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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20240509BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H02J50/12
H02J7/00 301D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022008670
(22)【出願日】2022-01-24
(65)【公開番号】P2022130305
(43)【公開日】2022-09-06
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】P 2021028217
(32)【優先日】2021-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 将也
(72)【発明者】
【氏名】柴沼 満
(72)【発明者】
【氏名】加藤 和行
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 侑生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【審査官】清水 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101079(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159330(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00-7/12
7/34-7/36
50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置から受電装置に非接触で電力が供給される非接触給電システムであって、
送電用の1次側コイル(112)及び1次側コンデンサ(114,114C,114D)で構成される1次側共振回路(110,110B,110C,110D)と、
予め定めた動作周波数の交流電力を前記1次側共振回路に印加する交流電源装置(130,130E,130F)と、
を有する送電装置(100,100E,100F)と、
前記1次側コイルと磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)で構成される2次側共振回路(210)を有する受電装置(200)と、
前記1次側コイル及び前記2次側コイルのそれぞれと磁気的に結合した状態となるように配置される3次側コイル(312)、及び、前記3次側コイルとともに短絡共振回路を構成する3次側コンデンサ(314,314C,314D)で構成される3次側共振回路(310,310B,310C,310D)と、
を備え、
前記1次側コンデンサのキャパシタンスは、自己インダクタンスL1の前記1次側コイルと角周波数ω0の前記動作周波数で共振するように、下式(1)に従ったキャパシタンスC1に設定され、
前記3次側コンデンサのキャパシタンスは、自己インダクタンスL3の前記3次側コイルと前記動作周波数で共振するように、下式(2)に従ったキャパシタンスC3に設定され、
前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記1次側コイル、前記2次側コイル、及び前記3次側コイルのそれぞれの自己インダクタンスとそれぞれの相互インダクタンスとによって生じる前記交流電力の無効電力成分が小さくなるように設定される、
非接触給電システム。
【数21】
【数22】
【請求項2】
請求項1に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記2次側コイルの自己インダクタンスL2と前記角周波数ω0とで表される下式(3)に従ったキャパシタンスC2rよりも大きな値に設定される、非接触給電システム。
【数23】
【請求項3】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記2次側コイルの自己インダクタンスL2と、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM12と、前記1次側コイルと前記3次側コイルとの相互インダクタンスM13と、前記3次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM32と、前記角周波数ω0とから、下式(4)に従ったキャパシタンスC2に設定される、非接触給電システム。
【数24】
【請求項4】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記2次側コイルの自己インダクタンスL2と、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM12と、前記1次側コイルと前記3次側コイルとの相互インダクタンスM13と、前記3次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM32と、前記角周波数ω0とから、下式(4)に従って設定されるキャパシタンスC2に対して+25%の誤差範囲内に設定される、非接触給電システム。
【数25】
【請求項5】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記3次側コイルは、前記1次側コイルに直列に接続されており、
前記3次側コンデンサは、前記3次側コイルに並列に接続されており、
前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記2次側コイルの自己インダクタンスL2と、前記3次側コイルの自己インダクタンスL3と、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM12と、前記1次側コイルと前記3次側コイルとの相互インダクタンスM13と、前記3次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM32と、前記角周波数ω0とから、下式(5)に従ったキャパシタンスC2に設定される、非接触給電システム。
【数26】
【請求項6】
請求項2に記載の非接触給電システムであって、
前記3次側コイルは、前記1次側コイルに直列に接続されており、
前記3次側コンデンサは、前記3次側コイルに並列に接続されており、
前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記2次側コイルの自己インダクタンスL2と、前記3次側コイルの自己インダクタンスL3と、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM12と、前記1次側コイルと前記3次側コイルとの相互インダクタンスM13と、前記3次側コイルと前記2次側コイルとの相互インダクタンスM32と、前記角周波数ω0とから、下式(5)に従って設定されるキャパシタンスC2に対して+25%の誤差範囲内に設定される、非接触給電システム。
【数27】
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記3次側コイルは、前記1次側コイルに対して一定の結合状態となるように配置される、非接触給電システム。
【請求項8】
請求項7に記載の非接触給電システムであって、
前記1次側コイル及び前記3次側コイルはプリント基板で一体形成されており、前記2次側コンデンサ及び前記3次側コンデンサは、前記プリント基板の面上に実装される、非接触給電システム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の非接触給電システムであって、
前記1次側コンデンサ(114C,114D)は、キャパシタンスが可変な可変コンデンサで構成され、
前記非接触給電システムは、さらに、
前記1次側コイルに流れるコイル電流を検出し、前記コイル電流の値に応じて前記1次側コンデンサのキャパシタンスを変化させるキャパシタンス制御部(150C,150D)を有し、
前記キャパシタンス制御部は、前記コイル電流の値が減少した場合に、前記1次側コンデンサのキャパシタンスを前記式(1)に従ったキャパシタンスC1よりも低くする、
非接触給電システム。
【請求項10】
請求項9に記載の非接触給電システムであって、
前記3次側コンデンサも、キャパシタンスが可変な可変コンデンサで構成され、
前記キャパシタンス制御部は、さらに、前記3次側コンデンサのキャパシタンスを前記式(2)に従ったキャパシタンスC3よりも低くする、
非接触給電システム。
【請求項11】
請求項10に記載の非接触給電システムであって、
前記キャパシタンス制御部は、前記1次側コンデンサのキャパシタンスを小さくした後に、前記3次側コンデンサのキャパシタンスを小さくする、非接触給電システム。
【請求項12】
請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コイルが前記1次側コイルに接近して離反するように移動する場合の移動方向において、前記1次側コイルの中心位置とコイル端との間の1/2の位置から前記コイル端までの間の範囲のいずれかの位置に、前記2次側コイルの中心位置が存在する状態における、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの結合状態と、前記1次側コイルと前記3次側コイルとの結合状態と、前記3次側コイルと前記2次側コイルとの結合状態を基準として、前記2次側コンデンサのキャパシタンスを設定する、非接触給電システム。
【請求項13】
請求項7から請求項11までのいずれか一項に記載の非接触給電システムであって、
前記2次側コイルが前記1次側コイルに接近して離反するように移動する場合の移動方向において、前記1次側コイルの中心位置とコイル端との間の1/2の位置から前記1次側コイルの中心位置までの間の範囲のいずれかの位置に、前記2次側コイルの中心位置が存在する状態における、前記1次側コイルと前記2次側コイルとの結合状態と、前記1次側コイルと前記3次側コイルとの結合状態と、前記3次側コイルと前記2次側コイルとの結合状態を基準として、前記2次側コンデンサのキャパシタンスを設定する、非接触給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
1次側である送電側から2次側である受電側に誘導により非接触で電力を供給する非接触給電システムが種々提案されている。例えば、特許文献1には、システム周波数において共振する中間共振ループを経て、1次誘導導線(1次側コイル)から2次共振ピックアップ回路に電力を誘導する誘導電力伝達システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2002-508916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、1次側の共振回路から2次側の共振回路に電力を誘導する非接触給電システムに含まれる複数の共振回路について、従来技術と同様に、それぞれ、共振回路のコンデンサのキャパシタンスを、誘導する電力の周波数で共振回路のコイルの自己インダクタンスと共振するように設定した場合、誘導する電力の力率の低下を招くという問題がある。そして、この誘導する電力の力率の低下の問題は、1次側の共振回路に電力を出力する装置側の損失の増大の問題を招く。この問題は、1次側の共振回路のコイルと、2次側の共振回路のコイルとの間の結合係数が高いほど顕著となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一形態によれば、送電装置から受電装置に非接触で電力が供給される非接触給電システムが提供される。この非接触給電システムは、送電用の1次側コイル(112)及び1次側コンデンサ(114,114C,114D)で構成される1次側共振回路(110,110B,110C,110D)と、予め定めた動作周波数の交流電力を前記1次側共振回路に印加する交流電源装置(130,130E,130F)と、を有する送電装置(100,100E,100F)と、前記1次側コイルと磁気的に結合される受電用の2次側コイル(212)、及び、2次側コンデンサ(214)で構成される2次側共振回路(210)を有する受電装置(200)と、前記1次側コイル及び前記2次側コイルのそれぞれと磁気的に結合した状態となるように配置される3次側コイル(312)、及び、前記3次側コイルとともに短絡共振回路を構成する3次側コンデンサ(314,314C,314D)で構成される3次側共振回路(310,310B,310C,310D)と、を備える。前記1次側コンデンサのキャパシタンスは、自己インダクタンスL1の前記1次側コイルと角周波数ω0の前記動作周波数で共振するように、下式(1)に従ったキャパシタンスC1に設定される。前記3次側コンデンサのキャパシタンスは、自己インダクタンスL3の前記3次側コイルと前記動作周波数で共振するように、下式(2)に従ったキャパシタンスC3に設定される。前記2次側コンデンサのキャパシタンスは、前記1次側コイル、前記2次側コイル、及び前記3次側コイルのそれぞれの自己インダクタンスとそれぞれの相互インダクタンスとによって生じる前記交流電力の無効電力成分が小さくなるように設定される。
【数1】
【数2】
この形態の非接触給電システムによれば、送電装置から受電装置への給電時において、交流電源装置から1次側共振回路に印加する交流電力の無効成分を小さくすることができるので、1次側共振回路に印加される交流電力の力率の低下を抑制することができる。これにより、交流電源装置側の損失を低減することができる。例えば、交流電源装置にインバータやフィルタが含まれる場合において、インバータやフィルタで発生する損失を低減することができる。また、1次側共振回路の1次側コンデンサのキャパシタンス及び3次側共振回路の3次側コンデンサのキャパシタンスを、1次側コイル、2次側コイル、及び3次側コイルのそれぞれの結合の度合いを示す結合係数に関係なく設定できる。これにより、送電装置からの給電が可能となる受電装置のバリエーションを多くすることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図2】第1実施形態の設定における負荷抵抗と力率の関係を示す説明図。
図3】2次側コンデンサのキャパシタンスの誤差と力率の関係を示す説明図。
図4】第2実施形態の1次側コイルと3次側コイルの配置について示す説明図。
図5】一体形成された1次側コイルと3次側コイルの構成を示す説明図。
図6】第3実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図7】第3実施形態の設定における負荷抵抗と力率の関係を示す説明図。
図8A】2次側コンデンサのキャパシタンスの誤差と力率の関係を示す説明図。
図8B】3次側コンデンサのキャパシタンスと1次側コイルのコイル電流との関係を示す説明図。
図9】第4実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図10】第5実施形態の非接触給電システムの概略構成図。
図11】第5実施形態の非接触給電システムの別の概略構成図。
図12】非接触給電システムの各回路定数の設計条件を示す説明図。
図13】非接触給電システムの各回路定数の別の設計条件を示す説明図。
図14】設計条件と力率の関係を示す説明図。
図15】設計条件の違いによる電力の脈動を示す第1の説明図。
図16】設計条件の違いによる電力の脈動を示す第2の説明図。
図17】車両用非接触給システムの概略構成図。
図18】車両用非接触給システムの別の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1に示すように、第1実施形態の非接触給電システムは、送電装置100と、送電装置100から非接触で電力が供給される受電装置200と、3次側共振回路310と、を備えている。
【0008】
送電装置100は、1次側共振回路110と、交流電源装置130と、を備えている。1次側共振回路110は、共振による誘導によって受電装置200への電力の供給を実行する回路である。1次側共振回路110は、1次側コイル112と、1次側コイル112に直列に接続された1次側コンデンサ114と、を有している。1次側コンデンサ114は、1次側コイル112に印加された電力を共振させるための共振コンデンサである。交流電源装置130は、予め定められた動作周波数f0(角周波数ω0)の交流電力を1次側共振回路110に印加する装置である。交流電源装置130は、外部電源の交流電力を直流電力に変換する電源装置や、電源装置から供給される直流電力を動作周波数の交流電力に変換するインバータ等を含む装置として構成される。なお、インバータの後段にフィルタを含む場合もある。
【0009】
受電装置200は、電子機器や電気自動車等のように、電力を利用して作動する種々の装置に搭載される。受電装置200は、2次側共振回路210と、受電回路220と、バッテリ230と、を備えている。2次側共振回路210も、1次側共振回路110と同様に、直列に接続された2次側コイル212と、共振コンデンサとしての2次側コンデンサ214と、を有している。2次側共振回路210は、2次側コイル212と1次側コイル112との間が磁気的に結合された共振結合の状態において、2次側コイル212に誘導された交流電力を得る回路である。
【0010】
受電回路220は、例えば、2次側共振回路210で得られた交流電力を直流電力に変換し、バッテリ230に充電する回路である。バッテリに充電された電力は、受電装置200が搭載された装置において電力として利用される。すなわち、受電回路220及びバッテリ230は、2次側共振回路210の負荷として機能する。そこで、以下では、受電回路220及びバッテリ230を負荷抵抗RLとして説明する場合もある。
【0011】
3次側共振回路310は、3次側コイル312と、共振コンデンサである3次側コンデンサ314とが直列に接続された閉回路で構成されている。
【0012】
送電装置100から受電装置200への給電が行なわれる場合には、2次側共振回路210は、2次側コイル212が1次側共振回路110の1次側コイル112と磁気的に結合された状態となるように配置される。また、3次側共振回路310は、3次側コイル312が1次側コイル112及び2次側コイル212のそれぞれと磁気的に結合された状態となるように配置される。なお、図1では、各コイルが互いに磁気的に結合された状態にあることを2本の平行な直線にて示している。
【0013】
1次側共振回路110において、1次側コイル112の自己インダクタンスをL1とした場合に、1次側コンデンサ114のキャパシタンスは、1次側コンデンサ114と1次側コイル112とが動作周波数f0の角周波数ω0で共振するように、下式(1)に従ったキャパシタンスC1に設定される。
【数3】
【0014】
3次側共振回路310において、3次側コイル312の自己インダクタンスをL3とした場合に、3次側コンデンサ314のキャパシタンスは、3次側コンデンサ314と3次側コイル312とが角周波数ω0で共振するように、下式(2)に従ったキャパシタンスC3に設定される。
【数4】
【0015】
2次側共振回路210において、2次側コイル212の自己インダクタンスをL2とした場合、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、下式(3)に従ったキャパシタンスC2rよりも大きな値に設定されることが好ましく、具体的には、下式(4)に従ったキャパシタンスC2に設定されることが最も好ましい。なお、キャパシタンスC2rは、2次側コンデンサ214と2次側コイル212とが角周波数ω0で共振するように設定される値である。
【数5】
【数6】
Mnmはn次側コイルとm次側コイルの相互インダクタンスである。相互インダクタンスMnmは、Mnm=knm√(Ln・Lm)で表されるので、上式(4)は、下式(6)のように表すこともできる。
【数7】
knmは、n次側コイルとm次側コイルの磁気的な結合状態の違い、すなわち、結合の度合いを示す結合係数であり、コイル間の配置関係に応じて、-1よりも大きく+1未満の値をとる。Lnはn次側コイルの自己インダクタンス、Lmはm次側コイルの自己インダクタンスである。従って、相互インダクタンスMnmの大きさは、結合係数knmの大きさが大きいほど大きくなる。
【0016】
コイル間に磁気的な結合がない場合の結合係数knmは0でとなり、相互インダクタンスMnmは0となる。例えば、受電装置200が存在しない場合には、1次側コイル112と2次側コイル212の結合係数k12はk12=0となり、相互インダクタンスM12はM12=0となる。
【0017】
なお、2次側コンデンサ214のキャパシタンスを、上式(4)に従ったキャパシタンスC2に設定する場合に用いられる相互インダクタンスM12,M13,M32は、予め設定した各コイルの配置関係における結合係数k12,k13,k32から求められる値が利用される。
【0018】
ここで、交流電源装置130から1次側共振回路110を見た入力インピーダンスZinは、1次側共振回路110、2次側共振回路210、及び3次側共振回路310のそれぞれにおける回路方程式から、下式(7)となる。
【数8】
なお、上式(7)は、1次側コイル112、2次側コイル212、及び3次側コイル312の巻線抵抗r1,r2,r3が動作周波数f0におけるリアクタンス[ω0・L1],[ω0・L2],[ω0・L3]に比べて十分小さいため、抵抗成分が省略されて示されている。
【0019】
交流電源装置130から1次側共振回路110に印加する交流電力を高効率で2次側共振回路210に供給するためには、上式(7)において、虚数成分を小さくして、交流電力の力率を高くすることが求められ、理想的には、虚数成分を0とすることが好ましい。
【0020】
そこで、上式(7)の第1項[jω0・L1+1/(jω0・C1)]を0とすることにより、上式(1)が求められる。また、上式(1)のように設定した場合、1次側コイル112と2次側コイル212と3次側コイル312との相互の結合状態に関係なく、1次側共振回路110の回路定数を設定可能となる。
【0021】
また、上式(7)の第2項及び第3項の{(M13/M32)[jω0・L2+1/(jω0・C2)]-2jω0・M12・M13/M32}を0とすることにより、上式(4)が求められる。
【0022】
また、上式(2)は、上式(1)のキャパシタンスC1と同様に、1次側コイル112と2次側コイル212と3次側コイル312との相互の結合状態に関係なく、3次側共振回路310の回路定数を設定可能とするものとして、求められる。
【0023】
なお、上式(2)は、以下で説明するようにしても求められる。例えば、3次側コイル312が1次側コイル112と一定の配置関係で構成されている状態において、受電装置200が存在しない場合に、交流電源装置130から1次側共振回路110への過大な入力電流を抑えるために、入力インピーダンスZinが最大となるように設計することが求められる。この場合の入力インピーダンスZinは、1次側共振回路110及び3次側共振回路310のそれぞれにおける回路方程式から、下式(8)となる。
【数9】
上式(8)も、上式(7)と同様に抵抗成分が省略されて示されている。
【0024】
上式(8)で表される入力インピーダンスZinが最大となるのは、第4項の分母の虚数成分[jω0・L3+1/(jω0・C3)]が0となる場合である。そこで、[jω0・L3+1/(jω0・C3)]=0から、上式(2)が求められる。
【0025】
2次側コンデンサ214のキャパシタンスを、上式(4)に従って設定した実施形態の場合と、上式(3)に従って設定した比較例の場合について、負荷抵抗RLと力率の関係をシミュレーションしたところ、図2に示す結果が得られた。なお、1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1及び3次側コンデンサ314のキャパシタンスC3は、上式(1),(2)に従って設定されている。比較例の設定の場合、交流電力の無効成分の影響により力率は1より小さく、特に、負荷抵抗RLが小さいほど、すなわち、負荷が大きいほど、力率は小さくなっている。これに対して、本実施形態の設定の場合、負荷抵抗RLの大きさによらずに力率は1で一定とすることができ、最も高効率な交流電力の伝送が可能であることを確認した。
【0026】
また、上式(4)に従って設定されるキャパシタンスC2からの誤差[%]と力率との関係をシミュレーションしたところ、図3に示す結果が得られた。図3からわかるように、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、上式(4)に従って設定されたキャパシタンスC2でなくても、交流電力の無効成分を抑制して力率の低下を抑制できることを確認した。例えば、-25%から+45%の誤差の範囲内の値であれば、力率0.6以上とすることができ、-15%から+25%の誤差の範囲内の値であれば、力率0.8以上とすることができる。ここで、上記数値は、小数点第二位を四捨五入した値で表されている。なお、マイナス側の誤差に比べプラス側の誤差の方が、力率の低下率がなだらかであるので、0%から+25%の誤差の範囲内の値とするほうが好ましい。
【0027】
また、上式(4)の[M12・M32/M13]は通常、正の値とされるので、上式(4)に従って設定されるキャパシタンスC2は、上式(3)に従って求められるキャパシタンスC2rに比べて大きな値(C2>C2r)となる。従って、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、交流電力の無効成分を抑制して力率の低下を抑制するように、上式(3)に従って求められるキャパシタンスC2rよりも大きな値に設定されるようにしてもよい。なお、[M12・M32/M13]は、各コイルの結合状態によっては負の値となる場合もある。この場合には、上式(4)に従って設定されるキャパシタンスC2は、上式(3)に従って求められるキャパシタンスC2rに比べて小さな値(C2<C2r)となる。従って、この場合には、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、交流電力の無効成分を抑制して力率の低下を抑制するように、上式(3)に従って求められるキャパシタンスC2rよりも小さな値に設定されるようにしてもよい。
【0028】
以上のことから、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、1次側コイル112、2次側コイル212、及び3次側コイル312のそれぞれの自己インダクタンスL1,L2,L3とそれぞれの相互インダクタンスM12,M13,M32とによって生じる交流電力の無効電力成分が小さくなり力率の低下が小さくなるように設定されるようにしてもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態では、送電装置100から受電装置200への給電時において、交流電源装置130から1次側共振回路110に印加される交流電力の力率の低下を抑制することができ、高効率な給電が可能である。
【0030】
B.第2実施形態:
第1実施形態では、2次側共振回路210の2次側コイル212が1次側共振回路110の1次側コイル112と磁気的に結合された状態となるように配置され、3次側共振回路310の3次側コイル312が1次側コイル112及び2次側コイル212のそれぞれと磁気的に結合された状態となるように配置される、として説明した。すなわち、第1実施形態では、1次側コイル112と2次側コイル212と3次側コイル312の具体的な配置関係について特に限定していない。そこで、第2実施形態では、各コイルの好ましい配置について説明する。
【0031】
図4に示すように、3次側コイル312は、1次側コイル112に対向する2次側コイル212とは反対側で1次側コイル112に積層配置されることが好ましい。また、図示は省略するが、3次側コイル312は、2次側コイル212と同じ側で1次側コイル112に積層配置されてもよい。また、図示は省略するが、1次側コイル112の側方に並べて隣接配置されてもよい。すなわち、3次側コイル312は、1次側コイル112に対して一定の結合係数k13を有する結合状態となるような位置関係となるように1次側コイル112の側すなわち送電装置100側に配置されることが好ましい。但し、1次側コイル112と3次側コイル312を積層配置される方が、並べて配置されるよりも結合係数k13を容易に高めることができる。
【0032】
ここで、上式(7)で示される入力インピーダンスZinは、上式(1),(2),(4)により、負荷抵抗RLを用いた下式(9)に整理される。
【数10】
【0033】
上記したように、3次側コイル312が1次側コイル112の側に配置された場合、1次側コイル112と3次側コイル312の位置関係は変化しないため、結合係数k13は一定である。これに対して、2次側コイル212が1次側コイル112から離れて行くと、3次側コイル312と2次側コイル212の結合係数k32は減少することになるので、上式(9)で示される入力インピーダンスZinが増加することになる。従って、2次側コイル212が離れて行き、送電装置100から受電装置200への給電が行なわれない場合に、入力インピーダンスZinが増加することで、交流電源装置130から1次側共振回路110に印加される電力、具体的には1次側コイル112に流れるコイル電流を減少させることができる。これにより、無駄な電力損失を低減することができ、1次側コイル112で発生する漏洩磁束を低減することができる。
【0034】
なお、図5に示すように、1次側コイル112と3次側コイル312とを、多層のプリント基板PCBで一体形成し、1次側コンデンサ114及び3次側コンデンサ314をプリント基板PCBの面上に実装配置することがより好ましい。このようにすれば、1次側コイル112と3次側コイル312の結合係数k13を高めることができる。
【0035】
ここで、送電装置100から受電装置200への交流電力の伝送効率ηは、1次側共振回路110、2次側共振回路210及び3次側共振回路310のそれぞれにおける回路方程式から、下式(10)となる。
【数11】
【0036】
そして、上式(10)で示される伝送効率ηは、2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2が上式(4)に従った場合に最大となる。この場合の最適負荷RLoptは、下式(11)となる。
【数12】
【0037】
上式(10)に上式(11)を代入し、knm(nm=12,13,32)及びQi(=ω0・Li/ri)(i=1,2,3)を用いて整理すると、最大効率ηmaxは、下式(12)で表される。なお、riはi次側コイルの巻線抵抗である。
【数13】
【0038】
上式(12)から、1次側コイル112と3次側コイル312の結合係数k13あるいは3次側コイル312と2次側コイル212の結合係数k32を高くすれば伝送効率を向上可能であることがわかる。以上のことから、上記したように、1次側コイル112と3次側コイル312とを、多層のプリント基板PCBで一体形成することにより、1次側コイル112と3次側コイル312の結合係数k13を高めることが好ましい。このようにすれば、伝送効率の向上を図ることができる。また、1次側コンデンサ114及び3次側コンデンサ314も同一プリント基板上に実装配置することで、配線による寄生のインダクタンス成分やキャパシタンス成分、抵抗成分を低減することができ、共振周波数のずれを抑制することができる。
【0039】
なお、上述したように、2次側コイル212と3次側コイル312とをプリント基板で一体形成することも可能であるが、上記したように、受電装置200が存在しない場合に、入力インピーダンスZinを増加させるためには、1次側コイル112と3次側コイル312をプリント基板で一体形成する方が好ましい。
【0040】
なお、図5の例では、2層のプリント基板の一方の面に1次側コイル112を形成し、他方の面に3次側コイル312を形成し構成を例に説明したが、3層以上の多層のプリント基板を用いて1次側コイル112と3次側コイル312を一体形成する構成としてもよい。
【0041】
C.第3実施形態:
図1に示した第1実施形態の構成では、1次側共振回路110に対して3次側共振回路310が独立した回路となっている。これに対して、図6に示すように、第3実施形態の構成では、3次側共振回路310Bの3次側コイル312が、1次側共振回路110Bの1次側コイル112に直列に接続され、3次側共振回路310Bの3次側コンデンサ314が3次側コイル312に並列に接続された構成とすることも可能である。
【0042】
1次側共振回路110Bにおいても、1次側コイル112の自己インダクタンスをL1とした場合に、1次側コンデンサ114のキャパシタンスは、1次側コンデンサ114と1次側コイル112とが動作周波数f0の角周波数ω0で共振するように、上式(1)に従ったキャパシタンスC1に設定されればよい。これは、第1実施形態の1次側共振回路110に対して説明したのと同様の理由による。
【0043】
また、3次側共振回路310Bにおいても、3次側コイル312の自己インダクタンスをL3とした場合に、3次側コンデンサ314のキャパシタンスは、3次側コンデンサ314と3次側コイル312とが角周波数ω0で共振するように、上式(2)に従ったキャパシタンスC3に設定されればよい。これも、第1実施形態の3次側共振回路310に対して説明したのと同様の理由による。
【0044】
本実施形態の2次側共振回路210では、第1実施形態と同様に、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、2次側コイル212の自己インダクタンスをL2とした場合に、上式(3)に従ったキャパシタンスC2rよりも大きな値に設定されることが好ましい。また、2次側コンデンサ214のキャパシタンスの最も好ましい設定は、以下で説明するように、上式(4)に従ったキャパシタンスC2の設定ではなく、下式(5)に従ったキャパシタンスC2の設定となる。
【数14】
【0045】
上式(5)は、以下で説明するように導出される。交流電源装置130から1次側共振回路110B及び3次側共振回路310Bを見た入力インピーダンスZinは、1次側共振回路110B、2次側共振回路210、及び3次側共振回路310Bのそれぞれにおける回路方程式、並びに、上式(1)及び上式(2)から、下式(13)となる。
【数15】
なお、上式(13)も、上式(7)と同様の理由から、抵抗成分が省略されて示されている。
【0046】
交流電源装置130から1次側共振回路110Bに印加する交流電力を高効率で2次側共振回路210に供給するためには、上式(13)において、虚数成分を小さくして、交流電力の力率を高くすることが求められ、理想的には、虚数成分を0とすることが好ましい。
【0047】
そこで、上式(13)の第1項~第4項の虚数成分を0とすることにより、上式(5)が求められる。
【0048】
2次側コンデンサ214のキャパシタンスを、上式(5)に従って設定した実施形態の場合と、上式(3)に従って設定した比較例の場合について、負荷抵抗RLと力率の関係をシミュレーションしたところ、図7に示す結果が得られた。なお、1次側コンデンサ114のキャパシタンスC1及び3次側コンデンサ314のキャパシタンスC3は、上式(1),(2)に従って設定されている。比較例の設定の場合、第1実施形態の場合(図2参照)の比較例に比べれば高くなっているが、交流電力の無効成分の影響により力率は1より小さく、特に、負荷抵抗RLが小さいほど、すなわち、負荷が大きいほど、力率は小さくなっている。これに対して、本実施形態の設定の場合には、負荷抵抗RLの大きさによらずに力率は1で一定とすることができ、最も高効率な交流電力の伝送が可能であることを確認した。
【0049】
また、上式(5)に従って設定されるキャパシタンスC2からの誤差[%]と力率との関係をシミュレーションしたところ、図8Aに示す結果が得られた。図8Aからわかるように、2次側コンデンサ214のキャパシタンスは、上式(5)に従って設定されたキャパシタンスC2でなくても、交流電力の無効成分を抑制して力率の低下を抑制できることを確認した。例えば、-25%から+45%の誤差の範囲内の値であれば、力率0.6以上とすることができ、-15%から+25%の誤差の範囲内の値であれば、力率0.8以上とすることができる。ここで、上記数値は、小数点第二位を四捨五入した値で表されている。なお、マイナス側の誤差に比べプラス側の誤差の方が、力率の低下率がなだらかであるので、0%から+25%の誤差の範囲内の値とするほうが好ましい。
【0050】
なお、本実施形態においても、1次側コイル112と3次側コイル312の配置には、第2実施形態で説明した配置が適用可能である。
【0051】
以上説明したように、本実施形態においても、送電装置100から受電装置200への給電時において、交流電源装置130から1次側共振回路110に印加される交流電力の力率の低下を抑制することができ、高効率な給電が可能である。
【0052】
また、図1で示した1次側共振回路110に対して3次側共振回路310が独立した回路構成(以下、単に「独立型回路」とも呼ぶ)と、図6に示す本実施形態における3次側コイル312が1次側コイル112に接続される回路構成(以下、単に「接続型回路」とも呼ぶ)とのそれぞれにおいて、キャパシタンスC3と、1次側コイル112に流れるコイル電流との関係をシミュレーションしたところ、図8Bに示す結果が得られた。図8Bに示す「共振点」とは、上記式(2)に従って設定されたキャパシタンスC3である。図8Bから分かるように、キャパシタンスC3が共振点からずれると、1次側コイル112にはコイル電流が流れる。キャパシタンスC3の共振点からのずれは、例えば、3次側コンデンサ314の製造誤差等に起因して発生することがある。キャパシタンスC3のずれ量が大きくなると、1次側コイル112に流れるコイル電流も大きくなる。
【0053】
上述したように、2次側コイル212が1次側コイル112から離れると、上式(9)で示される入力インピーダンスZinを増加させることにより、1次側コイル112に流れるコイル電流を減少させている。1次側コイル112に流れるコイル電流が所定値以下となることを検出することにより、2次側コイル212の不存在を検出できる。しかしながら、図8Bに示すように、キャパシタンスC3が共振点からずれてしまうと、1次側コイル112に大きなコイル電流が流れ得るため、2次側コイル212の存在・不存在の検出精度が低下するおそれがある。
【0054】
図8Bに示すシミュレーション結果によれば、本実施形態における接続型回路の方が、キャパシタンスC3が共振点からずれる場合に1次側コイル112に流れるコイル電流を、図1に示す独立型回路に比べて小さくすることができる。したがって、本実施形態によれば、3次側コンデンサ314の製造誤差などによりキャパシタンスC3が共振点からずれた場合であっても、2次側コイル212の存在・不存在の検出精度が低下することを図1に示す独立型回路よりも抑制しやすくできる。
【0055】
D.第4実施形態:
第2実施形態で説明した入力インピーダンスZinの変化によるコイル電流の減少を検出すれば、給電の対象となる受電装置200の有無を送電装置100側で検出することができる。
【0056】
図9の非接触給電システムは、図1の構成に加えて、コイル電流の減少を検出することで受電装置200の有無を検出可能な受電側検出回路150を備えている。受電側検出回路150は、電流検出回路152と、整流回路154と、ローパスフィルタ(LPF)156と、コンパレータ158と、を備えている。
【0057】
電流検出回路152は、例えば、交流電源装置130と1次側共振回路110とを接続する一方の配線に流れる交流のコイル電流(I)を検出し、コイル電流に対応する交流の検出電圧(V)に変換して出力する。電流検出回路152は、他方の配線に流れるコイル電流を検出するようにしてもよい。整流回路154は、交流の検出電圧を整流する。ローパスフィルタ156は、整流された検出電圧に含まれるノイズ等の高周波成分を除去する。コンパレータ158は、給電の対象となる受電装置200が存在し、検出電圧が閾値電圧Vthよりも大きい、すなわち、コイル電流が大きい場合には、検出信号Sdとして、「受電側有り」を示すHレベル信号を出力する。一方、コンパレータ158は、給電の対象となる受電装置200が存在しなくなり、検出電圧が閾値電圧Vthよりも小さくなった、すなわち、コイル電流が減少した場合には、検出信号Sdとして、「受電側無し」を示すLレベル信号を出力する。これにより、検出信号SdがHレベルの場合には、給電の対象となる受電装置200が存在することを検出することができ、検出信号SdがLレベルの場合には、給電の対象となる受電装置200が存在しないことを検出することができる。なお、コンパレータ158の入力を入れ替えて、検出信号Sdを、「受電側有り」と「受電側無し」とで反対のレベル信号としてもよい。
【0058】
また、図示及び具体的な説明は省略するが、検出信号Sdが「受電側有り」を示すレベル信号となった場合、給電の対象となる受電装置200が存在するので、交流電源装置130が動作するように制御して、交流電源装置130から1次側共振回路110に交流電力を印加する。これにより、送電装置100から受電装置200に高効率で給電を行なうことができる。また、検出信号Sdが「受電側無し」を示すレベル信号となった場合、給電の対象となる受電装置200が存在せず非給電の状態となるので、交流電源装置130が動作しないように制御して、交流電源装置130から1次側共振回路110への交流電力の印加が行われないようにする。これにより、交流電源装置130から1次側共振回路110への無駄な電力の供給をさらに低減することができ、1次側コイル112で発生する漏洩磁束をさらに低減することができる。
【0059】
なお、上記説明では、受電側検出回路150として、コイル電流の減少を検出する構成を例に説明したが、コイル電流の減少によって1次側コイル112によって発生する磁束の低下を検出する構成も可能である。この場合、例えば、電流検出回路152に代えて、磁気センサ等を用いた磁束検出回路やコイル等を用いた誘導電流検出回路により、1次側コイル112の磁束の低下を検出するようにすればよい。
【0060】
以上説明した第4実施形態では、第1実施形態の構成(図1参照)に本実施形態を適用した構成を例として説明したが、第3実施形態(図6参照)の構成にも、同様に、本実施形態を適用可能である。
【0061】
E.第5実施形態:
第2実施形態で説明したように、第1実施形態の構成(図1参照)において3次側コイル312が1次側コイル112の側に配置された場合、2次側コイル212が存在しなくなると、上式(9)で示される入力インピーダンスZinが増加するので、1次側コイル112に流れるコイル電流は減少する。しかしながら、このコイル電流は、待機電流として1次側コイル112に継続して流れることになる。この待機電流I1sは、下式(14)で表される。
【数16】
【0062】
待機電流I1sは、上式(14)に含まれる1次側共振回路110及び3次側共振回路の回路定数の値によっては数アンペア程度となる場合があるため、無駄な電力損失となり、1次側コイル112による漏洩磁束の発生を招く。
【0063】
また、3次側コイル312にも、下式(15)で表される待機電流I3sが流れたままとなる。待機電流I3sも、待機電流I1sと同様に、3次側コイル312による漏洩磁束の発生を招く。
【数17】
【0064】
そこで、例えば、以下で説明するように、1次側コイル112を流れるコイル電流の減少を検出した場合、すなわち、非給電の状態となった場合に、1次側コンデンサ114及び3次側コンデンサ314のキャパシタンスを、上式(1)及び上式(2)で設定される値よりも小さくすることが考えられる。このようにすれば、入力インピーダンスZinを大きくして、上式(14)で表される待機電流I1s及び上式(15)で表される待機電流I3sを小さくすることができる。
【0065】
図10の非接触給電システムは、図1の1次側共振回路110及び3次側共振回路310に代えて1次側共振回路110C及び3次側共振回路310Cを備えるとともに、受電側検出回路150Cを備えている。
【0066】
1次側共振回路110Cは、1次側コンデンサ114(図1参照)に代えて、キャパシタンスの大きさが可変可能な可変コンデンサを1次側コンデンサ114Cとして用いている。この1次側コンデンサ114Cは、第1コンデンサ114lと、第1コンデンサ114lに直列に接続された双方向スイッチSW1と、第1コンデンサ114l及び双方向スイッチSW1に並列に配置された第2コンデンサ114sと、を有するユニットである。第2コンデンサ114sのキャパシタンスCs1は、第1コンデンサ114lのキャパシタンスCl1よりも小さい。第1コンデンサ114lは、双方向スイッチSW1がオンの場合に第2コンデンサ114sに並列に接続され、双方向スイッチSW1がオフの場合には解放される。従って、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cは、双方向スイッチSW1がオフの場合には、第2コンデンサ114sのキャパシタンスCs1となり、双方向スイッチSW1がオンの場合には、第1コンデンサ114lのキャパシタンスCl1と第2コンデンサ114sのキャパシタンスCs1の和[Cl1+Cs1]となる。
【0067】
3次側共振回路310Cも、3次側コンデンサ314(図1参照)に代えて、キャパシタンスの大きさが可変可能な可変コンデンサを3次側コンデンサ314Cとして用いている。この3次側コンデンサ314Cも、第1コンデンサ314lと、第1コンデンサ314lに直列に接続された双方向スイッチSW3と、第1コンデンサ314l及び双方向スイッチSW3に並列に配置された第2コンデンサ314sと、を有するユニットである。第2コンデンサ314sのキャパシタンスCs3は、第1コンデンサ314lのキャパシタンスCl3よりも小さい。第1コンデンサ314lは、双方向スイッチSW3がオンの場合に第2コンデンサ314sに並列に接続され、双方向スイッチSW3がオフの場合には解放される。従って、3次側コンデンサ314CのキャパシタンスC3cは、双方向スイッチSW3がオフの場合には、第2コンデンサ314sのキャパシタンスCs3となり、双方向スイッチSW3がオンの場合には、第1コンデンサ314lのキャパシタンスCl3と第2コンデンサ314sのキャパシタンスCs3の和[Cl3+Cs3]となる。
【0068】
なお、1次側コンデンサ114Cの第2コンデンサ114sのキャパシタンスCs1、及び、3次側コンデンサ314Cの第2コンデンサ314sのキャパシタンスCs3は、上式(14)の待機電流I1s及び上式(15)の待機電流I3sが所望の値となるような小さな値に設定されればよい。また、1次側コンデンサ114Cの第1コンデンサ114lのキャパシタンスCl1は、[Cl1+Cs1]が上式(1)に従ったキャパシタンスC1に等しくなるように設定さればよい。また、3次側コンデンサ314Cの第1コンデンサ314lのキャパシタンスCl3は、[Cl3+Cs3]が上式(2)に従ったキャパシタンスC3に等しくなるように設定されればよい。
【0069】
受電側検出回路150Cは、受電側検出回路150(図5参照)のコンパレータ158が出力する検出信号Sdを遅延させる遅延回路159を備えている。1次側コンデンサ114Cの双方向スイッチSW1には、コンパレータ158が出力する検出信号Sdが切替信号として入力される。3次側コンデンサ314Cの双方向スイッチSW3には、遅延回路159で遅延された検出信号Sdが切替信号として入力される。
【0070】
給電時には、検出信号SdがHレベルとなって双方向スイッチSW1,SW3はオンとなり、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cが上式(1)に従ったキャパシタンスC1に設定され、3次側コンデンサ314CのキャパシタンスC3cも上式(2)に従ったキャパシタンスC3に設定される。これにより、非接触給電システムは、第1実施形態と同様に動作可能となる。
【0071】
一方非給電時には、検出信号SdがLレベルとなって双方向スイッチSW1,SW3がオフとなり、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cがキャパシタンスC1よりも小さなキャパシタンスCs1に設定され、3次側コンデンサ314CのキャパシタンスC3cもキャパシタンスC3よりも小さなキャパシタンスCs3に設定される。これにより、上式(14)の待機電流I1及び上式(15)の待機電流I3をそれぞれ小さくすることができ、大きな待機電流I1sが流れることによる無駄な電力損失を抑制することができる。また、第4実施形態で説明したような交流電源装置130の動作の制御を省略することも可能である。また、待機電流I1s,I3sによる漏洩磁束の発生を抑制することもできる。
【0072】
以上の説明からわかるように、受電側検出回路150Cは1次側コンデンサ114C及び3次側コンデンサ314Cのキャパシタンスを変化させる「キャパシタンス制御部」に相当する。
【0073】
なお、給電時の1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cは、上式(1)に示したように、1次側コイル112の自己インダクタンスに対して共振するように設定すればよいので、比較的小さな値に設定することができる。このため、1次側コンデンサ114Cに用いられる第1コンデンサ114lのキャパシタンスCl1及び第2コンデンサ114sのキャパシタンスCs1は、比較的小さな値に設定することができ、コンデンサの大型化を抑制することができる。3次側コンデンサ314のキャパシタンスも同様である。
【0074】
ここで、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1c、2次側コンデンサ214のキャパシタンスC2、3次側コンデンサ314CのキャパシタンスC3cは、従来例として知られる以下の式(Rf1)~(Rf3)を用いてそれぞれ算出することもできる。
【0075】
【数18】
【0076】
【数19】
【0077】
【数20】
【0078】
従来例における上記式(Rf1)によれば、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cを導出するためには、分母において結合係数を用いた(1-k13・k12/k32)を乗じることになり、上記式(1)を用いて算出する場合よりもキャパシタンスC1cの値が大きくなり得る。ここで、送電装置100から受電装置200への給電が行なわれない場合において、1次側コイル112に流れるコイル電流を所定の電流値まで減少させるために必要なコンデンサの容量の目標値は一定である。そのため、従来例のように上記式(Rf1)を用いることによりキャパシタンスC1cが大きく設定される場合よりも、上記式(1)を用いてキャパシタンスC1cが小さく設定される場合の方が、給電停止時に同じ電流値まで抑圧するために必要なキャパシタンスC1cの可変幅を小さくすることができる。したがって、本実施形態によれば、上記式(1)を用いてキャパシタンスC1cを設定することにより、可変コンデンサとしての1次側コンデンサ11Cを小型化することができる。
【0079】
なお、検出信号Sdを遅延させて、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cを変化させた後、3次側コンデンサ314CのキャパシタンスC3cを変化させているのは、以下の理由による。まず、検出信号SdがLレベルとなった時点では、1次側コイル112を流れるコイル電流は減少しているので、この時点で1次側コンデンサ114Cの双方向スイッチSW1の切替を行なえば、この切替による大きなサージ電圧の発生を抑制できるからである。また、1次側コンデンサ114CのキャパシタンスC1cの減少に従って、3次側コイル312を流れるコイル電流が減少するので、この時点で3次側コンデンサ314Cの双方向スイッチSW3の切替を行なえば、この切替による大きなサージ電圧の発生を抑制できるからである。この切替によるサージ電圧の発生を許容するのであれば、遅延回路159は省略可能である。
【0080】
図11の非接触給電システムは、図10の1次側共振回路110C及び3次側共振回路310Cに代えて1次側共振回路110D及び3次側共振回路310Dを備えるとともに、受電側検出回路150Cに代えて受電側検出回路150Dを備えている。
【0081】
1次側共振回路110Dは、与えられる制御入力、本例では、制御電圧Vcに応じてキャパシタンスC1dが変化する可変コンデンサの素子を1次側コンデンサ114Dとして用いている。3次側共振回路310Dも同様に、制御電圧Vcに応じてキャパシタンスC3dが変化する一般的な可変コンデンサの素子を3次側コンデンサ314Dとして用いている。
【0082】
受電側検出回路150Dは、用いられた1次側コンデンサ114D及び3次側コンデンサ314Dに対応させるため、受電側検出回路150Cのコンパレータ158を電圧変換回路158Dとしている。電圧変換回路158Dは、基準電圧Vrcに対する検出電圧の差分の大きさに応じた制御電圧Vcを出力する差動増幅回路である。また、遅延回路159を、電圧が変化する制御電圧Vcを遅可能な遅延回路159Dとしている。
【0083】
ここで、1次側コンデンサ114Dとして利用する可変コンデンサ及び3次側コンデンサ314Dとして用いる可変コンデンサは、制御電圧Vcが大きいほど容量が小さくなる特性を有しているとする。この場合、電圧変換回路158Dから出力される制御電圧Vcは、給電時においてC1d=C1及びC3d=C3に対応する電圧Vlとなり、非給電時においてC1d=Cs1(<C1)及びC3d=Cs3(<C3)に対応する電圧Vh(>Vl)となるように制御される必要がある。このため、電圧変換回路158Dは、上記の制御電圧Vcの制御に合わせて、電流検出回路152の検出電圧が大きくなるほど、出力する制御電圧Vcが小さくなるように、差動増幅回路を用いて構成された電圧変換回路158Dの負入力に検出電圧を入力する構成としている。なお、可変コンデンサが逆の特性を有している場合には、電圧変換回路158Dの差動増幅回路の正入力に検出電圧を入力する構成とすればよい。
【0084】
図11の非接触給電システムにおいても、図10の非接触給電システムと同様に、給電時において第1実施形態と同様に動作可能となる。また、非給電時において、大きな待機電流I1sが流れることによる無駄な電力損失を抑制することができる。また、第4実施形態で説明したような交流電源装置130の動作の制御を省略することも可能である。また、待機電流I1s,I3sによる漏洩磁束の発生を抑制することもできる。
【0085】
なお、給電時の1次側コンデンサ114DのキャパシタンスC1dも、1次側コンデンサ114cのキャパシタンスC1cと同様に、比較的小さな値に設定することができる。このため、給電時と非給電時のキャパシタンスの可変幅を小さくすることができるので、1次側コンデンサ114Dとして制御入力に応じてキャパシタンスが変化する可変コンデンサの素子を容易に利用することが可能である。
【0086】
以上の説明からわかるように、受電側検出回路150Dは1次側コンデンサ114D及び3次側コンデンサ314Dのキャパシタンスを変化させる「キャパシタンス制御部」に相当する。
【0087】
なお、図10及び図11では、1次側共振回路110C,110Dの1次側コンデンサ114C,114D及び3次側共振回路310C,310Dの3次側コンデンサ314C,314Dを可変コンデンサとする構成を例に説明した。しかしながら、3次側コンデンサについては可変コンデンサではなく、キャパシタンスが一定のコンデンサとし、1次側コンデンサのみを可変コンデンサとするようにしてもよい。この場合、待機電流I3sによる漏洩磁束の抑制は不可となるが、大きな待機電流I1sが流れることによる無駄な電力損失の抑制及び漏洩磁束の発生を抑制することは可能である。
【0088】
以上説明した第5実施形態では、第1実施形態の構成(図1参照)に本実施形態を適用した構成を例として説明したが、第3実施形態(図6参照)の構成にも、同様に本実施形態を適用可能である。
【0089】
F.第6実施形態:
非接触給電システムの各回路定数の設定は、通常、1次側コイル112及び2次側コイル212(図1図6参照)が正対した状態、すなわち、1次側コイル112の中心軸と2次側コイル212の中心軸とが一致するように対向した状態を設計点として、行なわれている。これに対して、第1,第3実施形態で説明した交流電力の高力率化のための2次側コンデンサのキャパシタンスの設定は、例えば、以下で説明する設計点で行なうことが好ましい。
【0090】
まず、図12に示すように、2次側コイル212が1次側コイル112に接近して離反するように移動する場合を前提とする。そして、その移動方向において、1次側コイル112の中心軸CX1の位置(中心位置Pc)とコイル端-Pe,+Peとの間の1/2の位置-Ph,+Phからコイル端-Pe,+Peまでの間の範囲Rdのいずれかの位置に、2次側コイル212の中心軸CX2の位置(中心位置)が存在する状態を設計点とすることが考えられる。以下、この設計点を「設計点1」とも呼ぶ。
【0091】
また、同様に、図13に示すように、2次側コイル212の1次側コイル112に対する移動方向において、1次側コイル112の中心位置Pcとコイル端-Pe,+Peとの間の1/2の位置-Ph,+Phから中心位置Pcまでの間の範囲Rdのいずれかの位置に、2次側コイル212の中心位置が存在する状態を設計点とすることが考えられる。以下、この設計点を「設計点2」とも呼ぶ。
【0092】
図14には、設計点2に従った設定例2における力率と、設計点1に従った設定例1における力率が比較して示されている。設定例1は、設計点1の一例として1次側コイル112のコイル端-Peと1/2位置-Phの中間位置を2次側コイル212の中心位置とした場合を例としており、設定例2は、設計点2の一例として1次側コイル112の中心位置Pcを2次側コイル212の中心位置とした場合を例としている。
【0093】
設定例2では、2次側コイル212の中心位置が設計点すなわち1次側コイル112の中心位置Pcからずれるに従って力率が低下する。これに対して、設定例1では、1次側コイル112の中心位置Pc付近では力率は少し低下するが、広範囲で高い力率を確保することができる。従って、1次側コイル112に対して2次側コイル212の位置が正対している状態だけでなく広範囲で高い力率を確保するには、設計点1の条件で設計することが好ましい。
【0094】
一方、図示は省略するが、1次側コイル112が移動方向(図12,図13参照)に沿って複数配列されている場合には、以下で説明するように、設計点2の条件で設計する方が好ましい。設計点1の条件で設計した場合、図15に示すように、配列されたコイル1とコイル2の間のコイル端側の領域において、隣接する両方から給電される電力が重畳されることになって、電力の脈動が大きくなってしまう。これに対して、設計点2の条件で設計した場合には、図16に示すように、隣接する両方から給電される電力の重畳を小さくすることができるので、電力の脈動を小さくすることができる。
【0095】
G.第7実施形態:
上記実施形態の非接触給電システムでは、1組の1次側共振回路及び3次側共振回路を備える構成を例に説明したが、1次側共振回路及び3次側共振回路を1組の送電部として、複数の送電部を有する構成としてもよい。
【0096】
例えば、図17に示すように、図9に示した1次側共振回路110及び3次側共振回路310と受電側検出回路150とを複数備えた非接触給電システムを、車両用非接触給電システムとして適用可能である。図17に示す車両用非接触給電システムは、車両走行路RSの走路に沿って敷設された送電装置100Eから車両VHに搭載された受電装置200(図9参照)に対して電力を供給することが可能な給電システムである。車両VHは、例えば、電気自動車やハイブリッド車等の電力を動力として利用する車両として構成される。図17において、x軸方向は車両走行路RSの車線に沿った車両VHの進行方向を示し、y軸方向は車両走行路RSの幅方向を示し、z軸方向は垂直上方向を示す。後述する他の図におけるx,y,z軸の方向も、図17と同じ方向を示している。
【0097】
送電装置100Eは、図9に示した1次側共振回路110及び3次側共振回路310と受電側検出回路150とを1組の送電部として、複数の送電部を有している。また、送電装置100Eは、交流電源装置130Eを有している。交流電源装置130Eは、電源回路132と、各1次側共振回路110に電力を印加するための複数の送電出力回路134とを、を有している。
【0098】
各1次側共振回路110の1次側コイル112(図9参照)は、車両走行路RSの走路に沿って順に敷設されている。また、各3次側共振回路310の3次側コイル312(図9参照)は、対応する1次側コイル112に積層配置されている(図4図5参照)。
【0099】
電源回路132は、外部電源の交流電力を直流電力に変換する装置であり、送電出力回路134は、電源回路132から供給される直流電力を動作周波数の交流電力に変換するインバータ等を含む装置である。各送電出力回路134は、対応する受電側検出回路150によって動作が制御される。
【0100】
車両VHに搭載された受電装置200は、2次側共振回路210と、受電回路220と、バッテリ230と、を備えている(図9参照)。2次側共振回路210の2次側コイル212は、車両VHの底部に、1次側共振回路110の1次側コイル112(図4参照)に対向するように設置されている。2次側共振回路210に誘導された電力は、受電回路220を介してバッテリ230に充電され、不図示のモータ等を駆動するために利用される。
【0101】
受電側検出回路150は、第4実施形態(図9参照)で説明したように、対応する1次側コイル112に対して給電の対象となる2次側コイル212の有無、すなわち、受電装置200が搭載された車両VHの有無を検出する。そして、受電側検出回路150は、車両VHの存在を検出した場合には、対応する送電出力回路134を動作させて、対応する1次側共振回路110に電力を印加させ、車両VHの受電装置200への給電を実行する。また、受電側検出回路150は、車両VHの存在を検出しなかった場合には、対応する送電出力回路134の動作を停止させる。
【0102】
この車両用非接触給電システムにおいても、上記実施形態の非接触給電システムと同様の効果を得ることができる。
【0103】
なお、無断な電力損失や漏洩磁束について考慮しなくてよい場合には、受電側検出回路150を省略して、各送電出力回路134を常時動作状態とする構成としてもよい。また、第2実施形態で説明したように、2次側コイル212が存在しない場合に1次側共振回路110の入力インピーダンスZinが増加し、1次側共振回路110に流れる電流の減少が大きくなる構成の場合にも、受電側検出回路150を省略する構成としてもよい。この場合、複数の送電出力回路134を省略して1つの送電出力回路134を備える構成とすることができる。
【0104】
また、図18に示すように、図10に示した1次側共振回路110C及び3次側共振回路310Cと受電側検出回路150Cとを複数備えた非接触給電システムを、車両用非接触給電システムとして適用可能である。図18に示す車両用非接触給電システムは、車両走行路RSの走路に沿って敷設された送電装置100Fから車両VHに搭載された受電装置200(図10参照)に対して電力を供給することが可能な給電システムである。
【0105】
送電装置100Fは、図10に示した1次側共振回路110Cと3次側共振回路310Cと受電側検出回路150Cとを1組の送電部として、複数の送電部を有している。また、送電装置100Fは、交流電源装置130Fを有している。交流電源装置130Fは、交流電源装置130E(図17参照)のように、複数の送電出力回路134を有するのではなく、1つの送電出力回路134を有している。
【0106】
各1次側共振回路110Cの1次側コイル112(図10参照)は、図17の1次側共振回路110と同様に、車両走行路RSの走路に沿って順に敷設されている。また、各3次側共振回路310Cの3次側コイル312(図10参照)は、図17の3次側共振回路310と同様に、対応する1次側コイル112に積層配置されている(図4図5参照)。
【0107】
車両VHに搭載された受電装置200は、図17の車両用非接触給電システムと同様である。
【0108】
受電側検出回路150Cは、第5実施形態(図10参照)で説明したように、対応する1次側コイル112に対して給電の対象となる2次側コイル212の有無、すなわち、受電装置200が搭載された車両VHの有無を検出する。そして、受電側検出回路150Cは、車両VHの存在を検出した場合には、対応する1次側共振回路110Cの1次側コンデンサ114Cを給電時用のキャパシタンスに変化させる。これにより、給電時用のキャパシタンスとなった1次側コンデンサ114Cを有する1次側共振回路110Cに対して、送電出力回路134から電力が印加され、車両VHの受電装置200への給電が実行される。また、受電側検出回路150は、車両VHの存在を検出しなかった場合には、対応する1次側共振回路110Cの1次側コンデンサ114Cを非給電時用のキャパシタンスに変化させる。これにより、非給電時用のキャパシタンスとなった1次側コンデンサ114Cを有する1次側共振回路110Cの入力インピーダンスZinが大きくなって、対応する1次側共振回路110Cに対して電力が印加されなくなる。すなわち、給電時用に設定された1次側コンデンサ114Cを有する1次側共振回路110Cにのみ電流が供給され、非給電時用に設定された1次側コンデンサ114Cを有する1次側共振回路110Cには電流が供給されない。これにより、無駄な電力損失を抑制することができ、複数の送電出力回路134を省略して、1つの送電出力回路134で複数の1次側共振回路110Cを駆動することが可能である。
【0109】
この車両用非接触給電システムにおいても、上記実施形態の非接触給電システムと同様の効果を得ることができる。
【0110】
また、図示および説明は省略するが、図11に示した1次側共振回路110D及び3次側共振回路310Dと受電側検出回路150Dとを複数備えた非接触給電システムを、車両用非接触給電システムとして適用可能である。
【0111】
以上説明した車両用非接触給電システム(図17,18参照)は、第1実施形態の構成(図1参照)を利用した非接触給電システムを例として説明したが、第3実施形態(図6参照)の構成を利用した非接触給電システムを適用することも可能である。
【0112】
以上説明した車両用非接触給電システムのように、1次側共振回路及び3次側共振回路を1組の送電部として、複数の送電部を有する非接触給電システムにおいても、上記実施形態の非接触給電システムと同様の効果を得ることができる。
【0113】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0114】
100,100E,100F…送電装置、110,110B,110C,110D…1次側共振回路、112…1次側コイル、114,114C,114D…1次側コイル、130,130E,130F…交流電源装置、132…電源回路、134…送電出力回路、150,150C,150D…受電側検出回路、152…電流検出回路、154…整流回路、156…ローパスフィルタ、158…コンパレータ、158D…電圧変換回路、200…受電装置、210…2次側共振回路、212…2次側コイル、214…2次側コンデンサ、220…受電回路、230…バッテリ、310,310B,310C,310D…3次側共振回路、312…3次側コイル、314,314C,314D…3次側コンデンサ、114l…第1コンデンサ、114s…第2コンデンサ、314l…第1コンデンサ、314s…第2コンデンサ、RS…車両走行路、VH…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18