(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】支援装置、支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 15/02 20060101AFI20240509BHJP
【FI】
G06F15/02 310K
G06F15/02 315F
(21)【出願番号】P 2022210999
(22)【出願日】2022-12-28
(62)【分割の表示】P 2020157808の分割
【原出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 博明
【審査官】坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3207941(JP,U)
【文献】特開平10-80482(JP,A)
【文献】特開平3-159653(JP,A)
【文献】特開2018-023546(JP,A)
【文献】登録実用新案第3103399(JP,U)
【文献】特開平7-112024(JP,A)
【文献】特開2001-299911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単位時間あたりに滴下すべき滴下数を導出するために必要な複数のパラメータについてそれぞれの値の入力を促す入力案内を表示部に表示させるとともに、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて導出された前記滴下数を前記表示部に表示させる制御手段を備え、
前記制御手段は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの第1滴下数を前記表示部に一旦表示させた後に、前記単位時間が第1の値とは異なる第2の値に設定されたときの第2滴下数を前記表示部に表示させ、
前記第1の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値にかかわらず共通に設定される値であり、
前記第2の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて設定される値であって前記第2滴下数が所定の基準値に収まるように設定された値である、
ことを特徴とする支援装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの滴下数を前記表示部に表示させているときに所定のユーザ操作が検出された場合に、前記単位時間が前記第2の値に設定されたときの滴下数を前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2滴下数を前記第2の値とともに前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第1滴下数を前記第1の値とともに前記表示部に表示させる、
ことを特徴とする請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の支援装置。
【請求項5】
支援装置が実行する支援方法であって、
単位時間あたりに滴下すべき滴下数を導出するために必要な複数のパラメータについてそれぞれの値の入力を促す入力案内を表示部に表示させるとともに、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて導出された前記滴下数を前記表示部に表示させる制御処理を含み、
前記制御処理は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの第1滴下数を前記表示部に一旦表示させた後に、前記単位時間が第1の値とは異なる第2の値に設定されたときの第2滴下数を前記表示部に表示させ、
前記第1の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値にかかわらず共通に設定される値であり、
前記第2の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて設定される値であって前記第2滴下数が所定の基準値に収まるように設定された値である、
ことを特徴とする支援方法。
【請求項6】
コンピュータを、
単位時間あたりに滴下すべき滴下数を導出するために必要な複数のパラメータについてそれぞれの値の入力を促す入力案内を表示部に表示させるとともに、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて導出された前記滴下数を前記表示部に表示させる制御手段として機能させ、
前記制御手段は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの第1滴下数を前記表示部に一旦表示させた後に、前記単位時間が第1の値とは異なる第2の値に設定されたときの第2滴下数を前記表示部に表示させ、
前記第1の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値にかかわらず共通に設定される値であり、
前記第2の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて設定される値であって前記第2滴下数が所定の基準値に収まるように設定された値である、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置、支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
看護師は、専用の計算を行うことが多い。このため、看護師による業務を支援するために、看護師によって頻繁に実施される計算を行う機能を備えた看護師用電卓が用いられている。
【0003】
看護師によって頻繁に実施される計算には、点滴速度の計算が含まれる。
【0004】
点滴は、輸液セットの種類によって、総輸液量や、点滴にかける所要時間等が異なり、例えば500(mL)の点滴液が、1~2時間で投与される場合が多い。
【0005】
また、例えば、成人の場合、20滴で1(mL)となるように投与され、小児の場合、60滴で1(mL)となるように投与されるなど、1滴あたりの点滴量も、成人と小児とでは異なる。
【0006】
看護師は、実際に患者に点滴を行う際には、対象患者(成人か小児か)、総輸液量、点滴にかける所要時間といった条件を考慮して、点滴速度を決定する必要がある。そして、患者に点滴針を刺し、点滴を開始すると、決定した点滴速度の通りに点滴がなされるように、時間あたりの滴下数を調整する必要がある。
【0007】
このような点滴数調整を支援するために、看護師用電卓では、対象患者(成人か小児か)、総輸液量、点滴にかける所要時間、および1滴あたりの点滴量に基づいて、1分あたりの滴下数が計算される。
【0008】
例えば、総輸液量が500(mL)の点滴液を、2時間の長さで、成人に対して点滴する場合、点滴毎の滴下量が20滴で1(mL)であることを考慮して、以下の計算により、滴下数は約83(滴/分)となる。
【0009】
500(mL)×20(滴/mL)÷2(時間)÷60(分/時間)=83.333333・・・(滴/分)≒83(滴/分)
しかしながら、現場では、滴下数調整を迅速に行うために、1分間にもわたって滴下数をカウントすることは行われておらず、実際には、10秒または15秒における滴下数をカウントすることによって滴下数調整が行われていることが多い。
【0010】
10秒における滴下数で調整するか、15秒における滴下数で調整するかは、看護師個人に任されている。看護師は、10秒における滴下数で調整する場合、看護師用電卓から表示された1分あたりの滴下数を、6で除することによって10秒あたりの滴下数に換算し、実際の滴下数がその値になるように、滴下数調整を行っている。同様に、15秒における滴下数で調整する場合、看護師は、看護師用電卓から表示された1分あたりの滴下数を、4で除することによって15秒あたりの滴下数に換算し、実際の滴下数がその値になるように、滴下数調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、現状では、点滴の滴下数の調整時間として、10秒または15秒を費やしている。しかしながら、医療現場では一刻を争う事態もあるために、この種の調整時間はできるだけ短縮化することが望ましい。これによって、看護師は、余った時間で別の作業をすることができるようになり、医療現場での作業効率が向上するからである。
【0013】
本発明はこのような事情を鑑みてなされたものであり、単位時間あたりの数値をユーザがより扱いやすい形で出力することが可能な支援装置、支援方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る支援装置は、単位時間あたりに滴下すべき滴下数を導出するために必要な複数のパラメータについてそれぞれの値の入力を促す入力案内を表示部に表示させるとともに、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて導出された前記滴下数を前記表示部に表示させる制御手段を備え、前記制御手段は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの第1滴下数を前記表示部に一旦表示させた後に、前記単位時間が第1の値とは異なる第2の値に設定されたときの第2滴下数を前記表示部に表示させ、前記第1の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値にかかわらず共通に設定される値であり、前記第2の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて設定される値であって前記第2滴下数が所定の基準値に収まるように設定された値である、ことを特徴とする。
また、本発明に係る支援方法は、支援装置が実行する支援方法であって、単位時間あたりに滴下すべき滴下数を導出するために必要な複数のパラメータについてそれぞれの値の入力を促す入力案内を表示部に表示させるとともに、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて導出された前記滴下数を前記表示部に表示させる制御処理を含み、前記制御処理は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの第1滴下数を前記表示部に一旦表示させた後に、前記単位時間が第1の値とは異なる第2の値に設定されたときの第2滴下数を前記表示部に表示させ、前記第1の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値にかかわらず共通に設定される値であり、前記第2の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて設定される値であって前記第2滴下数が所定の基準値に収まるように設定された値である、ことを特徴とする。
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを、単位時間あたりに滴下すべき滴下数を導出するために必要な複数のパラメータについてそれぞれの値の入力を促す入力案内を表示部に表示させるとともに、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて導出された前記滴下数を前記表示部に表示させる制御手段として機能させ、前記制御手段は、前記単位時間が第1の値に設定されたときの第1滴下数を前記表示部に一旦表示させた後に、前記単位時間が第1の値とは異なる第2の値に設定されたときの第2滴下数を前記表示部に表示させ、前記第1の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値にかかわらず共通に設定される値であり、前記第2の値は、前記入力案内に従って入力された前記それぞれの値に基づいて設定される値であって前記第2滴下数が所定の基準値に収まるように設定された値である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、単位時間あたりの数値をユーザがより扱いやすい形で出力することが可能な支援装置、支援方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る出力方法が適用された出力装置を含む電子機器の外観構成を 示す正面図である。
【
図2】電子機器に含まれる出力装置の電子回路の構成を示すブロック図である。
【
図3】変換プログラムによる整数倍計算の例を説明するための表である。
【
図4】同出力装置のディスプレイから表示される表示例を示す模式図である。
【
図5】同出力装置による滴下数計算実行処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係る出力方法が適用された出力装置を含む電子機器10の外観構成を示す正面図である。
【0019】
図1は、一例として看護師用電卓として構成された電子機器8を示している。しかしながら、電子機器8は、看護師用電卓として構成されるのに限定されず、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話機、タッチパネル式PDA(personal digital assistants)、電子ブック、携帯ゲーム機等として構成することもできる。
【0020】
なお、看護師用電卓のような物理的なキー(ボタン)が実装されていないタブレット端末のような電子機器(図示せず)は、キーと同様なソフトウェアキーボードを表示し、このソフトウェアキーボードに対するキー操作に応じて処理を実行する。
【0021】
看護師用電卓として構成される電子機器8は、その携帯性の必要からユーザが片手で十分把持し片手で操作可能な小型サイズからなり、本体正面にはキー入力部12およびディスプレイ13が設けられる。
【0022】
キー入力部12は、数値、数式等を入力したり、計算やプログラムの実行を指示したりするための数値・演算記号キー群121、各種の専用ファンクション機能を立ち上げるためのファンクションキー群122を含んでいる。
【0023】
数値・演算記号キー群121としては、[0]~[9](数値)キー、[+][-][×][÷](四則記号)キー、[=](実行)キー、[+/-](符号)キー、[C](クリア)キー、[AC](オールクリア)キー、および[MRC]、[M-]、[M+](メモリ演算)キーなどが配列される。[AC](オールクリア)キーは、電源ボタンも兼ねている。
【0024】
ファンクションキー群122としては、BMIを計算するための[BMI]キー、点滴滴下数の計算のための[滴下数]キー、推定身長を計算するための[推定身長]キー、褥瘡関連の計算するための[褥瘡]キー、インスリン輸液量を計算するための[インスリン]キー等が配列される。
【0025】
ディスプレイ13は、ドットマトリクス型の液晶表示ユニットからなる。なお、電子機器8がタブレット端末である場合、ディスプレイ13は、タッチパネルを重ねて設けられた液晶表示ユニットからなる。
【0026】
図2は、電子機器に含まれる出力装置の電子回路の構成を示すブロック図である。
【0027】
実施形態に係る出力方法が適用された出力装置10は、電子機器8の[滴下数]キーが押下されたときに起動する。
【0028】
出力装置10の電子回路は、前述したキー入力部12およびディスプレイ13に加えて、コンピュータであるCPU11、メモリ16、および記録媒体読取部14を備えている。これらは、電子機器8が、一般的な電卓機能や、あるいはBMI計算、推定身長計算、褥瘡計算、インスリン計算を行う場合のように、出力装置10以外として動作する場合にも共通して使用されるが、以下では、出力装置10として動作するための構成について説明する。
【0029】
メモリ16には、計算プログラム17、変換プログラム18、出力プログラム19、および報知プログラム20が記憶されている。
【0030】
CPU11は、これらプログラム17~20に従い回路各部の動作を制御し、キー入力部12から入力された情報を用いて滴下数の調整時間に関する各種演算処理を実行する。
【0031】
プログラム17~20は、メモリ16に予め記憶されていてもよいし、あるいはメモリカード等の外部記録媒体15から記録媒体読取部14を介してメモリ16に読み込まれて記憶されたものであってもよい。
【0032】
また、プログラム17~20は、ユーザによるキー入力部12の操作によって書き換えできないようになっている。
【0033】
メモリ16には、このようなユーザ書き換え不可能な情報の他に、ユーザが書き換え可能な情報を記憶するエリアとして、キー入力部12によりキー入力されたキーコードの情報が順次入力され、これに対してプログラム17~20によってなされた演算処理の結果が記憶されるエリアである書込可能データエリア23が確保されている。
【0034】
このように構成された出力装置10は、CPU11が、プログラム17~20に記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウェアとハードウエアとが協働して、以下に説明するように動作する。
【0035】
計算プログラム17は、ディスプレイ13から、輸液セットの対象患者(成人か小児か)k、点滴すべき総輸液量a、点滴にかける所要時間bを問い合わせる表示を行う。そして、この表示に応じて看護師によって入力された対象患者k、総輸液量a、および所要時間bに基づいて、まず、1分あたりの滴下数を計算する。さらに、単位時間t(例えば、1秒)あたりの滴下数dも計算する。なお、1滴あたりの点滴量cは、対象患者kが成人である場合、20(滴)で1(mL)、小児である場合、60(滴)で1(mL)とする。
【0036】
ここでは、例として、前述した条件と同様に、対象患者kが成人、すなわち、1滴あたりの点滴量cの逆数が20(滴/mL)であり、総輸液量aが500(mL)、および所要時間bが2(時間)であるとする。
【0037】
このとき、1分あたりの滴下数は、前述したように83.333333・・・(滴)≒約83(滴)となる。
【0038】
これは、1秒である単位時間tあたり、83.333333・・・(滴)÷60(秒)=1.388888・・・(滴)の滴下数dに相当する。
【0039】
すなわち、上記条件では、1秒間に、約1.4(滴)を滴下することになる。しかしながら、1秒間に、1.4(滴)の滴下を確認することは事実上不可能である。そこで、変換プログラム18は、計算プログラム17によって計算された単位時間tあたりに滴下すべき滴下数dが、所定の基準値Thに収まるように、単位時間tおよび滴下数dを整数倍または整数割して変換する。これによって、変換プログラム18は、整数倍計算する場合、単位時間tおよび滴下数dを、2倍、3倍、4倍・・・・して行き、滴下数dが基準値Thを超えたら、整数倍計算を終了する。一方、変換プログラム18は、整数割計算する場合、単位時間tおよび滴下数dを、1/2倍、1/3倍、1/4倍・・・・して行き、滴下数dが基準値Thを下回ったら、整数割計算を終了する。
【0040】
図3は、変換プログラムによる整数倍計算の例を説明するための表である。
【0041】
図3に示す整数倍計算の条件は、基準値Thが10(滴)、単位時間tが1秒、滴下数dが1.388888・・・(滴)である場合である。この場合、変換プログラム18は、滴下数dが、基準値Thである10(滴)を超えるまで、単位時間tおよび滴下数dを、2倍、3倍、4倍・・・・というように、倍数Nを1つずつ増加させながら、単位時間tおよび滴下数dの値を増加させて行く整数倍計算を行う。
【0042】
図3の例では、このような整数倍計算によって、倍数Nが8のとき、すなわち、単位時間tが8秒のときに、滴下数dが11.111111・・・(滴)となり、基準値Thである10(滴)を超える。このように、滴下数dが基準値Thを超えたら、変換プログラム18は、整数倍計算を終了する。
【0043】
出力プログラム19は、滴下数dが基準値Thを超えたときの滴下数dを端数処理して整数値とし、この整数値を、滴下数dが基準値Thを超えたときの単位時間tとともに出力し、ディスプレイ13から表示させる。なお、端数処理は、例えば四捨五入、小数点以下の切り捨て、切り上げ、五捨五超入などとすることができるが、これらに限定されない。
【0044】
図3の例では、基準値Thである10(滴)を超えたときの滴下数dは、11.111111・・・・(滴)である。端数処理として四捨五入を行う場合、出力プログラム19は、11.111111・・・・(滴)を四捨五入して整数値である11(滴)とする。そして、この値である11(滴)を、滴下数dが基準値Thである10(滴)を超えたときの単位時間tである8(秒)とともに出力し、ディスプレイ13のLCDから、例えば11(滴/8秒)のように表示させる。
【0045】
前述したように、1.4(滴)の滴下を確認することは事実上不可能である。しかしながら、10(滴)以上の整数値としての滴下数であれば、確認することが可能である。したがって、ここでは、基準値Thを10(滴)としている。これによって、上記の例では、看護師は、8秒間に、11(滴)の滴下を確認すればよいということになる。この程度の確認は、現実的に可能であろう。このような看護師の確認作業を支援するために、報知プログラム20は、出力プログラム19によって出力された滴下数dの整数値および単位時間tから決定される滴下タイミングを、例えばディスプレイ13のLCDを点滅表示させることによってユーザに報知する。
【0046】
図3の例のように、出力プログラム19によって出力された滴下数dの整数値が11(滴)であり、単位時間tが8(秒)である場合、滴下タイミングは、8秒間で11回発生する。すなわち、8/11=0.727272・・・(秒)毎に滴下タイミングが発生する。報知プログラム20は、この滴下タイミングで、ディスプレイ13のLCDを点滅表示させる。看護師は、この滴下タイミングに滴下を一致させるように調整することによって、条件通りに点滴液を滴下することが可能となる。
【0047】
これによって、上記の例では、滴下数調整のための最短時間を8秒とすることができる。基準値Thをより小さく設定すれば、滴下数調整のための最短の時間もより短縮化される。例えば、
図3の例を続けると、基準値Thを7(滴)とすれば、単位時間tが6(秒)のときに、滴下数dは7(滴)を超え、8.333333・・・(滴)となるので、6秒間で8回発生する滴下タイミングに合わせて滴下を調整することもできる。しかしながら、調整時間の短縮化は、それだけ誤差も大きくなる。このことを考慮すると、基準値Thは、10(滴)程度が現実的な値と思われる。
【0048】
次に、以上のように構成した実施形態に係る出力装置10の動作例を説明する。
【0049】
図4は、同出力装置のディスプレイから表示される表示例を示す模式図である。
【0050】
図5は、同出力装置による滴下数計算実行処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0051】
電子機器8は、[AC](オールクリア)キーが押下される(
図4:D1)と、電源が投入され、さらに、[滴下数]キーが押下されると、点滴の滴下数計算(
図4:D2)および計算結果表示のための出力装置10としての動作を開始する。
【0052】
そして、ディスプレイ13から、滴下数計算のために必要な情報の入力を促す表示がなされる。まず、対象患者kの輸液セットが、成人用であるか、小児用であるかを問い合わせる表示がなされる(
図4:D3)。これに応じて、看護師がキー入力部12を使って、「1」を入力すると成人用として、「2」を入力すると小児用として認識される。
図4に示す例では「1」が入力されたとする。これによって、計算プログラム17によって、対象患者kが成人であると認識され、1滴あたりの点滴量cの逆数が、20(滴/mL)として設定される。
【0053】
次に、ディスプレイ13から、総輸液量aを(mL)単位で問い合わせる表示がなされる(
図4:D5)。これに応じて、看護師がキー入力部12を使って、「500」と入力すると、総輸液量aが500(mL)として設定される。
【0054】
次に、ディスプレイ13から、点滴にかける所要時間bを(時間)単位で問い合わせる表示がなされる(
図4:D6)。これに応じて、看護師がキー入力部12を使って、「2」と入力する(
図4:D7)と、点滴にかける所要時間bが、2(時間)として設定される。
【0055】
これら入力条件に基づいて、計算プログラム17では、1分あたりの滴下数が計算される。上記の入力条件の場合、計算プログラム17によって、1分あたりの滴下数として、83.333333・・・≒約83(滴)との結果が得られる。
【0056】
この結果に応じて、出力プログラム19によって、ディスプレイ13から、83(滴/分)が表示される(
図4:D8、
図5:S1)。
【0057】
また、計算プログラム17では、上記の結果に基づいてさらに、単位時間tである1秒あたりの滴下数dが計算される(
図5:S2)。
【0058】
上記の入力条件の場合、1秒あたりの滴下数dは、83.333333・・・(滴)÷60(秒)により、1.388888・・・(滴)となる。
【0059】
このような滴下数dおよび単位時間tを初期値として、変換プログラム18において、整数倍計算または整数割計算が行われる。ここでは、単位時間tの初期値を1(秒)、滴下数dの初期値を1.388888・・・(滴)として、整数倍計算を行う場合の例について説明する。なお、このように、単位時間tおよび滴下数dの初期値を決定することを、本明細書では、初期化と称する(
図5:S3)。
【0060】
変換プログラム18では、整数倍計算を行う場合、滴下数dが、基準値Thを超えるまで、滴下数dおよび単位時間tを、2倍、3倍、4倍・・・・というように、倍数Nを1つずつ増加させながら、滴下数dおよび単位時間tの値を増加させて行く(
図5:S4、S5、S6)。
【0061】
ここで、基準値Thを10(滴)とした場合、
図3に示すように、倍数Nが8のとき、すなわち、単位時間tが8秒のときに、滴下数dが11.111111・・・となり、基準値Thである10(滴)を超える。このように、整数倍計算によって、滴下数dが基準値Thを超えたら、変換プログラム18による整数倍計算は終了する。
【0062】
次に、出力プログラム19によって、基準値Thを超えたときの滴下数dが端数処理によって整数値とされ、この整数値が、対応する単位時間tとともに出力され、ディスプレイ13から表示される(
図5:S7)。
【0063】
端数処理として、例えば、四捨五入を行う場合、
図3の例を用いて説明すると、滴下数dが基準値Thである10(滴)を超えたときの滴下数dは、11.111111・・・・(滴)である。この場合、出力プログラム19では、11.111111・・・・が四捨五入され、整数値である11が得られる。そして、この値である11(滴)が、対応する単位時間tである8(秒)とともに出力され、ディスプレイ13から、例えば11(滴/8秒)のように表示される(
図4:D9)。
【0064】
その後、出力プログラム19から出力された単位時間tおよび整数値に基づいて、報知プログラム20によって、滴下タイミングが、例えばディスプレイ13のLCDの点滅表示によってユーザへ報知される(
図5:S8)。
【0065】
上記の例の場合、滴下タイミングは、8秒間で11回発生する。すなわち、8/11=0.727272・・・(秒)毎に滴下タイミングが発生する。この滴下タイミングで、報知プログラム20によって、ディスプレイ13のLCDが点滅表示される。看護師は、この滴下タイミングに滴下を一致させるように調整することによって、条件通りに点滴液を滴下することが可能となる。
【0066】
以上説明したように、実施形態に係る出力装置および同出力装置を含む電子機器によれば、単位時間あたりの数値をユーザがより扱いやすい形で出力することができ、上記例では特に、点滴の滴下数の調整に必要な現実的な最短時間を出力することができる。なお、上記実施形態では、変換プログラム18が、1秒あたりの滴下数を整数倍する整数倍計算を行う例について説明したが、逆に、1分あたりの滴下数を整数割する整数割計算を、滴下数が基準値を下回るまで行うことによって、最短時間を出力するようにしてもよい。
【0067】
また、ディスプレイ13のLCDの点滅表示により、滴下タイミングを通知することもできるので、看護師は、実際の滴下を滴下タイミングに合わせるように調節することによって、正確な滴下数調整を行うことが可能となる。このような点滅表示は、電子機器8が元々備えているディスプレイ13によって実現できるので、追加コストを要しない。
【0068】
さらには、深夜における使用、あるいは、静寂を要求される場合のように、音の発生を控える必要がある場合ではなく、音の発生が許容される状況では、ディスプレイ13の点滅に代えて、あるいは点滅に加えて、滴下タイミングにあわせて音を発生することによって、看護師に滴下タイミングを通知してもよい。
【0069】
本願発明は、各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。さらに、各実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。例えば、各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されたり、幾つかの構成要件が異なる形態にして組み合わされても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除されたり組み合わされた構成が発明として抽出され得るものである。
【0070】
例えば、上記実施形態では、滴下数計算へ適用した例について説明したが、本願発明は、滴下数計算への適用に限定されるものではない。
【0071】
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0072】
[1]
点滴すべき総輸液量、前記点滴にかける所要時間、および1滴あたりの点滴量に基づいて、単位時間あたりに滴下すべき滴下数を計算する計算部と、
前記計算部により計算された単位時間あたりに滴下すべき滴下数が所定の基準値に収まるように、前記単位時間および前記滴下数を整数倍または整数割して変換する変換部と、
前記変換部により変換された前記単位時間および前記滴下数を出力する出力部と、
を備えた出力装置。
【0073】
[2]
前記出力部によって出力された前記単位時間および前記滴下数から決定される滴下タイミングを報知する報知部、
をさらに備えた請求項1に記載の出力装置。
【0074】
[3]
前記報知部は、前記出力部によって出力された前記単位時間および前記滴下数を、前記滴下タイミングおいて点滅表示させることによって、前記滴下タイミングを報知する、
請求項2に記載の出力装置。
【0075】
[4]
前記変換部により変換される前の前記単位時間は1秒である、
請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の出力装置。
【0076】
[5]
総量、前記総量の処理にかける所要時間、および1セットあたりの処理量に基づいて、単位時間あたりに実行すべきセット数を計算する計算部と、
前記計算部により計算された単位時間あたりに実行すべきセット数が所定の基準値に収まるように、前記単位時間および前記セット数を整数倍または整数割して変換する変換部と、
前記変換部により変換された前記単位時間および前記セット数を出力する出力部と、
を備えた出力装置。
【0077】
[6]
請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の出力装置を含む電子機器。
【0078】
[7]
電子機器によって実現される出力方法であって、
点滴すべき総輸液量、前記点滴にかける所要時間、および1滴あたりの点滴量に基づいて、単位時間あたりに滴下すべき滴下数を計算する計算ステップと、
前記計算ステップにより計算された単位時間あたりに滴下すべき滴下数が所定の基準値に収まるように、前記単位時間および前記滴下数を整数倍または整数割して変換する変換ステップと、
前記変換ステップにより変換された前記単位時間および前記滴下数を出力する出力ステップと、
を含む出力方法。
【0079】
[8]
電子機器によって実現される出力方法であって、
総量、前記総量の処理にかける所要時間、および1セットあたりの処理量に基づいて、単位時間あたりに実行すべきセット数を計算する計算ステップと、
前記計算ステップにより計算された単位時間あたりに実行すべきセット数が所定の基準値に収まるように、前記単位時間および前記セット数を整数倍または整数割して変換する変換ステップと、
前記変換ステップにより変換された前記単位時間および前記セット数を出力する出力ステップと、
を備えた出力方法。
【0080】
[9]
コンピュータを、
点滴すべき総輸液量、前記点滴にかける所要時間、および1滴あたりの点滴量に基づいて、単位時間あたりに滴下すべき滴下数を計算する計算部、
前記計算部により計算された単位時間あたりに滴下すべき滴下数が所定の基準値に収まるように、前記単位時間および前記滴下数を整数倍または整数割して変換する変換部、
前記変換部により変換された前記単位時間および前記滴下数を出力する出力部、
として機能させるためのプログラム。
【0081】
[10]
コンピュータを、
総量、前記総量の処理にかける所要時間、および1セットあたりの処理量に基づいて、単位時間あたりに実行すべきセット数を計算する計算部、
前記計算部により計算された単位時間あたりに実行すべきセット数が所定の基準値に収まるように、前記単位時間および前記セット数を整数倍または整数割して変換する変換部、
前記変換部により変換された前記単位時間および前記セット数を出力する出力部、
として機能させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0082】
8・・電子機器
10・・出力装置
11・・CPU
12・・キー入力部
13・・ディスプレイ
14・・記録媒体読取部
15・・外部記録媒体
16・・メモリ
17・・計算プログラム
18・・変換プログラム
19・・出力プログラム
20・・報知プログラム
23・・書込可能データエリア
121・・数値・演算記号キー群
122・・ファンクションキー群