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  • 特許-水処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/28 20230101AFI20240509BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C02F1/28 F
C02F1/28 D
C02F1/28 E
B01J20/34 B
B01J20/34 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021512004
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014036
(87)【国際公開番号】W WO2020203779
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2019067521
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】館山 佐夢
(72)【発明者】
【氏名】河野 大樹
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-142729(JP,A)
【文献】特開2010-142790(JP,A)
【文献】特開平10-057949(JP,A)
【文献】特開2015-139731(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/28
B01J20/00-20/34
B01D15/00-15/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機化合物を含有する被処理水を吸着素子に通流させて有機化合物を吸着させる吸着処理と、前記吸着素子に水蒸気を通流させて吸着された有機化合物を脱着して脱着ガスとして排出する脱着処理とを交互に行う処理槽、及び、前記脱着ガスを凝縮して凝縮水として排出する凝縮手段、を備えた水処理装置と、前記凝縮水を濃縮水として系外へ排出する系外ラインと、を備えた水処理システムにおいて、
前記凝縮水を循環水として前記被処理水へ戻す循環ラインと、
前記凝縮水を前記濃縮水として排出するか前記循環水として前記被処理水へ戻すかを振り分ける振分調整手段と、を備え、
さらに、前記凝縮水を前記凝縮手段から排出する排出ラインに、または前記被処理水を前記処理槽に導入する導入ラインに、有機化合物濃度を測定する測定手段を備え、
前記振分調整手段は、前記測定手段にて測定した有機化合物濃度が所定値になると、前記循環水と前記濃縮水との割合を変更する水処理システム。
【請求項2】
前記振分調整手段は、前記吸着処理、前記脱着処理、前記脱着ガスを凝縮する凝縮処理、前記循環水の循環及び前記濃縮水の排出の処理、を1サイクルとして、所定のサイクル数までは、全ての凝縮水を循環水として循環させ、所定のサイクル数を超えると、凝縮水の一部を濃縮水として排出し、残りの凝縮水を循環水として被処理水へ循環させる、あるいは、所定のサイクル数を超えると、全ての凝縮水を濃縮水として系外に排出する、あるいは、段階的に循環水を減らして濃縮水を増やすように調整する請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記処理槽を2つ以上備え、少なくとも1つの処理槽が前記吸着処理を実施する間に、別の少なくとも1つの処理槽が前記脱着処理を実施する請求項1または2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記吸着素子は、活性炭・活性炭素繊維またはゼオライトの内、少なくとも一つを含む請求項1からのいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記吸着素子は、BET比表面積が700~2500m2/g、細孔容積が0.4~0.9cm3/g、平均細孔径が15~18Åである活性炭素繊維を含む請求項1からのいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項6】
前記吸着処理により前記吸着素子に付着した水を除去して除去水として排出する脱水手段を備えた請求項1から5のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記除去水が前記水処理装置に再度供給される再供給ラインを備えた請求項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機化合物を含有する水(以下、被処理水という)から有機化合物を除去することで当該被処理水を清浄化する一方で、被処理水から除去された有機化合物を含む濃縮水を高濃縮化するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場や研究施設等から排出される被処理水には有害な性質を有する有機化合物が含有されることがあり、被処理水を下水中等にそのまま排出することができない。そのため、被処理水に含まれる有機化合物を除去し清浄化された処理水を排出する水処理装置が使用されている。
【0003】
そのような水処理装置として、活性炭等の吸着素子を用いた吸着装置が広く用いられている。たとえば、特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の水処理装置は、被処理水を清浄化するための吸着素子を備えており、吸着素子に被処理水を通液させることで、被処理水中の有機化合物が吸着素子で吸着除去され、清浄化された水(以下、処理水という)として排出される。その後有機化合物を吸着した吸着素子に水蒸気を通気させることで、吸着素子に吸着していた有機化合物が脱着され、有機化合物を含むガス(以下、脱着ガスという)として排出される。脱着ガスはコンデンサに導入されて、冷却・凝縮され、有機化合物の濃縮された水(以下、濃縮水という)として排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国公開特許公報「特開2014-217833」
【文献】日本国公開特許公報「特開2014-217832」
【文献】日本国公開特許公報「特開2015-42396」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記濃縮水は廃棄する場合、産廃業者へ廃棄処理してもらうかあるいは燃焼等の後処理をするか、二次処理の必要がある。濃縮水の量は二次処理のコストに直結しているため、濃縮水の減量すなわち高濃縮化が求められている。また、高付加価値の有機溶剤については、再利用可能な濃度まで高濃縮して回収することが求められている。
【0006】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、有機化合物を含有する濃縮水の高濃縮化に優れた水処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、以下に示す手段により、上記課題を解決できることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
1.有機化合物を含有する被処理水を吸着素子に通流させて有機化合物を吸着させる吸着処理と、前記吸着素子に水蒸気を通流させて吸着された有機化合物を脱着して脱着ガスとして排出する脱着処理とを交互に行う処理槽、及び、前記脱着ガスを凝縮して凝縮水として排出する凝縮手段、を備えた水処理装置と、前記凝縮水を濃縮水として系外へ排出する系外ラインと、を備えた水処理システムにおいて、前記凝縮水を循環水として前記被処理水へ戻す循環ラインと、前記凝縮水を前記濃縮水として排出するか前記循環水として前記被処理水へ戻すかを振り分ける振分調整手段と、を備えている。
2.前記振分調整手段は、前記凝縮水の一部を前記濃縮水として排出し、残りの前記凝縮水を前記循環水として前記被処理水へ戻すよう調整する1に記載の水処理システム。
3.前記凝縮水を前記凝縮手段から排出する排出ラインに、または前記処理水を前記処理槽に導入する導入ラインに、有機化合物濃度を測定する測定手段を備え、前記振分調整手段は、前記測定手段にて測定した有機化合物濃度が所定値になると、前記循環水と前記濃縮水との割合を変更する1または2に記載の水処理システム。
4.前記処理槽を2つ以上備え、少なくとも1つの処理槽が前記吸着処理を実施する間に、別の少なくとも1つの処理槽が前記脱着処理を実施する1から3のいずれか1つに記載の水処理システム。
5.前記吸着素子は、活性炭・活性炭素繊維またはゼオライトの内、少なくとも一つを含む1から4のいずれか1つに記載の水処理システム。
6.前記吸着素子は、BET比表面積が700~2500m2/g、細孔容積が0.4~0. 9cm3/g、平均細孔径が15~18Åである活性炭素繊維を含む1から4のいずれか1つに記載の水処理システム。
7.前記吸着処理により前記吸着素子に付着した水を除去して除去水として排出する脱水手段を備えた1から6のいずれか1つに記載の水処理システム。
8.前記除去水が前記水処理装置に再度供給される再供給ラインを備えた7に記載の水処理システム。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、有機化合物を含有する濃縮水の高濃縮化が可能になる。よって濃縮水の二次処理コストの削減が可能になる。また、高付加価値の有機溶剤については、再利用可能な濃度まで高濃縮して回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係る水処理システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図1を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態の水処理システム1の構成図である。水処理システム1は、水処理装置100と、配管ラインL1~L7とを備え、導入される被処理水から有機化合物を除去して清浄化された処理水を排出し、有機溶剤を含有する濃縮水を高濃度にして排出するシステムである。
【0012】
水処理装置100は、被処理水から有機化合物を吸着・除去し、清浄化された処理水を排出する装置であり、吸着素子120が収容された処理槽130を有している。処理槽130は1つでも複数でもよい。図1では、処理槽130が2つの場合を示しており、これに従って説明すると、一方の処理槽130は吸着処理を行う吸着槽、他方の処理槽130は脱着処理を行う脱着槽として機能する。吸着槽として機能する処理槽130は、被処水が吸着素子120に供給されると、被処理水に含有される有機化合物を吸着して、処理水を排出する。これにより、被処理水から有機化合物が除去される。脱着槽として機能する処理槽130は、水蒸気が吸着材に供給されると、吸着した有機化合物を脱着し、脱着ガスを排出する。これにより、吸着材120が再生される。各処理槽130において、吸着槽と脱着槽とは経時的に交互に切り替わるように構成されている。
【0013】
排出された脱着ガス(有機化合物および水蒸気)はコンデンサ(凝縮手段)140に導入されて冷却凝縮され、凝縮水として排出される。一般に吸着材の性質として、有機化合物の吸着材への吸着量には濃度依存性があり、有機化合物濃度が高いほど、有機化合物の吸着材への吸着量が増大することが知られている。そこで本実施の形態の水処理システム1では、この性質を利用し、凝縮水を循環水として再び被処理水へ循環させ、被処理水中の有機化合物の濃度を高くすることで、吸着素子への有機化合物の吸着量を増やし、これを脱着することで、系外へ排出する凝集水である濃縮水を高濃度化させる。
以下に各構成について詳細に説明する。
【0014】
(吸着素子)
吸着素子120は、有機化合物を吸着する吸着材を含んで構成される。吸着素子120は、活性炭、活性炭素繊維またはゼオライトの内、少なくとも一つの吸着材を含むことが好ましい。吸着材として、粒状、繊維状、ハニカム状等の活性炭やゼオライトが利用できるが、その中でも活性炭素繊維が好ましい。活性炭素繊維は表面にミクロ孔を有する繊維状構造を持ち、水との接触効率が高く、特に水中の有機化合物の吸着速度が速くなり、他の吸着材に比べて極めて高い吸着効率を実現可能な材料であるからである。
【0015】
吸着素子120として利用可能な活性炭素繊維の物性は、特に限定されるものではないが、BET比表面積が700~2500m2/g、細孔容積が0.4~0. 9cm3/g、平均細孔径が15~18Åであるものが好ましい。これは、BET比表面積が700m2/g以上、細孔容積が0.4m3/g以上、平均細孔径が15Å以上であると、有機化合物の吸着量を高くすることが容易だからである。また、BET比表面積が2500m2/g以下、細孔容積が0.9m3/g以下、平均細孔径が18Å以下であると、分子量の小さな物質等の吸着能力を上げたり、強度を強くしたり、材料コストを低減させたりすることを容易にでき、好ましい。
【0016】
(水処理装置)
水処理装置100は、吸着素子120が収容された処理槽130を2つと、コンデンサ140とを備えている。
【0017】
被処理水は配管ラインL1から、吸着槽として機能する処理槽130へ導入され、当該処理槽130に充填された吸着素子120を通液する。
【0018】
吸着素子120に被処理水を通液させると、被処理水中に含有された有機化合物が吸着素子120に吸着し、被処理水は清浄化された処理水として配管ラインL2から排出される。
【0019】
水処理装置100は、脱着槽として機能する処理槽130の吸着素子120に配管ライ
ンL3から導入した水蒸気を導入させて、吸着素子120に吸着した有機化合物を脱着する。脱着ガスは、配管ラインL4を通り、コンデンサ140に導入され、冷却凝縮され、
配管ラインL5から凝縮水として排出される。
【0020】
コンデンサ140から排出された凝縮水は、バルブ(振分調整手段)200を介して、配管ラインL6か配管ラインL7かのどちらへ導入される。
配管ラインL6は、凝縮水を循環水として被処理水へ戻す循環ラインであり、配管ラインL7は、凝縮水を濃縮水として系外へ排出する系外ラインである。バルブ200は、凝縮水を循環させる循環水にするか、凝縮水を系外に排出する濃縮水にするか、を振り分ける。
【0021】
水処理システム1では、バルブ200の制御により、凝縮水の一部を濃縮水として排出し、残りの凝縮水を循環水として被処理水へ循環させるように構成されていてもよい。あるいは、吸着処理、脱着処理、凝縮処理、循環水の循環及び濃縮水の排出の処理、を1サイクルとして、所定のサイクル数までは、全ての凝縮水を循環水として循環させ、所定のサイクル数を超えると、凝縮水の一部を濃縮水として排出し、残りの凝縮水を循環水として被処理水へ循環させる、あるいは、所定のサイクル数を超えると、全ての凝縮水を濃縮水として系外に排出するように構成されていてもよい。あるいは、段階的に循環水を減らして濃縮水を増やすように調整してもよい。
【0022】
水処理システム1は、凝縮水中あるいは処理水中の有機化合物濃度を測定する図示しない測定器(測定手段)を備えていてもよい。そして、測定器により測定された有機化合物濃度が一定値になった際に、バルブ200の制御により、凝縮水を循環水として循環させるか、濃縮水として排出するかを振り分けてもよい。
なお、バルブ200の制御は、手動でも自動でもよい。
【0023】
このように、水処理システム1により、有機化合物を含有する濃縮水の高濃縮化が可能になる。よって濃縮水の二次処理コストの削減が可能になる。また、高付加価値の有機溶剤については、再利用可能な濃度まで高濃縮して回収することができる。また、水処理システム1により、高濃度の被処理水を処理する場合でも、有機化合物を除去するのに必要な吸着素子の量を増やすことなく、清浄化できる。
【0024】
水処理システム1は、特に限定されるものではないが、被処理水貯留用タンク及びポンプを備え、被処理水貯蔵タンクからポ被処理水がポンプにより配管ラインL1を通って処理槽130に供給される構成であってもよい。
【0025】
水処理装置100は、処理槽130が吸着槽から脱着槽に切替わる際に、吸着素子120に付着する水分を除去(脱水)して除去水として排出してから、水蒸気による脱着を開始する構成であると好ましい。吸着処理により吸着素子120に付着した付着水を脱着前に除去してから脱着を行う方が、脱着効率を高めることができるからである。付着水の除去手段は、自重抜き、空気・水蒸気・窒素・不活性ガスなどのガスでの高速パージ、真空ポンプなどを用いた吸引などの手段が使用できるが、水蒸気による高速パージが好ましい。脱水効率が高く、装置の流路構成がシンプルとなるからである。
【0026】
また、除去水は水処理装置100に再度供給されるように構成された方が好ましい。除去水を別途処理する必要がなくなるからである。この場合、除去水は、コンデンサ140を通らずに、水処理装置100戻される構成となる(図示無)。
【0027】
本実施形態の水処理システム1の処理対象となる被処理水に含まれる有機化合物は、特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、アクロレインなどのアルデヒド類、メチルエチルケトン、ジアセチル、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、1,4-ジオキサン、2-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル類、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのグリコール類、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、フェノール類、トルエン、キシレン、シクロヘキサンなどの芳香族有機化合物、ジエチルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのエーテル類、アクリロニトリルなどの二トリル類、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、トリクロロエチレン、エピクロロヒドリンなどの塩素有機化合物、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミドの有機化合物などが一例として挙げられる。被処理水は、これらを1種または複数種含んでいてもよい。
【実施例
【0028】
上記実施の形態にて説明した本発明にかかる水処理システムの詳細を、さらに以下の実施例を用いて説明する。しかし、本発明は以下実施例に限定されるものでない。まず、後述の実施例の特性の評価方法について説明する。
【0029】
(全酸性基量)
表面酸性基量はBoehm滴定法により測定した。活性炭試料約1gに対し0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を60ml加え、25℃で約2時間浸透させた。活性炭試料と溶液をガラス濾過器で通過分離した濾液を25ml採取した。濾液に指示薬としてフェノールフタレインを適量加え、撹拌しながら0.01mol/L の塩酸を滴下して、中和した時点での残留塩基量を滴定し、以下の式で全酸性基量を算出した。
全酸性基量(meq/g)=(D×50×K)/(W×25)
D:吸着塩基性量(ml)
K:塩酸濃度(mol/L)
W:活性炭素試料
【0030】
(BET比表面積)
BET比表面積は、液体窒素の沸点(-195.8℃)雰囲気下、相対圧力0.0~0.15の範囲で上昇させたときの試料への窒素吸着量を数点測定し、BETプロットにより料単位質量あたりの表面積(m/g)を求めた。
【0031】
(細孔容積)
細孔容積は、相対圧0.95における窒素ガスの気体吸着法により測定した。
【0032】
(平均細孔径)
平均細孔径は、以下の式で求めた。
dp=40000Vp/S(ただし、dp:平均細孔径(Å))
Vp:細孔容積(cc/g)
S:BET比表面積(m/g)
【0033】
(有機物質濃度評価)
被処理水、処理水及び濃縮水中の有機化合物濃度はガスクロマトグラフ法により測定した。
【0034】
(実施例1)
実施例1として、図1に示す水処理システム1を用いた。
吸着素子120として、全酸性基量が0.06meq/g、平均細孔径17Å、BET比表面積2000m/g、全細孔容積0.85cm/g、質量140g/m、厚さ2mmの活性炭素繊維を各処理槽130に充填し、内径φ23mm、全長150mmの筒状処理槽を作成した。その時の充填した活性
炭素繊維の重量は6.4gであった。
【0035】
被処理水として、5mg/Lの1,4-ジオキサンを、水処理装置100に導入し、36cc/minで処理槽130に20min間通液した後、120℃の水蒸気で1,4-ジオキサンの脱着を行い、脱着した脱着ガスを10℃のコンデンサ140で冷却凝縮した。凝縮水の内、1割を濃縮水として配管ラインL7から排出し、9割を循環水として被処理水に混入させるようL6にて循環させた。吸着処理、脱着処理、凝縮処理、循環水の循環及び濃縮水の排出の処理、を1サイクルとしたとき、13サイクル運転時の被処理水濃度は19mg/L、処理槽130通液後の処理水濃度は0.01mg/L以下、濃縮水濃
度は57mg/Lであり、13サイクルの間に排出された濃縮水の総量は0.195Lであった。
【0036】
(比較例1)
比較例1として、図1に示す水処理システム1において配管ラインL6の無い、従来の水処理システムを用いた。この比較例1の従来システムでは、凝縮水は循環せず濃縮水として系外に排出される。比較例1の従来システムを用いて、被処理水として5mg/Lの1,4-ジオキサンを36cc/minで処理槽130に20min間通液した後、120℃の水蒸気で1.4-ジオキサンの脱着を行い、脱着した脱着ガスを10℃のコンデンサ140で冷却凝縮した。処理槽130通液後の処理水濃度は0.01mg/L以下、濃縮水濃度は17mg/Lであり、吸着処理、脱着処理、凝縮処理、濃縮水の排出処理を1サイクルとしたとき、13サイクルの間に排出された濃縮水の総量は1.95Lであった。
【0037】
実施例1および比較例1にについて測定した被処理水濃度、処理水濃度、濃縮水濃度を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1から、水処理システム1を用いた実施例1は従来システムを用いた比較例1に比べて、1,4-ジオキサンの処理水濃度は同じだが、濃縮水濃度は高くなっていることがわかる。つまり、水処理システム1は、従来システムと同等の除去性能を維持しつつ、高濃縮化が可能であることを示している。
【0040】
なお、上記開示した実施の形態、各変形例、および実施例はすべて例示であり制限的なものではない。また、実施の形態、各変形例、および実施例を適宜組み合わせた形態も本発明の範疇に含まれる。つまり、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって有効であり、特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内のすべての変更・修正・置き換え等を含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、被処理水中の有機化合物を従来と同等の除去性能を維持しつつ、凝縮水を従来以上に高濃縮することができ、濃縮水の減量が可能となる。よって、濃縮水の廃棄等の二次処理コストの削減を実現することができることから、産業界に大いに寄与できる。また、高付加価値の有機溶剤を再利用可能な濃度まで高濃縮・回収することにより、産業界に大いに寄与できる。
【符号の説明】
【0042】
1 水処理システム
100 水処理装置
120 吸着素子
130 処理槽
140 コンデンサ
200 バルブ(切替調整手段)
L1~L7 配管ライン

図1