(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】信号処理装置、信号処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G10L 25/87 20130101AFI20240509BHJP
G10L 25/51 20130101ALI20240509BHJP
G10L 25/18 20130101ALI20240509BHJP
【FI】
G10L25/87
G10L25/51
G10L25/18
(21)【出願番号】P 2022553244
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036778
(87)【国際公開番号】W WO2022070234
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】美島 咲子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 玲史
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/029545(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/029546(WO,A1)
【文献】特開2006-163417(JP,A)
【文献】特表2018-503143(JP,A)
【文献】特開2013-164584(JP,A)
【文献】特開2009-80309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10L 13/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す切出手段と、
前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する変換手段と、
前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する傾き算出手段と、
複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出するスコア算出手段と、
前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する判定手段と、を備える、
信号処理装置。
【請求項2】
前記スコア算出手段は、前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記スコア算出手段は、前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値に対して、前記出現頻度に応じた重み付けを行い、重み付けを行った当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記スコアの最大値と前記スコアが最大となる時刻とに基づいて前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記スコアに対してフィッティングした確率密度関数における最大値を、前記確率密度関数の分散に応じて変換した値と、前記確率密度関数の値が最大となる時刻と、に基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記切出手段は、複数の前記重複信号を切り出す、
請求項1乃至5のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記判定対象信号に急変があると判定された場合、前記判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、前記スコアに応じて算出された、前記急変を示す信号の位相傾きの推定値と、に基づいて、前記判定対象信号の各周波数に対して、前記急変を示す信号の周波数である可能性を示す信頼度を算出する信頼度算出手段を備える、
請求項1乃至6のいずれかに記載の信号処理装置。
【請求項8】
入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出し、
前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換し、
前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出し、
複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出し、
前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
信号処理方法。
【請求項9】
入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す処理と
前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する処理と
前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する処理と、
複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出する処理と、
前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラ
ム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、信号の変化を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の信号が混入する時系列信号に対して、信号の変化を検出する技術が存在する。特に、突発的に変化する信号である急変信号の検出に関する技術が、特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1には、入力信号から周波数ごとに位相成分信号の第1の傾きを算出し、算出した第1の傾きの平均値である第2の傾きを算出し、第1の傾きと第2の傾きとの差に基づいて、入力信号における急変の有無を検知する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2には、第1の傾きを振幅に基づいて重み付けし、重み付き第1の傾きの平均を第2の傾きとして算出し、第2の傾きと第1の傾きとの差に基づいて、入力信号における急変の有無を検知する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6406258号公報
【文献】特許6406257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、信号における急変の有無の検知とは、信号に急変信号が含まれるか否かの検知を示す。入力信号において、急変信号に対して、急変信号でない信号(非急変信号)の割合が大きい場合、すなわち、急変信号対非急変信号比が小さい場合に、急変信号に起因する位相成分信号の傾きが得られる周波数の割合が少なくなる。
【0007】
特許文献1及び2に記載の技術では、急変の有無を検知したい区間の信号のみから第1の傾きと第2の傾きとを算出し、単に、周波数ごとの第1の傾きと第2の傾きとの差分を算出している。そのため、上記のように、急変信号に起因する位相成分信号の傾きが得られる周波数の割合が少なくなる場合には、急変の有無を検知する精度は悪くなる。
【0008】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、信号の急変を精度よく検知することができる信号処理装置等を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様にかかる信号処理装置は、入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す切出手段と、前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する変換手段と、前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する傾き算出手段と、複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出するスコア算出手段と、前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する判定手段と、を備える。
【0010】
本開示の一態様にかかる信号処理方法は、入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出し、前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換し、前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出し、複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出し、前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する。
【0011】
本開示の一態様にかかるコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す処理と前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する処理と前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する処理と、複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出する処理と、前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムを格納する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、信号の急変を精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第1の実施形態の信号処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の第1の実施形態の信号の切り出し方の一例を示す図である。
【
図3】本開示の第1の実施形態のローカルスコアのイメージの一例を示す図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態のスコアを算出するイメージの一例を示す図である。
【
図5】本開示の第1の実施形態の信号処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】本開示の第2の実施形態の信号処理装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】本開示の第2の実施形態の信号処理装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第1及び第2の実施形態の信号処理装置を実現するコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
第1の実施形態の信号処理装置について説明する。
【0016】
図1は、第1の実施形態の信号処理装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、信号処理装置100は、切出部110、変換部120、傾き算出部130、スコア算出部140、及び判定部150を備える。
【0017】
切出部110は、入力信号から、所定区間の判定対象信号と、所定区間と一致しない区間であって、所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す。入力信号は、例えば、信号処理装置100に入力される時系列信号であり、複数種類の信号が含まれる。切出部110は、入力信号のうち、急変信号が含まれるか否か判定を行う所定区間の信号である判定対象信号を切り出す。また、切出部110は、入力信号のうち、判定対象信号の区間と一致しない区間であって、判定対象信号の区間の少なくとも一部と重複する区間の信号である重複信号を切り出す。このとき、切出部110は、例えば、判定対象信号の先頭時刻、及び、判定対象信号の先頭時刻と重複信号の先頭時刻との時刻差を算出してもよい。切出部110は、切り出し手段の一例である。
【0018】
変換部120は、判定対象信号と重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する。変換部120は、変換手段の一例である。
【0019】
傾き算出部130は、位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する。傾き算出部130は、例えば、位相傾きを、位相成分信号から周波数ごとに算出する。傾き算出部130は、例えば、位相傾きを、隣り合う周波数における位相の差を求めることにより算出してもよいし、他の方法で算出してもよい。傾き算出部130は、算出手段の一例である。
【0020】
スコア算出部140は、複数の位相傾きに応じて、入力信号の急変性に関するスコアを算出する。スコア算出部140は、例えば、切出部110によって切り出された信号のそれぞれに対して、位相傾きの出現頻度に関する値を算出する。そして、スコア算出部140は、例えば、切り出された信号ごとに算出した位相傾きの出現頻度に関する値を統合してスコアを算出する。より具体的には、スコア算出部140は、例えば、算出した位相傾きの出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を加算した結果をスコアとする。このように、位相傾きの出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、判定対象信号の区間と重複信号の区間とが重なる区間における位相傾きの出現頻度に関する値が強調される。なお、スコア算出部140は、算出した出現頻度に関する値に、出現頻度に応じた重み付けを行い、重み付けを行った出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を加算した結果をスコアとしてもよい。スコア算出部140は、スコア算出手段の一例である。
【0021】
判定部150は、スコアに基づいて、判定対象信号の急変の有無を判定する。例えば、判定部150は、スコアの最大値と、スコアが最大となる時刻とに基づいて、判定対象信号に急変信号が含まれるか否かを判定する。このとき、例えば、判定部150は、スコアの最大値が所定の閾値以上であり、スコアの最大となる時刻が判定対象信号の区間に含まれる場合に、判定対象信号に急変信号が含まれる、すなわち、判定対象信号に急変が有る、と判定する。判定部150は、判定手段の一例である。
【0022】
このように、第1の実施形態の信号処理装置100は、判定対象信号の区間と重複する区間の重複信号も用いて、入力信号の急変性に関するスコアを算出する。このときのスコアは、区間ごとに算出された位相傾きの出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより算出される。そして、信号処理装置100は、当該スコアに基づいて判定対象信号の急変の有無を判定する。これにより、急変信号に起因する位相成分信号の傾きに関する情報が強調された上でスコアが算出されるので、第1の実施形態の信号処理装置100は、信号の急変を精度よく検知することができる、という効果を奏する。
【0023】
[信号処理装置100の詳細]
次に、第1の実施形態の信号処理装置100の各構成の一例について、より具体的に説明する。
【0024】
切出部110は、信号処理装置100に入力された入力信号を取得する。切出部110は、取得した入力信号から複数の信号を切り出す。
図2は、信号の切り出し方の一例を示す図である。
図2のx
in(t)は入力信号を示し、tは時刻を示す。なお、
図2では、図の視認性を高めるために、入力信号の波形は省略している。
【0025】
切出部110は、入力信号x
in(t)から、判定対象信号x
0(n
0)を切り出す。このときx
0(n
0)は、時刻t
0からN
0(>0)時間経過するまでの区間の信号である。さらに切出部110は、判定対象信号x
0(n
0)の少なくとも一部と重複する信号である重複信号を切り出す。
図2では、判定対象信号x
0(n
0)と一部が重複する重複信号x
1(n
1)及びx
2(n
2)の例を示している。x
1(n
1)は、入力信号に対して、時刻t
0からτ
1(<0)時間ずれた時刻からN
1(>0)時間を経過するまでの区間の信号である。x
2(n
2)は、入力信号に対して、時刻t
0からτ
2(>0)時間ずれた時刻からN
2(>0)時間を経過するまでの区間の信号である。本開示において、切出部110によって切り出された信号をx
d(n
d)(0≦d≦D)と表す。また、切り出された信号(判定対象信号及び重複信号)の各区間の時間の長さをN
dとし、切り出された信号の先頭時刻からt
0を引いた値、すなわち、切り出された信号と判定対象信号との先頭時刻の時刻差をτ
dと表す。このとき、τ
0=0である。また、切り出された区間における時刻n
dを(0≦n
d<N
d)と表す。
図2では、重複信号の一部が判定対象信号と重複している例を示しているが、重複信号はこの例に限らない。重複信号は、判定対象信号と一致しなければよい。例えば、重複信号は、判定対象信号に包含されてもよいし、判定対象信号を包含していてもよい。なお、本開示において、切出部110によって切り出された信号の区間をフレームとも称する。また、
図2では、重複信号を二つ切り出しているが、重複信号の数はこの例に限らない。重複信号の数は一以上であればよい。なお、重複信号の数が一である場合に比べ、複数の重複信号が切り出された場合は、第1の実施形態の信号処理装置100は、急変信号に起因する位相成分信号の傾きに関する情報がより強調されるので、より精度よく信号の急変の有無を検知することができる。
【0026】
切出部110は、例えば、所定の窓関数を用いることにより、入力信号から信号を切り出す。切出部110は、例えば、矩形窓を用いて信号を切り出すことができる。この例に限らず、切出部110は、ガウス窓、ハニング窓、またはハミング窓等、他の窓関数を用いて切り出してもよい。
【0027】
変換部120は、切出部110によって切り出された信号を取得する。変換部120は、取得した信号、すなわち、判定対象信号及び重複信号のそれぞれを、周波数ごとに、位相成分信号に変換する。変換部120は、例えば、数1に示す離散フーリエ変換を用いて位相成分信号Xd(k)を算出する。
【0028】
【0029】
数1において、k(0≦k<K-1:Kは自然数)は周波数を示す指標である。kの値のそれぞれと、信号に含まれる周波数のそれぞれとが対応している。なお、変換部120は、離散フーリエ変換に代えて、フーリエ変換またはウェーブレット変換等、他の変換方法で、位相成分信号を算出してもよい。
【0030】
傾き算出部130は、位相成分信号に基づいて、位相成分の傾きを算出する。位相成分の傾きとは、隣り合う周波数における位相の変化の度合いを示す。本開示において、位相成分の傾きを、位相傾きとも称する。傾き算出部130は、位相成分信号Xd(k)から位相傾きΔθd(k)を求める際に、アンラップ位相を用いてもよい。以下の数2、数3、及び数4は、位相傾きを、アンラップ位相を用いて算出する例である。
【0031】
【0032】
数2は、各フレームに対して、周波数ごとの位相θd(k)を求める式である。位相は、例えば、数2のように位相成分信号を複素数で表現した場合、位相成分信号を示すベクトルにタンジェント(tan)の逆関数を適用することで求められる。
【0033】
【0034】
数3は、アンラップ位相を算出する式である。アンラップ位相は、位相の範囲がーπからπの間に限定されない絶対位相である。アンラップ位相は、隣り合う周波数における位相の差に応じて求められる。
【0035】
【0036】
数4に示すように、傾き算出部130は、隣り合う周波数におけるアンラップ位相の差分に基づいて、各周波数における位相傾きを算出する。
【0037】
なお、傾き算出部130は、以下の数5、数6、数7を用いて位相傾きを算出してもよい。
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
例えば、傾き算出部130は、数5の式を用いて各周波数における位相成分信号を、単位ベクトルに正規化する。そして、傾き算出部130は、数6に示すように、隣り合う周波数における単位ベクトルの内積を算出する。これにより、複素平面上において、隣り合う周波数の単位ベクトルが合成されたベクトルが算出される。このとき、算出されたベクトルの位相が、周波数kに対する位相傾きに相当する。そのため、傾き算出部130は、数6において算出されたベクトルに対して、数7の式のように位相を求めることにより、位相傾きを算出することができる。
【0042】
次に、スコア算出部140は、傾き算出部130から取得した位相傾きに応じて、入力信号の急変性に関するスコアを算出する。具体的には、スコア算出部140は、以下の数8及び数9に示す式を用いて、入力信号の急変性に関するスコアy(t)を算出する。
【0043】
【0044】
数8は、あるフレームの時間ごとの、位相傾きの出現頻度を示すローカルスコアS
d(n
d)を算出する式である。
図3は、あるフレームにおけるローカルスコアS
d(n
d)のイメージを表す図である。S
d(n
d)の数が大きいほど、そのフレーム内時刻において、同じ位相傾きを持つ周波数、すなわち、そのフレームの時刻における位相傾きの出現頻度が多いことを示す。スコア算出部140は、
図3に示すように、ローカルスコアをフレームごとに集計する。
【0045】
次に、スコア算出部140は、数9の式を用いて、入力信号の急変性に関するスコアy(t)を算出する。なお、本明細書において、入力信号の急変性に関するスコアを、単に「スコア」とも称する。
【0046】
【0047】
数9は、スコアy(t)を算出する式である。スコアy(t)は、ローカルスコアS
d(n
d)のそれぞれを、tの時間軸に変換し、tの時間軸において同一時刻のローカルスコアを統合したものである。
図4は、スコアを算出するイメージを表す図である。
図4では、判定対象信号x
0(n
0)と、重複信号x
1(n
1)及びx
2(n
2)が切り出された場合のスコアの一例を示している。
図4では、それぞれの信号に対して、ローカルスコアS
0(n
0)、S
1(n
1)及びS
2(n
2)が算出されている。そして、スコア算出部140は、ローカルスコアのうち、同一時刻に対応する値を足し合わせることにより、ローカルスコアの統合を行う。
【0048】
このように、スコア算出部140は、判定対象信号及び重複信号のそれぞれにおいて、位相傾きの出現頻度に関する値(例えば、ローカルスコアSd(nd))を算出し、算出した当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、スコアを算出する。
【0049】
判定部150は、スコア算出部140によって算出されたスコアに基づいて、判定対象信号に急変信号が含まれているか否かを判定する。
【0050】
【0051】
数10は、判定方法を示す式である。数10では、p=1のとき、判定部150が、判定対象信号に急変信号が含まれると判定したことが示され、p=0のとき、判定部150が、判定対象信号に急変信号が含まれないと判定したことが示されている。判定部150は、数10の式を用いて、スコアの最大値が閾値α以上であり、スコアが最大のときの時刻が判定対象信号のフレームの間の時間である場合に、判定対象信号に急変信号が含まれると判定する。
【0052】
このように、判定部150は、スコアの最大値とスコアが最大となる時刻とに基づいて判定対象信号の急変の有無を判定する。
【0053】
[信号処理装置100の動作]
次に信号処理装置100の動作を、
図5を用いて説明する。
図5は、信号処理装置100の動作を説明するフローチャートである。以下に説明する動作においては、信号処理装置100に、入力信号が入力されたものとする。なお、本明細書において、フローチャートの各ステップを「S101」のように、それぞれのステップに付した番号を用いて表現する。
【0054】
切出部110は、入力信号から、判定対象信号と重複信号とを切り出す(S101)。変換部120は、判定対象信号と重複信号とのそれぞれに対して、周波数領域における位相成分信号に変換する(S102)。次に、傾き算出部130は、位相成分信号に基づいて、位相傾きを算出する(S103)。そして、スコア算出部140は、算出された位相傾きに応じて、入力信号の急変性に関するスコアを算出する(S104)。判定部150は、算出されたスコアに基づいて、判定対象信号の急変の有無を判定する(S105)。
【0055】
このように、第1の実施形態の信号処理装置100は、入力信号から、所定区間の判定対象信号と、所定区間と一致しない区間であって、所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す。また、信号処理装置100は、判定対象信号と重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換し、位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する。そして、信号処理装置100は、複数の位相傾きに応じて、入力信号の急変性に関するスコアを算出し、スコアに基づいて、判定対象信号の急変の有無を判定する。このように、第1の実施形態の信号処理装置100は、判定対象信号と、判定対象信号の区間と一部重複する重複信号とのそれぞれから得られる位相傾きに応じて、スコアを算出しているので、入力信号において、急変信号対非急変信号比が小さい場合であっても、急変信号に起因する位相成分信号の傾きに関する情報を強調したスコアを算出することができる。そのため、第1の実施形態の信号処理装置100は、信号の急変を精度よく検知することができる。
【0056】
[変形例1]
スコア算出部140は、位相傾きの出現頻度に関する値Sd(nd)に対して、出現頻度に応じた重み付けを行ってもよい。具体的には、スコア算出部140は、数11のように、wdを用いて重み付けを行ってもよい。
【0057】
【0058】
wdは、例えば、Sd(nd)における分散に基づいて求められる。Sd(nd)に対して分散が大きいほど、そのフレームの時間nにおいて、急変信号が含まれる可能性が高い。そのため、スコア算出部140は、数12を用いてwdを算出してもよい。
【0059】
【0060】
数12のSaveは、Sd(nd)の平均である。このとき、Sd(nd)に対する分散が大きいほど、wdの値は大きくなる。
【0061】
また、wdは、ndに対する分散に基づいて求められてもよい。ndに対して分散が小さいほど、一部の時間に、Sd(nd)の値が偏って算出される。すなわち、その時間に急変信号が含まれる可能性が高い。そのため、スコア算出部140は、数13を用いて、wdを算出してもよい。
【0062】
【0063】
数13のnaveは、ndの平均である。このとき、ndに対する分散が小さいほど、wdの値は大きくなる。
【0064】
このように、信号処理装置100は、位相傾きの出現頻度に関する値に対して、出現頻度に応じた重み付けを行い、重み付けを行った出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、スコアを算出してもよい。この構成により、変形例1の信号処理装置100は、急変信号が含まれる可能性の高い時刻における、出現頻度に関する値を強調させることができるので、より精度よく信号の急変の有無を検知することができる。
【0065】
[変形例2]
判定部150は、スコアの推定分布値を用いて、判定対象信号に、急変信号が含まれるか否かを判定してもよい。具体的には、スコアy(t)に対して、正規分布に従う確率密度関数をフィッティングさせ、そのときの確率密度関数のパラメータから、判定対象信号に急変信号が含まれるか否かを判定する。
【0066】
【0067】
【0068】
数14は、正規分布に従う確率密度関数g(t)を示す式である。数15は、スコアy(t)と確率密度関数g(t)との差を示す関数の式である。判定部150は、確率密度関数g(t)を数9あるいは数11に示すスコアy(t)にフィッティングさせる。すなわち、判定部150は、関数f(μ,σ)が最小となるときの平均μ及び標準偏差σの値を算出する。そして、判定部150は、算出されたμ及びσを用いて、以下の数16の式に基づき、判定を行う。
【0069】
【0070】
判定部150は、例えば、g(μ)×1/σの値が閾値α以上であり、μの値が、判定対象信号のフレームの間の値のとき、判定対象信号に急変信号が含まれると判定する。
【0071】
ここで、g(μ)は、スコアy(t)の最大値に対応する値である。また、g(t)に関して、σの値が大きいほど、g(t)における分散は大きい。すなわち、σの値が大きいほど、g(t)はなだらかな変化を行う関数となる。g(t)がなだらかな変化を行う場合、g(μ)が閾値αを超えていても、急変信号が判定対象信号に含まれる可能性は低くなる。そのため、判定部150は、σの値に応じて、閾値αと比較する値を変換する。
【0072】
このように、変形例2の信号処理装置100は、スコアに対してフィッティングした確率密度関数における最大値を、確率密度関数の分散に応じて変換した値と、確率密度関数の値が最大となる時刻と、に基づいて、判定対象信号の急変の有無を判定する。この構成により、変形例2の信号処理装置100は、判定対象信号の急変の有無を判定する際に、スコアの最大値を用いるときよりも、精度よく判定することができる。
【0073】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の信号処理装置について説明する。
【0074】
図6は、第2の実施形態の信号処理装置101の機能構成の一例を示すブロック図である。
図6に示す通り、信号処理装置101は、第1の実施形態の信号処理装置100の構成に加え、信頼度算出部160を備える。すなわち、信号処理装置101は、切出部110と、変換部120と、傾き算出部130と、スコア算出部140と、判定部150と、信頼度算出部160と、を備える。なお、
図6に示す信号処理装置101の構成及び動作が、第1の実施形態の説明と重複する内容については、説明を省略する。
【0075】
[信号処理装置101の詳細]
判定部150によって判定対象信号に急変があると判定された場合、信頼度算出部160は、スコアに応じて、判定対象信号の各周波数に対して、急変を示す信号(すなわち、急変信号)の周波数である可能性を示す信頼度を算出する。例えば、信頼度算出部160は、急変信号の位相傾きとして推定される値を、判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと比較する。そして、信頼度算出部160は、判定対象信号の周波数ごとに、急変信号の周波数である可能性を示す値を、信頼度として算出する。
【0076】
【0077】
数17は、急変信号の位相傾きの推定値を算出する式である。信頼度算出部160は、例えば、数17の式を用いて、急変信号の位相傾きの推定値を算出する。このとき、信頼度算出部160は、スコアy(t)が最大値となるときの時刻における、入力信号の位相傾きを、急変信号の位相傾きの推定値として算出する。
【0078】
【0079】
そして、信頼度算出部160は、数18の式を用いて、急変信号の位相傾きの推定値と、判定対象信号の位相傾きとの差を、判定対象信号の周波数ごとに求めることにより、信頼度Y(k)を算出する。このとき、推定値と判定対象信号の位相傾きとの差が小さいほど、比較された判定対象信号の位相傾きをもつ周波数が、急変信号の周波数である可能性が高くなる。一方で、推定値と判定対象信号の位相傾きとの差が大きいほど、比較された判定対象信号の位相傾きをもつ周波数は、急変信号の周波数でない可能性が高くなる、すなわち、急変信号でない信号の周波数である可能性が高くなる。
【0080】
このように、信頼度算出部160は、判定対象信号に急変があると判定された場合、判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、スコアに応じて算出された、急変を示す信号の位相傾きの推定値と、に基づいて、判定対象信号の各周波数に対して、急変を示す信号の周波数である可能性を示す信頼度を算出する。信頼度算出部160は、信頼度算出手段の一例である。
【0081】
[信号処理装置101の動作]
次に、信号処理装置101の動作を、
図7を用いて説明する。
図7は、信号処理装置101の動作の一例を説明するフローチャートである。なお、
図7において、S101乃至S105の処理は、
図5におけるS101乃至S105の処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
信号処理装置101は、S105の処理において、判定対象信号に急変無し、と判定された場合(S106の「No」)、フローを終了する。判定対象信号に急変ありと判定された場合(S106の「Yes」)、信頼度算出部160は、スコアに応じて算出された急変信号の位相傾きの推定値と、判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、に基づいて、判定対象信号の周波数ごとに信頼度を算出する(S107)。
【0083】
以上のように、第2の実施形態の信号処理装置101は、判定対象信号に急変があると判定された場合、判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、スコアに応じて算出された、急変を示す信号の位相傾きの推定値と、に基づいて、判定対象信号の各周波数に対して、急変を示す信号の周波数である可能性を示す信頼度を算出する。この構成により、第2の実施形態の信号処理装置101は、判定対象信号において、どの周波数の信号が、急変信号に起因する周波数の信号である可能性が高いか、または、急変信号でない信号に起因する周波数の信号である可能性が高いか判定することができる。この判定結果により、例えば、ユーザは、判定対象信号から非急変信号を取り除いたり、反対に、判定対象信号から急変信号を取り除いたりすることができる。
【0084】
<信号処理装置のハードウェアの構成例>
上述した第1、及び第2の実施形態の信号処理装置を構成するハードウェアについて説明する。
図8は、各実施形態における信号処理装置を実現するコンピュータ装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8が示す各ブロックは、各実施形態における信号処理装置及び信号処理方法を実現するコンピュータ装置10と、ソフトウェアとの組み合わせにより実現できる。
【0085】
図8に示すように、コンピュータ装置10は、プロセッサ11、RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、記憶装置14、入出力インタフェース15、バス16、及びドライブ装置17を備える。なお、信号処理装置は、複数の電気回路によって実現されてもよい。
【0086】
記憶装置14は、プログラム(コンピュータプログラム)18を格納する。プロセッサ11は、RAM12を用いて本信号処理装置のプログラム18を実行する。具体的には、例えば、プログラム18は、
図5及び
図6で説明した信号処理装置の処理をコンピュータに実行させるプログラムを含む。プロセッサ11が、プログラム18を実行することに応じて、本信号処理装置の各構成要素(上述した、切出部110、変換部120、傾き算出部130、スコア算出部140、判定部150、信頼度算出部160)の機能が実現される。プログラム18は、ROM13に記憶されていてもよい。また、プログラム18は、記憶媒体20に記録され、ドライブ装置17を用いて読み出されてもよいし、図示しない外部装置から図示しないネットワークを介してコンピュータ装置10に送信されてもよい。
【0087】
入出力インタフェース15は、周辺機器(キーボード、マウス、表示装置など)19とデータをやり取りする。入出力インタフェース15は、データを取得または出力する手段として機能する。バス16は、各構成要素を接続する。
【0088】
なお、信号処理装置の実現方法には様々な変形例がある。例えば、信号処理装置は、専用の装置として実現することができる。また、信号処理装置は、複数の装置の組み合わせに基づいて実現することができる。
【0089】
各実施形態の機能における各構成要素を実現するためのプログラムを記憶媒体に記録させ、該記憶媒体に記録されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も各実施形態の範疇に含まれる。すなわち、コンピュータ読取可能な記憶媒体も各実施形態の範囲に含まれる。また、上述のプログラムが記録された記憶媒体、及びそのプログラム自体も各実施形態に含まれる。
【0090】
該記憶媒体は、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD(Compact Disc)-ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、またはROMであるが、この例に限らない。また該記憶媒体に記録されたプログラムは、単体で処理を実行しているプログラムに限らず、他のソフトウェア、拡張ボードの機能と共同して、OS(Operating System)上で動作して処理を実行するプログラムも各実施形態の範疇に含まれる。
【0091】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0092】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0093】
<付記>
[付記1]
入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す切出手段と、
前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する変換手段と、
前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する傾き算出手段と、
複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出するスコア算出手段と、
前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する判定手段と、を備える、
信号処理装置。
【0094】
[付記2]
前記スコア算出手段は、前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
付記1に記載の信号処理装置。
【0095】
[付記3]
前記スコア算出手段は、前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値に対して、前記出現頻度に応じた重み付けを行い、重み付けを行った当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
付記1に記載の信号処理装置。
【0096】
[付記4]
前記判定手段は、前記スコアの最大値と前記スコアが最大となる時刻とに基づいて前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
付記1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置。
【0097】
[付記5]
前記判定手段は、前記スコアに対してフィッティングした確率密度関数における最大値を、前記確率密度関数の分散に応じて変換した値と、前記確率密度関数の値が最大となる時刻と、に基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
付記1乃至3のいずれかに記載の信号処理装置。
【0098】
[付記6]
前記切出手段は、複数の前記重複信号を切り出す、
付記1乃至5のいずれかに記載の信号処理装置。
【0099】
[付記7]
前記判定対象信号に急変があると判定された場合、前記判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、前記スコアに応じて算出された、前記急変を示す信号の位相傾きの推定値と、に基づいて、前記判定対象信号の各周波数に対して、前記急変を示す信号の周波数である可能性を示す信頼度を算出する信頼度算出手段を備える、
付記1乃至6のいずれかに記載の信号処理装置。
【0100】
[付記8]
入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出し、
前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換し、
前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出し、
複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出し、
前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
信号処理方法。
【0101】
[付記9]
前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
付記8に記載の信号処理方法。
【0102】
[付記10]
前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値に対して、前記出現頻度に応じた重み付けを行い、重み付けを行った当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
付記8に記載の信号処理方法。
【0103】
[付記11]
前記スコアの最大値と前記スコアが最大となる時刻とに基づいて前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
付記8乃至10のいずれかに記載の信号処理方法。
【0104】
[付記12]
前記スコアに対してフィッティングした確率密度関数における最大値を、前記確率密度関数の分散に応じて変換した値と、前記確率密度関数の値が最大となる時刻と、に基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
付記8乃至10のいずれかに記載の信号処理方法。
【0105】
[付記13]
複数の前記重複信号を切り出す、
付記8乃至12のいずれかに記載の信号処理方法。
【0106】
[付記14]
前記判定対象信号に急変があると判定された場合、前記判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、前記スコアに応じて算出された、前記急変を示す信号の位相傾きの推定値と、に基づいて、前記判定対象信号の各周波数に対して、前記急変を示す信号の周波数である可能性を示す信頼度を算出する、
付記8乃至13のいずれかに記載の信号処理方法。
【0107】
[付記15]
入力信号から、所定区間の判定対象信号と、前記所定区間と一致しない区間であって、前記所定区間の少なくとも一部と重複する区間の重複信号と、を切り出す処理と
前記判定対象信号と前記重複信号とのそれぞれを、周波数ごとに、周波数領域における位相成分信号に変換する処理と
前記位相成分信号に基づいて、周波数における位相成分の傾きである位相傾きを、各周波数において算出する処理と、
複数の前記位相傾きに応じて、前記入力信号の急変性に関するスコアを算出する処理と、
前記スコアに基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する処理と、をコンピュータに実行させるプログラムを格納する、
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0108】
[付記16]
前記スコアを算出する処理において、前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
付記15に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0109】
[付記17]
前記スコアを算出する処理において、前記判定対象信号及び前記重複信号のそれぞれにおいて、前記位相傾きの出現頻度に関する値を算出し、算出した当該出現頻度に関する値に対して、前記出現頻度に応じた重み付けを行い、重み付けを行った当該出現頻度に関する値のうち、同一時刻に対応する値を統合することにより、前記スコアを算出する、
付記15に記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0110】
[付記18]
前記判定する処理において、前記スコアの最大値と前記スコアが最大となる時刻とに基づいて前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
付記15乃至17のいずれかに記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0111】
[付記19]
前記判定する処理において、前記スコアに対してフィッティングした確率密度関数における最大値を、前記スコアの確率密度関数に応じて変換した値と、前記確率密度関数の値が最大となる時刻と、に基づいて、前記判定対象信号の急変の有無を判定する、
付記15乃至17のいずれかに記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0112】
[付記20]
前記切り出す処理において、複数の前記重複信号を切り出す、
付記15乃至19のいずれかに記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【0113】
[付記21]
前記判定対象信号に急変があると判定された場合、前記判定対象信号の周波数ごとの位相傾きと、前記スコアに応じて算出された、前記急変を示す信号の位相傾きの推定値と、に基づいて、前記判定対象信号の各周波数に対して、前記急変を示す信号の周波数である可能性を示す信頼度を算出する処理をさらに実行させるプログラムを格納する、
付記15乃至20のいずれかに記載のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【符号の説明】
【0114】
100、101 信号処理装置
110 切出部
120 変換部
130 傾き算出部
140 スコア算出部
150 判定部
160 信頼度算出部