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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】ジブ係留装置およびジブ係留方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/26 20060101AFI20240509BHJP
   B66C 23/42 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B66C23/26 E
B66C23/42 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022004854
(22)【出願日】2022-01-17
(65)【公開番号】P2023104075
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】渡▲辺▼ 拓也
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-200155(JP,A)
【文献】米国特許第02805781(US,A)
【文献】特開平10-036081(JP,A)
【文献】実開平04-096482(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0002010(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第112811328(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/26
B66C 23/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブームの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留装置であって、
前記ジブの先端から巻上ロープで吊り下げられる吊下部材と、
前記吊下部材の下部に連結されるフック装置と、
前記ジブの先端部に設けられたブラケットと、
前記ブームに対して折り畳まれた状態の前記ジブを前記ブームに係留する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢の前記ブームに、垂下した前記ジブを引き寄せる駆動機構と、
を有し、
前記吊下部材は、
本体と、
前記本体を中心に水平方向に回転自在に前記本体に嵌合された回転部材と、
前記回転部材の側面に設けられた被係合部と、
を有し、
前記ブラケットは、前記ジブが垂下された際に、前記被係合部を下方から所定の向きで係合させることが可能な係合部を有し、
前記駆動機構は、
前記被係合部に連結される引込ロープと、
前記引込ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うウインチと、
を有し、
前記ブームから前記ジブが垂下された状態で、前記引込ロープにより引っ張られた状態とすることで前記所定の向きにされた前記被係合部が、前記巻上ロープにより前記吊下部材が巻き上げられることで前記係合部に嵌り、この状態で、前記引込ロープが巻き取られることで、前記吊下部材が前記ブームに引き寄せられることを特徴とするジブ係留装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、前記ブームに係留された前記ジブを前記ブームから解放する際に、前記鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢の前記ブームに引き寄せられている前記ジブを、前記ブームから離隔させることを特徴とする請求項1に記載のジブ係留装置。
【請求項3】
前記ジブが前記ブームに引き寄せられている状態で、前記吊下部材が巻き上げられ、前記引込ロープを引っ張ることで前記所定の向きにされた前記被係合部が前記係合部に嵌り、この状態で、前記引込ロープが繰り出されることで、前記吊下部材が前記ブームから離隔されることを特徴とする請求項2に記載のジブ係留装置。
【請求項4】
前記被係合部が、前記クレーンの左右方向における両側の前記側面の各々に設けられており、
前記係合部は、一対の前記被係合部に対してそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のジブ係留装置。
【請求項5】
前記ブラケットは、前記ジブが垂下された際に、所定方向に前記被係合部が摺動可能で、前記係合部に連続する傾斜面を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のジブ係留装置。
【請求項6】
前記傾斜面が、前記所定方向における前記係合部の両側にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項5に記載のジブ係留装置。
【請求項7】
前記ブームに設けられた係止装置と、
前記ジブに設けられ、前記ブームに対して前記ジブが折り畳まれた際に、前記係止装置によって係止される被係止装置と、
前記係止装置と前記被係止装置との係合を解除することが可能な解除部材と、
を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のジブ係留装置。
【請求項8】
ブームの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留方法であって、
前記ジブの先端から巻上ロープで吊り下げられる吊下部材と、
前記吊下部材の下部に連結されるフック装置と、
前記ジブの先端部に設けられたブラケットと、
前記ブームに対して折り畳まれた状態の前記ジブを前記ブームに係留する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢の前記ブームに、垂下した前記ジブを引き寄せる駆動機構と、
を有し、
前記吊下部材は、
本体と、
前記本体を中心に水平方向に回転自在に前記本体に嵌合された回転部材と、
前記回転部材の側面に設けられた被係合部と、
を有し、
前記ブラケットは、前記ジブが垂下された際に、前記被係合部を下方から所定の向きで係合させることが可能な係合部を有し、
前記駆動機構は、
前記被係合部に連結される引込ロープと、
前記引込ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うウインチと、
を有し、
前記ブームから前記ジブを垂下させた状態で、前記引込ロープにより引っ張られた状態とすることで前記所定の向きにした前記被係合部を、前記巻上ロープにより前記吊下部材を巻き上げることで前記係合部に嵌め、この状態で、前記引込ロープを巻き取ることで、前記吊下部材を前記ブームに引き寄せることを特徴とするジブ係留方法。
【請求項9】
前記ジブを前記ブームに引き寄せた状態で、前記吊下部材を巻き上げ、前記引込ロープを引っ張ることで前記所定の向きにした前記被係合部を前記係合部に嵌め、この状態で、前記引込ロープを繰り出すことで、前記吊下部材を前記ブームから離隔させることを特徴とする請求項8に記載のジブ係留方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タワーの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留装置およびジブ係留方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タワー(ブーム)を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ジブをタワーに係留したり、タワーからジブを解放したりするジブ係留方法およびジブ係留装置が開示されている。タワーを鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ジブの係留および解放を行うため、見た目が安定しており、強風でタワーが後方に転倒する恐れもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-122999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、フックの鉤部に連結されたロープを巻き取ることで、ジブをタワーの方に引き寄せている。このとき、ジブの先端に取り付けた規制部材で、フックがタワーの方に動くのを規制している。しかし、規制部材の下端とフックの鉤部との間には距離があるため、鉤部がロープで引っ張られると、規制部材の下端を中心にフック全体が回転する恐れがある。フックが回転すると、ジブをタワーに引き寄せる際の作業性が低下する。
【0005】
そこで、ジブが垂下された状態で、ジブの先端部に設けられたブラケットの凹部に、フックの上部に設けられた凸部を下方から嵌め、この状態で、フックに連結されたロープを巻き取ることで、ジブをブームに引き寄せることが行われている。
【0006】
しかしながら、ロープが1本掛けされたボールフックの場合、ロープの撚りでフックが水平方向に回転する。凹部に凸部が嵌るときの凸部の向きは決まっているが、フックが回転すると、凸部の向きが変化するので、凹部に凸部を嵌めるのが困難になる。
【0007】
本発明の目的は、ジブをブームに引き寄せる作業の作業性を向上させることが可能なジブ係留装置およびジブ係留方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブームの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留装置であって、前記ジブの先端からロープで吊り下げられる吊下部材と、前記ジブの先端部に設けられたブラケットと、前記ブームに対して折り畳まれた状態の前記ジブを前記ブームに係留する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢の前記ブームに、垂下した前記ジブを引き寄せる駆動機構と、を有し、前記吊下部材は、本体と、前記本体を中心に水平方向に回転自在に前記本体に嵌合された回転部材と、前記回転部材の側面に設けられた被係合部と、を有し、前記ブラケットは、前記ジブが垂下された際に、前記被係合部を下方から所定の向きで係合させることが可能な係合部を有し、前記駆動機構は、前記被係合部に連結される引込ロープと、前記引込ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うウインチと、を有し、前記ブームから前記ジブが垂下された状態で、前記吊下部材が巻き上げられ、前記引込ロープを引っ張ることで前記所定の向きにされた前記被係合部が前記係合部に嵌り、この状態で、前記引込ロープが巻き取られることで、前記吊下部材が前記ブームに引き寄せられることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、ブームの先端部にジブが起伏可能に取り付けられたクレーンにおけるジブ係留方法であって、前記ジブの先端からロープで吊り下げられる吊下部材と、前記ジブの先端部に設けられたブラケットと、前記ブームに対して折り畳まれた状態の前記ジブを前記ブームに係留する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢の前記ブームに、垂下した前記ジブを引き寄せる駆動機構と、を有し、前記吊下部材は、本体と、前記本体を中心に水平方向に回転自在に前記本体に嵌合された回転部材と、前記回転部材の側面に設けられた被係合部と、を有し、前記ブラケットは、前記ジブが垂下された際に、前記被係合部を下方から所定の向きで係合させることが可能な係合部を有し、前記駆動機構は、前記被係合部に連結される引込ロープと、前記引込ロープの巻き取りおよび繰り出しを行うウインチと、を有し、前記ブームから前記ジブを垂下させた状態で、前記吊下部材を巻き上げ、前記引込ロープを引っ張ることで前記所定の向きにした前記被係合部を前記係合部に嵌め、この状態で、前記引込ロープを巻き取ることで、前記吊下部材を前記ブームに引き寄せることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ブームに対して折り畳まれた状態のジブをブームに係留する際には、垂下したジブがブームに引き寄せられる。このとき、被係合部が係合部に嵌った状態で、引込ロープが巻き取られることで、吊下部材がブームに引き寄せられる。被係合部が設けられた回転部材は、本体を中心に水平方向に回転自在である。よって、被係合部を係合部に嵌める際に、引込ロープを引っ張り、回転部材を回転させることで、被係合部を所定の向きにすることができる。これにより、被係合部を係合部に容易に嵌めることができる。その結果、ジブをブームに引き寄せる作業の作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】タワークレーンの側面図であり、ジブが垂下した状態を示す図である。
図2図1の要部Aの拡大図である。
図3図2を上方から見た図である。
図4図2の吊下部材をB方向から見た断面図である。
図5図1の要部Cの拡大図である。
図6】係止装置および被係止装置の拡大側面図であり、係止装置と被係止装置とが係止された状態を示す図である。
図7】係止装置および被係止装置の拡大側面図であり、係止装置と被係止装置との係止が解除された状態を示す図である。
図8】係止装置および被係止装置の拡大側面図であり、係止装置と被係止装置とが離隔した状態を示す図である。
図9】係止装置および被係止装置の拡大平面図である。
図10】変形例における吊下部材の上面図である。
図11図10をD方向から見た図である。
図12】別の変形例における吊下部材の上面図である。
図13】さらに別の変形例における吊下部材の上面図である。
図14】タワークレーンの側面図であり、引込ロープと巻上ロープとが巻き取られていく状態を示す図である。
図15】タワークレーンの側面図であり、ジブがタワーに引き寄せられていく様子を示す図である。
図16】タワークレーンの側面図であり、ジブがタワーに引き寄せられた状態を示す図である。
図17】タワークレーンの側面図であり、ロープの先端が連結されたフック装置が地面近くまで降ろされた状態を示す図である。
図18】タワークレーンの側面図であり、タワーが倒伏された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
(タワークレーンの構成)
本実施形態のジブ係留装置1は、タワークレーン20の側面図である図1に示すように、タワークレーン20に設けられている。タワークレーン20は、クローラ式の下部走行体21に上部旋回体22が旋回可能に搭載された構成となっている。なお、タワークレーン20は、クローラ以外の移動手段(例えばホイール)を用いた移動式クレーンであってもよいし、移動手段を持たない固定式クレーンであってもよい。また、本発明の適用対象はタワークレーンに限定されず、例えば、ラッフィングクレーンに本発明を適用することも可能である。
【0014】
上部旋回体22は、運転室23と、タワー(ブーム)24と、ジブ25と、ガントリ26と、ストラット27と、下部スプレッダ28と、フック用ウインチ5と、ジブ起伏用ウインチ44と、ブーム起伏用ウインチ45と、カウンタウエイト29と、バックストップ装置30と、を有している。
【0015】
運転室23は、上部旋回体22の前部に設けられている。タワー24は、上部旋回体22の前部に、上部旋回体22に対して起伏可能に連結されている。タワー24の先端には、ブームガイライン39の一端が接続されている。
【0016】
ジブ25は、タワー24の先端部に、タワー24に対して起伏可能に連結されている。ジブ25の先端には、ジブポイントシーブ31が設けられている。このジブポイントシーブ31からは巻上ロープ32を介してフック装置2が吊り下げられている。なお、具体的には、ジブポイントシーブ31から巻上ロープ32を介して吊下部材3(図2参照)が吊り下げられており、この吊下部材3にフック装置2が取り付けられているが、詳細は後述する。図1では、ジブ25が垂下した状態を図示している。
【0017】
ガントリ26は、上部旋回体22の後部に取り付けられている。ストラット27は、側方からの平面視で三角形状であって、タワー24の先端部に取り付けられている。ストラット27のフロントストラット27bの先端とジブ25の先端とは、ジブガイライン34により連結されている。
【0018】
タワー24の下部背面側に取り付けたジブ起伏用下部スプレッダ35と、ジブガイライン36の一端に連結したジブ起伏用上部スプレッダ37との間には、ジブ起伏ロープ38が掛け渡されている。ジブガイライン36の他端は、ストラット27のリアストラット27aの先端に接続されている。
【0019】
下部スプレッダ28は、ガントリ26の上端に取り付けられている。下部スプレッダ28と、ブームガイライン39の他端に連結した上部スプレッダ40との間には、ブーム起伏ロープ41が掛け渡されている。
【0020】
フック用ウインチ5、および、ジブ起伏用ウインチ44は、タワー24の基部(下部ブーム)にそれぞれ配置されている。ブーム起伏用ウインチ45は、ガントリ26の下部に配置されている。なお、フック用ウインチ5、ジブ起伏用ウインチ44、および、ブーム起伏用ウインチ45は、上部旋回体22の中央部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0021】
フック用ウインチ5は、巻上ロープ32を巻き取り又は繰り出してフック装置2の巻き上げ又は巻き下げを行う。ジブ起伏用ウインチ44は、ジブ起伏ロープ38を巻き取り又は繰り出すことで、ストラット27を、タワー24の先端部との結合点を中心に起伏させる。その結果、ジブ25がタワー24との結合点を中心として起伏する。ブーム起伏用ウインチ45は、ブーム起伏ロープ41を巻き取り又は繰り出すことで、タワー24を、その支点であるブームフットピン42回りに起伏させる。
【0022】
カウンタウエイト29は、上部旋回体22の後部に搭載されている。バックストップ装置30は、タワー24の下部背面側に設けられている。バックストップ装置30は、上部旋回体22に設けられたバックストップ受け(図示せず)に受けられることで、タワー24の後側への回動を規制する。
【0023】
(ジブ係留装置の構成)
図1の要部Aの拡大図である図2、および、図2を上方から見た図3に示すように、ジブ係留装置1は、上述のフック装置2と、吊下部材3と、を有している。吊下部材3は、ジブ25の先端から巻上ロープ32で吊り下げられている。フック装置2は、吊下部材3の本体71の下部に連結されている。つまり、フック装置2は、吊下部材3を介してジブポイントシーブ31(図1参照)から吊り下げられている。本実施形態において、フック装置2は、巻上ロープ32が1本掛けされるボールフックであるが、巻上ロープ32が2本掛けされるフックであってもよい。
【0024】
(吊下部材)
図2の吊下部材3をB方向から見た断面図である図4に示すように、吊下部材3は、本体71と、回転部材72と、被係合部73と、プレート部材74と、を有している。本体71の上部には、巻上ロープ32の端部に設けられた端末金具32a(図2参照)がピンで連結される。本体71の下部には、フック装置2の上部がピンで連結される。
【0025】
回転部材72は、本体71に嵌合されている。回転部材72は、リング状の部材であり、本体71の外周に嵌め込まれている。回転部材72は、本体71から突出したフランジ部71aの上に載っている。プレート部材74は、環状の板材であり、ボルトで本体71に固定されて、回転部材72の上方に位置している。このプレート部材74により、回転部材72が本体71から外れるのが防止されている。回転部材72は、本体71を中心に水平方向に回転自在である。
【0026】
図3に示すように、被係合部73は、一対設けられている。被係合部73は、クレーン20の左右方向(図中上下方向)における、回転部材72の両側の側面の各々に設けられている。本実施形態において、被係合部73は、棒状の部材である。被係合部73は、回転部材72の側面に取り付けられ、回転部材72の側面から水平方向に延びている。なお、被係合部73は、棒状の部材に限定されない。
【0027】
(ブラケット)
図1の要部Cの拡大図である図5に示すように、ジブ係留装置1は、ブラケット4を有している。ブラケット4は、ジブ25の先端部に設けられている。
【0028】
ブラケット4は、係合部76と、傾斜面77と、を有している。係合部76は、ジブ25が垂下された際に、被係合部73を下方から所定の向きで嵌めることが可能である。係合部76は、一対の被係合部73に対してそれぞれ設けられている。本実施形態において、所定の向きは、図5の紙面に直交する方向である。本実施形態において、係合部76は、ジブ25が垂下された際に、下方に開口する凹部である。なお、係合部76は、凹部に限定されない。
【0029】
傾斜面77は、ジブ25が垂下された際に、ブラケット4の下端に位置し、タワークレーン20の前後方向(紙面左右方向)(所定方向)に一対の被係合部73の各々が摺動可能である。傾斜面77は、タワークレーン20の前後方向における係合部76の両側にそれぞれ設けられており、それぞれが係合部76に連続している。タワークレーン20の左右方向(紙面直交方向)において、被係合部73の端は、ブラケット4の外方に突出している。
【0030】
ジブ25が垂下された状態で、吊下部材3が巻き上げられると、一対の被係合部73の各々が傾斜面77に当接し、傾斜面77を摺動する。さらに吊下部材3の巻き上げを進めると、傾斜面77を摺動した一対の被係合部73の各々が係合部76に嵌る。
【0031】
(フック用ウインチおよび制御装置)
また、図1に示すように、ジブ係留装置1は、上述のフック用ウインチ5と、制御装置6と、を有している。フック用ウインチ5は、吊下部材3(ひいてはフック装置2)の巻き上げおよび巻き下げを行う。制御装置6は、運転室23内に設けられており、フック用ウインチ5の駆動を制御する。
【0032】
(検出装置)
また、図5に示すように、ジブ係留装置1は、検出装置7を有している。検出装置7は、例えばリミットスイッチであり、ブラケット4に設けられている。検出装置7は、係合部76内の所定位置に被係合部73が位置したことを検出する。所定位置は、係合部76の上端よりも下方に位置している。
【0033】
制御装置6(図1参照)は、吊下部材3の巻き上げ中に、被係合部73が所定位置に位置したことを検出装置7が検出した場合に、吊下部材3の巻き上げを停止させる。これにより、係合部76の上端に被係合部73が衝突して吊下部材3が破損するのが抑制される。
【0034】
(駆動機構)
また、図1に示すように、ジブ係留装置1は、駆動機構8を有している。駆動機構8は、タワー24に対して折り畳まれた状態のジブ25をタワー24に係留する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢のタワー24に、垂下したジブ25を引き寄せる。また、駆動機構8は、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢のタワー24に引き寄せられているジブ25を、タワー24から離隔させる。
【0035】
駆動機構8は、引込ロープ81と、ウインチ82と、ガイドシーブ83と、を有している。図3に示すように、引込ロープ81は、連結部材84を介して一対の被係合部73の各々に連結される。なお、引込ロープ81の代わりに、ワイヤ、チェーン等の紐状部材を用いてもよい。
【0036】
連結部材84は、左右一対の連結片84aと、左右一対の嵌合片84bと、を有している。嵌合片84bは、被係合部73に嵌め込まれている。連結片84aは、引込ロープ81の端部と嵌合片84bとを連結している。連結片84aと嵌合片84bとは、ピンで結合されることで、その連結角度が可変にされている。また、連結片84aと引込ロープ81の端部とは、ピンで結合されることで、その連結角度が可変にされている。
【0037】
ここで、一対の嵌合片84b同士の間隔は、フック装置2の外形よりも大きくされている。そうすることで、連結部材84の外形がフック装置2の外形よりも大きくなるので、吊下部材3を巻き上げて行く際に、フック装置2がブラケット4に接触するのを連結部材84で抑制することができる。嵌合片84bの取り付け位置は、被係合部73の長手方向に調整可能にされているので、外形が異なるフック装置2であっても、一対の嵌合片84b同士の間隔を、フック装置2の外形よりも大きくすることができる。
【0038】
ここで、連結片84aには、張出部84cが設けられている。張出部84cは、左右に向き合う一対の連結片84aの内側に張り出している。これにより、一対の連結片84a同士の間の隙間が狭くされている。
【0039】
フック装置2が、巻上ロープ32が1本掛けされたボールフックである場合、巻上ロープ32の過巻を防止する過巻防止装置の重錘は、巻上ロープ32に取り付けられてフック装置2の真上に位置する。そのため、この重錘が連結部材84と干渉することはない。一方、フック装置2が、巻上ロープ32が2本掛けされたフックである場合、2本の巻上ロープ32のうちの1本は、一対の連結片84a同士の間を挿通する。そして、この巻上ロープ32には、過巻防止装置の重錘が取り付けられる。そのため、フック装置2を巻き上げた際に、一対の連結片84a同士の間に重錘が嵌り込む恐れがある。そこで、連結片84aに張出部84cを設けて、一対の連結片84a同士の間に重錘が嵌り込まないように、連結片84a同士の隙間を狭くしているのである。
【0040】
図1に示すように、ウインチ82は、ガイドシーブ83と同等の高さ位置において、タワー24の背面側に設けられている。ウインチ82は、引込ロープ81の巻き取りおよび繰り出しを行う。なお、ウインチ82は、タワー24の基部に設けられていてもよいし、上部旋回体22(特に、タワー24側の部分)に設けられていてもよいし、下部走行体21(特に、タワー24側の部分)に設けられていてもよい。
【0041】
ガイドシーブ83は、引込ロープ81をガイドするものであり、タワー24の腹面に着脱自在に取り付けられている。ガイドシーブ83は、被係合部73に連結された引込ロープ81をウインチ82で巻き取る際に、ガイドシーブ83よりも上流側の引込ロープ81が、ジブ25の長手方向にほぼ直交する方向に引っ張られるように、引込ロープ81をガイドする。言い換えれば、ガイドシーブ83は、ガイドシーブ83よりも上流側の引込ロープ81をジブ25の長手方向にほぼ直交する方向にガイドするような位置に取り付けられている。
【0042】
なお、引込ロープ81が吊下部材3の被係合部73に連結されないときには、引込ロープ81の先端は、タワー24の基部に設けられた繋止部(図示せず)に係止される。
【0043】
(係止装置)
また、図1に示すように、ジブ係留装置1は、係止装置11と、被係止装置12と、解除ロープ(解除部材)13と、を有している。係止装置11は、タワー24の前面部に設けられている。被係止装置12は、ジブ25に設けられている。被係止装置12は、タワー24に対してジブ25を折り畳んだ際に係止装置11に対向する位置に設けられている。タワー24に対してジブ25が折り畳まれた状態で被係止装置12が係止装置11によって係止されることで、ジブ25をタワー24にロックすることができる。
【0044】
図6図8は、係止装置11および被係止装置12の拡大側面図であり、図9は、係止装置11および被係止装置12の拡大平面図である。係止装置11は、ロックピン51を有する。このロックピン51が、被係止装置12の係止軸61を係止する係止位置(図6に示す位置)と、係止軸61の係止を解除する係止解除位置(図7図8に示す位置)との間で移動することによって、ジブ25のロックおよびロック解除を実現することができる。
【0045】
タワー24に取り付けられたタワー側ブラケット52には、レバー支持ブラケット53が突設されており、このレバー支持ブラケット53に、ロック解除レバー54が支点ピン54aを介して回動可能に連結されている。ロック解除レバー54の前端部にはロックピン51が連結されており、ロック解除レバー54の後端部には解除ロープ13が連結されている。なお、ロープの代わりに、ワイヤ、チェーン等の紐状部材、ロッド等の棒状部材を用いてもよい。
【0046】
タワー側ブラケット52に取り付けられたロックフレーム56には、ガイド筒56aが形成されるとともに、ガイド筒56aに相対する位置にロック穴56bが形成されている。ロックピン51はガイド筒56a内を上下に移動することによって、ロックピン51がロック穴56bに嵌合する係止位置と、ロックピン51がロック穴56bから外れた係止解除位置との間で移動可能となっている。
【0047】
ロック解除レバー54は、ロックピン51を係止位置に移動させるロック位置(図6に示す位置)と、ロックピン51を係止解除位置に移動させるロック解除位置(図7図8に示す位置)との間で移動可能(回動可能)である。ロック解除レバー54のうち支点ピン54aよりも前側(ジブ25側)の部分とタワー側ブラケット52との間には、ロックスプリング57が介装されている。ロック解除レバー54は、ロックスプリング57によってロック位置の方向に付勢されている。
【0048】
ロックフレーム56内には、ピンブロック部材58が設けられている。ピンブロック部材58は、ロックフレーム56内を前後方向に移動可能であり、スプリング58aによって前方に付勢されている。図7図8に示すように、ロックピン51が係止解除位置にあるときには、ピンブロック部材58がガイド筒56aの一部を閉塞する位置まで付勢される。これによって、ロックピン51がピンブロック部材58によってブロックされ、係止位置に移動できないようになっている。
【0049】
(解除ロープ)
解除ロープ13は、ロック解除レバー54の後端部に連結されている。この解除ロープ13を引っ張ることにより、ロックスプリング57による付勢力に抗してロック解除レバー54をロック解除位置に移動させることが可能である。即ち、係止装置11と被係止装置12との係合を解除することが可能である。また、解除ロープ13を引っ張るのを止めれば、ロックスプリング57による付勢力によって、ロック解除レバー54がロック位置に移動可能となる。
【0050】
(被係止装置)
ジブ25に設けられた被係止装置12は、係止軸61を有しており、この係止軸61がロックピン51によって係止されることで、折り畳まれた状態のジブ25がタワー24にロックされる。ジブ25に取り付けられたジブ側ブラケット62には、左右一対の軸支持ブラケット63が突設されている(図9参照)。軸支持ブラケット63の先端にはベアリング63aが設けられており、左右一対のベアリング63aによりロックピン51と交差する係止軸61が支持されている。
【0051】
上記のような構成において、図6に示すように、係止位置にあるロックピン51により、ロックピン51よりもタワー24側に位置する係止軸61が係止されることで、ジブ25がタワー24の前面部にロックされる。ジブ25がロック状態であることは、運転室23に設けられたモニタランプにより作業者に報知される。
【0052】
ジブ25のロックを解除する場合には、解除ロープ13を引っ張る。これにより、ロックスプリング57による付勢力に抗してロック解除レバー54がロック解除位置に移動する。
【0053】
その結果、図7に示すように、ロックピン51が係止解除位置に移動し、係止軸61の係止状態が解除される。すると、係止軸61がスプリング58aの付勢力によってピンブロック部材58に押される。このとき、ジブ25をタワー24から前方に振り出すように起伏操作することで、ジブ25のロックが解除される。また、後述するように、タワー24が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢である場合には、ジブ25が自重でタワー24から離隔することで、ジブ25のロックが解除される。このとき、ロックピン51はピンブロック部材58によってブロックされ、ロックピン51が係止位置に戻ることはない。ジブ25のロックが解除状態であることは、運転室23に設けられたモニタランプにより作業者に報知される。
【0054】
ジブ25をロックする場合には、図8に示す状態において、ジブ25をタワー24の前面に向かって折り畳む。すると、係止軸61がピンブロック部材58に当接し、スプリング58aの付勢力に抗してピンブロック部材58をタワー24側に押し込む。その結果、ピンブロック部材58によるロックピン51のブロックが解除され、図6に示すように、ロックスプリング57の付勢力によりロック解除レバー54がロック位置に移動するのと同時に、ロックピン51が係止位置に移動し、ジブ25がタワー24にロックされる。
【0055】
上記の構成において、タワー24に対して折り畳まれた状態のジブ25をタワー24に係留する際には、タワー24が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされて、ジブ25が垂下された後に、一対の被係合部73の各々に連結部材84を介して引込ロープ81が連結される。そして、吊下部材3が巻き上げられ、傾斜面77に当接した一対の被係合部73の各々が傾斜面77を摺動して係合部76に嵌る。この状態で、引込ロープ81が巻き取られることで、吊下部材3がタワー24に引き寄せられる。これにより、垂下したジブ25がタワー24に引き寄せられる。そして、被係止装置12が係止装置11によって係止されることで、ジブ25がタワー24にロックされる。
【0056】
ここで、一対の被係合部73の各々が係合部76に嵌るときの一対の被係合部73の各々の向きは、所定の向き(図5の紙面直交方向)と決まっている。しかし、吊下部材3は1本の巻上ロープ32で吊り下げられているので、巻上ロープ32の撚りで吊下部材3が水平方向に回転する。吊下部材3が回転すると、一対の被係合部73の各々の向きが変化するので、係合部76に一対の被係合部73の各々を嵌めるのが困難になる。
【0057】
そこで、一対の被係合部73の各々を係合部76に嵌める際に、引込ロープ81を引っ張り、回転部材72を回転させる。これにより、一対の被係合部73の各々を所定の向きにすることができる。よって、一対の被係合部73の各々を係合部76に容易に嵌めることができる。その結果、ジブ25をタワー24に引き寄せる作業の作業性を向上させることができる。
【0058】
一方、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する際には、タワー24が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にされた後に、一対の被係合部73の各々に連結部材84を介して引込ロープ81が連結される。そして、吊下部材3が巻き上げられ、傾斜面77に当接した一対の被係合部73の各々が傾斜面77を摺動して係合部76に嵌る。この状態で、解除ロープ13により係止装置11と被係止装置12との係合が解除され、引込ロープ81が繰り出されることで、吊下部材3がタワー24から離隔される。これにより、タワー24に引き寄せられていたジブ25がタワー24から離隔される。
【0059】
ここで、一対の被係合部73の各々を係合部76に嵌める際に、上記と同様に、引込ロープ81を引っ張り、回転部材72を回転させる。これにより、一対の被係合部73の各々を所定の向きにすることができる。よって、一対の被係合部73の各々を係合部76に容易に嵌めることができる。その結果、ジブ25をタワー24から離隔させる作業の作業性を向上させることができる。
【0060】
(変形例)
図3に示したように、上記の構成では、被係合部73が一対設けられているが、被係合部73の数は1つであってもよい。吊下部材3の上面図である図10に示すように、被係合部73は、回転部材72のタワー24側(図中左側)の側面に設けられ、タワー24の方に向かって水平方向に延びている。被係合部73の先端部には、引込ロープ81が連結される。図10をD方向から見た図である図11に示すように、ブラケット4には、タワー24側に係合部76が設けられている。
【0061】
図11に示すように、ジブ25が垂下された状態で、吊下部材3が巻き上げられると、被係合部73が係合部76に嵌る。傾斜面77は、タワークレーン20の左右方向(所定方向)における係合部76の両側にそれぞれ設けられている。
【0062】
図3に示す構成では、一対の被係合部73の各々が係合部76に嵌まることで、引込ロープ81が引っ張られた際に、ブラケット4と被係合部73とが一体でタワー24の方に移動する。これに対して、図10に示す構成では、ジブ25がタワー24に引き寄せられる方向に被係合部73が延びているので、引込ロープ81が引っ張られた際に、被係合部73はブラケット4に当接しないが、本体71や回転部材72がブラケット4に当接することで、ジブ25がタワー24に引き寄せられることになる。
【0063】
ここで、図10に示すように、フック装置2の外形が、本体71や回転部材72の外形よりも大きいと、引込ロープ81が引っ張られた際に、吊下部材3がブラケット4の方に移動する結果、フック装置2がブラケット4に接触して、両者が破損する恐れがある。そこで、回転部材72の外形をフック装置2の外形よりも大きくして、フック装置2とブラケット4との接触を回転部材72で抑制するようにすることが好ましい。
【0064】
なお、図10に示すように、被係合部73が1本であって、フック装置2が、巻上ロープ32が多本掛けされるフックの場合、ジブ25がタワー24の方に引き寄せられると、本体71や回転部材72がブラケット4の方に移動する結果、ブラケット4と吊下部材3との間に位置する巻上ロープ32がブラケット4に干渉する。そこで、図10に示すように、被係合部73の中央部分に、ブラケット4の内側からブラケット4に当接する当接部材78を設けることで、巻上ロープ32がブラケット4に干渉するのを抑制することができる。
【0065】
また、吊下部材3の上面図である図12に示すように、被係合部73が一対設けられた構成に対して、単純に被係合部73を1つだけにした構成であってもよい。この場合、重錘に当接することで、連結片84aとブラケット4との間に重錘が嵌り込むのを防止する役目を果たす突出片79が、タワー24の方に向かって、本体71または回転部材72から突出していてよい。
【0066】
突出片79が突出する方向は、回転部材72を中心にその周方向に可変にされている。これにより、重錘の位置に応じて、突出片79の位置を調整することができる。
【0067】
また、図3に示す構成では、連結片84aに張出部84cが設けられていたが、吊下部材3の上面図である図13に示すように、連結片84aが、左右に向き合う一対の連結片84aの内側に張り出した形状にされることで、一対の連結片84a同士の間の隙間が狭くされていてもよい。図13では、連結片84aは「く」の字に折れ曲がった形状にされているが、内側に湾曲された形状にされていてもよい。
【0068】
(ジブ係留装置の動作)
次に、ジブ係留装置1の動作について、図面を参照しつつ説明する。図14図18は、タワークレーン20の側面図である。
【0069】
(係留ステップ)
まず、折り畳まれた状態のジブ25をタワー24に係留する場合について説明する。まず、図14に示すように、ブーム起伏ロープ41を繰り出すことで、タワー24を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にする。本実施形態において、タワー24の水平面からの傾斜角度は80度であるが、傾斜角度はこれに限定されない。
【0070】
次に、ジブ起伏ロープ38を繰り出して、ジブ25を鉛直方向に垂下した状態にする。次に、引込ロープ81を繰り出して、引込ロープ81の先端を地面近くまで降ろす。また、巻上ロープ32を繰り出して、吊下部材3を地面近くまで降ろす。そして、引込ロープ81の先端を連結部材84(図3参照)に連結する。
【0071】
次に、引込ロープ81と巻上ロープ32とを同時に巻き取っていく。なお、引込ロープ81および巻上ロープ32の巻き取りを、同時に行わなくてもよい。
【0072】
巻上ロープ32を巻き取ることで、吊下部材3を巻き上げていくと、図5に示すように、一対の被係合部73の各々が傾斜面77に当接し、傾斜面77を摺動する。さらに吊下部材3を巻き上げると、傾斜面77を摺動した一対の被係合部73の各々が係合部76に嵌る。所定位置に被係合部73が位置したことを検出装置7が検出すると、制御装置6は、吊下部材3の巻き上げを停止させる。
【0073】
ここで、一対の被係合部73が傾斜面77の近傍まで巻き上げられたときに、引込ロープ81を少し引っ張る。これにより、回転部材72が回転することで、一対の被係合部73の各々が所定の向きになる。これにより、一対の被係合部73の各々を傾斜面77に容易に当接させ、一対の被係合部73の各々を係合部76に嵌めることができる。
【0074】
また、一対の被係合部73の各々を係合部76に嵌める際に、一対の被係合部73の各々を傾斜面77に摺動させることで、一対の被係合部73の各々を係合部76まで好適に案内することができる。
【0075】
また、ブラケット4において、一対の被係合部73の各々が摺動可能な傾斜面77が、タワークレーン20の前後方向における係合部76の両側にそれぞれ設けられている。よって、吊下部材3を巻き上げる際に、係合部76に対して被係合部73が前方および後方のどちらに位置していても、係合部76の両側のどちらかの傾斜面77に被係合部73を摺動させることができる。これにより、一対の被係合部73の各々を係合部76に好適に嵌めることができる。
【0076】
次に、図15に示すように、ウインチ82で引込ロープ81を巻き取っていくと、吊下部材3がタワー24に引き寄せられることで、図16に示すように、垂下していたジブ25がタワー24の前面部に引き寄せられる。
【0077】
ここで、被係合部73が、タワークレーン20の左右方向における、回転部材72の両側の側面の各々に設けられている。係合部76は、一対の被係合部73に対してそれぞれ設けられている。被係合部73が1つであり、タワー24に対向する位置に被係合部73が設けられている場合には、引込ロープ81が引っ張られた際に、ブラケット4に対して被係合部73がタワー24の方に移動することで、吊下部材3がブラケット4の方に移動する。この場合であって、吊下部材3の下部にフック装置2が連結されている場合には、吊下部材3がブラケット4の方に移動する結果、フック装置2がブラケット4に接触して、両者が破損する恐れがある。これに対して、被係合部73が2つであり、タワークレーン20の左右方向における、回転部材72の両側の側面の各々に設けられている場合には、引込ロープ81が引っ張られた際に、ブラケット4と被係合部73とが一体でタワー24の方に移動するので、吊下部材3がブラケット4の方に移動しない。よって、吊下部材3の下部にフック装置2が連結されていても、フック装置2がブラケット4に接触するのを抑制することができる。これにより、フック装置2とブラケット4との接触による破損を抑制することができる。
【0078】
ジブ25がタワー24に十分に近接すると、図7に示すように、係止軸61がピンブロック部材58に当接し、ピンブロック部材58をタワー24側に押し込む。これにより、図6に示すように、ロック解除レバー54がロック位置に移動するのと同時に、ロックピン51が係止位置に移動する。これにより、ジブ25をタワー24に係留する際に、タワー24に引き寄せられたジブ25を確実にロックすることができる。
【0079】
次に、図17に示すように、引込ロープ81および巻上ロープ32を繰り出しながら、吊下部材3を地面近くまで降ろす。そして、引込ロープ81の先端と連結部材84との連結を解除する。そして、引込ロープ81の先端を繋止部に連結する。
【0080】
その後、図18に示すように、ブーム起伏ロープ41を繰り出すことで、タワー24を倒伏させる。
【0081】
(解放ステップ)
次に、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する場合について説明する。まず、図18に示すように、タワー24が倒伏された状態から、ブーム起伏ロープ41を巻き取ることで、図17に示すように、タワー24を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にする。本実施形態において、タワー24の水平面からの傾斜角度は80度であるが、傾斜角度はこれに限定されない。
【0082】
次に、引込ロープ81を繰り出して、引込ロープ81の先端を地面近くまで降ろす。また、巻上ロープ32を繰り出して、吊下部材3を地面近くまで降ろす。そして、引込ロープ81の先端を連結部材84に連結する。
【0083】
次に、図16に示すように、引込ロープ81と巻上ロープ32とを同時に巻き取っていく。なお、引込ロープ81および巻上ロープ32の巻き取りを、同時に行わなくてもよい。
【0084】
巻上ロープ32を巻き取ることで、吊下部材3を巻き上げていくと、図5に示すように、一対の被係合部73の各々が傾斜面77に当接し、傾斜面77を摺動する。さらに吊下部材3を巻き上げると、傾斜面77を摺動した一対の被係合部73の各々が係合部76に嵌る。所定位置に被係合部73が位置したことを検出装置7が検出すると、制御装置6は、吊下部材3の巻き上げを停止させる。
【0085】
ここで、一対の被係合部73が傾斜面77の近傍まで巻き上げられたときに、引込ロープ81を少し引っ張る。これにより、回転部材72が回転することで、一対の被係合部73の各々が所定の向きになる。これにより、一対の被係合部73の各々を傾斜面77に容易に当接させ、一対の被係合部73の各々を係合部76に嵌めることができる。
【0086】
次に、図8に示すように、解除ロープ13を引っ張ることで、ロック解除レバー54がロック解除位置に移動すると同時に、ロックピン51が係止解除位置に移動し、係止軸61の係止状態が解除される。これにより、ジブ25のロックが解除され、ジブ25は自重でタワー24から離隔する。
【0087】
次に、ウインチ82で引込ロープ81を繰り出す。これにより、図15に示すように、吊下部材3がタワー24から離隔することで、ジブ25がタワー24から離隔していき、最終的に、ジブ25がタワー24から垂下した状態になる。
【0088】
次に、図14に示すように、引込ロープ81を繰り出しながら、巻上ロープ32を繰り出して、吊下部材3を地面近くまで降ろす。そして、引込ロープ81の先端と連結部材84との連結を解除する。
【0089】
その後、巻上ロープ32を巻き取って、吊下部材3をブラケット4の近傍まで巻き上げる。また、引込ロープ81の先端を繋止部に連結する。
【0090】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るジブ係留装置1およびジブ係留方法によると、タワー24に対して折り畳まれた状態のジブ25をタワー24に係留する際には、垂下したジブ25がタワー24に引き寄せられる。このとき、被係合部73が係合部76に嵌った状態で、引込ロープ81が巻き取られることで、吊下部材3がタワー24に引き寄せられる。被係合部73が設けられた回転部材72は、本体71を中心に水平方向に回転自在である。よって、被係合部73を係合部76に嵌める際に、引込ロープ81を引っ張り、回転部材72を回転させることで、被係合部73を所定の向きにすることができる。これにより、被係合部73を係合部76に容易に嵌めることができる。その結果、ジブ25をタワー24に引き寄せる作業の作業性を向上させることができる。
【0091】
また、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する際には、タワー24に引き寄せられているジブ25がタワー24から離隔される。このとき、被係合部73の各々が係合部76に嵌った状態で、引込ロープ81が繰り出されることで、吊下部材3がタワー24から離隔される。被係合部73が設けられた回転部材72は、本体71を中心に水平方向に回転自在である。よって、被係合部73を係合部76に嵌める際に、引込ロープ81を引っ張り、回転部材72を回転させることで、被係合部73を所定の向きにすることができる。これにより、被係合部73を係合部76に容易に嵌めることができる。その結果、ジブ25をタワー24から離隔させる作業の作業性を向上させることができる。
【0092】
また、被係合部73が、タワークレーン20の左右方向における、回転部材72の両側の側面の各々に設けられている。係合部76は、一対の被係合部73に対してそれぞれ設けられている。被係合部73が1つであり、タワー24に対向する位置に被係合部73が設けられている場合には、引込ロープ81が引っ張られた際に、ブラケット4に対して被係合部73がタワー24の方に移動することで、吊下部材3がブラケット4の方に移動する。この場合であって、吊下部材3の下部にフック装置2が連結されている場合には、吊下部材3がブラケット4の方に移動する結果、フック装置2がブラケット4に接触して、両者が破損する恐れがある。これに対して、被係合部73が2つであり、タワークレーン20の左右方向における、回転部材72の両側の側面の各々に設けられている場合には、引込ロープ81が引っ張られた際に、ブラケット4と被係合部73とが一体でタワー24の方に移動するので、吊下部材3がブラケット4の方に移動しない。よって、吊下部材3の下部にフック装置2が連結されていても、フック装置2がブラケット4に接触するのを抑制することができる。これにより、フック装置2とブラケット4との接触による破損を抑制することができる。
【0093】
また、ブラケット4は、タワークレーン20の前後方向に被係合部73が摺動可能で、係合部76に連続する傾斜面77を有している。被係合部73を係合部76に嵌める際に、被係合部73を傾斜面77に摺動させることで、被係合部73を係合部76まで好適に案内することができる。
【0094】
また、ブラケット4において、被係合部73が摺動可能な傾斜面77が、タワークレーン20の前後方向における係合部76の両側にそれぞれ設けられている。よって、吊下部材3を巻き上げる際に、係合部76に対して被係合部73が前方および後方のどちらに位置していても、係合部76の両側のどちらかの傾斜面77に被係合部73を摺動させることができる。これにより、被係合部73を係合部76に好適に嵌めることができる。
【0095】
また、タワー24に対してジブ25が折り畳まれた際に、ジブ25に設けられた被係止装置12が、タワー24に設けられた係止装置11に係止される。これにより、ジブ25をタワー24に係留する際に、タワー24に引き寄せられたジブ25を確実にロックすることができる。また、係止装置11と被係止装置12との係合を解除ロープ13で解除することが可能である。よって、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する際に、タワー24へのジブ25のロックを好適に解除することができる。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0097】
1 ジブ係留装置
2 フック装置
3 吊下部材
4 ブラケット
5 フック用ウインチ
6 制御装置
7 検出装置
8 駆動機構
11 係止装置
12 被係止装置
13 解除ロープ(解除部材)
20 タワークレーン
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 運転室
24 タワー(ブーム)
25 ジブ
26 ガントリ
27 ストラット
28 下部スプレッダ
29 カウンタウエイト
30 バックストップ装置
31 ジブポイントシーブ
32 巻上ロープ
34 ジブガイライン
35 ジブ起伏用下部スプレッダ
36 ジブガイライン
37 ジブ起伏用上部スプレッダ
38 ジブ起伏ロープ
39 ブームガイライン
40 上部スプレッダ
41 ブーム起伏ロープ
42 ブームフットピン
44 ジブ起伏用ウインチ
45 ブーム起伏用ウインチ
51 ロックピン
52 タワー側ブラケット
53 レバー支持ブラケット
54 ロック解除レバー
56 ロックフレーム
57 ロックスプリング
58 ピンブロック部材
61 係止軸
62 ジブ側ブラケット
63 軸支持ブラケット
71 本体
72 回転部材
73 被係合部
74 プレート部材
76 係合部
77 傾斜面
78 当接部材
79 突出片
81 引込ロープ
82 ウインチ
83 ガイドシーブ
84 連結部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18