(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】走行制御システム、走行制御装置、走行制御方法、走行制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/08 20120101AFI20240509BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20240509BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20240509BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W40/04
B60W60/00
G08G1/16 C
(21)【出願番号】P 2021111688
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 祐太
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-221451(JP,A)
【文献】特開2016-024705(JP,A)
【文献】特開2019-079284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00~60/00
G08G 1/00~ 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ(102)を有し、ホスト移動体(A)の走行を制御する走行制御システムであって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体の進行方向側から、前記ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、前記ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知することと、
前記移動関連挙動を検知した場合に、前記ターゲット移動体の前記スペースへの移動を許容する許容制御を実行することと、
を実行するように構成され、
前記移動関連挙動は、前記スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、前記低確度挙動と、を含み、
前記許容制御は、
前記低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態で前記ホスト移動体を走行させることと、前記高確度挙動が検知された場合において、走行中の前記ホスト移動体を、前記ターゲット移動体に対して前記スペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させること
と、を含む走行制御システム。
【請求項2】
前記許容距離は、前記走路から前記スペースへの入口部(En)における前記ターゲット移動体から遠い側の端部(Ed1)から、前記ホスト移動体側へと付加されるマージン距離(Dm)に基づき、決定される請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項3】
前記許容制御を実行する場合に、前記ターゲット移動体に対して、前記スペースへの移動が可能であることを通知することを、さらに含む請求項1
又は請求項2に記載の走行制御システム。
【請求項4】
前記移動関連挙動を検知することは、前記スペースへと到達した前記ターゲット移動体について、移動を完了した完了条件が成立するか否かを判定することをさらに含み、
前記許容制御を実行することは、前記完了条件が成立するまで、前記許容距離を確保した状態での前記ホスト移動体の停車を継続させることを含む請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【請求項5】
前記スペースは、駐車スペース(Sp)を含み、前記移動関連挙動は、前記駐車スペースへの駐車に関連する駐車関連挙動を含む請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【請求項6】
前記スペースは作業移動体が作業する作業スペース(Sw)を含み、前記移動関連挙動は、前記作業移動体である前記ターゲット移動体の、前記作業スペースへの移動に関連する作業関連挙動を含む請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の走行制御システム。
【請求項7】
プロセッサ(102)を有し、ホスト移動体(A)の走行を制御する走行制御装置であって、
前記プロセッサは、
前記ホスト移動体の進行方向側から、前記ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、前記ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知することと、
前記移動関連挙動を検知した場合に、前記ターゲット移動体の前記スペースへの移動を許容する許容制御を実行することと、
を実行するように構成され、
前記移動関連挙動は、前記スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、前記低確度挙動と、を含み、
前記許容制御は、
前記低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態で前記ホスト移動体を走行させることと、前記高確度挙動が検知された場合において、走行中の前記ホスト移動体を、前記ターゲット移動体に対して前記スペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させること
と、を含む走行制御装置。
【請求項8】
ホスト移動体(A)の走行を制御するために、プロセッサ(102)により実行される走行制御方法であって、
前記ホスト移動体の進行方向側から、前記ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、前記ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知することと、
前記移動関連挙動を検知した場合に、前記ターゲット移動体の前記スペースへの移動を許容する許容制御を実行することと、
を含み、
前記移動関連挙動は、前記スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、前記低確度挙動と、を含み、
前記許容制御は、
前記低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態で前記ホスト移動体を走行させることと、前記高確度挙動が検知された場合において、走行中の前記ホスト移動体を、前記ターゲット移動体に対して前記スペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させること
と、を含む走行制御方法。
【請求項9】
ホスト移動体(A)の走行を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む走行制御プログラムであって、
前記命令は、
前記ホスト移動体の進行方向側から、前記ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、前記ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知させることと、
前記移動関連挙動を検知した場合に、前記ターゲット移動体の前記スペースへの移動を許容する許容制御を実行させることと、
を含み、
前記移動関連挙動は、前記スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、前記低確度挙動と、を含み、
前記許容制御は、
前記低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態で前記ホスト移動体を走行させることと、前記高確度挙動が検知された場合において、走行中の前記ホスト移動体を、前記ターゲット移動体に対して前記スペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させること
と、を含む走行制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホスト移動体の走行を制御する走行制御技術に、関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自車が他車の進路を塞いでいる場合に、他車を通過させるように自車を制御する技術が開示されている。この技術では、走行制御装置は、自車レーンの一方の側方レーンから他方の側方レーンに移動しようとしている外部物体が、自車の存在により自車レーンを横切ることができるか否か判定する。走行制御装置は、外部物体が自車の存在により自車レーンを横切ることができないと判定した場合、自車を移動させて外部物体が自車レーンを横切る横断スペースを確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、自車が他車の進路を塞いでいる状態から、自車が移動される。しかし、こうした自車の移動により、自車と周辺車両との間に接近のリスクが新たに生じる虞がある。
【0005】
本開示の課題は、周辺移動体への接近リスクを回避可能な走行制御システムを、提供することにある。本開示の別の課題は、周辺移動体への接近リスクを回避可能な走行制御装置を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、周辺移動体への接近リスクを回避可能な走行制御方法を、提供することにある。本開示のさらに別の課題は、周辺移動体への接近リスクを回避可能な走行制御プログラムを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、プロセッサ(102)を有し、ホスト移動体(A)の走行を制御する走行制御システムであって、
プロセッサは、
ホスト移動体の進行方向側から、ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知することと、
移動関連挙動を検知した場合に、ターゲット移動体のスペースへの移動を許容する許容制御を実行することと、
を実行するように構成され、
移動関連挙動は、スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、低確度挙動と、を含み、
許容制御は、低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト移動体を走行させることと、高確度挙動が検知された場合において、走行中のホスト移動体を、ターゲット移動体に対してスペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させることと、を含む。
【0008】
本開示の第二態様は、プロセッサ(102)を有し、ホスト移動体(A)の走行を制御する走行制御装置であって、
プロセッサは、
ホスト移動体の進行方向側から、ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知することと、
移動関連挙動を検知した場合に、ターゲット移動体のスペースへの移動を許容する許容制御を実行することと、
を実行するように構成され、
移動関連挙動は、スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、低確度挙動と、を含み、
許容制御は、低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト移動体を走行させることと、高確度挙動が検知された場合において、走行中のホスト移動体を、ターゲット移動体に対してスペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させることと、を含む。
【0009】
本開示の第三態様は、ホスト移動体(A)の走行を制御するために、プロセッサ(102)により実行される走行制御方法であって、
ホスト移動体の進行方向側から、ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知することと、
移動関連挙動を検知した場合に、ターゲット移動体のスペースへの移動を許容する許容制御を実行することと、
を含み、
移動関連挙動は、スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、低確度挙動と、を含み、
許容制御は、低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト移動体を走行させることと、高確度挙動が検知された場合において、走行中のホスト移動体を、ターゲット移動体に対してスペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させることと、を含む。
【0010】
本開示の第四態様は、ホスト移動体(A)の走行を制御するために記憶媒体(101)に記憶され、プロセッサ(102)に実行させる命令を含む走行制御プログラムであって、
命令は、
ホスト移動体の進行方向側から、ホスト移動体の存在方向側へ向かって走行するターゲット移動体(B)について、ホスト移動体の走路に接続されたスペース(Sp;Sw)への移動に関連する移動関連挙動を検知させることと、
移動関連挙動を検知した場合に、ターゲット移動体のスペースへの移動を許容する許容制御を実行させることと、
を含み、
移動関連挙動は、スペースへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、低確度挙動と、を含み、
許容制御は、低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト移動体を走行させることと、高確度挙動が検知された場合において、走行中のホスト移動体を、ターゲット移動体に対してスペースへの移動を許容する許容距離(Dt)を確保した状態で停車させることと、を含む。
【0011】
これら第一~第四態様によると、ターゲット移動体について移動関連挙動が検知されると、走行中のホスト移動体が予め許容距離を確保した状態で停車し得る。故に、ホスト移動体がターゲット移動体のスペースへの移動を阻害する前に、ホスト移動体がターゲット移動体の移動を前もって許容した状態で停車し得る。したがって、ターゲット移動体の移動を阻害した状態からホスト移動体を移動させる必要がなくなり、周辺移動体への接近リスクが低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一実施形態の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】第一実施形態の適用されるホスト車両の走行環境を示す模式図である。
【
図3】第一実施形態による走行制御システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】第一実施形態による走行制御方法を示すフローチャートである。
【
図5】第二実施形態の適用されるホスト車両の走行環境を示す模式図である。
【
図6】第二実施形態による走行制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき複数説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。又、各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。さらに、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づき説明する。
【0015】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態の走行制御システム100は、
図2に示すホスト車両Aの走行を制御する。ホスト車両Aを中心とする視点において、ホスト車両Aは自車両(ego-vehicle)であるともいえる。ホスト車両Aを中心とする視点において、ターゲット車両Bは他道路ユーザであるともいえる。
【0016】
ホスト車両Aは、「ホスト移動体」の一例であり、ターゲット車両Bは、「ターゲット移動体」の一例である。
【0017】
ホスト車両Aにおいては、運転タスクにおける乗員の手動介入度に応じてレベル分けされる、自動運転モードが与えられる。自動運転モードは、条件付運転自動化、高度運転自動化、又は完全運転自動化といった、作動時のシステムが全ての運転タスクを実行する自律走行制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、運転支援、又は部分運転自動化といった、乗員が一部若しくは全ての運転タスクを実行する高度運転支援制御により、実現されてもよい。自動運転モードは、それら自律走行制御と高度運転支援制御とのいずれか一方、組み合わせ、又は切り替えにより実現されてもよい。
【0018】
ホスト車両Aには、
図3に示すセンサ系10、通信系20、及び地図データベース(以下、「DB」)30が搭載される。センサ系10は、走行制御システム100により利用可能なセンサ情報を、ホスト車両Aの外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系10は、外界センサ11及び内界センサ12を含んで構成されている。
【0019】
ホスト車両Aには、
図3に示すセンサ系10、情報提示系40、及び地
図DB30が搭載される。センサ系10は、走行制御システム100により利用可能なセンサ情報を、ホスト車両Aの外界及び内界の検出により取得する。そのためにセンサ系10は、外界センサ11及び内界センサ12を含んで構成されている。
【0020】
外界センサ11は、ホスト車両Aの周辺環境となる外界から、走行制御システム100により利用可能な外界情報を取得する。外界センサ11は、ホスト車両Aの外界に存在する物標を検知することで、外界情報を取得してもよい。物標検知タイプの外界センサ11は、例えばカメラ、LiDAR(Light Detection and Ranging / Laser Imaging Detection and Ranging)、レーダ、及びソナー等のうち、少なくとも一種類である。
【0021】
内界センサ12は、ホスト車両Aの内部環境となる内界から、走行制御システム100により利用可能な内界情報を取得する。内界センサ12は、ホスト車両Aの内界において特定の運動物理量を検知することで、内界情報を取得してもよい。物理量検知タイプの内界センサ12は、例えば走行速度センサ、加速度センサ、及びジャイロセンサ等のうち、少なくとも一種類である。内界センサ12は、ホスト車両Aの内界において乗員の特定状態を検知することで、内界情報を取得してもよい。乗員検知タイプの内界センサ12は、例えばドライバーステータスモニター(登録商標)、生体センサ、着座センサ、アクチュエータセンサ、及び車内機器センサ等のうち、少なくとも一種類である。
【0022】
通信系20は、走行制御システム100により利用可能な通信情報を、無線通信により取得する。通信系20は、ホスト車両Aの外界に存在するGNSS(Global Navigation Satellite System)の人工衛星から、測位信号を受信してもよい。測位タイプの通信系20は、例えばGNSS受信機等である。通信系20は、ホスト車両Aの外界に存在するV2Xシステムとの間において、通信信号を送受信してもよい。V2Xタイプの通信系20は、例えばDSRC(Dedicated Short Range Communications)通信機、及びセルラV2X(C-V2X)通信機等のうち、少なくとも一種類である。通信系20は、ホスト車両Aの内界に存在する端末との間において、通信信号を送受信してもよい。端末通信タイプの通信系20は、例えばBluetooth(登録商標)機器、Wi-Fi(登録商標)機器、及び赤外線通信機器等のうち、少なくとも一種類である。
【0023】
地
図DB30は、走行制御システム100により利用可能な地図情報を、記憶する。地
図DB30は、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)を含んで構成される。地
図DB30は、ホスト車両Aの自己位置を含む自己状態量を推定するロケータの、データベースであってもよい。地
図DB30は、ホスト車両Aの走行経路をナビゲートするナビゲーションユニットの、データベースであってもよい。地
図DB30は、これらのデータベース等のうち複数種類の組み合わせにより、構成されていてもよい。
【0024】
地
図DB30は、例えばV2Xタイプの通信系20を介した外部センタとの通信等により、最新の地図情報を取得して記憶する。ここで地図情報は、ホスト車両Aの走行環境を表す情報として、二次元又は三次元にデータ化されている。特に三次元の地図データとしては、高精度地図のデジタルデータが採用されるとよい。地図情報は、例えば道路自体の位置、形状、及び路面状態等のうち、少なくとも一種類を表した道路情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に付属する標識及び区画線の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した標示情報を含んでいてもよい。地図情報は、例えば道路に面する建造物及び信号機の位置並びに形状等のうち、少なくとも一種類を表した構造物情報を含んでいてもよい。
【0025】
情報提示系40は、報知対象への報知情報を提示する。情報提示系40は、例えばホスト車両Aの車内の乗員に対して、報知情報を提示する。車内提示タイプの情報提示系40は、報知対象の視覚を刺激することで報知情報を提示する視覚提示ユニットであってもよい。視覚提示ユニットは、例えばHUD(Head-Up Display)、MFD(Multi-Function Display)、コンビネーションメータ、ナビゲーションユニット、及び発光ユニット等のうち、少なくとも一種類である。車内提示タイプの情報提示系40は、報知対象の聴覚を刺激することで報知情報を提示する聴覚提示ユニットであってもよい。聴覚提示ユニットは、例えばスピーカ、ブザー、及びバイブレーションユニット等のうち、少なくとも一種類である。情報提示系40は、報知対象の皮膚感覚を刺激することで報知情報を提示する触覚提示ユニットであってもよい。触覚提示ユニットにより刺激される皮膚感覚には、例えば触覚、温度覚、及び風覚等のうち、少なくとも一種類が含まれる。触覚提示ユニットは、例えばステアリングホイールのバイブレーションユニット、運転席のバイブレーションユニット、ステアリングホイールの反力ユニット、アクセルペダルの反力ユニット、ブレーキペダルの反力ユニット、及び空調ユニット等のうち、少なくとも一種類である。
【0026】
情報提示系40は、ホスト車両Aの車外の人物に対して、報知情報を提示してもよい。車外提示タイプの情報提示系40は、視覚提示ユニットであってもよいし、聴覚提示ユニットであってもよい。車外提示タイプの視覚提示ユニットは、車外ディスプレイ及び発光ユニット等のうち少なくとも一種類である。車外提示タイプの聴覚提示ユニットは、スピーカ及びブザー等のうち少なくとも一種類である。
【0027】
走行制御システム100は、例えばLAN(Local Area Network)回線、ワイヤハーネス、内部バス、及び無線通信回線等のうち、少なくとも一種類を介してセンサ系10、通信系20、地
図DB30、及び情報提示系40に接続されている。走行制御システム100は、少なくとも一つの専用コンピュータを含んで構成されている。
【0028】
走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御を統合する、統合ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御における運転タスクを判断する、判断ECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御を監視する、監視ECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転制御を評価する、評価ECUであってもよい。
【0029】
走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの運転を制御する、運転制御ECU(Electronic Control Unit)であってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの走行経路をナビゲートする、ナビゲーションECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの自己状態量を推定する、ロケータECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aの走行アクチュエータを制御する、アクチュエータECUであってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、ホスト車両Aにおいて情報提示系40による情報提示を制御する、HCU(HMI(Human Machine Interface) Control Unit)であってもよい。走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、例えばV2Xタイプの通信系20を介して通信可能な外部センタ又はモバイル端末等を構成する、ホスト車両A以外のコンピュータであってもよい。
【0030】
走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、メモリ101及びプロセッサ102を、少なくとも一つずつ有している。メモリ101は、コンピュータにより読み取り可能なプログラム及びデータ等を非一時的に記憶する、例えば半導体メモリ、磁気媒体、及び光学媒体等のうち、少なくとも一種類の非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。プロセッサ102は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、RISC(Reduced Instruction Set Computer)-CPU、DFP(Data Flow Processor)、及びGSP(Graph Streaming Processor)等のうち、少なくとも一種類をコアとして含んでいる。
【0031】
走行制御システム100においてプロセッサ102は、ホスト車両Aの走行を制御するためにメモリ101に記憶された、走行制御プログラムに含まれる複数の命令を実行する。これにより走行制御システム100は、ホスト車両Aの走行を制御するための機能ブロックを、複数構築する。走行制御システム100において構築される複数の機能ブロックには、
図3に示すようにターゲット認識ブロック110、スペース認識ブロック120、挙動判定ブロック130、目標決定ブロック140、及び通知ブロック150が含まれている。
【0032】
ターゲット認識ブロック110は、ホスト車両Aの進行方向側から、ホスト車両Aの存在方向側へ向かって走行するターゲット車両Bについてのターゲット情報を取得する。ホスト車両Aの進行方向側からホスト車両Aの存在方向側へ向かって走行するターゲット車両Bは、例えば、ホスト車両Aの現在走行する車線(現在車線)又は当該現在車線と同じ進行方向の車線を逆走している車両を含んでいる。尚、以下において、現在車線及び当該現在車線と同じ進行方向の車線を、まとめて同方向車線と表記する場合がある。加えて、ホスト車両Aの進行方向側からホスト車両Aの存在方向側へ向かって走行するターゲット車両Bは、例えば、現在車線の対向車線を、ホスト車両Aの前方から走行してくる車両を含んでいる。以上のターゲット車両Bは、駐車前の可能性があるターゲット車両Bとされる。
【0033】
ターゲット認識ブロック110は、外界センサ11による外界情報に含まれるターゲット情報を取得すればよい。又は、ターゲット認識ブロック110は、V2Xタイプの通信系20による通信情報に含まれるターゲット情報を取得してもよい。ターゲット情報は、ターゲット車両Bの挙動に関する情報を含んでいる。例えば、ターゲット情報は、ターゲット車両Bの位置、速度及び進行方向のうち少なくとも一種類以上を含んでいてよい。さらに、ターゲット情報は、ターゲット車両Bにおけるウインカの点灯有無に関する情報、ハザードランプの点灯有無に関する情報、及びリバースランプの点灯有無に関する情報のうち少なくとも一種類以上を含んでいてもよい。
【0034】
スペース認識ブロック120は、ホスト車両Aの走路に接続された駐車スペースSpに関する駐車スペース情報を取得する。スペース認識ブロック120は、地
図DB30が格納する地図データに含まれる駐車スペース情報を取得すればよい。駐車スペース情報は、駐車スペースSpの位置、範囲、及び車道から当該駐車スペースSpへの入口部Enの位置のうち少なくとも一種類以上を含んでいてよい。駐車スペースSpは、「スペース」の一例である。
【0035】
挙動判定ブロック130は、ターゲット情報及び駐車スペース情報に基づいて、ターゲット車両Bが駐車スペースSpへの駐車に関連する駐車関連挙動を取っているか否かを判定する。挙動判定ブロック130は、例えば、ターゲット車両Bと駐車スペースSpとの間の距離が駐車距離範囲内であり、且つターゲット車両Bの車速が駐車速度範囲内である場合に、駐車関連挙動を取っていると判定する。駐車距離範囲は、ターゲット車両Bと駐車スペースSpとの間の距離が、距離閾値以下又は距離閾値未満となる範囲である。又、駐車速度範囲は、ターゲット車両Bの車速が、車速閾値以下又は車速閾値未満となる範囲である。
【0036】
さらに、駐車関連挙動は、高確度挙動及び低確度挙動を含んでいる。高確度挙動は、駐車スペースSpへの駐車が実現される確度が低確度挙動より高い挙動である。低確度挙動は、駐車スペースSpへの駐車が実現される確度が高確度挙動より低い挙動である。挙動判定ブロック130は、判定対象のターゲット車両Bが取る駐車関連挙動について、高確度挙動及び低確度挙動のいずれに該当するかを、さらに判定する。例えば、挙動判定ブロック130は、高確度条件が成立する場合に、駐車関連挙動は高確度挙動に該当すると判定し、高確度条件が不成立である場合に、駐車関連挙動は低確度挙動に該当すると判定する。
【0037】
具体的には、高確度条件は、同方向車線を走行するターゲット車両Bが当該車線を逆走していることを含む。さらに、高確度条件は、同方向車線を走行するターゲット車両Bについてハザードランプ又はリバースランプが点灯状態であることを含む。加えて、高確度条件は、対向車線を走行するターゲット車両Bについて駐車スペースSp側のウインカが点灯状態であることを含む。又、高確度条件は、通信系20から取得された情報に基づきターゲット車両Bが駐車スペースSpを目的地としていると判別されることを含む。加えて、高確度条件は、ターゲット車両Bの乗員のジェスチャ、顔の向き等から、ターゲット車両Bが駐車スペースSpを目的地としていると推定されることを含む。高確度条件は、以上の詳細条件のうち少なくとも一種類以上が成立することをもって成立すると判定されればよい。尚、高確度条件は、以上の詳細条件のうち規定された組み合わせの詳細条件が全て成立することをもって成立すると判定されてもよい。
【0038】
以上の駐車関連挙動は、ホスト車両Aの走路に接続されたスペースへの移動に関連する移動関連挙動の一例である。
【0039】
加えて、挙動判定ブロック130は、駐車スペースSpへと到達したターゲット車両Bについて、駐車を完了した完了条件が成立するか否かを判定する。例えば、完了条件は、駐車スペースSp内でのターゲット車両Bの停車時間が完了時間範囲に到達することを含む。完了時間範囲は、停車時間が閾時間以上又は閾時間よりも大きくなる時間範囲である。又は、完了条件は、ターゲット車両Bの駐車スペースSpへの入口部En通過からの経過時間が完了時間範囲に到達することを含んでいてもよい。
【0040】
目標決定ブロック140は、挙動判定ブロック130における駐車関連挙動に関する判定結果に基づいて、ホスト車両Aの目標挙動を決定する。目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて駐車関連挙動を取っていないと判定された場合には、通常の目標車間距離及び目標速度でのホスト車両Aの走行制御(通常制御)を決定する。
【0041】
一方で、目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて駐車関連挙動を取っていると判定された場合には、ホスト車両Aについて、ターゲット車両Bの駐車スペースSpへの移動を許容する許容制御を実行することを決定する。目標決定ブロック140は、駐車関連挙動が低確度挙動及び高確度挙動のいずれに該当するかに応じて、異なる許容制御を実行する。ここで、許容制御の実行は、例えば、ホスト車両Aの駆動系に対する目標車速及び目標車間距離を実現する指令の出力を含んでいてよい
【0042】
詳記すると、駐車関連挙動が低確度挙動に該当すると判定された場合、目標決定ブロック140は、許容速度範囲内まで目標速度を低下させた状態でホスト車両Aを走行させる徐行制御を実行する。許容速度範囲は、許容速度閾値未満又は当該閾値以下となる速度範囲である。例えば、許容速度範囲は、徐行開始からターゲット車両Bとの距離が許容距離Dtに到達するまでの時間が、規定時間分確保できる速度範囲に設定される。規定時間は、予め設定された時間である。例えば、ターゲット車両Bが同方向車線に在る場合、規定時間は、車両が停車してから後退駐車を始めるまでの想定時間として設定されればよい。又、例えば、ターゲット車両Bが対向車線に在る場合、規定時間は、ターゲット車両Bがホスト車両Aの現在車線を跨いで駐車スペースSpに進入する動作を開始するまでの想定時間として設定されればよい。
【0043】
目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて高確度挙動が成立するまで、又は駐車関連挙動が中断されるまで、以上の徐行制御を継続する。
【0044】
そして、駐車関連挙動が高確度挙動に該当すると判定された場合、目標決定ブロック140は、走行中のホスト車両Aを、ターゲット車両Bに対して駐車を許容する許容距離Dtを確保した状態で停車させる停車制御を実行する。許容距離Dtは、例えば
図2に示すように、駐車スペースSpへの入口部Enにおける端部Ed1,Ed2のうち、ターゲット車両Bから遠い側の端部Ed1からホスト車両A側へと付加されるマージン距離Dmに基づき、決定される。許容距離Dtは、ホスト車両Aとターゲット車両Bとが同一車線に在る場合、ホスト車両Aとターゲット車両Bとの間の目標車間距離とされる。又は、許容距離Dtは、ホスト車両Aとターゲット車両Bとが同一車線にない場合、ホスト車両Aの位置から現在車線の延伸方向におけるターゲット車両Bの位置との間の目標距離、又は単にホスト車両Aからターゲット車両Bまでの目標距離とされる。
【0045】
尚、マージン距離Dmは、駐車スペースSpの形状、位置、入口部Enの大きさ等に応じて変更されてもよい。例えば、以上のパラメータに基づき駐車の難易度が高いと推定されるほど、マージン距離Dmが拡張されてもよい。
【0046】
目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて駐車の完了条件が成立するまで、以上の停車制御を継続する。目標決定ブロック140は、完了条件が成立し、且つ駐車関連挙動を取る他のターゲット車両Bが存在しない場合に、通常制御を再開すればよい。又は、目標決定ブロック140は、完了条件が不成立であるターゲット車両Bについても、駐車スペースSpから離れる等により駐車関連挙動が中断された場合には、通常制御を再開してよい。
【0047】
通知ブロック150は、高確度挙動を取るターゲット車両Bに対応する停車制御を実行する場合において、ターゲット車両Bに対して、駐車スペースSpへの駐車が可能であることを通知する。通知ブロック150は、V2Xタイプの通信系20を介して、通知を行ってもよい。通信系20を介した通知を取得したターゲット車両Bでは、車内提示タイプの情報提示系にて、駐車スペースSpへの駐車が可能であることが、乗員に提示されればよい。又は、通信系20を介した通知を取得したターゲット車両Bが自動運転車両である場合、通知に基づき、駐車のための車両制御が許可されてもよい。又は、通知ブロック150は、車外提示タイプの情報提示系40を介して、通知を行ってもよい。
【0048】
ここまで説明したブロック110,120,130,140,150の共同により、走行制御システム100がホスト車両Aの走行を制御する走行制御方法のフロー(以下、走行制御フローという)を、
図4に従って以下に説明する。本処理フローは、ホスト車両Aの起動中に繰り返し実行される。尚、本処理フローにおける各「S」は、走行制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
【0049】
まず、S10では、ターゲット認識ブロック110が、ターゲット情報を取得する。次に、S20では、スペース認識ブロック120が、駐車スペース情報を取得する。続くS30では、挙動判定ブロック130が、駐車中のターゲット車両Bの有無を判定する。駐車中のターゲット車両Bが在ると判定すると、S40にて、当該ターゲット車両Bについて駐車の完了条件が成立したか否かを判定する。完了条件が成立したと判定されると、本フローが後述のS90へと移行する。
【0050】
一方で、S30にて駐車中のターゲット車両Bがない、又はS40にて完了条件が不成立であると判定された場合には、本フローがS50へと移行する。S50では、挙動判定ブロック130が、駐車前の可能性があるターゲット車両B、すなわちホスト車両Aの進行方向側からホスト車両Aの存在方向側へ向かって走行するターゲット車両Bが存在するか否かを判定する。駐車前の可能性があるターゲット車両Bがないと判定されると、本フローが後述のS70へと移行する。
【0051】
一方で、駐車前の可能性があるターゲット車両Bが在ると判定すると、S60にて、挙動判定ブロック130が、当該ターゲット車両Bについて駐車関連挙動を取っているか否かを判定する。駐車関連挙動を取っていないと判定されると、本フローがS70へと移行する。S70では、目標決定ブロック140が、通常の目標車間距離及び目標車速による通常制御を実行した後、本フローを終了する。
【0052】
一方で、S60にて駐車関連挙動を取っていると判定されると、本フローがS80へと移行する。S80では、挙動判定ブロック130が、駐車関連挙動に関して、高確度条件が成立しているか否かを判定する。換言すれば、挙動判定ブロック130は、駐車関連挙動が高確度挙動に該当するか否かを判定する。高確度条件に該当すると判定すると、S90にて、目標決定ブロック140が、許容制御としての停車制御を実行する。続くS100では、通知ブロック150が、駐車が可能であることをターゲット車両Bへと通知する。
【0053】
一方で、S80にて高確度条件が不成立である、すなわち駐車関連挙動が低確度挙動に該当すると判定すると、S110にて、目標決定ブロック140が、許容制御としての徐行制御を実行する。
【0054】
以上の第一実施形態によれば、ホスト車両Aの進行方向側からホスト車両Aの存在方向側へ向かって走行するターゲット車両Bについて、移動関連挙動としての駐車関連挙動が検知されると、ホスト車両Aの許容制御が実行される。許容制御では、ターゲット車両Bの駐車スペースSpへの移動を許容するために、許容距離Dtを確保した状態で走行中のホスト車両Aが停車される。故に、ホスト車両Aがターゲット車両Bのスペースへの移動を阻害する前に、ホスト車両Aがターゲット車両Bの移動を前もって許容した状態で停車し得る。したがって、ターゲット車両Bの移動を阻害した状態からホスト車両Aを移動させる必要がなくなり、周辺移動体への接近リスクが低減され得る。
【0055】
又、第一実施形態によれば、許容距離Dtは、走路から駐車スペースSpへの入口部Enにおけるターゲット車両Bから遠い側の端部Ed1から、ホスト車両A側へと付加されるマージン距離Dmに基づき、決定される。このため、駐車スペースSpへの入口部Enを確実に空けた状態で、ホスト車両Aが停車され得る。したがって、ターゲット車両Bの駐車スペースSpへの移動が確実に許容され得る。
【0056】
さらに、第一実施形態によれば、駐車関連挙動は、駐車スペースSpへの移動が実現される確度が低確度挙動よりも高い高確度挙動と、低確度挙動と、を含む。そして、許容制御は、低確度挙動が検知された場合において、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト車両Aを走行させることと、高確度挙動が検知された場合において、走行中のホスト車両Aを、許容距離Dtを確保した状態で停車させることと、を含む。故に、低確度挙動が検知された場合には、より移動の確度が高い高確度挙動が検知されるまで、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト車両Aが走行し得る。したがって、高確度挙動が検知された場合に、走行から停車への移行がスムーズに実現され得る。
【0057】
加えて、第一実施形態によれば、許容制御を実行する場合に、ターゲット車両Bに対して、駐車スペースSpへの移動が可能であることを通知することを、さらに含む。故に、ホスト車両Aの許容制御に応じて、ターゲット車両Bの駐車スペースSpへの移動が通知により補助され得る。
【0058】
又、第一実施形態によれば、駐車スペースSpへの移動の完了条件が成立するまで、許容距離Dtを確保した状態でのホスト車両Aの停車が継続される。故に、駐車スペースSpへの移動が完了するまで、ターゲット車両Bの駐車を阻害することが回避され得る。
【0059】
(第二実施形態)
図に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0060】
第二実施形態において、ターゲット認識ブロック110は、作業移動体としてのターゲット車両Bについてのターゲット情報を取得する。作業移動体は、例えば、フォークリフト、牽引車、及びクレーン車のうち少なくとも一種類以上を含む。
【0061】
又、スペース認識ブロック120は、ホスト車両A周辺の作業スペースSwに関する作業スペース情報を取得する。スペース認識ブロック120は、地
図DB30が格納する地図データに含まれる作業スペース情報を取得すればよい。又は、スペース認識ブロック120は、外界センサ11による外界情報に含まれる作業スペース情報を取得すればよい。又は、スペース認識ブロック120は、V2Xタイプの通信系20による通信情報に含まれる作業スペース情報を取得してもよい。作業スペースSwは、「スペース」の一例である。
【0062】
挙動判定ブロック130は、ターゲット情報及び作業スペース情報に基づいて、ターゲット車両Bが作業スペースSwへの移動に関連する作業関連挙動を取っているか否かを判定する。挙動判定ブロック130は、例えば、ターゲット車両Bと作業スペースSwとの間の距離が作業距離範囲内であり、且つターゲット車両Bの車速が作業速度範囲内である場合に、作業関連挙動を取っていると判定する。作業距離範囲は、ターゲット車両Bと作業スペースSwとの間の距離が、距離閾値以下又は距離閾値未満となる範囲である。又、作業速度範囲は、ターゲット車両Bの車速が、車速閾値以下又は車速閾値未満となる範囲である。
【0063】
さらに、作業関連挙動は、駐車関連挙動と同様に、高確度挙動及び低確度挙動を含んでいる。高確度挙動は、作業スペースSwへの移動が実現される確度が低確度挙動より高い挙動である。低確度挙動は、作業スペースSwへの作業が実現される確度が高確度挙動より低い挙動である。挙動判定ブロック130は、判定対象のターゲット車両Bが取る作業関連挙動について、高確度挙動及び低確度挙動のいずれに該当するかを、さらに判定する。例えば、挙動判定ブロック130は、高確度条件が成立する場合に、作業関連挙動は高確度挙動に該当すると判定し、高確度条件が不成立である場合に、作業関連挙動は低確度挙動に該当すると判定する。高確度条件の具体例は、第一実施形態と実質同様である。尚、第一実施形態での高確度条件の詳細条件における「駐車スペースSp」は、第二実施形態においては「作業スペースSw」に置き換わる。
【0064】
以上の作業関連挙動は、ホスト車両Aの走路に接続されたスペースへの移動に関連する移動関連挙動の一例である。
【0065】
加えて、挙動判定ブロック130は、作業スペースSwへと到達したターゲット車両Bについて、移動を完了した完了条件が成立するか否かを判定する。例えば、完了条件は、作業スペースSw内にターゲット車両Bが留まる時間(作業時間)が完了時間範囲に到達することを含む。完了時間範囲は、作業時間が閾時間以上又は閾時間よりも大きくなる時間範囲である。又は、完了条件は、ターゲット車両Bの作業スペースSwへの入口部En通過からの経過時間が完了時間範囲に到達することを含んでいてもよい。尚、完了条件は、作業スペースSw内でのターゲット車両Bの停車時間が完了時間範囲に到達した場合に成立すると規定されてもよい。
【0066】
目標決定ブロック140は、挙動判定ブロック130における作業関連挙動に関する判定結果に基づいて、ホスト車両Aの目標挙動を決定する。目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて作業関連挙動を取っていないと判定された場合には、通常の目標車間距離及び目標速度でのホスト車両Aの走行を決定する。
【0067】
一方で、目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて作業関連挙動を取っていると判定された場合には、ホスト車両Aについて、ターゲット車両Bの作業スペースSwへの移動を許容する許容制御を実行することを決定する。目標決定ブロック140は、作業関連挙動が低確度挙動及び高確度挙動のいずれに該当するかに応じて、異なる許容制御を実行する。
【0068】
詳記すると、作業関連挙動が低確度挙動に該当すると判定された場合、目標決定ブロック140は、許容速度範囲内まで速度を低下させた状態でホスト車両Aを走行させる徐行制御を実行する。許容速度範囲は、許容速度閾値未満又は当該閾値以下となる速度範囲である。例えば、許容速度範囲は、現在時点からターゲット車両Bとの距離が許容距離Dtに到達する時点までの時間が、規定時間分確保できる速度範囲に設定される。規定時間は、予め設定された時間である。例えば、ターゲット車両Bが同方向車線に在る場合、規定時間は、車両が停車してから作業スペースSwへの後退を始めるまでの時間として設定されればよい。
【0069】
目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて高確度挙動が成立するまで、又は作業関連挙動が中断されるまで、以上の徐行制御を継続する。
【0070】
そして、作業関連挙動が高確度挙動に該当すると判定された場合、目標決定ブロック140は、走行中のホスト車両Aを、ターゲット車両Bに対して作業スペースSwへの移動を許容する許容距離Dtを確保した状態で停車させる停車制御を実行する。許容距離Dtは、例えば
図5に示すように、作業スペースSwへの入口部Enにおけるターゲット車両Bから遠い側の端部Ed1からホスト車両A側へと付加されるマージン距離Dmに基づき、決定される。
【0071】
尚、マージン距離Dmは、作業スペースSwの形状、位置、入口部Enの大きさ等に応じて変更されてもよい。例えば、以上のパラメータに基づき作業スペースSwへの移動の難易度が高いと推定されるほど、マージン距離Dmが拡張されてもよい。
【0072】
目標決定ブロック140は、ターゲット車両Bについて移動の完了条件が成立するまで、以上の停車制御を継続する。目標決定ブロック140は、完了条件が成立し、且つ作業関連挙動を取る他のターゲット車両Bが存在しない場合に、通常の走行制御を再開すればよい。又は、目標決定ブロック140は、完了条件が不成立であるターゲット車両Bについても、作業スペースSwから離れる等により作業関連挙動が中断された場合には、通常の走行制御を再開してよい。
【0073】
通知ブロック150は、高確度挙動を取るターゲット車両Bに対応する停車制御を実行する場合において、ターゲット車両Bに対して、作業スペースSwへの移動が可能であることを通知する。通知ブロック150は、V2Xタイプの通信系20を介して、通知を行ってもよい。通信系20を介した通知を取得したターゲット車両Bでは、車内提示タイプの情報提示系にて、作業スペースSwへの移動が可能であることが、乗員に提示されればよい。又は、通信系20を介した通知を取得したターゲット車両Bが自動運転車両である場合、通知に基づき、作業スペースSwへの移動のための車両制御が許可されてもよい。又は、通知ブロック150は、車外提示タイプの情報提示系40を介して、通知を行ってもよい。
【0074】
第二実施形態の走行制御フローを、
図6に従って以下に説明する。本処理フローは、ホスト車両Aの起動中に繰り返し実行される。尚、本処理フローにおける各「S」は、走行制御プログラムに含まれた複数命令によって実行される複数ステップを、それぞれ意味している。
図6のフローについて、第一実施形態における
図4のフローと同一の符号を付したステップについては、実質同様の処理であり、第一実施形態の説明を援用する。
【0075】
S10に続くS21では、スペース認識ブロック120が、作業スペース情報を取得する。続くS31では、挙動判定ブロック130が、作業スペースSw内のターゲット車両Bの有無を判定する。作業スペースSw内にターゲット車両Bが在ると判定すると、S41にて、当該ターゲット車両Bについて作業スペースSwへの移動の完了条件が成立したか否かを判定する。完了条件が成立したと判定されると、本フローがS90へと移行する。
【0076】
一方で、S31にて作業スペースSw内にターゲット車両Bがない、又はS41にて完了条件が不成立であると判定された場合には、本フローがS51へと移行する。S51では、挙動判定ブロック130が、ホスト車両Aの進行方向側からホスト車両Aの存在方向側へ向かって走行するターゲット車両B(作業移動体)が存在するか否かを判定する。作業移動体であるターゲット車両Bがないと判定されると、本フローがS70へと移行する。
【0077】
一方で、作業移動体であるターゲット車両Bが在ると判定すると、S61にて、挙動判定ブロック130が、当該ターゲット車両Bについて作業関連挙動を取っているか否かを判定する。作業関連挙動を取っていないと判定されると、本フローがS70へと移行する。
【0078】
一方で、S61にて作業関連挙動を取っていると判定されると、本フローがS81へと移行する。S81では、挙動判定ブロック130が、作業関連挙動に関して、高確度条件が成立しているか否かを判定する。高確度条件に該当すると判定すると、本フローがS90へと移行する。続くS101では、通知ブロック150が、作業スペースSwへの移動が可能であることをターゲット車両Bへと通知する。
【0079】
一方で、S81にて高確度条件が不成立である、すなわち作業関連挙動が低確度挙動に該当すると判定すると、本フローがS110へと移行する。
【0080】
(他の実施形態)
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0081】
変形例において、走行制御システム100は、移動関連挙動として、駐車関連挙動及び作業関連挙動の両方を検知してもよい。
【0082】
変形例において、ホスト車両A及びターゲット車両Bの少なくとも一方が、車両以外の移動体であってもよい。例えば、ホスト車両A及びターゲット車両Bの少なくとも一方が、物流ロボットであってもよい。
【0083】
変形例において、走行制御システム100は、許容距離Dtを確保した状態でホスト車両Aを停車させることが不可能であり、且つホスト車両Aの逆走が許容される場合、逆走させて許容距離Dtを確保してもよい。
【0084】
変形例において、走行制御システム100は、ターゲット車両Bが駐車関連挙動を取っているか否かを、ターゲット情報の入力に対して駐車関連挙動の実行有無を出力するように学習された学習済みモデルに基づいて、判定してもよい。又、走行制御システム100は、ターゲット車両Bが作業関連挙動を取っているか否かを、ターゲット情報の入力に対して作業関連挙動の実行有無を出力するように学習された学習済みモデルに基づいて、判定してもよい。
【0085】
変形例において、走行制御システム100は、低確度挙動が検知された場合であっても、高確度挙動が検知された場合と同様に、通知ブロック150による通知を実行してもよい。
【0086】
変形例において走行制御システム100を構成する専用コンピュータは、デジタル回路及びアナログ回路のうち、少なくとも一方をプロセッサとして有していてもよい。ここでデジタル回路とは、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、SOC(System on a Chip)、PGA(Programmable Gate Array)、及びCPLD(Complex Programmable Logic Device)等のうち、少なくとも一種類である。又こうしたデジタル回路は、プログラムを記憶したメモリを、有していてもよい。
【0087】
ここまでの説明形態の他、上述の実施形態及び変化例による走行制御システム100は、ホスト車両Aに搭載の処理装置(例えば処理ECU等)である走行制御装置として、実施されてもよい。又、上述の実施形態及び変化例は、走行制御システム100のプロセッサ102及びメモリ101を少なくとも一つずつ有した半導体装置(例えば半導体チップ等)として、実施されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
100:走行制御システム、101:メモリ(記憶媒体)、102:プロセッサ、A:ホスト車両(ホスト移動体)、B:ターゲット車両(ターゲット移動体)、Dm:マージン距離、Dt:許容距離、En:入口部、Ed1:端部、Sp:駐車スペース(スペース)、Sw:作業スペース(スペース)