基づいて前記不変部分を算出する、上記(10)に記載の画像形成装置。
【0022】
(12)前記影響因子は相対湿度であり、前記制御部は、相対湿度に基づいて前記不変部分を算出する、上記(10)に記載の画像形成装置。
【0023】
(13)前記影響因子は絶対湿度であり、前記制御部は、絶対湿度に基づいて前記不変部分を算出する、上記(10)に記載の画像形成装置。
【0024】
(14)像担持体に形成されたトナー像を、定電圧制御した転写電圧で被転写体へ転写する段階(a)と、所定の転写電流を生じさせるための前記転写電圧を決定する決定処理を行い、決定された前記転写電圧により生じた前記転写電流を変動させる変動要因の、前記決定処理時からの変化量に応じた変化割合に基づいて、前記段階(a)において前記トナー像を前記被転写体へ転写する前記転写電圧を補正する段階(b)と、を有する画像形成方法。
【0025】
(15)像担持体に形成されたトナー像を、定電圧制御した転写電圧で被転写体へ転写する手順(a)と、所定の転写電流を生じさせるための前記転写電圧を決定する決定処理を行い、決定された前記転写電圧により生じた前記転写電流を変動させる変動要因の、前記決定処理時からの変化量に応じた変化割合に基づいて、前記手順(a)において前記トナー像を前記被転写体へ転写する前記転写電圧を補正する手順(b)と、をコンピューターに実行させるための画像形成プログラム。
【発明の効果】
【0026】
像担持体に形成されたトナー像を被転写体へ転写させるための所定の転写電流を生じさせる、定電圧制御された転写電圧を決定する決定処理を行い、転写電圧により生じた転写電流を変動させる変動要因の、決定処理時からの変化量に応じた補正割合に基づいて、転写電圧を補正する。これにより、転写部の抵抗の製造バラツキや経時的変動に起因した転写性能の劣化を抑制できるとともに、生産性の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【
図3】1次転写ローラーに転写電圧を印加する回路の構成を示す説明図である。
【
図4】転写電圧の補正について説明するためのグラフである。
【
図5】抵抗が異なる条件における温度の変化量と転写電圧との関係の近似式のグラフである。
【
図6】温度の変化量と変動部分の変化率との関係の近似式のグラフである。
【
図7】不変部分更新処理を説明するためのグラフである。
【
図8】画像形成装置の動作を示すフローチャートである。
【
図9】従来技術について説明するためのグラフである。
【
図10】補正後転写電圧の算出について説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る画像形成装置について説明する。なお、図面において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0029】
(第1実施形態)
図1は、画像形成装置100の構成を示す概略図である。
図2は、画像形成装置100の構成を示すブロック図である。
【0030】
画像形成装置100は、制御部110、記憶部120、通信部130、操作表示部140、画像読取部150、画像制御部160、画像形成部170、およびセンサー180を備える。これらの構成要素は、バス190により互いに通信可能に連結されている。画像形成装置100は、MFP(MultiFunction Peripheral)により構成され得る。制御部110、記憶部120、および操作表示部140はコンピューターを構成する。
【0031】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)および各種メモリを備えており、プログラムに従って上記各部の制御や各種の演算処理を行う。制御部110の作用の詳細については後述する。
【0032】
記憶部120は、SDD(Solid State Drive)またはHDD(Hard Disc Drive)等により構成され、各種プログラムおよび各種データを記憶する。
【0033】
通信部130は、画像形成装置100と外部機器との間で通信を行うためのインターフェースである。通信部130として、イーサネット(登録商標)、SATA、IEEE1394等の規格によるネットワークインターフェースが用いられる。また、通信部130として、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11等の無線通信インターフェース等の各種ローカル接続インターフェース等が用いられる。
【0034】
操作表示部140は、タッチパネル、テンキー、スタートボタン、およびストップボタン等を備えており、各種情報の表示および各種指示の入力に使用される。
【0035】
画像読取部150は、蛍光ランプ等の光源およびCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー等の撮像素子を有する。画像読取部150は、所定の読み取り位置にセットされた原稿に光源から光を当て、その反射光を撮像素子で光電変換して、その電気信号から画像データを生成する。
【0036】
画像制御部160は、通信部130により受信された印刷ジョブ等に含まれる印刷データのレイアウト処理およびラスタライズ処理を行い、ビットマップ形式の画像データを生成する。
【0037】
印刷ジョブとは、画像形成装置100に対する印刷命令の総称であり、印刷データおよび印刷設定が含まれる。印刷データとは、印刷の対象である文書のデータであり、印刷データには、例えば、イメージデータ、ベクタデータ、テキストデータといった各種データが含まれ得る。具体的には、印刷データは、PDL(Page Description Language)データ、PDF(Portable Document Format)データまたはTIFF(Tagged Image File Format)データであり得る。印刷設定とは、用紙900への画像形成に関する設定であり、例えば、ページ数、印刷部数、紙種、カラーまたはモノクロの選択、およびページ割付等の各種設定が含まれる。
【0038】
画像形成部170は、作像部40、定着部50、給紙部60、および用紙搬送部70を含む。
【0039】
作像部40は、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、およびK(ブラック)の各色のトナーに対応した作像ユニット41Y、41M、41C、41Kを有する。各作像ユニット41Y、41M、41C、41Kにより、画像データに基づいて、帯電、露光、および現像のプロセスを経て感光体ドラム42上にトナー像が形成される。露光は、レーザー光により感光体ドラム42上を走査することで行われる。感光体ドラム42上に形成されたトナー像は、1次転写ローラー44に印加される、定電圧制御された転写電圧による静電気力により、中間転写ベルト43上に順次重ねられて1次転写される。これにより、中間転写ベルト43上にカラーのトナー像が保持される。中間転写ベルト43上のカラーのトナー像は、2次転写ローラー45により用紙900上に2次転写される。1次転写ローラー44は転写部を構成する。
【0040】
中間転写ベルト43は、体積抵抗率が1.0×107~1.0×109Ω・cm程度で、表面抵抗率が1.0×1010~1.0×1012Ω/□程度の半導電性の無端状(シームレス)の樹脂ベルトが用いられる。樹脂ベルトとしては、変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電材料を分散した厚さ0.05~0.5mmの半導電性の樹脂フィルムを用いることができる。中間転写ベルト43としては、この他に、シリコーンゴム或いはウレタンゴム等に導電材料を分散した厚さ0.5~2.0mmの半導電性ゴムベルトを使用することもできる。中間転写ベルト43はテンションローラー36等を含む複数のローラー部材により巻回され、鉛直方向に回動可能に支持されている。
【0041】
1次転写ローラー44は、例えば金属シャフトとその周りを覆うシリコーンやウレタン等の発泡ゴムを用いたローラー状の導電性部材からなり、中間転写ベルト43を挟んで各色毎の感光体ドラム42にそれぞれ対向して設けられ、中間転写ベルト43の背面を押圧して感光体ドラム42との間に転写域を形成する。1次転写ローラー44には定電圧制御によりトナーと反対極性の転写電圧が印加され、転写域に形成される転写電界の静電気力によって、感光体ドラム42上のトナー像が中間転写ベルト43上に転写される。
【0042】
感光体ドラム42は、中空の円筒状の本体部(基体)と、感光層を有する像担持体であり、所定の速度で回転するように構成されている。本体部(基体)は、例えば、アルミニウム等の金属から構成される。感光層は、例えば、有機光導電体(Organic Photo Conductor:OPC)を含むポリカーボネイト等の樹脂から構成される。
【0043】
図3は、1次転写ローラー44に転写電圧を印加する回路の構成を示す説明図である。
【0044】
転写電圧は、電源441によって1次転写ローラー44に印加される。転写電圧は、1次転写ローラー44に中間転写ベルト43を介して圧接される感光体ドラム42が接地されることで、感光体ドラム42の電位を基準電位(接地電位)とした電圧となる。電源441は、制御部110から出力されて電源441に入力される制御信号VINに基づいて転写電圧を出力する。具体的には、電源441は、制御信号VINがD/Aコンバータ442で変換されたアナログ信号に基づく転写電圧を出力する。電源441は、定電圧源として動作し、定電圧制御された転写電圧を出力する。
【0045】
電源441は、定電流源としても動作可能であり、ATVC(Active Transfer Voltage Control)による転写電圧の決定に利用できる。具体的には、電源441から定電流を出力させたときの1次転写ローラー44の電圧(電位)を電圧検出回路443で検出し、A/Dコンバータ444でデジタル信号VOUTに変換されて制御部110へ出力する。これにより、所定の転写電流を生じさせるために1次転写ローラー44に印加する必要がある転写電圧(以下、単に「転写電圧」とも称する)が制御部110により決定され得る。所定の転写電流は、用紙900に形成された画像の品質の観点から実験により適当に設定され得る。
【0046】
定着部50は、定着ローラー51aおよび加圧ローラー52を含み、定着ローラー51aと加圧ローラー52とが互いに圧接されることで、定着ローラー51aと加圧ローラー52との間で定着ニップを形成する。定着部50は、定着ニップに搬送された用紙900を、定着ニップで加熱および加圧するとともに定着ローラー51aと加圧ローラー52とを回転させることで、用紙900上のトナー像を用紙900の表面に溶融定着する。
【0047】
センサー180には、温度計および湿度計が含まれ得る。センサー180は、画像形成装置100の機内の、例えば作像部40に比較的近い位置に配置され、機内の温度および湿度を計測する。センサー180は、機外の温度および湿度を計測してもよい。この場合、画像形成装置100から所定距離以内の温度および湿度を計測する。所定距離は、用紙900に形成された画像の品質の観点から実験により適当に設定され得る。湿度は、相対湿度であっても絶対湿度であってもよい。
【0048】
制御部110の作用について説明する。
【0049】
制御部110は、ATVCにより転写電圧を決定する決定処理(以下、単に「決定処理」とも称する)を行う。以下、決定処理により決定された転写電圧を「ATVC決定値」と称する。ATVC決定値は印刷ジョブの実行前に決定され、印刷ジョブの実行による画像形成実施時の転写電圧として適用される。ATVC決定値は、印刷ジョブの実行直前に決定されることが好ましい。
【0050】
制御部110は、ATVC決定値が1次転写ローラー44に印加されることで生じる転写電流を変動させる変動要因の、決定処理時からの変化量に応じた補正割合(以下、単に「補正割合」とも称する)により転写電圧を補正する。補正割合については後述する。変動要因には、温度、相対湿度、および絶対湿度が含まれる。これらは、具体的には、画像形成装置100の機内の、温度、相対湿度、および絶対湿度であり得る。以下、説明を簡単にするために、変動要因が温度であるものとして説明する。
【0051】
図4は、転写電圧の補正について説明するためのグラフである。グラフの横軸は温度の変化量であり、縦軸は転写電圧である。温度の変化量は、具体的には、現在の温度から決定処理時(印刷ジョブ開始前の決定処理時)の温度を減算することで算出される。現在の温度の変化量は、グラフ上に一点鎖線で示されている。
【0052】
図4に示すように、転写電圧は温度により変化する。転写電圧が変化するのは、温度等により転写電流が流れる経路の抵抗(以下、単に「抵抗」とも称する)が変化するからである。転写電流が流れる経路は、1次転写ローラー44から、中間転写ベルト43、および感光体ドラム42を介して接地点に至る経路であると考えられる。転写電圧は、温度により変化する変動部分と、温度により変化しない不変部分とに区分される。なお、不変部分がない場合もあり得る。
【0053】
制御部110は、ATVC決定値の不変部分を除く変動部分を、決定処理時からの温度の変化量に応じた補正割合に基づいて補正することで、転写電圧を補正する。以下、補正された転写電圧を「補正後転写電圧」と称する。補正割合は、下記式により与えられる。
【0054】
補正割合[%]=A×e^(B×(現在の温度[℃]-決定処理時の温度[℃]))
ここで、現在の温度[℃]-決定処理時の温度[℃]は、温度の変化量である。A、Bはそれぞれ係数であり、後述するように、ATVCによる転写電圧の、温度の変化量ごとの実測値と温度変化量との関係のグラフから近似式を算出することで決定される。
【0055】
変動部分は、ATVC決定値から不変部分を除いた部分であり、下記式により与えられる。
【0056】
変動部分[V]=ATVC決定値[V]-不変部分[V]
不変部分は、後述するように、例えば抵抗が異なる2つの条件で、転写電圧を、温度ごとにそれぞれATVCにより実測し、当該実測値と温度変化量との関係のグラフからそれぞれ算出した2つの近似式の交点の電圧として算出できる。このような変動部分の算出は、印刷ジョブによる画像形成の開始前に実験により行われ得る。
【0057】
補正後転写電圧は、例えば下記式のように、変動部分に補正割合を乗じて変動部分補正値を算出し、不変部分に加算することで算出される。なお、不変部分がない場合もあり得る。
【0058】
変動部分補正値[V]=変動部分[V]×補正割合[%]
補正後転写電圧[V]=不変部分[V]+変動部分補正値[V]
このように、転写電圧を、変動部分と不変部分とに分けて、変動部分についてのみ温度の変化量に基づく補正割合で補正することで、最適な転写電圧を変動させる部材の差等のさまざまな要因による転写性能の低下を柔軟に抑制できる。
【0059】
図5は、抵抗が異なる条件における温度と転写電圧との関係の近似式のグラフである。グラフの横軸は温度であり、縦軸は転写電圧である。グラフ上の丸および三角のプロットは、画像形成中に、変化する温度ごとにATVCにより測定した転写電圧の実測結果である。丸のプロットは高抵抗の条件における実測結果であり、三角のプロットは低抵抗の条件における実測結果である。高抵抗および低抵抗の条件は、1次転写ローラー44の種類をそれぞれ変えることで実現できる。高抵抗および低抵抗の条件は、比較的摩耗したローラーと新品のローラーを用いること等により実現してもよい。
【0060】
図5の例においては、高抵抗の条件における、温度(x)と転写電圧(y)との関係の近似式は、y=11815e^(-0.075x)である。低抵抗の条件における近似式は、y=5104e^(-0.057x)である。2つの近似式の交点は不変部分に相当し、358Vとなっている。
【0061】
図6は、温度の変化量と変動部分の変化率との関係の近似式のグラフである。グラフの横軸は温度の変化量であり、画像形成開始時の温度を起点とした変化量を算出した値であり得る。縦軸は変動部分の変化率である。
【0062】
温度の変化量と変動部分の変化率との関係の近似式は次のように算出される。画像形成開始時にATVCにより実測された転写電圧(ATVC決定値に相当)を100%、不変部分を0%として、温度ごとにATVCで実測した転写電圧を正規化することで変動部分変化率を算出する。変動部分変化率は、上述した補正割合に対応する。
図5の例においては、高抵抗の条件における画像形成開始時のATVCによる転写電圧の実測値は4807Vである。低抵抗の条件における画像形成開始時のATVCによる転写電圧の実測値は2800Vである。不変部分は358Vである。正規化された転写電圧は、高抵抗の条件および低抵抗の条件の算出結果を区別せずに、温度の変化量と変動部分変化率の関係の近似式の算出に用いることができる。
図6の例においては、係数Aは0.9806となり、係数Bは-0.075となる。従って、温度の変化量と変動部分変化率(補正割合)の関係の近似式は、変動部分変化率(補正割合)=0.9806×e^(-0.075×温度の変化量)となる。
【0063】
制御部110は、具体的には、次のように温度の変化量に応じた補正割合により転写電圧を補正し、補正後転写電圧を1次転写ローラー44に印加して、感光体ドラム42上に形成されたトナー像を中間転写ベルト43上に1次転写する。制御部110は、画像形成開始時の決定処理により、ATVC決定値を決定する。画像形成の継続により、例えば定着部50の温度により機内の温度が上昇する。このため、所定の頻度で、決定処理時からの温度の変化量に応じた補正割合により転写電圧を補正する。例えば、温度が5℃上昇するごとに補正をする場合、最初の補正は、上述した補正割合の補正式により、補正割合(変動部分変化率)は、0.9806×e^(-0.075×5V)=67.4%となる。ATVC決定値が3000Vである場合、不変部分が358Vであるので、変動部分は3000V-358V=2642Vとなる。変動部分補正値は、2642V×67.4%=1781Vとなる。従って、補正後転写電圧は、1781V+358V=2139Vになる。このような転写電圧の補正を継続して実施することで、最適な転写電圧を維持できる。
【0064】
制御部110は、不変部分の更新条件を満たしたときに、再度決定処理を行い、決定したATVC決定値を不変部分として算出することで不変部分を更新する処理(以下、「不変部分更新処理」とも称する)を実施し得る。不変部分の更新条件は、例えば、印刷ジョブの実行によりすべてのページの画像形成が終了したときである。
【0065】
図7は、不変部分更新処理を説明するためのグラフである。
図7のグラフの横軸は温度の変化量であり、縦軸は転写電圧である。
【0066】
図7に示すように、印刷ジョブによる画像形成前の決定処理により決定されたATVC決定値(黒丸の点)を転写電圧として画像形成(1次転写)を開始し、転写電圧を補正しつつ画像形成を行い、画像形成を終了する。画像形成終了時に決定処理で決定されるATVC決定値(白抜き丸の点)は、不変部分にほぼ対応するため、当該ATVC決定値により不変部分を更新する不変部分更新処理が可能である。これは、印刷ジョブによる画像形成が終了しているときには、画像形成装置100の機内の温度が十分上昇しており、さらなる温度上昇後に決定処理してATVC決定値を決定したとしても、同じATVC決定値になり、所定の転写電流を生じさせるために必要な転写電圧が変化しないと推定されるからである。また、不変部分更新処理を行うのは、1次転写ローラー44等の部材の摩耗、帯電や転写後除電等におけるコロナ放電による放電生成物の付着、およびクリーニング部の潤滑性を高めるための滑剤の付着等により抵抗が変化している可能性があるからである。印刷ジョブによる画像形成終了時に決定処理を実施することで、生産性の低下を防止できる。
【0067】
不変部分の更新条件は、印刷ジョブの実行によりすべてのページの画像形成が終了し、かつ温度が所定の閾値以上であることであってもよい。所定の閾値は、さらなる温度上昇によりATVC決定値が変化しない温度として経験的に推定される値とし得る。所定の閾値は、さらなる温度上昇によりATVC決定値が変化しない温度の最小値を実験的に測定することで得た実験値であってもよい。不変部分の更新条件は、両面印刷の印刷ジョブによる画像形成が終了したことであってもよい。変動部分をより正確に測定するためには、温度が可能な限り上昇していることが好ましいため、定着部50における用紙900表面の定着処理により熱をもった用紙900が裏面への画像形成のために作像部40に戻ってくることで作像部40の温度(1次転写ローラー44の周辺温度)が上昇しやすい両面印刷の画像形成終了後に変動部分の更新処理を行うことが好ましい。
【0068】
不変部分の更新処理により更新された不変部分は、次の印刷ジョブの実行時における補正後転写電圧の算出に利用され得る。
【0069】
画像形成装置100の動作について説明する。
【0070】
図8は、画像形成装置100の動作を示すフローチャートである。本フローチャートは、制御部110により、記憶部120に記憶されたプログラムに従い実行され得る。
【0071】
制御部110は、印刷ジョブを取得したかどうか判断する(S101)。制御部110は、例えば、通信部130により印刷ジョブが受信されたことにより、印刷ジョブを取得したと判断し得る。
【0072】
制御部110は、印刷ジョブを受信していないと判断した場合は(S101:NO)、ステップS101を繰り返し実行する。
【0073】
制御部110は、印刷ジョブを受信したと判断した場合は(S102:YES)、決定処理を実行してATVC決定値を決定する(S102)。
【0074】
制御部110は、決定されたATVC決定値を転写電圧として定電圧制御により1次転写ローラー44に印加して、感光体ドラム42上に形成されたトナー像を中間転写ベルト43上に1次転写するプロセスを含む画像形成処理により、画像形成を実施する(S103)。
【0075】
制御部110は、すべてのページの画像形成が終了していないと判断した場合は(S104;NO)、センサー180により計測された温度の変化量に応じた補正割合で転写電圧を補正する(S105)。すなわち、制御部110は、不変部分に補正割合を乗じて得た変動部分補正値を不変部分に加算することにより補正後転写電圧を算出することで、転写電圧を補正する。
【0076】
制御部110は、すべてのページの画像形成が終了したと判断した場合は(S104:YES)、不変部分の更新条件を満たすかどうか判断する(S106)。不変部分の更新条件は、上述したように、温度が所定の閾値以上であること、または印刷ジョブが両面印刷の印刷ジョブであること等であり得る。
【0077】
制御部110は、不変部分の更新条件を満たさないと判断した場合は(S106:NO)、処理を終了する。
【0078】
制御部110は、不変部分の更新条件を満たすと判断した場合は(S106:YES)、決定処理を実施し、決定したATVC決定値により不変部分を更新する(S107)。
【0079】
なお、
図8のフローチャートでは、用紙900(1ページ)ごとに転写電圧を補正しているが、適当な所定の頻度(例えば、10ページごと)で補正してもよい。所定の頻度は、用紙900に形成された画像の品質の観点から実験により適当に設定され得る。所定の頻度は、温度の変化量が5℃以上になったとき等であってもよい。
【0080】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態と第1実施形態とで異なる点は次の点である。第1実施形態は、不変部分に影響する湿度等の影響因子による不変部分の変化を考慮せずに補正後転写電圧を算出する。一方本実施形態は、不変部分に影響する湿度等の影響因子による不変部分の変化を考慮して補正後転写電圧を算出する点である。その他の点については、本実施形態は第1実施形態と同様であるので、重複となる説明は省略または簡略化する。
【0081】
図9は、従来技術について説明するためのグラフである。グラフの横軸は温度の変化量であり、縦軸は転写電圧である。
【0082】
従来技術では、本実施形態と同様に、印刷ジョブによる画像形成の開始前にATVCにより転写電圧を決定する。決定された転写電圧はグラフ上の黒丸の点で示されている。画像形成の開始後、温度変化(温度上昇)に基づいて、実線で示すように補正式により転写電圧を補正する。絶対湿度が閾値以上に変化すると、補正式による補正後の転写電圧と、破線で示す、温度ごとの転写電圧の理想値(所定の転写電流を生じさせる転写電流値)との乖離が顕著になる。このため、絶対湿度が閾値以上に変化したときは、ATVCを再実施する。ATVCの再実施により決定された転写電圧はグラフ上の白抜き丸の点で示されている。そして、変化後の絶対湿度に対応する他の補正式により転写電圧を補正する。従来技術では、湿度が閾値以上に変化した場合、印刷ジョブの実行中であっても、紙間等の非画像形成時にATVCを再実施する必要があるため、生産性が低下し得る。
【0083】
図10は、本実施形態における補正後転写電圧の算出について説明するためのグラフである。グラフの横軸は温度であり、縦軸は転写電圧である。
【0084】
図10に示すように、印刷ジョブによる画像形成が実施されることで、画像形成中に絶対湿度が変化(例えば上昇)した場合、絶対湿度が影響因子となり、画像形成前と画像形成中とで不変部分が変化する。影響因子は変動要因と異なる因子である。そこで、絶対湿度ごとに不変部分を予め算出しておき、変化後の絶対湿度に対応する不変部分に基づいて、画像形成中に補正後転写電圧を算出することで転写電圧を補正する。これにより、生産性を低下させることなく、絶対湿度の変化による1次転写の転写性能の劣化を抑止できる。なお、影響因子は相対湿度であり得る。
【0085】
制御部110は、絶対温度ごとの不変部分を、印刷ジョブの実行前に事前に算出して記憶部120に記憶させることで登録する。不変部分は、第1実施形態と同様の方法で算出され得る。
【0086】
制御部110は、印刷ジョブによる画像形成の実施前に、センサー180により温度とともに絶対湿度を計測し、絶対湿度に対応する不変部分を記憶部120から読み出す。制御部110は、決定処理によりATVC決定値を決定する。ATVC決定値はグラフの黒丸の点で示されている。
【0087】
制御部110は、印刷ジョブによる画像形成の実施中にセンサー180により温度とともに絶対湿度を計測する。制御部110は、計測された絶対湿度が所定の閾値以上変化したときに、当該絶対湿度に対応する不変部分を記憶部120から読み出し、それまでの不変部分を、読み出した不変部分に変更する。所定の閾値は、用紙900に形成された画像の品質の観点から実験により適当に設定され得る。制御部110は、読み出した不変部分を、ATVC決定値から減算することで変動部分を算出する。制御部110は、温度の変動量と補正割合との関係の近似式(第1実施形態参照)を用いて、温度の変化量に応じた補正割合を算出し、変動部分に乗算することで変動部分補正値を算出する。制御部110は、不変部分に変動部分補正値を加算することで補正後転写電圧を算出する。制御部110は、補正後転写電圧により転写電圧を補正する。
【0088】
本発明の実施形態は以下の効果を奏する。
【0089】
像担持体に形成されたトナー像を被転写体へ転写させるための所定の転写電流を生じさせる、定電圧制御された転写電圧を決定する決定処理を行い、転写電圧により生じた転写電流を変動させる変動要因の、決定処理時からの変化量に応じた補正割合で、転写電圧を補正する。これにより、転写部の抵抗の製造バラツキや経時的変動に起因した転写性能の劣化を抑制できるとともに、生産性の低下を防止できる。
【0090】
さらに、決定された転写電圧の、変動要因により変動しない不変部分を除く変動部分を補正割合で補正することで転写電圧を補正する。これにより、転写性能を効果的に向上できる。
【0091】
さらに、温度を変動要因として、温度の変化割合に基づいて変動部分を補正する。これにより、簡単かつ効果的に転写性能を向上できる。
【0092】
また、相対湿度を変動要因として、相対湿度の変化割合に基づいて変動部分を補正する。これにより、簡単かつ効果的に転写性能を向上できる。
【0093】
また、絶対湿度を変動要因として、絶対湿度の変化割合に基づいて変動部分を補正する。これにより、簡単かつ効果的に転写性能を向上できる。
【0094】
また、温度が所定の閾値以上になったときに決定処理を行うことで決定された転写電圧を不変部分として算出する。これにより、変動部分の算出精度を向上できる。
【0095】
さらに、印刷ジョブによる画像形成の終了後に決定処理を行うことで決定された転写電圧を不変部分として算出する。これにより、容易に不変部分を算出できる。
【0096】
さらに、両面印刷の印刷ジョブによる画像形成の終了後に決定処理を行うことで決定された転写電圧を不変部分として算出する。これにより、容易に不変部分を算出できるとともに、さらに転写性能を向上できる。
【0097】
また、転写電流が流れる経路の抵抗が異なる複数の条件における決定処理によりそれぞれ決定された転写電圧に基づいて不変部分を算出する。これにより、容易に不変部分を算出できる。
【0098】
さらに、不変部分に影響する影響因子が変化したときに不変部分を変更する。これにより、画像形成中に不変部分が変化することによる転写性能の劣化を抑制できるとともに、生産性の低下を防止できる。
【0099】
さらに、温度を影響因子として、温度に基づいて不変部分を算出する。これにより、簡単に不変部分が変化することによる転写性能の劣化を抑制できる。
【0100】
また、相対湿度を影響因子として、相対湿度に基づいて不変部分を算出する。これにより、簡単に不変部分が変化することによる転写性能の劣化を抑制できる。
【0101】
また、絶対湿度を影響因子として、絶対湿度に基づいて不変部分を算出する。これにより、簡単に不変部分が変化することによる転写性能の劣化を抑制できる。
【0102】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0103】
例えば、実施形態においては、定電圧制御された転写電圧が転写部に印加されることで生じる転写電流を変動させる変動要因が温度であるものとして説明した。しかし、温度、相対湿度、および絶対湿度は互いに関連しており、相対湿度または絶対湿度の方が顕著に転写電流を変動させる場合は、変動要因を相対湿度または絶対湿度として、補正後転写電圧を算出してもよい。
【0104】
また、例えば、変動要因が絶対湿度である場合、不変部分に影響する影響因子は温度または相対湿度としてもよい。同様に、変動要因が相対湿度である場合、不変部分に影響する影響因子は温度または絶対湿度としてもよい。
【0105】
また、実施形態においては、像担持体、被転写体、および転写部を、それぞれ感光体ドラム、中間転写ベルト、および1次転写ローラーを例に説明した。しかし、像担持体、被転写体、および転写部は、それぞれ中間転写ベルト、用紙、および2次転写ローラーであり得る。
【0106】
また、実施形態においてプログラムにより実行される処理の一部または全部を回路等のハードウェアに置き換えて実行され得る。
【符号の説明】
【0107】
42 感光体ドラム、
43 中間転写ベルト、
44 1次転写ローラー、
100 画像形成装置、
110 制御部、
120 記憶部、
130 通信部、
140 操作表示部、
150 画像読取部、
160 画像制御部、
170 画像形成部、
180 センサー。