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特許7485000粘着性樹脂組成物、及びそれからなる積層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】粘着性樹脂組成物、及びそれからなる積層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20240509BHJP
   C09J 153/02 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240509BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J153/02
C09J11/08
C09J11/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022196417
(22)【出願日】2022-12-08
(62)【分割の表示】P 2018566060の分割
【原出願日】2018-01-22
(65)【公開番号】P2023027221
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017016801
(32)【優先日】2017-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤野 英俊
(72)【発明者】
【氏名】今井 一元
(72)【発明者】
【氏名】大木 裕和
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-078090(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060070(WO,A1)
【文献】特開2015-165023(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150430(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
C08K5/098;5/20
C08L53/02
G02F1/1335-1/13357
F21V5
F21S8
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主として構成される基材層、その片面に、ブロック共重合体を90質量%以上含有し、下記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、及び(6)の条件を満たす粘着性樹脂組成物からなる粘着層を有する積層フィルム。
(1)ブロック共重合体が、下記共重合体(I)及び共重合体(II)からなる。
共重合体(I):下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含み、一般式[AB]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1~3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる。
共重合体(II):下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含み、一般式A-B-A(式中の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる。
重合体ブロックA:芳香族アルケニル化合物単位が連続し、芳香族アルケニル化合物単位の含有率が80質量%以上である重合体ブロック
重合体ブロックB:共役ジエン単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロック
(2)芳香族アルケニル化合物単位のブロック共重合体における含有量が55質量%以上、61質量%以下である。
(3)重合体ブロックAのブロック共重合体における含有量が25質量%以上である。
(4)前記重合体ブロックB中の前記共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率が90モル%以上である。
(5)ブロック共重合体の混合物の質量平均分子量(Mw)が18万以下である。
(6)テルペンフェノール樹脂及び/又は有機滑剤を含む。
【請求項2】
テルペンフェノール樹脂の粘着性樹脂組成物における含有量が、1~50質量%である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
テルペンフェノール樹脂が、水素添加テルペンフェノール樹脂である請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
有機滑剤の粘着性樹脂組成物における含有量比が、0.1~2質量%である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
有機滑剤が、エチレンビスステアリン酸アミド及び又はステアリン酸カルシウムである請求項4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の積層フィルムであって、基材層の粘着層と反対面に離型層を有する積層フィルム。
【請求項7】
プリズムシートのバック面の保護に用いられる請求項に記載の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着性組成物及びそれかなる粘着層を有する積層フィルムに関する。詳細には、被着体との粘着力と剥離性に優れた粘着性組成物及びそれかなる粘着層を有する積層フィルムに関する。
背景技術
【0002】
従来から、保護フィルムは、光学用途に用いられているプリズムシート等の部材、建築資材用途に用いられる合成樹脂板、ステンレス板、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板を積み重ねて保管したり、輸送したり、または曲げ加工やプレス加工などの二次加工する際の傷付きから保護するために使用されてきた。また、家電製品、精密機械および、自動車ボディーを製造工程で搬送する際の傷付きから保護するためにも使用されてきた。
このような保護フィルムは、良好な粘着性を有するとともに、使用後は、被着体の表面を粘着剤で汚染することなく容易に引き剥がすことができなければならない。
【0003】
被着体は近年、その多様化がすすみ、被覆面が平滑なものから表面凹凸を有するものまで多数見受けられる。
プリズムシートのバック面は、大きな表面凹凸を有するプリズム面と比べれば平滑だが、微細な表面凹凸を有するバック面が形成され、バックライトの光を均一に拡散させるほか、他の部材との密着による干渉防止や、傷などの外観上の不具合を目立ち難くするといった機能が付与されている。
【0004】
そのため、プリズムシートのバック面は、積み重ねて保管したり、輸送したりする際に、保護フィルムにより保護される。
しかしながら、保護フィルムを被着体に貼り付けた後に時間が経過すると、粘着力の上昇(いわゆる粘着昂進)という問題が生じ、剥離しにくくなるという問題があった。これは表面保護フィルムを貼り付けた製品が、その運搬及び保管中等において高温に曝されることによって、より顕著化することがわかっている。この問題は、特に製品(被着体)の表面が凹凸形状となっている場合に生じやすい。
【0005】
微細な表面凹凸を有する被着体に使用される保護フィルムとして、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロック及び共役ジエン(ブタジエン)単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロックからなり、芳香族アルケニル化合物単位の含有量が35~55質量%である共重合体を粘着層に使用したものが知られている(例えば、特許文献1。)が、これば粘着力と経時後の剥離しやすさを両立するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-169347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、プリズムシートのバック面のように、微細な表面凹凸を有する被着体に貼り付けた場合、十分な粘着力を有し、かつその運搬及び保管中等において高温に曝されても粘着力が昂進しにくく、被着体から剥離しやすいため、保護フィルムを剥離した後にも被着体に糊残りが生じないことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ブロック共重合体を含有し、下記(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)の条件を満たすことを特徴とする粘着性樹脂組成物である。
(1)ブロック共重合体は、
下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含むブロック共重合体である。
重合体ブロックA:芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロック
重合体ブロックB:共役ジエン単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロック
(2)芳香族アルケニル化合物単位のブロック共重合体における含有量が50質量%以上である。
(3)重合体ブロックAのブロック共重合体における含有量が15質量%以上である。
(4)前記重合体ブロックB中の前記共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率が90モル%以上である。
(5)ブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)が18万以下である。
【0009】
この場合において、前記ブロック共重合体が下記共重合体(I)及び/又は共重合体(II)からなることが好適である。
共重合体(I):下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含み、一般式[AB]n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1~3の整数を表す。)で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる。
共重合体(II):下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含み、一般式A-B-A(式中の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる。
重合体ブロックA:芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロック
重合体ブロックB:共役ジエン単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロック
【0010】
この場合において、粘着助剤の粘着性樹脂組成物における含有量が、1~50質量%ある請求項1あるいは2に記載の粘着性樹脂組成物。
【0011】
また、この場合において、前記粘着助剤が、水素添加テルペンフェノール樹脂であることが好適である。請求項3に記載の粘着性樹脂組成物。
【0012】
さらにまた、この場合において、有機滑剤の粘着性樹脂組成物における含有量が、0.1~2質量%であることが好適である。
【0013】
さらにまた、この場合において、有機滑剤が、エチレンビスステアリン酸アミド及び又はステアリン酸カルシウムであることが好適である。
【0014】
さらにまた、この場合において、ポリプロピレン系樹脂を主として構成される基材層、その片面に前記粘着性樹脂組成物からなる粘着層を有する積層フィルムが好適である。
【0015】
さらにまた、この場合において、ポリプロピレン系樹脂を主として構成される基材層、その片面に前記粘着性樹脂組成物からなる粘着層を有し、かつ粘着層と反対面に離型層を有する積層フィルムが好適である。
【0016】
さらにまた、この場合において、前記積層フィルムがプリズムシートのバック面の保護に用いられることに好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の粘着性樹脂組成物は、プリズムシートのバック面のように、微細な表面凹凸を有する被着体に貼り付けた場合、十分な粘着力を有し、かつその運搬及び保管中等において高温に曝されても粘着力が昂進しにくく、被着体から剥離しやすいため、保護フィルムを剥離した後にも被着体に糊残りが生じず、その機能を維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(ブロック共重合体)
本発明におけるブロック共重合体は、下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含むブロック共重合体である。
重合体ブロックA:芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロック
重合体ブロックB:共役ジエン単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロック
ここで、「ランダムに」とは、広義に解釈され、共役ジエン単位及び芳香4族アルケニル化合物単位の連鎖分布が、混合した共役ジエン及び芳香族アルケニル化合物を同時に重合して得られる一定の統計的法則に従う状態にあることを意味する。
【0019】
ブロック共重合体における芳香族アルケニル化合物単位の含有率(St(A+B))は、50質量%以上であることが必要である。芳香族アルケニル化合物単位の含有量が50質量%未満であると、初期粘着力が強過ぎたり、或いは粘着力が昂進し易くなる場合がある。一方、芳香族アルケニル化合物単位の含有量は、80質量%以下が好ましい。80質量%を超えると、初期粘着力が認められない場合がある。より好ましくは、55質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0020】
ブロック共重合体における芳香族アルケニル化合物単位の含有率(St(A+B))は、下記の数式で定義される数値を表す。
このような芳香族アルケニル化合物単位含有量は、1H-NMRによって決定される。また、このような芳香族アルケニル化合物単位含量は、赤外スペクトル法でも決定することができ、1H-NMRとほぼ同等の値が得られる。
【0021】
St(A+B)=
[(ブロック共重合体中の芳香族アルケニル化合物単量体単位の由来の単位の質量)/(ブロック共重合体中の単量体由来の全単位の質量)]×100(重量%)
【0022】
ブロック共重合体における重合体ブロックAの含有量は、15質量%以上であることが必要である。重合体ブロックAの含有量が25質量%未満であると、初期粘着力が強過ぎて、糊残りが生じたり、また、粘着力が昂進し易くなる場合がある。より好ましくは30質量%以上である。
一方、重合体ブロックAの含有量は、50質量%以下が好ましい。50質量%を超えると、初期粘着力が認められない場合がある。より好ましくは、45質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下である。
【0023】
本発明におけるブロック共重合体Bの水素添加物は、優れた耐熱性および耐候性が得られることから、共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上が、水素添加により不飽和結合が飽和結合になった水素添加物であることが好ましい。90%未満であると、微細な凹凸を有する被着体への粘着力が得られないばかりか、耐熱性および耐候性が懸念される。
【0024】
ブロック共重合体の重量平均分子量が3万~18万であることが好ましい。重量平均分子量が3万未満であると、ポリマーを脱溶媒、乾燥させる工程において製造設備等にポリマーが付着してしまい、工業的な生産が困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が18万を超えると、微細な表面凹凸を有する被着体への粘着力が得られないばかりか、溶剤への溶解性や熱溶融性が悪くなり、またペレットへの工業的な加工や溶融共押出によるフィルム製造も困難になる場合がある。より好ましくは6万~18万であり、さらに好ましくは10万~18万であり、特に好ましくは15万~18万である。
【0025】
ブロック共重合体のメルトフローレイト(MFR)値は、0.1~20g/分の範囲内であることが好ましく、1~15g/分であることがより好ましい。メルトフローレイト値を0.1~20g/分の範囲とすることで、芳香族ビニル系ブロック共重合体の工業的な生産を容易なものとするだけでなく、フィルム製膜時にも優れた加工性を提供することができる。メルトフローレイト値が0.1g/分より小さいと、重合時の溶媒への溶解性が悪くなり、熱溶融性が低下し、製造設備から重合体を取り出すことが困難になる場合がある。この困難さは、フィルム製膜時にも再発し得る課題となる。
一方、メルトフローレイト値が20g/分より大きいと、重合体を脱溶媒、乾燥させる工程において、製造設備等の内部に重合体が付着して残存し、重合体を取り出すことが困難になる。この困難さは、フィルム製膜時にも再発し得る課題となる。
【0026】
本発明のブロック共重合体は、下記共重合体(I)及び/又は共重合体(II)からなるが好ましい。
共重合体(I):下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含み、一般式[AB]
n(式中、Aは重合体ブロックAを、Bは重合体ブロックBを、nは1~3の整数を表す。)
で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる。
共重合体(II):下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含み、一般式A-B-A(式中の記号は前記と同意義を表す。)で表される構造を有する共重合体の水素添加物からなる。
重合体ブロックA:芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロック
重合体ブロックB:共役ジエン単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロック
【0027】
(重合体ブロックA)
本発明における重合体ブロックAは、芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロックである。芳香族アルケニル化合物単位としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、tert-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1-ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、N,N-ジメチル-p-アミノエチルスチレン、N,N-ジエチル-p-アミノエチルスチレンおよびビニルピリジン等の芳香族ビニル単量体単位を挙げることができる。中でも、「芳香族ビニル単量体単位」はスチレン単位であることが好ましい。
芳香族アルケニル単量体単位以外の繰返し単位は、芳香族アルケニル単量体単位と共重合可能な化合物に由来する繰返し単位、例えば、共役ジエン化合物や(メタ)アクリル酸エステル化合物に由来する繰返し単位を挙げることができる。中でも、1,3-ブタジエン、イソプレンが、芳香族アルケニル単量体単位との共重合性が高いという理由から好ましい。
重合体ブロックAは、芳香族アルケニル単量体単位を主たる繰返し単位として構成されている必要がある。具体的には、その芳香族アルケニル単量体単位の含有率は80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上である。芳香族アルケニル単量体単位の含有率をこの範囲内とすることで、粘着力と、被着体表面凹凸との追随性、およびロール状態からの繰り出し性をより向上することができる。
【0028】
(重合体ブロックB)
本発明における重合体ブロックBは、共役ジエン単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロックである。共役ジエン単位に由来する単位及び芳香族アルケニル化合物単位に由来する単位をランダムに含有することにより、本発明の粘着性樹脂組成物を用いた保護フィルムを微細な表面凹凸を有する被着体に貼り付けた後、その運搬中及び保管中に高温で曝された場合でも、粘着昂進が起こりにくい。
本発明における重合体ブロックBを構成する共役ジエン単量体単位とは、共役ジエン単量体に由来する繰返し単位である。共役ジエン単量体単位としては、特に限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-シクロヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエン、ミルセンおよびクロロプレン等を挙げることができる。中でも、重合反応性が高く、粘着性と耐候性に優れる1,3-ブタジエン単位またはイソプレン単位から選択される少なくとも1種の繰返し単位であることが好ましい。さらに、高い機械強度を得るために、1,3-ブタジエン単位を選択することが、より好ましい。
加えて、重合体ブロックBは、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位がランダムに含まれる芳香族ビニル-共役ジエン共重合体ブロックであることが好ましい。
【0029】
本発明におけるブロック共重合体Bの水素添加物は、優れた耐熱性および耐候性が得られることから、共役ジエン単量体単位に由来する二重結合の90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上が、水素添加により不飽和結合が飽和結合になった水素添加物であることが好ましい。90%未満であると、微細な凹凸を有する被着体への粘着力が得られないばかりか、耐熱性および耐候性が懸念される。
【0030】
(粘着性樹脂組成物)
本発明の粘着性樹脂組成物は、下記(1)、(2)、(3)、(4)、及び(5)の条件を満たすブロック共重合体を含有することを特徴とする。
(1)ブロック共重合体は、下記重合体ブロックA及び下記重合体ブロックBを含むブロック共重合体である。
重合体ブロックA:芳香族アルケニル化合物単位が連続し、主として芳香族アルケニル化合物単位からなる重合体ブロック
重合体ブロックB:共役ジエン(ブタジエン)単位及び芳香族アルケニル化合物単位をランダムに含有する芳香族アルケニル-共役ジエン共重合体ブロック
(2)芳香族アルケニル化合物単位のブロック共重合体における含有量が50質量%以上である。
(3)重合体ブロックAのブロック共重合体における含有量が25質量%以上である。
(4)前記重合体ブロックB中の前記共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率が90モル%以上である。
(5)ブロック共重合体の質量平均分子量(Mw)が18万以下である。
【0031】
本発明の粘着性樹脂組成物は、上記ブロック共重合体に加えて、必要に応じて、粘着助剤、有機滑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、充填剤、顔料、スチレン系ブロック相補強剤、軟化剤、粘着昂進防止剤、オレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、液状アクリル系共重合体、燐酸エステル系化合物等の公知の添加剤を適宜含有しても良い。
【0032】
(粘着助剤)
本発明では、粘着性樹脂組成物の粘着力を増加させる目的で、粘着助剤を添加することができる。粘着助剤としては、例えば、脂肪族系共重合体、芳香族系共重合体、脂肪族・芳香族系共重合体及び脂環式系共重合体等の石油系樹脂;クマロン-インデン系樹脂;テルペン系樹脂;テルペンフェノール系樹脂;重合ロジン等のロジン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられ、これらの水素添加物など一般に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用することができる。
粘着助剤のガラス転移温度は、30℃以上のものを用いることが好ましい。30℃未満のものは、室温での滲出が懸念され、取扱性に劣る。粘着付与剤のガラス転移温度は、高温昂進性を考慮すると、65℃以上が好ましい。粘着助剤の中でも、テルペンフェノール樹脂が好ましく、特に水素添加されたテルペンフェノールが好ましい。粘着助剤にフェノール基があると、被着体との電気的な親和性が作用し、より温度に依存しない粘着力の向上が期待される。また、水素添加により、高温や経時による変色の懸念を軽減することが出来る。
上記粘着助剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記粘着助剤が、水素添加された樹脂である場合に剥離性及び耐候性等がより一層高くなる。上記粘着剤層中の粘着助剤は水素添加された樹脂であることが好ましい。
【0033】
粘着助剤の粘着性樹脂組成物における含有率は1~50質量%であることが好ましい。粘着助剤は、粘着性樹脂組成物を可塑化する効果と粘着剤の分子運を阻害する効果により、粘着力と昂進性の向上が期待できる。粘着助
剤の含有率が、50質量%を超えると、粘着性樹脂組成物との相溶性が悪くなり、初期粘着力の低下が見られる場合がある。より好ましくは、40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0034】
(有機滑剤)
本発明で用いられる有機滑剤は、室温や高温での過度な滲出を考慮すると、飽和脂肪酸ビスアミドや脂肪酸金属塩が好ましい。具体的には、エチレンビスステアリン酸ビスアミドやステアリン酸金属塩などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0035】
有機滑剤の粘着性樹脂組成物における含有率は、0.1~2質量%であることが好ましい。有機滑剤は、粘着力の昂進を抑制させる効果が期待できる。しかし、有機滑材は、粘着性樹脂組成物に対して2質量%を超えると、高温や経時でのブリードアウトが甚だしく、被着体を汚染する懸念がある。本発明で用いられる有機滑剤は、高温や経時でのブリードアウトを鑑みると、高融点であることが好ましく、具体的にはエチレンビスステアリン酸アミドやステアリン酸カルシウムが挙げられる。
【0036】
(酸化防止剤)
本発明で用いられる酸化防止剤は、特に限定されず、例えば、フェノール系(モノフェノール系、ビスフェノール系、高分子型フェノール系)、硫黄系、燐系などの通常使用されるものが挙げられる。
【0037】
(光安定剤)
本発明で用いられる光安定剤としては、ヒンダートアミン系化合物が挙げられる。
【0038】
(紫外線吸収剤)
本発明で用いられる紫外線吸収剤としては、特に限定されず、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系などが挙げられる。
【0039】
(軟化剤)
本発明では、粘着性樹脂組成物の硬度を下げる目的で、軟化剤を添加することができる。軟化剤は、粘着力の向上にも有効である。軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソブチレン、水添ポリブタジエン、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、ひまし油、トール油、天然油、液体ポリイソブチレン樹脂、ポリブテン、またはこれらの水添物など一般的に粘着剤に使用されるものを特に制限なく使用することができる。これらの軟化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。
【0040】
(充填剤)
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタンなどが挙げられる。
【0041】
(積層フィルム)
本発明に係る積層フィルムは、基材層に、前記粘着性樹脂組成物からなる粘着層を積層することで得られる。さらに、粘着層と反対側の基材層に離型層を有しても良い。
以下詳細に説明する。
【0042】
(粘着剤層)
本発明における粘着剤層は、前述の粘着性組成物からなり、厚みは、通常1~30μm程度、好ましくは2~10μmである。
【0043】
本発明の積層フィルムの初期粘着力は、2cN/25mm以上、20cN/25mm以下であることが好ましい。2cN/25mm以上であると、取扱いや輸送時に剥がれたり浮いたりすることが無く、20cN/25mm以下であると剥がすときに過度な力を必要としない。より好ましくは、3cN/25mm以上、15cN/25mm以下である。さらに好ましくは、3cN/25mm以上、10cN/25mm以下である。特に好ましくは、3cN/25mm以上、8cN/25mm以下である。
初期粘着力は下記のように測定した。
積層フィルムの粘着層の表面がプリズムシートのバック面に接するように、23±2℃及び相対湿度50±5%R.H.の環境下で、15kN/mの線圧を積層フィルムの粘着剤層面とは反対側から加え、2m/分の速度で貼り付けた。
得られた試験片を、23±2℃及び相対湿度50±5%R.H.の室内に30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度(単位はcN)を、剥離速度300ミリ/分の条件で測定し、初期粘着力とした。
【0044】
本発明の積層フィルムの経時粘着力は、2cN/25mm以上、80cN/25mm以下であることが好ましい。2cN/25mm以上であると、取扱いや輸送時に剥がれたり浮いたりすることが無く、80cN/25mm以下であると剥がすときに過度な力を必要としない。より好ましくは、3cN/25mm以上、70cN/25mm以下である。さらに好ましくは、3cN/25mm以上、60cN/25mm以下である。特に好ましくは、3cN/25mm以上、45cN/25mm以下である。
経時粘着力は下記のように測定した。
経時粘着力の測定に用いたプリズムシートと同様の条件で試験片を作成した。65℃±2℃、加重6kg/400cm2の雰囲気下で1週間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を、剥離速度300mm/分で測定し、経時粘着力とした。
【0045】
本発明の積層フィルムの粘着昂進率は1000%以下であることが好ましい。粘着昂進率が1000%以下であると、被着体からフィルムを剥がす際の作業条件がより一定になり、作業効率が向上する。より好ましくは、800%以下、更に好ましくは600%以下、特に好ましくは500%以下である。
粘着昂進率は初期粘着力と経時粘着力を用い、次式で計算した。
粘着昂進率=(経時粘着力/初期粘着力)×100(%)
【0046】
本発明の粘着層の表面と粘着層の反対面の表面の剥離力は23℃において、200cN/25mm以下の範囲であることが、積層フィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出し性の点から好ましい。剥離力が200cN/25mmを超えると積層フィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出しにフィルムが部分的な伸長や変形等の問題が生じる。なお、積層フィルムの粘着層の表面と粘着層の反対面の表面に対する剥離力の下限は現実的な値として1cN/25mm程度、さらには5cN/25mm程度である。より好ましくは、2~100cN/25mmであり、さらに好ましくは3~50cN/25mmである。
【0047】
(基材層)
本発明における基材層は、ポリオレフィン系樹脂により形成することができる。ポリオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、α-オレフィンなどのオレフィン単量体を用いた重合体であり、ポリオレフィン系樹脂を構成する全単量体におけるオレフィン単量体が占める割合が70モル%以上のものをいう。基材に含まれるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、及びエチレン-酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂;プロピレン単独重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、及びプロピレン-エチレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂;ブテン単独重合体;ブタジエン及びイソプレンなどの共役ジエンの単独重合体又は共重合体等が挙げられる。また、上記ポリエチレン系樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン
及び低密度ポリエチレン等が挙げられる。共重合の形態は、ランダムであってもよく、ブロックであってもよく、三元共重合体の形態であってもよい。
上記ポリオレフィン系樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
上記ポリエチレン系樹脂は、エチレンを主成分として用いて得られる。上記ポリエチレン系樹脂の全構造単位100質量%中、エチレンに由来する構造単位の割合は好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
【0049】
上記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主成分として用いて得られる。上記ポリプロピレン系樹脂の全構造単位100質量%中、プロピレンに由来する構造単位の割合は好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。本発明の基材層はポリプロピレン系樹脂を主体とするのが、耐熱性や耐候性、あるいは粘着層との密着性の点で好ましい。
【0050】
本発明における基材層の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは100μm以下である。上記基材の厚みが10μm以上、及び100μm以下であると、積層フィルムの取扱い性がより一層高くなる。
【0051】
本発明に係る積層フィルムが基材層と前記粘着性組成物からなる粘着層のみからなる場合は、基材層の表面と粘着層の表面との表面の剥離力を抑えるために表面凹凸を付与し、粘着層との接触面積を小さくすることが好ましい。
この場合、本発明の粘着層の樹脂組成を鑑みると、離型層の表面の平均表面粗さSRaを0.40μm以上とするのが好ましい。表面の平均表面粗さはSRaで0.850μm以下となる様な表面にすることがさらに好ましく、さらに0.500μm以上、0.700μm以下が特に好ましい。
基材層の粘着層の表面と粘着層の反対面の表面の平均表面粗さSRaを0.40μm以上とすることで被着体の保護性能と剥離力を向上させることができる。離形層の表面粗さを0.40μmより低くするとフィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出し性が悪くなる。基材層の表面粗さを0.850μmよりも高くすると、基材層の表面凹凸が粘着層の表面に転写し、粘着力が著しく低下する場合がある。
【0052】
平均表面粗さSRaを0.40μm以上とするために、基材層に使用する樹脂として、ホモプロピレンやランダムポリプロピレンに非相溶な樹脂を添加することや、プロピレン-エチレンブロック共重合体を好適に用いることができる。プロピレン-エチレンブロック共重合体を用いると、生産機台の変更や製膜時の溶融混練条件により凹凸状態が変わりにくく、安定した生産が可能である。
平均表面粗さSRaは、プロピレン-エチレンブロック共重合体中のエチレン-プロピレンゴムの分子量を大きくするかエチレンの量を増やすことで大きくすることができる。また、プロピレン-エチレンブロック共重合体に非相溶な樹脂を混合することによって平均表面粗さSRaをより大きくすることができる。
また、後述する押出工程において、樹脂に掛かる剪断速度を下げたり、滞留時間を長くすることによっても平均表面粗さSRaをより大きくすることができる。
一方、平均表面粗さSRaを小さくするためには、プロピレン-エチレンブロック共重合体にホモポリプロピレン樹脂を混合することが効果的である。
【0053】
プロピレン-エチレンブロック共重合体に非相溶な樹脂としては4-メチルペンテン-1重合体または4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体を好適に用いることができる。なお、前記α-オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテンと共重合可能であれば特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-ペンテン、1-ヘプテンを挙げることができる。
その他にも低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと少量のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリスチレン、脂環式オレフィン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。特に4-メチルペンテン-1重合体または4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体はマット状に表面を荒らすだけでなく、フィルム表面の表面自由エネルギーが下がることでさらに剥離力の低減が見込めるため、好ましい。
【0054】
基材層(基材層を構成する樹脂成分)中の炭素数4以上の4-メチルペンテン-1重合体または4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の配合量は、0質量%以上35質量%以下の範囲である。炭素数4以上のα-オレフィン(共)重合体の配合量が35質量%を超えると基材層と粘着層の原料をTダイ等を用いて共押出しすることにより積層しようとすると、基材層の製膜性が悪くなる。
【0055】
(離型層)
本発明における離型層は粘着層と反対側の基材層に設けられる。これにより、基材層と離型層それぞれに機能を分散することで、より幅広い用途に対応できる。
【0056】
この場合、離型層の表面と粘着層の表面の剥離力を抑えるために表面凹凸を付与し、粘着層との接触面積を小さくすることが好ましい。
本発明の粘着層の樹脂組成を鑑みると、離型層の表面の平均表面粗さSRaを0.40μm以上とするのが好ましい。表面の平均表面粗さはSRaで0.850μm以下となる様な表面にすることがさらに好ましく、さらに0.500μm以上、0.700μm以下が特に好ましい。
【0057】
離型層の表面の平均表面粗さSRaを0.40μm以上とすることで被着体の保護性能と剥離力を向上させることができる。離形層の表面粗さを0.40μmより低くするとフィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出し性が悪くなる。離形層の表面粗さを0.850μmよりも高くすると、離形層の表面凹凸が粘着層の表面に転写し、粘着力が著しく低下する場合がある。
【0058】
平均表面粗さSRaを0.40μm以上とするために、離型層に使用する樹脂として、ホモプロピレンやランダムポリプロピレンに非相溶な樹脂を添加することや、プロピレン-エチレンブロック共重合体を好適に用いることができる。プロピレン-エチレンブロック共重合体を用いると、生産機台の変更や製膜時の溶融混練条件により凹凸状態が変わりにくく、安定した生産が可能である。
平均表面粗さSRaは、プロピレン-エチレンブロック共重合体中のエチレン-プロピレンゴムの分子量を大きくするかエチレンの量を増やすことで大きくすることができる。また、プロピレン-エチレンブロック共重合体に非相溶な樹脂を混合することによって平均表面粗さSRaをより大きくすることができる。
また、後述する押出工程において、樹脂に掛かる剪断速度を下げたり、滞留時間を長くすることによっても平均表面粗さSRaをより大きくすることができる。
一方、平均表面粗さSRaを小さくするためには、プロピレン-エチレンブロック共重合体にホモポリプロピレン樹脂を混合することが効果的である。
【0059】
プロピレン-エチレンブロック共重合体に非相溶な樹脂としては4-メチルペンテン-1系(共)重合体等の炭素数4以上のα-オレフィン(共)重合体を好適に用いることができる。その他にも低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと少量のα-オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、ポリスチレン、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が挙げられる。特に4-メチルペンテン-1系(共)重合体はマット状に表面を荒らすだけでなく、フィルム表面の表面自由エネルギーが下がることでさらに剥離力の低減が見込めるため、好ましい。
【0060】
離型層(離型層を構成する樹脂成分)中の炭素数4以上のα-オレフィン(共)重合体の配合量は、0質量%以上35質量%以下の範囲である。炭素数4以上のα-オレフィン(共)重合体の配合量が35質量%を超えると基材層と粘着層共押出しするにより積層しようとすると、基材層の製膜性が悪くなる。
上記離型層の厚みは、特に限定されない。上記離型層の厚みは好ましくは2μm以上、好ましくは10μm以下である。上記離型層の厚みが2μm以上、及び10μm以下であると、積層フィルムの取扱い性がより一層高くなる。
【0061】
本発明の積層フィルムを製造する方法は、例えば、別々の押出し機に粘着性組成物及び基材層用のポリオレフィン樹脂、必要に応じて、離型層用のポリオレフィン樹脂を投入し、溶融し、Tダイスから共押出しして、積層する方法、又はインフレーション成形にて得られた層上に、押出ラミネーション、押出コーティング等の積層法により他の層を積層する方法、各々の層を独立してフィルムとした後、得られた各々のフィルムをドライラミネーションにより積層する方法等が挙げられるが、生産性の点から、離型層、上記基材層、上記粘着剤層の各材料を多層の押出機に供給して成形する共押出成形が好ましく、厚み精度の点から、Tダイ成形がより好ましい。
【0062】
本発明の表面保護フィルムは、表面が平滑または微細な凹凸を有する被着体の表面を保護するために用いられるものであり、特に表面粗さが0.1~0.3μm程度の場合に特に有効である。
【実施例
【0063】
以下に実施例を掲げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実
施例のみに限定されない。
測定方法を下記に示す。
【0064】
(1)初期粘着力
上記で得られた表面保護フィルムを、その粘着剤層面がプリズムシートのバック面に接するように貼り付けて、試験片を作製した。貼付は、23±2℃及び相対湿度50±5%R.H.の環境下で、15kN/mの線圧を表面保護フィルムの外側(すなわち、粘着剤層面とは反対側)から加え、2m/分の速度で貼り付けた。貼付には下記ラミネータを使用した。
ラミネータ
メーカー:テスター産業(株)
型式:SA-1010-S
ロール:耐熱シリコンゴムロール
ロール径:Φ200
得られた試験片は、23±2℃及び相対湿度50±5%R.H.の室内に30分間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度(単位はcN)を、剥離速度300ミリ/分の条件で測定し、初期粘着力とした。
【0065】
(2)経時粘着力
得られた表面保護フィルムを、(1)の初期粘着力評価に用いたプリズムシートと同様の条件で貼り付け、65℃±2℃、加重6kg/400cmの雰囲気下で1週間放置した後、JIS Z0237に準拠し、25mm幅における180度剥離強度を、剥離速度300mm/分で測定し、経時粘着力とした。
【0066】
(3)粘着昂進率
上記(1)と(2)で得られた初期粘着力と経時粘着力を用い、初期粘着力から経時粘着力への変化率(粘着昂進率)を次式で計算した。
変化率(粘着昂進率)=(経時粘着力/初期粘着力)×100
【0067】
(4)剥離力
得られた表面保護フィルムを、一方のフィルムの粘着層ともう一方のフィルムの剥離層が向い合うように、2枚のフィルムを重ねて110mm(フィルム製造時の巻き取り方向)×40mm(フィルム製造時の巻き取り方向とは直交方向)の大きさにきり出し試験片とし、その上下をコピー用紙で挟み、その上に錘60kgを乗せ、温度40℃の部屋に72hr静置した。その後、23±2℃及び相対湿度50±5%R.H.の室内に1hr静置し、(
株)島津製作所製「オートグラフ(登録商標)」(AGS-J)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を剥離力[cN/25mm]とした。
測定の際は測定試料のつかみ代として厚み190μm、サイズ40mm×170mmのポリエステルシートを準備し、110mm×40mmの試験片の端に、のり代15mmの幅でセロハンテープにて貼り付けて、測定の際のつかみ代とした。測定は一つのサンプルに関して3回実施し、その平均値をそのサンプルの剥離力とした。
【0068】
(5)表面粗さ
得られた積層フィルムの粘着層と反対側の表面粗さ評価は、三次元粗さ計(小坂研究所社製、型番ET-30HK)を使用し、触針圧20mgにて、X方向の測定長さ1mm、送り速さ100μm/秒、Y方向の送りピッチ2μmで収録ライン数99本、高さ方向倍率20000倍、カットオフ80μmの測定を行い、JISB 0601(1994)に記載の算術平均粗さの定義に準じて、計算した。
算術平均粗さ(SRa)はそれぞれ3回の試行を行い、その平均値で評価した。
【0069】
(6)芳香族アルケニル化合物単位のブロック共重合体における含有量
各原料樹脂及び混合樹脂試料をCDCl3に溶解し、下記条件で1H-NMRを測定した。
装置:フーリエ変換核磁気共鳴装置(ブルカー・バイオスピン製AVANCE500)
測定溶液:試料10~30mgを0.6mlの重水素化クロロホルムに溶解した。そこにトリフロロ酢酸を5~10vol%添加した。
1H共鳴周波数:500.13MHz
検出パルスのフリップ角:45°
データ取り込み時間:4.0秒
遅延時間:1.0秒
積算回数:20~100回
測定温度:25~40℃
【0070】
(7)重合体ブロックAのブロック共重合体における含有量
ホモのポリスチレンのスペクトルと各原料樹脂及び混合樹脂試料の赤外線スペクトルを比較し、重合体ブロックAの含有量を計算した。
【0071】
(8)重量平均分子量
各原料樹脂及び混合樹脂試料をテトラヒドロフランに溶解した(試料濃度:0.05質量%)。0.20μmのメンブランフィルターでろ過し、得られた試料溶液のGPC分析を以下の条件で実施した。分子量は標準ポリスチレン換算で算出した。
GPC装置条件
装置:高速液体クロマトグラフHLC-8220(TOSOH)
カラム:TSKgel SuperHZM-H+SuperHZM-H+SuperHZ2000(TOSOH)
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流速:0.35mL/min
注入量:10μL
温度:40℃
検出器:RI
データ処理:GPCデータ処理システム(TOSOH)
【0072】
下記実施例・比較例で使用する原料樹脂を下記に示す。
【0073】
1)S1605:商品名「S1605」、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物、旭化成社製、MFR=3.5g/10分、重合体ブロックBの共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率=100%、重量平均分子量=180700、密度=1.00g/cc、芳香族アルケニル化合物単位の含有量=66質量%、重合体ブロックAの含有量=31質量%、構造式A-B-A及び構造式A-Bの共重合体の混合物。
【0074】
2)L613:商品名「L613」、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物、旭化成社製、MFR=5.0g/10分、重合体ブロックBの共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率=100%、重量平均分子量=138200、密度=1.00g/cc、芳香族アルケニル化合物単位の含有量=32質量%、重合体ブロックAの含有量=35質量%、構造式A-B-A及び構造式A-Bの共重合体の混合物。
【0075】
3)S1606:商品名「S1606」、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物、旭化成社製、MFR=4.0、重合体ブロックBの共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率=100%、重量平均分子量=169900、密度=0.96g/cc、芳香族アルケニル化合物単位の含有量=50質量%、重合体ブロックAの含有量=25質量%、構造式A-B-Aの共重合体。
【0076】
4)H1221:商品名「H1221」、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物、旭化成社製、MFR=4.5/10分、重合体ブロックBの共役ジエン単位に由来する二重結合の水素添加率=100%、重量平均分子量=147600、密度=0.89g/cc、芳香族アルケニル化合物単位の含有量=12質量%、重合体ブロックAの含有量=12質量%、重合体ブロックBがない共重合体。
【0077】
5)UH115:商品名「UH115」、水添テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、ガラス転移点温度=65℃
【0078】
6)TH130:商品名「TH130」、テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製、ガラス転移点温度=80℃
【0079】
7)EB-P(商品名「EB-P」、エチレンビスステアリン酸アミド、花王社製)
【0080】
(比較例4)
S1606を100重量部からなる粘着剤組成物と、基材層の原料としてポリオレフィン樹脂(商品名「WF836DG3」、プロピレンエチレンランダム共重合体、プライムポリマー社製、MFR=4.5/10分、融点=164℃、エチレン共重合量=0.3質量%)と、離型層の原料としてポリオレフィン樹脂(商品名「BC3HF」、ポリプロピレン-エチレンブロック共重合体、プライムポリマー社製、融点=171℃、エチレン含有量=9質量%)を、粘着層の樹脂は40mmφ単軸押出し機にて6Kg/時の吐出量で、基材層の樹脂は90mmφ単軸押出し機にて30Kg/時の吐出量で、離型層の樹脂は60mmφ単軸押出し機にて4Kg/時の吐出量で、3層Tダイ(リップ幅850mm、リップギャップ1mm)を用い、それぞれ共押出しし、冷却ロールで冷却し、粘着層、基材層、離型層の厚さが6μm、30μm、4μmであり、幅方向の長さが650mmの積層フィルムを得た。上記結果を表1に示す。
【0081】
(比較例5~7、実施例5~7、比較例8、比較例1~3)
粘着層の原料樹脂及び添加剤の含有量、さらに粘着層の厚みと含有量を表1に示すように変更したこと以外は比較例4と同様にして、積層フィルムを得た。上記結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例5~7の積層フィルムは、プリズムシートのバック面に貼り付けた場合、バック面と十分な粘着力を有し、高湿度下で1週間経過しても粘着力が昂進しにくく、また、剥離層とのブロッキングも少なかった。
それに対して、比較例1、2の積層フィルムはバック面との粘着力が強すぎ、バック面から剥離しにくいものであった。
【0084】
比較例3の積層フィルムは、高湿度下で1週間経過するとバック面との粘着力が大きくなり、バック面から剥離しにくいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の粘着剤組成物は、本発明の表面保護フィルムは、プリズムシート等の表面保護、特にそれらのバック面に好適に用いられ、産業上有用である。