IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋紡エムシー株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-熱可塑性ポリエステル樹脂組成物 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/02 20060101AFI20240509BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20240509BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240509BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240509BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L67/00
C08L63/00
C08K3/00
C08K3/013
C08K7/14
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021504048
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008338
(87)【国際公開番号】W WO2020179668
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-11-14
(31)【優先権主張番号】P 2019040408
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古川 香織
(72)【発明者】
【氏名】神谷 元暢
(72)【発明者】
【氏名】藤井 泰人
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆浩
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335536(JP,A)
【文献】特開2001-234046(JP,A)
【文献】特開2009-215347(JP,A)
【文献】特開2009-173899(JP,A)
【文献】特開平11-106624(JP,A)
【文献】特開2008-103299(JP,A)
【文献】特開平10-036645(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0368458(US,A1)
【文献】国際公開第2015/008831(WO,A1)
【文献】特開昭50-001146(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂組成物の質量を100質量部としたとき、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)18~35質量部、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)10~25質量部、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)10~20質量部、エポキシ基含有チレン共重合体(D)0.5~5質量部、球状および/または不定形の無機フィラー(E)12~20質量部、ガラス繊維系強化材(F)10~35質量部、ポリカーボネート系樹脂(G)0~10質量部、エステル交換防止剤(H)0~2質量部を含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
さらに、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)および/または共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)4~8質量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂組成物をシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形して得られる成形品(45mm×100mm×厚み2mm(100mm辺部には高さ6mmの壁があり、長さ14mm・高さ2mm・厚み1mmのリブ部を有する))のリブ部裏側のヒケ深さが3.0μm以下となることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒケの発生が抑制できて高靱性な成形品を得ることができる熱可塑性ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にポリエステル樹脂は、機械的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れ、自動車部品、電気・電子部品、家庭雑貨品等に幅広く用いられる。それらの部品は軽量化およびコストダウンの観点から、薄肉化が進んでいる。薄肉であっても実用的強度を満足するために、ガラス繊維等で強化された樹脂組成物を用い、成形体にリブやボスなどを多く配置して補強する工夫がなされてきた。
【0003】
しかしながら、成形体にリブやボスを配置するとヒケが目立つようになり、外観を損ねる場合がある。
【0004】
このような問題を改善するために、特許文献1、2では、結晶性ポリアミドとガラス繊維に非晶性ポリアミドもしくは難結晶性ポリアミドを添加することで結晶性を抑制し、さらに球状フィラーを添加して厚み方向の収縮を抑制することでヒケを改善させる方法が提案されているが、非晶成分と球状フィラーを添加するとたわみ率が低下し、靱性不足になる問題があった。さらに特許文献3には結晶性ポリアミドと非晶性もしくは難結晶性ポリアミドの組み合わせに、異形断面ガラスとオレフィン樹脂、そして球状および/または不定形の無機フィラーを添加し、さらにオレフィン系エラストマーを添加して靱性を付与する方法が提案されているが、ヒケに関しての言及がされていなかった。また、特許文献4には、ポリブチレンテレフタレート樹脂と芳香族ポリカーボネート樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂の組み合わせに、エラストマーなどの耐衝撃改良材、無機フィラー、芳香族多価カルボン酸エステル、エポキシ化合物を配合したポリエステル樹脂組成物が提案されているが、ヒケに関しての言及がなく、芳香族多価カルボン酸エステルが成形品表面に染み出すなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2009-7482号公報
【文献】特開2013-203869号公報
【文献】特許第5407530号公報
【文献】特許第3933838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、成形品のヒケを改善しつつ、靱性を付与し、かつ耐熱性に優れるポリエステル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するためにポリエステル系樹脂組成物の構成と特性を鋭意検討した結果、特定の樹脂を適正量含有し、各成分の比率を適正に調整することにより上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
[1] ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)18~35質量部、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)10~25質量部、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)10~20質量部、エポキシ基含有エチレン共重合体(D)0.5~5質量部、球状および/または不定形の無機フィラー(E)12~20質量部、ガラス繊維系強化材(F)10~35質量部、ポリカーボネート系樹脂(G)0~10質量部、エステル交換防止剤(H)0~2質量部を含むことを特徴とするポリエステル樹脂組成物。
[2] さらに、共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)および/または共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)4~8質量部を含むことを特徴とする[1]に記載のポリエステル樹脂組成物。
[3] 前記ポリエステル樹脂組成物をシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形して得られる成形品(45mm×100mm×厚み2mm(100mm辺部には高さ6mmの壁があり、長さ14mm・高さ2mm・厚み1mmのリブ部を有する))のリブ部裏側のヒケ深さが3.0μm以下となることを特徴とする[1]または[2]に記載のポリエステル樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、成形品のヒケを改善しつつ、高靱性を付与し、かつ耐熱性に優れるポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例でヒケ評価に用いた成形品を3方向から見た概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
ポリエステル樹脂組成物を構成する各成分の含有(配合)量は、特に但し書きをしない限り、ポリエステル樹脂組成物の質量を100質量部としたときの量(質量部)である。各成分の配合量(配合比率)が、ポリエステル樹脂組成物中の含有量(含有比率)となる。
【0012】
本発明におけるポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とは、本発明の樹脂組成物中の全ポリエステル樹脂中で主要成分の樹脂である。全ポリエステル樹脂中で、最も含有量が多いことが好ましい。ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)としては特に制限されないが、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからなるホモ重合体が好ましく用いられる。また、成形性、結晶性、表面光沢等を損なわない範囲内において、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を構成する全酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%とした時、他の成分を5モル%程度まで共重合することができる。他の成分としては、下記で説明する共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)に用いられる成分を挙げることができる。
【0013】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の分子量の尺度としては、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定)が、0.6~0.9dl/gの範囲が好ましく、より好ましくは0.7~0.8dl/gの範囲である。0.6dl/g未満の場合は、樹脂のタフネス性が大きく低下し、さらには流動性が高すぎることによりバリが発生しやすくなる傾向がある。一方、0.9dl/gを超えると、本組成系では流動性が低下するおそれがある。
【0014】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の含有量は、18~35質量部であり、好ましくは20~33質量部である。この範囲内にポリブチレンテレフタレート樹脂(A)を含有(配合)することにより、各種特性を満足させることが可能となる。
【0015】
本発明におけるポリエチレンテレフタレート樹脂(B)は、基本的にエチレンテレフタレート単位のホモ重合体である。また、各種特性を損なわない範囲内において、ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を構成する全酸成分を100モル%、全グリコール成分を100モル%とした時、他の成分を5モル%程度まで共重合することができる。他の成分としては、下記で説明する共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)に用いられる成分を挙げることができる。他の成分としては、重合時にエチレングリコールが縮合して生成したジエチレングリコールも含む。
【0016】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の分子量の尺度としては、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定)が0.4~1.0dl/gであることが好ましく、0.5~0.9dl/gであることがより好ましい。0.4dl/g未満では樹脂の強度が低下するおそれがあり、1.0dl/gを超えると樹脂の流動性が低下するおそれがある。
【0017】
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の含有量は、10~25質量部であり、好ましくは13~22質量部である。この範囲内にポリエチレンテレフタレート樹脂(B)を含有(配合)することにより各種特性を満足させることが可能となる。
【0018】
本発明における熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)は、芳香族ジカルボン酸と脂肪族または脂環族ジオールとから構成される結晶性ポリエステルからなるハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル、脂肪族ポリエステルおよび脂肪族ポリカーボネートからなる群から選択される少なくとも1種のソフトセグメントとを主たる(70質量%以上)構成成分とすることが好ましい。
【0019】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸または、ナフタレンジカルボン酸であることが好ましい。その他の酸成分としてはジフェニルジカルボン酸、イソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロ無水フタル酸などの脂環族ジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。これらは樹脂の融点を大きく低下させない範囲で用いられ、その量は全酸成分の30モル%未満、好ましくは20モル%未満である。
【0020】
また、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)において、ハードセグメントのポリエステルを構成する脂肪族または脂環族ジオールは、一般的な脂肪族または脂環族ジオールが広く用いられ、特に限定されないが、主として炭素数2~8のアルキレングリコール類であることが望ましい。具体的にはエチレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。1,4-ブタンジオールおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールが最も好ましい。
【0021】
上記のハードセグメントのポリエステルを構成する成分としては、ブチレンテレフタレート単位あるいはブチレンナフタレート単位よりなるものが物性、成形性、コストパフォーマンスの点で好ましい。
【0022】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)において、ハードセグメントを構成するポリエステルに好適な芳香族ポリエステルは、通常のポリエステルの製造法に従って容易に得ることができる。また、かかるポリエステルは、数平均分子量10000~40000を有するものが好ましい。
【0023】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)において、ソフトセグメント成分である脂肪族ポリエーテルは、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドの共重合体、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加重合体、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体などのポリ(アルキレンオキシド)グリコールなどが挙げられる。
【0024】
上記脂肪族ポリエーテルの中でも、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物、エチレンオキシドとテトラヒドロフランの共重合体グリコールが好ましく、より好ましくは、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)グリコールのエチレンオキシド付加物である。また、これらのソフトセグメントの数平均分子量としては、共重合された状態において300~6000程度であることが好ましい。
【0025】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)のソフトセグメントの共重合量は10~85質量%が好ましく、より好ましくは20~85質量%である。
【0026】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)は、従来公知の方法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸の低級アルコールジエステル、過剰量の低分子グリコール、およびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル交換せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法、ジカルボン酸と過剰量のグルコールおよびソフトセグメント成分を触媒の存在下エステル化反応せしめ、得られる反応生成物を重縮合する方法を採用することができる。(C)成分の含有量は、10~20質量部であり、好ましくは10~18質量部、より好ましくは10~17質量部であり、さらに好ましくは11~15質量部である。10質量部未満では十分な曲げ試験時の総エネルギー吸収量(曲げS-S面積)が得られず、靱性不足になるため好ましくなく、20質量部を超えて添加しても、添加による効果の上昇は得られない上に耐熱性が低下する。
【0027】
本発明におけるエポキシ含有エチレン共重合体(D)は、エチレン単位が50~99質量%、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位または不飽和グリシジルエーテル単位が0.1~30質量%(好ましくは0.5~20質量%)、エチレン系不飽和エステル化合物単位が0~49質量%からなるエポキシ基含有エチレン共重合体であることが好ましい。
【0028】
エポキシ基含有エチレン共重合体(D)において、不飽和カルボン酸グリシジルエステル単位および不飽和グリシジルエーテル単位としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸グリシジルエステル、アクリル酸グリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2-メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン-p-グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0029】
また、エポキシ基含有エチレン共重合体(D)において、不飽和カルボン酸グリシジルエステルまたは不飽和グリシジルエーテルとエチレンおよびエチレン系不飽和エステル化合物の3元以上の多元共重合体を使用することもできる。このエチレン系不飽和エステル化合物としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等のカルボン酸ビニルエステル、α、β―不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。特に酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0030】
上記のエポキシ基含有エチレン共重合体(D)としては、例えばエチレン単位とグリシジルメタクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびメチルアクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位およびエチルアクリレート単位からなる共重合体、エチレン単位とグリシジルメタクリレート単位および酢酸ビニル単位からなる共重合体等が挙げられる。
【0031】
エポキシ基含有エチレン共重合体(D)の含有量は、0.5~5質量部であり、好ましくは1~4質量部である。0.5質量部未満では十分な曲げ試験時の総エネルギー吸収量(曲げS-S面積)が得られず、靱性不足になるため好ましくなく、5質量部を超えて添加すると、良好な外観が得られないため、好ましくない。また、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)とエポキシ含有エチレン共重合体(D)を併用することでさらに靱性向上効果を高めることができたため、球状および/または不定形の無機フィラー(E)を含有することによる靱性低下を抑制しつつ、ヒケを改良し、十分な靱性を有するポリエステル組成物を得ることができる。
【0032】
本発明における球状もしくは不定形の無機フィラー(E)とは、無機フィラーの形状が繊維状・板状では無く、球状および/または不定形の形状を有する無機フィラーである。球状および/または不定形の形状とは、長短径(長径/短径)、扁平度(短径/厚さ)、アスペクト比(投影面積径/厚さ)のいずれもが3.0以下、好ましくは2.0以下である。これらの値が3.0を超えるとウェルド強度が低下する傾向がある。
具体的には、ガラスビーズ、シリカ、炭酸カルシウム、ワラストナイト、硫酸バリウム、針状性の小さいワラストナイト、粒子性のホウ酸アルミニウム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、一般的に公知のカップリング剤で処理されているものでも問題なく使用できる。球状および/または不定形の無機フィラー(E)の粒子径には特に制限が無く、任意のものが使用できるが、例えば、粒子径が1~80μmのものが好ましく、2~30μmのものがより好ましい。
【0033】
球状もしくは不定形の無機フィラー(E)の含有量は、12~20質量部であり、好ましくは13~18質量部である。この範囲内に球状もしくは不定形の無機フィラー(E)を含有(配合)することにより、各種特性、特にヒケの改善を満足させることが可能となる。
【0034】
本発明におけるガラス繊維系強化材(F)は、平均繊維径4~20μm程度で、カット長30~150μm程度のガラス短繊維であるミルドファイバー、平均繊維径1~20μm程度で、繊維長1~20mm程度に切断されたチョップドストランド状のものが好ましく使用できる。ガラス繊維の断面形状としては、円形断面及び非円形断面のガラス繊維を用いることができる。円形断面形状のガラス繊維としては、平均繊維径が4~20μm程度、カット長が2~6mm程度であり、ごく一般的なものを使用することができる。非円形断面のガラス繊維としては、繊維長の長さ方向に対して垂直な断面において略楕円形、略長円形、略繭形であるものをも含み、偏平度が1.3~8であることが好ましい。ここで偏平度とは、ガラス繊維の長手方向に対して垂直な断面に外接する最小面積の長方形を想定し、この長方形の長辺の長さを長径とし、短辺の長さを短径としたときの、長径/短径の比である。ガラス繊維の太さは特に限定されるものではないが、短径が1~20μm、長径2~100μm程度のものを使用できる。これらのガラス繊維は1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても良い。
ガラス繊維の平均繊維径、平均繊維長は電子顕微鏡観察にて測定することができる。
【0035】
これらのガラス繊維は、有機シラン系化合物、有機チタン系化合物、有機ボラン系化合物及びエポキシ系化合物等の、従来公知のカップリング剤で予め処理をしてあるものが好ましく使用することが出来る。
【0036】
ガラス繊維系強化材(F)の含有量は、10~35質量部であり、好ましくは13~32質量部である。この範囲内にガラス繊維系強化材(F)を含有(配合)することにより、各種特性を満足させることが可能となる。
【0037】
本発明におけるポリカーボネート系樹脂(G)中のポリカーボネートは、溶剤法、すなわち、塩化メチレン等の溶剤中で公知の酸受容体、分子量調整剤の存在下、二価フェノールとホスゲンのようなカーボネート前駆体との反応または二価フェノールとジフェニルカーボネートのようなカーボネート前駆体とのエステル交換反応によって製造することができる。ここで、好ましく用いられる二価フェノールとしてはビスフェノール類があり、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、つまりビスフェノールAがある。また、ビスフェノールAの一部または全部を他の二価フェノールで置換したものであっても良い。ビスフェノールA以外の二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、4,4-ジヒドロキシジフェニル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカンのような化合物やビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5-ジクロロー4-ヒドロキシフェニル)プロパンのようなハロゲン化ビスフェノール類をあげることができる。ポリカーボネートは、二価フェノールを1種用いたホモポリマーまたは2種以上用いたコポリマーであっても良い。ポリカーボネート系樹脂(G)は、ポリカーボネートのみからなる樹脂が好ましく用いられる。ポリカーボネート系樹脂(G)としては、本発明の効果を損なわない範囲(20質量%以下)でポリカーボネート以外の成分(例えばポリエステル成分)を共重合した樹脂であっても良い。
【0038】
本発明で用いられるポリカーボネート系樹脂(G)は特に高流動性のものが好ましく、300℃、荷重1.2kgで測定したメルトボリュームレート(単位:cm/10min)が20~100のものが好ましく用いられ、より好ましくは25~95、さらに好ましくは30~90である。20未満のものを用いると流動性の大幅な低下を招き、ストランド安定性が低下したり、成形性が悪化したりする場合がある。メルトボリュームレートが100超では、分子量が低すぎることにより物性低下を招いたり、分解によるガス発生等の問題が起こりやすくなる。
【0039】
本発明で用いられるポリカーボネート系樹脂(G)の含有量は、0~10質量部である。ポリカーボネート系樹脂(G)は含有しなくても良いが、含有することで、ヒケがさらに低減する。ポリカーボネート系樹脂(G)を含有する場合、好ましくは5~9質量部である。10質量部を超えると結晶性の低下による成形サイクルの悪化や、流動性の低下による外観不良等が発生しやすくなるため、好ましくない。
【0040】
本発明におけるエステル交換防止剤(H)とは、その名のとおり、ポリエステル系樹脂のエステル交換反応を防止する安定剤である。ポリエステル樹脂同士のアロイ等では、製造時の条件をどれほど適正化しようとしても、熱履歴が加わることによりエステル交換は少なからず発生している。その程度が非常に大きくなると、アロイにより期待する特性が得られなくなってくる。特に、ポリブチレンテレフタレートとポリカーボネートのエステル交換はよく起こるため、この場合はポリブチレンテレフタレートの結晶性が大きく低下してしまうので好ましくない。本発明では、(H)成分を添加することにより、特にポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリカーボネート系樹脂(G)とのエステル交換反応が防止され、これにより適切な結晶性を保持することができる。
エステル交換防止剤(H)としては、ポリエステル系樹脂の触媒失活効果を有するリン系化合物を好ましく用いることができ、例えば、株式会社ADEKA製「アデカスタブAX-71」が使用可能である。
【0041】
本発明で用いられるエステル交換防止剤(H)の含有量は、0~2質量部である。ポリカーボネート系樹脂(G)を含有する場合は、エステル交換防止剤(H)の含有量は、0.05~2質量部が好ましい。エステル交換防止剤(H)の含有量が0.05質量部未満になると、求めるエステル交換防止性能が発揮されない場合が多く、逆に2質量部を超えて添加してもその効果の向上はあまり認められないばかりか、逆にガス等を増やす要因となる場合がある。
【0042】
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)および/またはポリブチレンテレフタレート樹脂(J)は、ガラス繊維等の浮きや金型転写不良による外観不良の抑制のために配合することが好ましい。
【0043】
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)とは、構成する全酸成分を100モル%、構成する全グリコール成分を100モル%としたとき、エチレングリコールが40モル%以上かつ、テレフタル酸とエチレングリコールの合計が80~180モル%を占める樹脂である。共重合成分として、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合成分として含むことでき、非晶性であることが好ましい。中でも共重合成分として各種特性の観点から好ましいのは、ネオペンチルグリコール、もしくはネオペンチルグリコール及びイソフタル酸の併用である。共重合成分として、1,4-ブタンジオールは20モル%以下であることが好ましい。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)を構成する全グリコール成分を100モル%としたとき、ネオペンチルグリコールの共重合割合は20~60モル%が好ましく、25~50モル%がより好ましい。
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)を構成する全酸成分を100モル%としたとき、イソフタル酸の共重合割合は20~60モル%が好ましく、25~50モル%がより好ましい。
【0044】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)の分子量の尺度としては、具体的な共重合組成により若干異なるが、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定)が0.4~1.5dl/gであることが好ましく、0.4~1.3dl/gがより好ましい。0.4dl/g未満ではタフネス性が低下するおそれがあり、1.5dl/gを超えると流動性が低下するおそれがある。
【0045】
本発明における共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)は、構成する全酸成分を100モル%、構成する全グリコール成分を100モル%としたとき、1,4-ブタンジオールが80モル%以上かつ、テレフタル酸と1,4-ブタンジオールの合計が120~180モル%を占める樹脂である。共重合成分として、イソフタル酸、セバシン酸、アジピン酸、トリメリット酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、及び2-メチル-1,3-プロパンジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上を共重合成分として含むことができる。中でも共重合成分として好ましいのはイソフタル酸であり、共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)を構成する全酸成分を100モル%としたとき、共重合割合は20~80モル%が好ましく、20~60モル%がより好ましい。共重合割合が20モル%未満では、金型への転写性が劣り、充分な外観が得にくい傾向があり、共重合量が80モル%を超えると、成形サイクルの低下、離型性の低下を引き起こすことがある。
【0046】
共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)の分子量の尺度としては、具体的な共重合組成により若干異なるが、還元粘度(0.1gのサンプルをフェノール/テトラクロロエタン(質量比6/4)の混合溶媒25mlに溶解し、ウベローデ粘度管を用いて30℃で測定)が0.4~1.5dl/gであることが好ましく、0.4~1.3dl/gがより好ましい。0.4dl/g未満ではタフネス性が低下するおそれがあり、1.5dl/gを超えると流動性が低下するおそれがある。
【0047】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)および/またはポリブチレンテレフタレート樹脂(J)の含有量は、4~8質量部が好ましい。共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)およびポリブチレンテレフタレート樹脂(J)の両方を含む場合は、合計の含有量である。4質量部未満であると、ガラス繊維等の浮きや金型転写不良による外観不良の抑制のあまり効果が得られず、8質量部を超えると、成形品の外観は良好となるものの、成形サイクルが長くなってしまう。
【0048】
その他、本発明のポリエステル樹脂組成物には、必要に応じて、本発明としての特性を損なわない範囲において、公知の各種添加剤を含有させることができる。公知の添加剤としては、例えば顔料等の着色剤、離型剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、変性剤、帯電防止剤、難燃剤、染料等が挙げられる。これら各種添加剤は、ポリエステル樹脂組成物を100質量部とした時、合計で5質量部まで含有させることができる。つまり、ポリエステル樹脂組成物100質量部中、前記(A)、(B)、(C)、(D)、(E)、(F)、(G)、(H)、(I)および(J)の合計は95~100質量部であることが好ましい。
【0049】
離型剤としては、長鎖脂肪酸またはそのエステルや金属塩、アマイド系化合物、ポリエチレンワックス、シリコン、ポリエチレンオキシド等が挙げられる。長鎖脂肪酸としては、特に炭素数12以上が好ましく、例えばステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸等が挙げられ、部分的もしくは全カルボン酸が、モノグリコールやポリグリコールによりエステル化されていてもよく、または金属塩を形成していても良い。アマイド系化合物としては、エチレンビステレフタルアミド、メチレンビスステアリルアミド等が挙げられる。これら離型剤は、単独であるいは混合物として用いても良い。
【0050】
本発明のポリエステル樹脂組成物を製造する方法としては、上述した各成分及び必要に応じて各種安定剤や顔料等を混合し、溶融混練することによって製造できる。溶融混練方法は当業者に周知のいずれの方法を用いることが可能であり、単軸押し出し機、二軸押出し機、加圧ニーダー、バンバリーミキサー等を使用することができる。中でも二軸押出し機を使用することが好ましい。一般的な溶融混練条件としては、二軸押出し機ではシリンダー温度は240~280℃、混練時間は2~15分である。
【0051】
本発明のポリエステル樹脂組成物をシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形して得られる成形品(45mm×100mm×厚み2mm(100mm辺部には高さ6mmの壁があり、長さ14mm・高さ2mm・厚み1mmのリブ部を有する))のリブ部裏側のヒケ深さが3.0μm以下とすることができる。成形品の詳細は、図1に示される通りである。
【実施例
【0052】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は、射出成形機(商品名:「EC100N」、東芝機械株式会社製)を用い、シリンダー温度270℃、金型温度80℃の条件で成形した成形品を用いて、以下の方法によって測定したものである。
【0053】
(1)曲げ強度、曲げ弾性率、曲げたわみ率、曲げS-S面積
ISO-178に準じて測定し、曲げS-S面積は、曲げたわみ率0.0196%毎の曲げ強度を合算して算出した。
(2)熱変形温度
ISO-3167の多目的試験片を成形した。この多目的試験片に対し、ISO-75に準拠し、高荷重(1.80MPa)での熱変形温度を測定した。
【0054】
(3)成形品外観
ポリエステル樹脂組成物をシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形して、100mm×100mm×2mmの成形品を成形する際、充填時間が1秒になる射出速度範囲で成形した成形品の外観を、目視により観察した。「◎」、「○」、「△」であれば、合格レベルである。
◎:表面にツヤ感があり、外観不良が全くなく、良好
○:表面にガラス繊維や無機フィラー等の浮きによる外観不良がほとんど見られず、良好
△:一部(特に成形体の末端部分やゲート付近等)に、若干の外観不良が発生している
×:成形体全体に外観不良が発生している
【0055】
(4)ヒケ評価
ポリエステル樹脂組成物をシリンダー温度270℃、金型温度80℃で射出成形して得た成形品(45mm×100mm×厚み2mm(100mm辺部には高さ6mmの壁があり、長さ14mm・高さ2mm・厚み1mmのリブ部を有する))にリブを付けた部分を成形品の裏側からレーザー顕微鏡(商品名:「カラー3Dレーザー顕微鏡 VK-9700、株式会社キーエンス製」を用いて、倍率10倍で観察し、リブ部分とリブ無の部分の表面高さの差(ヒケの深さ)を測定した。表面高さの差が、2.5μm未満であれば「◎」、2.5以上3.0μm以下であれば「○」、3.0μmを超えれば不合格「×」とした。成形体の形状は図1に示す。
【0056】
実施例、比較例において使用した配合成分を次に示す。
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)
A:東洋紡社製 還元粘度0.75dl/g
ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)
B:東洋紡社製 還元粘度0.63dl/g
【0057】
熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)
C:ジメチルテレフタレート、1,4-ブタンジオール、および数平均分子量が1000のポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを原料として、ポリブチレンテレフタレートを75質量%、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコールを25質量%含有する熱可塑性ポリエステルエラストマーを合成した。
【0058】
エポキシ含有エチレン共重合体(D)
D:住友化学工業社製 「ボンドファースト 7M」、エチレン/アクリル酸メチル/グリシジルメタクリレート共重合体(質量比 64/30/6)、ガラス転移点-33℃、グリシジルメタクリレート含有量6%
【0059】
無機フィラー(E)
E-1:炭酸カルシウム:白石カルシウム(株)製 「ホワイトンP-30」不定形フィラー
E-2:ガラスビーズ:ポッターズ・バロティーニ(株)製 「EGB731B」球状フィラー
E-3:マイカ:キンセイマテック(株)製 「GM-6」板状フィラー
【0060】
ガラス繊維系強化材(F)
F:日本電気硝子社製「T-120H」
【0061】
ポリカーボネート系樹脂(G)
G:住化スタイロンポリカーボネート社製、「カリバー200-80」、メルトボリュームレート(300℃、荷重1.2kg)80cm/10min
【0062】
エステル交換防止剤(H)
H:ADEKA社製 「アデカスタブAX-71」
【0063】
共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I)
I:TPA//EG/NPG=100//70/30モル%の組成比の共重合体、東洋紡社製、東洋紡バイロン(登録商標)の試作品、還元粘度0.83dl/g
共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂(J)
J:TPA/IPA//1,4-BD=70/30//100モル%の組成比の共重合体、東洋紡社製、東洋紡バイロン(登録商標)の試作品、還元粘度0.73dl/g
(略号はそれぞれ、TPA:テレフタル酸、EG:エチレングリコール、NPG:ネオペンチルグリコール、IPA:イソフタル酸、1,4-BD:1,4-ブタンジオール成分を示す。)
【0064】
実施例1~13、比較例1~8
実施例、比較例のポリエステル樹脂組成物は、上記原料を表1、2に示した配合比率(質量部)に従い計量して、35φ二軸押出機(東芝機械社製)でシリンダー温度270℃、スクリュー回転数200rpmにて溶融混練した。強化材以外の原料はホッパーから二軸押出機へ投入し、無機フィラー(E)とガラス繊維系強化材(F)はベント口からそれぞれ別々のサイドフィーダ―から投入した。得られたポリエステル樹脂組成物のペレットは、乾燥後、射出成形機にて各種評価用サンプルを成形した。評価結果は表1、2に示した。
【0065】
【表1】
【0066】
【表2】
【0067】
表1、2から明らかなように、実施例1~13では、本願所定の配合に従ったため、高い靱性(曲げ試験時の総エネルギー吸収量)を維持しつつ、ヒケが良好になっており、さらに成形品外観も良好で、高い熱変形温度を有することがわかる。
【0068】
一方、比較例1では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)およびエポキシ含有エチレン共重合体(D)を配合しなかったため、靱性が実施例に比べて劣っていた。比較例2、3では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)またはエポキシ含有エチレン共重合体(D)の片方のみしか配合しなかったため、靱性が実施例に比べて劣っていた。比較例4では、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)の含有量が少なかったため、実施例と比較して靱性が劣っていた。比較例5では、球状もしくは不定形の無機フィラー(E)の含有量が規定量よりも少なかったため、実施例と比較してヒケが劣っていた。比較例6では、球状もしくは不定形の無機フィラーでなく、板状の無機フィラーを含有していたため、成形品の外観が悪化する上に、靱性が実施例と比較して劣った。比較例7では、ポリカーボネート系樹脂(G)の配合量が規定量よりも多かったため、熱変形温度が実施例と比較して低く、耐熱性が劣った。比較例8では、球状もしくは不定形の無機フィラー(E)を含有していなかったため、熱可塑性ポリエステルエラストマー(C)およびエポキシ含有エチレン共重合体(D)を配合しなくても十分な靱性を有していたが、ヒケが実施例と比較して劣っていた。
【0069】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の熱可塑性ポリエステル樹脂組成物は成形品のヒケを改善しつつ、靱性を付与し、かつ耐熱性に優れるため、リブやボスにより補強した製品のヒケの低減が可能であり、機械特性と共に軽量化と意匠性が重視される電化製品、例えば、ヘアアイロンやドライヤーなどの筐体用材料などに適するものである。
【符号の説明】
【0071】
a:底面の短辺の長さ 45mm
b:底面の長辺の長さ 100mm
c:長辺部にある壁の高さ 6mm
d:リブ部の厚み 1mm
e:リブ部の長さ 14mm
f:底面の厚み 2mm
g:リブ部の高さ 2mm
h:長辺部からリブまでの距離 22mm
i:短辺部からリブまでの距離 15mm
j:ゲートの幅 3.8mm
k:ゲートの厚み 1mm
図1