(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】放射線撮影装置、回診車及び放射線照射装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20240101AFI20240509BHJP
A61B 6/42 20240101ALI20240509BHJP
【FI】
A61B6/00 520Z
A61B6/42 500S
A61B6/00 530A
A61B6/00 521
(21)【出願番号】P 2022205154
(22)【出願日】2022-12-22
(62)【分割の表示】P 2018129641の分割
【原出願日】2018-07-09
【審査請求日】2023-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯貝 幸平
(72)【発明者】
【氏名】手塚 英剛
(72)【発明者】
【氏名】三宅 信之
(72)【発明者】
【氏名】原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】桑田 正弘
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 康史
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-094174(JP,A)
【文献】特許第7200520(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一回の動画撮影で複数のフレーム画像を生成する放射線撮影装置であって、
照射側インターフェース部と有線接続が可能であり、前記有線接続がなされている間、前記照射側インターフェース部からのタイミング信号を繰り返し受信する撮影側インターフェース部と、
前記有線接続の状態において、前記受信したタイミング信号に合わせて前記放射線撮影装置自身の計時情報を補正し、前記有線接続が解除された後
であり、且つ前記撮影側インターフェース部が前記タイミング信号を受信しない状態において、
前記補正した前記放射線撮影装置自身の
前記計時
情報に基づいて前記動画撮影の動作を行う制御部と、
を備える放射線撮影装置。
【請求項2】
放射線照射装置の動作との間にずれが生じている場合に、当該ずれを通知する通知手段を有する請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記有線接続の状態において、前記受信したタイミング信号と、前記放射線撮影装置自身の前記計時情報とのいずれか1つ以上に基づいて計時精度の異常の有無を判断する請求項1又は請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線撮影装置を収納する収納部と、
一回の動画撮影で放射線を複数回連続して照射させる放射線照射装置と、
車輪と、
を備える回診車。
【請求項5】
前記照射側インターフェース部と、前記収納部に収納された前記放射線撮影装置の前記撮影側インターフェース部とは通信ケーブルを介して有線接続される請求項4に記載の回診車。
【請求項6】
一回の動画撮影で
放射線を複数回連続して照射させる放射線照射装置であって、
撮影側インターフェース部と有線接続が可能であり、前記有線接続がなされている間、前記撮影側インターフェース部からのタイミング信号を繰り返し受信する照射側インターフェース部と、
前記有線接続の状態において、前記受信したタイミング信号に合わせて前記放射線照射装置自身の計時情報を補正し、前記有線接続が解除された後
であり、且つ前記照射側インターフェース部が前記タイミング信号を受信しない状態において、
前記補正した前記放射線照射装置自身の
前記計時
情報に基づいて前記動画撮影の動作を行う制御部と、
を備える放射線照射装置。
【請求項7】
放射線撮影装置の動作との間にずれが生じている場合に、当該ずれを通知する通知手段を有する請求項6に記載の放射線照射装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記有線接続の状態において、前記受信したタイミング信号と、前記放射線照射装置自身の前記計時情報とのいずれか1つ以上に基づいて計時精度の異常の有無を判断する請求項6又は請求項7に記載の放射線照射装置。
【請求項9】
前記請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の放射線照射装置と、
収納部と、
車輪と、
を備える回診車。
【請求項10】
前記照射側インターフェース部と、前記収納部に収納された放射線撮影装置の前記撮影側インターフェース部とは通信ケーブルを介して有線接続される請求項9に記載の回診車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置、回診車及び放射線照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影装置で撮影を行うには、制御装置による放射線照射のタイミングと撮影装置による電荷蓄積・読出しのタイミングとの整合をとる必要がある。特に、パルス状の放射線照射を繰り返して複数のフレーム画像を生成する動画撮影では、フレーム間の間隔が短くなるほど撮影装置の蓄積期間が短くなるため、放射線照射のタイミング及び電荷蓄積・読出しのタイミングの高精度(場合によっては数ms~数百μsオーダー)な制御が求められる。
【0003】
タイミングの制御は、撮影装置と制御装置との間でタイミング情報をやりとりすることで行われるのが一般的である。制御装置と撮影装置間の通信が専用線による有線通信にすると、高精度なタイミング制御が可能であるという利点を有する反面、撮影装置を患者下に直接入れて撮影する際に、撮影装置の取回しが悪く撮影を行いにくいという欠点があった。
そこで、撮影装置を無線にすることが求められているのだが、制御装置と撮影装置との間の通信方式が、WLANのようなベストエフォート型のアクセス方式(CSMA/CA等)を用いるものである場合、パケット送信の調整時間が不定である為、通信遅延にバラツキが生じ、高精度なタイミング制御の実現に課題がある。
【0004】
こうした課題に対応するために、例えば特許文献1に記載されたような技術が提案されている。具体的には、まず、撮影装置を制御装置と有線接続して、制御装置と撮影装置とで放射線撮影可能期間情報を共有する。そして、放射線撮影可能期間情報が共有された後は、撮影装置及び制御装置が、それぞれに内蔵されたタイマーによって独自に放射線撮影可能期間に入ったか否かを判断し、放射線撮影可能期間内にX線曝射要求信号をアサートした場合は撮影を行い、放射線撮影可能期間ではないときにX線曝射要求信号をアサートした場合は、キャンセル通知を行うか、次の放射線撮影可能期間に入るまで待つ、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術は、1回のX線発生装置曝射要求スイッチ(以下、曝射要求SW)につき1回の曝射を行うものであるため、曝射を行う度に曝射要求SWを操作又は制御する必要がある。また、曝射要求SWは1stSWと2ndSWの2段階構成となっており、1stSWの操作の後に2ndSWを操作してはじめて曝射が行われるため、一回の曝射にある程度の時間がかかる。つまり、特許文献1に記載された技術を用いて動画撮影を行おうとすると、フレームレートが非常に低くなり、良好な動画を取得することができない可能性が高い。
【0007】
また、制御装置と撮影装置がそれぞれ備える発振子の周波数の誤差等の影響で、制御装置の動作速度と撮影装置の動作速度とに若干の差が出ることが多い。このため、特許文献1に記載された制御装置と撮影装置を用いた場合にも、動画撮影のような比較的長時間に亘る撮影においては、両者が共有していた放射線撮影可能期間情報の開始タイミングがずれてくる可能性がある。特に、特許文献1に記載された技術は、上述したように放射線撮影可能期間外にX線曝射要求信号をアサートした場合、キャンセル通知を行うか、次の放射線撮影可能期間に入るまで待つこととなるため、曝射が一定間隔で行われず、良好な動画を取得することができない可能性がある。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、放射線を照射する放射線照射装置と、放射線を受けることで画像データを生成する放射線撮影装置と、を備える放射線撮影システムにおいて、一方の装置から他方の装置へ計時情報が送信されない状態であっても、動画撮影を安定的に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の問題を解決するために、本発明に係る放射線撮影装置は、
一回の動画撮影で複数のフレーム画像を生成する放射線撮影装置であって、
照射側インターフェース部と有線接続が可能であり、前記有線接続がなされている間、前記照射側インターフェース部からのタイミング信号を繰り返し受信する撮影側インターフェース部と、
前記有線接続の状態において、前記受信したタイミング信号に合わせて前記放射線撮影装置自身の計時情報を補正し、前記有線接続が解除された後であり、且つ前記撮影側インターフェース部が前記タイミング信号を受信しない状態において、前記補正した前記放射線撮影装置自身の前記計時情報に基づいて前記動画撮影の動作を行う制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、一方の装置から他方の装置へ計時情報が送信されない状態であっても、動画撮影を安定的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る放射線撮影システムの構成を表すブロックである。
【
図2】
図1の放射線撮影システムの使用形態の一例を表すブロック図である。
【
図3】
図1の放射線撮影システムが備える放射線照射装置の具体的構成を表すブロック図である。
【
図4】
図1の放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の具体的構成を表すブロック図である。
【
図5】
図1の放射線撮影システムが備える制御システムが行う調整条件の算出方法の一例を表す図である。
【
図6】
図1の放射線撮影システムが備える制御システムが行う計時手段の動作の調整方法の一例を表す図である。
【
図7】
図1の放射線撮影システムが備える制御システムが行う計時手段の動作の調整方法の一例を表す図である。
【
図8】
図1の放射線撮影システムが備える制御システムの斜視図である。
【
図9】
図1の放射線撮影システムの動作を表すタイミングチャートである。
【
図10】同実施形態の実施例2に係る放射線撮影システムの斜視図である。
【
図11】同実施形態の実施例3に係る放射線撮影システムの斜視図である。
【
図12】同実施形態の実施例4に係る放射線撮影システムが備える放射線撮影装置の内部を表す斜視図である。
【
図13】同実施形態の実施例4の変形例に係る放射線撮影システムの斜視図である。
【
図14】(a)は同実施形態の実施例5に係る放射線撮影システムで用いられるデータ構造を表す図であり、(b)は同変形例に係る放射線撮影システムの動作を表す図である。
【
図15】同実施形態の実施例5の変形例に係る放射線撮影システムの動作を表す図である。
【
図16】同実施形態の実施例6に係る放射線撮影システムが実行する処理表すフローチャートである。
【
図17】同実施形態の実施例7に係る放射線撮影システムが実行する処理表すフローチャートである。
【
図18】同実施形態の実施例8に係る放射線撮影システムが実行する処理表すタイミングチャートである。
【
図19】同実施形態の実施例9に係る放射線撮影システムの動作を表す図である。
【
図20】同実施形態の実施例10,11に係る放射線撮影システムの動作を表す図である。
【
図21】同実施形態の実施例12に係る放射線撮影システムが通信に用いる信号の一例を表す図である。
【
図22】同実施形態の実施例13に係る放射線撮影システムの動作を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、図面に例示したものに限定されるものではない。
【0013】
〔放射線撮影システム〕
初めに、本実施形態の放射線撮影システム(以下撮影システム100)の概略について説明する。
図1は、撮影システム100の概略構成を表すブロック図である。
【0014】
本実施形態の撮影システム100は、
図1に示したように、制御システム100aを備えて構成されている。
制御システム100aは、放射線照射装置(以下照射装置1)と、一又は複数の放射線撮影装置(以下撮影装置2)と、を備えて構成されている。
【0015】
照射装置1は、放射線(X線等)を発生させ、その放射線を被検体及びその背後に配置される撮影装置2へ照射するものであり、放射線制御装置(以下制御装置1a)と、管球1bと、を備えて構成されている。この制御装置1aの具体的構成については後述する。
【0016】
撮影装置2は、照射装置1から放射線を受けることで画像データを生成するものであり、照射装置1と通信することが可能となっている。この撮影装置2の具体的構成についても後述する。
【0017】
このように構成された本実施形態の撮影システム100は、照射装置1から、当該照射装置1と撮影装置2との間に配置された被検体へ放射線Xを照射することにより、被検体の撮影を行うことが可能となっている。
また、本実施形態に係る撮影システム100は、動画の撮影を行うことが可能となっている。すなわち、一回の撮影操作(図示しない曝射スイッチの押下)に基づいて、予め設定された時間幅のパルス状の放射線を一定間隔で複数回連続して照射することで、動画を構成する複数枚のフレーム画像を生成することが可能となっている。
【0018】
また、このように構成された本実施形態の撮影システム100は、病院の撮影室等に据え付けて用いることも可能であるし、例えば
図2に示したように、照射装置1に、コンソール1cやアクセスポイント1d、撮影装置2を収納するための収納部1e、制御装置1aと収納部1eに収納された撮影装置2とを接続する通信ケーブル1f、図示しない車輪等を備えることで回診車本体1とし、撮影装置2と合わせて回診車100(
図2では管球1bの図示を省略)として構成することにより移動可能なシステムとして用いることも可能である。
【0019】
病院の撮影室に設置されている撮影台を用いて撮影を行う場合、撮影台に設置された撮影装置2には有線ケーブルを接続し、照射装置1との間で情報の送受信や、撮影装置2への電力の供給等を行うことができる。
例えば上記、撮影装置2との接続に有線ケーブルを用いる場合、有線ケーブルの信号にパルス信号やタイミング信号を含ませることで、照射装置1と撮影装置2のタイミングを合わせて撮影することが可能となる。
しかし、例えば撮影室における撮影でも、車椅子やベッドに乗せたままの状態で撮影を行わなければならない場合があり、そのような場合に撮影装置2に有線ケーブルをつけたままの撮影では、
・ケーブルが邪魔になる
・ケーブルが抜けて通信不能になる危険性がある
・ケーブルが被検体に触れるので衛生面で問題がある
といった問題があり、有線ケーブルを用いない撮影を行いたい、といった要望があった。
【0020】
一方回診車で移動し撮影を行う場合には、被検体が療養している病棟にて撮影を行うこととなる。この場合には被検体が寝ているベッドにて撮影することとなり、収納部1eから撮影装置2を取り出し、被検体とベッドとの間に撮影装置2を入れて撮影を行う必要がある。この場合、上記撮影室で撮影を行う場合以上に、ケーブルが邪魔になる、ケーブルが抜けて通信不能になる危険性がある、ケーブルが被検体に触れるので衛生面で問題がある、といった問題があり、有線ケーブルを用いない撮影を行いたいといった要望があった。
特にFPD(Flat Panel Detector)と呼ばれる従来のCR(Computed Radiography)を用いた撮影では、撮影時に有線ケーブルが不要であったため、CRと同等の操作の容易性を得るために有線ケーブルを用いない撮影を行いたいといった要望があった。
しかし、本実施形態に係る撮影システム100を用いることで、こうした要望に沿った回診車100を構成することができる。
【0021】
また、この撮影システム100は、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)や、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)等の他のシステムと通信可能に構成することもできる。
【0022】
〔放射線照射装置〕
次に、照射装置1が備える制御装置1aの詳細について説明する。
図3は、制御装置1aの具体的構成を表すブロック図である。
【0023】
制御装置1aは、
図3に示したように、照射側制御部11、高電圧発生部12、記憶部13、照射側インターフェース部(以下照射側IF部14)等で構成されている。
また、制御装置1aの各部11~14は、図示しない電源ケーブル又は内蔵バッテリーによって電力の供給を受けることが可能となっている。
【0024】
照射側制御部11は、CPU、RAM等を備え、照射装置1の各部12~14の動作を統括的に制御するように構成されている。
また、照射側制御部11は、発振器(以下、照射側発振器11a)を備えている。照射側発振器11aは、電源がオンにされると所定周期のクロックを生成する水晶発振子やセラミック発振子等で構成することができる。
なお、照射側発振器11aとは別の他の計時手段を用いて計時を行うようにしてもよい。
【0025】
高電圧発生部12は、照射側制御部11からタイミング信号を受信したことに基づいて、予め設定された撮影条件(例えば撮影対象部位、体格等の被検体に関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積等の放射線の照射に関する条件)に応じた電圧を管球1bに印加するようになっている。
撮影条件に動画撮影が含まれている場合には、タイミング信号を受信する度にパルス状の電圧を所定間隔で繰り返し印可するようになっている。
管球1bは、高電圧発生部12から電圧が印加されると、印加された電圧に応じた線量の放射線を発生させる。具体的には、高電圧発生部12からパルス状の電圧が印加されればパルス状の放射線を照射する。
【0026】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成され、各種処理プログラム、及び当該処理プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。
また、記憶部13は、照射側制御部11が行う処理の過程で生成された各種データ(例えば後述する計時情報や調整条件等)を記憶することが可能となっている。
【0027】
照射側IF部14は、各種情報(信号やデータ)の送信と受信のうちの少なくとも一方を行うことが可能に構成されている。
具体的には、通信ケーブル1fを差し込むためのコネクターや、電波を送受信可能なアンテナ、光(赤外線を含む)を発するランプ又は光を検出する光センサー、音(超音波を含む)を発するスピーカー又は音を検出するマイク、接触する機器(撮影装置2等)に振動を伝達する振動子又は振動を検出する振動センサー、磁界を生成するコイル、等で構成することができる。
なお、照射側IF部14をどのような構成とするかは、情報の送信形式に応じて決定することとなる。
【0028】
このように構成された照射装置1の照射側制御部11は、記憶部13に記憶されたプログラムに従って以下のような機能を有することとなる。
例えば、照射側制御部11は、各種撮影条件(撮影対象部位、体格等の被検体に関する条件や、管電圧や管電流、照射時間、電流時間積、フレームレート等の放射線の照射に関する条件)を設定する機能を有している。
また、照射側制御部11は、図示しない曝射スイッチの押下を伝える信号を受信したことに基づいて、高電圧発生部12に対し電圧の印加(放射線の照射)の契機となるタイミング信号を生成するようになっている。
撮影条件に動画撮影が含まれている場合には、フレームレートに応じた周期でタイミング信号を繰り返し生成することとなる。
【0029】
〔放射線撮影装置の構成〕
次に、上記撮影システム100が備える撮影装置2の具体的構成について説明する。
図4は、撮影装置2の具体的構成を表すブロック図である。
【0030】
本実施形態に係る撮影装置2は、図示しない筐体の他、
図4に示したように、撮影側制御部21、放射線検出部22、読出し部23、記憶部24、撮影側インターフェース部(以下撮影側IF部25)等を備えている。
また、撮影装置2の各部21~25は、図示しない電源ケーブル又は内蔵バッテリーによって電力の供給を受けることが可能となっている。
【0031】
撮影側制御部21は、CPU、RAM等で撮影装置2の各部22~25の動作を統括的に制御するように構成されている。
また、撮影側制御部21は、発振器(以下、撮影側発振器21a)を備えている。撮影側発振器21aは、電源がオンにされると所定周期のクロックを生成する水晶発振子やセラミック発振子等で構成することができる。
なお、撮影側発振器21aとは別の他の計時手段を用いて計時を行うようにしてもよい。
【0032】
放射線検出部22は、外部から放射線を受けることで放射線の線量に応じた量の電荷を直接的又は間接的に生成する放射線検出素子、及び各放射線検出素子と配線との間に設けられ放射線検出素子と配線との間の通電が可能なオン状態又は通電が不能なオフ状態に切り替え可能なスイッチ素子を有する画素が二次元状に複数配列された基板を有するものであればよく、従来公知のものを用いることができる。
すなわち、撮影装置2は、シンチレーターを備え、シンチレーターが放射線を受けることで発した光を検知するいわゆる間接型のものであってもよいし、シンチレーター等を介さずに放射線を直接検知するいわゆる直接型のものであってもよい。
【0033】
読出し部23は、複数の放射線検知素子にそれぞれ蓄積された電荷量を信号値として読出し、各信号値を基に放射線画像の画像データを生成することが可能に構成されていればよく、従来公知のものを用いることができる。
【0034】
記憶部24は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成され、各種画像処理プログラムを含む各種処理プログラム、当該プログラムの実行に必要なパラメーターやファイル等を記憶している。
また、記憶部24は、撮影側制御部21が行う処理の過程で生成された各種データ(例えば後述する計時情報や調整条件等)を記憶することが可能となっている。
【0035】
撮影側IF部25は、各種情報(信号やデータ)の送信と受信のうちの少なくとも一方(ただし、照射側IF部14が送信と受信のうちの一方のみを行う場合には少なくとも他方)を行うことが可能に構成されている。
具体的には、通信ケーブル1fを差し込むためのコネクターや、電波を送受信可能なアンテナ、光(赤外線を含む)を発するランプ又は光を検出する光センサー、音(超音波を含む)を発するスピーカー又は音を検出するマイク、接触する機器(照射装置1等)に振動を伝達する振動子又は振動を検出する振動センサー、磁界を生成するコイル、等で構成することができる。
なお、撮影側IF部25をどのような構成とするかは、照射側IF部14の構成に応じて決定することとなる。
【0036】
このように構成された撮影装置2の撮影側制御部21は、記憶部24に記憶されたプログラムに従って以下のような機能を有することとなる。
例えば、撮影側制御部21は、撮影装置2の状態を、「初期化状態」、「蓄積状態」、「読出し・転送状態」のうちのいずれかの状態に切り替える機能を有している。
なお、状態を切り替えるタイミングについては後述する。
【0037】
「初期化状態」は、各スイッチ素子にオン電圧が印加され、放射線検出素子が発生させた電荷が各画素に蓄積されない(電荷が信号線に放出される)状態である。
「蓄積状態」は、各スイッチ素子にオフ電圧が印加され、放射線検出素子が発生させた電荷が画素内に蓄積可能となる(電荷が信号線に放出されない)状態である。
「読出し・転送状態」は、各スイッチ素子にオン電圧が印加されるとともに、読み出し部23が駆動して、流れ込んできた電荷に基づく信号値を読出すことが可能な状態である。
【0038】
〔制御システム〕
次に、本発明の要部である、上記撮影システム100が備える制御システム100aの詳細について説明する。
【0039】
上述したように、本実施形態に係る制御システム100aは、照射装置1及び撮影装置2によって構成されている。
照射装置1及び撮影装置2は、上述した放射線照射機能や、電荷蓄積・読み出し機能等の他に、以下に挙げるような機能を有することにより制御システム100aとして動作することが可能となっている。
【0040】
まず、照射装置1の照射側制御部11は、照射側発振器11aが生成するクロックを用いて、定期的に計時情報を生成する機能を有している。
ここで生成される計時情報には、例えば、タイミング信号や時刻情報が含まれる。
タイミング信号は、一又は複数のクロックが生成される度に出力されるパルス状の信号等を指す。
時刻情報は、クロックに合わせてカウントアップするタイマーのカウント値等を指す。
また、照射装置1の各部11~14は、照射側発振器11aが生成するクロックを基に動作するため、照射側制御部11による計時は、照射装置1と連動して行われることとなる。
【0041】
また、撮影装置2の撮影側制御部21も、撮影側発振器21aが生成するクロックを用いて、定期的に計時情報を生成する機能を有している。
ここで生成される計時情報の形式は、照射装置1が生成する計時情報と合わせるのが好ましい。
また、撮影装置2の各部21~25は、撮影側発振器21aが生成するクロックを基に動作するため、撮影側制御部21による計時は、撮影装置2と連動して行われることとなる。
【0042】
照射装置1が動作の基準となる親機で、撮影装置2が親機の動作に従う子機のときは、照射側制御部11が第一計時手段、この照射側制御部11が生成する計時情報が第一計時情報、撮影側制御部21が第二計時手段、この撮影側制御部21が生成する計時情報が第二計時情報となる。
一方、撮影装置2が親機で、照射装置1が子機のときは、撮影側制御部21が第一計時手段、この撮影側制御部21が生成する計時情報が第一計時情報、照射側制御部11が第二計時手段、この照射側制御部11が生成する計時情報が第二計時情報となる。
【0043】
[調整方法1]
また、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち親機となる装置の制御部は、生成された第一計時情報を子機となる装置へ送信する機能を有している。
この第一計時情報の送信機能は、照射装置1の照射側IF部14と撮影装置2の撮影側IF部25とが接続されている状態のときに有効となる。接続されている状態としては、照射側IF部のコネクターに通信ケーブル1fの一端側のコネクターが差し込まれるとともに、撮影側IF部のコネクターに通信ケーブル1fの他端側のコネクターが差し込まれているとき(有線接続されているとき)や、一方のIF部に備えられているアンテナが他方のIF部のアンテナに近づけられているとき、一方のIF部に備えられているランプが他方のIF部の光センサーに近づけられているとき(光ケーブルで接続されているときを含む)、一方のIF部のスピーカーが他方のIF部のマイクに近づけられているとき、一方のIF部のコイルが他方のIF部のコイルに近づけられているとき、一方のIF部の振動子が他方のIF部のセンサーに接触しているとき等が挙げられる。
【0044】
なお、照射装置1と撮影装置2を接続する通信ケーブル1fを用いた有線通信にて第一計時情報を送信する場合には、例えばNTP(Network Time Protocol)などのプロトコルや、国際標準規格IEEE Std.1588-2008(以下IEEE1588と略す)に規定されているような方法を用いることもできる。
上述したような機能を有する本実施形態の照射側制御部11と撮影側制御部21のうち親機となる装置に備えられる制御部は、本発明における送信手段をなす。
【0045】
なお、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち子機となる装置の制御部には、親機となる装置から第一計時情報を受信すると、当該第一計時情報の受信時における自身の第二計時情報を、受信した第一計時情報に基づいて補正する機能を持たせるのが好ましい。
【0046】
また、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方は、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の制御部の動作を調整するための調整条件を記憶部13,24に記憶する機能を有する。
なお、ここで言う「制御部の動作」とは、計時情報を生成するタイミングや、計時速度のことを指す。
【0047】
また、「調整条件」とは、照射装置1の動作と撮影装置2の動作がずれないようにするための照射側制御部11や撮影側制御部21の動作を指す。
具体的には、照射側制御部11と撮影側制御部21の少なくとも一方の制御部の動作を調整した直後に、照射側制御部11が生成する第一計時情報と撮影側制御部21が生成する第二計時情報との差が、前に送信された第一計時情報と生成された第二計時情報との差に比べて小さくなるような照射側制御部11及び撮影側制御部21の動作である。
【0048】
この調整条件は、製造時等の段階で予め装置に記憶させるものであってもよいし、本制御システム100aの使用途中で記憶させるものであってもよい。
また、調整条件を使用途中で記憶させる場合、記憶させるタイミングは、撮影期間以外であることが好ましい。撮影期間以外であれば、IF部14,25同士を接続している間でも、接続が解除されているときでもよい。
また、調整条件は、制御システム100aとは異なる他の装置で算出されたものを記憶することとしてもよいし、照射側制御部11と撮影側制御部21の少なくとも一方の制御部に調整条件を算出する機能を持たせ、制御システム100aにおいて算出されたものを記憶することとしてもよい。このようにした場合、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち算出する方の制御部は、本発明における調整条件算出手段をなすこととなる。
また、調整条件は、照射装置1と撮影装置2のうち、調整を行う方の装置に備えられる記憶部に記憶するのが好ましい。
以上のような機能を有する撮影側制御部21は、本発明における記憶手段をなす。
【0049】
調整条件の算出方法としては、例えば以下に挙げるような方法がある。
[調整条件算出1](個々の発振器の特性に基づく算出)
計時情報を生成するためのクロックは、クロックを生成する発振器の精度で誤差の範囲が変わることが知られている。例えば、クロック周波数が10MHzに設定されている発振器は、実際に生成するクロックの周波数が10.1MHzだったり9.9MHzだったりする等、個体差がある。照射側発振器11aと撮影側発振器21aにこうした個体差があると、同じ値の計時情報を生成するタイミングがずれてくることとなる。
そこで、例えば、各発振器11a,21aが生成するクロックの周波数を予め個別に測定し、測定値と設定値との差を算出する。そして、その差が小さくなるような、各制御部11,21のうち、調整を行うことになる制御部の動作を調整条件とする。
この方法を用いれば、発振器11a,21aを有する制御部毎に、精度の高い調整条件を算出することができる。
【0050】
[調整条件算出2](二つの発振器の差に基づく算出)
上述したように、発振器の精度には個体差があるため、照射側制御部11と撮影側制御部21に、クロック周波数の設定値が同じ発振器をそれぞれ用いても、同じ値の計時情報を生成するタイミングがずれてくる可能性が高い。
そこで、親機の制御部(第一計時手段)により生成されるクロックを、照射側IF部14及び撮影側IF部25を用いて、連続して子機の制御部(第二計時手段)へ送信し続ける。そして、子機の制御部において、送信された親機のクロックと子機が生成したクロックをそれぞれカウントし、カウント開始から例えば所定期間tc経過したタイミング(例えば
図5の(1)で示されるタイミング)で、親機の制御部が生成したクロックの数と、子機の制御部が生成したクロックの数をそれぞれ計測し、それらの差を算出する。そして、その差が小さくなるような、各制御部11,21のうち、調整を行うことになる制御部の動作を調整条件とする。
【0051】
なお、所定期間tcは、動画撮影を行う撮影期間と、各制御部のクロック周波数の差に基づいて決めることができる。そのため、所定期間tcの長さを、撮影種類毎に変える構成としてもよい。
【0052】
また、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方は、撮影装置2が第一計時情報を取得しない状態において、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の制御部の動作を、記憶された調整条件に基づいて調整する機能を有している。
ここで、「撮影装置2が第一計時情報を取得しない状態」とは、照射装置1の照射側IF部14と撮影装置2の撮影側IF部25との接続を意識的に解除した(例えば、通信ケーブル1fを照射装置1又は撮影装置2から外した)状態や、照射側IF部14と撮影側IF部25との接続を解除していないが通信環境の悪化などにより第一計時情報が届かない状態を指す。
【0053】
調整方法としては、例えば以下に挙げるような方法がある。
[調整方法1](タイミング信号の間引き・追加)
各制御部が生成する第一計時情報及び前記第二計時情報が、パルス状のタイミング信号である場合には、上記調整条件は、タイミング信号を間引く又は追加する際の信号間隔及び数となる。
この場合、例えば
図6(a)に示したように、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち計時速度の速い方の制御部がタイミング信号を所定数生成する毎に(計時速度の速い方の制御部が次回生成するタイミング信号と、遅い方の制御部が次回生成する対応するタイミング信号とのずれ幅dが許容されるずれ幅dpを上回ることとなるときに)一又は複数の生成予定のタイミング信号を間引く、あるいは
図6(b)に示したように、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち計時速度の遅い方の制御部がタイミング信号を所定数生成する毎に一又は複数の新たなタイミング信号を挿入する、あるいはその両方を行う。
【0054】
(調整方法2:時刻情報の加算・減算)
第一計時情報及び第二計時情報が、時刻情報である場合には、上記調整条件は、時刻情報の時刻調整量となる。
この場合、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち計時速度の速い方の制御部が生成した計時情報から時刻調整量を減算する、あるいは照射側制御部11と撮影側制御部21のうち計時速度の遅い方の制御部が生成した計時情報に時刻調整量を加算する、あるいはその両方を行う(例えば、第一計時情報と第二計時情報の中間の時刻にする)。
【0055】
(調整方法3:計時速度の加速・減速)
計時情報の形態に関係なく、制御部の計時速度を調整することもできる。その場合には、上記調整条件は、計時速度の速度調整量となる。
この場合、例えば
図7に示したように、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち計時速度の速い方の制御部の計時速度を速度調整量の分だけ減速する、あるいは照射側制御部11と撮影側制御部21のうち計時速度の遅い方の制御部の計時速度を速度調整量の分だけ加速する、あるいはその両方を行う(例えば、照射側制御部11と撮影側制御部21の中間の速度にする)。
上述したような機能を有する撮影側制御部21は、本発明における調整手段をなす。
【0056】
なお、ここまでは、撮影側制御部21の動作を照射側制御部11に近づける、照射側制御部11の動作を撮影側制御部21に近づける、あるいは照射側制御部11の動作と撮影側制御部21の動作を互いに近づける調整方法について説明したが、例えば、制御システム100aに、照射側発振器11aとも撮影側発振器21aとも異なる他の計時手段を備え、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の動作を他の計時手段の動作に近づけるようにしてもよい。
【0057】
[ズレの通知]
また、ここまでは、照射側制御部11の動作と撮影側制御部21の動作にずれが生じている場合に、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の動作を調整することについて説明したが、調整を行わずに、ずれていることを通知するようにしてもよい。
ずれていることを通知する通知手段Nとしては、ずれている旨を画像や文字で表示する表示器や、ずれている旨の音声を出力するスピーカー、ずれている場合に振動する振動子等が挙げられる。
通知手段Nを設ける位置は、例えば
図8に示したように、照射装置1、撮影装置2、あるいは通信ケーブル1fのコネクター等、制御システム100aにおけるユーザーが視認できる箇所であれば何処でもよい。
【0058】
また、ずれていることを検知する装置と、その旨を通知する装置とを異なる場合には、ずれていることを検知する装置からその旨を通知する装置へ通知内容を送信する通信手段(例えば、電波を送受信可能なアンテナ、光(赤外線を含む)を発するランプ又は光を検出する光センサー等)を設けるようにしてもよい。
このようにすれば、ユーザーは、照射装置1と撮影装置2の動作タイミングがずれてしまうことを撮影前に知ることができるため、正確でないタイミングで撮影が行われ、被検体が無駄に被曝してしまうことを防止することが可能となる。
【0059】
〔放射線撮影システムを用いた撮影〕
次に、上記撮影システム100が行う基本的な撮影動作について説明する。
図9は、撮影システム100の動作を表すタイミングチャートである。
【0060】
(動作開始)
まず、ユーザーが、照射装置1の照射側制御部11及び撮影装置2の撮影側制御部21による計時開始の契機となる動作を行う(例えば撮影システム100の各機器の電源をオンにする等)。すると、照射側制御部11及び撮影側制御部21がそれぞれ計時を開始する。このとき、各機器の電源がオンにされるタイミングが異なれば、照射側制御部11の撮影側制御部21の計時開始タイミングと撮影側制御部21の計時開始タイミングも異なることとなり、照射装置1による計時情報の生成タイミングと撮影装置2による計時情報の生成タイミングは、この段階では異なることとなる。
【0061】
(照射装置1と撮影装置2の接続)
ここで、照射装置1の照射側IF部と撮影装置2の撮影側IF部とを接続する(予め接続しておいてもよい)と、照射装置1と撮影装置2のうち親機となる装置から第一計時情報が子機となる装置へ送信される。第一計時情報を受信した子機は、自身の制御部の動作を、親機の制御部の動作に合わせて補正する(同じタイミングで同じ値の計時情報を生成するようになる)。
【0062】
(照射装置1と撮影装置2との接続解除) その後、ユーザーが、照射側IF部と撮影側IF部との接続を解除する(撮影装置2を撮影位置へ移動させる)。すると、子機は、第一計時情報を取得しない状態となり、親機と子機がそれぞれ独自に計時を行う。
このとき、照射側発振器11aが生成するクロックの周波数と撮影側発振器21aが生成するクロックの周波数に個体差がある場合、照射側制御部11の動作と撮影側制御部21の動作に、時間経過と共にずれが生じることとなる。
しかし、照射側制御部11と撮影側制御部21の少なくとも一方が、自身の動作を、上記ずれが小さくなるように定期的に調整する。これにより、照射側制御部11の動作と撮影側制御部21の動作のずれは、常に所定範囲内に収まり、それ以上広がることが無い。
【0063】
制御システム100aに、調整条件を算出する機能を持たせている場合には、ここまでのタイミングで調整条件を算出し、記憶部に記憶する。
こうして、調整条件の算出、あるいは調整条件の記憶、あるいは制御部の動作の調整、の少なくとも一つが撮影期間以外(撮影期間の前)に行われる。
【0064】
(撮影期間)
その後、制御システム100aが、照射側制御部11と撮影側制御部21のうち親機となる装置に備えられる制御部及び子機となる装置に備えられる制御部を用いて、照射装置1による放射線発生のタイミングと、撮影装置2による画像データ生成のタイミングと、をそれぞれ制御する。
具体的には、例えば
図9に示したように、撮影側制御部21の第二計時情報が第一所定値(t1)になると(計時開始から第一所定時間(t1)が経過すると)、撮影装置2が、各スイッチ素子にオン電圧を印加して、各画素に蓄積されていた暗電荷を信号線に放出する初期化を行う。
なお、撮影装置2の放射線検出素子の構成によっては、電荷読出し時に蓄積電荷を解放し初期化動作を行う場合もある。
【0065】
その後、撮影側制御部21が生成する計時情報が第一所定値より大きい第二所定値(t2)になると(計時開始から第二所定時間(t2)が経過すると)、撮影装置2が、各走査線へオフ電圧を印加して、放射線検出素子が発生させた電荷を画素内に蓄積可能な状態となる。撮影装置2は、この電荷を蓄積可能な状態を、撮影側制御部21が生成する計時情報が第二所定値よりも大きい第四所定値(t4)となるまで(計時開始から第四所定時間経過するまで)継続する。
【0066】
また、照射側制御部11が生成する計時情報が第二所定値より大きく第四所定値よりも小さい第三所定値(t3)になると(計時開始から第三所定時間経過すると)、照射装置1が、放射線を被検体及びその背後の撮影装置2へ照射する。すなわち、照射装置1は、撮影装置2が電荷を蓄積可能な状態となっている間(t2~t4)に放射線を照射する。
そして、撮影装置2は、放射線を受けると、放射線検出部22の各放射線検出素子で電荷を生成し、それを各画素に蓄積する。
【0067】
また、撮影側制御部21が生成する計時情報が第三所定値よりも大きい第四所定値(t4)になると(計時開始から第四所定時間(t4)が経過すると)、撮影装置2が、まず、初期化と同じ流れで、各走査線に接続された各スイッチ素子にオン電圧を印加し、各画素に蓄積していた電荷を各信号線に放出する。そして、読出し部23で流れ込んできた電荷に基づく信号値を読み出し、読み出した複数の信号値を基に画像データを生成する。
動画撮影の場合、照射装置1及び撮影装置2は、それぞれが生成する計時情報に基づいて、上述した一連の動作を撮影するフレーム画像の枚数分だけ繰り返す。
【0068】
〔効果〕
しかし、本実施形態に係る制御システム100aによれば、子機となる装置の制御部が第一計時情報を取得しない状態においても、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の制御部の動作を、記憶された前記調整条件に基づいて調整するため、照射側制御部11が計時情報を生成するタイミングと撮影側制御部21が計時情報を生成するタイミングのずれを、撮影に影響しない範囲内に収めることができる。
従って、動画撮影中に一方の装置から他方の装置へ計時情報が送信されなくても、動画撮影を安定的に行うことができる。
【実施例1】
【0069】
次に、上記実施形態に係る撮影システム100を用いる際の具体的な実施例について説明する。
【0070】
[実施例1]
計時情報の基となるクロックを生成する発振器は、使用環境(温度等)によって生成するクロックの周波数を僅かに変化させてしまう。
このような課題に鑑み、調整条件の算出や動作の調整を、制御システム100aが実際に撮影するときの位置に設置された状態で、使用される前(撮影開始前)に行うようにしてもよい。
このようにすれば、調整条件を、発振器の精度だけではなく、制御システム100aの使用環境の変化も加味して算出することができるため、より精度の高い調整条件とすることができる。
【0071】
[実施例2]
上記実施形態に係る撮影システム100を用いた撮影においては、効率的な撮影の観点から、できるだけ少ない(単純な)作業で、できるだけ多くの情報を送受信できるようにすることが求められている。
このような課題に鑑み、IF部同士を接続して第一計時情報を送信する際、第一計時情報以外の他の情報も送受信できるようにしてもよい。
具体的には、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の制御部に、これから送信しようとする計時情報に所定の情報を重畳させる機能を持たせる。そして、通信ケーブル1fを接続したときに、通信ケーブル1fのプラグやコネクターに設けられた複数の端子のうち、計時情報を送受信するための端子以外の他の端子を用いて所定の情報を送受信するようにする。
このようにすれば、計時情報を送信する作業を行うだけで、他の情報の送受信を並行して行うことができるため、撮影の作業性を向上させることが可能となる。
【0072】
[実施例3]
無線通信は、環境の影響を比較的受けやすい、すなわち、電波環境が悪いと通信を行いにくくなるため、ユーザーが有線通信を優先して用いたいと考える場合がある。
このため、照射装置(回診車本体)1と撮影装置2とが、無線によっても有線によっても接続されている場合には、電波環境に応じて、有線通信を優先的に用いるようにしてもよい。すなわち、例えば
図10に示したように、無線による通信を遮断し、有線で計時情報や画像データ等の送受信を行う。
このようにすれば、電波環境に依存しない安定した通信を行うことができ、撮影の作業性を向上させることが可能となる。
【0073】
[実施例4]
無線通信は、通信ケーブルを接続する手間が無い等、取り回しの点でメリットが多いため、ユーザーが無線通信を優先的に用いるようにしたいと考える場合がある。
特に、近年のモバイル端末は、高解像度の画像を出力することが可能なものが多く、かつ無線通信によるデータ通信速度も向上しているため、こうしたモバイル端末3を撮影システム100に備え、回診において撮影装置2のバッテリーを充電しつつ、モバイル端末3で画像確認を行う、といった使い方が求められている。
【0074】
このため、照射装置1と撮影装置2とが、無線によっても有線によっても接続されている場合には、無線通信を優先的に用いるようにしてもよい。すなわち、有線による通信を遮断し(通信ケーブルは差し込んだ状態のままでもよい)、例えば
図11に示したように、無線で計時情報や画像データ等の送受信を行う。その際、アクセスポイント1dを介して、照射装置(回診車本体)1、撮影装置2、モバイル端末3がそれぞれ無線通信を行えるようにする。
このようにすれば、モバイル端末3を用いて撮影画像をその場で確認することができるため、撮影の度に回診車本体1に搭載されたモニタ―まで移動して確認する必要がなくなり、撮影の作業性を向上させることが可能となる。
【0075】
[実施例5]
上記実施形態に係る撮影システム100に上記実施例3,4で挙げた、有線通信を優先する機能と無線通信を優先する機能を両方持たせようとすると、どちらの機能を用いるか切り替えるための手段が必要となる。
このような課題に鑑み、例えば
図12に示したように、機能を切り替えるためのスイッチ26を子機(
図12には、撮影装置2の場合を例示したが、照射装置1でもよい)の基板Sに設け、工場出荷時等に切り替えるようにしてもよい。
【0076】
なお、切り替えるためのスイッチ26を、例えば
図13に示したように、子機(
図13には、撮影装置2の場合を例示したが、照射装置1でもよい)の表面に設け、ユーザーが所望のタイミングで切り替えできるようにしてもよい。
スイッチ26の形式としては、例えば、押下するボタン式のものや、タッチパネル式のもの、スライド式のもの等が挙げられる。
また、制御システム100aに、当該制御システム100aと通信可能な外部装置(例えばコンソール)を備え、コンソールからの指示信号に従って切り替えるようにしてもよい。
このようにすれば、有線通信を優先する機能と無線通信を優先する機能のうちどちらの機能を用いるかを、使用するケースに応じて切り替えることができるため、作業性を向上させることが可能となる。
【0077】
[実施例6]
無線又は有線でデータを送受信する際には、例えば
図14(a)に示したように、データの始まりの前にプリアンブルを付す場合がある。
そこで、上記実施形態に係る制御システム100aにおいては、データに付されるプリアンブルを第一計時情報として用いるようにしてもよい。
具体的には、例えば
図14(b)に示したように、親機となる装置の制御部と子機となる装置の制御部の少なくとも一方の制御部に、データからプリアンブルを取得する機能や、取得したプリアンブルに基づいて自身の生成する第二計時情報を補正する機能、受信したプリ暗ブルと生成された第二計時情報に基づいて調整条件を算出する機能等を持たせる。
このようにすれば、専用の通信ケーブルや無線通信方式を追加することなく第一計時情報を子機に送信し、子機の動作を補正したり調整条件を算出したりすることが可能となる。
【0078】
なお、プリアンブルを用いて子機の動作を修正した直後から、親機と子機の持つ発振器11a,21aの精度の差により、再び親機の動作と子機の動作がずれてくることが考えられる。このため、撮影の直前(例えば通信ケーブルを外すとき等)に、プリアンブルを用いて再度子機の動作を補正するようにしてもよい。
具体的には、例えば
図15に示したように、親機の制御部に、曝射スイッチが押下されたこと等に基づいて、プリアンブルを再送信する機能を持たせる。
このようにすれば、撮影直前に子機の動作が補正され、IF部14,25同士の接続が解除された後に生じる動作のずれも抑制されるため、照射装置1の動作と撮影装置2の動作がずれた状態で撮影を行ってしまうことを確実に防止することが可能となる。
【0079】
[実施例7]
上記撮影システム100を用いた撮影において、IF部14,25同士の接続を解除した後(撮影期間等)の照射装置1と撮影装置2のうち、子機となる装置による計時は自走にて行われる。
このとき、子機の制御部に何らかの異常があると、照射装置1による放射線の照射タイミングと、撮影装置2側の電荷蓄積タイミングとが想定以上に大きくずれ、被検体を無駄に被曝させてしまう可能性がある。
このような課題に鑑み、照射側IF部と撮影側IF部とを接続する際に、子機となる制御部の動作の精度を測定して設定値と比較し、異常の有無を確認するようにしてもよい。
具体的には、例えば
図16に示したように、親機の動作の精度と子機の動作の精度とを比較し(ステップS1)、子機の発振器(計時手段)に異常がないと判断した場合(ステップS2;Yes)は、撮影シーケンスを継続する(ステップS3)。一方、子機の発振器に異常があると判断した場合(ステップS2;No)は、異常時の処理を行う(ステップS4)。
【0080】
なお、ステップS1において、動作の精度を確認する際には、発振器11a,21aが生成するクロックの精度を確認するようにしてもよいし、発振器11a,21aに連動した計時情報の出力の精度を確認するようにしてもよい。
また、ステップS4における、異常時の処理としては、異常がある旨の表示や、撮影シーケンスの中止などが挙げられる。
このようにすれば、撮影前に、子機となる制御部の動作の精度を確認することにより、制御部に異常がないか確認することができるため、制御部が異常な状態で撮影を行ってしまい、被検体を無駄に被曝させてしまうのを確実に防止することが可能となる。
【0081】
[実施例8]
また、子機の制御部に何らかの異常があると、照射装置1による放射線の照射タイミングと、撮影装置2側の電荷蓄積タイミングとが想定以上に大きくずれ、被検体を無駄に被曝させてしまう可能性がある、という課題に鑑み、子機となる装置に、その制御部が備える発振器11a,21aとは異なる他の計時手段を備え、他の計時手段が生成する第三計時情報に基づいて子機の動作の精度を確認するようにしてもよい。
具体的には、例えば
図17に示したように、他の計時手段の動作の精度と子機の動作の精度とを比較し(ステップS11)、子機の発振器(計時手段)に異常がないと判断した場合(ステップS2;Yes)は、撮影シーケンスを継続する(ステップS3)。一方、子機の発振器に異常があると判断した場合(ステップS2;No)は、異常時の処理を行う(ステップS4)。
【0082】
第三計時情報としては、例えば電波時計のカウント値やNTPで規定されている時刻情報を用いることができる。
このようにすることによっても、撮影前に、子機となる制御部の動作の精度を確認することにより、制御部に異常がないか確認することができるため、制御部が異常な状態で撮影を行ってしまい、被検体を無駄に被曝させてしまうのを確実に防止することが可能となる。
【0083】
[実施例9]
また、子機の制御部に何らかの異常があると、照射装置1による放射線の照射タイミングと、撮影装置2側の電荷蓄積タイミングとが想定以上に大きくずれ、誤った画像が生成されてしまう可能性がある。このような誤った画像を元に診断を行うと、医師が誤った診断をしてしまうことになってしまう。
このような課題に鑑み、例えば
図18に示したように、撮影を終えた後に、子機となる制御部の動作の精度を測定して設定値と比較し、異常の有無を確認するようにしてもよい。
なお、異常があった場合に、撮影画像が異常な状態で撮影された可能性があることを、ユーザーに通知するようにしてもよい。
このようにすれば、撮影前に、子機となる制御部の動作の精度を確認することにより、制御部に異常がないか確認することができるため、制御部が異常な状態で撮影を行ってしまい、医師が誤った診断をしてしまうのを確実に防ぐことができる。
【0084】
[実施例10]
照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の制御部の動作を調整するのに時間を要し、すぐに撮影を行いたくても行えないという問題があった。しかし、救急医療の現場等では、撮影を行いたいときに直ちに行えることが重要であり、このような問題の解消が求められていた。
このような課題に鑑み、照射側制御部11と撮影側制御部21のうちの少なくとも一方の制御部の動作の調整(同期処理)を、例えば
図19に示したように、撮影画像を安定化させるために撮影前に行う撮影装置2のウォームアップの際に行うようにしてもよい。
このようにすれば、撮影装置2のウォームアップと並行して調整が行われ、ユーザーが撮影準備を開始してから撮影が可能になるまでの時間が短縮されるため、ユーザーが撮影を行いたいときに、より早く行うことが可能となる。
【0085】
[実施例11]
動画撮影では、撮影内容によって必要なフレームレートが変わってくる。
一方、フレームレートを高くすると、その分撮影枚数が多くなり、被検体の被曝量が増加してしまう。このため、動画を撮影する際には、撮影内容に応じた必要最小限のフレームレートで撮影することが求められる。
そこで、例えば
図20(a)に示したように、照射装置1及び撮影装置2が、所定時間tが経過する毎にそれぞれタイミング信号を生成し、タイミング信号を生成する毎に放射線の発生、あるいは電荷の蓄積・読み出しをそれぞれ行っていたところを、
図20(b)に示したように、タイミング信号の生成周期は変えずに、N(=2,3・・)個のタイミング信号を生成する度に放射線の発生、あるいは電荷の蓄積・読み出しをそれぞれ行わせる(間のN-1個のタイミング信号を飛ばす)ことにより、フレームレートを変更するようにしてもよい。
【0086】
このようにすれば、被検体が過度に被曝してしまうのを抑制することが可能になるとともに、撮影した画像データの保存量を抑制することが可能となる。
また、フレームレートの変更機能を有する放射線照射装置や放射線撮影装置は、一般に高性能であるため価格が高いものが多いが、このようにすれば、幅広い放射線照射装置や放射線撮影装置に低コストでフレームレートの変更機能を持たせることができる。
【0087】
[実施例12]
また、動画を撮影する際には、撮影内容に応じた必要最小限のフレームレートで撮影することが求められる、という課題に鑑み、上記実施例11のように、照射装置1や撮影装置2がN個のタイミング信号を生成する毎に動作するようにするのではなく、例えば
図20(c)に示したように、タイミング信号の生成間隔を変更する、すなわち、照射装置1及び撮影装置2が、所定時間tのN(=2,3・・)倍の時間が経過する毎にタイミング信号を生成し、タイミング信号を生成する度に動作させることにより、フレームレートを変更するようにしてもよい。
【0088】
このようにすることによっても、被検体が過度に被曝してしまうのを抑制することが可能になるとともに、撮影した画像データの保存量を抑制することが可能となる。
また、フレームレートの変更機能を有する放射線照射装置や放射線撮影装置は、一般に高性能であるため価格が高いものが多いが、このようにすれば、幅広い放射線照射装置や放射線撮影装置に低コストでフレームレートの変更機能を持たせることができる。
【0089】
[実施例13]
第一計時情報の送信に用いられる信号は、単独で使用する場合の他、他の信号と共用する場合が考えられる。
そして、他の信号と共用される場合、信号の波形にはいくつかのパターンが考えられる。
このため、第一計時情報の送信に用いられる信号の波形を、例えば
図21(a)に示した単パルス形状、
図21(b)に示したエッジ形状、
図21(c)に示した複数パルス形状等とするのが好ましい。
図21(a)~(c)に挙げたような波形の信号は、他の信号としても用いられるため、様々なシステムに応用することが可能となる。
また、第一計時情報の送受信に他の信号を送受信するための回路を併用することができ、第一計時情報を送受信するための専用回路を設ける必要がなくなるため、装置の製造コストやサイズ等を抑制することが可能となる。
【0090】
[実施例14]
実施例13で挙げたような波形(単パルス方式、エッジ検出方式、複数パルス方式)の信号で第一計時情報を送信する場合、そのためだけに配線を使用しなければならず、専用線が必要となる場合があった。特に、LANケーブル等、一般に普及している規格に基づく配線を用いる場合には、配線が足りなくなってしまうという問題があった。
このような課題に鑑み、コマンドの送受信を行う配線を用い、
図21(d)に示したようなコマンドの形態にて第一計時情報を送信するようにしてもよい。
【0091】
その際、コマンドの中に、例えば
図22に示したように、信号化したときに第一計時情報として用いることが可能な文字列(例えば0と1が繰り返されることとなるような文字列)を加え、コマンドの一部として送信するようにしてもよいし、コマンド送受信とは異なるタイミングで第一計時情報を送信するための期間を設け、第一計時情報として用いることが可能な文字列を送受信するようにしてもよい。
このようにすれば、第一計時情報を送信するための専用線が不要となるため、照射装置1と撮影装置2との間の配線を少なくすることができる。
【符号の説明】
【0092】
100 放射線撮影システム(回診車)
100a 制御システム
1 放射線照射装置(回診車本体)
1a 放射線制御装置
11 照射側制御部
11a 照射側発振器
12 高電圧発生部
13 記憶部
14 照射側インターフェース部
1b 管球
1c コンソール
1d アクセスポイント
1e 収納部
1f 通信ケーブル
2 放射線撮影装置
21 撮影側制御部
21a 撮影側発振器
22 放射線検出部
23 読出し部
24 記憶部
25 撮影側インターフェース部
26 スイッチ
3 モバイル端末
S 基板