(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】遠隔支援装置、遠隔支援システム、プログラム及び遠隔支援方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240509BHJP
G08G 1/09 20060101ALI20240509BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240509BHJP
B60R 1/22 20220101ALI20240509BHJP
G05D 1/00 20240101ALI20240509BHJP
【FI】
H04N7/18 J
G08G1/09 V
G01C21/36
B60R1/22
G05D1/00
(21)【出願番号】P 2021213094
(22)【出願日】2021-12-27
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】新内 翔太
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】松本 真聡
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-166605(JP,A)
【文献】特開2014-71776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08G 1/00
G01C 21/36
B60R 1/22
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操縦対象の車両(10)から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部(70、72)と、
前記取得部で取得した前記映像情報に基づいて前記映像を遠隔ドライバに表示する表示部(44)と、
前記遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部(74)と、
前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像(80、90、120、140)を、前記表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部(78)と、
を備える遠隔支援装置(40)。
【請求項2】
遠隔操縦対象の車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部と、
前記取得部で取得した前記映像情報に基づいて前記映像を遠隔ドライバに表示する表示部と、
前記遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部と、
前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって、映像撮像時の制御量を表す画像及び現在の制御量を表す画像(80、90、120、140)又は前記映像撮像時の制御量と前記現在の制御量との差分を表す画像(150)を含む補助画像を、前記表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部と、
を備える遠隔支援装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を、前記車両から更に取得し、
前記表示制御部は、前記紐づけ情報に基づいて、前記表示部に表示する映像に対応する前記映像撮像時の制御情報を特定する、
請求項1又は請求項2に記載の遠隔支援装置。
【請求項4】
前記制御情報生成部は、前記制御情報を識別情報に関連付けて記憶部に記憶し、前記識別情報を前記制御情報と共に前記車両に送信し、
前記紐づけ情報は、前記映像の撮像時刻を表す映像情報のタイムスタンプと前記映像の撮像時の制御情報の識別情報とを対応付けることにより、前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づけ、
前記表示制御部は、前記紐づけ情報を用いて前記取得部で取得した映像情報のタイムスタンプに対応する前記制御情報の識別情報を特定し、特定した前記識別情報に対応する制御情報を前記記憶部から取得して、前記表示部に表示する映像に対応する前記映像撮像時の制御情報とする、
請求項3に記載の遠隔支援装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記車両に対する遠隔操縦の実行中は、前記表示部に表示する映像に前記補助画像を重畳表示するように制御する、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項6】
前記制御情報の生成から当該制御情報に対応する映像の表示までの時間を遅延時間として計測する計測部(48)を更に備え、
前記表示制御部は、前記遅延時間が閾値を超えた場合に、前記表示部に表示する映像に前記補助画像を重畳表示するように制御する、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項7】
コンピュータを、
遠隔操縦対象の車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部、
遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部、
前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項8】
遠隔操縦対象の車両と、
前記車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記映像情報に基づいて前記映像を遠隔ドライバに表示する表示部と、前記遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部と、前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、前記表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部、を備える遠隔支援装置と、
を備え、
前記車両が、
車両周辺の映像を撮像する撮像部(22)と、
前記映像を表す映像情報を前記遠隔支援装置に送信する映像データ送信部(66)と、
前記遠隔支援装置から制御情報を受信して、受信した前記制御情報に基づいて車両を制御する車両制御部(64)と、
前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を生成して、前記遠隔支援装置に送信する紐づけ部(62)と、を備え、
前記遠隔支援装置の前記表示制御部は、前記車両から取得した前記紐づけ情報に基づいて、前記取得部で取得した映像情報に対応する前記映像撮像時の制御情報を特定する、
遠隔支援システム。
【請求項9】
前記紐づけ部は、前記映像の撮像時刻を表す映像情報のタイムスタンプと前記制御情報の識別情報とを対応付けることにより、前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づける、請求項8に記載の遠隔支援システム。
【請求項10】
前記映像情報と前記紐づけ情報とは、異なる通信経路で送信される、
請求項8又は請求項9に記載の遠隔支援システム。
【請求項11】
前記紐づけ情報は、前記映像情報に含めて送信される、
請求項8又は請求項9に記載の遠隔支援システム。
【請求項12】
車両は、
撮像部により撮像された車両周辺の映像を表す映像情報を取得して、前記映像情報を遠隔支援装置に送信し、
前記遠隔支援装置から制御情報を受信して、受信した前記制御情報に基づいて自車両を制御し、
前記映像情報と映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を生成して、生成した前記紐づけ情報を前記遠隔支援装置に送信し、
前記遠隔支援装置は、
前記車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得し、
遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信し、
前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を取得し、
前記紐づけ情報に基づいて、表示部に表示する映像に対応する前記映像撮像時の制御情報を特定し、
前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、前記表示部に表示する映像に重畳表示する、
遠隔支援方法。
【請求項13】
前記補助画像は、映像撮像時の制御量をアイコンで表示する画像である、
請求項1に記載の遠隔支援装置。
【請求項14】
前記補助画像は、映像撮像時の制御量と現在の制御量とを左右又は上下に並べて表示する並列画像である、
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項15】
前記並列画像は、前記映像の端部に重畳表示される、
請求項14に記載の遠隔支援装置。
【請求項16】
前記制御量は、操舵制御量及び加減速制御量の少なくとも一方を含み、前記操舵制御量及び前記加減速制御量の各々はアイコンで表示される、
請求項14又は請求項15に記載の遠隔支援装置。
【請求項17】
前記操舵制御量のアイコンは、操舵を表すマークと前記操舵制御量を表すインジケータとを含む、
請求項16に記載の遠隔支援装置。
【請求項18】
前記加減速制御量のアイコンは、前記加減速制御量の制限枠を含み、着色領域が前記制限枠内に占める割合で前記加減速制御量を表す、
請求項16又は請求項17に記載の遠隔支援装置。
【請求項19】
前記映像撮像時の前記加減速制御量のアイコンは、車両の加速度の表示を伴う、
請求項16から請求項18までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項20】
前記補助画像は、映像撮像時の制御量と現在の制御量との差分を表す差分画像である、
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項21】
前記差分画像は、前記映像の端部に重畳表示される、
請求項20に記載の遠隔支援装置。
【請求項22】
前記差分は、操舵制御量の差分及び加減速制御量の差分の少なくとも一方を含み、前記操舵制御量の差分及び前記加減速制御量の差分の各々はアイコンで表示される、
請求項20又は請求項21に記載の遠隔支援装置。
【請求項23】
前記操舵制御量の差分のアイコンは、操舵を表すマークと前記操舵制御量の差分を表すインジケータを含む、
請求項22に記載の遠隔支援装置。
【請求項24】
前記加減速制御量の差分のアイコンは、前記加減速制御量の制限枠を含み、2種類の着色領域が前記制限枠内に占める割合の差分で前記加減速制御量の差分を表す、
請求項22又は請求項23に記載の遠隔支援装置。
【請求項25】
前記補助画像が、映像撮像時の制御量を表す矢印型のアイコンと現在の制御量を表す矢印型のアイコンとを表示する標識画像である、
請求項2から請求項6までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項26】
前記標識画像は、前記映像の中央部に重畳表示される、
請求項25に記載の遠隔支援装置。
【請求項27】
前記矢印型のアイコンは、矢印の向きで車両の進行方向を表す、
請求項25又は請求項26に記載の遠隔支援装置。
【請求項28】
2つの矢印型のアイコンは同じ起点を有し、矢印の長さで車両の速度を表し、矢印内のインジケータで加減速制御量を表す、
請求項25から請求項27までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項29】
2つの矢印型のアイコンは異なる起点を有し、各起点は制御情報に基づく制御が行われる時間の車両の位置を表し、矢印の長さで車両の速度を表し、矢印内のインジケータで加減速制御量を表す、
請求項25から請求項27までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項30】
前記補助画像が、速度の表示及び遅延時間の表示の少なくとも一方を含む、
請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の遠隔支援装置。
【請求項31】
前記遅延時間が、数字、アイコン、又は前記映像の外枠の色で表示される、
請求項30に記載の遠隔支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠隔支援装置、遠隔支援システム、プログラム及び遠隔支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支援対象の車両から取得した車両周辺の映像を遠隔ドライバに表示して、遠隔ドライバによる車両の遠隔操縦を行うシステムが種々開発されている。このようなシステムでは、遠隔ドライバは、映像の遅延により必要な制御量を把握するのが難しい。
【0003】
特許文献1には、移動領域の画像を取得する撮像部を搭載した移動体と、その撮像部によって取得した画像を表示する表示部、及びその表示部に表示された画像に基づいて移動体を遠隔操縦するための操縦部を備えた遠隔操縦装置とを含む遠隔操縦システムにおいて、上記移動体と遠隔操縦装置との間における通信遅延時間を推定する遅延時間推定手段と、移動領域の画像を取得した時刻から所要時間経過後までの移動体の移動予定経路、移動速度及び推定遅延時間に基づいて、移動体が遠隔操縦装置によって操縦制御される時刻における移動体位置を推定する移動体位置推定手段と、推定した移動体位置に対応する旋回操作基準点を、表示部に表示されている画像に重畳表示する重畳表示手段とを設けたことを特徴とする遠隔操縦システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、映像の遅延を考慮してはいるが、現在の指令が到達する時間の車両の位置を制御結果として表示するのみであり、映像撮像時点でどの程度の制御を行っていたか、その結果、車両の位置がどの程度変位したかといった、遅延時間中の制御の経緯は不明である。
【0006】
このため、遅延映像に慣れていない遠隔ドライバは、表示される過去映像の時点ではまだ車両に制御値が到達していないにも拘わらず、それが到達したうえで制御量が不足していると誤解し、不必要に制御を強めてしまう虞がある。
【0007】
本開示の目的は、遠隔ドライバが表示映像の撮像時点での制御量を知ることができ、映像撮像時の制御量と現在の制御量とのギャップを把握することができる、遠隔支援装置、遠隔支援システム、プログラム及び遠隔支援方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様による遠隔支援装置は、遠隔操縦対象の車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記映像情報に基づいて前記映像を遠隔ドライバに表示する表示部と、前記遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部と、前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、前記表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部と、を備える。
【0009】
本開示の一態様によるプログラムは、コンピュータを、遠隔操縦対象の車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部、遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部、前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部、として機能させるためのプログラムである。
【0010】
本開示の一態様による遠隔支援システムは、遠隔操縦対象の車両と、前記車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得する取得部と、前記取得部で取得した前記映像情報に基づいて前記映像を遠隔ドライバに表示する表示部と、前記遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信する制御情報生成部と、前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、前記表示部に表示する映像に重畳表示するように制御する表示制御部、を備える遠隔支援装置と、を備え、
前記車両が、車両周辺の映像を撮像する撮像部と、前記映像を表す映像情報を前記遠隔支援装置に送信する映像データ送信部と、前記遠隔支援装置から制御情報を受信して、受信した前記制御情報に基づいて車両を制御する車両制御部と、前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を生成して、前記遠隔支援装置に送信する紐づけ部と、を備え、前記遠隔支援装置の前記表示制御部は、前記車両から取得した前記紐づけ情報に基づいて、前記取得部で取得した映像情報に対応する前記映像撮像時の制御情報を特定する。
【0011】
本開示の一態様による遠隔支援方法では、車両は、撮像部により撮像された車両周辺の映像を表す映像情報を取得して、前記映像情報を遠隔支援装置に送信し、前記遠隔支援装置から制御情報を受信して、受信した前記制御情報に基づいて自車両を制御し、前記映像情報と映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を生成して、生成した前記紐づけ情報を前記遠隔支援装置に送信し、前記遠隔支援装置は、前記車両から車両周辺の映像を表す映像情報を取得し、遠隔ドライバから操作入力を受け付けて車両を制御するための制御量を含む制御情報を周期的に生成し、生成された前記制御情報を前記車両に送信し、前記映像情報と前記映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を取得し、前記紐づけ情報に基づいて、表示部に表示する映像に対応する前記映像撮像時の制御情報を特定し、前記遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像であって少なくとも映像撮像時の制御量を表す画像を含む補助画像を、前記表示部に表示する映像に重畳表示する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る遠隔支援システムの構成の一例を示す模式図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る補助画像が重畳表示された映像の一例を示す図であり、補助画像は、映像撮像時の制御情報と現在の制御情報とを左右又は上下に並べて表示する並列画像である。
【
図3】本開示の遠隔支援方法の概念を示す概念図である。
【
図4】車載装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】遠隔支援装置の電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本開示の遠隔支援システムの各部の機能的な構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】本開示の車載装置側及び遠隔支援装置側の各々で実行される車両制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】車載装置側で実行される映像送信処理及び遠隔支援装置側で実行される映像表示処理の各々の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図8に示す「重畳表示処理」の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図10】(A)~(D)は補助画像に含まれる操舵制御量を表すアイコンの一例を示す図である。
【
図11】(A)~(F)は補助画像に含まれる操舵制御量を表すアイコンの一例を示す図である。
【
図12】(A)~(C)は補助画像に含まれる加減速制御量を表すアイコンの一例を示す図である。
【
図13】本開示の実施形態に係る補助画像が重畳表示された映像の一例を示す図であり、補助画像は、映像撮像時の制御情報と現在の制御情報の各々について操舵制御量を表すアイコンと加減速制御量を表すアイコンとをセットで表示する。
【
図14】(A)は
図13に示す加減速制御量を表すアイコンが加速度表示を伴う例を示す図であり、(B)及び(C)は加速度を表すアイコンの一例を示す図である。
【
図15】本開示の実施形態に係る補助画像が重畳表示された映像の一例を示す図であり、補助画像は、映像撮像時の制御情報を表す矢印型のアイコンと現在の制御情報を表す矢印型のアイコンとを表示する標識画像である。
【
図16】遅延時間における車両の軌跡を上から見た図である。
【
図17】(A)及び(B)は矢印型のアイコンの一例を示す図である。
【
図18】本開示の実施形態に係る矢印型のアイコンを含む補助画像が重畳表示された映像の他の一例を示す図である。
【
図19】遅延時間における車両の軌跡を上から見た図である。
【
図21】(A)は本開示の実施形態に係る補助画像が重畳表示された映像の一例を示す図であり、補助画像は、映像撮像時の制御情報と現在の制御情報との差分を表す差分画像であり、(B)は映像撮像時の制御情報と現在の制御情報とを表示した場合との違いを説明する図である。
【
図22】(A)は本開示の実施形態に係る遅延時間の表示が重畳表示された映像の一例を示す図であり、(B)は枠の色と遅延時間の長さとの関係を示すグラフである。
【
図24】補助画像の重畳表示をオンオフする様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
<全体システム>
まず、本開示の遠隔支援システムの概要について説明する。
本開示の遠隔支援システムは、自律的に走行する自動運転車両(以下、「車両」という。)からの支援要求があった場合に、遠隔地に居る遠隔ドライバが、支援対象の車両の遠隔操縦を行うシステムである。
【0015】
図1に示すように、本開示の実施形態に係る遠隔支援システムは、車両10と、管理センタの遠隔コックピット12に設置された遠隔支援装置40とを備えている。車両10は、無線基地局を介してインターネット等の公衆網であるネットワークに接続されている。車両10は、ネットワークに接続された遠隔支援装置40と無線により通信を行う。
【0016】
車両10は、車載装置20及び車両周辺の映像を撮像する車載カメラ等のカメラ22を備えている。車載装置20は、車両に搭載される電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)等の情報処理装置である。車載装置20は、自動運転の制御を行うための制御機能(図示せず)を備えている。制御機能は、指定された目的地までの経路に従って走行するように、車両10の各機構を制御することにより自動運転を実現する。
【0017】
車載装置20は、カメラ22で取得された映像データや、車速や車両位置等の車両情報を遠隔支援装置40に送信している。そして、車載装置20は、遠隔ドライバDによる遠隔操縦が必要な場合に、遠隔支援装置40に支援を要求する。
【0018】
遠隔支援装置40は、車両10に対して遠隔支援を行う装置である。遠隔支援装置40は、遠隔支援サーバである情報処理装置42、遠隔ドライバDに車両周辺の映像を提示する表示部44、及び遠隔ドライバDによる操作を受け付ける操作部46を備えている。
【0019】
情報処理装置42は、車載装置20から映像データや車両情報を取得し、取得した映像データに基づく映像を表示部44に表示させる。情報処理装置42は、車載装置20から支援要求を受け付けると、遠隔ドライバDに車両10の遠隔操縦を行わせる。遠隔ドライバDは、表示部44に表示された映像を見ながら、操作部46のハンドルやペダルを操作して車両10を遠隔操縦する。遠隔操縦の実行中、情報処理装置42は、遠隔ドライバDからの操作入力に応じた制御情報を生成し、生成された制御情報を車載装置20に送信する。
【0020】
(表示映像)
本開示の遠隔支援システムでは、
図2に示すように、遠隔ドライバDに提示する映像に、遠隔ドライバによる遠隔操縦を補助する補助画像を重畳表示する。補助画像は、少なくとも映像撮像時の制御情報から生成された画像であり、好ましくは、映像撮像時の制御情報と現在の制御情報とから生成された画像である。ここで「現在の制御情報」とは、直近の制御周期で生成された最新の制御情報である。後述する通り、制御情報は操舵や加減速に関する制御値を含み、制御値は制御量を表す。遠隔ドライバDが直感的に制御量を把握できるように、補助画像では各制御量はアイコン等の画像で表現されている。
【0021】
例えば、図示した例では、表示映像250は、元の映像200に対して、操舵制御量の表示80、加減速制御量の表示90、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を補助画像として重畳表示した映像である。操舵制御量の表示80は、映像撮像時の操舵制御量を表す撮像時のアイコン80Aと現在の操舵制御量を表す現在のアイコン80Dとを含む。加減速制御量の表示90は、映像撮像時の加減速制御量を表す撮像時のアイコン90Aと現在の加減速制御量を表す現在のアイコン90Dとを含む。車両速度及び遅延時間は数値で表示されている。なお、補助画像の詳細については後述する。
【0022】
映像は遅延して表示されるため、遠隔ドライバDは、表示される過去の映像を見て少し未来の車両状態を想像する必要がある。しかしながら、想像上の車両状態に対しどの程度の制御量が必要かを瞬時に判断することは非常に難しい。このため、遠隔ドライバDが異常な制御を行う虞がある。例えば、遠隔ドライバDは、右にハンドルを切ったにも拘わらす、映像上で車両が右に旋回しない場合に、更に右にハンドルを切る等、過去の映像が表示された時点ではまだ車両へ制御値が到達していないにも拘わらず、それが到達したうえで制御量が不足していると誤解し、不必要に制御を強めてしまう。
【0023】
本開示の遠隔支援システムでは、映像撮像時の制御量を表すアイコンなどが映像に重畳表示されるので、遠隔ドライバDは、現在見ている映像における車両の動きを引き起こした制御量を知ることができる。遠隔ドライバDは、過去の制御量を基に、現在ハンドルを切る必要が無いなどの判断を行うことができ、上述した異常な制御を抑制することができる。また、映像撮像時の制御量を表すアイコンと現在の制御量を表すアイコンの両方を映像に重畳表示することで、遠隔ドライバDは、映像撮像時の制御量と現在の制御量とのギャップを把握することができる。
【0024】
(紐づけ情報)
映像撮像時の制御量をその映像に重畳表示するためには、映像データと映像撮像時の制御情報とが紐づけられていることが重要である。本実施の形態では、車載装置20が、映像撮像時に、映像データとその映像撮像時の制御情報とを紐づける紐づけ情報を生成し、紐づけ情報を遠隔支援装置40に送信する。
【0025】
例えば、
図3に示すように、遠隔側で遠隔ドライバDが制御Aを行い、制御Aの制御情報が車両側に到達する。車両側で制御Aに基づく車両制御が行われて、その様子を撮像する撮像bが行われる。撮像bの映像データは、エンコードされて遠隔側に送信される。遠隔側では、撮像bの映像データをデコードして撮像bの映像を表示する。ここで、撮像bの映像が表示された時点を「現時点」とする。現時点において、遠隔側では遠隔ドライバDが制御Dを行っている。この例では、撮像bの映像データと制御Aの制御情報とが紐づけられる。また、撮像bの映像には、制御Aの制御量を表す画像と、制御Dの制御量を表す画像とが重畳表示される。
【0026】
遠隔側で制御Aの制御情報が生成されてから制御Aの制御情報が車両側に到達するまでの制御遅延T_ctrlと、撮像bの映像データが生成されてから撮像bの映像が表示されるまでの映像遅延T_videoとは一定ではなく、通信状況等により変動する。本実施の形態では、車両側で紐づけを行うことにより、通信遅延やその揺らぎの影響を受けることなく、映像データと映像撮像時の制御情報とを紐づけることができる。
【0027】
<各装置の電気的構成>
次に、車両10の電気的構成の一例について説明する。
図4に示すように、車両10は、車載装置20、カメラ22、各種センサ24、車両制御部26、通信部28、及び記憶部30を備えている。ECU等の情報処理装置である車載装置20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、不揮発性のメモリ20D、及び入出力部(I/O)20Eを備えており、これら各部はバス20Fにより相互に接続されている。カメラ22、各種センサ24、車両制御部26、通信部28、及び記憶部30の各部は、I/O20Eに接続されている。
【0028】
CPU20Aは、記憶部30からプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。CPU10Aは、記憶部30に記憶されているプログラムにしたがって、I/O20Eに接続されている各部の制御及び各種の演算処理を行う。
【0029】
カメラ22は、車両の前方、側方など車両の周囲を撮影する車載カメラである。車両10には、複数のカメラ22が設けられていてもよい。各種センサ24は、車載カメラの外に、車両の周囲の障害物を検知するミリ波レーダやLIDAR(Light Detection and Ranging/Laser Imaging Detection and Ranging)、自車両の現在位置を取得するGPS(Global Positioning System)装置、車両周囲の音声を収集するマイクロフォン等を含んでいてもよい。GPS装置は、標準時刻の取得にも利用することができる。
【0030】
車両制御部26は、遠隔側から受信した制御情報に応じて車両10の各機構を制御する制御部であり、この制御により遠隔操縦を実現する。通信部28は、外部(主に遠隔支援装置40)と通信するための通信インタフェースであり、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の狭域無線通信規格、LTE(Long Term Evolution)や4G、5G等の広域無線通信規格が用いられる。
【0031】
記憶部30は、HDD(Hard Disk Drive)等の外部記憶装置である。記憶部30には、各種プログラムや各種データが格納されている。本実施の形態では、記憶部30には、後述する「車両制御処理」や「映像送信処理」を実行するための車両制御プログラム32、映像送信プログラム34が格納されている。
【0032】
次に、遠隔支援装置40の電気的構成の一例について説明する。
図5に示すように、遠隔支援装置40は、上述した情報処理装置42、表示部44、操作部46の外に、時間計測部48、通信部50、及び記憶部52を備えている。遠隔支援サーバである情報処理装置42は、CPU42A、ROM42B、RAM42C、不揮発性のメモリ42D、及び入出力部(I/O)42Eを備えており、これら各部はバス42Fにより相互に接続されている。表示部44、操作部46、時間計測部48、通信部50及び記憶部52の各部は、I/O42Eに接続されている。
【0033】
情報処理装置42及び通信部50は、車載装置20と同様の構成であるため説明を省略する。表示部44は、ディスプレイ等の表示装置である。表示部44は、複数のディスプレイを含むマルチディスプレイとしてもよい。操作部46は、遠隔ドライバDによる操作を受け付ける操作入力部であり、例えば、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダル等を含んでいてもよい。
【0034】
時間計測部48は、時間を取得する機能を備える時計等であり、制御情報を生成した時刻等を記録するのに使用する。例えば、車両側と時間同期させるために、標準時刻を取得可能なGPS装置としてもよい。記憶部52は、HDD等の外部記憶装置である。記憶部52には、後述する「車両制御処理」や「映像表示処理」を実行するための車両制御プログラム54、映像表示プログラム56や、生成した制御情報を時系列に記録した制御履歴58が格納されている。
【0035】
<システムの機能構成>
次に、
図6を参照して遠隔支援システムの機能構成の一例について説明する。
車載装置20は、映像データ送信部60、紐づけ部62、及び車両制御部64を備えている。一方、遠隔支援装置40は、情報処理装置42、表示部44、及び操作部46を備えている。また、情報処理装置42は、映像取得部70、紐づけ情報取得保持部72、制御情報生成部74、制御値記憶部76、及び表示制御部78を備えている。これらの機能部は、後述する各制御プログラムが実行されることによって実現される。
【0036】
遠隔側では、制御情報生成部74が、操作部46により遠隔ドライバから操作入力を受け付けると、操作入力に応じた制御値を周期的に生成し、その制御値を識別するための制御IDを生成して、制御値とその制御IDとを車両側に送信する。また、制御情報生成部74は、制御値を生成した時刻を取得し、生成した制御値を生成時刻及び制御IDと関連付けて制御値記憶部76に時系列に記憶しておく。このように互いに関連付けて記憶しておくことで、制御IDや生成時刻から特定の制御値を引き出すことができる。
【0037】
車両側では、映像データ送信部60が、カメラ22から映像データを取得し、取得した映像データをパケットに分割して(即ち、エンコードして)遠隔側に送信する。このとき、映像データのパケットに付与されるタイムスタンプを取得し、紐づけ部62に出力する。タイムスタンプは、時刻そのものではないが、映像の撮像時刻に応じて付与される文字列であり、映像データを識別する役割を果たす。
【0038】
車両制御部64は、遠隔側から制御情報を受信し、制御情報に含まれる制御値に応じて車両10の各機構を制御する。また、車両制御部64は、制御情報に含まれる制御IDを紐づけ部62に出力する。紐づけ部62は、タイムスタンプと制御IDとを紐づける紐づけ情報を生成して、遠隔側に送信する。紐づけ情報により、映像が撮像された時刻を表すタイムスタンプと、映像の撮像時に車両側で取得された制御情報の制御IDとが紐づけられる。紐づけ情報は、映像データを送信する仕組みに影響を与えることなく、映像データとは別のデータストリームで遠隔側に送信される。
【0039】
遠隔側では、映像取得部70が、車両側から映像データのパケットを受信し、受信したパケットをデコードして映像データを復元し、パケットに付与されたタイムスタンプを取得する。映像取得部70は、映像データとタイムスタンプとを表示制御部78に出力する。また、紐づけ情報取得保持部72は、車両側から紐づけ情報を受信し、受信した紐づけ情報を保持しておく。紐づけ情報は、映像データよりもデータのサイズが小さいため、通信遅延がほとんど生じない。このため、紐づけ情報取得保持部72は、対応する映像データが届くまで紐づけ情報を保持しておく。例えば、タイムスタンプに関連付けて制御IDを記憶しておくことで、タイムスタンプから特定の制御IDを引き出すことができる。
【0040】
遠隔側では、表示制御部78は、映像データが入力されると、映像データと一緒に入力されたタイムスタンプを取得し、同じタイムスタンプを含む紐づけ情報を特定し、その紐づけ情報でタイムスタンプに紐づけられた制御IDを特定する。そして、表示制御部78は、制御IDに関連付けられた制御値を映像撮像時の制御値として取得すると共に、現在の制御値を取得する。表示制御部78は、映像撮像時の制御値及び現在の制御値を用いて補助画像を生成し、生成した補助画像を重畳表示した映像を生成して、表示部44に表示する。
【0041】
(車両制御プログラム)
次に、
図7を参照して、車載装置側及び遠隔支援装置側の各々で実行される車両制御プログラムの処理の流れを説明する。車両制御プログラム32は、車載装置20のCPU20Aによって実行され、車両制御プログラム54は、遠隔支援装置40の情報処理装置42のCPU42Aによって実行される。これらのプログラムの実行は、車載装置20側から遠隔支援装置40に支援が要求されると開始される。
【0042】
遠隔側では、まず、ステップS200で、CPU42Aは、制御周期が到来したかを判断し、制御周期が到来するとステップS202に進む。次にステップS202で、CPU42Aは、遠隔ドライバから操作入力を受け付けて制御値と制御IDとを生成する。次にステップS204で、CPU42Aは、通信部50を制御して、制御値と制御IDとを含む制御情報を車両側に送信させる。
【0043】
次にステップS206で、CPU42Aは、制御値と制御IDとを関連付けて記憶部52に時系列に格納する。次にステップS208で、CPU42Aは、支援終了か否か、即ち、遠隔ドライバから遠隔操縦のタスク終了が指示されたか否かを判断する。タスク続行の場合は、ステップS200に戻って次の制御周期まで待機し、タスク終了の場合はルーチンを終了する。
【0044】
一方、車両側では、ステップS100で、CPU20Aは、通信部28を介して遠隔側から制御情報を受信したことを確認すると、制御情報から制御値を取得する。続くステップS102で、CPU20Aは、制御値に基づいて車両を制御する。次にステップS104で、CPU20Aは、遠隔側からの制御情報の受信が終了したか否かを判断する。遠隔側からタスク終了通知を受信した場合、又は制御情報を予め定めた期間受信しなかった場合に、制御情報の受信が終了する。受信終了の場合はルーチンを終了し、それ以外の場合はステップS100に戻る。
【0045】
次に、
図8を参照して、車載装置側で実行される映像送信プログラムの処理の流れと、遠隔支援装置側で実行される映像表示プログラムの処理の流れとを説明する。映像送信プログラム34は、車載装置20のCPU20Aによって実行され、映像表示プログラム56は、遠隔支援装置40の情報処理装置42のCPU42Aによって実行される。これらのプログラムの実行は、車両の運転が開始されると開始される。なお、車両の走行中は、支援の有無に拘わらず、遠隔側に映像データと紐づけ情報とが送信され、遠隔側の表示部には映像が表示されているものとする。
【0046】
車両側では、まず、ステップS300で、CPU20Aは、カメラ22から映像データを取得し、続くステップS302で、映像データをエンコードしてパケットを生成する。次にステップS304で、CPU20Aは、通信部28を制御して、映像データのパケットを遠隔側に送信させる。
【0047】
次にステップS306で、CPU20Aは、映像データのパケットに付与されるタイムスタンプを取得する。次にステップS308で、CPU20Aは、映像撮像時の制御値に対応する制御IDを取得する。次にステップS310で、CPU20Aは、タイムスタンプと制御IDとを紐づけて紐づけ情報を生成する。次にステップS312で、CPU20Aは、通信部28を制御して、紐づけ情報を遠隔側に送信させる。
【0048】
次にステップS314で、CPU20Aは、運転終了か否かを判定する。運転終了の場合はルーチンを終了し、運転続行の場合はステップS300に戻る。
【0049】
遠隔側では、まず、ステップS400で、CPU42Aは、通信部50を介して車両側から紐づけ情報を受信したことを確認し、受信した紐づけ情報をメモリ42Dに記憶しておく等して保持しておく。次にステップ402で、CPU42Aは、通信部50を介して車両側から映像データのパケットを受信したことを確認し、続くステップS404で、CPU42Aは、受信したパケットをデコードして映像データを復元する。続くステップS406で、CPU42Aは、パケットに付与されたタイムスタンプを取得する。
【0050】
なお、ここでは、ステップS400~S406の処理を所定の順序で記載しているが、ステップS400~S406の処理の順序は適宜入れ替えてもよい。上述した通り、紐づけ情報は、映像データよりもデータのサイズが小さいため、通信遅延がほとんど生じない。このため、映像データが遅延している間に、対応する紐づけ情報が先に受信される。複数の紐づけ情報が先に受信される場合もある。したがって、遠隔側では、各情報を受信したことに応じて対応する処理を行えばよい。
【0051】
次にステップS408で、CPU42Aは、予め定めた判断基準に従って補助画像の重畳表示を行うか否かを判断する。第1の実施形態では、遠隔ドライバによる遠隔操縦の実行中は、補助画像の重畳表示を行い、それ以外の場合は補助画像の重畳表示を行わないこととする。補助画像の重畳表示を行わない場合は、ステップS410に進む。次にステップS410で、CPU42Aは、表示部44を制御して、通常の映像を表示させる。
【0052】
一方、補助画像の重畳表示を行う場合は、ステップS414に進む。次にステップS414で、CPU42Aは、補助画像を元の映像に重畳表示する「重畳表示処理」を実行する。次にステップS412で、CPU42Aは、運転終了か否かを判定する。運転終了の場合はルーチンを終了し、運転続行の場合はステップS400に戻る。
【0053】
ここで、
図9を参照して「重畳表示処理」の流れを説明する。
まず、ステップS500で、CPU42Aは、映像データから取得したタイムスタンプに対応する制御IDを取得する。続くステップS502で、CPU42Aは、制御IDに関連付けられた制御値を、映像撮像時の制御値として取得する。次にステップS504で、CPU42Aは、現在の制御値を取得する。次にステップS506で、CPU42Aは、映像撮像時の制御値及び現在の制御値を用いて補助画像を生成する。続くステップS508で、CPU42Aは、補助画像を重畳表示した映像を生成し、表示部44を制御して補助画像を重畳表示した映像を表示させる。
【0054】
<補助画像>
次に、補助画像のバリエーションについて説明する。
第1の実施の形態では、操舵制御量の表示80、加減速制御量の表示90、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を補助画像として重畳表示する。
【0055】
ここで、
図10及び
図11を参照して、操舵制御量の表示80のバリエーションについて詳細に説明し、
図12を参照して、加減速制御量の表示90のバリエーションについて詳細に説明する。
【0056】
(操舵制御量の表示)
図10(A)に示す例では、操舵制御量の表示80は、映像撮像時の操舵制御量を表す撮像時のアイコン80Aと、現在の操舵制御量を表す現在のアイコン80Dと、を左右に並べて表示したものである。右側に配置された撮像時のアイコン80Aと左側に配置された現在のアイコン80Dとの間には、時間の推移を表す左向きの矢印88が配置されている。
【0057】
撮像時のアイコン80Aは、ハンドルの絵柄で操舵を表すマーク82Aと、操舵方向及び操舵角を表すインジケータ86Aとを含む。マーク82Aには、基準マーク84Aが設けられている。マーク82Aはハンドルの回転角度で操舵角を表しており、基準マーク84Aがハンドルの水平方向の中央にあるときに操舵角が0°となる。インジケータ86Aは1つ又は複数の矢印で構成されている。矢印の向きが操舵方向、即ち、右旋回か左旋回かを表し、矢印の個数が操舵角の大きさを表す。同様に、現在のアイコン80Dも、操舵を表すマーク82D、基準マーク84D、及びインジケータ86Dを含む。
【0058】
このようなアイコンによれば、遠隔ドライバは、操舵方向や操舵角を直感的に把握することができる。また、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dの2つが表示される場合には、過去と現在の操舵方向や操舵角のギャップを直感的に把握することができる。例えば、
図10(A)に示す例では、遠隔ドライバは、右旋回制御から左旋回制御に移行中であることを確認することができる。
【0059】
図10(B)に示すように、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dとで配色を変更してもよい。例えば、撮像時のアイコン80Aのマーク82Aに黒などの濃色を使用し、現在のアイコン80Dのマーク82Dにグレーなどの淡色を使用する。撮像時のアイコン80Aに対し濃色を使用することで、撮像時のアイコン80Aを現在のアイコン80Dよりも強調表示することができる。なお、アイコンの配色を変更する代わりに、アイコンの背景の色を変更してもよい。また、
図10(A)と同様に、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dとの間に矢印88を配置してもよい。
【0060】
図10(C)及び(D)に示すように、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dの位置関係を変更してもよい。例えば、
図10(C)に示すように、左側に撮像時のアイコン80Aを配置し、左側に現在のアイコン80Dを配置して、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dとの間に右向きの矢印88を配置してもよいし、
図10(D)に示すように、上側に撮像時のアイコン80Aを配置し、下側に現在のアイコン80Dを配置して、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dとの間に下向きの矢印88を配置してもよい。
【0061】
また、インジケータ86Aについても種々の変更が可能である。ここでは、撮像時のアイコン80Aのインジケータ86Aの変形例を例示するが、現在のアイコン80Dのインジケータ86Dについても同様の変更が可能である。
【0062】
例えば、
図11(A)及び(B)に示すように、インジケータ86Aを、ハンドルの回転中心に対して放射状に配置される1つ又は複数のバーで構成してもよい。この場合は、例えば、右旋回は緑色、左旋回は黄色などバーの色が操舵方向を表し、バーの個数が操舵角の大きさを表す。また、インジケータ86Aを、
図11(C)に示すように円弧状のゲージとしてもよく、
図11(D)に示すように棒状のゲージとしてもよい。更に、
図11(E)及び(F)に示すように、インジケータ86Aをスパイラル状としてもよい。インジケータ86Aをスパイラル状とすることで、操舵角が360°を超える場合も、操舵角の大きさを的確に表現することができる。
【0063】
(加減速制御量の表示)
図12(A)に示す例では、加減速制御量の表示90は、映像撮像時の加減速制御量を表す撮像時のアイコン90Aと、現在の加減速制御量を表す現在のアイコン90Dと、を左右に並べて表示したものである。右側に配置された撮像時のアイコン90Aと左側に配置された現在のアイコン90Dとの間には、時間の推移を表す左向きの矢印96が配置されている。
【0064】
撮像時のアイコン90Aは、背景92Aと、ペダル量を表すインジケータ94Aとを含む。インジケータ94Aは、複数のバーを縦方向に沿って配列したものである。全部のバーでペダル量の上限値を表し、全部のバーに対する着色されたバーの割合で制御値に対応したペダル量を段階的に表す。例えば、下から2つ目まで着色されるとアクセルは2段階目、下から3つ目まで着色されるとアクセルは3段階目というように、ペダル量は段階的に増減する。アクセルの場合はバーを緑色に着色し、ブレーキの場合はバーを赤色に着色する等、バーの色でアクセルとブレーキを区別する。同様に、現在のアイコン90Dも、背景92Dと、ペダル量を表すインジケータ94Dとを含む。
【0065】
このようなアイコンによれば、遠隔ドライバは、アクセルとブレーキの別やペダル量を直感的に把握することができる。また、撮像時のアイコン90Aと現在のアイコン90Dの2つが表示される場合には、過去と現在のペダル量のギャップを直感的に把握することができる。例えば、
図12(A)に示す例では、遠隔ドライバは、アクセルを2段階目から4段階目に移行中であることを確認することができる。
【0066】
図12(B)及び
図12(C)に示すように、撮像時のアイコン90Aと現在のアイコン90Dとで配色を変更してもよい。例えば、
図12(B)に示すように、撮像時のアイコン90Aのインジケータ94Aのバーを濃い緑色などの濃色で着色し、現在のアイコン90Dのインジケータ94Dのバーを淡い緑色などの淡色で着色する。或いは、
図12(C)に示すように、撮像時のアイコン90Aの背景92Aに黒色などの濃色を使用し、現在のアイコン90Dの背景92Dにグレーなどの淡色を使用する。撮像時のアイコン90Aに対し濃色を使用することで、撮像時のアイコン90Aを現在のアイコン90Dよりも強調表示することができる。
【0067】
その他、操舵制御量の表示80と同様に、撮像時のアイコン90Aと現在のアイコン90Dとの左右の配置を反転させる、撮像時のアイコン90Aと現在のアイコン90Dとを上下に配置する等、撮像時のアイコン80Aと現在のアイコン80Dの位置関係を変更してもよい。
【0068】
以上説明した通り、第1の実施の形態によれば、映像撮像時の制御量を表すアイコンが映像に重畳表示されるので、遠隔ドライバは、現在見ている映像における車両の動きを引き起こした制御量を直感的に把握することができる。遠隔ドライバは、過去の制御量を基に、現在、ハンドルを切る必要が無いなどの判断を行うことができ、異常な制御を抑制することができる。また、映像撮像時の制御量を表すアイコンと現在の制御量を表すアイコンの両方が映像に重畳表示されることで、遠隔ドライバは、映像撮像時の制御量と現在の制御量とのギャップを直感的に把握することができる。
【0069】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、補助画像の構成が第1の実施形態とは異なる以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0070】
第1の実施形態では、補助画像は、操舵制御量の表示80、加減速制御量の表示90、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を含むが、第2の実施形態では、
図13に示すように、補助画像は、映像撮像時の制御量の表示120A、現在の制御量の表示120D、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を含む。
【0071】
映像撮像時の制御量の表示120Aは、映像撮像時の操舵制御量を表す撮像時のアイコン80Aと、映像撮像時の加減速制御量を表す撮像時のアイコン90Aと、を左右に並べて表示したものである。また、現在の制御量の表示120Dは、現在の操舵制御量を表す現在のアイコン80Dと、現在の加減速制御量を表す現在のアイコン90Dとを左右に並べて表示したものである。このように、操舵制御量を表すアイコンと加減速制御量を表すアイコンとをセットで表示することで、遠隔ドライバは、複数の制御量を一度に把握することができる。
【0072】
また、
図14(A)に示すように、補助画像は、映像撮像時の加速度の表示130Aを含んでいてもよい。加速度の表示130Aは、加減速制御量を表す撮像時のアイコン90Aの近くに配置される。車速によるギアの違いや、乗車人数による車両重量などに起因して、遠隔オペレータのペダル操作による制御量と実際の加速度との間にずれが生じる場合がある。映像撮像時の加減速制御量と共にそのときの加速度を表示することで、遠隔オペレータは、映像からは伝わり難い加速度の変化を把握することができ、異常なペダル操作を抑制することができる。
【0073】
加速度の表示130Aは、
図14(B)及び(C)に示すように、1つ又は複数の矢印で構成されるインジケータとしてもよい。矢印の向きや色で加速度の種類、即ち、加速か減速かを表し、全部の矢印で加速度の上限値を表し、全部の矢印に対する着色された部分の割合で加速度の大きさを表す。例えば、上向きの矢印を含む表示130A1~130A3は加速を表し、下向きの矢印を含む表示130A4~130A6は減速を表す。また、例えば、加速を表す表示130A1~130A3を青色や緑色などの寒色で表し、減速を表す表示130A4~130A6を赤色やピンク色などの暖色で表してもよい。
【0074】
以上説明した通り、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、操舵制御量を表すアイコンと加減速制御量を表すアイコンとをセットで表示することで、遠隔ドライバは複数の制御量を一度に把握することができる。
【0075】
[第3の実施の形態]
第3の実施形態は、補助画像の構成が第1の実施形態とは異なる以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0076】
第3の実施形態では、
図15に示すように、補助画像は、制御量の表示140と、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を含む。制御量の表示140は、映像撮像時の制御量を表す矢印型の撮像時のアイコン140Aと、現在の制御量を表す矢印型の現在のアイコン140Dと、を含む。
【0077】
第1及び第2の実施形態では、操舵制御量と加減速制御量とをアイコンで表現したが、矢印型のアイコン140A及び140Dは、矢印の向きで車両の進行方向を表している。矢印の始点は、制御起点を表し、画面内の任意の位置に配置することができる。このように制御量を矢印型のアイコンで表示することで、遠隔ドライバは、制御量をより直感的に把握することができる。
【0078】
図16に示すように、遅延時間における車両の軌跡を上から見ると、撮像時のアイコン140Aで表される撮像時の車両の進行方向は、点線で示す撮像時(即ち、制御Aの実行時)のタイヤ方向であり、撮像時の操舵角から算出することができる。現在のアイコン140Dで表される現在の車両の進行方向は、点線で示す現時点(即ち、制御Dの生成時)での直進方向(即ち、カメラ方向)に対するタイヤ方向であり、現時点での操舵角から算出することができる。
【0079】
図17(A)に示すように、撮像時のアイコン140Aと現在のアイコン140Dとを異なる色で表示してもよい。例えば、撮像時のアイコン140Aを黄色で表示し、現在のアイコン140Dを青色で表示してもよい。両者が区別し易くなる。また、矢印の始点が見易いように矢印の始点にマーク144を付してもよい。
【0080】
また、矢印型のアイコンは、基本的には車両の進行方向を表すものであるが、他の制御量を表すこともできる。例えば、矢印の長さは車速を表してもよい。例えば、時速X[km/h]のときの秒速x[m/s]を車速の表現として、制御起点からx[m]先を矢印の終点とする等、ある基準長さから車速に比例して伸長する長さの矢印で、車速を表現することができる。
【0081】
また、第1及び第2の実施形態と同様に、インジケータで加減速制御量を表すようにしてもよい。例えば、
図17(B)に示すように、矢印型の撮像時のアイコン140Aを、背景146Aと、ペダル量を表すインジケータ142Aとを含むように構成する。アクセルの場合は背景146Aとインジケータ142Aの一部とを緑色に着色し、ブレーキの場合は背景146Aとインジケータ142Aの一部とを赤色に着色する等、配色でアクセルとブレーキとを区別してもよい。矢印型の現在のアイコン140Dについても同様である。
【0082】
以上説明した通り、第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、制御量を矢印型のアイコンで表すことで、矢印の方向が車両の進行方向と直結するので、遠隔ドライバは制御量をより直感的に把握することができる。
【0083】
[第4の実施の形態]
第4の実施形態は、補助画像の構成が第1の実施形態とは異なる以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0084】
第4の実施形態では、
図18に示すように、補助画像は、映像撮像時の制御量を表す矢印型の撮像時のアイコン140A、現在の制御量を表す矢印型の現在のアイコン140D、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を含む。
【0085】
第4の実施形態の矢印型のアイコン140A及び140Dは、矢印の向きで車両の進行方向を表す点では、第3の実施形態の矢印型のアイコン140A及び140Dと同様である。また、第3の実施形態と同様に、撮像時のアイコン140Aと現在のアイコン140Dとを異なる色で表示してもよい。また、矢印の始点にマーク144を付してもよい。また、矢印の長さで車速を表してもよく、矢印内のインジケータで加減速制御量を表すようにしてもよい。
【0086】
しかしながら、第4の実施形態の矢印型のアイコン140A及び140Dは、車両の進行方向を空間的に表示するものであり、制御起点を表す矢印の始点は、画面内の各制御時点での車両の位置又は推定位置に配置される。したがって、遠隔ドライバは、第3の実施形態に比べて、現時点での車両位置をよりリアルに把握することができる。
【0087】
ここで、第4の実施形態における矢印型アイコンの生成方法について簡単に説明する。
図19に示すように、遅延時間における車両の軌跡を上から見ると、映像撮像時に車両側で実行される制御Aに係る制御情報が遠隔側で生成された後、現時点で制御Dに係る制御情報が生成されるまでの間に、制御B及び制御Cに係る制御情報が生成されて、車両は制御A~Cに従って移動する。
【0088】
各制御に対応する矢印が地面に描画されているものとして、撮像時(即ち、制御Aの実行時)に対応する矢印と現時点(即ち、制御Dの生成時)に対応する矢印とについて、その始点及び終点の三次元座標を求める。矢印の始点は、制御時点での車両の位置又は推定位置であり、矢印の向きは、制御時点での車両の進行方向であり、矢印の長さは制御時点での車速である。
【0089】
撮像時(即ち、制御Aの実行時)の車両の位置、進行方向、車速は、撮像時の制御量や車両情報から取得することができる。現時点(即ち、制御Dの生成時)での車両の位置、進行方向、車速は、公知の車両運動モデルを用いて制御A~Cの制御量から推定することができる。これにより、各矢印の始点及び終点の三次元座標を求めることができる。
【0090】
地面に描画された制御Aに対応する矢印と制御Dに対応する矢印とをカメラ22で撮像した場合、
図20に示すように、透視投影変換により三次元空間上の座標(X,Y,Z)は画像上での座標(u,v)に変換される。これにより矢印型のアイコン140A及び140Dを表示する位置が特定される。
【0091】
例えば、ピンホールカメラモデルを用いた透視投影変換では、下記式に基づいて座標変換を行うことができる。外部パラメータは世界座標系(即ち、
図20に示す三次元座標系)からカメラ座標系(
図20に示す、x
cam,y
cam,z
camで表される座標系)への変換を行うために行列であり、内部パラメータはカメラ座標系から画像座標系(即ち、
図20に示す二次元座標系)への変換を行うための行列である。行列P、A、[R|t]は、カメラのキャリブレーション情報やアライメント情報から取得することができる。
【0092】
【0093】
M´:世界座標[X,Y,Z,1]
m´:画像座標[u,v,1]
s:スケールファクタ
P:透視投影行列
A:内部パラメータ
[R|t]:外部パラメータ
【0094】
以上説明した通り、第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、制御量を矢印型のアイコンで表すことで、矢印の方向が車両の進行方向と直結するので、遠隔ドライバは制御量をより直感的に把握することができる。また、遠隔ドライバは、制御量をより直感的に把握することができることに加えて、現時点での車両位置をよりリアルに把握することができる。
【0095】
[第5の実施の形態]
第5の実施形態は、補助画像の構成が第1の実施形態とは異なる以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0096】
第5の実施形態では、
図21(A)に示すように、補助画像は、制御量の差分の表示150と、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示110を含む。制御量の差分の表示150は、映像撮像時の操舵制御量と現在の操舵制御量との差分を表すアイコン160と、映像撮像時の加減速制御量と現在の加減速制御量との差分を表すアイコン170とを含む。
【0097】
図21(B)に示すように、操舵制御量の差分を表すアイコン160は、ハンドルの絵柄で操舵を表すマーク162と、操舵方向及び操舵角の差分を表すインジケータ166とを含む。マーク162には、基準マーク164が設けられている。加減速制御量の差分を表すアイコン170は、背景172と、ペダル量を表すインジケータ174とを含む。
【0098】
ここで、第1の実施形態の補助画像と比較すると、第1の実施形態では、映像撮像時の操舵制御量を表す撮像時のアイコン80A、現在の操舵制御量を表す現在のアイコン80D、映像撮像時の加減速制御量を表す撮像時のアイコン90A、及び現在の加減速制御量を表す現在のアイコン90Dの2組4つのアイコンが表示されるが、第5の実施形態は、操舵制御量の差分を表すアイコン160及び加減速制御量の差分を表すアイコン170の1組2つのアイコンだけが表示され、補助画像が簡素化されている。
【0099】
図21(B)に示す例では、撮像時のアイコン80Aに示すように映像撮像時にはハンドルを右に傾けているが、現在のアイコン80Dに示すように現在は左に戻そうとしている。アイコン160では、インジケータ166が左に戻そうとしていることを表現している。また、撮像時のアイコン90Aに示すように映像撮像時にはアクセルは2段階目であるが、現在のアイコン90Dに示すように現在はアクセルが4段階目である。アイコン170では、これらの制御の差分を表すために、現在の制御量(アクセル4段階目)と、制御量の増加分(アクセル2段階分)とを異なる色で表示して、アクセルを踏み込んでいることを表現している。
【0100】
以上説明した通り、第5の実施形態によれば、映像撮像時の制御量と現在の制御量との差分を表すアイコンを映像に重畳表示することで、遠隔ドライバは、映像撮像時の制御量と現在の制御量とのギャップを直感的に把握することができる。また、映像撮像時の制御量を表すアイコンと現在の制御量を表すアイコンの両方を映像に重畳表示する場合に比べて、補助画像が簡素化されて見易くなる。
【0101】
[第6の実施の形態]
第6の実施形態は、補助画像の構成が第1の実施形態とは異なる以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0102】
第6の実施形態では、
図22(A)に示すように、補助画像は、操舵制御量の表示80、加減速制御量の表示90、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示180を含むが、第1の実施形態とは異なり、映像の遅延時間の表示180は、遅延時間を数値で表示するのではなく、映像の枠部の色で表示する。
図22(B)に示すように、遅延時間が大きくなるにしたがって、枠色が緑色→青色→黄色→オレンジ色→赤色と変化する。
【0103】
以上説明した通り、第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、遠隔ドライバは、枠色の移り変わりにより、遅延時間の増減を直感的に把握することができる。
【0104】
[第7の実施の形態]
第7の実施形態は、遅延時間が長くなった場合にだけ補助画像を表示すること以外は、第1の実施の形態と同様の構成であるため、同じ部分については説明を省略し、相違点のみ説明する。
【0105】
図23に示すように、通信遅延は一定時間でなく、上述した通信遅延の揺らぎにより増減する。第7の実施形態では、遠隔支援装置40の情報処理装置42は、遅延時間を監視しており、遅延時間が閾値を超えた場合に、映像に補助画像を重畳表示するように制御してもよい。
【0106】
例えば、
図8のステップS408で、CPU42Aは、遅延時間が閾値を超えた場合に補助画像の重畳表示を行い、遅延時間が閾値以下では補助画像の重畳表示を行わないこととしてもよい。遅延が小さい場合には、余計な情報を表示しない方が遠隔ドライバは遠隔操縦に集中することができる。
【0107】
また、補助画像の重畳表示を行うか行わないかではなく、補助画像の内容(例えば、含まれるアイコンの種類、位置、数)を変更してもよい。例えば、
図24に示すように、遅延時間が閾値以下の場合には、映像撮像時の車両速度の表示100及び映像の遅延時間の表示(ここでは、数値による表示)110を補助画像として重畳表示し、遅延時間が閾値を超えた場合には、操舵制御量の表示80、加減速制御量の表示90、映像撮像時の車両の進行方向を表す矢印型の撮像時のアイコン140A、現在の車両の進行方向を表す矢印型の現在のアイコン140D、映像撮像時の車両速度の表示100、及び映像の遅延時間の表示(ここでは、枠色による表示)180を補助画像として重畳表示してもよい。
【0108】
また、遅延時間が閾値を跨いで頻繁に変動したのでは、補助画像が表示されたり消えたりして煩わしい。したがって、閾値を超える場合の判定は遅延時間の瞬時値を利用して行い、閾値を下回る場合の判定は遅延量の移動平均値を利用して行うようにする。遅延量の移動平均値は、遅延時間の瞬時値に比べて変動が少ないので、補助画像の表示が変更される頻度を少なくすることができる。
【0109】
以上説明した通り、第7の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができると共に、遠隔遅延の大きさに応じて補助画像の表示の有無又は表示される補助画像の内容が変更されるので、遠隔ドライバの集中力を削ぐことなく、補助画像を表示することができる。
【0110】
[変形例]
以上、遠隔支援装置、遠隔支援システム、プログラム及び遠隔支援方法の例示的な実施の形態について説明したが、本発明は、実施の形態に記載の範囲には限定されない。本発明の主旨を逸脱しない範囲で実施の形態に多様な変更又は改良を加えることができ、当該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0111】
例えば、上記各実施形態は、適宜組み合わせて実行することも可能である。
【0112】
また、上記各実施形態では、映像データと紐づけ情報とを別のデータストリームで送信しているが、紐づけ情報を映像データに含めて送信してもよく、制御IDを映像データに含めて送信することも可能である。この場合は、タイムスタンプによる照合等が不要になる。
【0113】
また、例えば、上記実施の形態で説明したプログラムの処理の流れも一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。また、上記実施の形態では、プログラムを実行することにより、実施形態に係る処理がコンピュータを利用してソフトウェア構成により実現される場合について説明したが、これに限らない。例えば、ハードウェア構成や、ハードウェア構成とソフトウェア構成との組み合わせによって処理を実現してもよい。
【0114】
また、上記実施形態でCPUがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行したプログラムを、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。
【0115】
また、上記各プログラムを、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0116】
また、上記各実施形態では、プログラムが記憶部に予め記憶(インストール)されている態様を説明したが、これに限定されない。プログラムは、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、半導体メモリ等の非一時的(non-transitory)記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。また、上記各プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【符号の説明】
【0117】
10 車両、12 遠隔コックピット、20 車載装置、22 カメラ、40 遠隔支援装置、42 情報処理装置、60 映像データ送信部、62 紐づけ部、64 車両制御部、70 映像取得部、72 情報取得保持部、74 制御情報生成部、76 制御値記憶部、78 表示制御部、D 遠隔ドライバ