(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3581 20140101AFI20240509BHJP
【FI】
G01N21/3581
(21)【出願番号】P 2021058308
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】岡田 修平
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247712(JP,A)
【文献】特開2016-114572(JP,A)
【文献】国際公開第2018/110481(WO,A1)
【文献】特開2016-075618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00ーG01N 21/83
G01N 33/48ーG01N 33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象に電磁波を照射する発生器と、
前記測定対象に含まれる物質が前記測定対象への異物の浸入によって不安定構造を有する第1物質から安定構造を有する第2物質へと構造転移することで変化する前記測定対象の分光スペクトルの情報を含む前記電磁波を受信する受信器と、
前記受信器により受信された前記電磁波に基づいて実測の前記分光スペクトルを取得し、取得された実測の前記分光スペクトルに基づいて前記第1物質と前記第2物質との間の比率情報を算出し、前記比率情報に基づいて前記異物の浸入に関する診断情報を生成する制御部と、
を備
え、
前記物質は炭酸カルシウムを含み、
前記第1物質は、ヴァテライトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含み、
前記第2物質は、カルサイトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含む、
測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記分光スペクトルを算出するために必要となる基準データ及びフィッティングパラメータと、前記フィッティングパラメータの初期値と、に基づいて、取得された実測の前記分光スペクトルに対するフィッティング演算処理を実行することで、前記第1物質に対する前記第2物質の比率を比率情報として算出する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記比率情報に含まれるパラメータが増大したと判定すると、前記測定対象に前記異物が浸入したことを示す履歴情報を前記診断情報として生成する、
請求項1又は2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記比率情報に含まれるパラメータが閾値に到達したと判定すると、前記異物の浸入により前記測定対象が劣化したことを示す通知情報を前記診断情報として生成する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記比率情報に基づいて、前記異物が前記測定対象に浸入していた時間及び前記異物が前記測定対象に浸入していたときの前記異物の温度のいずれかを前記診断情報として算出する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項6】
前記測定装置を移動させて前記測定対象に対する前記電磁波の照射位置を走査可能にする可動部を備え、
前記制御部は、前記可動部に基づく前記測定装置の移動に伴って、前記測定対象における前記比率情報の空間分布を前記診断情報として生成する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項7】
前記比率情報は、前記測定対象における前記第1物質に対する前記第2物質の比率及び前記分光スペクトルのピーク強度の少なくとも一方を含む、
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項8】
前記分光スペクトルは、前記測定対象の反射スペクトル及び透過スペクトルの少なくとも一方を含む、
請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の測定装置。
【請求項9】
測定対象に電磁波を照射するステップと、
前記測定対象に含まれる物質が前記測定対象への異物の浸入によって不安定構造を有する第1物質から安定構造を有する第2物質へと構造転移することで変化する前記測定対象の分光スペクトルの情報を含む前記電磁波を受信するステップと、
前記電磁波を受信するステップにおいて受信された前記電磁波に基づいて実測の前記分光スペクトルを取得するステップと、
取得された実測の前記分光スペクトルに基づいて前記第1物質と前記第2物質との間の比率情報を算出するステップと、
算出された前記比率情報に基づいて前記異物の浸入に関する診断情報を生成するステップと、
を含
み、
前記物質は炭酸カルシウムを含み、
前記第1物質は、ヴァテライトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含み、
前記第2物質は、カルサイトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含む、
測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象の界面付近及び測定対象の内部における測定対象の状態を非破壊で測定する技術が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1の層と第2の層との間の境界面の特性を求めるシステムが開示されている。このようなシステムは、試料に電磁放射線を出力する送信器と、試料によって反射された電磁放射線又は試料を透過した電磁放射線を受け取る受信器と、データ収集デバイスとを含む。システムは、試料から反射された電磁放射線又は試料を透過した電磁放射線を表す波形データに基づいて、第1の層と第2の層との間の接着強度を含む材料特性を求める。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来技術は、物理的な欠陥又は破壊が生じた後で有効であり、測定対象におけるわずかな化学的変化を検出することが困難であった。例えば、接着剤などの測定対象に水分などの異物が浸入すると接着剤の界面における水素結合が不可逆的に切断され、接着剤を乾燥しても再結合が生じない。測定対象におけるこのようなわずかな化学的変化を間接的に検出するために、測定対象に異物が浸入したことを精度良く検出することが要求される。
【0006】
本開示は、測定対象に異物が浸入したことを精度良く検出することが可能な測定装置及び測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
幾つかの実施形態に係る測定装置は、異物の浸入によって不安定構造を有する第1物質から安定構造を有する第2物質へと構造転移する物質を含む測定対象に電磁波を照射する発生器と、前記測定対象の分光スペクトルの情報を含む前記電磁波を受信する受信器と、前記受信器により受信された前記電磁波に基づいて実測の前記分光スペクトルを取得し、取得された実測の前記分光スペクトルに基づいて前記第1物質と前記第2物質との間の比率情報を算出し、前記比率情報に基づいて前記異物の浸入に関する診断情報を生成する制御部と、を備える。
【0008】
これにより、測定対象に異物が浸入したことを精度良く検出することが可能である。例えば、測定装置は、取得された実測の分光スペクトルに基づいて第1物質と第2物質との間の比率情報を算出し、当該比率情報に基づいて異物の浸入に関する診断情報を生成する。例えば、測定装置は、マーカーとしてヴァテライトがあらかじめ添加されている接着剤などを測定対象とし、水分によって生じるヴァテライトからカルサイトへの不可逆的な結晶構造転移をテラヘルツ分光にて観測する。
【0009】
これにより、測定装置は、接着剤への水分浸入履歴を検出することが可能である。すなわち、ユーザは、過去に測定対象へ異物が浸入したか否かを非破壊及び非接触での測定に基づいて確認することができる。これにより、外部から接着剤に水が浸入し、その後乾燥しても、水分による接着剤の劣化を検出することが可能である。測定装置は、測定対象におけるわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが可能である。例えば、接着剤などの測定対象に水分などの異物が浸入すると接着剤の界面における水素結合が不可逆的に切断され、接着剤を乾燥しても再結合が生じない。測定装置は、測定対象におけるこのようなわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが可能である。
【0010】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記分光スペクトルを算出するために必要となる基準データ及びフィッティングパラメータと、前記フィッティングパラメータの初期値と、に基づいて、取得された実測の前記分光スペクトルに対するフィッティング演算処理を実行することで、前記第1物質に対する前記第2物質の比率を比率情報として算出してもよい。
【0011】
これにより、例えば第1被着体と第2被着体とが測定対象である接着剤を間に挟んだ状態で当該接着剤により接着されている場合、第1被着体において測定領域に隣接する部分の厚みが未知であっても、第1被着体の厚みもフィッティングパラメータとすることで第1被着体の厚みと共に上記の比率を精度良く算出可能である。例えば、第1被着体及び第2被着体が測定対象により接着された状態で長期間にわたり使用された結果、第1被着体が削れたりする可能性もある。このように第1被着体の使用開始当初から第1被着体の厚みが変化しているような場合であっても、測定装置は、第1被着体の厚みと共に上記の比率を精度良く算出可能である。
【0012】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記比率情報に含まれるパラメータが増大したと判定すると、前記測定対象に前記異物が浸入したことを示す履歴情報を前記診断情報として生成してもよい。これにより、ユーザは、例えば端末装置を介してこのような履歴情報を確認可能である。ユーザは、このような履歴情報を端末装置などにより確認することで、測定対象に異物が浸入したことを容易に把握可能である。
【0013】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記比率情報に含まれるパラメータが閾値に到達したと判定すると、前記異物の浸入により前記測定対象が劣化したことを示す通知情報を前記診断情報として生成してもよい。これにより、ユーザは、例えば端末装置を介してこのような通知情報を確認可能である。ユーザは、このような通知情報を端末装置などにより警告として確認することで、異物の浸入により測定対象が許容範囲を超えて劣化したことを容易に把握可能である。
【0014】
一実施形態における測定装置では、前記制御部は、前記比率情報に基づいて、前記異物が前記測定対象に浸入していた時間及び前記異物が前記測定対象に浸入していたときの前記異物の温度のいずれかを前記診断情報として算出してもよい。これにより、ユーザは、例えば端末装置を介してこれらの情報を確認可能である。ユーザは、これらの情報を端末装置などにより確認することで、測定対象への異物の浸入に関するパラメータを容易に把握可能である。
【0015】
一実施形態における測定装置は、前記測定装置を移動させて前記測定対象に対する前記電磁波の照射位置を走査可能にする可動部を備え、前記制御部は、前記可動部に基づく前記測定装置の移動に伴って、前記測定対象における前記比率情報の空間分布を前記診断情報として生成してもよい。ユーザは、このような空間分布を端末装置などにより測定結果として確認することで、測定対象における広範な部分に対して異物の浸入による測定対象の劣化を容易に把握可能である。
【0016】
一実施形態における測定装置では、前記比率情報は、前記測定対象における前記第1物質に対する前記第2物質の比率及び前記分光スペクトルのピーク強度の少なくとも一方を含んでもよい。測定装置は、比率情報として第1物質に対する第2物質の比率を算出することで、診断情報を精度良く生成することが可能である。測定装置は、比率情報として分光スペクトルのピーク強度を算出することで、例えばフィッティング演算処理などによって第1物質に対する第2物質の比率を算出するときと比較して計算負荷を低減させることが可能である。
【0017】
一実施形態における測定装置では、前記物質は炭酸カルシウムを含み、前記第1物質は、ヴァテライトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含み、前記第2物質は、カルサイトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含んでもよい。これにより、測定装置は、3.27THz近辺で吸収ピークの有無に顕著な差が表れる2種類の結晶構造を取り得る炭酸カルシウムを用いて、診断情報を精度良く生成することが可能である。
【0018】
一実施形態における測定装置では、前記分光スペクトルは、前記測定対象の反射スペクトル及び透過スペクトルの少なくとも一方を含んでもよい。
【0019】
例えば、分光スペクトルが測定対象の反射スペクトルを含むことで、測定装置は、第1被着体と第2被着体とが測定対象である接着剤を間に挟んだ状態で当該接着剤により接着されている場合に、測定対象における第1被着体側の界面近傍での異物の浸入履歴を容易に検出可能である。例えば、測定装置は、接着剤の界面における水素結合の不可逆的な切断などのわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが容易である。
【0020】
例えば、分光スペクトルが測定対象の透過スペクトルを含むことで、測定装置は、測定対象の厚みに沿った測定領域全体の平均的な情報として異物の浸入履歴を容易に検出可能である。
【0021】
例えば、測定装置が測定対象の反射スペクトル及び透過スペクトルの両方を取得することで、ユーザは、第1被着体と第2被着体とが測定対象である接着剤を間に挟んだ状態で当該接着剤により接着されている場合に、第1被着体側の界面及び第2被着体側の界面のどちらから測定対象に異物が浸入したかを把握することが可能である。例えば、測定対象の反射スペクトルに基づいて異物の浸入履歴が検出されなかった一方で、測定対象の透過スペクトルに基づいて異物の浸入履歴が検出された場合、ユーザは、第2被着体側の界面から測定対象に異物が浸入したと判断することが可能である。
【0022】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、異物の浸入によって不安定構造を有する第1物質から安定構造を有する第2物質へと構造転移する物質を含む測定対象に電磁波を照射するステップと、前記測定対象の分光スペクトルの情報を含む前記電磁波を受信するステップと、前記電磁波を受信するステップにおいて受信された前記電磁波に基づいて実測の前記分光スペクトルを取得するステップと、取得された実測の前記分光スペクトルに基づいて前記第1物質と前記第2物質との間の比率情報を算出するステップと、算出された前記比率情報に基づいて前記異物の浸入に関する診断情報を生成するステップと、を含む。
【0023】
これにより、測定対象に異物が浸入したことを精度良く検出することが可能である。例えば、取得された実測の分光スペクトルに基づいて第1物質と第2物質との間の比率情報が算出され、当該比率情報に基づいて異物の浸入に関する診断情報が生成される。例えば、マーカーとしてヴァテライトがあらかじめ添加されている接着剤などを測定対象とし、水分によって生じるヴァテライトからカルサイトへの不可逆的な結晶構造転移がテラヘルツ分光にて観測される。
【0024】
これにより、接着剤への水分浸入履歴を検出することが可能である。すなわち、ユーザは、過去に測定対象へ異物が浸入したか否かを非破壊及び非接触での測定に基づいて確認することができる。これにより、外部から接着剤に水が浸入し、その後乾燥しても、水分による接着剤の劣化を検出することが可能である。測定対象におけるわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが可能である。例えば、接着剤などの測定対象に水分などの異物が浸入すると接着剤の界面における水素結合が不可逆的に切断され、接着剤を乾燥しても再結合が生じない。測定方法では、測定対象におけるこのようなわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが可能である。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、測定対象に異物が浸入したことを精度良く検出することが可能な測定装置及び測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る測定装置を含む測定システムの概略構成を示す模式図である。
【
図2】炭酸カルシウムの透過特性の実験結果の一例を示すグラフ図である。
【
図3】
図1の測定装置の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図4】
図1の測定装置の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図1の測定装置の動作の第3例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図1の測定装置の動作の第4例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図1の測定装置の動作の第5例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図1の測定装置の動作の第6例を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本開示の第2実施形態に係る測定装置を含む測定システムの概略構成を示す模式図である。
【
図10】
図9の測定装置の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
【
図11】
図9の測定装置の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、添付図面を参照しながら本開示の一実施形態について主に説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本開示の第1実施形態に係る測定装置10を含む測定システム1の概略構成を示す模式図である。測定装置10は、異物の浸入によって不安定構造を有する第1物質から安定構造を有する第2物質へと構造転移する物質を含む測定対象Mに対して、第1物質と第2物質との間の比率情報を算出する。
【0029】
本明細書において、「物質」は例えば炭酸カルシウムを含む。「第1物質」は、例えばヴァテライトの不安定な結晶構造を有する炭酸カルシウムを含む。「第2物質」は、例えばカルサイトの安定な結晶構造を有する炭酸カルシウムを含む。「測定対象M」は、例えば第1被着体Aと第2被着体Bとを接着する接着剤を含む。「第1物質と第2物質との間の比率情報」は、例えば、測定対象Mにおける第1物質に対する第2物質の比率、及び後述する分光スペクトルのピーク強度の少なくとも一方を含む。なお、
図2などを参照して後述するとおり、分光スペクトルのピーク強度は、第1物質に対する第2物質の比率に略依存する。したがって、当該ピーク強度も、第1物質に対する第2物質の比率に代えて、又は加えて第1物質と第2物質との間の比率情報に含めることが可能である。「異物」は、例えば、水及び水蒸気などを含む。
【0030】
例えば、測定対象Mの材料に、第1物質を所定の割合で含有した添加剤が意図的にドープされる。このような添加剤は、例えば、接着剤としての測定対象Mの接着機能に影響を与えない任意の添加剤を含む。このような添加剤は、測定に必要な第1物質を所定の割合で測定対象Mに含有させるためのものであり、意図せず混入する異物とは異なる物質によって構成される。例えば、添加剤は、上述した炭酸カルシウムを含む。
【0031】
測定装置10は、マーカーとしてヴァテライトなどの第1物質があらかじめ添加されている接着剤などを測定対象Mとし、水などの異物が外部から測定対象Mに浸入するような場合に利用される。例えば、測定装置10は、このような場合に水分によって生じるヴァテライトからカルサイトへの不可逆的な結晶構造転移をテラヘルツ分光にて観測する。
【0032】
測定システム1は、測定装置10に加えて、測定装置10と通信可能に接続されている端末装置20を有する。測定装置10は、制御モジュール11と測定モジュール12とを有する。
【0033】
端末装置20は、例えば、PC(Personal Computer)又はスマートフォンなどの任意の汎用の電子機器を含む。これに限定されず、端末装置20は、1つ又は互いに通信可能な複数のサーバ装置であってもよいし、測定システム1に専用の他の電子機器であってもよい。
【0034】
測定モジュール12は、電磁波を用いて測定対象Mの状態を測定するモジュールを含む。測定モジュール12は、発生器121と、受信器122と、可動部123と、を有する。
【0035】
発生器121は、例えばテラヘルツ領域内の周波数を有する電磁波を測定対象Mに照射可能な任意の電磁波発生源を有する。受信器122は、発生器121により測定対象Mに照射された電磁波に基づく例えばテラヘルツ帯の電磁波であって、測定対象Mの分光スペクトルの情報を含む電磁波を受信可能な任意の受信器を含む。
【0036】
本明細書において、発生器121から照射される電磁波は、例えば30THz以下のテラヘルツ領域内の周波数を有する。例えば、当該電磁波は、1~5THzのテラヘルツ領域内の周波数を有する。当該電磁波は、後述するカルサイトの吸収ピークの周波数近辺、例えば3.27±1THzのテラヘルツ領域を含む周波数を有する。第1実施形態において、「分光スペクトル」は、例えば測定対象Mの反射スペクトルを含む。例えば、分光スペクトルは、第1被着体Aと測定対象Mとの間の界面及び測定対象Mにおいて第1被着体Aに近接する部分を含む測定領域Rでの反射スペクトルを含む。
【0037】
可動部123は、測定装置10の可搬性を向上させることが可能な任意の可動構造を含む。例えば、可動部123は、測定モジュール12に取り付けられているタイヤを含む。測定モジュール12は、可動部123を構成するタイヤによって第1被着体Aの表面上を移動可能である。可動部123は、測定装置10を移動させて測定対象Mに対する発生器121の電磁波の照射位置を走査可能にする。
【0038】
制御モジュール11は、データ処理部111、演算部112、コマンド解析部113、スペクトル解析部114、及び発生器・受信器制御部115を有する。データ処理部111、演算部112、コマンド解析部113、スペクトル解析部114、及び発生器・受信器制御部115の少なくとも一部は、まとめて1つの制御部116を構成してもよい。制御モジュール11は、制御部116に加えて、記憶部117を有する。
【0039】
制御部116は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部116は、測定装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、測定装置10全体の動作を制御する。
【0040】
記憶部117は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含む任意の記憶モジュールを含む。記憶部117は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部117は、測定装置10の動作に用いられる任意の情報及び測定装置10の動作の結果得られた任意の情報などを記憶する。
【0041】
例えば、記憶部117は、比率情報を算出するために必要となる後述の基準データを記憶する。例えば、記憶部117は、測定モジュール12を用いて取得された、測定対象Mの分光スペクトルの情報を記憶する。例えば、記憶部117は、制御部116により算出された比率情報に関する情報を記憶する。例えば、記憶部117は、システムプログラム及びアプリケーションプログラムなどを記憶してもよい。記憶部117は、制御モジュール11に内蔵されているものに限定されず、USB(Universal Serial Bus)などのデジタル入出力ポートによって接続されている外付け型の記憶モジュールを含んでもよい。
【0042】
例えば、測定装置10は、測定対象Mにおいて実際に測定を行う接着界面箇所の直上に位置するように、ユーザによって第1被着体A上に配置される。端末装置20は、ユーザからの入力操作を受け付けて、測定実行命令などを含むコマンドを測定装置10に送信する。
【0043】
測定装置10のデータ処理部111は、端末装置20から送信されたコマンドを受信して、コマンド解析部113に出力する。コマンド解析部113は、端末装置20から送信されたコマンドの内容を解析する。コマンドパケット内には、測定実行命令と共に初期設定データが格納される。このような初期設定データは、例えば記憶部117に格納される。本明細書において、「初期設定データ」は、例えば基準データ、フィッティングパラメータ、及び各フィッティングパラメータの初期値を含む。加えて、初期設定データは、例えばマーカーとしてヴァテライトなどの第1物質があらかじめ測定対象Mに添加された直後であって、水などの異物が外部から測定対象Mに浸入していない状態での測定対象Mにおける第1物質に対する第2物質の比率、及び後述する分光スペクトルのピーク強度の少なくとも一方を初期値として含んでもよい。
【0044】
第1実施形態において、「基準データ」は、例えば、第1被着体Aの複素屈折率の周波数依存性及び添加剤が添加されていない状態での測定対象Mの複素屈折率の周波数依存性を含む。これらに加えて、基準データは、第1物質の複素屈折率の周波数依存性及び第2物質の複素屈折率の周波数依存性を含む。第1実施形態において、「フィッティングパラメータ」は、例えば第1被着体Aの厚み、第1物質に対する第2物質の比率、及び測定対象Mにおける添加剤の濃度を含む。
【0045】
本明細書において、「第1物質に対する第2物質の比率」は、例えば添加剤における第1物質の割合及び第2物質の割合を足し合わせて100%としたときの第2物質の割合を含んでもよい。これに限定されず、第1物質に対する第2物質の比率は、例えば添加剤における第2物質の量を第1物質の量で除算したときの値を含んでもよい。このような比率は、絶対値であってもよいし、例えば当初の値が不明であるときに当初の値からどの程度変化したかを示す相対値であってもよい。
【0046】
測定装置10の発生器・受信器制御部115は、発生器121の位置及び角度を所定の発生条件が満たされるように自動調整する。第1実施形態において、「所定の発生条件」は、例えば、発生器121により照射された電磁波が測定領域Rに対して任意の入射角で入射する条件を含む。例えば、入射角は、ゼロ度に近い小さい角度であってもよいし、ゼロ度であってもよい。すなわち、発生器121は、測定領域Rに対して略垂直入射又は垂直入射とみなせる測定が可能な位置及び角度に設定されてもよい。以上に限定されず、発生器・受信器制御部115は、端末装置20を用いてユーザにより入力され、端末装置20から送信された設定値に基づいて、発生器121の位置及び角度を調整してもよい。
【0047】
測定装置10の発生器・受信器制御部115は、受信器122の位置及び角度を所定の受信条件が満たされるように自動調整する。第1実施形態において、「所定の受信条件」は、例えば、測定領域Rにおいて任意の反射角で反射した電磁波が受信器122に入射する条件を含む。例えば、反射角は、上記の入射角と一致し、ゼロ度に近い小さい角度であってもよいし、ゼロ度であってもよい。すなわち、受信器122は、測定領域Rに対して略垂直反射又は垂直反射とみなせる測定が可能な位置及び角度に設定されてもよい。以上に限定されず、発生器・受信器制御部115は、端末装置20を用いてユーザにより入力され、端末装置20から送信された設定値に基づいて、受信器122の位置及び角度を調整してもよい。
【0048】
発生器・受信器制御部115は、発生器121を制御して、テラヘルツ帯の電磁波を測定領域Rに向けて照射させる。例えば、発生器・受信器制御部115は、時間領域分光技術(Time-Domain Spectroscopy:TDS)を用いて、10psから数10ps程度の短パルスの電磁波を発生器121により出力させる。このとき、発生器121は、任意の偏光を有する電磁波を出力してもよい。例えば、発生器121は、P偏光成分を有する直線偏光の電磁波を出力してもよいし、S偏光成分を有する直線偏光の電磁波を出力してもよい。
【0049】
発生器・受信器制御部115は、時系列で並んだパルス信号を受信器122から取得する。例えば、発生器・受信器制御部115は、テラヘルツ帯の電磁波であって、TDSを用いた上記の短パルスの電磁波を受信器122により受信させる。このとき、受信器122は、発生器121から出力される電磁波に合わせて任意の偏光を有する電磁波を受信してもよい。例えば、受信器122は、P偏光成分を有する直線偏光の電磁波を受信してもよいし、S偏光成分を有する直線偏光の電磁波を受信してもよい。
【0050】
発生器・受信器制御部115は、取得されたパルス信号を、スペクトル解析部114に出力する。スペクトル解析部114は、パルス信号に基づいて、例えば時間波形に対するフーリエ変換処理を実行することで、周波数領域での分光スペクトルを算出する。例えば、受信器122から出力される時系列で並んだパルス信号は、第1被着体Aの表面、測定領域R、測定対象Mと第2被着体Bとの間の界面、及び第2被着体Bの裏面などで反射波として反射した短パルスの電磁波に対応する。スペクトル解析部114は、測定領域Rでの反射に対応する時間上に位置するパルス信号を抽出して上記の方法により分光スペクトルを算出してもよい。
【0051】
演算部112は、スペクトル解析部114において算出された分光スペクトルを用いて、後述のとおり第1物質と第2物質との間の比率情報を算出する。演算部112は、算出された比率情報に基づいて異物の浸入に関する診断情報を生成する。本明細書において、「診断情報」は、例えば測定対象Mに異物が浸入したことを示す履歴情報を含む。これに限定されず、診断情報は、例えば異物の浸入により測定対象Mが劣化したことを示す通知情報を含んでもよい。診断情報は、例えば異物が測定対象Mに浸入していた時間及び異物が測定対象Mに浸入していたときの異物の温度のいずれかを含んでもよい。診断情報は、例えば測定対象Mにおける比率情報の空間分布を含んでもよい。
【0052】
データ処理部111は、演算部112による算出結果を端末装置20に送信する。端末装置20は、受信された算出結果、すなわち診断情報をユーザに対して表示する。
【0053】
制御モジュール11は、走査範囲が指定されている場合、可動部123を構成するタイヤを用いて測定モジュール12を移動させながら、各測定ポイントで同様の測定処理を実行する。
【0054】
図2は、炭酸カルシウムの透過特性の実験結果の一例を示すグラフ図である。
図2を参照しながら、不安定状態のヴァテライトが水などの異物によって徐々に安定状態のカルサイトへ結晶構造転移する様子について主に説明する。
【0055】
炭酸カルシウムの結晶構造は、安定状態のカルサイト、準安定状態のアラゴナイト、及び不安定状態のヴァテライトの3種類が知られている。ヴァテライトは自然界にはほとんど存在しないが、人工的に化学合成によって得ることが可能である。
【0056】
図2に示す実験結果において、点線は、例えば収率7割弱のヴァテライト及び残る割合のカルサイトを含む試料の透過スペクトルを示す。点線は、常温にて、当該試料を水浸前に測定した結果を示す。点線により示された実験結果から、ヴァテライトについては、3.27THz近辺に顕著な吸収ピークが存在しないことが明らかとなった。
【0057】
一方で、実線は、当該試料を24時間常温で水浸させた後に十分に常温で乾燥させてから当該試料の透過スペクトルを測定したときの結果を示す。カルサイトの結晶構造を有する炭酸カルシウムは3.27THzに顕著な吸収ピークを有することが知られている。
図2の実線における3.27THzの吸収ピークの強度から、水との接触によってほぼ全てのヴァテライトがカルサイトに結晶構造転移していることがわかる。
【0058】
カルサイトは安定な結晶構造であり、特殊な環境下に置かれない限りその結晶構造が維持される。したがって、
図2に示す実験結果は、3.27THz近辺の分光スペクトルを用いることで、演算部112による診断情報の生成が可能であることを示している。
【0059】
図3は、
図1の測定装置10の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
図3を参照しながら、測定装置10の制御部116により実行される比率情報の算出処理に関する基本的なフローの一例を説明する。
【0060】
前提条件として、測定対象Mには添加剤として炭酸カルシウムなどの物質が適量含まれているとする。測定対象Mを第1被着体A及び第2被着体Bに接着させる作業の段階では、当該物質は全て、又はその大部分が第1物質のような不安定構造を有する。第1物質は異物に触れると第2物質へ不可逆的に構造転移する。例えば、テラヘルツ分光によって得られる第2物質の吸収ピークとその近傍をモニタすることによって、ユーザは、測定対象Mに異物が浸入したことを示す履歴情報を把握可能である。
【0061】
ステップS100では、制御部116は、初期設定データを端末装置20から取得し、記憶部117に格納する。
【0062】
ステップS101では、制御部116は、発生器121の位置及び角度を所定の発生条件が満たされるように自動調整する。制御部116は、受信器122の位置及び角度を所定の受信条件が満たされるように自動調整する。
【0063】
ステップS102では、制御部116は、ステップS101において自動調整された発生器121を用いて、測定領域Rに電磁波を照射する。
【0064】
ステップS103では、制御部116は、ステップS102において照射された電磁波に基づいて、測定対象Mの分光スペクトルの情報を含む電磁波を、受信器122を用いて受信する。
【0065】
ステップS104では、制御部116は、ステップS103において受信器122により受信された電磁波に基づいて測定対象Mの反射スペクトルを実測の分光スペクトルとして取得する。
【0066】
ステップS105では、制御部116は、ステップS104において取得された実測の反射スペクトルに基づいて第1物質と第2物質との間の比率情報を算出する。
【0067】
ステップS106では、制御部116は、ステップS105において算出された比率情報に基づいて異物の浸入に関する診断情報を生成する。制御部116は、生成された診断情報を端末装置20に送信する。
【0068】
図4は、
図1の測定装置10の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
図4に示すフローチャートは、
図3のステップS105における算出処理のより具体的なフローの一例を示す。
図4を参照しながら、
図3のステップS105における算出処理をより詳細に説明する。
【0069】
ステップS105の比率情報を算出するステップにおいて、制御部116は、分光スペクトルを算出するために必要となる基準データ及びフィッティングパラメータと、フィッティングパラメータの初期値と、に基づいて、ステップS104において取得された実測の反射スペクトルに対するフィッティング演算処理を実行してもよい。これにより、制御部116は、第1物質に対する第2物質の比率を比率情報として算出してもよい。
【0070】
ステップS200では、制御部116は、初期設定データを読み込む。
【0071】
ステップS201では、制御部116は、ステップS200において読み込まれた初期設定データに基づいて、受信器122で観測される電磁波に基づく測定対象Mの反射スペクトルを算出する。より具体的には、制御部116は、所定の物理モデル式に基づいて測定対象Mの反射スペクトルを算出する。
【0072】
ステップS202では、制御部116は、ステップS201において算出された反射スペクトルと、
図3のステップS104において取得された実測の反射スペクトルとの誤差を算出する。例えば、制御部116は、全周波数点における最小二乗誤差を算出する。
【0073】
ステップS203では、制御部116は、ステップS202の算出結果に基づいて、ステップS200において読み込んだ各フィッティングパラメータの値を更新する。
【0074】
ステップS204では、制御部116は、ステップS202において算出された誤差が設定範囲以内にあるか否かを判定する。例えば、制御部116は、全周波数点における最小二乗誤差が設定範囲以内にあるか否かを判定する。制御部116は、誤差が設定範囲以内にあると判定すると、処理を終了する。制御部116は、誤差が設定範囲以内にないと判定すると、ステップS201の処理を再度実行する。
【0075】
以上のように、制御部116は、反射スペクトルの実測データと物理モデル式とに基づいて、繰り返し演算によるフィッティングなどによってフィッティングパラメータを算出する。制御部116は、各繰り返し演算にて、実測データと物理モデル式との一致度を確認し、十分収束していると判定すればフィッティング演算処理を終了する。
【0076】
図5は、
図1の測定装置10の動作の第3例を説明するためのフローチャートである。
図5に示すフローチャートは、
図3のステップS106における処理のより具体的なフローの一例を示す。
図5を参照しながら、
図3のステップS106における処理をより詳細に説明する。例えば、制御部116は、比率情報に含まれるパラメータが増大したと判定すると、測定対象Mに異物が浸入したことを示す履歴情報を診断情報として生成してもよい。以下では、比率情報に含まれるパラメータとして第1物質に対する第2物質の比率を例に挙げて説明するが、同様の説明が分光スペクトルのピーク強度にも当てはまる。
【0077】
ステップS300では、制御部116は、ステップS105において算出された第1物質に対する第2物質の比率が増大したか否かを判定する。例えば、制御部116は、ステップS100において初期設定データとして記憶部117に格納された、水などの異物が外部から測定対象Mに浸入していない状態での測定対象Mにおける第1物質に対する第2物質の比率とステップS105において算出された比率とを比較することでこのような判定処理を実行してもよい。制御部116は、第1物質に対する第2物質の比率が増大したと判定すると、ステップS301の処理を実行する。制御部116は、第1物質に対する第2物質の比率が増大していない、すなわち第1物質に対する第2物質の比率が変化していないと判定すると、ステップS300の処理を再度実行する。
【0078】
ステップS301では、制御部116は、ステップS300において第1物質に対する第2物質の比率が増大したと判定すると、測定対象Mに異物が浸入したことを示す履歴情報を診断情報として生成する。
【0079】
図6は、
図1の測定装置10の動作の第4例を説明するためのフローチャートである。
図6に示すフローチャートは、
図3のステップS106における処理のより具体的なフローの一例を示す。
図6を参照しながら、
図3のステップS106における処理をより詳細に説明する。例えば、制御部116は、比率情報に含まれるパラメータが閾値に到達したと判定すると、異物の浸入により測定対象Mが劣化したことを示す通知情報を診断情報として生成してもよい。
【0080】
ステップS400では、制御部116は、ステップS105において算出された第1物質に対する第2物質の比率が第1閾値に到達したか否かを判定する。制御部116は、第1物質に対する第2物質の比率が第1閾値に到達したと判定すると、ステップS401の処理を実行する。制御部116は、第1物質に対する第2物質の比率が第1閾値に到達していないと判定すると、ステップS400の処理を再度実行する。
【0081】
ステップS401では、制御部116は、ステップS400において第1物質に対する第2物質の比率が第1閾値に到達したと判定すると、異物の浸入により測定対象Mが劣化したことを示す通知情報を診断情報として生成する。
【0082】
以上のような第1閾値は、例えば測定対象Mにおける第1物質に対する第2物質の比率と測定対象Mに浸入した異物の量及び測定対象Mの劣化度合いとを関連付ける実証データに基づいてユーザにより適宜定められてもよい。このとき、ユーザは、測定装置10の分解能、SN比、測定ばらつき、及び測定の再現性なども考慮して第1閾値を設定してもよい。
【0083】
図7は、
図1の測定装置10の動作の第5例を説明するためのフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図3のステップS106における処理のより具体的なフローの一例を示す。
図7を参照しながら、
図3のステップS106における処理をより詳細に説明する。例えば、制御部116は、比率情報に含まれるパラメータが閾値に到達したと判定すると、異物の浸入により測定対象Mが劣化したことを示す通知情報を診断情報として生成してもよい。
【0084】
ステップS500では、制御部116は、ステップS104において取得された分光スペクトルに基づいてステップS105において算出された分光スペクトルのピーク強度が第2閾値に到達したか否かを判定する。すなわち、制御部116は、ステップS105においてフィッティング演算処理を実行せずに、単に分光スペクトルのピーク強度のみを算出してもよい。例えば、制御部116は、ステップS104において取得された反射スペクトルにおける3.27THz近辺の吸収ピークの強度が第2閾値に到達したか否かを判定する。制御部116は、ピーク強度が第2閾値に到達したと判定すると、ステップS501の処理を実行する。制御部116は、ピーク強度が第2閾値に到達していないと判定すると、ステップS500の処理を再度実行する。
【0085】
ステップS501では、制御部116は、ステップS500においてピーク強度が第2閾値に到達したと判定すると、異物の浸入により測定対象Mが劣化したことを示す通知情報を診断情報として生成する。
【0086】
以上のような第2閾値は、例えば測定対象Mの分光スペクトルのピーク強度と測定対象Mに浸入した異物の量及び測定対象Mの劣化度合いとを関連付ける実証データに基づいてユーザにより適宜定められてもよい。このとき、ユーザは、測定装置10の分解能、SN比、測定ばらつき、及び測定の再現性なども考慮して第2閾値を設定してもよい。
【0087】
図8は、
図1の測定装置10の動作の第6例を説明するためのフローチャートである。
図8に示すフローチャートは、
図3のステップS106における処理のより具体的なフローの一例を示す。
図8を参照しながら、
図3のステップS106における処理をより詳細に説明する。例えば、制御部116は、比率情報に基づいて、異物が測定対象Mに浸入していた時間及び異物が測定対象Mに浸入していたときの異物の温度のいずれかを診断情報として算出してもよい。以下では、比率情報として第1物質に対する第2物質の比率を例に挙げて説明するが、同様の説明が分光スペクトルのピーク強度にも当てはまる。
【0088】
例えば、制御部116は、ステップS105において算出された第1物質に対する第2物質の比率に基づいて、異物が測定対象Mに浸入していた時間及び異物が測定対象Mに浸入していたときの異物の温度のいずれかを診断情報として算出する。例えば、ヴァテライトからカルサイトへの結晶構造転移の速度は、水温に依存することが知られている。したがって、制御部116は、ステップS105において算出された第1物質に対する第2物質の比率に基づいて、例えば水浸時間及び水浸水温のいずれか一方から他方を算出することが可能である。
【0089】
ステップS600では、制御部116は、異物が測定対象Mに浸入していた時間及び異物が測定対象Mに浸入していたときの異物の温度のいずれか一方を取得する。制御部116は、端末装置20を用いたユーザの入力によりこれらの情報を端末装置20から取得してもよい。
【0090】
ステップS601では、制御部116は、ステップS105において算出された第1物質に対する第2物質の比率とステップS600において取得された情報とに基づいて、他方を算出する。
【0091】
以上のような様々な診断情報に加えて、又は代えて、制御部116は、可動部123に基づく測定装置10の移動に伴って、測定対象Mにおける第1物質と第2物質との間の比率情報の空間分布を診断情報として生成してもよい。
【0092】
以上のような第1実施形態に係る測定装置10によれば、測定対象Mに異物が浸入したことを精度良く検出することが可能である。例えば、測定装置10は、取得された実測の分光スペクトルに基づいて第1物質と第2物質との間の比率情報を算出し、当該比率情報に基づいて異物の浸入に関する診断情報を生成する。例えば、測定装置10は、マーカーとしてヴァテライトがあらかじめ添加されている接着剤などを測定対象Mとし、水分によって生じるヴァテライトからカルサイトへの不可逆的な結晶構造転移をテラヘルツ分光にて観測する。
【0093】
これにより、測定装置10は、接着剤への水分浸入履歴を検出することが可能である。すなわち、ユーザは、過去に測定対象Mへ異物が浸入したか否かを非破壊及び非接触での測定に基づいて確認することができる。これにより、外部から接着剤に水が浸入し、その後乾燥しても、水分による接着剤の劣化を検出することが可能である。測定装置10は、測定対象Mにおけるわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが可能である。例えば、接着剤などの測定対象Mに水分などの異物が浸入すると接着剤の界面における水素結合が不可逆的に切断され、接着剤を乾燥しても再結合が生じない。測定装置10は、測定対象Mにおけるこのようなわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが可能である。
【0094】
測定装置10は、取得された実測の分光スペクトルに対するフィッティング演算処理を実行することで、第1物質に対する第2物質の比率を算出する。これにより、例えば第1被着体Aにおいて測定領域Rに隣接する部分の厚みが未知であっても、第1被着体Aの厚みもフィッティングパラメータとすることで第1被着体Aの厚みと共に上記の比率を精度良く算出可能である。例えば、第1被着体A及び第2被着体Bが測定対象Mにより接着された状態で長期間にわたり使用された結果、第1被着体Aが削れたりする可能性もある。このように第1被着体Aの使用開始当初から第1被着体Aの厚みが変化しているような場合であっても、測定装置10は、第1被着体Aの厚みと共に上記の比率を精度良く算出可能である。
【0095】
比率情報に含まれるパラメータが増大したと測定装置10が判定すると履歴情報を生成することで、ユーザは、例えば端末装置20を介してこのような履歴情報を確認可能である。ユーザは、このような履歴情報を端末装置20などにより確認することで、測定対象Mに異物が浸入したことを容易に把握可能である。
【0096】
比率情報に含まれるパラメータが閾値に到達したと測定装置10が判定すると通知情報を生成することで、ユーザは、例えば端末装置20を介してこのような通知情報を確認可能である。ユーザは、このような通知情報を端末装置20などにより警告として確認することで、異物の浸入により測定対象Mが許容範囲を超えて劣化したことを容易に把握可能である。
【0097】
測定装置10は、比率情報に基づいて、異物が測定対象Mに浸入していた時間及び異物が測定対象Mに浸入していたときの異物の温度のいずれかを算出する。これにより、ユーザは、例えば端末装置20を介してこれらの情報を確認可能である。ユーザは、これらの情報を端末装置20などにより確認することで、測定対象Mへの異物の浸入に関するパラメータを容易に把握可能である。
【0098】
測定装置10が測定対象Mにおける比率情報の空間分布を生成することで、ユーザは、例えば端末装置20を介してこのような空間分布を確認可能である。ユーザは、このような空間分布を端末装置20などにより測定結果として確認することで、測定対象Mにおける広範な部分に対して異物の浸入による測定対象Mの劣化を容易に把握可能である。
【0099】
測定装置10は、比率情報として第1物質に対する第2物質の比率を算出することで、診断情報を精度良く生成することが可能である。測定装置10は、比率情報として分光スペクトルのピーク強度を算出することで、例えばフィッティング演算処理などによって第1物質に対する第2物質の比率を算出するときと比較して計算負荷を低減させることが可能である。
【0100】
第1物質がヴァテライトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含み、第2物質がカルサイトの結晶構造を有する炭酸カルシウムを含む。これにより、測定装置10は、3.27THz近辺で吸収ピークの有無に顕著な差が表れる2種類の結晶構造を取り得る炭酸カルシウムを用いて、診断情報を精度良く生成することが可能である。
【0101】
分光スペクトルが測定対象Mの反射スペクトルを含むことで、測定装置10は、測定対象Mにおける第1被着体A側の界面近傍での異物の浸入履歴を容易に検出可能である。例えば、測定装置10は、接着剤の界面における水素結合の不可逆的な切断などのわずかな化学的変化を推定、又は間接的に検出することが容易である。
【0102】
上記第1実施形態に係る測定システム1では、測定装置10と端末装置20とは別装置として構成されると説明したが、これに限定されない。測定装置10と端末装置20とは一の装置において一体的に構成されてもよい。
【0103】
上記第1実施形態では、フィッティングパラメータは、例えば第1被着体Aの厚み、第1物質に対する第2物質の比率、及び測定対象Mにおける添加剤の濃度を含むと説明したが、これに限定されない。フィッティングパラメータは、例えば第1物質に対する第2物質の比率を少なくとも含んでいればよい。
【0104】
上記第1実施形態では、測定対象Mは第1被着体Aと第2被着体Bとを接着する接着剤を含むと説明したが、これに限定されない。測定対象Mは、分光スペクトルの情報に基づいてその状態を算出可能な任意の対象を含んでもよい。例えば、測定対象Mは、第1被着体Aと第2被着体Bとによって挟まれていなくてもよい。例えば、測定対象Mは、固体、液体、及び気体の任意の対象を含んでもよい。例えば、測定対象Mは、第1被着体Aに対応する配管中を流れる液体を含んでもよい。このような液体においても異物の浸入によって不安定構造を有する第1物質から安定構造を有する第2物質へと構造転移する物質が存在していれば、測定装置10は、配管の外から診断情報を生成することが可能である。
【0105】
上記第1実施形態では、測定装置10は、マーカーとしてヴァテライトがあらかじめ添加されている接着剤などを測定対象Mとすると説明したが、これに限定されない。測定対象Mは、第1物質の添加に加えて、又は代えて、例えば測定対象Mにおける第1被着体A側の界面における散布又は埋め込みによって、第1物質を直接的に配置した状態で含んでもよい。これにより、測定装置10は、例えば異物が測定対象Mの深部へ浸入せず、測定対象Mにおける第1被着体A側の界面にのみ浸入した場合であっても、異物の浸入に関する診断情報を生成することができる。
【0106】
上記第1実施形態では、発生器121により照射される電磁波は、テラヘルツ領域内の周波数を有すると説明したが、これに限定されない。例えば、テラヘルツ波に限定されず、任意の領域内の周波数を有する電磁波が使用されてもよい。例えば、第1被着体Aが極薄であれば、中赤外領域の電磁波が使用されてもよい。
【0107】
(第2実施形態)
図9は、本開示の第2実施形態に係る測定装置10を含む測定システム1の概略構成を示す模式図である。
図9を参照しながら、第2実施形態に係る測定装置10の構成について主に説明する。
【0108】
第2実施形態に係る測定装置10は、
図1のような反射型ではなく
図9のような透過型である点で第1実施形態に係る測定装置10と異なる。測定装置10のその他の構成、機能、効果、及び変形例などについては、第1実施形態と同様であり、対応する説明が、第2実施形態に係る測定装置10においても当てはまる。以下では、第1実施形態と同様の構成部については同一の符号を付し、その説明を省略する。第1実施形態と異なる点について主に説明する。
【0109】
第2実施形態において、「分光スペクトル」は、例えば測定対象Mの透過スペクトルを含む。例えば、分光スペクトルは、測定対象Mの厚み方向に沿った測定領域Rでの平均的な吸収スペクトルを含む。
【0110】
第2実施形態において、「基準データ」は、例えば、第1被着体Aの複素屈折率の周波数依存性、第2被着体Bの複素屈折率の周波数依存性、及び添加剤が添加されていない状態での測定対象Mの複素屈折率の周波数依存性を含む。これらに加えて、基準データは、第1物質の複素屈折率の周波数依存性及び第2物質の複素屈折率の周波数依存性を含む。さらに、基準データは、第1被着体Aの厚み及び第2被着体Bの厚みを含む。第2実施形態において、「フィッティングパラメータ」は、例えば測定対象Mの厚み、第1物質に対する第2物質の比率、及び測定対象Mにおける添加剤の濃度を含む。
【0111】
測定装置10の発生器・受信器制御部115は、発生器121の位置及び角度を所定の発生条件が満たされるように自動調整する。第2実施形態において、「所定の発生条件」は、例えば、発生器121により照射された電磁波が測定領域Rに対して任意の入射角で入射して透過する条件を含む。例えば、入射角は、ゼロ度に近い小さい角度であってもよいし、ゼロ度であってもよい。すなわち、発生器121は、測定領域Rに対して略垂直入射又は垂直入射とみなせる測定が可能な位置及び角度に設定されてもよい。以上に限定されず、発生器・受信器制御部115は、端末装置20を用いてユーザにより入力され、端末装置20から送信された設定値に基づいて、発生器121の位置及び角度を調整してもよい。
【0112】
測定装置10の発生器・受信器制御部115は、受信器122の位置及び角度を所定の受信条件が満たされるように自動調整する。第2実施形態において、「所定の受信条件」は、例えば、測定領域Rにおいて任意の出射角で透過してきた電磁波が受信器122に入射する条件を含む。例えば、出射角は、ゼロ度に近い小さい角度であってもよいし、ゼロ度であってもよい。すなわち、受信器122は、測定領域Rに対して略垂直出射又は垂直出射とみなせる測定が可能な位置及び角度に設定されてもよい。以上に限定されず、発生器・受信器制御部115は、端末装置20を用いてユーザにより入力され、端末装置20から送信された設定値に基づいて、受信器122の位置及び角度を調整してもよい。
【0113】
図10は、
図9の測定装置10の動作の第1例を説明するためのフローチャートである。
図10を参照しながら、測定装置10の制御部116により実行される比率情報の算出処理に関する基本的なフローの一例を説明する。
【0114】
ステップS700では、制御部116は、初期設定データを端末装置20から取得し、記憶部117に格納する。
【0115】
ステップS701では、制御部116は、発生器121の位置及び角度を所定の発生条件が満たされるように自動調整する。制御部116は、受信器122の位置及び角度を所定の受信条件が満たされるように自動調整する。
【0116】
ステップS702では、制御部116は、ステップS701において自動調整された発生器121を用いて、測定領域Rに電磁波を照射する。
【0117】
ステップS703では、制御部116は、ステップS702において照射された電磁波に基づいて、測定対象Mの分光スペクトルの情報を含む電磁波を、受信器122を用いて受信する。
【0118】
ステップS704では、制御部116は、ステップS703において受信器122により受信された電磁波に基づいて測定対象Mの透過スペクトルを実測の分光スペクトルとして取得する。
【0119】
ステップS705では、制御部116は、ステップS704において取得された実測の透過スペクトルに基づいて第1物質と第2物質との間の比率情報を算出する。
【0120】
ステップS706では、制御部116は、ステップS705において算出された比率情報に基づいて異物の浸入に関する診断情報を生成する。制御部116は、生成された診断情報を端末装置20に送信する。
【0121】
図11は、
図9の測定装置10の動作の第2例を説明するためのフローチャートである。
図11に示すフローチャートは、
図10のステップS705における算出処理のより具体的なフローの一例を示す。
図11を参照しながら、
図10のステップS705における算出処理をより詳細に説明する。
【0122】
ステップS705の比率情報を算出するステップにおいて、制御部116は、分光スペクトルを算出するために必要となる基準データ及びフィッティングパラメータと、フィッティングパラメータの初期値と、に基づいて、ステップS704において取得された実測の透過スペクトルに対するフィッティング演算処理を実行する。これにより、制御部116は、第1物質に対する第2物質の比率を算出する。
【0123】
ステップS800では、制御部116は、初期設定データを読み込む。
【0124】
ステップS801では、制御部116は、ステップS800において読み込まれた初期設定データに基づいて、受信器122で観測される電磁波に基づく測定対象Mの透過スペクトルを算出する。より具体的には、制御部116は、所定の物理モデル式に基づいて測定対象Mの透過スペクトルを算出する。
【0125】
ステップS802では、制御部116は、ステップS801において算出された透過スペクトルと、
図10のステップS704において取得された実測の透過スペクトルとの誤差を算出する。例えば、制御部116は、全周波数点における最小二乗誤差を算出する。
【0126】
ステップS803では、制御部116は、ステップS802の算出結果に基づいて、ステップS800において読み込んだ各フィッティングパラメータの値を更新する。
【0127】
ステップS804では、制御部116は、ステップS802において算出された誤差が設定範囲以内にあるか否かを判定する。例えば、制御部116は、全周波数点における最小二乗誤差が設定範囲以内にあるか否かを判定する。制御部116は、誤差が設定範囲以内にあると判定すると、処理を終了する。制御部116は、誤差が設定範囲以内にないと判定すると、ステップS801の処理を再度実行する。
【0128】
以上のように、制御部116は、透過スペクトルの実測データと物理モデル式とに基づいて、繰り返し演算によるフィッティングなどによってフィッティングパラメータを算出する。制御部116は、各繰り返し演算にて、実測データと物理モデル式との一致度を確認し、十分収束していると判定すればフィッティング演算処理を終了する。
【0129】
以上のような第2実施形態に係る測定装置10によれば、分光スペクトルが測定対象Mの透過スペクトルを含むことで、測定装置10は、測定対象Mの厚みに沿った測定領域R全体の平均的な情報として異物の浸入履歴を容易に検出可能である。例えば、発生器121により照射される電磁波がテラヘルツ領域内の周波数を有することで、任意の測定対象Mに対して透過性をより確実に得ることができる。これにより、測定装置10は、測定対象Mの深部の状態をより確実に検出することが可能である。
【0130】
上記第2実施形態では、フィッティングパラメータは、例えば測定対象Mの厚み、第1物質に対する第2物質の比率、及び測定対象Mにおける添加剤の濃度を含むと説明したが、これに限定されない。フィッティングパラメータは、第1被着体Aの厚み及び第2被着体Bの厚みの少なくとも一方をさらに含んでもよい。
【0131】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び改変を行うことが可能であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0132】
例えば、本開示は、上述した測定装置10の各機能を実現する処理内容を記述したプログラム又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得る。本開示の範囲には、これらも包含されると理解されたい。
【0133】
例えば、上述した各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、上記の説明及び図面における図示の内容に限定されない。各構成部の形状、配置、向き、及び個数は、その機能を実現できるのであれば、任意に構成されてもよい。
【0134】
例えば、測定装置10は、上記第1実施形態及び第2実施形態において説明した処理のいずれか一方のみを実行してもよいし、両方を並行して実行してもよい。例えば、測定装置10が測定対象Mの反射スペクトル及び透過スペクトルの両方を取得することで、ユーザは、第1被着体A側の界面及び第2被着体B側の界面のどちらから測定対象Mに異物が浸入したかを把握することが可能である。例えば、測定対象Mの反射スペクトルに基づいて異物の浸入履歴が検出されなかった一方で、測定対象Mの透過スペクトルに基づいて異物の浸入履歴が検出された場合、ユーザは、第2被着体B側の界面から測定対象Mに異物が浸入したと判断することが可能である。
【符号の説明】
【0135】
1 測定システム
10 測定装置
11 制御モジュール
111 データ処理部
112 演算部
113 コマンド解析部
114 スペクトル解析部
115 発生器・受信器制御部
116 制御部
117 記憶部
12 測定モジュール
121 発生器
122 受信器
123 可動部
20 端末装置
A 第1被着体
B 第2被着体
M 測定対象
R 測定領域