(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】管理システム、管理装置、管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/00 20060101AFI20240509BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H05K13/00 Z
G05B19/418 Z
(21)【出願番号】P 2021008773
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 弘之
(72)【発明者】
【氏名】田中 真由子
(72)【発明者】
【氏名】中西 功
(72)【発明者】
【氏名】中島 克起
【審査官】中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125693(JP,A)
【文献】特開2006-317266(JP,A)
【文献】特開2013-134560(JP,A)
【文献】国際公開第2020/009108(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の生産設備の管理システムであって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得手段と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出手段と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定手段と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定手段と、
を有しており、
前記最適値採用判定手段は、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理システム。
【請求項2】
前記最適値設定手段は、前記最適値採用判定手段における前記判定の結果が可であった場合に、前記最適生産条件を前記生産設備に設定する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
少なくとも前記判定の結果を出力する出力手段と、入力手段とをさらに有しており、
前記最適値設定手段は、前記入力手段を介して前記最適生産条件を前記生産設備に反映させる旨の指示を受け付けた場合に、前記最適生産条件を前記生産設備に設定する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記最適生産条件が前記生産設備に設定されたか否かの情報を取得する最適値設定結果取得手段をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項5】
前記生産関連データには、前記生産設備の稼働に係る情報処理のための生産プログラムのレビジョンを特定する情報が含まれており、
前記最適値採用判定手段は、前記判定の際に現に採用されている前記生産プログラムのレビジョンと、前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産プログラムのレビジョンと、が同一である場合には、前記生産条件が同一であるものとして、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項6】
前記生産関連データには、前記製品の製品部材に係る製品部材情報及びそのレビジョンが含まれ、
前記生産プログラムのレビジョンを特定する情報には、前記製品部材情報のレビジョンが含まれる、
ことを、特徴とする、請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
前記生産関連データには、前記製品の製品部材に係る製品部材情報及びそのレビジョンの情報が含まれており、
前記最適値採用判定手段は、前記製品に係る特定の前記製品部材の前記製品部材情報についてのレビジョンが、前記判定の際に現に採用されている前記レビジョンと、前記最適
値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記レビジョンとで同一である場合には、前記生産条件が同一であるものとして、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項8】
前記生産設備は、前記製品を製造する製造装置を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記製造装置における前記製品の製造に係る製造条件を含む情報である製造内容データが含まれており、
前記最適値算出手段は、前記製造に係る最適な前記製造条件である最適製造条件を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、少なくとも、前記判定の際に現に採用されている前記製造条件と前記最適値算出手段が前記最適製造条件の算出の前提とした前記製造条件とが同一である場合に前記最適製造条件を前記製造装置における新たな前記製造条件として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適製造条件を前記製造装置に設定する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項9】
前記生産設備は、前記製品を検査する検査装置を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記検査における検査条件を含む検査内容データと、前記検査の結果に係る情報である検査結果データが含まれており、
前記最適値算出手段は、前記検査に係る最適な検査基準である最適検査基準を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、少なくとも、前記判定の際に現に採用されている前記検査条件と前記最適値算出手段が前記最適検査基準の算出の前提とした前記検査条件とが同一である場合に前記最適検査基準を前記検査装置における新たな前記検査基準として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適検査基準を前記検査装置に設定する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の管理システム。
【請求項10】
前記生産設備は、前記製品を製造する製造装置と、前記製品を検査する検査装置と、を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記製造装置における前記製品の製造に係る製造条件を含む情報である製造内容データと、前記検査における検査条件を含む検査内容データと、前記検査の結果に係る情報である検査結果データと、が含まれており、
前記最適値算出手段は、前記製造内容データと、前記検査内容データと、前記検査結果データと、に基づいて前記製造に係る最適な前記製造条件である最適製造条件、を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、
前記最適値算出手段が前記最適製造条件の算出の前提とした前記製造条件及び前記検査条件と、前記判定の際に現に採用されている前記製造条件及び前記検査条件と、が同一である場合に前記最適製造条件を前記製造装置における新たな前記製造条件として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適製造条件を前記製造装置に設定する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の管理システム。
【請求項11】
前記生産設備は、前記製品を製造する製造装置と、前記製品を検査する検査装置と、を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記製造装置における前記製品の製造に係る製造条件を含む情報である製造内容データと、前記検査における検査条件を含む検査内容データと、前記検査の結果に係る情報である検査結果データと、が含まれており、
前記最適値算出手段は、前記製造内容データと、前記検査内容データと、前記検査結果データと、に基づいて前記検査に係る最適な検査基準である最適検査基準、を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、
前記最適値算出手段が前記最適検査基準の算出の前提とした前記製造条件及び前記検査条件と、前記判定の際に現に採用されている前記製造条件及び前記検査条件と、が同一である場合に前記最適検査基準を前記検査装置における新たな前記検査基準として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適検査基準を前記検査装置に設定する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項1又は10に記載の管理システム。
【請求項12】
製品の生産設備の管理装置であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得手段と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出手段と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定手段と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定手段と、
を有しており、
前記最適値採用判定手段は、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理装置。
【請求項13】
製品の生産設備の管理方法であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得ステップと、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出ステップと、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定ステップと、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定ステップと、
を有しており、
前記最適値採用判定ステップにおいて、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出ステップで前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理方法。
【請求項14】
請求項13の管理方法に記載の各ステップを情報処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産ラインにおける品質管理及び工程改善の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化・省力化が進む製品の生産ラインでは、ラインの中間工程や最終工程に検査装置を設置し、不良の検出や不良品の仕分けなどを自動化しているものがある。また、検査装置の検査結果から不良の要因を推定し、品質管理や生産設備のメンテナンスに活用する試みも採られている。
【0003】
例えば、部品実装基板の生産ラインにおいては一般的に、プリント配線基板にクリームはんだを印刷する工程(印刷工程)、クリームはんだが印刷された基板に部品を実装する工程(マウント工程)、部品実装後の基板を加熱して部品を基板にはんだ付けするする工程(リフロー工程)が含まれ、各工程後に検査が実施される。
【0004】
そして、このような構成の生産ラインにおいて、各工程後の検査において得られる情報に基づいて、各工程の検査を最適化するための最適検査基準を算出し、これを各検査装置へフィードバックするシステムが知られている(例えば、特許文献1、2)。また、各工程後の検査において得られる情報に基づいて、各工程における部品の製造装置の製造プログラム(或いはパラメータ)を補正するための補正情報を作成し、各製造装置へフィードバックするシステムも知られている。
【0005】
例えば、特許文献1、2には、各工程後に行われる検査の検査結果を用いて、ある工程の最適な検査基準を算出し、当該算出された検査基準が最適であることを示す根拠情報をユーザーに提示すること、及び、ユーザーの承認のもと、当該算出された検査基準を検査装置に設定することが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、マウント工程後の検査において、基板に実装された部品の位置ずれ量を含む検査情報を検出し、検出された位置ずれ量に基づいて、部品実装装置が実装位置を補正して部品を基板に実装するための補正量を算出して該補正量に基づいて部品実装装置に実装位置の補正をさせることが記載されている。
【0007】
また、特許文献4には、マウント工程後の検査結果に基板上の部品の異常ずれがなく、かつ、リフロー工程後の検査結果に前記部品の異常ずれがある場合、リフロー工程における前記基板に対する前記部品の固着に関連するパラメータ(リフロー炉の温度プロファイル)を変更させることが記載されている。
【0008】
上記のように、検査結果に基づいて自動的に最適な製造条件・検査基準を算出し、これを製造装置、検査装置に実際に適用することで、生産ラインにおける不良の発生及び見逃し、検査における不良の過検出(いわゆる見過ぎ)、を効果的に抑止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2019-125693号公報
【文献】特開2019-125694号公報
【文献】特開2018-056447号公報
【文献】特開2020-043159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、各工程後の検査結果の情報に基づいて、製造装置における製造に係るパラメータ等(以下、製造条件という)、或いは、検査装置における検査基準を最適化したとしても、該最適化された製造条件、検査基準を各装置に適用することが、却って製造効率、検査効率を低下させることになる場合があった。
【0011】
具体的には、例えば製造装置の場合、最適化された製造条件を製造装置に適用する際に現に適用されている製造条件が、最適な製造条件の算出の根拠となった製造条件とは異なってしまっていることがあり、その場合には最適化の前提が変わるために、期待した効果が出ない、あるいは逆効果となることがある。
【0012】
また、検査装置についても、検査基準以外の条件の変更(検査座標や検査対象を抽出するパラメータ等)を行う等して計測値が変化し、該変化前の計測値で算出した最適な検査基準が、検査装置に適用するタイミングでは適切ではなくなってしまう場合がある。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、製品の生産設備において、設備のメンテナンス及び品質管理を効率化するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
製品の生産設備の管理システムであって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得手段と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出手段と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定手段と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定手段と、
を有しており、
前記最適値採用判定手段は、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理システムである。
【0015】
ここで、「生産設備」とは、製品を生産するための設備全般を指し、例えば、製造装置、検査装置、及びこれらの組み合わせ(即ち複数の装置群)などが含まれる。また、「生産条件」とは、製品の生産に関する各種のレシピ、パラメータ、基準などであり、例えば、製造装置において用いられるパラメータ、検査装置において用いられる検査条件(各種検査基準を含む)、などが含まれる。また、「生産関連データ」には、各生産設備において実行される情報処理プログラム名、そのレビジョンなどが含まれていてもよい。なお、本明細書において、「設定」の語は変更も含む意味で用いる。また、本明細書において、「製品」の語は、完成品のみならず、いわゆる中間品も含む意味で用いる。
【0016】
以上のような構成の検査システムであれば、最適な生産条件(例えば、製造条件や検査基準)の算出の前提となった生産条件と、現に設備において採用されている生産条件とが異なっている場合に、算出された最適生産条件をそのまま採用してしまうことを防止する
ことができる。これにより、最適生産条件を反映させるべきではない場合(即ち当該条件が最適か否か不明となってしまった場合)に、意図せずに生産条件が変更されることを防止することができ、品質を落とすことなく生産設備におけるメンテナンスを効率化させることが可能となる。
【0017】
また、前記最適値設定手段は、前記最適値採用判定手段における前記判定の結果が可であった場合に、前記最適生産条件を前記生産設備に設定する処理を実行するものであってもよい。
【0018】
このような構成であると、判定結果が可である場合には、自動的に最適な生産条件を、各生産設備に反映させることが可能になるため、生産条件を設定する際の工数を削減することができ、生産設備の効率化に寄与することができる。
【0019】
また、前記管理システムは、少なくとも前記判定の結果を出力する出力手段と、入力手段とをさらに有しており、
前記最適値設定手段は、前記入力手段を介して前記最適生産条件を前記生産設備に反映させる旨の指示を受け付けた場合に、前記最適生産条件を前記生産設備に設定する処理を実行する、ものであってもよい。
【0020】
このような構成であると、生産設備の管理者は前記最適値採用判定手段の判定結果を確認したうえで、最適生産条件を実際に反映させるか否かを判断することが可能になる。これにより、例えば、最適な生産条件の算出の前提となった生産条件と現に採用されている生産条件の異同にかかわらず、管理者の判断により柔軟に最適生産条件の設定を行うことができる。
【0021】
また、前記管理システムは、前記最適生産条件が前記生産設備に設定されたか否かの情報を取得する、最適値設定結果取得手段をさらに有していてもよい。このような構成により、最適生産条件が前記生産設備に設定されたか否か、及び設定された場合におけるその時期の情報を取得することができ、処理の前後での改善の有無を確認することが可能になる。
【0022】
また、前記生産関連データには、前記生産設備の稼働に係る情報処理のための生産プログラムのレビジョンを特定する情報が含まれており、
前記最適値採用判定手段は、前記判定の際に現に採用されている前記生産プログラムのレビジョンと、前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産プログラムのレビジョンと、が同一である場合には、前記生産条件が同一であるものとして、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、ものであってもよい。
【0023】
ここで、「前記生産設備の稼働に係る情報処理のための生産プログラム」とは、各生産設備(例えば、製造装置、検査装置など)で実行されるプログラムを含む。また、「生産プログラムのレビジョンを特定する情報」とは、例えば、製造装置において実行される製造プログラム名とそのレビジョン、検査装置において実行される検査プログラム名とそのレビジョン、などであってもよい。
【0024】
また、前記生産関連データには、前記製品の製品部材に係る製品部材情報及びそのレビジョンが含まれ、
前記生産プログラムのレビジョンを特定する情報には、前記製品部材情報のレビジョンが含まれてもよい。
【0025】
ここで、「製品部材」とは、製品を構成する各要素であり、例えば部品実装基板においては、ICチップなどの電子製品部材、プリント配線板(いわゆる生基板)、はんだなどを含む。また、「製品部材情報」とは製品部材に係る情報であり、例えば、部品品番、所定条件を満たす複数の異なる部品品番(例えば同一形状の部品、同一用途の部品など)をグループ化した部品品番グループ、特定の条件を満たす(例えば、特定の箇所に実装される、等)部品、などの単位で管理されているデータ(例えば、部品品番ライブラリ)であってもよい。また、リールID、製品部材の製造ロット、製品部材種、製品部材の形状、基板上における製品部材の位置、などを含んでいてもよい。また、「製品部材情報のレビジョン」は、部品品番のレビジョン、所定条件を満たす複数の異なる部品品番をグループ化した部品品番グループのレビジョン、特定の条件を満たす部品に係る情報のレビジョン、などを含む意味である。
【0026】
このような構成によれば、生産プログラム外で製品部材情報が管理されているような場合に、生産プログラムのレビジョンに変更はなくとも、製品部材情報のレビジョンが最適値算出時と採否判定時で異なっている場合に、意図せずに新たな生産条件が設定されることを防止することができる。
【0027】
また、前記生産関連データには、前記製品の製品部材に係る製品部材情報及びそのレビジョンの情報が含まれており、前記最適値採用判定手段は、前記製品に係る特定の前記製品部材の前記製品部材情報についての前記レビジョンが、前記判定の際に現に採用されている前記レビジョンと、前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記レビジョンと、で同一である場合には、前記生産条件が同一であるものとして、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定するものであってもよい。
【0028】
これによれば、最適値算出の前提となった生産条件と現に採用されている生産条件とが同一か否かを、製品に搭載される個々の生産部材(又はグループ化した生産部材)単位で判定することができる。即ち、特定の製品部材に係る最適な生産条件が算出されたような場合にも、生産プログラムのレビジョンの異同に関わらず、かつ、他の製品部材についての生産条件に影響を与えることなく、生産条件の設定を行うことが可能になる。
【0029】
また、前記生産設備は、前記製品を製造する製造装置を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記製造装置における前記製品の製造に係る製造条件を含む情報である製造内容データが含まれており、
前記最適値算出手段は、前記製造に係る最適な前記製造条件である最適製造条件を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、少なくとも、前記判定の際に現に採用されている前記製造条件と前記最適値算出手段が前記最適製造条件の算出の前提とした前記製造条件とが同一である場合に前記最適製造条件を前記製造装置における新たな前記製造条件として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適製造条件を前記製造装置に設定する処理を実行するものであってもよい。
【0030】
ここで、「製造装置」とは、製品を製造する多様な装置のことであり、例えば、はんだ印刷機、マウンタ、リフロー炉などの部品実装基板の生産ラインの各装置や、基板を構成する各種製品部材の製造装置、はんだの製造装置などを含む。また、「製造条件」とは、例えば、部品実装基板の生産ラインにおいては、はんだ印刷機、マウンタ、リフロー炉などにおける、各種の実装パラメータなどが含まれる。実装パラメータは、例えばマウンタにおいては、部品の吸着座標、装着座標、部品の形状モデル、サイズなどが含まれる。さらに詳細には、基板の個片番号、回路番号、部品品番、などが含まれていてもよい。なお
、「製造内容データ」には、製造装置において用いられる各種製品部材、製造装置を構成する各種装置部材、製造の際に検出されるエラーの情報などの情報が含まれていてもよい。また、製造装置において実行される実装プログラム名、そのレビジョンなどが含まれていてもよい。また、実装プログラムに用いられる製品部材情報、そのレビジョンなどが含まれていてもよく、当該製品部材情報は製造プログラム外で管理されていてもよい。
【0031】
このような構成であると、最適な製造条件の算出の前提となった製造条件と、現に採用されている製造条件とが異なっている場合に、算出された最適製造条件をそのまま採用してしまうことを防止することができる。
【0032】
また、前記生産設備は、前記製品を検査する検査装置を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記検査における検査条件を含む検査内容データと、前記検査の結果に係る情報である検査結果データが含まれており、
前記最適値算出手段は、前記検査に係る最適な検査基準である最適検査基準を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、少なくとも、前記判定の際に現に採用されている前記検査条件と前記最適値算出手段が前記最適検査基準の算出の前提とした前記検査条件とが同一である場合に前記最適検査基準を前記検査装置における新たな前記検査基準として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適検査基準を前記検査装置に設定する処理を実行するものであってもよい。
【0033】
ここで、「検査装置」とは、例えば、はんだ印刷検査(SPI)、自動光学検査(AOI)、自動X線検査(AXI)などの検査を実施する装置であり、目視検査の情報を反映させる検査装置であってもよい。また、前記製造装置に検査装置が内蔵されていても構わない。また、「検査条件」には、各製品における検査項目、該検査項目に対する検査基準(例えば、良否判定の閾値)の他、検査座標や検査対象を抽出するパラメータ等も含まれ、さらには項目毎に検査基準との照合を実施するか否かの処理も含む。また、「検査内容データ」には、検査装置において実行される検査プログラム名、そのレビジョンなどが含まれていてもよい。また、検査プログラムに用いられる製品部材情報、そのレビジョンが含まれていてもよく、当該製品部材情報は検査プログラム外で管理されていてもよい。また、「検査結果データ」は、単に製品の良否の判定結果のみをいうのではなく、検査において計測された検査対象の計測値なども含む。
【0034】
このような構成であると、最適な検査基準の算出の前提となった検査条件と、現に採用されている検査条件とが異なっている場合に、算出された最適検査基準をそのまま採用してしまうことを防止することができる。
【0035】
また、前記生産設備は、前記製品を製造する製造装置と、前記製品を検査する検査装置と、を備えており、
前記生産関連データ取得手段が取得する生産関連データには、前記製造装置における前記製品の製造に係る製造条件を含む情報である製造内容データと、前記検査における検査条件を含む検査内容データと、前記検査の結果に係る情報である検査結果データと、が含まれており、
前記最適値算出手段は、前記製造内容データと、前記検査内容データと、前記検査結果データと、に基づいて前記製造に係る最適な前記製造条件である最適製造条件、を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、
前記最適値算出手段が前記最適製造条件の算出の前提とした前記製造条件及び前記検査
条件と、前記判定の際に現に採用されている前記製造条件及び前記検査条件と、が同一である場合に前記最適製造条件を前記製造装置における新たな前記製造条件として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適製造条件を前記製造装置に設定する処理を実行するものであってもよい。
【0036】
最適製造条件を製造装置に設定する場合であっても、当該設定の際に現に検査装置で採用されている検査条件が、最適製造条件を算出する際の前提となったものから変更されているような場合がある。例えば、製品の品質をより高くするために検査基準が厳しくなっていたり、逆に、生産速度を優先するために検査基準が緩く(即ち、品質のばらつきの許容度が大きく)なっていたりする場合がある。そのような場合には、検査装置でどのように判定されるかを前提として算出された最適製造条件が、製造装置への設定の際には既に最適ではなくなっている可能性があるが、上記のような構成であれば、そのような場合に意図せずに製造条件が変更されることを防止することができる。
【0037】
また、前記最適値算出手段は、前記製造内容データと、前記検査内容データと、前記検査結果データと、に基づいて前記検査に係る最適な検査基準である最適検査基準、を少なくとも算出し、
前記最適値採用判定手段は、
前記最適値算出手段が前記最適検査基準の算出の前提とした前記製造条件及び前記検査条件と、前記判定の際に現に採用されている前記製造条件及び前記検査条件と、が同一である場合に前記最適検査基準を前記検査装置における新たな前記検査基準として採用することを可と判定し、
前記最適値設定手段は、前記所定の条件に従って、前記最適検査基準を前記検査装置に設定する処理を実行するものであってもよい。
【0038】
最適検査基準を製造装置に設定する場合であっても、当該設定の際に現に製造装置で採用されている製造条件が、最適検査基準を算出する際の前提となったものから変更されているような場合がある。例えば、より高い製品を製造するために製造条件が変更されるような場合である。そのような場合には、製造装置によりどのような水準で製品が製造されるかを前提として算出された最適検査基準が、検査装置への設定の際には既に最適ではなくなっている可能性がある。この点、上記のような構成であれば、そのような場合に意図せずに検査基準が変更されることを防止することができる。
【0039】
また、本発明は、
製品の生産設備の管理装置であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得手段と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出手段と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定手段と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定手段と、
を有しており、
前記最適値採用判定手段は、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理装置としても捉えることが可能である。
【0040】
また、本発明は、
製品の生産設備の管理方法であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得ステップと、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出ステップと、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定ステップと、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定ステップと、
を有しており、
前記最適値採用判定ステップにおいて、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出ステップで前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理方法としても捉えることができる。
【0041】
また、本発明は、上記の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。また、上記構成および処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、製品の生産設備において、設備のメンテナンス及び品質管理を効率化するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、適用例に係る生産設備管理システムの概略構成図である。
【
図2】
図2は、適用例に係る生産設備管理システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施形態に係る生産設備管理システムの概略構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る生産設備管理システムの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る生産設備管理システムにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態の変形例に係る生産設備管理システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面に基づいて、本発明の実施例について説明する。ただし、以下の各例に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0045】
<適用例>
本発明は例えば、
図1に示すような生産設備管理システム9として適用することができる。生産設備管理システム9は、プリント基板の表面実装ラインにおけるチップマウンタ(以下、単にマウンタという)を管理するシステムであり、マウンタ91、マウント検査装置92、管理装置93を構成要素として有している。そして、これらの各構成はLANなどのネットワークを介して相互に接続されている。
【0046】
マウンタ91は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置である。
【0047】
マウント検査装置92は、マウンタ91から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を検査するための装置であり、
図1に示すように、検査実施部921、最適検査基準採用可否判定部922、検査基準設定部923の各機能モジュールを備えている。検査実施部921では、所定の検査内容に従って、はんだペーストの上に載置された部品(部品本体、電極など部品の一部でもよい)の配置状態を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。なお、最適検査基準採用可否判定部922、検査基準設定部923の機能については、後述する。
【0048】
管理装置93は、図示しないが、CPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、出力装置(ディスプレイ、プリンタ、スピーカなど)などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。
【0049】
図1に示すように、管理装置93は、製造内容データ取得部931、検査内容データ取得部932、検査結果データ取得部933、最適検査基準算出部934、最適検査基準反映結果取得部935、表示部936、の各機能モジュールを備えている。これら各機能モジュールは、例えば、記憶装置に格納されたプログラムをCPUが読み込み実行することにより実現してもよい。
【0050】
製造内容データ取得部931は、マウンタ91で用いられる各種電子部品、基板、はんだなどの部品に関する情報、部品の吸着座標、装着座標、部品の形状モデル、サイズなどの各種の実装パラメータ、マウンタ91おいて実行される実装プログラム名、そのレビジョンなどを含む製造内容に係る情報(以下、製造内容データ)を取得する。なおここで取得する情報には、マウンタ91を構成する装置部材に関する情報、実装処理の際に検出されるエラーの情報、などが含まれていてもよい。
【0051】
検査内容データ取得部932は、マウント検査装置92における検査項目、該検査項目に対する検査基準(例えば、良否判定の閾値)の他、検査座標や検査対象を抽出するパラメータなどの、マウント検査装置92において実行される検査プログラム名、そのレビジョンなどを含む、検査内容に係る情報(以下、検査内容データ)を取得する。
【0052】
検査結果データ取得部933は、マウント検査装置92による検査結果の情報(以下、検査結果データ)を取得する。なお、ここでいう検査結果には、製品の良不良の判定結果のみならず、各部品の計測値などの情報も含まれる。
【0053】
最適検査基準算出部934は、製造内容データ取得部931、検査内容データ取得部932、検査結果データ取得部933が取得した情報に基づいて、最適な検査基準を算出する。具体的には、例えば、シミュレーション検査などを行い、現行の検査基準よりも不良の見逃し又は過検出(見過ぎ)が減少するような検査基準を算出する。このような検査基準が算出できない場合は、現行の検査基準が最適検査基準となる。
【0054】
表示部936は、例えば液晶ディスプレイなどとすることができ、後述するように、最適検査基準反映結果取得部935が取得した情報を出力(表示)する。
【0055】
次に、
図2に基づいて、生産設備管理システム9における、最適検査基準設定処理の流れを説明する。まず、管理装置93は、ユーザーの指示、予め定められたタイミングの到来、などをトリガーとして、製造内容データ取得部931により製造内容データを取得し
(S101)、検査内容データ取得部932により検査内容データを取得し(S102)、検査結果データ取得部933により検査結果データを取得する(S103)。
【0056】
次に、管理装置93は、最適検査基準算出部934により、最適な検査基準を算出するとともに、当該算出された検査基準、及び該検査基準算出の前提となった検査条件(検査基準を含む)を特定できる情報、を検査装置に送信する(S104)。ここで、検査基準算出の前提となった検査条件を特定できる情報とは、例えば、検査プログラム名とそのレビジョンなどとすることができる。また、検査基準を検査プログラム外で管理しているような場合には、当該検査プログラム外で管理されている検査基準を特定可能な情報(例えば、部品品番ライブラリのレビジョン)であってもよい。
【0057】
次に、マウント検査装置92は、最適検査基準採用可否判定部922により、算出された最適検査基準をマウント検査装置92の新たな検査基準として採用して良いか否かを判定する(S105)。具体的には、現在検査装置で採用されている検査条件と、ステップS104で送信された検査基準の算出の前提となった検査条件とが、同一であるか否かを判定するとよい。例えば、最適検査基準算出の前提となった検査条件を特定できる情報が検査プログラム名とそのレビジョンである場合には、現在検査装置で採用されている当該検査プログラムのレビジョンと照合することで、同一か否かを判定することができる。また、最適検査基準算出の前提となった検査条件を特定できる情報が、例えば、検査プログラム外で管理されている検査基準を特定可能な部品品番ライブラリのレビジョンである場合には、検査プログラムが参照する当該部品品番ライブラリのレビジョンを照合するとよい。
【0058】
ステップS105で、最適検査基準を新たな検査基準として採用して良いと判定されなかった場合には、その旨の情報を管理装置93に送信し、ステップS107へ進む。この場合、最適検査基準の算出の前提となった検査条件が既に変わってしまっているということであり、そのままステップS104で算出された検査基準をマウント検査装置92に採用することは効果がないばかりか逆効果になってしまう虞があるため、検査基準の設定(変更)は行わない。
【0059】
一方、ステップS105で、最適検査基準を新たな検査基準として採用して良いと判定された場合には、マウント検査装置92は、検査基準設定部923により、ステップS104で算出された最適検査条件を、マウント検査装置92における新たな検査基準として設定して、その旨を管理装置93に送信し(S106)、ステップS107に進む。
【0060】
そして、管理装置93が最適検査基準反映結果取得部935により、ステップS104で算出された検査基準がマウント検査装置92に反映されたか否かの情報を取得し(S107)、当該情報を表示部936に表示して(S108)、一連の処理を終了する。
【0061】
ここで、表示部936には、ステップS106で検査装置の検査基準を変更した場合には、マウント検査装置92の検査基準が最適検査基準に更新された旨を表示するようにしてもよい。一方、ステップS105で、現在検査装置において採用されている検査条件と最適検査基準の算出の前提となった検査条件とが同一ではないと判断された場合には、その旨を示すとともに、ステップS104で算出された検査基準をマウント検査装置92の新たな検査基準として設定するか否か、ユーザーの指示を受け付けるインターフェース画面を表示するようにしてもよい。
【0062】
以上のように、本適用例に係る生産設備管理システム9によれば、生産ラインに配置されたマウント検査装置92における最適な検査基準を算出するとともに、当該最適化された検査基準をマウント検査装置92の新たな検査基準として採用することが適切か否かを
自動的に判定することができる。そして、新たな検査基準として採用することが適切であると判定された場合には自動的に当該検査基準をマウント検査装置92に設定し、適切でないと判定された場合には当該検査基準の設定を却下(或いは保留)するため、意図せずに不適切な検査基準をマウント検査装置92に設定してしまうことを防止しつつ、検査基準の最適化を自動で行うことが可能になる。
【0063】
<実施形態>
以下では、この発明を実施するための形態の一例を、さらに詳しく説明する。
【0064】
(システム構成)
図3は、本実施形態に係るプリント基板の表面実装ラインにおける生産設備管理システム1の構成例を模式的に示している。表面実装(Surface Mount Technology:SMT)とはプリント基板の表面に電子部品をはんだ付けする技術であり、表面実装ラインは、主として、はんだ印刷、部品のマウント、リフロー(はんだの溶着)の三つの工程から構成される。
【0065】
図3に示すように、表面実装ラインでは、製造装置として、上流側から順に、はんだ印刷装置X1、マウンタX2、リフロー炉X3が設けられる。はんだ印刷装置X1は、スクリーン印刷によってプリント基板上の電極部(ランドと呼ばれる)にペースト状のはんだを印刷する装置である。マウンタX2は、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置するための装置であり、チップマウンタとも呼ばれる。リフロー炉X3は、はんだペーストを加熱溶融した後、冷却を行い、電子部品を基板上にはんだ接合するための加熱装置である。基板に実装する電子部品の数や種類が多い場合には、表面実装ラインに複数台のマウンタX2が設けられることもある。なお、後述するように、はんだ印刷装置X1、マウンタX2、リフロー炉X3は、それぞれ、製造実施部、判定部、製造条件設定部、の機能部を備えている。これらの機能については、後に説明する。
【0066】
はんだ印刷検査装置Y1は、はんだ印刷装置X1から搬出された基板に対し、はんだペーストの印刷状態を検査するための装置である。はんだ印刷検査装置Y1では、基板上に印刷されたはんだペーストを2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、はんだの体積・面積・高さ・位置ずれ・形状などがある。はんだペーストの2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0067】
マウント検査装置Y2は、マウンタX2から搬出された基板に対し、電子部品の配置状態を検査するための装置である。マウント検査装置Y2では、はんだペーストの上に載置された部品(部品本体、電極など部品の一部でもよい)を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か否かの判定を行う。検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、角度(回転)ずれ、欠品(部品が配置されていないこと)、部品違い(異なる部品が配置されていること)、極性違い(部品側と基板側の電極の極性が異なること)、表裏反転(部品が裏向きに配置されていること)、部品高さなどがある。はんだ印刷検査と同様、電子部品の2次元計測には、イメージセンサ(カメラ)などを用いることができ、3次元計測には、レーザ変位計や、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などを利用することができる。
【0068】
外観検査装置Y3は、リフロー炉X3から搬出された基板に対し、はんだ付けの品質を検査するための装置である。外観検査装置Y3では、リフロー後のはんだ部分を2次元ないし3次元的に計測し、その計測結果から各種の検査項目について正常値(許容範囲)か
否かの判定を行う。検査項目としては、部品検査と同じ項目に加え、はんだフィレット形状の良否なども含まれる。はんだの形状計測には、上述したレーザ変位計、位相シフト法、空間コード化法、光切断法などの他、いわゆるカラーハイライト方式(R、G、Bの照明を異なる入射角ではんだ面に当て、各色の反射光を天頂カメラで撮影することで、はんだの3次元形状を2次元の色相情報として検出する方法)を用いることができる。
【0069】
X線検査装置Y4は、X線像を用いて基板のはんだ付けの状態を検査するための装置である。例えば、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)などのパッケージ部品や多層基板の場合には、はんだ接合部が部品や基板の下に隠れているため、外観検査装置Y3では(つまり外観画像では)はんだの状態を検査することができない。X線検査装置Y4は、このような外観検査の弱点を補完するための装置である。X線検査装置Y4の検査項目としては、例えば、部品の位置ずれ、はんだ高さ、はんだ体積、はんだボール径、バックフィレットの長さ、はんだ接合の良否などがある。なお、X線像としては、X線透過画像を用いてもよいし、CT(Computed Tomography)画像を用いることも好ましい。
【0070】
なお、後述するように、検査装置Y1、Y2、Y3、Y4はそれぞれ、検査実施部、判定部、検査基準設定部の各機能部を備えている。これらの機能については、後に説明する。
【0071】
(管理装置)
上述した製造装置X1、X2、X3および検査装置Y1、Y2、Y3、Y4は、ネットワーク(LAN)を介して管理装置10に接続されている。管理装置10は、製造装置X1、X2、X3および検査装置Y1、Y2、Y3、Y4の管理や制御を担うシステムであり、図示しないが、CPU(プロセッサ)、主記憶装置(メモリ)、補助記憶装置(ハードディスクなど)、入力装置(キーボード、マウス、コントローラ、タッチパネルなど)、表示装置などを具備する汎用的なコンピュータシステムにより構成される。後述する管理装置10の機能は、補助記憶装置に格納されたプログラムをCPUが読み込み実行することにより実現される。
【0072】
なお、管理装置10は、1台のコンピュータにより構成してもよいし、複数のコンピュータにより構成してもよい。あるいは、製造装置X1、X2、X3や検査装置Y1、Y2、Y3、Y4のいずれかの装置が内蔵するコンピュータに、管理装置10の機能の全部又は一部を実装することも可能である。あるいは、管理装置10の機能の一部をネットワーク上のサーバ(クラウドサーバなど)により実現してもよい。
【0073】
(各機能部の説明)
本実施形態に係る生産設備管理システム1は、生産設備の管理者が設備のメンテナンス及び品質管理を効率化的に行うための機能を実現するための機能を有している。
図4に、管理装置10、各製造装置X1、X2、X3および各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4が有する機能部のブロック図を示す。
【0074】
図4に示すように、管理装置10は、製造内容データ取得部101、検査内容データ取得部102、検査結果データ取得部103、最適製造条件算出部104、最適検査基準算出部105、最適値反映結果取得部106、表示部107、の各機能部を有している。
【0075】
製造内容データ取得部101は、はんだ印刷装置X1、マウンタX2、リフロー炉X3のそれぞれで用いられる各種電子部品、基板、はんだなどの部品に関する情報、各種の実装(製造)パラメータ、各製造装置おいて実行される製造プログラム名、そのレビジョンなどを含む製造内容に係る情報(以下、製造内容データ)を取得する。なお、ここで取得
する情報には、各製造装置X1、X2、X3を構成する装置部材に関する情報、製造処理の際に検出されるエラーの情報、などが含まれていてもよい。
【0076】
製造内容データ取得部101は、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4における検査項目、該検査項目に対する検査基準(例えば、良否判定の閾値)の他、検査座標や検査対象を抽出するパラメータなどの、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4において実行される検査プログラム名、そのレビジョンなどを含む、検査内容に係る情報(以下、検査内容データ)を取得する。
【0077】
検査結果データ取得部103は、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4による検査結果の情報(以下、検査結果データ)を取得する。なお、ここでいう検査結果には、製品の良不良の判定結果のみならず、各部品の計測値などの情報も含まれる。
【0078】
最適製造条件算出部104は、製造内容データ、検査内容データ、検査結果データに基づいて、各製造装置X1、X2、X3における最適な製造条件を算出する。具体的には、各製造装置X1、X2、X3におけるエラーの情報、検査結果などから、製造装置における各種パラメータを最適化した条件を算出する。
【0079】
このようにして算出された最適製造条件は、当該製造条件を算出する際の前提となった製造条件を特定する情報(例えば、製造プログラム名およびそのレビジョン)とともに、図示しない通信手段により対象の製造装置に送信され、後述のように当該条件を採用するか否かの判定を受ける。
【0080】
なお、ここで送信される製造条件の内容は、製造条件に係る全ての情報を備えるものであってもよいし、最適製造条件を算出する際の前提となった製造条件に対する変更部分(パラメータ項目、変更箇所、変更内容)のみを指定する情報であってもよい。また、最適製造条件を算出する際の前提となった製造条件を併せて送信してもよい。
【0081】
例えば、はんだ印刷装置X1に送信する製造条件として、マスククリーニング頻度(基板N枚に1回として、Nの値)、マスクと基板の位置合わせパラメータであるマスクオフセット値(X座標、Y座標、回転角の現在位置からの差分)、などとすることができる。また、マウンタX2に送信する製造条件として、部品の実装座標(実際の座標、或いは、現在位置からのオフセット値)、部品サイズ、などとすることができる。また、リフロー炉X3に送信する製造条件として、炉内の各層の温度プロファイル(設定すべき温度、或いは現在の温度からのオフセット値)などとすることができる。
【0082】
最適検査基準算出部105は、製造内容データ、検査内容データ、検査結果データに基づいて、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4における最適な検査基準を算出する。具体的には、例えば、シミュレーション検査などを行い、現行の検査基準よりも不良の見逃し又は過検出(見過ぎ)が減少するような検査基準を算出する。このような検査基準が算出できない場合は、現行の検査基準が最適検査基準となる。
【0083】
このようにして算出された最適検査基準は、当該検査基準を算出する際の前提となった検査条件を特定する情報(例えば、検査プログラム名およびそのレビジョン)とともに、図示しない通信手段により対象の検査装置に送信され、後述のように当該条件を採用するか否かの判定を受ける。
【0084】
なお、ここで送信される検査基準の内容は、検査基準に係る全ての情報を備えるものであってもよいし、最適検査基準を算出する際の前提となった検査基準に対する変更部分(検査項目、変更箇所、変更内容)のみを指定する情報であってもよい。
【0085】
また、検査プログラムと検査基準の関係などに応じて、送信する情報はさまざまである。例えば、1つのプログラム内に、そのプログラム内のみで有効な、全ての検査基準を備えるような検査プログラムの場合であって、検査箇所(例えば、個片番号、回路番号、端子番号)ごとに検査項目と検査基準を持っているようなケースでは、検査基準を変更したい検査箇所の検査項目ごとに、検査基準を変更する内容となる。また、部品品番ごとに検査項目と検査基準を持っているようなケースでは、検査基準を変更したい部品品番(必要に応じて端子番号)と検査項目ごとに、検査基準を変更する内容となる。この場合には、検査装置において新たな検査基準が採用されると、検査プログラムそのものが変更されることになる。
【0086】
一方、例えば、部品品番ごとに検査基準があり、複数の検査プログラムで当該検査基準が使用される、というように、検査プログラム外で検査基準が管理されている場合には、検査基準を変更したい部品品番(必要に応じて端子番号)と検査項目ごとに、検査基準を変更する内容となる。この場合には、検査装置において新たな検査基準が採用されると検査プログラムが変更されるわけではなく、検査プログラム外のデータ、例えば、部品品番ライブラリ(部品形状、部品色、検査項目・検査基準など)が変更されることになる。
【0087】
最適値反映結果取得部106は、後述するように、最適製造条件算出部104が算出した製造条件、及び/又は、最適検査基準算出部105が算出した検査基準が、各製造装置及び/又は各検査装置において、反映されたか否かの結果を含む情報を取得する。表示部107は、少なくとも最適値反映結果取得部106が取得した情報を出力する。
【0088】
製造実施部211、311、411は、各製造装置において製造処理を実施する機能部である。例えば、はんだ印刷装置X1の製造実施部211では、スクリーン印刷によってプリント基板上のランドにペースト状のはんだを印刷する処理を実施する。同様に、マウンタX2の製造実施部311では、基板に実装すべき電子部品をピックアップし、該当箇所のはんだペーストの上に部品を載置する処理を実施する。また、リフロー炉X3の製造実施部411では、はんだペーストを加熱溶融した後、冷却を行い、電子部品を基板上にはんだ接合する処理を実施する。
【0089】
各製造装置X1、X2、X3の判定部212、312、412は、図示しない通信手段により受信した最適製造条件を、各製造装置において新たな製造条件として採用して良いか否かを判定する。具体的には、各製造装置において現在採用されている製造条件と、最適製造条件算出部104による最適製造条件の算出の前提となった製造条件とが、同一であるか否かを判定する。例えば、最適製造条件算出の前提となった製造条件を特定できる情報が製造プログラム名とそのレビジョンである場合には、現在製造装置で採用されている当該製造プログラムのレビジョンと照合することで、同一か否かを判定することができる。
【0090】
また、各製造装置X1、X2、X3の製造条件設定部213、313、413はそれぞれ、各製造装置において最適製造条件を新たな製造条件として採用して良いと判定された場合には、当該最適製造条件を、各製造装置における新たな製造条件として設定する。一方、最適製造条件を新たな製造条件として採用して良いと判定されなかった場合には、各製造装置における最適製造条件の採用は保留される(即ち、各製造装置における製造条件の変更は生じない)。
【0091】
検査実施部221、321、421、431はそれぞれ、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4において上述したような検査を実施する機能部である。
【0092】
また、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4の判定部222、322、422、432は図示しない通信手段により受信した最適検査基準を、各検査装置において新たな検査基準として採用して良いか否かを判定する。具体的には、例えば、現在検査装置で採用されている検査条件と、検査基準の算出の前提となった検査条件と、が同一であるか否かを判定し、同一であれば、最適検査基準を各検査装置において新たな検査基準として採用して良いと判定する。同一か否かは、例えば、最適検査基準算出の前提となった検査条件を特定できる情報が検査プログラム名とそのレビジョンである場合には、現在検査装置で採用されている当該検査プログラムのレビジョンと照合することで、同一か否かを判定することができる。また、最適検査基準算出の前提となった検査条件を特定できる情報が、例えば、検査プログラム外で管理されている検査基準を特定可能な部品品番ライブラリのレビジョンである場合には、検査プログラムが参照する当該部品品番ライブラリのレビジョンを照合するとよい。
【0093】
また、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4の検査基準設定部223、323、423、433はそれぞれ、各検査装置において最適検査基準を新たな検査基準として採用して良いと判定された場合には、当該検査基準を、各検査装置における新たな検査基準として設定する。一方、最適検査基準を新たな検査基準として採用して良いと判定されなかった場合には、各検査装置における最適検査基準の採用は保留される(即ち、各検査装置における検査基準の変更は生じない)。
【0094】
各製造装置X1、X2、X3において、最適製造条件が新たな製造条件として設定されたか否か、及び、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4において、最適検査基準が新たな検査基準として設定されたか否かの情報は、各装置から管理装置10に送信されて、最適値反映結果取得部106によって取得される。
【0095】
最適値反映結果取得部106によって取得された情報は、表示部107に表示される。具体的には、例えば、各製造装置X1、X2、X3において、最適製造条件が新たな製造条件として設定された場合、及び、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4において、最適検査基準が新たな検査基準として設定された場合には、その旨を表示するようにしてもよい。一方、最適製造条件、最適検査基準が採用されなかった場合には、その旨を示すとともに、ユーザーの指示を受け付けるインターフェース画面を表示するようにしてもよい。
【0096】
なお、上述の最適製造条件の算出、最適製造条件の採用の可否判定、最適製造条件の設定、該設定結果の取得及びその表示、はそれぞれの製造装置X1、X2、X3について個別に行うようにしてもよいし、一括して行うのであってもよい。同様に、上述の最適検査基準の算出、最適検査基準の採用の可否判定、最適検査基準の設定、該設定結果の取得及びその表示は、それぞれの検査装置Y1、Y2、Y3、Y4について個別に行うようにしてもよいし、一括して行うのであってもよい。
【0097】
(処理の流れの一例)
ここで、
図5に基づいて、生産設備管理システム1において、マウンタX2の最適製造条件設定を行う際の処理の流れを説明する。まず、管理装置10は、ユーザーの指示、予め定められたタイミングの到来、などをトリガーとして、製造内容データ取得部101により製造内容データを取得し(S201)、検査内容データ取得部102により検査内容データを取得し(S202)、検査結果データ取得部103により検査結果データを取得する(S203)。
【0098】
次に、管理装置10は、最適製造条件算出部104により、最適な製造条件を算出するとともに、当該算出された製造条件、及び該製造条件算出の前提となった製造条件(実装パラメータ等を含む)を特定できる情報、をマウンタX2に送信する(S204)。
【0099】
次に、マウンタX2は、判定部212により、算出された最適製造条件をマウンタX2の新たな製造条件として採用して良いか否かを判定する(S205)。具体的には、現在マウンタX2で採用されている製造条件と、ステップS204で送信された製造条件の算出の前提となった製造条件とが、同一である場合には、新たな製造条件として採用して良いと判定する。
【0100】
ステップS205で、新たな製造条件として採用して良いと判定されなかった場合には、その旨の情報を管理装置10に送信し、ステップS207へ進む。この場合、最適製造条件の算出の前提となった製造条件が既に変わってしまっているということであり、そのままステップS204で算出された製造条件をマウンタX2に採用することは効果がないばかりか逆効果になってしまう虞があるため、検査基準の設定(変更)は行わない。
【0101】
一方、ステップS205で、新たな製造条件として採用して良いと判定された場合には、マウンタX2は、製造条件設定部213により、ステップS204で算出された最適製造条件を、マウンタX2における新たな製造条件として設定して、その旨を管理装置10に送信し(S206)、ステップS207に進む。
【0102】
そして、管理装置10が最適値反映結果取得部106により、ステップS204で算出された製造条件がマウンタX2に反映されたか否かの情報を取得し(S207)、当該情報を表示部107に表示して(S208)、一連の処理を終了する。
【0103】
なお、本実施形態においては、製造内容データ取得部101、検査内容データ取得部102、検査結果データ取得部103が、生産関連データ取得手段に相当する。また、最適製造条件算出部104、最適検査基準算出部105が、最適値算出手段に相当する。また、各判定部212,312、412、222、322、422、432が、最適値採用判定手段に相当する。また、製造条件設定部213、313、413、及び、検査基準設定部223、323、423、433、が最適値設定手段に相当する。
【0104】
上述のような構成を有する生産設備管理システム1によれば、生産ラインに配置された製造装置及び検査装置について、最適な製造条件及び検査基準を算出するとともに、最適化された製造条件及び検査基準を自動的に設定することができる。また、その際に、最適化された製造条件及び検査基準を採用することが適切か否かを自動的に判定し、これを採用することが不適切である場合には、最適化された製造条件及び検査基準を採用することを却下しつつ、採用することが適切である場合には、自動的に当該製造条件及び検査基準を各装置に反映させることができる。このため、製造装置における製造条件、検査装置における検査基準、の最適化を自動で行うことができ、生産設備のメンテナンス及び品質管理の効率化に大きく寄与することができる。
【0105】
<変形例>
なお、上記の実施形態では、各製造装置及び各検査装置が、判定部と設定部を備える構成であったが、必ずしもこのような構成とする必要はない。
図6は、実施形態1の変形例に係る生産設備管理システム2の概略構成を示すブロック図である。なお、本変形例に係る生産設備管理システム2は多くの構成を生産設備管理システム1と共通にしていることから、同様の構成(機能)については、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0106】
図6に示すように、生産設備管理システム2は、管理装置11が、最適製造条件採用可否判定部114、製造条件設定部124、最適検査基準採用可否判定部115、検査基準設定部125を備えている点において、生産設備管理システム1と異なっている。
【0107】
最適製造条件採用可否判定部114は、最適製造条件算出部104から、最適製造条件及び、当該製造条件を算出する際の前提となった製造条件を特定する情報を取得するとともに、各製造装置X1、X2、X3から、それぞれの装置で現在採用されている製造条件を特定する情報を取得する。そして、これらの情報を照合することで、最適製造条件算出部104が算出した最適製造条件を、対象の製造装置における新たな製造条件として採用してもよいか否かを判定する。判定の方法については従来説明したものと同様であるため説明は省略する。
【0108】
製造条件設定部124は、最適製造条件採用可否判定部114が、最適製造条件を対象の製造装置における新たな製造条件として採用して良いと判定した場合に、当該最適製造条件を対象となる製造装置に反映させる。ここで、反映の方法は、例えば、通信プロトコルで製造装置に対して最適製造条件の情報(変更箇所の指示のみの場合を含む)を送信するのであってもよいし、通信ネットワーク上の共有フォルダに、最適製造条件の情報を格納することによって実現するのであってもよい。
【0109】
また、最適検査基準採用可否判定部115は、最適検査基準算出部105から、最適検査基準及び、当該検査基準を算出する際の前提となった検査条件を特定する情報を取得するとともに、各検査装置Y1、Y2、Y3、Y4から、それぞれの装置で現在採用されている検査条件を特定する情報を取得する。そして、これらの情報を照合することで、最適検査基準算出部105が算出した最適検査基準を、対象の検査装置における新たな検査基準として採用してもよいか否かを判定する。判定の方法については従来説明したものと同様であるため説明は省略する。
【0110】
検査基準設定部125は、最適検査基準採用可否判定部115が、最適検査基準を対象の検査装置における新たな検査基準として採用して良いと判定した場合に、当該最適検査基準を対象となる検査装置に反映させる。ここで、反映の方法は、例えば、通信プロトコルで検査装置に対して最適検査基準の情報(変更箇所の指示のみの場合を含む)を送信するのであってもよいし、通信ネットワーク上の共有フォルダに、最適基準の情報を格納することによって実現するのであってもよい。
【0111】
以上のような変形例の構成であれば、最適な製造条件・検査基準を各装置に反映してもよいか否かの判定、及び、最適値の設定処理を、管理装置11で完結して行うことが可能になる。
【0112】
<その他>
上記の実施形態の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、製造装置の製造条件、検査装置の検査基準、のいずれもが最適化の対象であったが、このうちのいずれかの機能のみを備える管理システムとしてもよい。
【0113】
また、上記の各例では、現行の生産条件と、最適値算出の前提となった生産条件が同一か否かを、プログラムのレビジョンが同一か否かによって判定していたが、それ以外の方法でこれを判定するのであってもよい。例えば、プログラムのレビジョンは更新されているものの、最適値が適用されることで変更が生じる項目に係る内容について、現行の条件と最適値算出の前提となった条件が同一である場合には、現行の生産条件と最適値算出の前提となった生産条件が同一であると判定してもよい。
【0114】
上記実施例では、現行の製造条件と、最適値算出の前提となった製造条件が同一である場合に、算出された最適値を製造装置における新たな製造条件として採用することを可、
とするものであったが、判定条件はこれに限られるものではない。例えば、最適製造条件の採用可否判定の際に、最適値算出の前提となった製造条件及び検査条件と、現行の製造条件及び検査条件がともに同一である場合に、算出された製造条件を新たな製造条件として採用することを可と判定するのであってもよい。最適検査基準の採用可否判定についても同様である。
【0115】
また、上記実施形態では、部品実装基板の生産ラインにおける製造装置、検査装置を例として説明したが、これ以外の製品の生産設備に対しても本発明は適用可能である。
【0116】
<付記>
本発明に係る一の態様は、
製品の生産設備(91;X1;X2;X3;92;Y1;Y2;Y3;Y4)の管理システム(9;1;2)であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得手段(931;101;932;102;933;103)と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出手段(934;104;105)と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定手段(922;212;312;412;222;322;422;432;114;115)と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定手段(923;213;313;413;223;323;423;433;124;125)と、
を有しており、
前記最適値採用判定手段は、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理システムである。
【0117】
また本発明の他の一の態様は、
製品の生産設備(91;X1;X2;X3;92;Y1;Y2;Y3;Y4)の管理装置(11)であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連データ取得手段(101;102;103)と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出手段(104;105)と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定手段(114;115)と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定手段(124;125)と、
を有しており、
前記最適値採用判定手段は、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理装置。
【0118】
また、本発明の他の一の態様は、
製品の生産設備の管理方法であって、
前記製品の生産に係る生産条件を含む情報である生産関連データを取得する生産関連デ
ータ取得ステップ(S101;S201;S102;S202;S103;S203)と、
前記生産関連データに基づいて、前記製品の生産に係る最適な前記生産条件である最適生産条件を算出する最適値算出ステップ(S104;S204)と、
前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することの可否を判定する最適値採用判定ステップ(S105;S205)と、
所定の条件に従って、前記生産設備に前記最適生産条件を設定する処理を実行する最適値設定ステップ(S106;S206)と、
を有しており
前記最適値採用判定ステップにおいて、
前記判定の際に現に採用されている前記生産条件と前記最適値算出手段が前記最適生産条件の算出の前提とした前記生産条件とが同一である場合に、前記最適生産条件を前記生産設備における新たな前記生産条件として採用することを可と判定する、管理方法である。
【符号の説明】
【0119】
1、2、9・・・生産設備管理システム
10、11、93・・・管理装置
91、X2・・・マウンタ
92、Y2・・・マウント検査装置
X1・・・はんだ印刷装置
X3・・・リフロー炉
Y1・・・はんだ印刷検査装置
Y3・・・外観検査装置
Y4・・・X線検査装置