(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】合成樹脂ステント及びステントデリバリーシステム
(51)【国際特許分類】
A61F 2/852 20130101AFI20240509BHJP
A61F 2/848 20130101ALI20240509BHJP
A61F 2/89 20130101ALI20240509BHJP
A61F 2/90 20130101ALI20240509BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20240509BHJP
【FI】
A61F2/852
A61F2/848
A61F2/89
A61F2/90
A61F2/966
(21)【出願番号】P 2021509696
(86)(22)【出願日】2020-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2020014487
(87)【国際公開番号】W WO2020196912
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2019063124
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】井手 純一
(72)【発明者】
【氏名】福瀧 修司
(72)【発明者】
【氏名】西原 愛美
【審査官】豊田 直希
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01645246(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0226282(US,A1)
【文献】特開2008-200293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0191922(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0318171(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/852
A61F 2/848
A61F 2/89
A61F 2/90
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の繊維によって網目を有する筒状に形成された第1ステント本体部
と、前記第1ステント本体部の長手方向の少なくとも一方の端部に接続され前記第1ステント本体部の径よりも大きい端部拡径部と、を有し、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な第1ステントと、
前記第1ステント本体部よりも密な網目を有する筒状に形成され、前記第1ステント本体部の外周を覆うように配置され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な第2ステントと、を備え
、
前記第1ステント本体部は、長手方向に視た場合に合成樹脂製の繊維により多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、長手方向に凸となるように屈曲又は湾曲した状態で、前記第1ステントの長手方向に並べて接続されることで形成され、
前記端部拡径部は、前記第1ステント本体部よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって前記多角形環状部よりも多角の多角形環状構造で構成される合成樹脂ステント。
【請求項2】
請求項
1に記載の合成樹脂ステントを生体内に留置するためのステントデリバリーシステムであって、
内側に前記第1ステント及び前記第2ステントを収納可能であって、前記第2ステント及び前記第1ステントが先端側からこの順に並べて配置される外筒と、
前記外筒の内側に配置され、前記第2ステント及び前記第1ステントをこの順に前記外筒の先端側から押し出し可能な押し子部材と、を備えるステントデリバリーシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性ステント等の合成樹脂ステント及びステントデリバリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管や消化管等の生体管路の狭窄性疾患(腫瘍や炎症等)において、狭窄部にステントを留置して、狭窄部を拡張する治療が行われている。ステントとしては、例えば金属製や合成樹脂製のステントが知られている。これらの中でも、金属製のステントは体内から抜去する際に外科手術を必要とするため、患者に多大な負担がかかる。そのため、金属製のステントは、半永久的な留置や外科手術が計画されている悪性腫瘍等の症例に対して使用する場合に用途が限定される。こうした背景から、金属製ステントが使用できない症例に対して使用するステントとして、合成樹脂ステントとしての生分解性ステントが提案されている。
【0003】
合成樹脂ステントは、自己拡張性、復元性、腸管等の消化管への密着性、消化管の蠕動運動に対する追従性において、金属ステントと比べて劣るため、合成樹脂ステントを金属ステントと同じ形状で作製した場合に、要求される性能を発揮できないことがある。
これに対して、例えば、生分解性樹脂をジグザグ形状に加工して連結したステントに膜カバーをするものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のステントでは、膜カバーを付けているため、ステントの縮径において径を小さくすることが困難となる。また、特許文献1に記載のステントは、生分解性樹脂をジグザグ形状に加工して連結しているため、消化管の蠕動運動に対する追従性・復元性が重要視される両端部と、圧力強度が必要とする中央部と、の両方において、ステントが必要とする機能のバランスを取ることが難しい。そのため、自己拡張性、復元性、消化管への密着性、及び消化管の蠕動運動に対する追従性を発揮可能な合成樹脂ステントが望まれている。
【0006】
従って、本発明は、自己拡張性、復元性、消化管への密着性、蠕動運動に対する追従性を発揮可能な合成樹脂ステント及びステントデリバリーシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、合成樹脂製の繊維によって網目を有する筒状に形成された第1ステント本体部を有し、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な第1ステントと、前記第1ステント本体部よりも密な網目を有する筒状に形成され、前記第1ステント本体部の外周を覆うように配置され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な第2ステントと、を備える合成樹脂ステントに関する。
【0008】
また、前記第1ステント本体部は、長手方向に視た場合に合成樹脂製の繊維により多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、長手方向に凸となるように屈曲又は湾曲した状態で、前記第1ステントの長手方向に並べて接続されることで形成されることが好ましい。
【0009】
また、前記第1ステントは、前記第1ステント本体部の長手方向の少なくとも一方の端部に接続され前記第1ステント本体部の径よりも大きい端部拡径部を更に備えることが好ましい。
【0010】
また、前記第1ステント本体部は、長手方向に視た場合に合成樹脂製の繊維により多角形の環状に形成された複数の多角形環状部を、長手方向に凸となるように屈曲又は湾曲した状態で、前記第1ステントの長手方向に並べて接続され、前記端部拡径部は、前記第1ステント本体部よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって前記多角形環状部よりも多角の多角形環状構造で構成されることが好ましい。
【0011】
また、前記第1ステントは、軸方向の端部に配置された端部フレア部を備え、線材により形成されるステントであって、前記端部フレア部は、軸方向の外側に突出する先端角部からなる山部が周方向に連続して複数配置されることで、軸方向に視た場合に環状に形成され、前記ステントが消化管に留置された状態において、前記山部を構成する2辺の成す角度は、80°以下であり、複数の前記山部の数は、3~11個であることが好ましい。
【0012】
また、前記山部を構成する2辺は、軸方向の端部に配置された端部格子の2辺により構成されることが好ましい。
【0013】
また、前記第1ステントは、軸方向に並んで配置される複数の格子を有し、前記端部格子は、前記複数の格子における端部に配置されることが好ましい。
【0014】
また、前記山部を構成する2辺のうちの1辺の1辺長は、16~22mmであることが好ましい。
【0015】
また、前記端部フレア部における隣り合う前記山部同士は、軸方向の最も端部側の交点において固定されることが好ましい。
【0016】
また、前記第2ステントは、網目状に編み込まれて構成された複数の繊維からなる筒状の第1編み構成部と、前記第1編み構成部に編まれて配置され環状に構成された複数の繊維からなる第2編み構成部と、を備える合成樹脂ステントであって、前記第1編み構成部は、軸方向に対して所定角度傾斜して延びる複数の第1繊維と、前記第1繊維に対して交差して延びる複数の第2繊維と、前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維とが交差して構成された複数の第1交差点と、を有し、前記第2編み構成部は、軸方向に離間して配置される波形状の複数の第3繊維と、軸方向に離間して配置される波形状の複数の第4繊維と、を有し、前記複数の第1交差点のうち少なくとも1つの第1交差点は、前記第3繊維と前記第4繊維とに囲まれた交差領域に配置されることが好ましい。
【0017】
また、前記交差領域は、前記第1編み構成部の周方向に並んで複数形成され、前記第1交差点は、前記第1編み構成部の周方向に並んで複数形成され複数の前記交差領域それぞれに配置されることが好ましい。
【0018】
また、前記第1交差点が前記交差領域に配置された構成において、前記第3繊維は、前記第3繊維と前記第4繊維との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、前記第1繊維、前記第2繊維及び前記第4繊維のうち一以上の繊維に引っ掛かることが可能な状態で配置され、前記第4繊維は、前記第3繊維と前記第4繊維との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、前記第1繊維、前記第2繊維及び前記第3繊維のうち一以上の繊維が引っ掛かることが可能な状態で配置されることが好ましい。
【0019】
また、前記第1交差点が前記交差領域に配置された構成を複数備え、前記第3繊維と前記第4繊維とが、前記第3繊維と前記第4繊維との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して互いが引っ掛かることが可能な状態に配置され、かつ、該第3繊維及び該第4繊維の移動に対して前記第1繊維及び前記第2繊維に引っ掛らない状態で配置される構成を少なくとも一部に含んで構成されることが好ましい。
【0020】
また、波形状の前記第3繊維及び/又は前記第4繊維における山部の頂部には、前記第1繊維、前記第2繊維、前記第3繊維及び第4繊維のいずれか1以上の繊維を囲むように配置されるループ状のループ部が形成されることが好ましい。
【0021】
また、前記第2編み構成部は、前記第1編み構成部よりも拡張力が高い合成樹脂製の繊維によって形成されることが好ましい。
【0022】
また、前記第2ステントは、網目状に構成された1又は複数の繊維からなる筒状の第1編み構成部と、前記第1編み構成部に編まれて配置され環状に構成された1又は複数の繊維からなる第2編み構成部と、を備える合成樹脂ステントであって、前記第1編み構成部は、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の第1繊維と、前記第1繊維に対して交差する部分を有して配置され軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の第2繊維と、前記複数の第1繊維と前記複数の第2繊維とが交差して構成された複数の第1交差領域と、を有し、前記第2編み構成部は、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して周方向に延びる複数の第3繊維と、前記第3繊維に対して交差する部分を有して配置され軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の第4繊維と、前記複数の第3繊維と前記複数の第4繊維とが交差して構成された複数の第2交差領域と、を有し、前記第1交差領域と前記第2交差領域とは、少なくとも一部が重なって配置されることが好ましい。
【0023】
また、前記第1交差領域と前記第2交差領域とが重なって配置された構成において前記第1繊維は、前記第1繊維と前記第2繊維との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、前記第3繊維及び前記第4繊維のうち一以上の繊維に引っ掛かることが可能な状態で配置され、前記第2繊維は、前記第1繊維と前記第2繊維との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、前記第3繊維及び前記第4繊維のうち一以上の繊維が引っ掛かることが可能な状態で配置されることが好ましい。
【0024】
また、本発明は、前記合成樹脂ステントを生体内に留置するためのステントデリバリーシステムであって、内側に前記第1ステント及び前記第2ステントを収納可能であって、前記第2ステント及び前記第1ステントが先端側からこの順に並べて配置される外筒と、前記外筒の内側に配置され、前記第2ステント及び前記第1ステントをこの順に前記外筒の先端側から押し出し可能な押し子部材と、を備えるステントデリバリーシステムに関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、自己拡張性、復元性、消化管への密着性、蠕動運動に対する追従性を有する合成樹脂ステント及びステントデリバリーシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る生分解性ステントを示す斜視図である。
【
図2】第1実施形態の内側ステントを示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の外側ステントを示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係る生分解性ステントを示す斜視図である。
【
図5】第2実施形態の内側ステントを示す斜視図である。
【
図6】第2実施形態の内側ステントにおいて、ファイバー径がφ0.4mmの繊維を使用して作製したステントの端部フレア部について、ピッチ及山数に対応する先端角度及び1辺長の値を示す図であって、(a)は留置状態の値を示す図であり、(b)は芯棒に取り付けた状態の値を示す図である。
【
図7】第2実施形態の内側ステントにおいて、ファイバー径がφ0.4mmの繊維を用いたステントを使用して、端部フレア部における先端角度と1辺長とを変化させた場合において、生分解性ステントを腸管に留置した場合において、腸管の蠕動運動に対する位置ずれを示す図である。
【
図8】第2実施形態の内側ステントにおいて、ファイバー径がφ0.5mmの繊維を用いたステントを使用して、端部フレア部における先端角度と1辺長とを変化させた場合において、生分解性ステントを腸管に留置した場合において、腸管の蠕動運動に対する位置ずれを示す図である。
【
図9】第2実施形態の外側ステントを示す斜視図である。
【
図11】第2実施形態の第1変形形態に係る外側ステントを示す図である。
【
図12】第2実施形態の第2変形形態に係る外側ステントを示す図である。
【
図13】第2実施形態の第3変形形態に係る外側ステントを示す図である。
【
図14】本発明の第2実施形態の第4変形形態に係る生分解性ステントを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成樹脂ステントの好ましい第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る生分解性ステント1を示す斜視図である。
図2は、第1実施形態の内側ステント2を示す斜視図である。
図3は、第1実施形態の外側ステント5を示す斜視図である。なお、本実施形態の説明においては、生分解性ステント1が全体として延びる方向を長手方向Xといい、長手方向Xに直交する方向であって
図1における上下方向を第1方向D1といい、長手方向X及び第1方向D1に直交する方向を第2方向D2という。
【0028】
本実施形態の合成樹脂ステントは、生分解性繊維により構成される生分解性ステント1であり、
図1~
図3に示すように、内側ステント2(第1ステント)と、筒状の外側ステント5(第2ステント)と、を備える。内側ステント2の長手方向Xの中央側の部分は、外側ステント5の内側に配置される。
【0029】
内側ステント2は、長手方向Xに延びて形成され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能である。内側ステント2は、全体として長手方向Xに延びて形成される内側ステント本体部3(第1ステント本体部)と、一対の端部フレア部4(端部拡径部)と、を有する。
【0030】
内側ステント本体部3は、
図2に示すように、複数の多角形環状部311を構成する合成樹脂製の繊維によって網目を有する筒状に形成される。内側ステント本体部3は、複数の多角形環状部311が接続されることにより構成される。より具体的には、内側ステント本体部3は、一対の多角形環状部311により構成される立体形状部31が複数接続されて構成される。
【0031】
立体形状部31は、
図2に示すように、一対の多角形環状部311が長手方向Xに接続されることで形成される。多角形環状部311は、環状に形成された環状部を第1方向D1の中央の一対の屈曲部312及び第2方向D2の中央の一対の屈曲部313において屈曲させることで形成される。屈曲部312,313は、多角形環状部311の山部及び谷部により構成される。
【0032】
多角形環状部311は、長手方向Xに視た場合に、四角形形状に形成され、本実施形態では、例えば、略ひし形に形成される。多角形環状部311の頂部を構成する一対の屈曲部312及び一対の屈曲部313は、いずれも、第1方向D1に視た場合においても、第2方向D2に視た場合においても、長手方向Xの一方側又は他方側に凸となる略V字状になるように屈曲する。
【0033】
一の多角形環状部311は、一対の屈曲部312が第1方向D1の中央において長手方向Xの一方側に凸となるように屈曲して位置し、一対の屈曲部313が第2方向D2の中央において長手方向の他方側に凸となるように屈曲して位置するように配置される。
また、一の多角形環状部311の隣りに配置される他の多角形環状部311は、一対の屈曲部312及び一対の屈曲部313において、一の多角形環状部311とは反対側に屈曲し、一対の屈曲部312が第1方向D1の中央において長手方向Xの他方側に凸となるように屈曲して位置し、一対の屈曲部313が第2方向D2の中央において長手方向の一方側に凸となるように屈曲して位置するように配置される。
【0034】
立体形状部31は、隣接する多角形環状部311の一対の屈曲部313の凸同士が向かい合うように配置された状態で、第2方向D2の中央において、隣接する多角形環状部311の一対の屈曲部313同士が筒状接続部32により接続されることで形成される。隣接する多角形環状部311の互いの凹の内側の部分は、第2方向D2に視た場合に、略ひし形に形成される。
【0035】
内側ステント本体部3は、立体形状部31が長手方向Xに複数並べられて接続されることで構成される。隣接する立体形状部31は、隣接する多角形環状部311の一対の屈曲部312の凸同士が向かい合うように配置された状態で、第1方向D1の中央において、隣接する多角形環状部311の一対の屈曲部312同士が筒状接続部32により接続される。隣接する立体形状部31の多角形環状部311の互いの凹の内側の部分は、第1方向D1に視た場合に、略ひし形に形成される。
【0036】
以上の内側ステント本体部3は、複数の多角形環状部311が接続されることで、複数の多角形環状部311を構成する合成樹脂製の繊維によって、複数の略ひし形の網目を有して構成される。このように、内側ステント本体部3は、長手方向Xに視た場合に合成樹脂製の繊維により多角形の環状に形成された複数の多角形環状部311を、長手方向Xに凸となるように屈曲した状態で、内側ステント本体部3の長手方向Xに並べて接続されることで形成される。
【0037】
内側ステント本体部3は、縮径した状態と拡径した状態との間で変形可能に構成される。ここで、隣接する一対の多角形環状部311は、一対の屈曲部312同士が接続される筒状接続部32において、隣接する多角形環状部311の互いの合成樹脂製の繊維の凸同士が接続されると共に、一対の屈曲部313同士が接続される筒状接続部32において、隣接する多角形環状部311の互いの合成樹脂製の繊維の凸同士が接続される。そのため、多角形環状部311を形成する合成樹脂製の繊維は、筒状接続部32において屈曲した部分が直線状に戻る力が働いている(
図2の矢印方向)。これにより、筒状接続部32において屈曲された合成樹脂製の繊維は第1方向D1及び第2方向D2(内側ステント本体部3の長手方向Xに交差する方向)に延びる直線状に戻るように力が作用する。よって、内側ステント本体部3は、径方向に拡がる力が作用して、狭窄部を安定して押圧できる。
【0038】
内側ステント本体部3においては、立体形状部31を構成する多角形環状部311の山谷数は、例えば、小腸用ステントの場合には、4~8程度である。本実施形態においては、多角形環状部311は、太径ファイバーにより内側ステント本体部3の長手方向Xに視た場合に四角形形状に形成され、多角形環状部311の山谷数は、例えば、4つ形成される。
【0039】
なお、内側ステント本体部3の形状には特に制限はなく、例えば、合成樹脂製の繊維(ファイバー)をジグザグ形状に加工し、それを長軸方向につなげた構造が考えられる。ジグザグ形状とした場合に、ジグザグの山谷数は特に制限はないが、4~8つが好ましい。
【0040】
一対の端部フレア部4は、それぞれ、内側ステント本体部3の長手方向Xの両端部に接続され、内側ステント本体部3の多角形環状部311よりも山谷数が多い多角の多角形環状構造のジグザグ形状に形成される。一対の端部フレア部4は、健常部に当たるように、それぞれ、外側ステント5の長手方向Xの外側に配置される。端部フレア部4は、内側ステント本体部3の長手方向Xに交差する第1方向D1に延びて内側ステント本体部3の径よりも大きく形成され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能である。端部フレア部4は、山部と谷部とが内側ステント本体部3の長手方向Xに交差する方向に交互に並んで形成される。
【0041】
端部フレア部4は、内側ステント本体部3側に凸となる屈曲部412において、筒状接続部32により、内側ステント本体部3の両端部に接続される。
【0042】
端部フレア部4は、健常部に当たるため、腸管等の消化管の蠕動運動に対する追従性・復元性が重要視される。そのため、端部フレア部4は、内側ステント本体部3よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって形成される。端部フレア部4は、長手方向Xに視た場合に、内側ステント本体部3の多角形環状部311よりも多角の多角形環状構造で構成され、第2方向D2に視た場合に、多角形環状構造における複数の屈曲部412,413により構成される山部及び谷部を複数有するジグザグ形状に形成される。
【0043】
端部フレア部4は、内側ステント本体部3の多角形環状部311よりも山谷数の多い多角形環状構造のジグザグ形状から形成される。端部フレア部4の山谷数は、内側ステント本体部3の山谷数をaとすると、na(n:整数)であることが好ましく、より好ましくは、2nである。本実施形態においては、端部フレア部4の多角形環状構造の山谷数は、例えば、8つで形成される。端部フレア部4は、内側ステント本体部3の両端に設けられていてもよいし、片端だけに設けられていてもよい。
【0044】
内側ステント本体部3及び端部フレア部4を構成する合成樹脂製の繊維の材質は、特に制限はないが、復元性に富む材料が好ましい。例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノンからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、復元性に富む材料であればよい。特に、内側ステント本体部3及び端部フレア部4を構成する繊維の材質として、例えば、ポリジオキサノン(PDO)が使用されることが好ましい。
【0045】
また、内側ステント本体部3及び端部フレア部4を構成する合成樹脂製の繊維は特に制限はなく、モノフィラメント糸であってもよいし、マルチフィラメント糸であってもよい。なお、生体内の狭窄部において内側ステント本体部3の径方向外側から加わる圧力に対する反発力を強くする観点から、内側ステント本体部3を構成する合成樹脂製の繊維はモノフィラメント糸であることが好ましい。また、内側ステント本体部3及び端部フレア部4を構成する合成樹脂製の繊維は、撚りをかけていてもよいし、撚りをかけていなくてもよい。
【0046】
以上の内側ステント本体部3及び端部フレア部4を構成する合成樹脂製の繊維のファイバー径は、例えば、0.05~0.7mmであり、好ましくは、0.4~0.6mmである。
また、端部フレア部4を構成する合成樹脂製の繊維のファイバー径は、内側ステント本体部3を構成する合成樹脂製の繊維のファイバー径と同じ、若しくは、それよりも細径であることが好ましい。
また、内側ステント本体部3の大きさは特に制限されないが、例えば、拡径した状態において直径が10~25mmであり、長さが、30~250mmである。
【0047】
図3に示すように、外側ステント5は、合成樹脂製の繊維が組編みされて、長手方向X(所定方向)に延びる円筒状に形成される。外側ステント5は、
図1に示すように、内側ステント2の内側ステント本体部3の外周を覆うように配置される。外側ステント5は、内側ステント2の内側ステント本体部3よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって、内側ステント2の内側ステント本体部3よりも密な網目を有する。外側ステント5は、縮径した状態から拡径した状態に変形可能である。
【0048】
外側ステント5を構成する合成樹脂製の繊維の材質は、特に制限はないが、剛性に富む材料が好ましい。例えば、例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノンからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、剛性に富む材料であればよい。特に、外側ステント5を構成する繊維の材質として、例えば、ポリL-乳酸(PLLA)が使用されることが好ましい。本実施形態においては、外側ステント5を構成する繊維は、例えば、ポリL-乳酸(PLLA)により形成されている。
【0049】
外側ステント5の形状は、特に制限はなく、例えば合成樹脂製の繊維を組編みした構造である。外側ステント5の端部は、特に制限はなく、自己拡張性に富む形状であることが好ましい。なお、外側ステント5は、自己拡張性、復元性、蠕動運動に対する追従性を有さなくてもよい。
【0050】
生分解性ステント1を消化管内に留置する場合には、まず、外側ステント5を、圧縮した状態で、消化管の内部に留置する。これにより、外側ステント5が拡径されて消化管内に留置される。その後、内側ステント2を、圧縮した状態で、外側ステント5の内側に留置する。よって、内側ステント2の内側ステント本体部3が外側ステント5の内部に配置された状態で、内側ステント2及び外側ステント5が重なるように留置される。
【0051】
より具体的には、ステントデリバリーシステムを用いて、生分解性ステント1を消化管内に留置する。本実施形態のステントデリバリーシステムは、消化管の内部に挿入されるアウターシース部材(外筒)(図示せず)と、押し子部材(図示せず)と、を備える。
アウターシース部材の内側には、内側ステント2及び外側ステント5を収納可能である。外側ステント5及び内側ステント2は、アウターシース部材の内側において、先端側から基端側にこの順に、圧縮した状態で直線上に並べて配置される。
この状態で、アウターシース部材の内側の基端側に配置された押し子部材により、アウターシース部材の先端側から外側ステント5及び内側ステント2をこの順に押し出す。これにより、まず、外側ステント5は、アウターシース部材の先端側から押し出されて、消化管の内部において拡径されて、消化管の内部に留置される。その後、押し子部材により内側ステント2を更に押すことで、内側ステント2は、アウターシース部材の先端側から押し出され、外側ステント5の内側において拡径されて、外側ステント5の内側に留置される。
【0052】
このように、生分解性ステント1を留置する場合には、外側ステント5を留置した後に、外側ステント5の内側に内側ステント2を留置することで、内側ステント2は、内側ステント本体部3において外側ステント5を消化管側に押圧すると共に、外側ステント5の両端部の長手方向Xの外側に配置される端部フレア部4において消化管を押圧できる。
【0053】
ここで、本発明の生分解性ステント1に関して、径の太い合成樹脂製の繊維(太径ファイバー)により疎な網目を有する筒状に形成された内側ステント本体部3の外周を覆うように、内側ステント本体部3よりも径の細い合成樹脂製の繊維(細径ファイバー)により密な網目を有する筒状に形成された外側ステント5を配置した理由について説明する。
【0054】
ステントを生分解性樹脂等の合成樹脂により構成する場合、デリバリーシースへの収納性を確保する観点から、比較的径の細い繊維が用いられる。この場合、作製されたステントの強度を十分に確保することができない。
【0055】
そこで、本発明においては、ステント1を、径の太い合成樹脂製の繊維(太径ファイバー)により疎な網目を有する筒状に形成された内側ステント本体部3の外周を覆うように、内側ステント本体部3よりも径の細い合成樹脂製の繊維(細径ファイバー)により内側ステント本体部3よりも密な網目を有する筒状に形成された外側ステント5を配置して構成した。
【0056】
これにより、細径ファイバーにより密な網目を有して形成された外側ステント5の内側に、太径ファイバーにより疎な網目を有して形成された内側ステント本体部3が配置されることで、内側ステント本体部3は、外側ステント5の内側から外側ステント5を押圧する。そのため、外側ステント5の内側からの内側ステント本体部3の押圧力により、外側ステント5の強度を補強して、生分解性ステント1全体の強度を確保できる。
また、太径ファイバーにより形成される内側ステント2を、疎な網目を有するように構成することで、デリバリーシースへの収納性を確保できる。
【0057】
また、消化管の蠕動運動に対する追従性・復元性が重要視される内側ステント本体部3の端部(健常部に当たる部分)には、端部フレア部4を配置した。端部フレア部4を、径の細い合成樹脂製の繊維(細径ファイバー)によって内側ステント本体部3の多角形環状部311よりも山谷数の多い多角形環状構造に構成することで、変形しやすく且つ消化管への密着面積が多くなるため、消化管の蠕動運動に対する追従性・復元性を向上できる。また、端部フレア部4を内側ステント本体部3の多角形環状部311よりも山谷数の多い多角形環状構造に構成しても、端部フレア部4を径の細い合成樹脂製の繊維(細径ファイバー)によって形成したため、デリバリーシースへの収納性を確保できる。
【0058】
以上の生分解性ステント1の製作例について簡単に説明する。
本製作例においては、内側ステント2の内側ステント本体部3について、ファイバー径が0.5mmのポリジオキサノン(PDO)を四角形形状(ジグザグ形状)(山谷数:4)に加工して多角形環状部311を作製し、長手方向Xにおいて屈曲方向の異なった多角形環状部311を長手方向Xに互い違いに6連になるように配置することで、3連の立体形状部31を作製して、内側ステント本体部3を作製した。これにより、芯棒径20mmの内側ステント本体部3を作製した。
また、内側ステント2の端部フレア部4について、内側ステント本体部3と同じファイバー径及び材質で多角形環状構造のジグザグ形状(山谷数:8)に作製して、内側ステント本体部3の両端部に接続した。
また、外側ステント5について、PLLAファイバー(0.25mm及び0.3mm)で組編みした外側ステント5を作製した。
そして、外側ステント5の内側に内側ステント2を配置することで、外側ステント5を内側ステント2の外側に重ねて留置して、生分解性ステント1を製作することができた。
【0059】
以上説明した本実施形態の生分解性ステント1によれば、以下のような効果を奏する。
【0060】
(1a)生分解性ステント1を、合成樹脂製の繊維によって網目を有する筒状に形成された内側ステント本体部3を有し、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な内側ステント2と、内側ステント本体部3よりも密な網目を有する筒状に形成され、内側ステント本体部3の外周を覆うように配置され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な外側ステント5と、を含んで構成した。そのため、密な網目を有して形成された外側ステント5の内側に、疎な網目を有して形成された内側ステント本体部3が配置されることで、外側ステント5の内側からの内側ステント本体部3の押圧力により、外側ステント5の強度を補強して、生分解性ステント1全体の強度を確保できる。これにより、外側ステント5の内側からの内側ステント本体部3の押圧力により生分解性ステント1の全体の強度を確保した状態で消化管を押圧できるため、狭窄を防止しつつ、生分解性ステント1の移動を防止できる。よって、自己拡張性、復元性、消化管への密着性、蠕動運動に対する追従性を発揮できる生分解性ステント1を実現できる。
【0061】
(1b)内側ステント本体部3は、長手方向Xに視た場合に合成樹脂製の繊維により多角形の環状に形成された複数の多角形環状部311を、長手方向Xに凸となるように屈曲又は湾曲した状態で、内側ステント本体部3の長手方向Xに並べて接続されることで形成される。これにより、簡易な構成で、自己拡張性、復元性、消化管への密着性、蠕動運動に対する追従性を発揮できる生分解性ステント1を実現できる。
また、多角形環状部311を形成する合成樹脂製の繊維は、筒状接続部32において屈曲した部分が直線状に戻る力が働いている(
図2の矢印方向)。これにより、筒状接続部32において屈曲された合成樹脂製の繊維は、内側ステント本体部3の長手方向に交差する方向に延びる直線状に戻るように力が作用する。よって、内側ステント本体部3は、狭窄部を安定して押圧できる。
【0062】
(1c)内側ステント2は、内側ステント本体部3の長手方向Xの端部に接続され内側ステント本体部3の径よりも大きい端部フレア部4を更に備える。これにより、端部フレア部4において消化管を安定して押圧できる。よって、内側ステント本体部3の長手方向Xの端部に配置される端部フレア部4により、生分解性ステント1を消化管内で安定して保持できる。
【0063】
(1d)端部フレア部4は、内側ステント本体部3よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって内側ステント本体部3の多角形環状部311よりも多角の多角形環状構造で構成される。これにより、端部フレア部4は、変形しやすく且つ消化管への密着面積が多くなるため、消化管運動に対する追従性・復元性を向上できる。また、端部フレア部4を径の細い合成樹脂製の繊維(細径ファイバー)によって形成したため、デリバリーシースへの収納性を確保できる。
【0064】
(1e)生分解性ステント1を生体内に留置するためのステントデリバリーシステムであって、内側に内側ステント2及び外側ステント5を収納可能であって外側ステント5及び内側ステント2が先端側からこの順に並べて配置されるアウターシース部材と、アウターシース部材の内側に配置され、外側ステント5及び内側ステント2をこの順にアウターシース部材の先端側から押し出し可能な押し子部材と、を備える。これにより、押し子部材により外側ステント5及び内側ステント2をこの順に押し出すことで、消化管の内部に生分解性ステント1を容易に留置することができる。
【0065】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態に係る生分解性ステント10を示す斜視図である。第2実施形態の生分解性ステント10は、内側ステント6及び外側ステント11の構成が主に異なる。
【0066】
第2実施形態の合成樹脂ステントは、生分解性繊維により構成される生分解性ステント10であり、
図4に示すように、内側ステント6(第1ステント)と、内側ステント6の外側に配置される外側ステント11(第2ステント)と、を備える。内側ステント6の長手方向X(軸方向)の中央側の部分は、外側ステント11の内側に配置される。第2実施形態においては、第1実施形態で説明した構成については、その説明を省略する。
第2実施形態の生分解性ステント10は、第1実施形態の生分解性ステント1と同様に、合成樹脂製の繊維によって網目を有する筒状に形成された内側ステント本体部71を有し、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な内側ステント6と、内側ステント本体部71よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって内側ステント本体部71よりも密な網目を有する筒状に形成され、内側ステント本体部3の外周を覆うように配置され縮径した状態から拡径した状態に変形可能な外側ステント11と、を備えて構成される。
【0067】
内側ステント6について説明する。
図5は、第2実施形態の内側ステント6を示す斜視図である。
本実施形態の内側ステント6は、生分解性繊維により構成される生分解性ステントであり、
図5に示すように、長手方向X(軸方向)に延びて形成され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能である。
図5に示す内側ステント6は、自然状態を示している。内側ステント6は、
図5に示す自然状態から、縮径した状態に変形可能であり、縮径した状態で消化管に留置された場合には、消化管の大きさに応じて縮径した状態から拡径された状態に変形する。
【0068】
内側ステント6は、複数本の繊維60(線材)により網目状に編み込まれて円筒状に構成され、外周に繊維60によって形成されかつ規則正しく配列される菱形の空孔により構成される格子61を多数有する。複数の格子61は、軸方向に並んで配置されると共に、周方向に並んで配置される。内側ステント6の網目は、内側ステント6が縮径した状態において、軸方向に粗となり、内側ステント6が拡径した状態において、軸方向に密となる。本実施形態では、編み込まれた繊維60が交差する交差点は、固定されている。固定方法としては、例えば、接着、超音波溶着等の方法がある。少なくとも、後述する端部フレア部72における隣り合う山部721同士は、軸方向の最も端部側の交差点(交点)において固定される。本実施形態においては、内側ステント6は、編み込まれた繊維60が交差する交差点の全てにおいて固定されている。これにより、内側ステント6の圧縮強度が向上される。
なお、端部フレア部72の隣り合う山部721同士が固定される交差点は、2本の直線状の繊維60が交差して固定されていてもよいし、2本の屈曲する繊維60で構成された屈曲部の頂点同士が固定されていてもよい。
【0069】
内側ステント6は、全体として長手方向Xに延びて形成される内側ステント本体部71(第1ステント本体部)と、内側ステント6の長手方向X(軸方向)の一方側の端部に配置される端部フレア部72と、を有する。内側ステント6は、内側ステント本体部71の一部が外側ステント11の内側に配置されると共に、端部フレア部72が外側ステント11に覆われない状態で、消化管に留置される。
【0070】
内側ステント本体部71は、複数の格子61により網目を有する筒状に形成される。複数の格子61は、軸方向に並んで配置されると共に、周方向に並んで配置される。本実施形態においては、複数の格子61は、それぞれ、菱形の空孔により構成される。
【0071】
端部フレア部72は、本実施形態では、内側ステント6の長手方向の一方側の端部のみに設けられる。端部フレア部72は、消化管の健常部に当たるため、腸管等の消化管の蠕動運動に対する追従性・復元性と、消化管の蠕動運動に対して留置後の位置ずれを抑制できることが重要視される。なお、本実施形態においては、端部フレア部72を、内側ステント6の軸方向の一方の端部にのみ配置したが、これに限定されず、内側ステント6の軸方向の両端部に配置してもよい。
【0072】
端部フレア部72は、内側ステント6の一方側の端部において、軸方向の外側に突出する先端角部からなる山部721が周方向に連続して複数配置されることで、軸方向に視た場合に環状に形成される。より詳細には、複数の山部721は、それぞれ繊維60が内側ステント6の端部において屈曲されて形成される。複数の山部721の個数は、例えば、3~11個が好ましい。本実施形態においては、複数の山部721の個数は、例えば、3個である。
【0073】
山部721の2辺721a,721aは、軸方向に並んで配置される複数の格子61のうち、軸方向の端部に配置される端部格子611の2辺611a,611aにより構成される。
【0074】
端部フレア部72は、内側ステント6が消化管に留置された状態において、山部721の2辺721a,721aを構成する端部格子611の2辺611a,611aの成す先端角度θ(角度)が、80°以下になるように形成される。山部721の2辺721a,721aの成す先端角度θを80°以下に設定した理由は、後述する評価試験の結果によるものである。山部721の2辺721a,721aの成す先端角度θが80°以下の場合には、後述する評価試験の結果に示すように、蠕動運動を模した動作を10回繰り返した後において、消化管の蠕動運動に対する留置後の内側ステント6の位置ずれは、1cm以下である。
【0075】
本実施形態においては、端部フレア部72は、内側ステント6が消化管に留置された状態において、山部721の2辺721a,721aの成す先端角度θが、80°以下になるように形成され、かつ、複数の山部721の数が、3~11個となるように、複数の山部721が周方向に連続して配置されて構成される。このように構成される端部フレア部72は、周方向に並ぶ山部721の数と、山部721の2辺721a,721aの成す先端角度θとにより、周方向の密度と山部721の先端角部の突出長さが定まり、比較的疎な状態で、軸方向の外側に突出する先端角部からなる山部721が周方向に複数連続して形成される形状が定まる。本実施形態においては、端部フレア部72は、内側ステント6の端部において、内側ステント本体部71よりも、疎な状態で編まれて構成される。
このように構成される端部フレア部72は、後述する評価試験の結果に示されるように、消化管の蠕動運動に対する留置後の内側ステント6の位置ずれは1cm以下であるため、消化管の蠕動運動に対する追従性を発揮可能であるとともに、消化管の蠕動運動に対して留置後の位置ずれを抑制することができる。
【0076】
図5に示すように、本実施形態においては、端部フレア部72において、山部721の頂点と谷部722の頂点との軸方向の距離(振幅)をピッチP1という。内側ステント本体部71において、格子61の軸方向に突出する山部の軸方向の距離(振幅)をピッチP2という。
また、端部フレア部72において、山部721を構成する2辺721a,721aのうちの1辺721aの長さを1辺長Lという。山部721の1辺721aの1辺長Lは、山部721の頂点から谷部722の頂点までの長さである。
【0077】
本実施形態の内側ステント6においては、端部フレア部72においてピッチP1を大きく形成し、内側ステント本体部71において、端部フレア部72のピッチP1よりもピッチP2を小さく形成する。例えば、内側ステント本体部71のピッチP2に対する端部フレア部72のピッチP1の比率(ピッチP1/ピッチP2)は、3.3~7.0であることが好ましい。これにより、内側ステント本体部71と端部フレア部72とは急激なピッチの変化がない状態で形成される。また、内側ステント本体部71のピッチP2に対する端部フレア部72のピッチP1の比率(ピッチP1/ピッチP2)が3.3~7.0の範囲にあることで、消化管の蠕動運動に対しての追従性を向上できる。端部フレア部72は、消化管の健常部に配置され、内側ステント本体部71は、消化管の狭窄部に配置される。
【0078】
端部フレア部72を健常部に配置し、内側ステント本体部71を狭窄部に配置する理由について説明する。
ステントのピッチP1が大きい場合は、留置する消化管の径が大きい箇所においても、山部721が、消化管の軸方向に対して平行に近くなり、消化管の蠕動運動に対して留置後のステントの位置ずれを抑制することができる。また、ステントのピッチP1が大きい場合には、網目が疎になるため、圧縮強度は低くなる。そのため、ピッチP1を大きくすることで、消化管の径が大きい箇所でも、消化管の蠕動運動に対して留置後のステントの位置ずれを抑制できる。ここで、健常部に配置されるステントには、高い圧縮強度が要求されない。そのため、ピッチP1が大きいステントは、消化管の径が大きく且つ高い圧縮強度が要求されない健常部に配置されることが好ましい。
【0079】
一方、ステントのピッチP2が小さい場合は、留置する消化管の径が小さくなれば、山部721が、消化管の軸方向に対して平行に近くなり、消化管の蠕動運動に対して留置後のステントの位置ずれを抑制することができる。また、ステントのピッチP2が小さい場合には、網目が密になるため、圧縮強度は高くなる。ここで、狭窄部に配置されるステントには、高い圧縮強度が要求される。そのため、ピッチP2が小さいステントは、消化管の径が小さく且つ高い圧縮強度が要求される狭窄部に配置されることが好ましい。
【0080】
また、端部フレア部72の山部721を構成する2辺721a,721aのうちの1辺721aの1辺長Lは、後述する評価試験の結果により、例えば、16~22mmの範囲であることが好ましい。端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長Lが、例えば、16~22mmの範囲にある場合には、後述する評価試験の結果に示すように、消化管の蠕動運動に対する留置後の内側ステント6の位置ずれは1cm以下であるため、消化管の蠕動運動に対する追従性を発揮可能であるとともに、消化管の蠕動運動に対して留置後の位置ずれを抑制することができる。
【0081】
内側ステント本体部71及び端部フレア部72を構成する合成樹脂製の繊維60の材質は、特に制限はないが、復元性に富む材料が好ましい。例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノン、トリメチレンカーボネートからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマーなどが挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、復元性に富む材料であればよい。特に、内側ステント本体部71及び端部フレア部72を構成する繊維の材質として、例えば、ポリジオキサノン(PDO)が使用されることが好ましい。
【0082】
本実施形態において、内側ステント6は、例えば、ジグザグ形状で軸方向に延びる繊維を周方向に連結することで構成してもよいし、1本の繊維を編み込むことにより構成してもよい。
【0083】
また、内側ステント本体部71及び端部フレア部72を構成する合成樹脂製の繊維は特に制限はなく、モノフィラメント糸であってもよいし、マルチフィラメント糸であってもよい。なお、生体内の狭窄部において内側ステント本体部71の径方向外側から加わる圧力に対する反発力を強くする観点から、内側ステント本体部71を構成する合成樹脂製の繊維はモノフィラメント糸であることが好ましい。
【0084】
以上の内側ステント本体部71及び端部フレア部72を構成する合成樹脂製の繊維のファイバー径(直径)は、例えば、0.05~0.7mmであり、好ましくは、0.4~0.6mmである。
また、内側ステント本体部71の径の大きさは特に制限されないが、例えば、拡径した状態において直径が10~25mmであり、長さが、30~250mmである。
【0085】
端部フレア部72のピッチP1は、接する消化管の径がφ16mm~φ20mmの場合には、12mm以上にすることが好ましい。
内側ステント本体部71のピッチP2は、接する消化管の径がφ12mm程度であれば、3mm以上にすることが好ましい。
【0086】
内側ステント6の内側ステント本体部71の径は、対象となる消化管の径の太さよりも若干(例えば、1~2割程度)大きい径で形成される。内側ステント6を消化管の内部に留置させる場合には、内側ステント6を縮径させた状態で、対象となる消化管の内部に留置し、留置後に拡径させる。
【0087】
例えば、φ16mmの径の消化管に内側ステント6を留置する場合には、留置する内側ステント6の内側ステント本体部71の径を、自然状態で、例えば、17~32mmの径の大きさに形成することが好ましい。また、留置する内側ステント6の端部フレア部72において、3~11個の山部721を周方向に連続して配置することが好ましく、山部721を構成する2辺721a,721aのうちの1辺721aの1辺長Lを、16~22mmに形成することが好ましい。また、端部フレア部72において、自然状態において、山部721を構成する2辺721a,721aの角度を、例えば、38.5~147.3°に形成することが好ましく、内側ステント6を消化管に留置した後に、山部721を構成する2辺721a,721aの角度が、例えば、36.2~78.4°になることが好ましい。
【0088】
ここで、
図6~
図8を参照して、本実施形態の内側ステント6を用いた場合の評価試験の結果について説明する。
本評価試験においては、ファイバー径が0.4mm又は0.5mmのポリジオキサノン(PDO)のモノフィラメントを用いて、内側ステント本体部71と、一方側の端部に配置される端部フレア部72と、からなる
図5に示す内側ステント6を、各パラメータ(山部の数、ピッチP1、先端角度θ、1辺長L)を変化させて作製した。端部フレア部72は、内側ステント6の端部において、山部721を周方向に連続して複数並べて形成した。
【0089】
例えば、本評価試験において、ファイバー径が0.4mmの繊維を用いて、φ16mmの腸管に留置した状態において、
図6(a)に示す各パラメータ(山部の数、ピッチP1、先端角度θ、1辺長L)となる内側ステント6を作製した。
ここで、腸管に留置した場合に内側ステント6は縮径されるため、φ20mmの芯棒に取り付けた内側ステント6を作製し、作製した内側ステント6をφ16mmの腸管に留置する。
【0090】
例えば、
図6(a)の上側の表に示すように、山部の数が3個であって、留置状態における端部フレア部72のピッチP1が、7.0mm、8.7mm、11.0mm、11.8mm、13.5mm、16.3mm、19.0mm、22.0mmとなる内側ステント6を作製する場合には、それぞれ、φ20mmの芯棒に取り付けた場合に、例えば、留置状態のピッチP1よりも小さいピッチP1で作製することが必要となり、
図6(b)に示すように、ピッチP1を、例えば、3.0mm、6.0mm、9.0mm、10.0mm、12.0mm、15.0mm、18.0mm、21.0mmで作製する。
また、
図6(a)の下側の表に示すように、山部の数が4個であって、留置状態における端部フレア部72のピッチP1が、5.6mm、7.7mm、10.1mm、11.0mm、12.8mm、15.7mm、18.7mm、21.5mmとなる生分解性ステントを作製する場合には、それぞれ、φ20mmの芯棒に取り付けた場合に、例えば、留置状態のピッチP1よりも小さいピッチP1で作製することが必要となり、
図6(b)に示すように、ピッチP1を、例えば、3.0mm、6.0mm、9.0mm、10.0mm、12.0mm、15.0mm、18.0mm、21.0mmで作製する。
【0091】
この場合において、ピッチP1と山部の数とにより、
図6(a)及び(b)に示すように、「先端角度」の理論値を算出できる。なお、1辺長は、留置状態である場合でも、芯棒に取り付けて作製する場合でも、同じ長さである。
【0092】
以上のように、本評価試験において、ファイバー径が0.4mmの繊維を用いて内側ステント6を作製する場合には、φ16mmの腸管に留置した状態におけるステントの各パラメータ(山部の数、ピッチP1、先端角度θ、1辺長L)の値(理論値)となるように、φ20mmの芯棒に取り付けて作製するステントの各パラメータ(山部の数、ピッチP1、先端角度θ、1辺長L)を算出した。そして、φ20mmの芯棒に取り付けた場合のステントの各パラメータ(山部の数、ピッチP1、先端角度θ、1辺長L)の値(理論値)となるように、ファイバーをφ20mmの芯棒に取り付けることで、留置する前の内側ステント6を作製した。
【0093】
本評価試験においては、このように作製したステントを用いて以下の試験を行った。
試験方法としては、内径16mm又は20mmのポリエチレンチューブに、各パラメータ(山部の数、ピッチP1、先端角度θ、1辺長L)を変化させて作製した内側ステント6を留置して、ポリエチレンチューブに対して蠕動運動を模した動作を付与した。消化管に留置した内側ステント6に対して、ポリエチレンチューブを一方向に移動させて戻す蠕動運動を模した動作を10回繰り返し、初期位置からのステントの位置ずれを測定した。
【0094】
図7及び
図8に示す評価結果について説明する。
図7及び
図8に示す評価結果は、ファイバー径がφ0.4mm又はφ0.5mmの繊維を使用して、端部フレア部72の山部721の数が3個又は4個の場合に、端部フレア部72の2辺721a,721aのうち1辺721aにおける1辺長Lの長さと、先端角度θとを変化させた内側ステント6を作製し、作製した内側ステント6を用いて、端部フレア部72の留置後の位置ずれ(migration)の距離を測定し、表に示したものである。なお、
図7及び
図8中の空欄部分の値は、実際には測定していないが、空欄部分の周辺の測定値から推定した。
【0095】
まず、
図7に示す評価結果について説明する。
図7に示す評価結果1は、ファイバー径がφ0.4mmの繊維を使用した場合の評価結果である。
【0096】
図7の(a)に示すように、山部の数が3個の場合に、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが14.5mm~23.5mmの範囲で、かつ、山部721を構成する2辺721aの成す先端角度θが、46.4~78.4°の範囲である場合に、内側ステント6の留置後の位置ずれが1cm以下であった。
よって、山部721の数が3個の場合には、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが、14.5mm~23.5mmの範囲であり、かつ、山部721を構成する辺721a,721aの成す先端角度θが、78.4°以下であることが好ましいという評価結果が得られた。
【0097】
また、
図7の(b)示すように、山部の数が4個の場合に、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが16.9mm~22.4mmの範囲で、かつ、山部721を構成する2辺721aの成す先端角度θが、36.2~61.4°の範囲である場合に、内側ステント6の留置後の位置ずれが1cm以下であった。
よって、山部の数が4個の場合には、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが、16.9mm~22.4mmの範囲であり、かつ、山部721を構成する辺721a,721aの成す先端角度θが、61.4°以下であることが好ましいという評価結果が得られた。
【0098】
次に、
図8に示す評価結果2について説明する。
図8に示す評価結果2は、ファイバー径がφ0.5mmの繊維を使用した場合の評価結果である。
【0099】
図8の(a)に示すように、山部の数が3個の場合に、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが18.3mm~23.5mmの範囲で、かつ、山部721を構成する2辺721aの成す先端角度θが、46.4~67.1°の範囲である場合に、内側ステント6の留置後の位置ずれが1cm以下であった。
よって、山部の数が3個の場合には、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが、18.3mm~23.5mmmmの範囲であり、かつ、山部721を構成する2辺721a,721aの成す先端角度θが、67.1°以下であることが好ましいという評価結果が得られた。
【0100】
また、
図8の(b)に示すように、山部の数が4個の場合に、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが12.7mm~22.4mmの範囲で、かつ、山部721を構成する2辺721aの成す先端角度θが、36.2~65.9°の範囲である場合に、内側ステント6の留置後の位置ずれが1cm以下であった。
よって、山部の数が3個の場合には、端部フレア部72の山部721の1辺721aの1辺長L1の長さが、12.7mm~22.4mmの範囲であり、かつ、山部721を構成する辺721a,721aの成す先端角度θが、65.9°以下であることが好ましいという評価結果が得られた。
【0101】
以上の評価結果2においては、端部フレア部72の山部721の2辺721a,721aの成す先端角度θは、78.4以下であることが好ましいという評価結果が得られたため、例えば、80°以下であることが好ましい。また、端部フレア部72の山部721を構成する2辺721a,721aのうちの1辺721aの1辺長Lは、16.9~22.4mmの範囲であることが好ましいという評価結果が得られたため、例えば、16~22mmの範囲であることが好ましい。
【0102】
以上説明した本実施形態の内側ステント6によれば、以下のような効果を奏する。
【0103】
(2a)内側ステント6を、軸方向の端部に配置された端部フレア部72を備えて構成し、端部フレア部72を、軸方向の外側に突出する先端角部からなる山部721が周方向に連続して複数配置することで、軸方向に視た場合に環状に形成し、内側ステント6が消化管に留置された状態において、山部721を構成する2辺721a,721aの成す先端角度θを80°以下とし、複数の山部721の数を3~11個とした。これにより、評価試験の結果に示されるように、消化管の蠕動運動に対する留置後の内側ステント6の位置ずれが1cm以下であるため、消化管の蠕動運動に対する追従性を発揮可能であるとともに、消化管の蠕動運動に対して留置後の内側ステント6の位置ずれを抑制できる。
【0104】
(2b)端部フレア部72の山部721を構成する2辺721a,721aを、軸方向の端部に配置された端部格子611の2辺611a,611aにより構成した。これにより、端部格子611が格子状に形成されることで圧縮強度を有しているため、山部721の圧縮強度が強化される。よって、端部フレア部72において圧縮強度が確保された状態で、消化管の蠕動運動に対して留置後の内側ステント6の位置ずれを一層抑制できる。
【0105】
(2c)内側ステント6は、軸方向に並んで配置される複数の格子61を有し、端部格子611は、複数の格子61における端部に配置される。これにより、内側ステント6の全体としての圧縮強度を確保しつつ、端部フレア部72において、消化管の蠕動運動に対して留置後の内側ステント6の位置ずれを一層抑制できる。
【0106】
(2d)山部721を構成する2辺721a,721aのうちの1辺721aの1辺長は、16~22mmである。これにより、評価試験の結果に示されるように、消化管の蠕動運動に対する留置後の内側ステント6の位置ずれが1cm以下であるため、消化管の蠕動運動に対する追従性を発揮可能であるとともに、消化管の蠕動運動に対して留置後の内側ステント6の位置ずれを一層抑制できる。
【0107】
(2e)端部フレア部72における隣り合う山部721同士は、軸方向の最も端部側の交差点において固定される。これにより、端部フレア部72において圧縮強度が確保された状態で、消化管の蠕動運動に対して留置後の内側ステント6の位置ずれを一層抑制できる。
【0108】
なお、内側ステント6において、例えば、本実施形態では、合成樹脂ステント6の山部721の数を3個又は4個に形成したが、これに限定されない。合成樹脂ステント6の山部721の数は、例えば、合成樹脂ステント6を小腸用のステントに適用した場合には、3~8個が好ましく、例えば、合成樹脂ステント6を食道用のステントに適用した場合には、3~11個が好ましい。
【0109】
次に、外側ステント11について説明する。
図9は、第2実施形態の外側ステント11を示す斜視図である。
図10は、
図9に示す外側ステント11の拡大図である。
本実施形態の外側ステント11は、生分解性繊維により構成される生分解性ステントであり、
図9及び
図10に示すように、網目状筒状部12(第1編み構成部)と、網目状筒状部12に編まれて配置される波状編み部13(第2編み構成部)と、を備える。
【0110】
網目状筒状部12は、複数本の繊維120により網目状に編み込まれて円筒状に構成され、外周に繊維120によって形成されかつ規則正しく配列される菱形の空孔を多数有する。網目状筒状部12の網目は、外側ステント11が縮径した状態において、軸方向に粗となり、外側ステント11が拡径した状態において、軸方向に密となる。
【0111】
本実施形態においては、
図10に示すように、網目状筒状部12を構成する複数本の繊維120は、複数の第1繊維121と複数の第2繊維122とにより構成されている。網目状筒状部12は、側方から視た場合に、第1繊維121と第2繊維122とにより菱形の空孔を多数有し、複数の第1繊維121と複数の第2繊維122とが交差して構成された複数の第1交差点123を有する。
【0112】
複数の第1繊維121は、軸方向に対して所定角度傾斜して延びる合成樹脂製の繊維によって形成される。本実施形態においては、
図10に示すように、複数の第1繊維121は、右上側から左下側に向けて傾斜して延びて配置される。
【0113】
複数の第2繊維122は、複数の第1繊維121に対して交差して延びる合成樹脂製の繊維によって形成される。本実施形態においては、
図10に示すように、複数の第2繊維122は、左上側から右下側に向けて傾斜して延びて配置される。
【0114】
第1繊維121及び第2繊維122の材質は、特に制限はないが、剛性に富む材料が好ましい。例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノンからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマー等が挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、剛性に富む材料であればよい。特に、第1繊維121及び第2繊維122を構成する繊維の材質として、例えば、ポリ乳酸(PLA)や、ポリL-乳酸(PLLA)が使用されることが好ましい。本実施形態においては、第1繊維121及び第2繊維122は、例えば、ポリ乳酸(PLA)により形成されている。
【0115】
繊維120として生分解性の繊維を用いる場合、その直径は、0.1~0.4mmであることが好ましい。生分解性の繊維120の直径が0.1mm未満であると、外側ステント11の強度が低下する傾向にある。生分解性の繊維120の直径が0.4mmを超えると、縮径した状態における径が大きくなることで、デリバリーシステム等の細管状の部材に外側ステント11を収納し難くなる傾向にある。生分解性の繊維120の直径の上限は、内径が細いデリバリーシステムに収納する観点から、0.3mmであることが更に好ましい。生分解性の繊維120の直径の下限は、高い強度を維持する観点から、0.2mmであることがより好ましい。本実施形態では、繊維120として、直径が0.2mm及び0.3mmの生分解性の繊維を用いた。
【0116】
波状編み部13は、
図9に示すように、環状に構成された波形状の複数本の繊維130が網目状筒状部12に編まれて配置される。本実施形態においては、波状編み部13を構成する複数本の繊維130は、軸方向に離間して配置される複数の第3繊維131と、軸方向に離間して配置される複数の第4繊維132と、により構成されている。波状編み部13は、複数の第3繊維131と複数の第4繊維132とが交差して構成された複数の第2交差点133を有する。
【0117】
第3繊維131及び第4繊維132は、
図10に示すように、山部及び谷部が交互に連続して網目状筒状部12の周方向に延びる波形状に形成される。第3繊維131と第4繊維132とは、互いの凸部分が向かい合うように、かつ、向かい合った凸部分の一部が重なるように配置される。
【0118】
より具体的には、第3繊維131及び第4繊維132は、いずれも、第1方向D1側に凸となる山部及び第2方向D2側に凸となる山部を有する波形状に形成されており、側方から視た場合に、互いの山部が一部重なり合って配置され、2つの第2交差点133において交差している。また、波状編み部13は、側方から視た場合に、交差領域134を有する。交差領域134は、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分において、複数の第2交差点133のうち隣り合って配置される2つの第2交差点133の間における第3繊維131と第4繊維132とに囲まれた領域である。交差領域134は、筒状の網目状筒状部12の周方向に並んで複数形成される。
【0119】
第3繊維131及び第4繊維132を構成する合成樹脂製の繊維の材質は、特に制限はないが、復元性に富む材料が好ましい。例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノンからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマー等が挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、復元性に富む材料であればよい。第3繊維131及び第4繊維132の材質として、例えば、ポリジオキサノン(PDO)が使用されることが好ましい。
【0120】
繊維130として生分解性の繊維を用いる場合、その直径は、0.1~0.4mmであることが好ましい。本実施形態では、繊維130として、直径が0.15~0.22mmの生分解性の繊維を用いた。
【0121】
波状編み部13の複数の交差領域134には、網目状筒状部12を側方から視た場合に、それぞれ、網目状筒状部12の第1交差点123が配置される。第1交差点123は、複数の交差領域134に配置され、筒状の網目状筒状部12の周方向に並んで複数形成される。波状編み部13の交差領域134に網目状筒状部12の第1交差点123が配置された部分は、第1引っ掛かり部141を構成する。本実施形態の外側ステント11は、第1引っ掛かり部141を複数備えており、複数の第1引っ掛かり部141が周方向に並んで配置された列が、軸方向の全域に形成されている。
【0122】
第1引っ掛かり部141においては、第3繊維131は、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分の重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第1繊維121、第2繊維122及び第4繊維132のうち一以上の繊維に引っ掛かることが可能な状態で配置される。また、第4繊維132は、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第1繊維121、第2繊維122及び第3繊維131のうち一以上の繊維に引っ掛かることが可能な状態で配置される。
【0123】
本実施形態においては、波状編み部13を構成する第3繊維131及び第4繊維132は、網目状筒状部12を構成する第1繊維121及び第2繊維122よりも拡張力が高い合成樹脂製の繊維によって形成され、折れ曲がった部分が直線に戻ろうとする性質を有する。第3繊維131及び第4繊維132の少なくとも一部は、網目状筒状部12に編まれて配置されており、外側ステント11の径が広がる方向に力を働かせることができ、網目状筒状部12を縮径した状態から拡径した状態に変形させることが可能である。
【0124】
第1引っ掛かり部141の構成について説明する。なお、
図10は、
図9における筒状の外側ステント11の径方向を、
図10の紙面に対して垂直な方向(紙面を貫く方向)に沿って配置した状態の図である。そのため、外側ステント11の径方向の内側は、
図10における紙面の垂直方向における奥側であり、外側ステント11の径方向の外側は、
図10の紙面の垂直方向における手前側である。
【0125】
図10に示すように、第1引っ掛かり部141においては、網目状筒状部12の第1繊維121及び第2繊維122は、第1交差点123においてX状に交差する。
【0126】
第3繊維131は、2つの第2交差点133のいずれにおいても、第4繊維132に対して、
図10における手前側又は奥側(外側ステント11の径方向の外側又は内側)に配置されている。これにより、外側ステント11の第3繊維131及び第4繊維132は、互いの第1方向D1側又は第2方向D2側への移動に対して、互いが、引っ掛からない状態で配置されている。
【0127】
また、波状編み部13における第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分において、第3繊維131と第4繊維132とに囲まれた交差領域134には、第1繊維121及び第2繊維122の第1交差点123が配置されている。
【0128】
第1繊維121は、
図10に示すように、交差領域134において、右上側から左下側に向けて傾斜して延びて配置される。第1繊維121は、右上側から左下側に向けて、第3繊維131及び第4繊維132のうちの一方の繊維の手前側を通り、第1交差点123において第2繊維122と交差し、第3繊維131及び第4繊維132のうちの他方の繊維の奥側を通っている。
第2繊維122は、
図10に示すように、交差領域134において、左上側から右下側に向けて傾斜して延びて配置される。第2繊維122は、第3繊維131及び第4繊維132のうちの一方の繊維の手前側を通り、第1交差点123において第1繊維121と交差し、第3繊維131及び第4繊維132のうちの他方の繊維の奥側を通っている。
【0129】
以上のように第1繊維121、第2繊維122、第3繊維131及び第4繊維132が配置されることにより、第1引っ掛かり部141においては、第3繊維131及び第4繊維132のうちの第1方向D1側に山部が凸となる一方の繊維が、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第1繊維121及び第2繊維122に引っ掛かることが可能な状態で配置されており、第3繊維131及び第4繊維132のうちの第1方向D1と反対側の第2方向D2側に山部が凸となる他方の繊維が、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第1繊維121及び第2繊維122に引っ掛かることが可能な状態で配置されている。
【0130】
以上の外側ステント11を製造する場合には、波状編み部13を編んで、その後、網目状筒状部12を編むことで製造してもよいし、これとは逆に、網目状筒状部12を先に編んで、その後、波状編み部13を編むことで製造してもよい。外側ステント11を製造する場合、例えば、周面において所定の間隔で複数のピンが立設された筒状の治具を用いて、複数のピンに繊維を引っ掛けながら波状編み部13を編み、その後、波状編み部13の交差領域に、網目状筒状部12の繊維を通すことで、外側ステント11を製造することができる。
【0131】
以上のように構成される外側ステント11は、網目状筒状部12において、軸方向に対して傾斜した第1繊維121及び第2繊維122により筒状に編まれているため、ステントの形状が筒状に保たれている。
また、網目状筒状部12には、波形状の波状編み部13が編まれており、波状編み部13(第3繊維131及び第4繊維132)は、網目状筒状部12(第1繊維121及び第2繊維122)よりも拡張力が高い合成樹脂製の繊維によって形成され、折れ曲がった部分が直線に戻ろうとする性質を有する。そのため、波状編み部13が網目状筒状部12の周方向に一周するように波形状に編み込まれることで、波状編み部13により、外側ステント11の径が広がる方向に力を働かせることができ、拡張力を高めることができる。
よって、外側ステント11の径方向への拡張力が強化され、自己拡張性を発揮させることができる。また、消化管壁への密着性が高まり、消化管運動への追従性を発揮させることができる。
【0132】
また、外側ステント11は、合成樹脂製の繊維が組編みされて、長手方向X(所定方向)に延びる円筒状に形成される。外側ステント11は、内側ステント6の長手方向Xの中央側の部分の外周を覆うように配置される。外側ステント11は、内側ステント6よりも径の細い合成樹脂製の繊維によって、内側ステント6よりも密な網目を有する。外側ステント11は、縮径した状態から拡径した状態に変形可能である。
【0133】
生分解性ステント10を消化管内に留置する場合には、まず、外側ステント11を、縮径した状態で消化管の内部に留置し、留置後に拡径させる。これにより、外側ステント11が拡径されて消化管内に留置される。その後、内側ステント6を、縮径した状態で外側ステント11の内側に留置し、留置後に拡径させる。これにより、内側ステント6の中央側が外側ステント11の内部に配置された状態で、内側ステント6及び外側ステント11が重なるように留置される。
【0134】
以上説明した第2実施形態の外側ステント11によれば、以下のような効果を奏する。
【0135】
(3a)外側ステント11を、網目状に編み込まれて構成された複数の繊維121,122からなる筒状の網目状筒状部12と、網目状筒状部12に編まれて配置され環状に構成された複数の繊維131,132からなる波状編み部13と、を備えて構成し、網目状筒状部12を、軸方向に対して所定角度傾斜して延びる複数の第1繊維121と、第1繊維121に交差して延びる複数の第2繊維122と、複数の第1繊維121と複数の第2繊維122とが交差して構成された複数の第1交差点123と、を有するように構成し、波状編み部13を、軸方向に離間して配置される波形状の複数の第3繊維131と、軸方向に離間して配置される波形状の複数の第4繊維132と、を有するように構成し、少なくとも1つの第1交差点123を、第3繊維131と第4繊維132とに囲まれた交差領域134に配置した。
【0136】
これにより、外側ステント11は、網目状筒状部12が、軸方向に対して傾斜した第1繊維121及び第2繊維122により筒状に編まれているため、ステントの形状が筒状に保たれる。また、網目状筒状部12には、波形状の波状編み部13が編まれており、網目状筒状部12の第1交差点123が、波状編み部13の交差領域134に配置されることで、波状編み部13により、径が広がる方向に力が働き、径方向への拡張力を高めることができる。よって、外側ステント11の径方向への拡張力が強化され、自己拡張性を発揮させることができる。また、消化管壁への密着性が高まり、消化管運動への追従性を発揮させることができる。従って、デリバリーシステム等の細管状の部材への収納性を確保しつつ、生体管路内の患部にステントを留置した後の位置ずれが起こりにくいステントとすることができる。
【0137】
(3b)交差領域134を、筒状の網目状筒状部12の周方向に並んで複数形成し、第1交差点123を、筒状の網目状筒状部12の周方向に並んで複数形成し、複数の交差領域134それぞれに配置した。これにより、波状編み部13を周方向に沿って編み込むことができるため、外側ステント11の径方向への拡張力を一層強化することができる。
【0138】
(3c)網目状筒状部12の第1交差点123が波状編み部13の交差領域134に配置された構成において、第3繊維131を、第3繊維131と第4繊維132との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第1繊維121、第2繊維122及び第4繊維132のうち一以上の繊維に引っ掛かることが可能な状態で配置し、第4繊維132を、第3繊維131と第4繊維132との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第1繊維121、第2繊維122及び第3繊維131のうち一以上の繊維が引っ掛かることが可能な状態で配置した。これにより、波状編み部13の第3繊維131及び第4繊維132には、いずれかの繊維に引っ掛かることで、第1交差点123がずれることを防止できる。
【0139】
(3d)波状編み部13(第3繊維131及び第4繊維132)を、網目状筒状部12(第1繊維121及び第2繊維122)よりも拡張力が高い合成樹脂製の繊維によって形成した。これにより、第1繊維121及び第2繊維122により形成された筒状の網目状筒状部12が形成され、第3繊維131及び第4繊維132により第1繊維121及び第2繊維122を径方向に拡張させることができるため、径方向への拡張力を一層高めることができる。
【0140】
また、以上説明した第2実施形態の生分解性ステント10によれば、第1実施形態の(1a)の効果と同様に、以下の(4a)の効果を奏する。
【0141】
(4a)生分解性ステント10を、合成樹脂製の繊維によって網目を有する筒状に形成された内側ステント本体部71を有し、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な内側ステント6と、内側ステント本体部71よりも密な網目を有する筒状に形成され、内側ステント本体部71の外周を覆うように配置され、縮径した状態から拡径した状態に変形可能な外側ステント11と、を含んで構成した。そのため、密な網目を有して形成された外側ステント11の内側に、疎な網目を有して形成された内側ステント本体部71が配置されることで、外側ステント11の内側からの内側ステント本体部71の押圧力により、外側ステント11の強度を補強して、生分解性ステント10全体の強度を確保できる。これにより、外側ステント11の内側からの内側ステント本体部71の押圧力により生分解性ステント10の全体の強度を確保した状態で消化管を押圧できるため、狭窄を防止しつつ、生分解性ステント10の移動を防止できる。よって、自己拡張性、復元性、消化管への密着性、蠕動運動に対する追従性を発揮できる生分解性ステント10を実現できる。
【0142】
<第2実施形態の第1変形形態>
第2実施形態の第1変形形態の外側ステント11Aについて説明する。
図11は、第2実施形態の第1変形形態に係る外側ステント11Aを示す図である。
図11に示すように、第2実施形態の第1変形形態の外側ステント11Aは、第1引っ掛かり部141(
図11における左側)と、第2引っ掛かり部142(
図11における右側)と、を有して構成される。外側ステント11Aは、複数の第1引っ掛かり部141及び複数の第2引っ掛かり部142が、周方向において交互に螺旋状に配置される。
【0143】
図11に示す第1引っ掛かり部141の構成は、第2実施形態で説明した第1引っ掛かり部141と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0144】
第2引っ掛かり部142の構成について説明する。
図11に示すように、第2引っ掛かり部142においても、第2実施形態の第1引っ掛かり部141と同様に、網目状筒状部12の第1繊維121及び第2繊維122は、第1交差点123においてX状に交差する。
【0145】
第2引っ掛かり部142において、第3繊維131は、2つの第2交差点133における一方の第2交差点133(
図11における左側)において、第4繊維132の手前側に配置されており、他方の第2交差点133(
図11における右側)において、第4繊維132の奥側に配置されている。これにより、第3繊維131及び第4繊維132は、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、互いが引っ掛かることが可能な状態で配置されている。
【0146】
また、波状編み部13の第3繊維131と第4繊維132とに囲まれた交差領域134には、第1繊維121及び第2繊維122の第1交差点123が配置されている。
【0147】
第1繊維121は、
図11に示すように、交差領域134において、右上側から左下側に向けて傾斜して延びて配置され、右上側から左下側に向けて、第4繊維132の奥側を通り、第1交差点123において第2繊維122と交差し、第3繊維131の奥側を通っている。
第2繊維122は、
図11に示すように、交差領域134において、左上側から右下側に向けて傾斜して延びて配置され、左上側から右下側に向けて、第4繊維132の奥側を通り、第1交差点123において第1繊維121と交差し、第3繊維131の奥側を通っている。
つまり、第2引っ掛かり部142においては、第1繊維121及び第2繊維122の全体が、第3繊維131及び第4繊維132の奥側に配置されることで、第3繊維131及び第4繊維132の全体が、第1繊維121及び第2繊維122の手前側に配置されている。
【0148】
以上のように第1繊維121、第2繊維122、第3繊維131及び第4繊維132が配置されることにより、第2引っ掛かり部142においては、第3繊維131及び第4繊維132は、第3繊維131と第4繊維132との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、互いが引っ掛かることが可能な状態で配置されており、更に、第3繊維131及び第4繊維132の全体が第1繊維121及び第2繊維122の手前側に配置されており、第3繊維131及び第4繊維132は、第3繊維131及び第4繊維132の第1方向D1側又は第2方向D2側への移動に対して、第1繊維121及び第2繊維122に引っ掛からない状態で配置されている。
【0149】
以上説明した第2実施形態の第1変形形態の外側ステント11Aによれば、前述した(3a)~(3d)の効果に加え、以下の効果を奏する。
(3e)網目状筒状部12の第1交差点123が波状編み部13の交差領域134に配置された構成を複数備え、第3繊維131及び第4繊維132を、第3繊維131と第4繊維132との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、互いが引っ掛かることが可能な状態に配置し、かつ、第3繊維131及び第4繊維132の移動に対して、第1繊維121及び第2繊維122に引っ掛らない状態で配置される構成を含んで構成した。これにより、第3繊維131及び/又は第4繊維132を、第1繊維121及び第2繊維122に引っ掛らない状態で配置することで、外側ステント11Aが伸展する際に、軸方向の長さが制限されにくくなるため、デリバリーシステムへの収納性を向上できる。
【0150】
<第2実施形態の第2変形形態>
第2実施形態の第2変形形態の外側ステント11Bについて説明する。
図12は、第2実施形態の第2変形形態に係る外側ステント11Bを示す図である。
第2実施形態の第2変形形態の外側ステント11Bは、第2実施形態の外側ステント11と比べて、網目状筒状部12(第1編み構成部)に編み込む波形状の波状編み部13(第2編み構成部)において、複数の第1引っ掛かり部141が周方向に並んで配置された列を、外側ステント11Aの軸方向に詰めて配置するのではなく、一段間隔を空けて離間して配置したものである。
【0151】
。
図12に示すように、波状編み部13は、複数の第1交差点123を有する網目状筒状部12の軸方向において、複数の第1引っ掛かり部141が周方向に並んで配置された列と、第1引っ掛かり部141が形成されない列と、を有して構成される。複数の第1引っ掛かり部141が周方向に並んで配置された列において、第1引っ掛かり部141における波状編み部13の交差領域134には、第1交差点123が配置される。第1引っ掛かり部141が形成されない列には、複数の第1交差点123が周方向に並んで配置される。
【0152】
以上説明した第2実施形態の第2変形形態の外側ステント11Bによれば、前述した(3a)~(3e)の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0153】
(3f)複数の第1引っ掛かり部141が周方向に並んで配置された列を、軸方向において一段間隔を空けて離間して配置した。これにより、外側ステント11Bの軸方向に詰めて配置するのではなく、軸方向の一部に第1引っ掛かり部141が形成されない列を設けることで、外側ステント11Bが伸展する際に、第3繊維131及び第4繊維132によって、軸方向の長さが制限されにくくなるため、デリバリーシステムへの収納性を向上できる。
【0154】
<第2実施形態の第3変形形態>
第2実施形態の第3変形形態の外側ステント11Cについて説明する。
図13は、第2実施形態の第3変形形態に係る外側ステント11Cを示す図である。
【0155】
図13に示すように、第2実施形態の第3変形形態の外側ステント11Cにおいて、波形状の第4繊維132における山部の頂部には、複数のループ部135が形成される。ループ部135は、網目状筒状部12の第1交差点123が波状編み部13の交差領域134に配置された構成において、第1繊維121、第2繊維122、第3繊維131及び第4繊維132を囲むループ状に形成される。
【0156】
なお、複数のループ部135は、波形状の第4繊維132における山部の頂部に連続して複数設けてもよいし、波形状の第4繊維132における複数の山部の頂部において間欠的に設けてもよい。また、ループ部135を、第1繊維121、第2繊維122、第3繊維131及び第4繊維132の全部を囲むように構成しなくてもよく、第1繊維121、第2繊維122、第3繊維131及び第4繊維132の一部のみを囲むように構成してもよい。
【0157】
以上説明した第2実施形態の第3変形形態の外側ステント11Cによれば、前述した(3a)~(3f)の効果に加え、以下の効果を奏する。
【0158】
(3g)波形状の第3繊維131及び/又は第4繊維132における山部の頂部にループ部135を設けた。ここで、例えば、波状編み部13の山部の頂部にループ部135が無い場合には、波状編み部13における波形状の第3繊維131及び第4繊維132は、径方向への拡張力のみが働くため、外側ステント11Cの径の大きさを制御することが難しい。これに対して、本発明においては、ループ部135により径方向への収縮力が働かせることができるため、外側ステント11Cの径の大きさを制御することができる。
【0159】
<第2実施形態の第4変形形態>
図14及び
図15を参照して、第2実施形態の第4変形形態に係る外側ステント110について説明する。
図14は、本発明の第2実施形態の第4変形形態に係る外側ステント110を示す斜視図である。
図15は、
図14に示す外側ステント110の拡大図である。なお、
図15において、外側ステント110において、軸方向の一方側を第1方向D1といい、軸方向の他方側を第2方向D2という。外側ステント110において、周方向の一方側を第3方向D3(
図15の左側)といい、周方向の他方側を第4方向D4(
図15の右側)という。
【0160】
本実施形態の合成樹脂ステントは、生分解性繊維により構成される外側ステント110であり、
図14及び
図15に示すように、第1屈曲状編み部200(第1編み構成部)と、第1屈曲状編み部200に編まれて配置される第2屈曲状編み部300(第2編み構成部)と、を備える。
【0161】
第1屈曲状編み部200は、網目状に構成され、繊維220により繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の繊維が周方向に並んで筒状に形成される。本実施形態においては、
図15に示すように、第1屈曲状編み部200を構成する繊維220は、複数の第1繊維221と複数の第2繊維222とにより構成されている。
【0162】
複数の第1繊維221は、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる合成樹脂製の繊維によって形成される。複数の第1繊維221は、第1屈曲状編み部200の周方向において所定幅の範囲を往復するように繰り返し屈曲して軸方向に延びる。
【0163】
複数の第2繊維222は、複数の第1繊維221に対して交差する部分を有して配置され繰り返して往復するように屈曲して軸方向に延びる合成樹脂製の繊維によって形成される。複数の第2繊維222は、第1屈曲状編み部200の周方向において所定幅の範囲を往復するように繰り返し屈曲して軸方向に延びる。
【0164】
本実施形態においては、複数の第1繊維221及び複数の第2繊維222は、1本の繊維で構成され、第1屈曲状編み部200の軸方向の上端部及び下端部で折り返されて形成されている。複数の第1繊維221及び複数の第2繊維222は、1本の繊維の一部である。言い換えると、第1屈曲状編み部200の周方向に、第1繊維221と第2繊維222とが交互に配置される。なお、第1屈曲状編み部200を複数本の繊維により構成してもよい。
【0165】
より具体的には、第1繊維221及び第2繊維222は、
図15に示すように、いずれも、第3方向D3側に凸となる山部及び第4方向D4側に凸となる山部を有する複数の屈曲部を備えて形成されている。第1繊維221及び第2繊維222は、側方から視た場合に、互いの屈曲部が重なり合うように配置され、第1交差領域223において交差している。第1繊維221及び第2繊維222は、第1交差領域223において、第1繊維221及び第2繊維222により囲まれる領域が略菱形に開口して形成されている。
【0166】
第1交差領域223においては、第1繊維221及び第2繊維222が、側方から視た場合に重なり合うように配置されていればよく、互いが引っ掛かっていてもよいし、互いが引っ掛かっていなくてもよい。本実施形態においては、第1繊維221及び第2繊維222は、外側ステント110の軸方向の上端部及び下端部では、互いの屈曲部が引っ掛かっており、外側ステント110の軸方向の上端部及び下端部を除いた部分では、互いの屈曲部が引っ掛かっていない。第1交差領域223は、第1屈曲状編み部200の軸方向及び周方向に並んで配置される。
【0167】
なお、第1交差領域223は、第1繊維221及び第2繊維222により囲まれる領域が開口して形成されている。しかし、第1交差領域223の開口の大きさは、これに限定されない。また、第1交差領域223は、第1繊維221及び第2繊維222が重なり合う部分が小さくなる方向に引っ張り合って、第1繊維221及び第2繊維222が互いに引っ掛かることで、第1繊維221及び第2繊維222により囲まれる領域が開口していなくてもよい。
【0168】
第1繊維221及び第2繊維222の材質は、特に制限はないが、剛性に富む材料が好ましい。例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノンからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマー等が挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、剛性に富む材料であればよい。特に、第1繊維221及び第2繊維222を構成する繊維の材質として、例えば、ポリ乳酸(PLA)や、ポリL-乳酸(PLLA)が使用されることが好ましい。本実施形態においては、第1繊維221及び第2繊維222は、例えば、ポリ乳酸(PLA)により形成されている。
【0169】
繊維220として生分解性の繊維を用いる場合、その直径は、0.1~0.4mmであることが好ましい。生分解性の繊維220の直径が0.1mm未満であると、外側ステント110の強度が低下する傾向にある。生分解性の繊維20の直径が0.4mmを超えると、縮径した状態における径が大きくなることで、デリバリーシステム等の細管状の部材に外側ステント110を収納し難くなる傾向にある。生分解性の繊維20の直径の上限は、内径が細いデリバリーシステムに収納する観点から、0.3mmであることが更に好ましい。生分解性の繊維220の直径の下限は、高い強度を維持する観点から、0.2mmであることがより好ましい。本実施形態では、繊維220として、直径が0.2mm及び0.3mmの生分解性の繊維を用いた。
【0170】
第2屈曲状編み部300は、
図14及び
図15に示すように、繊維230により繰り返し屈曲して周方向に延びる環状に構成された複数の繊維が軸方向に並んで第1屈曲状編み部200に編まれて配置される。本実施形態においては、
図15に示すように、第2屈曲状編み部300を構成する繊維230は、複数の第3繊維231と複数の第4繊維232とにより構成されている。
【0171】
複数の第3繊維231は、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して周方向に延びる合成樹脂製の繊維によって形成される。複数の第3繊維231は、第2屈曲状編み部300の軸方向において所定幅の範囲を往復するように繰り返し屈曲して周方向に延びる。
【0172】
複数の第4繊維232は、複数の第3繊維231に対して交差する部分を有して配置され繰り返し屈曲して周方向に延びる合成樹脂製の繊維によって形成される。複数の第4繊維232は、第2屈曲状編み部300の軸方向において所定幅の範囲を往復するように繰り返し屈曲して周方向に延びる。
【0173】
より具体的には、第3繊維231及び第4繊維232は、いずれも、第1方向D1側に凸となる山部及び第2方向D2側に凸となる山部を有する複数の屈曲部を備えて形成されている。第3繊維231及び第4繊維232は、側方から視た場合に、互いの屈曲部が重なり合うように配置され、第2交差領域233において交差している。第2交差領域233においては、第3繊維231及び第4繊維232が、側方から視た場合に重なり合うように配置されていればよく、互いが引っ掛かっていてもよいし、互いが引っ掛かっていなくてもよい。本実施形態においては、第3繊維231及び第4繊維232は、第2交差領域233において、互いの屈曲部が引っ掛かっており、第3繊維231及び第4繊維232により囲まれる領域は開口していない。第2交差領域233は、第2屈曲状編み部300の軸方向及び周方向に並んで配置される。
【0174】
なお、第3繊維231及び第4繊維232の互いの屈曲部が引っ掛かっており、第2交差領域233において、第3繊維231及び第4繊維232により囲まれる領域は開口していないが、これに限定されない。第2交差領域233は、第3繊維231及び第4繊維232により囲まれる領域が開口していてもよく、第2交差領域233の開口の大きさは限定されない。
【0175】
複数の第3繊維231及び複数の第4繊維232のうち、外側ステント110の上端部又は下端部に配置される第3繊維231又は第4繊維232は、第1屈曲状編み部200の第1繊維221又は第2繊維222に沿って巻き付けられるように絡められて配置されている。
【0176】
第3繊維231及び第4繊維232を構成する合成樹脂製の繊維の材質は、特に制限はないが、復元性に富む材料が好ましい。例えば生分解性樹脂であれば、L-乳酸、D-乳酸、DL乳酸、グリコール酸、ε-カプロラクトン、パラジオキサノンからなるホモポリマー、コポリマー、ブレンドポリマー等が挙げられる。なお、非生分解性樹脂であっても、復元性に富む材料であればよい。第3繊維231及び第4繊維232の材質として、例えば、ポリジオキサノン(PDO)が使用されることが好ましい。
【0177】
繊維230として生分解性の繊維を用いる場合、その直径は、0.1~0.4mmであることが好ましい。本実施形態では、繊維230として、直径が0.15~0.22mmの生分解性の繊維を用いた。
【0178】
第1屈曲状編み部200の第1交差領域223と第2屈曲状編み部300の第2交差領域233とは、外側ステント110を側方から視た場合に、少なくとも一部が重なって配置される。第2屈曲状編み部300の第2交差領域233と第1屈曲状編み部200の第2交差領域233とにおける少なくとも一部が重なって配置された部分は、引っ掛かり部241を構成する。本実施形態の外側ステント110は、引っ掛かり部241を複数備えており、複数の引っ掛かり部241が周方向に並んで配置された列が、軸方向の全域に形成されている。
【0179】
引っ掛かり部241の構成について説明する。なお、
図15は、
図14における筒状の外側ステント110の径方向を、
図15の紙面に対して垂直な方向(紙面を貫く方向)に沿って配置した状態の図である。そのため、外側ステント110の径方向の内側は、
図15における紙面の垂直方向における奥側であり、外側ステント110の径方向の外側は、
図15の紙面の垂直方向における手前側である。また、外側ステント110の軸方向の上端部及び下端部には、繊維が解れないように編まれている部分もある。ここで、本実施形態における引っ掛かり部241の説明においては、外側ステント110の軸方向の上端部及び下端部を除いた部分について説明する。
【0180】
図15に示すように、引っ掛かり部241において、第1繊維221と第2繊維222とにより囲まれた第1交差領域223には、第3繊維231と第4繊維232との第2交差領域233が配置されている。
【0181】
引っ掛かり部241に配置される第1交差領域223おいて、第1屈曲状編み部200の第1繊維221及び第2繊維222は、第3方向D3側に凸となる屈曲部と第4方向D4側に凸となる屈曲部とが互いに重なり合って開口を有して配置される。
【0182】
引っ掛かり部241に配置される第2交差領域233において、第2屈曲状編み部300の第3繊維231及び第4繊維232は、第1方向D1側に凸となる屈曲部と第2方向D2側に凸となる屈曲部とが互いに引っ掛かった状態で配置されている。
【0183】
引っ掛かり部241において、
図15に示すように、第1屈曲状編み部200の第1繊維221及び第2繊維222における第3方向D3側に凸となる屈曲部は、凸の頂点側(第3方向D3側)において、第3繊維231及び第4繊維232の奥側を通っており、凸の開放側(第4方向D4側)において、第3繊維231及び第4繊維232の手前側を通っている。また。第1繊維221及び第2繊維222における第4方向D4側に凸となる屈曲部は、凸の頂点側(第4方向D4側)において、第3繊維231及び第4繊維232の手前側を通っており、凸の開放側(第3方向D3側)において、第3繊維231及び第4繊維232の手前側を通っている。第1繊維221及び第2繊維222は、第3方向D3側に凸となる屈曲部が、第4方向D4側に凸となる屈曲部の手前側を通っている。
【0184】
以上のように第1繊維221、第2繊維222、第3繊維231及び第4繊維232が配置されることにより、引っ掛かり部241においては、第1繊維221は、第1繊維221と第2繊維222との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第3繊維231及び第4繊維232に引っ掛かることが可能な状態で配置されており、第2繊維222は、第1繊維221と第2繊維222との互いの凸部分が重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第3繊維231及び第4繊維232に引っ掛かることが可能な状態で配置されている。
【0185】
以上の外側ステント110を製造する場合には、第2屈曲状編み部300を形成して、その後、第1屈曲状編み部200を形成することで製造してもよいし、これとは逆に、第1屈曲状編み部200を先に形成して、その後、第2屈曲状編み部300を形成することで製造してもよい。
【0186】
以上のように構成される外側ステント110は、第1屈曲状編み部200において、軸方向に対して傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる第1繊維221及び第2繊維222により筒状に形成されているため、ステントの形状が筒状に保たれている。
また、第1屈曲状編み部200には、第2屈曲状編み部300が編まれており、第2屈曲状編み部300(第3繊維231及び第4繊維232)は、第1屈曲状編み部200(第1繊維221及び第2繊維222)よりも拡張力が高い合成樹脂製の繊維によって形成され、折れ曲がった部分が直線に戻ろうとする性質を有する。そのため、第2屈曲状編み部300が第1屈曲状編み部200の周方向に一周するように繰り返し屈曲して編み込まれることで、第2屈曲状編み部300により、外側ステント110の径が広がる方向に力を働かせることができ、拡張力を高めることができる。
よって、外側ステント110の径方向への拡張力が強化され、自己拡張性を発揮させることができる。また、消化管壁への密着性が高まり、消化管運動への追従性を発揮させることができる。
【0187】
以上説明した第2実施形態の第4変形形態の外側ステント110によれば、以下のような効果を奏する。
【0188】
(4a)外側ステント110を、網目状に構成された1又は複数の繊維からなる筒状の第1屈曲状編み部200と、第1屈曲状編み部200に編まれて配置され環状に構成された1又は複数の繊維からなる第2屈曲状編み部300と、を備えて構成し、第1屈曲状編み部200を、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の第1繊維221と、第1繊維221に対して交差する部分を有して配置され軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の第2繊維222と、複数の第1繊維221と複数の第2繊維222とが交差して構成された複数の第1交差領域223と、を有するように構成し、第2屈曲状編み部300を、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して周方向に延びる複数の第3繊維231と、第3繊維231に対して交差する部分を有して配置され軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる複数の第4繊維232と、複数の第3繊維231と複数の第4繊維232とが交差して構成された複数の第2交差領域233と、を有するように構成し、第1交差領域223と第2交差領域233とを、少なくとも一部が重なって配置されるように構成した。
【0189】
これにより、外側ステント110は、第1屈曲状編み部200が、軸方向に対して所定角度傾斜して繰り返し屈曲して軸方向に延びる第1繊維221及び第2繊維222により筒状に形成されているため、ステントの形状が筒状に保たれる。また、第1屈曲状編み部200には、第2屈曲状編み部300が編まれており、第1屈曲状編み部200の第1交差領域223と第2屈曲状編み部300の第2交差領域233とを、少なくとも一部が重なって配置されるように構成することで、第2屈曲状編み部300により、径が広がる方向に力が働き、径方向への拡張力を高めることができる。よって、外側ステント110の径方向への拡張力が強化され、自己拡張性を発揮させることができる。また、消化管壁への密着性が高まり、消化管運動への追従性を発揮させることができる。従って、デリバリーシステム等の細管状の部材への収納性を確保しつつ、生体管路内の患部にステントを留置した後の位置ずれが起こりにくいステントとすることができる。
【0190】
(4b)第1屈曲状編み部200の第1交差領域223と第2屈曲状編み部300の第2交差領域233とが重なって配置された構成において、第1繊維221を、第1繊維221と第2繊維222との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第3繊維231及び第4繊維232のうち一以上の繊維に引っ掛かることが可能な状態で配置し、第2繊維222を、第1繊維221と第2繊維222との重なり合う部分が小さくなる方向への移動に対して、第3繊維231及び第4繊維232のうち一以上の繊維が引っ掛かることが可能な状態で配置した。これにより、第1屈曲状編み部200の第1繊維221及び第2繊維222には、第3繊維231及び第4繊維232いずれかの繊維に引っ掛かることで、第1交差領域223と第2交差領域233がずれることを防止できる。
【0191】
以上の第2実施形態の第1変形形態~第3変形形態の生分解性ステントの製作例及び実施例について簡単に説明する。
本製作例においては、第2実施形態の第1変形形態の外側ステント11A(
図11参照)及び第2実施形態の第2変形形態の外側ステント11B(
図12参照)について、PLAファイバーによる組み編みは、編み本数6本(ファイバー径0.2mmが3本、ファイバー径0.3mmが3本)とし、PDOファイバーによる波形状はファイバー径0.15~0.22mmで作製する。
また、第2実施形態の第3変形形態の外側ステント11C(
図13参照)について、PLAファイバーによる組み編みは、編み本数6本(ファイバー径0.2mm)とし、PDOファイバーによる波形状はファイバー径0.30~0.349mm、ループ形状はファイバー径0.15~0.22mmで作製する。
以上の外側ステント11A,11B,11Cは、波形状に編まれているPDOファイバーに、PLAファイバーを巻き付けるように編むことで、ステントの形状が崩れにくくなる。
【0192】
上記の条件で外側ステント11A,11B,11Cを作製することにより、小腸用のデリバリーシステム(φ2.8mm)に収納可能なステントを実現することができる。また、他の消化管に使用する場合には、デリバリーシステムの径が大きくなるため、ファイバー径を太くすることも可能であり、それにより更に強度の高いステントの作製が期待される。また、ファイバー径やステントの径及び長さは任意のものとする。
【0193】
このように製作した外側ステント11A,11Cを用いて以下の実験を行った。
自社で作製した蠕動運動を再現した治具を使用して、ステントの移動試験を行った。今回使用した治具は、腸管を模したチューブの中にステントを入れ、蠕動により腸管がφ10mmに収縮すると想定して10mm穴径治具でチューブを10回しごくことによって蠕動運動を模擬した。
【0194】
蠕動運動における腸管径が、拡張時φ17mm、収縮時φ10mmとした腸管モデルにおいて、第2実施形態の外側ステント11A(ステント長55mm)は35mm移動した。
蠕動運動における腸管径が、拡張時φ12mm、収縮時φ10mmとした腸管モデルにおいて、第2実施形態の第3変形形態の外側ステント11C(ステント長36mm)は10mm移動した。同じ腸管モデルにおいて、金属ステント(ステント長110mm)は40mm移動したことから、第2実施形態の第1変形形態及び第3変形形態の外側ステント11A,11Cが腸管への追従性を有することが示唆された。
【0195】
以上、本発明の合成樹脂ステントの好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0196】
例えば、前記実施形態では、合成樹脂ステントとして、生分解性の繊維により構成した生分解性ステントを用いたがこれに限らない。即ち、生分解性を有さない合成樹脂繊維を用いてステントを構成してもよい。
【0197】
また、前記第2実施形態では、複数の第1引っ掛かり部141を、外側ステント11の全体に設けた。また、前記第2実施形態の第3変形形態においては、第1引っ掛かり部141及び第2引っ掛かり部142を交互に設けた。また、前記第2実施形態の第2変形形態においては、複数の第1引っ掛かり部141を周方向に並べて配置した。しかし、前記実施形態に限定されず、第1引っ掛かり部141及び/又は第2引っ掛かり部142を、生分解性ステントの全体に設けなくてもよく、生分解性ステントの一部に設けるように構成してもよい。
【0198】
また、前記第2実施形態では、ループ部135を、波形状の第4繊維132における山部の頂部に設けたが、これに限定されず、波形状の第3繊維131における山部の頂部に設けてもよい。
【0199】
以上、本発明の合成樹脂ステント及びステントデリバリーシステムの好ましい一実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0200】
例えば、前記実施形態では、合成樹脂ステントとして、生分解性の繊維により構成した生分解性ステントを用いたがこれに限らない。即ち、生分解性を有さない合成樹脂繊維を用いてステントを構成してもよい。
【0201】
また、前記第1実施形態では、生分解性ステント1を、内側ステント2と外側ステント5とを組み合わせることで構成し、前記第2実施形態では、生分解性ステント10を、内側ステント6と外側ステント11とを組み合わせることで構成したが、これに限定されない。生分解ステントを、第1実施形態の内側ステント2と第2実施形態の外側ステント11とを組み合わせることで構成してもよいし、第2実施形態の内側ステント6と第1実施形態の外側ステント5とを組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0202】
1、10 生分解性ステント(合成樹脂ステント)
2 内側ステント(第1ステント)
3 内側ステント本体部(第1ステント本体部)
4 端部フレア部(端部拡径部)
5 外側ステント(第2ステント)
6 内側ステント(第1ステント)
11、11A、11B、11C、110 外側ステント(第2ステント)
32 筒状接続部(接続部分)
311 多角形環状部
200 第1屈曲状編み部(第1編み構成部)
300 第2屈曲状編み部(第2編み構成部)
221 第1繊維
222 第2繊維
223 第1交差領域
231 第3繊維
232 第4繊維
233 第2交差領域
241 引っ掛かり部