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特許7484965レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法
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  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図1A
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図1B
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図2
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図3
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図4
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図5
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図6
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図7A
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図7B
  • 特許-レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法 図8
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】レーザ加工装置、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/08 20140101AFI20240509BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20240509BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20240509BHJP
【FI】
B23K26/08 Z
B23K26/064 K
B23K26/342
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022096538
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2018115672の分割
【原出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2022118112
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2022-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2017071614
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】松尾 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】藤代 裕章
(72)【発明者】
【氏名】小池 悦雄
(72)【発明者】
【氏名】岡戸 博則
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-002359(JP,A)
【文献】特開2003-088987(JP,A)
【文献】特開平10-026692(JP,A)
【文献】特開平09-192862(JP,A)
【文献】特開平09-108869(JP,A)
【文献】特開2014-140850(JP,A)
【文献】特開2000-317666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/08
B23K 26/064
B23K 26/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が射出される射出部を有するヘッドと、
前記ヘッドに取り付けられた光ケーブルと、
前記ヘッドに取り付けられ、ターゲットに向けた溶接材の供給を案内するノズルと、
駆動部を有する移動機構と、
制御部と、
を備え、
前記移動機構は、
少なくとも二次元平面内で曲線的に前記ヘッドが移動可能である第1機構と、
前記第1機構とは別に設けられ、前記ヘッドが回転可能である第2機構と、を有し、
前記第2機構は、出力軸が中空の回転体である中空モータであり、前記回転体と支持体とモータとが一体的に組み合わされた前記中空モータを有し、
前記ヘッドは、前記中空モータの前記回転体に支持され、
前記制御部は、前記少なくとも二次元平面での曲線的な前記ヘッドの移動中に、前記光ケーブルと前記溶接材とが前記中空モータに挿通された状態で、前記ヘッド及び前記ノズルが前記回転体の回転軸周りで回転するように、前記移動機構が制御される、制御モードを有する、
レーザ加工装置。
【請求項2】
前記第1機構は、2次元アクチュエータを有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記第1機構は、3次元アクチュエータを有する、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
傾斜機構が、前記中空モータと前記ヘッドとの間に配されるとともに、前記中空モータに取り付けられ、
前記ヘッドは、前記傾斜機構によって前記回転体の回転軸に対する前記レーザ光のレーザ照射軸の角度が変更可能に構成されている、請求項1から3のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記第2機構は、前記回転体の回転軸に対する前記レーザ光のレーザ照射軸の角度が所定の角度に設定された状態で、前記レーザ照射軸を前記回転体の前記回転軸の周りに回転可能に構成されている、請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
レーザ加工を施す位置に溶接材を供給する溶接フィラー送給機構をさらに備え、
前記ヘッドは、レーザ溶接ヘッドを有する、
請求項1から5のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記レーザ溶接ヘッドの線材であるレーザ伝送用光ファイバケーブルと前記レーザ溶接ヘッドの結合部に、回転カップリングを有する、請求項6に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記レーザ溶接ヘッドのレーザ光の照射方向と前記溶接フィラー送給機構の溶接フィラーの送給方向が、前記レーザ溶接ヘッドの進行方向に対して一定となるよう、前記移動機構を制御する、請求項6又は7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記曲線的な前記ヘッドの移動中に、ターゲットラインの曲線上の加工位置に対して、前記曲線の接線方向における前方位置に前記射出部の先端が位置するように、前記移動機構を制御する、請求項1から8のいずれかに記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
レーザ光が射出される射出部を有するヘッドと、
前記ヘッドに取り付けられた光ケーブルと、
前記ヘッドに取り付けられ、ターゲットに向けた材料の供給を案内するノズルと、
駆動部を有する移動機構と、
制御部と、
を備え、
前記移動機構は、
少なくとも二次元平面内で曲線的に前記ヘッドが移動可能である第1機構と、
回転軸を有する第2機構と、を有し、
前記ヘッドは、前記第2機構に支持され、
前記制御部は、前記少なくとも二次元平面での曲線的な前記ヘッドの移動中に、前記ヘッド及び前記ノズルが前記回転軸周りで回転するように、前記移動機構が制御される、制御モードを有し、
前記制御部は、前記曲線的な前記ヘッドの移動中に、ターゲットラインの曲線上の加工位置に対して、前記曲線の接線方向における前方位置に前記射出部の先端が位置するように、前記移動機構を制御する、
レーザ加工装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のレーザ加工装置を用いる軸受の製造方法。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載のレーザ加工装置を用いる機械の製造方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のレーザ加工装置を用いる車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ溶接装置、レーザ加工装置、レーザ溶接方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、車両の製造方法、軸受、機械、及び車両に関し、特に加工物本体に円環状やS字形状などの任意の形状のレーザ加工を行う技術に関する。
本願は、2017年3月31日に出願された特願2017-071614号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1では、ワークを回転させ、レーザはZ方向(鉛直方向)のみ移動することで、管状(円筒状)ワークにレーザ溶接を行う装置が記載されている。特許文献2では、ワークを回転させ、レーザはX方向(鉛直方向に対し直角の水平方向)のみ移動することで、管状(円筒状)ワークにレーザ溶接を行う装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-001068号公報
【文献】特開2015-226925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の態様の目的は、装置の小型化に適した、比較的大型のワークピースに適した、及び/又は光ケーブルや材料の取り扱いに有利な、レーザ溶接装置、レーザ加工装置、レーザ溶接方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法を提供することにある。本発明の態様の別の目的は、品質の高い製品を製造可能な、レーザ溶接装置、レーザ加工装置、レーザ溶接方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法を提供することにある。本発明の態様のさらに別の目的は、品質の高い軸受、機械、及び車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様におけるレーザ加工装置は、レーザ光が射出される射出部を有するヘッドと、前記ヘッドに取り付けられた光ケーブルと、前記ヘッドに取り付けられ、ターゲットに向けた材料の供給を案内するノズルと、駆動部を有する移動機構と、制御部と、を備える。前記移動機構は、少なくとも二次元平面内で曲線的に前記ヘッドが移動可能である第1機構と、回転軸を有する第2機構であり、前記光ケーブル及び前記材料を伴って前記ヘッドが前記回転軸周りで360°以上回転可能である前記第2機構と、を有する。前記制御部は、前記少なくとも二次元平面での曲線的な前記ヘッドの移動中に前記ヘッドが前記回転軸周りで回転するように、前記移動機構が制御される、姿勢制御モードを有する。
【0006】
本発明の第2態様は、加工物にレーザ溶接を施すレーザ溶接装置であって、前記加工物に対してレーザ光を照射するレーザ溶接ヘッドと、前記レーザ溶接を施す位置に溶接材を供給する溶接フィラー送給機構と、前記レーザ溶接ヘッドと前記溶接フィラー送給機構とを含む溶接ユニットを移動させるとともに、前記レーザ溶接ヘッドと前記溶接フィラー送給機構のそれぞれの線材が挿通可能な挿通部を有する中空移動機構と、を有する。
【0007】
本発明の第3態様は、上記のレーザ溶接装置を用いたレーザ溶接方法であって、前記レーザ溶接ヘッドのレーザ光の照射方向と前記溶接フィラー送給機構の溶接フィラーの送給方向が、前記レーザ溶接ヘッドの進行方向に対して一定となるよう前記中空移動機構と2次元アクチュエータとを同期させて駆動させる。
【0008】
本発明の第4態様は、上記のレーザ溶接装置を用いたレーザ溶接方法であって、前記レーザ溶接ヘッドのレーザ光の照射方向と前記溶接フィラー送給機構の溶接フィラーの送給方向が、前記レーザ溶接ヘッドの進行方向に対して一定となるよう前記中空移動機構と3次元アクチュエータとを同期させて駆動させる。
【0009】
本発明の第5態様における軸受は、内輪、外輪、ころ、ピン及び側板を有し、ピンと側板が溶接された溶接部を有し、前記溶接部をピンの周囲にのみ有する。
【0010】
本発明の第6態様における軸受は、上記の、レーザ加工装置又はレーザ溶接装置を用いて製造されたものである。
【0011】
本発明の第7態様における機械は、上記の、軸受を備えるものである。
【0012】
本発明の第8態様における車両は、上記の、軸受を備えるものである。
【0013】
本発明の第9態様における軸受の製造方法は、上記の、レーザ加工装置又はレーザ溶接装置を用いるものである。
【0014】
本発明の第10態様における機械の製造方法は、上記の、レーザ加工装置又はレーザ溶接装置を用いるものである。
【0015】
本発明の第11態様における車両の製造方法は、上記の、レーザ加工装置又はレーザ溶接装置を用いるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の態様によれば、装置の小型化に適した、比較的大型の加工物に適した、及び/又は光ケーブルや材料の取り扱いに有利な、レーザ溶接装置、レーザ加工装置、レーザ溶接方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法を提供することができる。また、本発明の態様によれば、品質の高い製品を製造可能な、レーザ溶接装置、レーザ加工装置、レーザ溶接方法、軸受の製造方法、機械の製造方法、及び車両の製造方法を提供することができる。また、本発明の態様によれば、品質の高い軸受、機械、及び車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】本発明の実施形態に係るレーザ加工装置(レーザ溶接装置)を示す模式図である。
図1B】レーザ溶接装置のXYZステージの略説明図である。
図2】レーザ加工時のヘッドの動きを示す図である。
図3】姿勢制御モードにおける、レーザ加工時のヘッドの動きを示す図である。
図4】姿勢制御モードにおける、レーザ加工時のヘッドの動きを示す図である。
図5】空洞ユニットの複数の例を示す模式図である。
図6】加工対象の一例として、超大形ころ軸受を示す模式図である。
図7A】MAG溶接における溶接部分を示す模式図である。
図7B】レーザ溶接における溶接部分を示す模式図である。
図8】従来のレーザ溶接装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のレーザ加工装置(レーザ溶接装置)の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は本実施形態に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内において適宜設計変更可能である。
【0019】
本明細書において、レーザ加工装置は、レーザ光と加工用の材料とを用いてターゲットに対して所定の処理を行う装置である。一例において、レーザ加工装置は、ターゲット上の加工位置に、材料としての溶加材(線材、溶接材、フィラー材)とレーザ光のエネルギーとを供給して溶接処理を行うレーザ溶接装置である。レーザ溶接装置において、エネルギー源としてのレーザ光がレーザヘッドの射出部からワークピースに向けて照射される。ワークピースの一部及び/又は溶加材が溶融され、その後、溶融した材料が凝固する。レーザ溶接装置は、レーザ溶接と他の溶接とのハイブリッド型溶接装置、例えば、レーザ溶接とアーク溶接とを組み合わせたレーザ・アークハイブリッド溶接用の装置を含むことができる。他の例において、レーザ加工装置は、三次元プリンティングシステムなど、レーザ光と材料とを用いて溶接処理以外の加工を行う装置に適用できる。
【0020】
一実施形態において、レーザ溶接装置(レーザ加工装置)1は、図1Aに示すように、ワークピース10に対してレーザ光(レーザビーム)51を照射するレーザ溶接ヘッド(レーザヘッド、ヘッド)5と、レーザ溶接を施す位置に溶接材を供給する溶接フィラー送給機構(フィーダ)6とを備えている。ヘッド5は、レーザ光51が射出される射出部(射出面、先端エレメント)5aを有する。溶接フィラー送供機構6の少なくとも一部がレーザ溶接ヘッド5に取り付けられている。一例において、ヘッド5には、光ケーブル(レーザ伝送用光ファイバケーブル)41と、ノズル(材料ガイド)61とが取り付けられている。ノズル61は、ターゲット(ワークピース)10に向けた加工用の材料(フィラー材)62の供給を案内する。溶接フィラー送供機構6のフィーダ機能によってフィラー62がフィードされ、ノズル61の先端(ノズル口)からフィラー62が押し出される。ノズル61は、ブラケット(取付板)63を用いてヘッド5に固定されている。ヘッド5は、後述する移動機構(中空移動機構)100によって移動可能である。ヘッド5に支持されたノズル61は、ヘッド5とともに移動可能である。ヘッド5とノズル61とが一体的に動き、それに伴い、光ケーブル41及び材料(フィラー材)62が動く。例えば、材料62は、線材、及び線材以外の材料(粉末材料、流動材料など)を含むことができる。
【0021】
従来、図8に示すように、外形が円筒状の部品を他の部品に接合するため円環状にレーザ溶接を施すには、回転主軸16にワークピース15を固定し、ワークピース15を回転(矢印符号L方向)させ、レーザヘッド12を一定の姿勢に保つことで円環状の溶接パス14を得ていた。一般に、レーザ溶接装置11において、ワークピース14表面からの反射光がレーザヘッド12に直接戻って損傷することを避けるため、レーザ照射軸をワーク15表面の鉛直方向から一定の角度(ヘッド軸傾斜角)D1だけ傾けている。
【0022】
従来のレーザ溶接装置では、非常に大きい加工対象物(ワーク)の一部に対して円環状のレーザ溶接を施す際、ワークピースを回転させる機構が大型化してレーザ溶接装置の大きな設置スペースが必要となる。一方、固定したワークピースに対して溶接ヘッドを回転移動させる事で円環状にレーザ溶接を行う場合に、溶接ヘッド、及び溶接フィラーの送給方向を一定に保つために溶接ヘッドの軸を回転させようとすると、配線やケーブル類の干渉、捻れ等が障害となる。特に光ファイバ伝送式のレーザを用いる場合、レーザ伝送用光ファイバケーブルは物理的な力や曲げに弱いために、無理な力がかからないようにする必要がある。
【0023】
図1Aに戻り、一実施形態において、レーザ溶接装置(レーザ加工装置)1は、モータ等の駆動部を有する移動機構(中空移動機構)100と、制御部(コントローラ)110と、を備える。移動機構100は、第1機構2と第2機構3とを有する。第1機構2は、少なくとも所定の二次元平面(例えばXY平面)に沿ってヘッド5を案内する。第2機構3は、回転軸Wを有し、ヘッド5の回転を案内する。第1機構2を使用することによって、少なくとも二次元平面(例えばXY平面)内で曲線的にヘッド5が移動可能である。第2機構3を使用することによって、光ケーブル41及び材料62を伴って、ヘッド5が回転軸W周りで360°以上回転可能である。回転可能範囲は、例えば、0°以上、約360、390、420、450、480、510、540、570、600、630、660、690、又は720°以下である。上記数値は代表的な一例であって、回転可能範囲は上記数値に限定されない。追加的に、第1機構2は、ヘッド5を二次元平面(例えばXY平面、水平面)で移動させつつ、ヘッド5の、二次元平面と直交する方向の位置(例えばZ方向の位置、鉛直方向)を変化可能に構成できる。第1機構2は、X方向及びY方向に移動可能な2次元アクチュエータ(例えば、XYステージ、1軸アクチュエータを組み合わせたユニット)を有することができる。あるいは、第1機構2は、X方向、Y方向及びZ方向に移動可能な3次元アクチュエータ(例えば、XYZステージ、1軸アクチュエータを組み合わせたユニット)を有することができる。あるいは、第1機構2は、多関節ロボットを含む構成とすることができる。1軸アクチュエータの一例において、第1機構2は、ボールねじ、リニアガイド、及びサポート軸受を一体的に組み合わせたキャリアユニットを含むことができる。
【0024】
回転軸Wは、所定の二次元平面(例えばXY平面、水平面)に直交する軸(例えばZ軸、鉛直軸)に平行に設定できる。回転軸Wは、第1機構2を用いたヘッド5の移動に伴って移動する。すなわち、ヘッド5が二次元平面上で曲線的に移動するとき、ヘッド5の動きに応じて回転軸Wも二次元平面上で曲線的に移動する。一例において、回転軸Wは、ヘッド5の前部(レーザ光51の射出側の端部、射出部5a)に比べ、後部(レーザ光の入力側の端部、光ケーブル41が取り付けられる側)の近傍に配される。他の例において、回転軸Wは、ヘッド5の中心付近に配される。別の例において、回転軸Wは、ヘッド5の後部に比べ、ヘッド5の前部の近傍に配される。例えば、回転軸Wは、ヘッド5の本体の前部、中央部、又は後部と交差するように設定される。あるいは、回転軸Wは、ヘッド5の本体と実質的に交差しないように、ヘッド5の本体から離れた位置に設定される。
【0025】
一例において、レーザ溶接装置(レーザ加工装置)1は、ヘッド軸傾斜機構4を有し、ヘッド5及びノズル61の少なくとも1つが、回転軸Wに対して傾斜して配される。例えば、ワークピース10の加工位置に実質的に斜めにレーザ光51が入射するように、ヘッド5の中心軸が回転軸Wに対して斜めに配される。ワークピース10からの反射したレーザ光51がヘッド5に向かうことが実質的に回避され、反射光によるヘッド5の損傷が防止される。例えば、ワークピースの加工位置に実質的に斜めに材料(フィラー材)がフィードされるように、ノズル61の中心軸が回転軸Wに対して斜めに配される。これにより、ワークピース10とヘッド5との間に材料61が適切に配置される。レーザ光51のエネルギーが適切に材料61に伝わるともに、溶融した材料61が溶接ターゲット部分Qに適切に配される。
【0026】
制御部110は、移動機構100を制御する制御プログラムなどを記憶する記憶装置と、制御プログラムを実行するためのプロセッサ(processor, processing circuitry, circuitry)とを有する。制御部110は、少なくとも二次元平面での曲線的なヘッド5の移動中にヘッド5が回転軸W周りで回転するように、移動機構100を制御する姿勢制御モードを有する。
【0027】
一例において、図2及び図3に示すように、制御部110は、姿勢制御モードにおいて、少なくとも二次元平面での曲線的なヘッド5の移動中に、ターゲット上の加工位置(溶接位置)Pの前方(ヘッド5の移動方向における前方)に、ヘッド5の射出部5a及びノズル61の先端の少なくとも1つが位置し続けるように、移動機構100を制御する。例えば、溶接処理中、ターゲット上の加工位置(溶接位置)Pの前方(ヘッド5の移動方向における前方)に、ヘッド5の射出部5a及びノズル61の先端の両方が位置し続ける。
【0028】
一例において、図3に示すように、射出部5a及びノズル61の先端の位置は、溶接ターゲット部分(ターゲットライン)Qにおける直線部分において、その直線の延長線上における加工位置Pに対する前方位置(ヘッド5の移動方向における前方位置)である。あるいは、その位置は、ターゲットラインQの曲線部分において、その曲線の接線方向における加工位置Pに対する前方位置である。ターゲットラインQの曲線部分においてその接線方向に沿って、加工位置Pの前方からレーザ光が加工位置Pに向けて照射されるとともに、その接線方向に沿って材料(フィラー材)が供給される。加工位置Pに対してヘッド5の姿勢が同一に保たれることにより、溶接ターゲット部分Qの全体に対して、高い品質で均質な溶接が施される。他の例において、加工位置Pに対してヘッド5を上記の姿勢とは異なる姿勢に設定できる。ターゲットの形状などの加工条件に応じて、ヘッド5の姿勢が設定され、これにより、レーザ光51の照射方向、及び材料(フィラー材)の供給の向きが適切に管理される。
【0029】
図4に示す姿勢制御モードの一例において、溶接ターゲット部分(ターゲットライン)Qは、中心位置Sを囲む円環状の形状を有する。すなわち、円環の全周にわたり、溶接加工が必要とされる。第1機構2を使用することによって、XY平面内で、中心位置Sを囲む円状の進路(path)上をヘッド5が移動する(周回動作400)。この際、ヘッド5の回転軸Wも、円状の進路“T”上を移動する。第2機構3を使用することによって、円状進路上のいずれの位置でもヘッド5が回転軸W周りで360°以上回転可能である(回転動作410)。すなわち、回転軸Wが円状の進路T上のいずれの位置にある場合でも、ヘッド5が回転軸W周りで360°以上回転可能である。これにより、ターゲット位置(加工位置)Pに対するヘッド5の姿勢(向き)が制御可能である。すなわち、ターゲットに対するレーザ光の照射方向、及び材料(フィラー材)の供給の向きが管理される。大型のワークピース10であっても、そのワークピース10を移動させることなく、円状の進路の全体にわたり、ワークピース(ターゲット)10の加工位置Pに対して、ヘッド5が適切な姿勢に保たれる。その結果、溶接ターゲット部分Qの全体に、高い品質で均質な溶接が施される。なお、ターゲットラインは、円環状に限らず、例えば四角形状や波形状にも適用可能である。任意の接合面を持った部品同士へレーザ溶接を施すことが可能である。
【0030】
図1Aに戻り、一実施形態において、第2機構3は、第1機構2に支持されかつヘッド5に連結される空洞ユニット(中空ユニット)30を有する。一例において、空洞ユニット30は、回転体(中空軸)31と、支持体32と、モータ33とを含む。支持体32が第1機構2に支持される。回転体31が支持体32に回転自在に支持される。ヘッド5が回転体31に固定される。モータ33の駆動力が回転体31に伝達される。回転体31の回転に伴い、ヘッド5が回転する。回転体31の回転軸が、ヘッド5の回転軸Wと一致する。空洞ユニット30を介して、ヘッド5の回転軸W周りの回転が案内される。空洞ユニット30は、ギアやベルト等の伝達部材を介してモータ33の駆動力が回転体31に伝達されるように構成できる。あるいは、空洞ユニット30は、回転体31と支持体32とモータ33とが一体的に組み合わされた中空モータを含むことができる。他の例において、空洞ユニット30は、上記と異なる構成にできる。
【0031】
空洞ユニット30は、少なくとも回転軸Wに沿って設けられた空洞(挿通部)3aを有することができる。図5の複数の例に示すように、空洞ユニット30は、回転軸Wに沿った方向における第1側の面(第1端面)である第1面30aに設けられ、空洞3aにつながる開口30a1を有することができる。空洞ユニット30は、回転軸Wに沿った方向における第2側の面(第2端面)である第2面30bに設けられ、空洞3aにつながる開口30b1を有することができる。一例において、空洞ユニット30は、管状の回転体31を有し、空洞3aとしての貫通穴が回転体31に設けられた構成にできる。他の例において、空洞ユニット30は、管状以外の形状を有する部材に空洞3aが設けられた構成にできる。代替的及び/又は追加的に、空洞ユニット30は、軸方向に沿って複数に分割した構成にできる。空洞ユニット30において、分割した複数の部材は互いに相対移動可能に構成できる。
【0032】
図1Aに示すように、ヘッド5に取り付けられた光ケーブル41及び材料(フィラー材)62の一部が空洞3aに配される。光ケーブル41及び材料62が少なくとも回転軸Wに沿って配されることにより、ヘッド5の回転動作時における、光ケーブル41及び材料62の動きが抑制される。その結果、ヘッド5の動作時における、光ケーブル41及び材料62への負荷が軽減され、光ケーブル41及び材料62の破損等が防止される。また、空洞3aは、装置全体の小型化にも有利である。追加的に、レーザ溶接装置1は、第2機構3の空洞3aに、光ケーブル41及び材料62に加えて、ヘッド5の本体の一部が配されるように構成できる。
【0033】
ここで、レーザ加工装置(レーザ溶接装置)1に適用される加工対象物として、大形ころ軸受、超大形ころ軸受、又は圧延機ロールネック用軸受などの軸受を製造するための、ワークピースが挙げられる。レーザ加工装置1を用いて製造される軸受は、機械、及び車両に備えられることが可能である。機械は、動力が人力である機械(器械)、及び、人力以外の動力を使用する機械を含むことができる。例えば、機械として、工作機械のほか、発電機、圧延機なども挙げられる。また、車両として、自動車、鉄道車両のほか、大型車両、建設機械車両なども挙げられる。また、加工対象物は、風力発電機用のシャフトやギアを支持する部材を製造するためのワークピースなどを含むことができる。代替的に、上記以外の部品を加工対象物にできる。例えば、レーザ溶接装置1は、ころ軸受保持器ピン溶接の他、車両部品(自動車部品)溶接全般に利用可能である。
【0034】
図6に示す一例において、超大形ころ軸受(円筒ころ軸受)が加工対象のワークピースである。超大形ころ軸受は、内輪と外輪との間に配される「ころ」を有する。ころに挿入されたピン300の端部と板部材(側板)310とが接合される。この接合のため、ピン300の端部の全周にわたり、ターゲット部分(円形のターゲットライン)Qに対して溶接処理が施される。他の例において、軸受として、円すいころ軸受、ころ軸受以外の軸受など、他のタイプの軸受も適用可能である。
【0035】
円すいころ軸受の一例において、図7Aに示すように、MAG溶接を用いる場合、ピン300の端部の全体にフィラーが盛り付けられる(溶接部分320)。この場合、スパッタ径が比較的大きく、熱影響が比較的広い。図7Bに示すように、レーザ溶接を用いる場合、溶接ターゲット部分を必要最小限に設定しやすく、例えば、ピン300の端部の周囲のみを溶接処理対象にできる(溶接部分330)。すなわち、円すいころ軸受の一例において、図7Bに示す軸受は、内輪250、外輪260、ころ270、ピン300、及び側板310を有し、ピン300の端部の周囲にのみ溶接部分330が設けられている。この場合、スパッタ径が微小であり、その量も比較的少ない。よって、熱影響が比較的狭い。その結果、ターゲットの全体にわたり、高い品質で均質な溶接が施されており、高品質な製品が期待できる。他の例においても、軸受又は軸受以外のワークピース上のターゲットの全体にわたり、高い品質で均質な溶接が施され、高品質な製品が期待できる。
【0036】
以下、ころ軸受の溶接にかかる一例について説明する。図1Aに示すように、本例において、レーザ加工装置は、加工物10にレーザ溶接を施すレーザ溶接装置1である。レーザ溶接装置1は、加工物10に対してレーザ光を照射するレーザ溶接ヘッド5と、レーザ溶接を施す位置に溶接材62を供給する溶接フィラー送給機構6と、レーザ溶接ヘッド5と溶接フィラー送給機構6とを含む溶接ユニット50を移動させるとともに、レーザ溶接ヘッド5と溶接フィラー送給機構6のそれぞれの線材41,62が挿通可能な挿通部3aを有する中空移動機構100を有する。中空移動機構100は、溶接ユニット50と連結した中空軸31と、それを回転させるモータ33とを有する。一例において、中空移動機構100は、溶接ユニット50を回転させることができる中空モータを有することができる。ノズル61は、回転軸Wに対して傾斜して配される。レーザ溶接装置1は、加工物(ワーク、ターゲット)にレーザ溶接を施す目的のために、レーザ溶接ヘッド5と溶接フィラー送給機構6を鉛直方向下方に傾斜して取り付けるヘッド軸傾斜機構(傾斜機構)4と、ヘッド軸傾斜機構4を回転させる回転軸Wを持つ中空ユニット30と、レーザ溶接が施されるワーク10の平面位置に沿って、回転するヘッド軸傾斜機構4を回転させるXYZステージ(3次元アクチュエータ)2とを有する。代替的に、XYZステージに代えて、2次元アクチュエータ、3次元アクチュエータ、及び/又は一軸アクチュエータを組み合わせたユニットを使用することができる。なお、XYZステージ2、中空ユニット30、レーザ溶接ヘッド5及び溶接フィラー送給機構6の駆動制御は、制御部110によってコントロールされている。
【0037】
XYZステージ2は、図1Bに示すように、XYZ方向の三次元的に移動可能とし、X方向直動機構21は、XYZステージ2内にあって、鉛直方向と直角の水平方向に平面移動するように取り付けられている。Y方向直動機構22は、XYZステージ2内にあって、X方向とは異なる方向で、鉛直方向と直角の水平方向に平面移動するように取り付けられている。
【0038】
これらX方向直動機構21とY方向直動機構22は、回転軸Wの中心が円を描くように平面のX方向とY方向の2方向に駆動しながら回転軸Wと同期回転され(図4の符号400と符号410の矢印参照。)、常にレーザ溶接ヘッド5がワーク10の溶接箇所に対して所定の方向に向くようになっている。Z方向直動機構23は、XYZステージ2内にあって、鉛直方向に移動するように取り付けられている。溶接開始前にレーザ光51の焦点をワーク10の溶接箇所に対して合わせるようにZ方向直動機構23を駆動して、レーザ溶接ヘッド5からのレーザ照射位置を調整する。
【0039】
ヘッド軸傾斜機構4は、レーザ溶接ヘッド5と、溶接材62を供給する溶接フィラー送給機構6とが備えられた共通の一体支持体で、中空ユニット30を回転駆動するサーボモータ33により任意の方向に可動可能になっている。また、ワーク表面からの反射光がレーザ溶接ヘッド5に直接戻ってくるのを避けるためレーザ照射軸を回転軸Wの軸方向から一定の角度(ヘッド軸傾斜角)D2を設けて取り付けられている。
【0040】
中空ユニット30(中空軸31)は、回転軸Wの軸方向から見たときに、中空で円形(環)状の外周面を有しており、その外周面の上方にはXYZステージ2に備えられ、その外周面の下方から突出した板状のヘッド軸傾斜機構4が取り付けられている。この中空ユニット30は、サーボモータ33が駆動すると、回転軸Wを中心としてヘッド軸傾斜機構4の回転に同期して円形状の外周(環)面に沿って旋回する構造のギアを有している。
【0041】
このように、ワーク10を回転させないので、装置の小型化がはかれる。また、回転軸Wとなる軸中心部分を中空状の挿通部3aとする中空ユニット30を用いることで、溶接フィラーワイヤ62、レーザ伝送用光ファイバケーブル41などを挿通部3aに貫通させることができる。これにより、円形溶接のようにレーザ溶接ヘッド5が360度回転しても溶接フィラーワイヤ62、レーザ伝送用光ファイバケーブル41など線材にも無理がかからない。従って、レーザ伝送用光ファイバケーブル41などの配線が捻れて破損することを回避することができる。また、レーザ溶接ヘッド5をワーク10から距離を置いて配置する場合、中空ユニット30の中空部分の挿通部3aにヘッド5の一部を挿入可能となる(図4参照)。
【0042】
レーザ溶接ヘッド5は、回転軸Wの軸方向下側に突出した桿状の形状を有し、ヘッド軸傾斜機構4によって回転軸Wに対して角度を変更することが可能なよう取り付けられている。このレーザ溶接ヘッド5には、図示しないレーザ発振装置からのレーザ伝送用光ファイバケーブル41を介してレーザが伝送される。また、レーザ溶接ヘッド5には、レーザ溶接に必要な強度にまでレーザ光51を収束させる光学系としてのレンズが複数配置されている。これにより、レーザ溶接ヘッド5は、収束されたレーザ光51を熱源としてワーク10に集光した状態でエネルギー(レーザ光)を照射する。レーザ光51のビームスポットは極めて小径(例えば、直径が数百μm程度以下)で位置精度良く照射される。なお、レーザ伝送用光ファイバケーブル41とレーザ溶接ヘッド5の結合部に回転カップリングを設けることで、レーザ伝送用光ファイバケーブル41が捩れて破損することを防止することができる。
【0043】
溶接フィラー送給機構6は、ヘッド軸傾斜機構4とレーザ溶接ヘッド5と共に下向き傾斜姿勢を持って、取付板63により可動可能に取り付けられる。本実施形態では、溶接中において、ヘッド軸傾斜角D2及び溶接フィラー送給機構6の送給姿勢が所定の姿勢に保たれるようにX軸方向とY軸方向による平面移動とW軸の回転を同期させ、かつ、レーザ光51の照射方向と溶接フィラー送給機構6の送給方向が、レーザ溶接ヘッド5の進行方向に対して一定となるように駆動する(図4)参照。)。また、溶接の速度に合わせて溶接フィラーを送給する。
【0044】
溶接フィラー送給機構6が送給する溶接材料は、ワイヤでの送給が一般的な溶接フィラーワイヤ62が用いられる。溶接フィラー送給機構6には、この溶接フィラーワイヤ62を送給する位置を決める溶接フィラーノズル61が設けられている。
【0045】
本実施形態のレーザ溶接方法は、レーザ溶接ヘッド5と溶接フィラー送給機構6を鉛直方向下方に傾斜して取り付けるヘッド軸傾斜機構4と、ヘッド軸傾斜機構4を回転させる回転軸Wを持つ中空ユニット30と、レーザ溶接が施されるワーク10の平面位置に沿って、回転するヘッド軸傾斜機構4を回転させるXYZステージ2の動作により、ワーク10に円環状にレーザ溶接を施している。なお、XYZステージ2、中空ユニット30、レーザ溶接ヘッド5及び溶接フィラー送給機構6の駆動制御は、制御部110によってコントロールされている。
【0046】
以下、上記のレーザ溶接装置1を用いたレーザ溶接方法について、図4の模式図を用いて説明をする。
【0047】
[溶接前]
(1)ワーク10を戴置台に固定する。本実施形態では、溶接対象のワーク10は金属製部材であり、ワーク10には溶接を行う部位である円環状の溶接箇所Qが軸方向上端面に複数存在している(図6図7B参照)。このような部材としては、例えばころ軸受に用いる保持器などがある。溶接ピンタイプのころ軸受用保持器は、中空ころを貫通するピンとピンを保持する上下の側板から構成され、一方の側板とピン端部はねじ等により固定され、他方は溶接によって接合される。
【0048】
(2)X-Y(平面)方向直動(移動)機構21、22及び回転軸Wを持つXYZステージ2にレーザ溶接ヘッド5と溶接フィラー送給機構6を搭載したレーザ溶接装置1をセットする。このとき、干渉や捻れを回避するためレーザ伝送用光ファイバケーブル41、溶接フィラーワイヤ62等を中空ユニット30の中空部分の挿通部3aを貫通させる。
【0049】
(3)X方向直動機構21とY方向直動機構22を調整して、レーザ溶接ヘッド5がワーク10の加工位置(溶接位置)Pに対して予め所定の方向を向くようにするとともに、ワーク表面からの反射光がレーザ溶接ヘッド5に直接戻ってくるのを避けるためレーザ照射軸を回転軸Wの軸方向から一定の角度(ヘッド軸傾斜角)D2を設けて取り付ける。ヘッド軸傾斜角D2は例えば1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、又は80°程度である。上値は代表的な数値の一例であり、傾斜角は上記に限定されない。
【0050】
(4)Z方向直動機構23を駆動して、レーザ光51の焦点をワーク10の溶接対象部位に対して合わせるようにレーザ溶接ヘッド5の位置を予め調整する。さらに、加工位置Pに溶接フィラーワイヤ62が適切に送給されるよう、溶接フィラー送給機構6及びフィラーノズル61の先端位置と向きを調整する。
【0051】
[溶接中]
(1)溶接動作を開始すると、制御部110は、図4に示すように、レーザ溶接ヘッド5が加工位置Pに対して一定の向きを保ちつつ、加工位置Pが予め設定された溶接形状(本実施形態においてはワーク10の上端面における半径Rの円である円Q)をトレースするよう、XYZステージ2のX-Y方向直動機構21、22と中空軸3を動作させる。
【0052】
(2)具体的には、X-Y平面状で回転軸Wの中心が円を描くようにX方向直動機構21とY方向直動機構22を同期駆動し、さらに回転軸Wを同期回転させる。すなわち、XYZステージ2によるW軸の移動軌跡(図4の破線の円)と、図4の破線上を移動する実線の円で示されるレーザ溶接ヘッド5の回転が同期する。これにより、レーザ溶接ヘッド5が加工位置Pに対して一定の向きを保ちつつ、加工位置Pが円Q上を移動する。
【0053】
(3)溶接中は、ヘッド軸傾斜角D2及び溶接フィラー送給機構6の姿勢が所定の姿勢に常時保たれるので、レーザ光51の反射光がレーザ溶接ヘッド5に当たることはない。また溶接フィラーワイヤ62が適切に加工位置Pに連続的に送給されるため、ワーク10に対して回転角360度以上のレーザ溶接を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザ溶接装置(レーザ加工装置)
2 XYZステージ(XYステージ)
4 ヘッド軸傾斜機構
5 レーザ溶接ヘッド
6 溶接フィラー送給機構
10 ワーク(ワークピース)
100 中空移動機構
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8