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特許7484980硬化体及びその製造方法、樹脂シート及び樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】硬化体及びその製造方法、樹脂シート及び樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240509BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240509BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20240509BHJP
   C08G 59/40 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K3/36
C08K9/06
C08G59/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022129399
(22)【出願日】2022-08-15
(62)【分割の表示】P 2019547964の分割
【原出願日】2018-09-19
(65)【公開番号】P2022145968
(43)【公開日】2022-10-04
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】P 2017197132
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-115171(JP,A)
【文献】特開2013-173841(JP,A)
【文献】特開2003-046247(JP,A)
【文献】特開2017-75221(JP,A)
【文献】特開2011-225799(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225599(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00- 63/10
C08K 3/00- 13/08
C08G 59/00- 59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)シリカを含む樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成され、(C)シリカが研磨されて形成された充填材面部分を含む研磨面を有する硬化体であって、
(C)シリカの平均粒径が、2.0μm以上であり、
(C)シリカの最大粒子径が、15μm未満であり、
(C)シリカが、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、
(C)シリカに含まれる前記中空充填材粒子の中空部の長径が最大でも5μm未満であり、
前記研磨面に存在する凹みの最大深さが、10μm未満であり、
前記硬化材料の測定温度24℃、測定周波数60GHzでの誘電正接が、0.010以下である、硬化体。
【請求項2】
(B)成分が、フェノール系硬化剤又は酸無水物系硬化剤である、請求項1に記載の硬化体。
【請求項3】
(C)成分が、アミノシラン化合物又はエポキシシラン化合物で処理されている、請求項1又は2に記載の硬化体。
【請求項4】
前記充填材面部分に、深さ10μm未満の凹みが形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項5】
前記硬化体が、前記研磨面に再配線層を形成されるためのものである、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項6】
前記硬化体が、前記研磨面と面一な表面部分を有する接続端子部と組み合わせて構造体に含まれ、前記研磨面に再配線層を形成されるためのものである、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項7】
前記硬化体が、前記研磨面に薄膜層を形成された後に再配線層を形成されるためのものである、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化体。
【請求項8】
前記樹脂組成物によって樹脂組成物層を形成する工程と、
前記樹脂組成物を硬化させて、硬化体を得る工程と、
前記硬化体を研磨する工程と、を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の硬化体の製造方法。
【請求項9】
支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を備え、
前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)シリカを含み、
(C)シリカの平均粒径が、2.0μm以上であり、
(C)シリカの最大粒子径が、15μm未満であり、
(C)シリカが、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、
(C)シリカに含まれる前記中空充填材粒子の中空部の長径が最大でも5μm未満であり、
前記樹脂組成物を180℃1時間で硬化して硬化体を得て、(C)シリカ材を研磨しうるように前記硬化体を研磨して、算術平均粗さ500nm以下の研磨面を形成した場合、前記研磨面に存在する凹みの最大深さが、10μm未満であり、
前記樹脂組成物を180℃90分で硬化した硬化材料の測定温度24℃、測定周波数60GHzでの誘電正接が、0.010以下である、樹脂シート。
【請求項10】
(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)シリカを含み、
(C)シリカの平均粒径が、2.0μm以上であり、
(C)シリカの最大粒子径が、15μm未満である、液状の樹脂組成物であって、
(C)シリカが、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、
(C)シリカに含まれる前記中空充填材粒子の中空部の長径が最大でも5μm未満であり、
前記樹脂組成物を180℃1時間で硬化して硬化体を得て、(C)シリカを研磨しうるように前記硬化体を研磨して、算術平均粗さ500nm以下の研磨面を形成した場合、前記研磨面に存在する凹みの最大深さが、10μm未満であり、
前記樹脂組成物を180℃90分で硬化した硬化材料の測定温度24℃、測定周波数60GHzでの誘電正接が、0.010以下である、樹脂組成物。
【請求項11】
再配線層を形成される研磨面を有する硬化体を得るための樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)シリカを含み、
前記研磨面が、(C)成分が研磨されて形成された充填材面部分を含み、
(C)成分の平均粒径が、2.0μm以上であり、
(C)成分が、アミノシラン化合物又はエポキシシラン化合物で処理されており、
(C)成分が、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、
(C)成分に含まれる前記中空充填材粒子の中空部の長径が最大でも5μm未満であり、
(C)成分の最大粒子径が15μm未満であり、
前記樹脂組成物を180℃90分で硬化した硬化材料の測定温度24℃、測定周波数60GHzでの誘電正接が、0.010以下である、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成され且つ研磨面を有する硬化体及びその製造方法、樹脂組成物を含む樹脂組成物層を備えた樹脂シート、並びに、樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
配線板の製造方法としては、回路形成された導体層としての配線層と絶縁層とを交互に積み上げていくビルドアップ方式が広く用いられている。また、絶縁層は、樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成されることが知られている。
近年、電子機器の軽薄短小化が進められている。それに伴い、折り曲げて電子機器に収納可能であるフレキシブル配線板が求められている。また、配線板の更なる薄型化を可能とするために、埋め込み型の配線層を備える配線板が求められている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-82201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
埋め込み型の配線層を備える配線板に使用する絶縁層の材料としては、配線層と絶縁層との間の平均線熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion:CTE、熱膨張率ともいう)の不整合を低減するため、無機充填材を高充填させた硬い材料が使用されてきた。
【0005】
また、埋め込み型の配線層を備える配線板に使用する絶縁層の材料としては、平均線熱膨張係数を低くするために、柔軟な樹脂に無機充填材を高充填させた材料の使用も検討されてきた。
【0006】
このような背景において、本発明者らは、絶縁層に埋め込まれた埋め込み型の配線層を露出させるために、絶縁層を研磨することを行った。そして、研磨によって形成された研磨面に、前記の配線層に接続される再配線層を形成することを試みた。ところが、従来の絶縁層を用いた場合には、微細な再配線層を形成することが困難であったので、歩留まりが低くなっていた。
【0007】
また、本発明者らは、絶縁層に部品が埋め込まれた場合についても、同様の検討を行った。具体的には、絶縁層に埋め込まれた部品の端子を露出させるために、絶縁層を研磨して研磨面を形成し、その研磨面に再配線層を形成することを試みた。ところが、従来の絶縁層を用いた場合には、やはり微細な再配線層を形成することが困難であり、歩留まりが低かった。
【0008】
そこで、本発明者が更に検討を進めたところ、従来の絶縁層の研磨面の塗布均一性に劣ることが、再配線層の形成を困難にする原因であることが判明した。
通常、研磨面に再配線層を形成する場合には、研磨面にフォトレジストとして感光性樹脂を塗布して薄膜層を形成する。そして、その薄膜層の一部(具体的には、配線層又は端子に対応する部分)を除去した後で、再配線層を形成する。再配線層は、薄膜層が除かれた部分では研磨面上に直接に形成されるが、薄膜層が残った部分ではその薄膜層を介して研磨面上に形成される。
研磨面の塗布均一性が劣っていると、薄膜層が不均一となり、抜けが生じることがある。ここで「抜け」とは、薄膜層が形成されていなかったり、薄膜層の表面が局所的に凹んでいたりすることで、薄膜層の表面の高さが周囲よりも低くなっている箇所のことをいう。このような抜けは、通常、微小なものである。しかし、微細な再配線層を形成しようとする場合、その抜けの箇所においては、意図したとおりの再配線層を形成することが難しい。
【0009】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成され、樹脂の塗布均一性に優れた研磨面を有する、硬化体;前記硬化体の製造方法;前記硬化体を製造することができる樹脂シート及び樹脂組成物;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、研磨面には不可避的に形成される微小な凹みがあり、この凹みが研磨面の塗布均一性を低下させる原因となっていることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下のものを含む。
【0011】
〔1〕 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成され、研磨面を有する硬化体であって、
前記研磨面に存在する凹みの最大深さが、10μm未満である、硬化体。
〔2〕 (B)成分が、フェノール系硬化剤又は酸無水物系硬化剤である、〔1〕に記載の硬化体。
〔3〕 (C)成分の平均粒径が、0.5μm~20μmである、〔1〕又は〔2〕に記載の硬化体。
〔4〕 (C)成分が、アミノシラン化合物又はエポキシシラン化合物で処理されている、〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の硬化体。
〔5〕 前記研磨面が、前記(C)成分が研磨されて形成された充填材面部分を含み、
前記充填材面部分に、深さ10μm未満の凹みが形成されている、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の硬化体。
〔6〕 (C)成分が、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、
(C)成分に含まれる前記中空充填材粒子の中空部の長径が最大でも5μm未満である、〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の硬化体。
〔7〕 前記硬化体が、前記研磨面に再配線層を形成されるためのものである、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の硬化体。
〔8〕 前記硬化体が、前記研磨面と面一な表面部分を有する接続端子部と組み合わせて構造体に含まれ、前記研磨面に再配線層を形成されるためのものである、〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の硬化体。
〔9〕 前記硬化体が、前記研磨面に薄膜層を形成された後に再配線層を形成されるためのものである、〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載の硬化体。
〔10〕 前記樹脂組成物によって樹脂組成物層を形成する工程と、
前記樹脂組成物を硬化させて、硬化体を得る工程と、
前記硬化体を研磨する工程と、を含む、〔1〕~〔9〕のいずれか一項に記載の硬化体の製造方法。
〔11〕 支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を備え、
前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含み、
前記樹脂組成物を180℃1時間で硬化し、研磨して、算術平均粗さ500nm以下の研磨面を形成した場合、前記研磨面に存在する凹みの最大深さが、10μm未満である、樹脂シート。
〔12〕 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含む、液状の樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を180℃1時間で硬化し、研磨して、算術平均粗さ500nm以下の研磨面を形成した場合、前記研磨面に存在する凹みの最大深さが、10μm未満である、樹脂組成物。
〔13〕 再配線層を形成される研磨面を有する硬化体を得るための樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物が、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含み、
(C)成分の平均粒径が、0.5μm~20μmであり、
(C)成分が、アミノシラン化合物又はエポキシシラン化合物で処理されており、
(C)成分が、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、
(C)成分に含まれる前記中空充填材粒子の中空部の長径が最大でも5μm未満である、樹脂組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成され、樹脂の塗布均一性に優れた研磨面を有する、硬化体;前記硬化体の製造方法;前記硬化体を製造することができる樹脂シート及び樹脂組成物;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態としての硬化体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、(C)無機充填材に含まれる一例としての中空充填材粒子の断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、一例としての樹脂組成物を用いて得られた硬化体が有する研磨面の凹みの近傍部分を拡大して模式的に示す断面図である。
図4図4は、一例としての樹脂組成物を用いて得られた硬化体が有する研磨面の凹みの近傍部分を拡大して模式的に示す断面図である。
図5図5は、構造体の第一実施形態としての配線板を模式的に示す断面図である。
図6図6は、構造体の第一実施形態としての配線板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図7図7は、構造体の第一実施形態としての配線板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図8図8は、構造体の第一実施形態としての配線板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図9図9は、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板を模式的に示す断面図である。
図10図10は、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図11図11は、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図12図12は、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図13図13は、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板の製造過程を模式的に示す断面図である。
図14図14は、構造体の第一実施形態の変形例としての配線板を模式的に示す断面図である。
図15図15は、構造体の第二実施形態の変形例としての部品内蔵回路基板を模式的に示す断面図である。
図16図16は、再配線層を形成する方法の一実施形態を説明するため、構造体を模式的に示す断面図である。
図17図17は、再配線層を形成する方法の一実施形態を説明するため、構造体を模式的に示す断面図である。
図18図18は、再配線層を形成する方法の一実施形態を説明するため、構造体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態及び例示物を示して、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に挙げる実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0015】
[1.硬化体の概要]
図1は、本発明の一実施形態としての硬化体100を模式的に示す断面図である。
図1に示す本発明の一実施形態としての硬化体100は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含む樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成されている。通常、硬化体100は、図1に示すように層状に形成されるが、硬化体100の形状は、層状には限定されない。
【0016】
硬化体100は、当該硬化体100が研磨されることによって形成された研磨面100Uを有する。硬化体100が層状である場合、研磨面100Uは、通常、硬化体100の層平面に平行に設けられるので、硬化体100の厚み方向に対して垂直な面となっている。
【0017】
研磨面100Uは、巨視的に見ると、平坦な平面である。しかし、研磨面100Uは、微視的に見ると、凹み110を含むことがある。本実施形態に係る硬化体100では、研磨面100Uに存在するこの凹み110の最大深さDが、所定の範囲にある。凹み110の最大深さDとは、研磨面100Uにある全ての凹み110のうち、最も深い凹み110の深さをいう。具体的には、凹み110の最大深さDは、通常10μm未満、好ましくは5μm未満である。研磨面100Uの凹み110の最大深さDが前記のような所定の範囲にあることによって、研磨面100Uに樹脂を塗布する際の塗布均一性を良好にできる。よって、研磨面100Uには、抜けの発生を抑えて均一な薄膜層を形成することが可能であるので、微細な再配線層(図1では図示せず)を形成することが可能である。
【0018】
研磨面100Uの凹み110の最大深さDは、理想的には0μmであるが、(C)無機充填材が含まれるため、通常は、0μmより大きくなる。凹み110の最大深さDは、例えば、0.6μm以上、1.0μm以上、1.5μm以上、2.0μm以上、でありうる。
【0019】
研磨面100Uの凹み110の最大深さDは、下記の方法によって測定できる。
硬化体100の研磨面100Uに垂直な断面が現れるように、FIB(集束イオンビーム)によって、硬化体100を削る。現れた断面を透過型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影して、断面SEM画像(観察幅60μm、観察倍率2,000倍)を取得する。この断面観察を、無作為に選んだ50箇所で行なう。ただし、測定箇所は、凹み110を撮影できる50箇所を選択する。その後、得られた断面SEM画像から、凹み110の深さの最大値を求める。この最大値を、凹み110の最大深さDとして得る。
【0020】
研磨面100Uの凹み110の最大深さDを上述した範囲に収める方法としては、例えば、
(C)無機充填材の粒子の研磨面100Uからの脱離を抑制できるように、樹脂組成物の組成を調整すること、
(C)無機充填材の粒子が研磨面100Uから脱離しても、その脱離跡が浅くなるように粒子径を調整すること、及び、
(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子の内部に形成された中空部を小さくすること、
が挙げられる。
【0021】
[2.樹脂組成物]
樹脂組成物は、上述した通り、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材を含む。また、樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤及び(C)無機充填材以外に、任意の成分を含んでいてもよい。
【0022】
〔2.1.(A)エポキシ樹脂〕
樹脂組成物は、(A)成分として、エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
(A)エポキシ樹脂としては、硬化体の平均線熱膨張率を低下させる観点から、芳香族系のエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子が芳香族骨格を含有するエポキシ樹脂をいう。また、芳香族骨格とは、一般に芳香族と定義される化学構造であり、ベンゼン環等の単環構造だけでなく、ナフタレン環等の多環芳香族構造及び芳香族複素環構造をも含む。中でも、(A)エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂及びグリシジルアミン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種類以上のエポキシ樹脂であることが好ましい。これらを用いることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0024】
また、(A)エポキシ樹脂としては、硬化体の耐熱性を向上させる観点から、分子中に窒素原子を含有するエポキシ樹脂が好ましい。中でも、(A)エポキシ樹脂は、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。これを用いることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0025】
さらに、(A)エポキシ樹脂としては、可撓性を有するエポキシ樹脂が好ましい。可撓性を有するエポキシ樹脂を用いることにより、硬化体の弾性率を効果的に下げることができる。
【0026】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。架橋密度を高めて表面粗さの小さい研磨面を得る観点から、(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0027】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いることで、樹脂組成物層の可撓性を向上させたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の破断強度を向上させたりできる。
【0028】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0029】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0030】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7984」(可撓性を有する、特殊2官能液状エポキシ樹脂);などが挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0032】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0033】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200HH」、「HP-7200H」、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:0~1:15、より好ましくは1:0.15~1:10、特に好ましくは1:0.2~1:8である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との質量比が前記の範囲にあることにより、樹脂シートの形態で使用する場合に、好ましい粘着性を得ることができる。また、樹脂シートの形態で使用する場合に、十分な可撓性が得られ、取り扱い性を向上させることができる。さらに、樹脂組成物を硬化した硬化材料の破断強度を効果的に高めることができる。
【0035】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50~5000、より好ましくは50~3000、さらに好ましくは80~2000、特に好ましくは110~1000である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量が前記の範囲にあることにより、樹脂組成物を硬化した硬化材料の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい硬化体を得ることができる。なお、エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0036】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量は、本発明の所望の効果を顕著に得る観点から、好ましくは100~5000であり、より好ましくは250~3000であり、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂等の樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0037】
樹脂組成物における(A)エポキシ樹脂の量は、良好な機械強度及び絶縁信頼性を示す硬化体を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、特に好ましくは5質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。
【0038】
〔2.2.(B)硬化剤〕
樹脂組成物は、(B)成分として、硬化剤を含む。(B)硬化剤は、通常、(A)エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させる機能を有する。(B)硬化剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(B)硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応して樹脂組成物を硬化させることができる化合物を用いることができ、例えば、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤などが挙げられる。中でも、フェノール系硬化剤及び酸無水物系硬化剤が好ましい。これらを用いることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0040】
フェノール系硬化剤としては、芳香環(ベンゼン環、ナフタレン環等)に結合した水酸基を1分子中に1個以上、好ましくは2個以上有する硬化剤が挙げられる。中でも、ベンゼン環に結合した水酸基を有する化合物が好ましい。また、耐熱性及び耐水性の観点からは、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤が好ましい。さらに、密着性の観点からは、含窒素フェノール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤がより好ましい。特に、耐熱性、耐水性、及び密着性を高度に満足させる観点からは、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤が好ましい。
【0041】
フェノール系硬化剤の具体例としては、明和化成社製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、「MEH-8000H」;日本化薬社製の「NHN」、「CBN」、「GPH」;新日鉄住金化学社製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-495V」、「SN-375」、「SN-395」;DIC社製の「TD-2090」、「TD-2090-60M」、「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-1356」、「LA-3018」、「LA-3018-50P」、「EXB-9500」、「HPC-9500」、「KA-1160」、「KA-1163」、「KA-1165」;群栄化学社製の「GDP-6115L」、「GDP-6115H」、「ELPC75」等が挙げられる。
【0042】
酸無水物系硬化剤としては、1分子内中に1個以上の酸無水物基を有する硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤の具体例としては、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデセニル無水コハク酸、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンソフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸二無水物、3,3’-4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-C]フラン-1,3-ジオン、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、スチレンとマレイン酸とが共重合したスチレン・マレイン酸樹脂などのポリマー型の酸無水物などが挙げられる。
【0043】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する硬化剤が挙げられる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。
【0044】
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0045】
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0046】
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造を表す。
【0047】
活性エステル系硬化剤の市販品としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000」、「HPC-8000H」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);等が挙げられる。
【0048】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート、オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル、等の2官能シアネート樹脂;フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂;これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマー;などが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン社製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂);「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂);「BA230」、「BA230S75」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー);等が挙げられる。
【0049】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、昭和高分子社製の「HFB2006M」、四国化成工業社製の「P-d」、「F-a」が挙げられる。
【0050】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製の「V-03」、「V-07」等が挙げられる。
【0051】
樹脂組成物における(B)硬化剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。(B)硬化剤の量が前記の範囲にあることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0052】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合、(B)硬化剤の活性基数は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下、特に好ましくは1.0以下である。ここで、「(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数」とは、樹脂組成物中に存在する(A)エポキシ樹脂の不揮発成分の質量をエポキシ当量で除した値を全て合計した値である。また、「(B)硬化剤の活性基数」とは、樹脂組成物中に存在する(B)硬化剤の不揮発成分の質量を活性基当量で除した値を全て合計した値である。(A)エポキシ樹脂のエポキシ基数を1とした場合の(B)硬化剤の活性基数が前記範囲にあることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0053】
〔2.3.(C)無機充填材〕
樹脂組成物は、(C)成分として、無機充填材を含む。(C)無機充填材を用いることにより、樹脂組成物を硬化した硬化材料の線熱膨張係数を小さくでき、また、反りを抑制することができる。(C)無機充填材は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
(C)無機充填材の材料としては、通常、無機化合物を用いる。(C)無機充填材の材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられる。これらの中でも、シリカ及びアルミナが好ましく、シリカが特に好ましい。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。また、シリカとしては、球形シリカが好ましい。これらを用いることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0055】
図2は、(C)無機充填材に含まれる一例としての中空充填材粒子200の断面を模式的に示す断面図である。
(C)無機充填材は、通常、図2に示すように、内部に中空部210を形成された中空充填材粒子200を含む。樹脂組成物を硬化して研磨する時に中空充填材粒子200が研磨されると、内部の中空部210が研磨面に開口し、凹みを形成することがある。よって、中空充填材粒子200は、(C)無機充填材から排除することが好ましい。しかし、中空充填材粒子200は、一般に、(C)無機充填材の製造時に不可避的に生じるものであり、(C)無機充填材から完全に排除することは、難しい。
【0056】
これに対し、(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子200の中空部210を小さくすることは、可能である。中空部210が小さければ、中空充填材粒子200が研磨された場合に形成される凹みの深さを小さくできる。よって、(C)無機充填材としては、当該(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子200の中空部210が小さいものを採用することが好ましい。具体的には、(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子200の中空部210の長径Lが最大でも5μm未満となる(C)無機充填材を採用することが好ましい。すなわち、(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子200の中空部210の長径Lの最大値が、5μm未満であることが好ましい。前記中空充填材粒子200の中空部210の長径Lの最大値の下限は、理想的には0μmであるが、通常は0μmより大きく、例えば0.6μm以上、1.0μm以上、1.5μm以上、2.0μm以上、などでありうる。
【0057】
中空充填材粒子200の中空部210の長径Lは、下記の方法によって測定できる。
中空充填材粒子200を含む樹脂組成物の硬化体を用意し、FIB(集束イオンビーム)によって、中空充填材粒子200が切断されるように削る。現れた断面をSEMで観察して、中空部210の長径Lを測定できる。
【0058】
(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子200の中空部210を小さくする方法としては、例えば、(C)無機充填材の製造原料を調整する方法が挙げられる。また、別の方法としては、例えば、(C)無機充填材に浮力による分級処理を施すことで、中空部210が大きい中空充填材粒子200を(C)無機充填材から排除する方法が挙げられる。
【0059】
中空充填材粒子200を含めた(C)無機充填材の平均粒径は、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、(C)無機充填材の平均粒径は、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上、更に好ましくは2.0μm以上、特に好ましくは2.5μm以上であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは8.0μm以下、特に好ましくは5.0μm以下である。一般に、(C)無機充填材の粒子が小さいと、その粒子は凝集して大きな二次粒子を形成し易い傾向がある。しかし、(C)無機充填材の平均粒径が前記範囲の下限値以上であると、凝集による二次粒子の発生を抑制できるので、その二次粒子の研磨面からの脱離による大きな脱離跡の発生を抑制できると考えられる。また、(C)無機充填材の平均粒径が前記範囲の上限以下であることにより、研磨面からの(C)無機充填材の粒子の脱離による大きな脱離跡の発生を抑制できる。したがって、(C)無機充填材の平均粒径が前記範囲にあることにより、研磨面に形成される凹みの深さを小さくできる。
【0060】
(C)無機充填材等の粒子の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により、測定できる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、粒子の粒径分布を体積基準で作成し、その粒径分布からメディアン径として平均粒径を測定できる。測定サンプルは、粒子を超音波により水等の溶剤中に分散させたものを好ましく使用できる。レーザー回折散乱式粒径分布測定装置としては、堀場製作所社製「LA-500」等を使用することができる。
【0061】
(C)無機充填材の最大粒子径は、好ましくは15μm未満、より好ましくは10μm未満である。(C)無機充填材の最大粒子径が前記範囲にあることにより、研磨面からの(C)無機充填材の粒子の脱離による大きな脱離跡の発生を抑制できるので、研磨面に形成される凹みの深さを小さくできる。(C)無機充填材の最大粒子径の下限は、例えば、1μmとしうる。このような最大粒子径を有する(C)無機充填材は、分級によって大きな粒子を取り除くことにより、得ることができる。
【0062】
(C)無機充填材の比表面積は、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.5m/g以上、特に好ましくは1.0m/g以上であり、好ましくは60m/g以下、より好ましくは50m/g以下、特に好ましくは40m/g以下である。(C)無機充填材の平均粒径が前記範囲にある場合、研磨面に形成される凹みの深さを小さくし易い。(C)無機充填材の比表面積は、BET法によって測定できる。
【0063】
(C)無機充填材は、適切な表面処理剤で表面処理されていることが好ましい。表面処理されることにより、(C)無機充填材の粒子の凝集を抑制したり、(C)無機充填材の粒子の研磨面からの脱離を抑制したりできるので、研磨面に形成される凹みの深さを小さくできる。また、表面処理により、通常は、(C)無機充填材の耐湿性及び分散性を高めることができる。
【0064】
表面処理剤としては、シラン化合物が好ましく、特に、アミノシラン化合物及びエポキシシラン化合物が好ましい。
【0065】
アミノシラン化合物としては、アミノ基を有するシラン化合物を用いることができる。特に、アミノシラン系カップリング剤が好ましい。アミノシラン化合物の例としては、信越化学工業社製の「KBM-903」(3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、「KBE-903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、「KBM-573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、「KBM-602」(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン)、「KBM-603」(N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、「KBM-6803」(N-2-(アミノエチル)-8-アミノオクチルトリメトキシシラン)などが挙げられる。
【0066】
エポキシシラン化合物としては、エポキシ基を有するシラン化合物を用いることができる。特に、エポキシシラン系カップリング剤が好ましい。エポキシシラン化合物の例としては、信越化学工業社製の「X-12-1231」(3-(2-グリシジルフェニル)プロピルトリメトキシシラン)、「KBM-403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、「KBM-303」(2-(3,4)-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン)、「KBM-402」(3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン)、「KBE-403」(3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン)、「KBE-402」(3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン)、「KBM-4803」(8-グリシドキシオクチルトリメトキシシラン)などが挙げられる。
【0067】
表面処理剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
表面処理剤による表面処理の程度は、(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価できる。(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、(C)無機充填材の分散性向上の観点から、好ましくは0.02mg/m以上、より好ましくは0.1mg/m以上、特に好ましくは0.2mg/m以上である。一方、樹脂組成物の溶融粘度及びシート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、前記のカーボン量は、好ましくは1mg/m以下、より好ましくは0.8mg/m以下、特に好ましくは0.5mg/m以下である。
【0069】
(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の(C)無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略称することがある。))により洗浄処理した後に、測定できる。具体的には、十分な量のメチルエチルケトンと、表面処理剤で表面処理された(C)無機充填材とを混合して、25℃で5分間、超音波洗浄する。その後、上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて、(C)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定できる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」を使用できる。
【0070】
樹脂組成物中の(C)無機充填材の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、また、好ましくは95質量%以下、より好ましくは92質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。(C)無機充填材の量が前記範囲にあることにより、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0071】
〔2.4.(D)硬化促進剤〕
樹脂組成物は、任意の成分として、上述した成分以外に(D)硬化促進剤を含んでいてもよい。(D)硬化促進剤を用いることにより、樹脂組成物を硬化させる際に硬化を促進できる。
【0072】
(D)成分としての硬化促進剤としては、例えば、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤等が挙げられ、リン系硬化促進剤、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましい。中でも、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤が好ましく、イミダゾール系硬化促進剤が特に好ましい。これらを用いることにより、通常は、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。硬化促進剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ホスホニウムボレート化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、n-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等が挙げられる。中でも、トリフェニルホスフィン、テトラブチルホスホニウムデカン酸塩が好ましい。
【0074】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。中でも、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。
【0075】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。中でも、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾールが好ましい。
【0076】
イミダゾール系硬化促進剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、三菱ケミカル社製の「P200-H50」;四国化成工業社製「1B2PZ」;等が挙げられる。
【0077】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。中でも、ジシアンジアミド、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが好ましい。
【0078】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0079】
樹脂組成物が(D)硬化促進剤を含む場合、(D)硬化促進剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。(D)硬化促進剤の量が前記範囲にある場合に、樹脂組成物の硬化を効果的に促進できる。また、(D)硬化促進剤の量が前記範囲にあることにより、通常は、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0080】
〔2.5.(E)有機充填材〕
樹脂組成物は、任意の成分として、上述した成分以外に(E)有機充填材を含んでいてもよい。(E)有機充填材を用いることにより、樹脂組成物を硬化した硬化材料の引張弾性率等の機械的特性を好適な範囲に容易に調整できる。
【0081】
(E)成分としての有機充填材としては、ゴム粒子が好ましい。ゴム粒子としては、例えば、樹脂ワニスの調整に用いる有機溶剤に溶解せず、(A)成分~(C)成分と相溶しないゴム粒子が使用できる。このようなゴム粒子は、一般には、ゴム粒子の成分の分子量を有機溶剤及び樹脂に溶解しない程度まで大きくし、粒子状とすることで調製される。
【0082】
ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子などが挙げられる。コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造;又は、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、内層のコア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のゴム粒子;などが挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メチルメタクリレート重合物などで構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)などで構成される。ゴム粒子の例としては、ガンツ社製「スタフィロイドIM-401」が挙げられる。また、ゴム粒子等の(E)有機充填材は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0083】
(E)有機充填材の平均粒径は、好ましくは0.005μm~1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm~0.6μmの範囲である。(E)有機充填材の平均粒径は、(C)無機充填材の平均粒径の測定方法と同様にして測定できる。
【0084】
樹脂組成物が(E)有機充填材を含有する場合、(E)有機充填材の量は、樹脂組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.3質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。(E)有機充填材の量が前記範囲にある場合に、樹脂組成物を硬化した硬化材料の機械的特性を好適な範囲に容易に調整できる。また、(E)有機充填材の量が前記範囲にあることにより、通常は、研磨面の凹みの深さを小さくしたり、樹脂組成物を硬化した硬化材料の誘電正接を低くしたり、硬化材料の引張弾性率を小さくしたりする効果を、顕著に得ることができる。
【0085】
〔2.6.(F)着色剤〕
樹脂組成物は、任意の成分として、上述した成分以外に(F)着色剤を含んでいてもよい。(F)着色剤を用いることにより、樹脂組成物及びその硬化材料を、(F)着色剤の色に呈色させることができる。
【0086】
(F)着色剤としては、顔料を用いてもよく、染料を用いてもよく、これらを組み合わせて用いてもよい。中でも、(F)着色剤としては、顔料が好ましい。顔料は着色能力が高いので、樹脂組成物およびその硬化材料を効果的に呈色させることができる。
【0087】
顔料の例を挙げると、青色顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料などが挙げられる。黄色顔料としては、例えば、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、イソインドリノン系顔料、アントラキノン系顔料などが挙げられる。赤色顔料としては、例えば、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、アゾレーキ系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、縮合アゾ系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料などが挙げられる。黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、黒鉛などが挙げられる。緑色顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料などが挙げられる。
【0088】
顔料は、通常、樹脂組成物中において(A)エポキシ樹脂には溶解せず、粒子として存在する。この顔料の粒子の平均粒径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、特に好ましくは15nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは100nm以下、特に好ましくは50nm以下である。平均粒径の小さい顔料を用いることにより、樹脂組成物及びその硬化材料の色の調整を容易に行うことができる。
【0089】
(F)着色剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組合わせて用いてもよい。
【0090】
樹脂組成物が(F)着色剤を含む場合、(F)着色剤の量は、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、特に好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0091】
〔2.7.(G)任意の成分〕
樹脂組成物は、上述した成分以外に、任意の成分として、更に任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物;熱可塑性樹脂;増粘剤;消泡剤;レベリング剤;密着性付与剤;難燃剤;等の樹脂添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0092】
〔2.8.樹脂組成物の状態〕
樹脂組成物は、液状であってもよく、固体状であってもよい。
例えば、常温(例えば、20℃)において液状の樹脂組成物は、特段の温度調整を行うことなく、常温で成形できる。よって、このような樹脂組成物は、常温で、ラミネート法及び圧縮成型法等の成形方法を用いた硬化体の製造に用いることができる。また、このような樹脂組成物を、適切な温度に加熱して成形を行ってもよい。
例えば、常温において固体状の樹脂組成物は、通常、その温度をより高い温度(例えば、130℃)に調整することによって、液状になれる。よって、このような樹脂組成物は、加熱等の適切な温度調整を行うことにより、ラミネート法及び圧縮成型法等の成形方法を用いた硬化体の製造に用いることができる。
【0093】
〔2.9.樹脂組成物の硬化材料の特性〕
樹脂組成物は、当該樹脂組成物を硬化させて得られる硬化材料を研磨した場合に、凹みの最大深さが小さい研磨面を得ることができる。具体的には、樹脂組成物を180℃1時間で硬化して得られる評価用硬化体を研磨して、算術平均粗さRaが500nm以下の評価用研磨面を形成する評価試験を行った場合に、この評価用研磨面に存在する凹みの最大深さDを、上述した所定の範囲に収めることができる。ここで、「評価用硬化体」及びその「評価用研磨面」とは、樹脂組成物の評価のために用いる硬化体及びその研磨面を、評価用途以外に用いる硬化体及び研磨面から区別して示すために用いる用語である。よって、この樹脂組成物を用いることにより、凹みの最大深さDが小さい研磨面を有する硬化体を形成できる。したがって、樹脂組成物を用いることにより、樹脂の塗布均一性に優れた研磨面を有する硬化体を得ることができる。
【0094】
以下、研磨面に形成されうる凹みについて、その最大深さDを小さくできる仕組みを説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下に説明する仕組みによって制限されない。
【0095】
図3は、一例としての樹脂組成物を用いて得られた硬化体300が有する研磨面300Uの凹み310の近傍部分を拡大して模式的に示す断面図である。
図3に示すように、研磨面300Uの凹み310は、硬化体300に含まれる(C)無機充填材の粒子320が脱離して形成されることがある。このようなタイプの凹み310は、粒子320の粒径が小さければ、その深さを小さくできる。また、複数の粒子320が凝集して二次粒子(図示せず)を形成し、その二次粒子が脱離することも考えられるが、粒子320の粒径を適切に調整すれば、凝集の抑制は可能である。よって、(C)無機充填材の粒子320の脱離により形成される凹み310は、(C)無機充填材の平均粒径を適切に設定することで、その深さを10μm未満と小さくすることができる。さらには、樹脂組成物に含まれる樹脂成分を適切に調整したり、(C)無機充填材の表面処理を行ったりすることで、粒子320の脱離自体を抑制することができる。これにより、研磨面300Uの凹み310の最大深さDを上述した所定の範囲に収めることができる。ここで「樹脂成分」とは、樹脂組成物に含まれる不揮発成分のうち、(C)無機充填材以外の成分をいう。
【0096】
図4は、一例としての樹脂組成物を用いて得られた硬化体400が有する研磨面400Uの凹み410の近傍部分を拡大して模式的に示す断面図である。
図4に示すように、研磨面400Uの凹み410は、(C)無機充填材に含まれる粒子としての中空充填材粒子420が硬化体400の研磨時に研磨されることで、その中空充填材粒子420の中空部430が研磨面400Uに開口して形成されることがある。この凹み410が形成された研磨面400Uは、通常、中空充填材粒子420等の(C)無機充填材が研磨されて形成された充填材面部分420Uを含む。そして、この充填材面部分420Uに、凹み410が形成されている。このようなタイプの凹み410は、(C)無機充填材に含まれる中空充填材粒子420の中空部430が小さければ、その深さを小さくできる。中空部430の形状は一般に一様ではないが、中空部430の長径が十分に小さければ、その中空部430が研磨面400Uに開口しても、凹み410の深さは小さくできる。よって、(C)無機充填材の中空充填材粒子420の研磨により形成される凹み410は、中空充填材粒子420の中空部の長径を小さくすることで、その深さを10μm未満と小さくすることができる。これにより、研磨面400Uの凹み410の最大深さDを上述した所定の範囲に収めることができる。前記のように凹み410が形成された充填材面部分420Uを有する硬化体400は、通常、当該硬化体400内に中空充填材粒子420を含む。よって、硬化体400を切って断面観察をした場合には、通常、硬化体400内の研磨面400U以外の位置に中空充填材粒子420を観察することができる。
【0097】
通常、樹脂組成物を硬化した硬化材料は、誘電正接が低い。したがって、この硬化材料で形成される硬化体は、誘電正接の低い絶縁層として用いることができる。
例えば、実施例に記載の方法によって、樹脂組成物を硬化して硬化材料を製造する。この硬化材料について実施例に記載の測定方法で測定される誘電正接は、好ましくは0.010以下、より好ましくは0.008以下である。誘電正接の値の下限は、低いほど好ましく、例えば0.001以上でありうる。
【0098】
通常、樹脂組成物を硬化した硬化材料は、絶縁層に求められる適切な範囲の引張弾性率を有する。例えば、実施例に記載の方法によって、樹脂組成物を硬化して硬化材料を製造する。この硬化材料について実施例に記載の測定方法で測定される引張弾性率は、好ましくは5GPa以上、より好ましくは8GPa以上、さらに好ましくは10GPa以上であり、好ましくは20GPa以下、より好ましくは18GPa以下、さらに好ましくは17GPa以下である。
【0099】
[3.硬化体の特性]
硬化体は、上述した樹脂組成物を硬化させた硬化材料で形成されている。この硬化体は、少なくとも一つの研磨面を有する。通常、研磨面は、前記の凹みを除いて面一(ツライチ)な平面となっている。ここで、ある面が「面一」であるとは、当該面が同一平面にあることをいう。
【0100】
硬化体の研磨面は、当該研磨面に樹脂を均一に塗布できるようにする観点から、表面粗さが小さいことが好ましい。具体的には、研磨面の算術平均粗さRaは、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下、特に好ましくは100nm以下である。研磨面の算術平均粗さRaの下限は、特段の制限は無く、例えば、10nm以上、20nm以上などでありうる。
研磨面の算術表面粗さRaは、後述する実施例に記載の方法によって測定できる。
【0101】
硬化体の研磨面には、前記のように、10μm以上の深さの凹みが無い。よって、このような研磨面には、フォトレジスト等の樹脂を均一に塗布することができる。例えば、直径4インチの円形の研磨面に、実施例に記載の条件で樹脂をスピンコートして、薄膜層を形成する。この際、形成される薄膜層における抜けの発生を抑制することができる。そして、このように均一な薄膜層を形成できるので、この薄膜層を介して研磨面上に、微細な再配線層を形成することが可能である。
【0102】
硬化体は、上述した樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成されているので、通常、前記のように、優れた誘電正接及び引張弾性率を有する。
【0103】
硬化体の形状に制限は無いが、通常は、層状に形成される。層状の硬化体が有する研磨面は、通常、硬化体の層の層平面と平行な平面となっている。層状の硬化体の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは700μm以下、より好ましくは650μm以下、更に好ましくは620μm以下である。厚さの下限は、特に限定されず、例えば10μm以上でありうる。
【0104】
[4.硬化体の製造方法]
硬化体は、通常、樹脂組成物を硬化した後に、研磨して製造できる。また、特に、層状の硬化体は、例えば、下記の工程(1)~工程(3)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)樹脂組成物によって樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物を硬化させて、硬化体を得る工程。
(3)硬化体を研磨する工程。
【0105】
工程(1)では、通常、基材を用意し、この基材上に樹脂組成物層を形成する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、シリコンウエハー、ガラスウエハー、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材の内部又は表面には、配線層が設けられていてもよく、部品が設けられていてもよい。
【0106】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行ってもよい。樹脂シートとは、支持体と、この支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する部材である。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0107】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0108】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0109】
樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行ってもよい。圧縮成型法では、通常、基材及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、基材上に樹脂組成物層を形成する。
【0110】
圧縮成型時の型の温度は、樹脂組成物が優れた圧縮成型性を発揮できる温度が好ましく、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成形時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは5分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0111】
工程(2)では、基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物を硬化させて、硬化体を形成する。通常は、樹脂組成物層を加熱することにより、熱硬化させる。硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は、通常120℃~240℃、好ましくは150℃~220℃、より好ましくは170℃~200℃である。また、硬化時間は、通常5分間~120分間、好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間である。
【0112】
樹脂組成物を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。予備加熱処理の条件は、例えば、温度条件は、通常50℃以上120℃未満、好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下である。また、加熱時間は、通常5分間以上、好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間である。
【0113】
工程(3)では、硬化体を得た後で、その硬化体を研磨して、研磨面を形成する。研磨方法は、所望の表面粗さの研磨面が得られる方法を採用できる。研磨方法の例としては、化学機械研磨装置による化学機械研磨方法、バフ等の機械研磨方法、砥石回転による平面研削方法、等が挙げられる。
【0114】
また、前記の硬化体の製造方法は、基材を除去する工程を含んでいてもよい。
【0115】
[5.硬化体の用途]
硬化体は、上述した利点を活用して、封止層及び絶縁層として用いることができる。硬化体は、例えば、半導体チップパッケージの絶縁層、プリント配線板等の回路基板の絶縁層として用いることができる。また、硬化体は、例えば、半導体チップの封止層として用いることができる。組成を調整することにより溶剤を含まなくても上述した樹脂組成物が適切な温度において液状になれることを利用して、硬化体を封止層に適用する場合には、樹脂組成物を液状封止材として用いてもよい。さらに、硬化体は、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。また、硬化体は、例えば、ソルダーレジスト、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等として用いてもよい。
【0116】
特に、硬化体は、上述したように大きな凹みの無い研磨面を有することを活用して、研磨面に再配線層を形成されるために用いられることが好ましい。さらには、硬化体は、研磨面と面一な表面部分を有する接続端子部と組み合わせて構造体に含まれ、研磨面に再配線層を形成されるために用いられることがより好ましい。中でも、硬化体は、研磨面に薄膜層を形成された後に再配線層を形成されるために用いられることが特に好ましい。薄膜層は、硬化体の研磨面が樹脂の塗布均一性に優れることを活かして、塗布法によって形成することが好ましい。
【0117】
[6.硬化体を含む構造体]
硬化体は、再配線層に接続されるための接続端子部と組み合わせて構造体に含まれてもよい。構造体は、通常、硬化体の研磨面上に、接続端子部と接続されるための再配線層を形成される。
【0118】
接続端子部は、通常、硬化体内に導体材料で形成される部材であり、例えば、硬化体内に形成された埋め込み配線層、硬化体内に形成された部品の端子、等が挙げられる。このような接続端子部は、再配線層に接続可能になるように、硬化体に覆われていない表面部分を有する。よって、接続端子部の表面部分は、露出している。そして、この接続端子部の表面部分に、再配線層が接続される。
【0119】
通常、接続端子部は、硬化体内に設けられる。そして、接続端子部は、硬化体に研磨面を形成するために硬化体を研磨する際に硬化体と一緒に研磨されて、その表面部分が露出する。よって、接続端子部の表面部分は、通常、凹みを除いて、硬化体の研磨面と面一な研磨面となっている。以下の説明において、区別を明確にするために、硬化体の研磨面を「硬化体研磨面」、接続端子部の研磨面としての表面部分を「端子研磨面」と呼ぶことがある。さらに、これら硬化体研磨面及び端子研磨面を含む構造体全体の研磨面を、「構造体研磨面」ということがある。
【0120】
接続端子部は、通常、導体材料で形成される。導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられ、単金属及び合金のいずれも用いうる。
【0121】
接続端子部としては、例えば、配線層が挙げられる。配線層は、通常、回路として機能できるようにパターン加工されている。この際、配線層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されず、例えば、20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)でありうる。また、ピッチは、配線層の全体にわたって同一でもよく、異なっていてもよい。配線層の厚さは、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。配線層の厚みは、均一でもよく、不均一でもよい。
【0122】
別の接続端子部としては、例えば、部品の端子が挙げられる。部品としては、例えば、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の受動部品;半導体ベアチップ等の能動部品;などが挙げられる。
【0123】
接続端子部を設ける方法は、特に制限は無い。例えば、前記の硬化体の製造方法における工程(1)において、接続端子部を備える基材を用いることで、硬化体内に接続端子部を設けることができる。
【0124】
接続端子部を備える基材上に樹脂組成物層を形成すると、接続端子部が樹脂組成物層内に埋め込まれる。よって、樹脂組成物を硬化させることにより、内部に接続端子部を含む硬化体を形成することができる。その後、硬化体を研磨して接続端子部を露出させることにより、硬化体に覆われていない端子研磨面を有する接続端子部を、硬化体内に設けることができる。通常、硬化体の研磨時に接続端子部も研磨されるので、接続端子部の端子研磨面と硬化体の硬化体研磨面とが面一になる。
【0125】
以下、図面を示して、構造体の実施形態について説明する。ただし、構造体は、下記の実施形態に限定されない。
【0126】
〔6.1.構造体の第一実施形態〕
図5は、構造体の第一実施形態としての配線板500を模式的に示す断面図である。また、図6図8は、それぞれ、構造体の第一実施形態としての配線板500の製造過程を模式的に示す断面図である。図5図8では、同様の部位は、同様の符号で示す。
【0127】
図5に示すように、構造体の第一実施形態としての配線板500は、樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成された硬化体としての硬化層510と、硬化層510内に形成された接続端子部としての配線層520とを備える。硬化層510は、少なくとも一側に硬化体研磨面510Uを有する。また、配線層520は、少なくとも一側に端子研磨面520Uを有する。端子研磨面520Uは、硬化層510に覆われていない、硬化体研磨面510Uと面一な平面となっている。よって、硬化体研磨面510U及び端子研磨面520Uを含む構造体研磨面500Uは、硬化体研磨面510Uにある凹み(図示せず)を除き、面一な平面となっている。
【0128】
このような配線板500において、硬化層510は、上述した樹脂組成物の硬化材料によって形成されている。よって、硬化体研磨面510Uにある凹みの最大深さDは、10μm未満と小さい。したがって、構造体研磨面500Uには、フォトレジスト等の樹脂を均一に塗布することができる。そのため、均一な薄膜層(図示せず)を形成できるので、この薄膜層を介して構造体研磨面500U上に、微細な再配線層を形成することが可能である。
【0129】
このような配線板500は、例えば、
(A1)基材530と、この基材530に設けられた配線層520とを有する配線層付基材540を用意する工程(図6参照)、
(A2)配線層520が樹脂組成物層(図示せず)に埋め込まれるように、配線層付基材540上に樹脂組成物層を形成する工程、
(A3)樹脂組成物を硬化させて、硬化層510を形成する工程(図7参照)、
(A4)硬化層510を研磨する工程(図8参照)、及び、
(A5)基材を除去する工程(図5参照)、
を含む製造方法により、製造できる。
【0130】
工程(A1)では、図6に示すように、配線層520を有する配線層付基材540を用意する。本実施形態では、基板531と、基板531の両面に設けられた第一金属層532と、第一金属層532の表面に設けられた第二金属層533とを備える基材530を例に挙げて説明する。よって、配線層付基材540は、基材530の一方の第二金属層533の基板531とは反対側の面に、配線層520を備える。このような配線層付基材540は、例えば、特開2017-82201号公報に記載の方法によって用意できる。
【0131】
工程(A2)では、用意した配線層付基材540上に、樹脂組成物層を形成する。この際、樹脂組成物層の形成は、配線層520が樹脂組成物層に埋め込まれるように行う。樹脂組成物層の形成は、樹脂シート(図示せず)と配線層付基材540とを積層することによって行ってもよく、圧縮成型法によって行ってもよい。
【0132】
工程(A3)では、図7に示すように、配線層付基材540上に樹脂組成物層を形成した後で、樹脂組成物を硬化させて、硬化層510を形成する。通常、樹脂組成物の硬化は、熱硬化によって行われる。
【0133】
工程(A4)では、図8に示すように、硬化層510を研磨する。これにより、硬化層510の表面に硬化体研磨面510Uが形成される。また、硬化層510の研磨により、配線層520が露出して、端子研磨面520Uが形成される。よって、塗布均一性に優れた構造体研磨面500Uが得られる。
【0134】
その後、必要に応じて、工程(A5)のように、基材530を除去する。これにより、図5に示す薄い配線板500を得ることができる。基材530の除去方法は、特に限定されない。例えば、第一金属層532と第二金属層533との界面を剥離し、第二金属層533を塩化銅水溶液等のエッチング液で除去してもよい。
【0135】
〔6.2.構造体の第二実施形態〕
図9は、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板600を模式的に示す断面図である。また、図10図13は、それぞれ、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板600の製造過程を模式的に示す断面図である。図9図13では、同様の部位は、同様の符号で示す。
【0136】
図9に示すように、構造体の第二実施形態としての部品内蔵回路基板600は、基板610と、基板610の一側に樹脂組成物を硬化した硬化材料で形成された硬化体としての硬化層620と、基板610の他側に設けられた絶縁層630と、硬化層620内に設けられた部品640とを備える。部品640は、導体材料で形成された接続端子部としての端子641を有している。本実施形態では、基板610に、当該基板610を厚み方向に貫通するキャビティ610Hが形成され、前記のキャビティ610H内に部品640が設けられた例を示す。また、基板610は、ビア配線及び表面配線等の配線層611を備えていてもよい。
【0137】
硬化層620は、基板610とは反対側に硬化体研磨面620Uを有する。また、部品640の端子641は、端子研磨面641Uを有する。端子研磨面641Uは、硬化層620に覆われていない、硬化体研磨面620Uと面一な平面となっている。よって、硬化体研磨面620U及び端子研磨面641Uを含む構造体研磨面600Uは、硬化体研磨面620Uにある凹み(図示せず)を除き、面一な平面となっている。
【0138】
このような部品内蔵回路基板600において、硬化層620は、上述した樹脂組成物の硬化材料によって形成されている。よって、硬化体研磨面620Uにある凹みの最大深さDは、10μm未満と小さい。したがって、構造体研磨面600Uには、フォトレジスト等の樹脂を均一に塗布することができる。そのため、均一な薄膜層(図示せず)を形成できるので、この薄膜層を介して構造体研磨面600U上に、微細な再配線層を形成することが可能である。
【0139】
このような部品内蔵回路基板600は、例えば、
(B1)基板610と、基板610の片側に設けられた仮付材650と、仮付材650に仮付されることで基板610のキャビティ610H内に収納された部品640とを備える部品仮付基材660を用意する工程(図10参照)、
(B2)部品640が樹脂組成物層(図示せず)に埋め込まれるように、部品仮付基材660上に樹脂組成物層を形成する工程、
(B3)樹脂組成物を硬化させて、硬化層620を形成する工程(図11参照)、
(B4)硬化層620を研磨する工程(図12参照)、
(B5)仮付材650を除去する工程(図13参照)、及び、
(B6)絶縁層630を形成する工程(図9参照)、
を含む製造方法により、製造できる。
【0140】
工程(B1)では、図10に示すように、基板610、部品640及び仮付材650を備える部品仮付基材660を用意する。本実施形態では、フィルム状の仮付材650を用いた例を示す。仮付材650は、基板610の片側に接合している。部品640は、基板610のキャビティ610Hの内部において仮付材650に仮付けされている。このような部品仮付基材660は、例えば、特開2017-039305号公報に記載の方法によって用意できる。
【0141】
工程(B2)では、用意した部品仮付基材660上に、樹脂組成物層を形成する。この際、樹脂組成物層の形成は、部品640が樹脂組成物層に埋め込まれるように行う。樹脂組成物層の形成は、樹脂シート(図示せず)と部品仮付基材660とを積層することによって行ってもよく、圧縮成型法によって行ってもよい。
【0142】
工程(B3)では、図11に示すように、部品仮付基材660上に樹脂組成物層を形成した後で、樹脂組成物を硬化させて、硬化層620を形成する。通常、樹脂組成物の硬化は、熱硬化によって行われる。
【0143】
工程(A4)では、図12に示すように、硬化層620を研磨する。これにより、硬化層620の表面に硬化体研磨面620Uが形成される。また、硬化層620の研磨により、部品640の端子641が露出して、端子研磨面641Uが形成される。よって、塗布均一性に優れた構造体研磨面600Uが得られる。
【0144】
また、必要に応じて、図13に示すように仮付材650を除去する工程(A5)と、絶縁層630を形成する工程(A6)とを行う。これにより、図9に示すように内部に部品640が埋め込まれた部品内蔵回路基板600を得ることができる。絶縁層630の形成方法は任意である。例えば、基板610上に樹脂組成物層を形成し、その樹脂組成物層を硬化させて、硬化層620と同じ組成の絶縁層を形成してもよい。
【0145】
硬化層620の研磨は、硬化層620の形成後、任意の時点で行うことができる。よって、研磨は、仮付材650の除去及び絶縁層630の形成の前に行ってもよく、絶縁層630の形成後に行ってもよい。
【0146】
〔6.3.構造体のその他の実施形態〕
上述した実施形態に係る構造体は、更に変更して実施してもよい。
例えば、前記の第一実施形態では、配線層520の厚みが均一な例を示したが、各配線層520の厚みは異なっていてもよい。また、硬化層510の研磨は、全ての配線層520を露出させる必要はなく、配線層520の一部を露出させるように行ってもよい。
【0147】
さらに、例えば、第一実施形態にかかる配線板500に、部品が設けられていてもよい。以下、その例を図面を示して説明する。図14は、構造体の第一実施形態の変形例としての配線板700を模式的に示す断面図である。図14において、第一実施形態に係る配線板500と同様の部位は、同様の符号で示す。図14に示すように、第一実施形態の変形例としての配線板700は、硬化層510内に部品としてのチップ730を備えること以外は、第一実施形態に係る配線板500と同様に設けられている。チップ730は、導体材料で形成された接続端子部としてのピラー部731を有している。このピラー部731は、硬化層510に覆われていない表面部分としての端子研磨面731Uを有する。端子研磨面731Uは、硬化層510の硬化体研磨面510U及び配線層520の端子研磨面520Uと面一な平面となっている。よって、硬化体研磨面510U、端子研磨面520U及び端子研磨面731Uを含む構造体研磨面700Uは、硬化体研磨面510Uにある凹み(図示せず)を除き、面一な平面となっている。このような配線板700においても、第一実施形態に係る配線板500と同様の利点を得ることができる。
【0148】
前記の配線板700は、例えば、第一実施形態に係る配線板500の製造方法において、工程(A2)よりも前に配線層付基材540にチップ730を設け、更に、工程(A4)での研磨によって配線層520だけでなくチップ730のピラー部731を露出させることにより、製造できる。
【0149】
また、前記の第二実施形態では、部品640の端子641だけを露出させたが、例えば、硬化層620の研磨によって、端子641だけでなく配線層611も露出させてもよい。
【0150】
さらに、例えば、第二実施形態に係る部品内蔵回路基板を、キャビティ610Hの深さよりも薄い部品を用いて実施してもよい。以下、その例を図面を示して説明する。図15は、構造体の第二実施形態の変形例としての部品内蔵回路基板800を模式的に示す断面図である。図15において、第二実施形態に係る部品内蔵回路基板600と同様の部位は、同様の符号で示す。図15に示すように、第二実施形態の変形例としての部品内蔵回路基板800は、キャビティ610Hの深さよりも薄い部品840を用いたこと、及び、配線層611の表面としての端子研磨面811Uが硬化層620に覆われていないこと以外は、第二実施形態に係る部品内蔵回路基板600と同様に設けられている。端子研磨面811Uは、硬化層620の硬化体研磨面620Uと面一な平面となっている。よって、硬化体研磨面620U及び端子研磨面811Uを含む構造体研磨面800Uは、硬化体研磨面620Uにある凹み(図示せず)を除き、面一な平面となっている。このような部品内蔵回路基板800においても、第二実施形態に係る部品内蔵回路基板600と同様の利点を得ることができる。なお、部品840がキャビティ610Hの深さよりも薄いので、通常、部品840の端子部841は硬化層620によって覆われている。
【0151】
前記の部品内蔵回路基板800は、例えば、第二実施形態に係る部品内蔵回路基板600の製造方法において、部品640の代わりに部品840を用い、更に、工程(B4)での研磨によって配線層611を露出させることにより、製造できる。
【0152】
[7.再配線層の形成]
硬化体は、硬化体研磨面に再配線層を形成するために用いることが好ましい。このような再配線層は、硬化体研磨面に薄膜層を形成した後で、この薄膜層を介して硬化体研磨面上に形成されることが好ましい。以下、再配線層を形成する方法の一実施形態を、図面を参照して説明する。ただし、再配線層の形成方法は、下記の実施形態に限定されない。
【0153】
図16図18は、それぞれ、再配線層を形成する方法の一実施形態を説明するため、構造体900を模式的に示す断面図である。これらの図16図18に示すように、本実施形態では、硬化体としての硬化層910及び接続端子部920を備えた構造体900を用いた例を示して、説明する。
【0154】
図16に示すように、この方法では、構造体900の構造体研磨面900Uに、薄膜層930を形成する工程(C1)を行う。通常、薄膜層930は、硬化体研磨面910U及び端子研磨面920Uの両方を覆うように形成される。この薄膜層930は、通常、適切な樹脂材料を構造体研磨面900Uに塗布することを経て形成される。このような薄膜層930は、通常は、絶縁性を有する絶縁層として機能する。
【0155】
薄膜層930の材料となる樹脂材料としては、例えば、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が挙げられる。中でも、感光性樹脂が好ましい。感光性樹脂は、フォトレジストとして用いることができるので、フォトリソグラフィーによる微細なパターン形成が容易である。よって、感光性樹脂を用いることにより、微細な再配線層の形成を容易に行うことができる。そして、このように微細な再配線層の形成を可能にできる点で、大きな凹みの無い硬化体研磨面910Uを有する前記の構造体900は、有利である。
【0156】
樹脂材料は、通常、液状状態で構造体900の構造体研磨面900Uに塗布された後、硬化させられて、薄膜層930を形成する。塗布の際、樹脂材料は、塗布に適した所定の粘度を有することが好ましい。塗布時の樹脂材料の粘度は、例えば、1Pa・s~30Pa・sでありうる。硬化層910の硬化体研磨面910Uに大きな凹みが無いので、前記のような粘度を有する樹脂材料が構造体研磨面900Uに塗布されても、得られる薄膜層930には抜けが生じ難い。
【0157】
樹脂材料の塗布方法は、特段の制限は無く、例えば、スピンコート法を用いることができる。スピンコートの条件は、所望の厚みの薄膜層930が得られるように適切に調整される。例えば、スピンコートの回転数は、好ましくは500rpm以上、より好ましくは700rpm以上であり、好ましくは7000rpm以下、より好ましくは6000rpm以下である。このような条件での塗布においても、薄膜層930の抜けの発生を抑制することは可能である。
【0158】
薄膜層930の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは25μm以下である。このように薄膜層930が薄い場合、仮に硬化体研磨面に大きな凹みがあると、薄膜層930に抜けが生じる可能性がある。しかし、本実施形態に係る構造体900の硬化体研磨面910Uには大きな凹みが無いので、薄膜層930の抜けを抑制することができる。薄膜層930の厚みの下限は、特段の制限は無く、例えば1μm以上でありうる。
【0159】
薄膜層930を形成した後で、図17に示すように、薄膜層930にビアホール930Hを形成する工程(C2)を行ってもよい。このビアホール930Hを通じて、接続端子部920と再配線層とを接続することができる。
【0160】
薄膜層930の材料が感光性樹脂である場合のビアホール930Hの形成方法では、通常、薄膜層930の表面に、マスクパターンを通して活性エネルギー線を照射して、照射部の薄膜層930を光硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを薄膜層930に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを薄膜層930に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。薄膜層930を光硬化させた後で、薄膜層930を現像し、未露光部を除去して、ビアホール930Hを形成する。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0161】
薄膜層930の材料が熱硬化性樹脂である場合のビアホール930Hの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0162】
ビアホール930Hの形状は、通常、円形又は略円形である。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下であり、好ましくは3μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上である。ここで、ビアホールのトップ径とは、薄膜層930の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0163】
薄膜層930を形成し、更に必要に応じてビアホール930Hを形成した後で、図18に示すように、薄膜層930を介して構造体研磨面900U上に再配線層940を形成する工程(C3)を行う。
【0164】
再配線層940は、例えば、薄膜層930上に感光性レジストフィルムとしてのドライフィルム(図示せず)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって再配線層940を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。
【0165】
再配線層940は、通常、パターン加工されている。この再配線層940のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、小さいことが好ましい。具体的な範囲を示すと、ライン/スペース比は、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、再配線層940の全体にわたって同一である必要はない。再配線層940の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。このように微細な再配線層940を形成可能であることが、硬化体研磨面910Uを有する硬化体としての硬化層910を用いる利点の一つである。
【0166】
再配線層940の厚さは、配線デザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0167】
本発明の優れた効果を活用する観点から、薄膜層930は、上述した実施形態のように塗布法によって形成することが好ましい。しかし、本発明は、薄膜層930を塗布法以外の方法によって形成する実施形態を排除するものでは無い。よって、例えば、薄膜層930は、当該薄膜層930に対応するフィルムを構造体900に積層して形成してもよい。
【0168】
[8.樹脂シート]
本発明の樹脂シートは、支持体と、この支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を備える。樹脂組成物層は、前記の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。このような樹脂シートを用いることにより、樹脂の塗布均一性に優れた硬化体研磨面を有する硬化体を得ることができる。
【0169】
樹脂組成物層の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは200μm以下、より好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、又は、40μm以下である。樹脂組成物層の厚さの下限は、特に限定されず、例えば10μm以上でありうる。
【0170】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0171】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0172】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0173】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0174】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0175】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0176】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0177】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル溶剤;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤;等を挙げることができる。有機溶剤は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0178】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0179】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0180】
[9.半導体装置]
上述した硬化体は、任意の半導体装置に適用可能である。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例
【0181】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものでは無い。以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示の無い限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。また、以下に説明する操作は、別途明示の無い限り、常温常圧の環境で行った。
【0182】
[無機充填材の説明]
(無機充填材1)
無機充填材1は、球状シリカ1(平均粒径3μm、比表面積4m/g)を、アミノシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したものである。前記の球状シリカ1は、分級処理により、粒径10μm以上の粒子が除かれている。また、前記の球状シリカ1は、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含むが、その中空部の長径は最大でも5μm未満であった。
【0183】
(無機充填材2)
無機充填材2は、球状アルミナ2(平均粒径3.6μm、比表面積1m/g)を、アミノシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したものである。前記の球状アルミナ2は、分級処理により、粒径15μm以上の粒子が除かれている。また、前記の球状アルミナ2は、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含むが、その中空部の長径は最大でも5μm未満であった。
【0184】
(無機充填材3)
無機充填材3は、球状シリカ3(平均粒径3.5μm、比表面積3.9m/g)を、アミノシラン化合物(信越化学工業社製「KBM573」;N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したものである。前記の球状シリカ3は、分級処理により、粒径10μm以上の粒子が除かれている。また、前記の球状シリカ3は、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含み、その中空部の長径が5μm以上の粒子が含まれていた。
【0185】
(無機充填材4)
無機充填材4は、球状シリカ4(平均粒径3μm、比表面積4m/g)を、エポキシシラン化合物(信越化学工業社製「KBM-403」;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)で表面処理したものである。前記の球状シリカ4は、分級処理により、粒径10μm以上の粒子が除かれている。また、前記の球状シリカ4は、内部に中空部を形成された中空充填材粒子を含むが、その中空部の長径は最大でも5μm未満であった。
【0186】
[実施例1]
液状エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ZX1059」、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との1:1混合品(質量比)、エポキシ当量:169g/eq.)2部、ナフタレン型エポキシ樹脂(DIC社製「HP4032SS」、エポキシ当量151g/eq.)2部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「630」、エポキシ当量95g/eq.)4部、無機充填材1を115部、ナフタレン型エポキシ樹脂(新日鉄住金化学社製「ESN475V」、エポキシ当量約330g/eq.)2部、酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA-100」、酸無水物当量179g/eq.)10部、カーボンブラック(DBP吸収量80cm/100g、pH=6.5、平均粒径20nm)0.5部、ゴム粒子(ガンツ化成社製「スタフィロイド IM-401」)0.9質量部、及び、硬化促進剤(四国化成工業社製「1B2PZ」、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール)0.1部をミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0187】
[実施例2]
無機充填材1を115部用いる代わりに、無機充填材2を150部用いた。以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、樹脂組成物を得た。
【0188】
[実施例3]
無機充填材1の量を、115部から130部に変更した。また、樹脂組成物に、更に液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7984」、エポキシ当量540g/eq.)1部を加えた。以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、樹脂組成物を得た。
【0189】
[実施例4]
無機充填材1を115部用いる代わりに、無機充填材4を115部用いた。以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、樹脂組成物を得た。
【0190】
[比較例1]
無機充填材1を115部用いる代わりに、無機充填材3を115部用いた。以上の事項以外は、実施例1と同じ操作により、樹脂組成物を得た。
【0191】
[研磨面の凹みの深さの測定]
樹脂組成物を、真空ラミネーター乃至はコンプレッションモールドを用いて、8インチシリコンウエハ上に積層して、厚み150μmの樹脂組成物層を形成した。
この樹脂組成物層を、180℃1時間で熱硬化して、樹脂組成物の硬化材料で形成された硬化体(研磨前硬化体)としての硬化層を得た。
続いて、硬化層の表面を、グラインダー(ディスコ社製「DAG810」)を用いて研磨した。この研磨は、研磨後の硬化層の厚みが100μmとなるまで行った。研磨により、硬化層に、算術平均粗さRaが100nm以下の硬化体研磨面が形成された。これにより、シリコンウエハと、このシリコンウエハ上に形成された硬化体研磨面を有する硬化層とを備える試料部材を得た。
【0192】
FIB-SEM複合装置(SIIナノテクノロジー社製「SMI3050SE」)を用いて、硬化層を削り、その断面観察を行った。詳細には、硬化層の硬化体研磨面に垂直な断面が現れるように、FIB(集束イオンビーム)によって硬化層を削った。現れた断面を撮影して、断面SEM画像(観察幅60μm、観察倍率2,000倍)を取得した。この断面観察を、無作為に選んだ50箇所で行った。
得られた50箇所の断面SEM画像から、硬化層の硬化体研磨面の凹みの深さを測定した。そして、得られた深さの測定値の最大値を、硬化体研磨面の凹みの最大深さとして採用した。
硬化体研磨面の凹みの最大深さが5μm未満を「○」、5μm以上10μm未満を「△」、10μm以上を「×」と判定した。
【0193】
[研磨面の表面粗さの測定]
前記[研磨面の凹みの深さの測定]で製造した試料部材の硬化体研磨面の算術平均粗さRaを、非接触型表面粗さ計(ビーコインスツルメンツ社製「WYKO NT3300」)を用いて測定した。この測定は、VSIコンタクトモードで、50倍レンズを用いて、測定範囲を121μm×92μmとして行った。この算術平均粗さRaの測定を硬化体研磨面の10箇所で行い、その平均値を採用した。
【0194】
[研磨面の塗布均一性の評価]
前記[研磨面の凹みの深さの測定]で製造した試料部材を、直径4インチの円板状に加工した。その後、硬化層の硬化体研磨面に、感光性ポリイミド樹脂(粘度6Pa・s)を、スピンコーター(ミカサ社製「MS-A150」)を用いて、回転数2000rpmの条件でスピンコートした。塗布された感光性ポリイミド樹脂を、ホットプレート上で、120℃で5分間、プレベークした。これにより、厚さ4μmの薄膜層を、硬化体研磨面上に得た。
以上の操作を、試料部材10枚分実施した。
【0195】
得られた薄膜層を観察し、下記の基準で、塗布均一性を判定した。
「○」:全ての試料部材において、薄膜層に抜けが無い。
「△」:1枚の試料部材において、薄膜層に抜けがある。
「×」:2枚以上の試料部材において、薄膜層に抜けがある。
【0196】
[樹脂組成物の硬化材料の誘電正接(60GHz)の測定]
表面に離型処理を施されたSUS板上に、樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。SUS板を剥がし、樹脂組成物層を180℃90分の加熱により熱硬化させて、樹脂組成物の硬化材料からなる誘電正接測定用の評価サンプルに用いた。この評価サンプルについて、分析装置(キーサイト・テクノロジー社製「ベクトルネットワークアナライザN5227A」)を用いたファブリペロー法により、測定温度24℃、測定周波数60GHzで、硬化材料の誘電正接を測定した。
【0197】
[樹脂組成物の硬化材料の引張弾性率の測定]
表面に離型処理を施されたSUS板上に、樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(金型温度:130℃、圧力:6MPa、キュアタイム:10分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物層を形成した。SUS板を剥がし、樹脂組成物層を180℃90分の加熱により熱硬化させて、樹脂組成物の硬化材料からなる硬化膜を得た。この硬化膜を、ダンベル状1号形に切り出し、試験片を得た。該試験片を、オリエンテック社製引張試験機「RTC-1250A」を用いて引張強度測定を行い、25℃における弾性率を求めた。測定は、JIS K7127に準拠して実施した。この弾性率の測定を3回行い、その平均値を硬化材料の引張弾性率として採用した。
【0198】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
【0199】
【表1】
【0200】
[検討]
硬化体研磨面の凹みの深さの測定のために撮影した硬化層の断面SEM画像から、いずれの実施例及び比較例でも、硬化体研磨面に凹みがあることを確認された。
硬化体研磨面にある凹みには、無機充填材の粒子が研磨されることで硬化体研磨面に現れた充填材面部分に形成された凹みが含まれていた。この凹みは、無機充填材に含まれる中空充填材粒子が研磨されることにより、その中空部が開口して形成されたものと考えられる。
また、硬化体研磨面にある別の凹みには、周囲を樹脂成分(無機充填材以外の成分)に囲まれた凹みが含まれていた。この凹みは、硬化層の研磨の際に、無機充填材の粒子が外れることで、その外れた粒子の跡として形成されたものと考えられる。
【0201】
表1から分かるように、これらの凹みの最大深さは、実施例では10μm未満である。そのため、硬化層の硬化体研磨面に感光性ポリイミド樹脂を均一に塗布できるので、表面の平坦性に優れた薄膜層を得ることができる。このような薄膜層上には、微細な再配線層を形成することが可能であることから、再配線層の形成に適している。
【0202】
また、表1から分かるように、実施例で得られた樹脂組成物の硬化材料は、誘電正接及び引張弾性率のいずれも優れる。よって、樹脂組成物の硬化材料は、絶縁層の材料として好適である。
【0203】
前記の実施例1~4において、(D)成分~(F)成分を含有しない場合であっても、程度に差はあるものの、上記実施例と同様の結果に帰着することを確認している。
【符号の説明】
【0204】
100 硬化体
100U 研磨面
110 凹み
200 中空充填材粒子
210 中空部
300 硬化体
300U 研磨面
310 凹み
320 無機充填材の粒子
400 硬化体
400U 研磨面
410 凹み
420 中空充填材粒子
420U 充填材面部分
430 中空部
500 配線板
500U 構造体研磨面
510 硬化層
510U 硬化体研磨面
520 配線層
520U 端子研磨面
530 基材
531 基板
532 第一金属層
533 第二金属層
540 配線層付基材
600 部品内蔵回路基板
600U 構造体研磨面
610 基板
610H キャビティ
611 配線層
620 硬化層
620U 硬化体研磨面
630 絶縁層
640 部品
641 端子
641U 端子研磨面
650 仮付材
660 部品仮付基材
700 配線板
700U 構造体研磨面
730 チップ
731 ピラー部
731U 端子研磨面
800 部品内蔵回路基板
800U 構造体研磨面
811U 端子研磨面
840 部品
841 端子
900 構造体
900U 構造体研磨面
910 硬化層
910U 硬化体研磨面
920 接続端子部
920U 端子研磨面
930 薄膜層
930H ビアホール
940 再配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図17
図18