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特許7485090多層基板、電子機器及び多層基板の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】多層基板、電子機器及び多層基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20240509BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
H05K3/46 G
H05K1/02 P
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022573981
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021047015
(87)【国際公開番号】W WO2022149450
(87)【国際公開日】2022-07-14
【審査請求日】2023-05-24
(31)【優先権主張番号】P 2021001921
(32)【優先日】2021-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池本 伸郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 哲聡
(72)【発明者】
【氏名】西尾 恒亮
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-158502(JP,A)
【文献】国際公開第2016/181782(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/118791(WO,A1)
【文献】特開2003-8233(JP,A)
【文献】特開2008-34742(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111191(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/00―3/48
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質絶縁体層を含む複数の絶縁体層が上下方向に積層された積層体を備え、
前記積層体は前記多孔質絶縁体層の圧縮量の違いにより上下方向の厚みが薄い箇所と厚い箇所とを有し、
前記積層体の厚みが薄い箇所を湾曲可能とし、
後記(A)の構造又は後記(B)の構造の少なくとも一方を備えている、
多層基板。
(A)前記厚みの薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値は、前記厚みの厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値より小さい。
(B)前記厚みの薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度は、前記厚みの厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度より大きい。
【請求項2】
前記多孔質絶縁体層に形成されている主たる空孔は、独立気泡である、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記多孔質絶縁体層の上主面又は下主面に設けられている導体層を、
更に備えており、
上下方向において前記導体層の半分以上が、前記多孔質絶縁体層に埋まっている、
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の多層基板。
【請求項4】
前記積層体の厚みが薄い箇所における前記積層体の上主面又は下主面に実装されている部品を、
更に備えている、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項5】
前記積層体の厚みが薄い箇所において、外力が加えられることにより変形して曲がっている箇所を有する、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項6】
前記積層体の厚みが薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の上主面又は下主面に設けられているアンテナ導体層を、
更に備えている、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項7】
前記積層体の厚みが薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の上主面又は下主面に設けられている導体層と、
前記積層体の厚みが薄い箇所において前記多孔質絶縁体層を上下方向に貫通前記多孔質絶縁体層の上主面又は下主面に設けられている導体層に接続されている層間接続導体と、
を更に備えている、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項8】
前記積層体の厚みが薄い箇所は、上下方向に見て、前記層間接続導体を含む上下方向に平行な断面における前記導体層の幅の最小値を直径とする円を包含する形状を有している、
請求項に記載の多層基板。
【請求項9】
前記積層体の厚みが薄い箇所における前記絶縁体層の数は、前記積層体の厚みが厚い箇所における前記絶縁体層の数より多い、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項10】
前記積層体の厚みが薄い箇所において前記多孔質絶縁体層を上下方向に貫通する層間接続導体を、
更に備えている、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
【請求項11】
前記多孔質絶縁体層を上下方向に貫通する層間接続導体を備え
後記(C)の構造又は後記(D)の構造の少なくとも一方を備えている、
請求項1ないし請求項のいずれかに記載の多層基板。
(C)前記多孔質絶縁体層において前記多孔質絶縁体層を上下方向に貫通する層間接続導体に隣接する部分の空孔の大きさの平均値は、前記積層体の厚みが厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値より小さい。
(D)前記多孔質絶縁体層において前記多孔質絶縁体層を上下方向に貫通する層間接続導体に隣接する部分の密度は、前記積層体の厚みが厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度より大きい。
【請求項12】
前記積層体の厚みが薄い箇所において前記積層体に設けられている第1キャパシタ導体層と、
前記積層体の厚みが薄い箇所において前記積層体に設けられており、かつ、上下方向に見て、前記第1キャパシタ導体層と重なる第2キャパシタ導体層と、
を更に備えており、
前記多孔質絶縁体層は、前記第1キャパシタ導体層と前記第2キャパシタ導体層との間に位置している、
請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の多層基板。
【請求項13】
前記積層体の厚みが薄い箇所において前記積層体に内蔵されている部品を、
更に備えている、
請求項1ないし請求項12のいずれかに記載の多層基板。
【請求項14】
前記多孔質絶縁体層の上主面又は下主面に設けられている導体層を、
更に備えており、
前記多孔質絶縁体層の上主面又は下主面に設けられている導体層は、高周波回路を形成している、
請求項1ないし請求項13のいずれかに記載の多層基板。
【請求項15】
層体の厚みが薄い箇所において、外力が加えられることにより変形して曲がっている箇所を有し、
前記多層基板が前記曲がっていることにより生じる応力によって、前記積層体の厚みが薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の上下方向の厚みは、前記積層体の厚みが厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の上下方向の厚みより小さくなっており、
前記多層基板が前記曲がっている箇所に生じる応力によって、前記積層体の厚みが薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値は、前記積層体の厚みが厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値より小さくなっている、及び/又は、前記積層体の厚みが薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度は、前記積層体の厚みが厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度より大きくなっている、
請求項1ないし請求項14のいずれかに記載の多層基板。
【請求項16】
後記(E)の構造又は後記(F)の構造の少なくとも一方を備えている、
請求項1ないし請求項15のいずれかに記載の多層基板。
(E)前記積層体の厚みが厚い箇所において前記積層体の厚みが薄い箇所と前記積層体の厚みが厚い箇所との境界に近づくにしたがって、前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさが小さくなる。
(F)前記積層体の厚みが厚い箇所において前記積層体の厚みが薄い箇所と前記積層体の厚みが厚い箇所との境界に近づくにしたがって、前記多孔質絶縁体層の密度が大きくなる。
【請求項17】
前記複数の絶縁体層は、複数の前記多孔質絶縁体層を含んでおり、
前記複数の多孔質絶縁体層の空孔の大きさは、前記積層体の上下方向の中央に近づくにしたがって小さくなる、
請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の多層基板。
【請求項18】
前記複数の絶縁体層は、複数の前記多孔質絶縁体層を含んでおり、
前記複数の多孔質絶縁体層の空孔の大きさは、前記積層体の上下方向の中央に近づくにしたがって大きくなる、
請求項1ないし請求項16のいずれかに記載の多層基板。
【請求項19】
前記複数の絶縁体層は、複数の前記多孔質絶縁体層と、前記複数の多孔質絶縁体層を接合する接着層と、含んでいる、
請求項1ないし請求項18のいずれかに記載の多層基板。
【請求項20】
請求項1ないし請求項19のいずれかに記載の多層基板を備える、
電子機器。
【請求項21】
多孔質絶縁体層を含む複数の絶縁体層を上下方向に積層して積層体を形成する積層工程と、
前記積層体の前記多孔質絶縁体層に対する加圧により前記多孔質絶縁体層の圧縮量の違いを生じさせる加圧工程と、
を備え、
前記加圧工程により、後記(A)の構造又は後記(B)の構造の少なくとも一方を備えて、前記多孔質絶縁体層の圧縮量の違いにより上下方向の厚みが薄い箇所と厚い箇所とを有して前記積層体の厚みが薄い箇所を湾曲可能とした多層基板の製造方法。
(A)前記厚みの薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値は、前記厚みの厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値より小さい。
(B)前記厚みの薄い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度は、前記厚みの厚い箇所における前記多孔質絶縁体層の密度より大きい。
【請求項22】
前記積層工程後に前記複数の絶縁体層を加圧することによって前記加圧工程を行う、
請求項21に記載の多層基板の製造方法。
【請求項23】
前記積層工程では、加圧を行った前記多孔質絶縁体層を含む複数の前記絶縁体層を積層する、
請求項21に記載の多層基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の絶縁体層が積層された構造を有する多層基板、電子機器及び多層基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の多層基板に関する発明としては、例えば、特許文献1に記載の多層回路基板が知られている。この多層回路基板は、複数の多孔質基材が積層された構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-268345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の多孔質基材が積層された構造を有する特許文献1に記載の多層回路基板において、多層回路基板の設計自由度を向上させたいという要望がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、多層基板の設計自由度を向上させることができる多層基板、電子機器及び多層基板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る多層基板は、
多孔質絶縁体層を含む複数の絶縁体層が上下方向に積層された構造を有する積層体を備えている多層基板であって、
前記多層基板は、第1領域及び第2領域を有しており、
前記第1領域における前記多孔質絶縁体層の上下方向の厚みは、前記第2領域における前記多孔質絶縁体層の上下方向の厚みより小さく、
前記多層基板は、(A)の構造又は(B)の構造の少なくとも一方を備えている。
【0007】
(A)前記第1領域における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値は、前記第2領域における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値より小さい。
【0008】
(B)前記第1領域における前記多孔質絶縁体層の密度は、前記第2領域における前記多孔質絶縁体層の密度より大きい。
【0009】
本発明の一形態に係る多層基板の製造方法は、
多孔質材料で作製されている多孔質絶縁体層を含む複数の絶縁体層を上下方向に積層する積層工程と、
前記複数の絶縁体層を加圧する加圧工程と、
を備え、
前記多層基板は、第1領域及び第2領域を有しており、
前記加圧工程により、前記第1領域における前記多孔質絶縁体層の上下方向の厚みは、前記第2領域における前記多孔質絶縁体層の上下方向の厚みより小さくなり、
前記加圧工程により、前記多層基板は、(A)構造又は(B)の構造の少なくとも一方を備えるようになる。
【0010】
(A)前記第1領域における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値は、前記第2領域における前記多孔質絶縁体層の空孔の大きさの平均値より小さい。
【0011】
(B)前記第1領域における前記多孔質絶縁体層の密度は、前記第2領域における前記多孔質絶縁体層の密度より大きい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る多層基板、電子機器及び多層基板の製造方法によれば、多層基板の設計自由度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、多層基板10の分解斜視図である。
図2図2は、図1のA-Aにおける多層基板10の断面図である。
図3図3は、多層基板10を備える電子機器1の内部構造の一部の左面図である。
図4図4は、多層基板10の製造時における断面図である。
図5図5は、多層基板10の製造時における断面図である。
図6図6は、多層基板10aの断面図である。
図7図7は、多層基板10bの断面図である。
図8図8は、多層基板10cの断面図である。
図9図9は、多層基板10dの断面図である。
図10図10は、多層基板10eの断面図である。
図11図11は、多層基板10fの断面図である。
図12図12は、多層基板10gの断面図である。
図13図13は、多層基板10hの断面図である。
図14図14は、多層基板10hの製造時の断面図である。
図15図15は、多層基板10iの断面図である。
図16図16は、多層基板10iの製造時の断面図である。
図17図17は、多層基板10jの製造時の断面図である。
図18図18は、多層基板10jの断面図である。
図19図19は、多層基板10kの断面図である。
図20図20は、多層基板10lの断面図である。
図21図21は、多層基板10lの製造時の断面図である。
図22図22は、多層基板10mの断面図である。
図23図23は、多層基板10mの製造時の断面図である。
図24図24は、多層基板10nの断面図である。
図25図25は、多層基板10nの製造時の断面図である。
図26図26は、多層基板10oの断面図である。
図27図27は、多層基板10oの製造時の断面図である。
図28図28は、多層基板10pの断面図である。
図29図29は、多層基板10pの製造時の断面図である。
図30図30は、多層基板10qの断面図である。
図31図31は、多層基板10rの断面図である。
図32図32は、多層基板10sの断面図である。
図33図33は、多層基板10tの断面図である。
図34図34は、多層基板10uの断面図である。
図35図35は、多層基板10vの断面図である。
図36図36は、多層基板10wの断面図である。
図37図37は、多層基板10wの製造時の断面図である。
図38図38は、多層基板10の製造時の断面図である。
図39図39は、多層基板10xの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(実施形態)
[多層基板10の構造]
以下に、本発明の実施形態に係る多層基板10の構造について図面を参照しながら説明する。図1は、多層基板10の分解斜視図である。なお、図1では、複数の層間接続導体v1,v2の内の代表的な層間接続導体v1,v2にのみ参照符号を付した。図2は、図1のA-Aにおける多層基板10の断面図である。
【0015】
本明細書において、方向を以下のように定義する。多層基板10の積層体12の積層方向を上下方向と定義する。また、多層基板10の信号導体層22が延びる方向を前後方向と定義する。また、信号導体層22の線幅方向を左右方向と定義する。上下方向、前後方向及び左右方向は、互いに直交している。なお、本明細書の上下方向、前後方向及び左右方向は、多層基板10の実使用時の上下方向、前後方向及び左右方向と一致していなくてもよい。
【0016】
以下では、Xは、多層基板10の部品又は部材である。本明細書において、特に断りのない場合には、Xの各部について以下のように定義する。Xの前部とは、Xの前半分を意味する。Xの後部とは、Xの後半分を意味する。Xの左部とは、Xの左半分を意味する。Xの右部とは、Xの右半分を意味する。Xの上部とは、Xの上半分を意味する。Xの下部とは、Xの下半分を意味する。Xの前端とは、Xの前方向の端を意味する。Xの後端とは、Xの後方向の端を意味する。Xの左端とは、Xの左方向の端を意味する。Xの右端とは、Xの右方向の端を意味する。Xの上端とは、Xの上方向の端を意味する。Xの下端とは、Xの下方向の端を意味する。Xの前端部とは、Xの前端及びその近傍を意味する。Xの後端部とは、Xの後端及びその近傍を意味する。Xの左端部とは、Xの左端及びその近傍を意味する。Xの右端部とは、Xの右端及びその近傍を意味する。Xの上端部とは、Xの上端及びその近傍を意味する。Xの下端部とは、Xの下端及びその近傍を意味する。
【0017】
まず、図1を参照しながら、多層基板10の構造について説明する。多層基板10は、高周波信号を伝送する。多層基板10は、スマートフォン等の電子機器において、2つの回路を電気的に接続するために用いられる。多層基板10は、図1に示すように、積層体12、信号導体層22、第1グランド導体層24、第2グランド導体層26、信号端子28a,28b、接続導体層23a,23b,27a,27b,29a,29b、複数の層間接続導体v1、複数の層間接続導体v2及び層間接続導体v3,v4を備えている。
【0018】
積層体12は、板形状を有している。従って、積層体12は、上主面及び下主面を有している。積層体12の上主面及び下主面の法線は、上下方向に延びている。積層体12の上主面及び下主面は、前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。従って、積層体12の前後方向の長さは、積層体12の左右方向の長さより長い。
【0019】
積層体12は、図1に示すように、絶縁体層16a~16d,20a,20bを含んでいる。積層体12は、絶縁体層16a~16d,20a,20bが上下方向に積層された構造を有している。絶縁体層20a,16a~16d,20bが上から下へとこの順に並んでいる。絶縁体層16a~16dは、上下方向に見て、積層体12と同じ長方形状を有している。絶縁体層16a~16dは、可撓性を有する誘電体シートである。絶縁体層16a~16dの材料は、熱可塑性樹脂を含んでいる。熱可塑性樹脂は、例えば、液晶ポリマー、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)等である。また、絶縁体層16a~16dの材料は、ポリイミドであってもよい。絶縁体層16a~16dは、多孔質材料により作製されている多孔質絶縁体層である。従って、絶縁体層16a~16dには、多数の空孔が形成されている。絶縁体層16a~16dに形成されている主たる空孔は、独立気泡である。独立気泡は、気泡が絶縁体層16a~16dの材料により完全に囲まれた構造を有する。従って、独立気泡は、複数の気泡が繋がっていない構造を有している。なお、絶縁体層16a~16dに形成されている全ての空孔が独立気泡でなくてもよい。絶縁体層16a~16dの空孔率は、例えば、30%以上80%以下である。空孔率は、積層体12の全体の体積に占める気泡の体積の割合である。絶縁体層20a,20bの詳細については後述する。
【0020】
信号導体層22(導体層)は、絶縁体層16c(多孔質絶縁体層)の上主面又は下主面に設けられている。本実施形態では、信号導体層22は、絶縁体層16cの上主面に設けられている。信号導体層22は、線形状を有している。信号導体層22は、前後方向に延びている。信号導体層22には、高周波信号が伝送される。
【0021】
第1グランド導体層24は、積層体12に設けられている。第1グランド導体層24は、上下方向に見て、信号導体層22と重なるように、信号導体層22の上に設けられている。本実施形態では、第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの上主面に設けられている。第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの上主面の略全面を覆っている。第1グランド導体層24は、グランド電位に接続される。
【0022】
第2グランド導体層26は、積層体12に設けられている。第2グランド導体層26は、上下方向に見て、信号導体層22と重なるように、信号導体層22の下に設けられている。本実施形態では、第2グランド導体層26は、絶縁体層16dの下主面に設けられている。本実施形態では、第2グランド導体層26は、絶縁体層16dの下主面の略全面を覆っている。第2グランド導体層26は、グランド電位に接続される。これにより、信号導体層22(導体層)、第1グランド導体層24及び第2グランド導体層26は、ストリップライン構造を有しており、高周波回路を形成している。
【0023】
接続導体層23a,23b,27a,27bは、絶縁体層16bの上主面に設けられている。接続導体層23a,23b,27a,27bは、上下方向に見て、正方形状を有している。接続導体層29a,29bは、絶縁体層16cの上主面に設けられている
【0024】
複数の層間接続導体v1,v2は、第1グランド導体層24と第2グランド導体層26とを電気的に接続している。より詳細には、複数の層間接続導体v1,v2は、絶縁体層16a~16dを上下方向に貫通している。複数の層間接続導体v1,v2の上端は、第1グランド導体層24に接続されている。複数の層間接続導体v1,v2の下端は、第2グランド導体層26に接続されている。複数の層間接続導体v1の中間部分は、接続導体層27,29(導体層)に接続されている。複数の層間接続導体v2の中間部分は、接続導体層27,29(導体層)に接続されている。複数の層間接続導体v1は、信号導体層22の左に設けられている。複数の層間接続導体v1は、前後方向において等間隔に一列に並んでいる。複数の層間接続導体v2は、信号導体層22の右に設けられている。複数の層間接続導体v2は、前後方向において等間隔に一列に並んでいる。
【0025】
信号端子28aは、絶縁体層16aの上主面の前端部に設けられている。信号端子28aは、上下方向に見て、長方形状を有している。信号端子28aは、上下方向に見て、信号導体層22の前端部と重なっている。信号端子28aが第1グランド導体層24と絶縁されるように、信号端子28aの周囲には第1グランド導体層24が設けられていない。
【0026】
層間接続導体v3は、信号端子28aと信号導体層22とを電気的に接続している。具体的には、層間接続導体v3は、絶縁体層16a,16bを上下方向に貫通している。層間接続導体v3の上端は、信号端子28aに接続されている。層間接続導体v3の下端は、信号導体層22の前端部に接続されている。層間接続導体v3の中間部分は、接続導体層23aに接続されている。これにより、信号端子28aは、信号導体層22と電気的に接続されている。高周波信号は、信号端子28aを介して、信号導体層22に入出力する。
【0027】
なお、信号端子28b、接続導体層23b及び層間接続導体v4は、信号端子28a、接続導体層23a及び層間接続導体v3と前後対称な構造を有する。従って、信号端子28b、接続導体層23b及び層間接続導体v4の説明を省略する。
【0028】
以上のような信号導体層22、第1グランド導体層24、第2グランド導体層26、信号端子28a,28b及び接続導体層23a,23b,27a,27b,29a,29bは、例えば、絶縁体層16a~16dの上主面又は下主面に設けられた導体箔にエッチングが施されることにより形成されている。導体箔は、例えば、銅箔である。また、層間接続導体v1~v4のそれぞれは、図2に示すように、複数のビアホール導体が直列に接続された構造を有している。ビアホール導体は、絶縁体層16a~16dに貫通孔を形成し、貫通孔に導電性ペーストを充填した後に、導電性ペーストを固化させることにより作製される。なお、ビアホール導体は、貫通孔にめっきが施されることによって形成されてもよい。
【0029】
絶縁体層20a,20bは、可撓性を有する絶縁体層である。絶縁体層20a,20bは、上下方向に見て、積層体12と同じ長方形状を有している。絶縁体層20aは、絶縁体層16aの上主面の略全面を覆っている。これにより、絶縁体層20aは、第1グランド導体層24を保護している。ただし、絶縁体層20aには、開口h1~h6が設けられている。開口h1は、上下方向に見て、信号端子28aと重なっている。これにより、信号端子28aは、開口h1を介して多層基板10から外部に露出している。開口h2は、開口h1の左に設けられている。開口h3は、開口h1の右に設けられている。これにより、第1グランド導体層24は、開口h2,h3を介して多層基板10から外部に露出している。なお、開口h4~h6の構造はそれぞれ、開口h1~h3の構造と前後対称である。従って、開口h4~h6の説明を省略する。
【0030】
絶縁体層20bは、絶縁体層16dの下主面の略全面を覆っている。これにより、絶縁体層20bは、第2グランド導体層26を保護している。
【0031】
ところで、多層基板10は、図2に示すように、第1領域A1a,A1b及び第2領域A2を有している。第1領域A1aは、多層基板10の左部に位置している。第1領域A1aは、上下方向に見て、前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。第1領域A1bは、多層基板10の右部に位置している。第1領域A1bは、上下方向に見て、前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。第2領域A2は、第1領域A1aと第1領域A1bとの間に位置している。第2領域A2は、上下方向に見て、前後方向に延びる長辺を有する長方形状を有している。このように、第1領域A1aと第2領域A2とは、上下方向に見て、隣接している。第1領域A1bと第2領域A2とは、上下方向に見て、隣接している。
【0032】
また、第1領域A1a,A1bは、上下方向に見て、十分な広さを有している。具体的には、第1領域A1a,A1bは、層間接続導体v1,v2を含む上下方向に平行な断面における接続導体層27a,27bの幅の最小値を直径とする円を包含する形状を有している。従って、第1領域A1a,A1bは、層間接続導体v1,v2を含む上下方向に平行な断面における接続導体層27a,27bの幅の最小値を直径とする円を包含できないような微小な領域ではない。
【0033】
第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16dの圧縮量は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの圧縮量より大きい。これにより、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さい。その結果、第1領域A1a,A1bにおける積層体12の上下方向の厚みT3は、第2領域A2における積層体12の上下方向の厚みT4より小さい。そして、多層基板10は、以下の(A)の構造及び(B)の構造を備えている。
【0034】
(A)第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値より小さい。
(B)第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度より大きい。
【0035】
ここで、空孔の大きさとは、空孔の体積である。空孔の体積は、多層基板10をCTスキャナでスキャンして得られる3次元画像を解析することにより算出されてもよい。測定領域は、多層基板10の上下方向の長さ、左右方向の長さ及び前後方向の長さの内の最も短い長さを一辺の長さとする立方体である。この測定領域内の空孔の体積を測定する。なお、ビアホール導体の貫通孔は、空孔ではない。従って、ビアホール導体が形成されている領域は、空孔の体積の測定に用いられない。本明細書において、密度の測定方法は、上記の測定方法を用いることができる。
【0036】
また、絶縁体層16a~16dの密度とは、絶縁体層16a~16dの単位体積当たりの質量である。絶縁体層16a~16dの密度は、以下の方法により算出される。具体的には、絶縁体層16a~16dの質量及び体積を測定する。そして、絶縁体層16a~16dの質量を絶縁体層16a~16dの体積で割り算をする。
【0037】
ここで、絶縁体層16a~16dの空孔の大きさ及び絶縁体層16a~16dの密度は、第1領域A1aと第2領域A2との境界及び第1領域A1aと第2領域A2との境界において連続的に変化している。図2では、色の濃淡により、空孔の大きさ及び絶縁体層16a~16dの密度の変化を示した。具体的には、多層基板10は、以下の(E)の構造及び(F)の構造を備えている。
【0038】
(E)第2領域A2において第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界に近づくにしたがって、絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさが小さくなる
F)第2領域A2において第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界に近づくにしたがって、絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度が大きくなる。
【0039】
また、層間接続導体v1は、第1領域A1aにおいて絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)を上下方向に貫通している。層間接続導体v2は、第1領域A1bにおいて絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)を上下方向に貫通している。
【0040】
[電子機器1の構造]
次に、多層基板10を備える電子機器1の構造について図面を参照しながら説明する。図3は、多層基板10を備える電子機器1の内部構造の一部の左面図である。電子機器1は、例えば、携帯無線通信端末である。電子機器1は、例えば、スマートフォンである。
【0041】
多層基板10は、図3に示すように、折り曲げられる。「多層基板10が折り曲げられる」とは、多層基板10に外力が加えられることにより多層基板10が変形して曲がっていることを意味する。「多層基板10が折り曲げられる」態様には、2種類が存在する。具体的には、「多層基板10が折り曲げられる」態様の内の第1態様は、多層基板10が塑性変形して折り曲げられている。多層基板10が加熱されて折り曲げられることにより、多層基板10が塑性変形しやすい。この場合、絶縁体層16a~16dの材料は、熱可塑性樹脂である。「多層基板10が折り曲げられる」態様の内の第2態様は、多層基板10が弾性変形して折り曲げられている態様である。
【0042】
以下では、多層基板10が折り曲げられている区間を第1区間A12と呼ぶ。第2区間A11,A13の曲率半径は、第1区間A12の曲率半径より大きい。従って、第2区間A11,A13は、多層基板10が僅かに折り曲げられている区間であってもよいし、多層基板10が折り曲げられない区間であってもよい。そして、電子機器1におけるx軸、y軸及びz軸を以下の様に定義する。x軸は、第2区間A11での前後方向である。y軸は、第2区間A11での左右方向である。z軸は、第2区間A11での上下方向である。第2区間A11、第1区間A12及び第2区間A13は、x軸の正方向に向かってこの順に並んでいる。
【0043】
図3に示すように、多層基板10は、第1区間A12において、z軸方向(第2区間A11における上方向又は下方向)に折れ曲がっている。従って、上下方向及び前後方向は、図3に示すように、多層基板10の位置によって異なる。多層基板10が折り曲げられていない第2区間A11及び第2区間A13(例えば、(1)の位置)では、上下方向及び前後方向のそれぞれは、z軸方向及びx軸方向と一致する。一方、多層基板10が折り曲げられている第1区間A12(例えば、(2)の位置)では、上下方向及び前後方向のそれぞれは、z軸方向及びx軸方向と一致しない。
【0044】
電子機器1は、図3に示すように、多層基板10、コネクタ30a,30b,102a,102b、回路基板100,110を備えている。
【0045】
回路基板100,110は、板形状を有している。回路基板100は、主面S5,S6を有している。主面S5は、主面S6よりz軸の負方向側に位置する。回路基板110は、主面S11,S12を有している。主面S11は、主面S12よりz軸の負方向側に位置する。回路基板100,110は、図示しない配線導体層やグランド導体層、電極等を含んでいる。
【0046】
コネクタ30a,30bのそれぞれは、第2区間A11及び第2区間A13において積層体12のz軸の正方向側の主面(上主面)に実装されている。より詳細には、コネクタ30aは、開口h1~h3から露出している信号端子28a及び第1グランド導体層24に実装される。コネクタ30bは、開口h4~h6から露出している信号端子28b及び第1グランド導体層24に実装される。
【0047】
コネクタ102a,102bのそれぞれは、回路基板100の主面S5及び回路基板110の主面S11に実装されている。コネクタ102a,102bのそれぞれは、コネクタ30a,30bに接続されている。これにより、多層基板10は、回路基板100と回路基板110とを電気的に接続している。
【0048】
[多層基板10の製造方法]
以下に、多層基板10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図4及び図5は、多層基板10の製造時における断面図である。
【0049】
まず、絶縁体層16a~16dに第1グランド導体層24、信号端子28a,28b、信号導体層22、接続導体層23a,23b,27a,27b,29a,29b及び第2グランド導体層26を形成する。具体的には、絶縁体層16a,16b,16dの上主面又は下主面に銅箔を張り付ける。そして、導体箔にエッチング施す。
【0050】
次に、絶縁体層16a~16dに層間接続導体v1~v4を形成する。具体的には、絶縁体層16a~16dのそれぞれに貫通孔を形成する。そして、貫通孔に導電性ペーストを充填する。
【0051】
次に、図4に示すように、多孔質材料で作製されている多孔質絶縁体層を含む絶縁体層16a~16dを上下方向に積層する(積層工程)。この積層工程では、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16dの上下方向の厚みT1と第2領域A2における絶縁体層16a~16dの上下方向の厚みT2とは等しい。
【0052】
次に、図5に示すように、絶縁体層16a~16dを加圧する(加圧工程)。本実施形態では、図4の積層工程後に複数の絶縁体層16a~16dを加圧することによって加圧工程を行う。具体的には、金型T100,T101により絶縁体層16a~16dを上下方向から挟み込む。金型T100の下面には凹部Gが設けられている。金型T100の下面は、凹部Gにおいて上方向に窪んでいる。一方、金型T101の上面は平面である。これにより、絶縁体層16a~16dの内の凹部Gと上下方向に重ならない領域は、絶縁体層16a~16dの内の凹部Gと上下方向に重なる領域より大きな圧力を受ける。その結果、絶縁体層16a~16dにおいて凹部Gと上下方向に重ならない領域の圧縮量は、絶縁体層16a~16dにおいて凹部Gと上下方向に重なる領域の圧縮量より大きい。よって、絶縁体層16a~16dにおいて凹部Gと上下方向に重ならない領域に第1領域A1a,A1bが形成される。絶縁体層16a~16dにおいて凹部Gと上下方向に重なる領域に第2領域A2が形成される。このように、加圧工程により、多層基板10は、(A)の構造又は(B)の構造の少なくとも一方を備えるようになる。その結果、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さくなる。
【0053】
また、前記加圧工程では、絶縁体層16a~16dを加熱する。これにより、熱可塑性樹脂を材料とする絶縁体層16a~16dが軟化及び溶融する。その結果、絶縁体層16a~16dが接合される。また、加熱により、導電性ペーストが固化され、層間接続導体v1~v4が形成される。
【0054】
最後に、図2に示すように、絶縁体層20a,20bのそれぞれを絶縁体層16aの上主面及び絶縁体層16bの下主面に形成する。これにより、多層基板10が完成する。
【0055】
[効果]
多層基板10によれば、多層基板10の設計自由度を向上させることができる。より詳細には、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さい。これにより、多層基板10は、(A)の構造及び(B)の構造を備えている。
【0056】
多層基板10が(A)の構造又は(B)の構造を備えていると、以下に説明するように、第1領域A1a,A1bの物理的特性及び第2領域A2の物理的特性に差をつけることができる。そして、この物理的特性の差を利用すれば、以下に説明するように、種々の観点から多層基板10の設計自由度を高くすることができる。
【0057】
例えば、第2領域A2における誘電率及び誘電正接を第1領域A1a,A1bにおける誘電率及び誘電正接より低くすることができる。従って、第2領域A2に信号導体層22が配置されると、信号導体層22の周囲の誘電率及び誘電正接が小さくなる。その結果、信号導体層22に発生する誘電損の低減が図られる。すなわち、誘電損が低減された多層基板10を容易に得ることができる。よって、多層基板10の設計自由度が高くなる。
【0058】
また、第1領域A1a,A1bにおける積層体12が第2領域A2における積層体12より硬くなる。これにより、第1領域A1a,A1bにおける積層体12を加工することが容易となる。その結果、第1領域A1a,A1bにおいて、絶縁体層16a~16dに層間接続導体v1,v2を形成することが容易となる。このように、製造容易な多層基板10を得ることができる。よって、多層基板10の設計自由度が高くなる。
【0059】
また、第1領域A1a,A1bにおける積層体12の上下方向の厚みT3と第2領域A2における積層体12の上下方向の厚みT4とに差をつけることができる。これにより、多層基板10の形状を電子機器1内の構造に適合する形状に加工することができる。このように、多様な場所に配置可能な多層基板10を得ることができる。よって、多層基板10の設計自由度が高くなる。
【0060】
多層基板10によれば、多層基板10の物理的特性が急激に変化することが抑制される。より詳細には、多層基板10は、(E)の構造及び(F)の構造を備えている。これにより、第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界において、誘電率、誘電正接、硬さ等の物理的特性が急激に変動することが抑制される。
【0061】
(第1変形例)
以下に、第1変形例に係る多層基板10aについて図面を参照しながら説明する。図6は、多層基板10aの断面図である。
【0062】
多層基板10aは、層間接続導体v1~v4の構造において多層基板10と相違する。より詳細には、層間接続導体v1~v4は、スルーホール導体である。スルーホール導体は、絶縁体層16a~16dに貫通孔が形成され、貫通孔にめっき処理が施されることにより作製される。多層基板10aのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。以上のような多層基板10aは、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。多層基板10aでは、層間接続導体v1,v2が第1領域A1a,A1bにおける積層体12に設けられている。これにより、層間接続導体v1,v2の形成時に、めっき液が積層体12の内部に広がることが抑制される。
【0063】
(第2変形例)
以下に、第2変形例に係る多層基板10bについて図面を参照しながら説明する。図7は、多層基板10bの断面図である。なお、多層基板10bにおいても、絶縁体層16a~16dの空孔の大きさ及び絶縁体層16a~16dの密度は、第1領域A1aと第2領域A2との境界及び第1領域A1aと第2領域A2との境界において連続的に変化している。ただし、図7以降の図面は、空孔の大きさ及び絶縁体層16a~16dの変化を色の濃淡により表現していない図面を含む。
【0064】
多層基板10bは、以下の2点において、多層基板10と相違する。
・第1領域A1a,A1bの代わりに第1領域A1が設けられている。
・第1キャパシタ導体層30及び第2キャパシタ導体層32が設けられている。
【0065】
より詳細には、第1領域A1は、第2領域A2の右に位置している。そして、信号導体層22及び層間接続導体v1,v2は、第2領域A2に設けられている。
【0066】
また、第1キャパシタ導体層30は、第1領域A1において積層体12に設けられている。第2変形例では、第1キャパシタ導体層30は、第1領域A1において絶縁体層16bの上主面に設けられている。また、第2キャパシタ導体層32は、第1領域A1において積層体12に設けられている。第2変形例では、第2キャパシタ導体層32は、第1領域A1において絶縁体層16cの上主面に設けられている。第2キャパシタ導体層32は、上下方向に見て、第1キャパシタ導体層30と重なっている。これにより、絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)は、第1キャパシタ導体層30と第2キャパシタ導体層32との間に位置している。その結果、第1キャパシタ導体層30及び第2キャパシタ導体層32は、キャパシタを形成している。多層基板10bのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。
【0067】
多層基板10bによれば、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。更に、多層基板10bによれば、キャパシタの容量を大きくすることができる。より詳細には、第1キャパシタ導体層30及び第2キャパシタ導体層32は、第1領域A1に設けられている。第1領域A1における絶縁体層16a~16dの上下方向の厚みT1は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの上下方向の厚みT2より小さい。これにより、第1キャパシタ導体層30と第2キャパシタ導体層32との距離が小さくなる。その結果、キャパシタの容量が大きくなる。
【0068】
更に、多層基板10bは、(A)の構造及び(B)の構造を備えている。これにより、第1キャパシタ導体層30と第2キャパシタ導体層32との間に位置する絶縁体層16bの誘電率が高くなる。その結果、キャパシタの容量が大きくなる。
【0069】
(第3変形例)
以下に、第3変形例に係る多層基板10cについて図面を参照しながら説明する。図8は、多層基板10cの断面図である。
【0070】
多層基板10cは、部品40を更に備えている点において多層基板10bと相違する。部品40は、コンデンサ又はインダクタ等のチップ型電子部品、IC(Integrated Circuit)素子、コネクタ等の電子部品である。部品40は、第1領域A1における積層体12の上主面又は下主面に実装されている。第3変形例では、部品40は、第1領域A1における積層体12の上主面に実装されている。多層基板10cのその他の構造は、多層基板10bと同じであるので説明を省略する。
【0071】
多層基板10cは、多層基板10bと同じ作用効果を奏することができる。多層基板10cでは、第1領域A1における積層体12が第2領域A2における積層体12より硬い。そのため、部品40を第1領域A1に実装することが容易である。また、上下方向の厚みが小さい第1領域A1に部品40が実装されることにより、多層基板10cの上下方向の厚みが小さくなる。
【0072】
(第4変形例)
以下に、第4変形例に係る多層基板10dについて図面を参照しながら説明する。図9は、多層基板10dの断面図である。
【0073】
多層基板10dは、2つの多層基板10bが接合された構造を有している。より詳細には、2つの多層基板10bの絶縁体層20aが第1領域A1において除去されている。これにより、2つの多層基板10bの第1領域A1において、第1グランド導体層24が露出している。そして、2つの第1グランド導体層24は、半田60により接合されている。
【0074】
多層基板10dによれば、2つの多層基板10bを接合することが容易である。より詳細には、多層基板10bでは、第1領域A1における積層体12は、第2領域A2における積層体12より硬い。そこで、2つの多層基板10bは、第1領域A1において接合されている。これにより、2つの多層基板10bの接合時に2つの多層基板10bが変形することが抑制される。よって、多層基板10dによれば、2つの多層基板10bを接合することが容易である。更に、第1領域A1における積層体12が薄いので、2つの多層基板10bが接合されている部分における多層基板10dの上下方向の厚みが小さくなる。
【0075】
なお、2つの多層基板10bの絶縁体層20aは、第1領域A1の少なくとも一部において除去されていればよい。
【0076】
(第5変形例)
以下に、第5変形例に係る多層基板10eについて図面を参照しながら説明する。図10は、多層基板10eの断面図である。
【0077】
多層基板10eは、第1区間A12が第1領域A1に位置している点において、多層基板10bと相違する。多層基板10eは、第1区間A12及び第2区間A11,A13を含んでいる。第2区間A11は、第1区間A12のy軸の負方向側に位置している。第2区間A11は、第2領域A2aに位置している。第2区間A13は、第1区間A12のz軸の正方向側に位置している。第2区間A13は、第2領域A2bに位置している。第2領域A2bの構造は、第2領域A2aの構造と同じである。第1区間A12は、第1領域A1に位置している。なお、多層基板10eのその他の構造は、多層基板10bと同じであるので説明を省略する。
【0078】
多層基板10eによれば、多層基板10bと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10eによれば、第1区間A12における積層体12の上下方向の厚みが小さいので、第1区間A12において多層基板10eを容易に折り曲げることが可能となる。更に、多層基板10eでは、第1区間A12における積層体12の上下方向の厚みが小さいので、多層基板10eが第1区間A12において折り曲げられた際に、第1区間A12における積層体12の上下方向の厚みが変化しにくい。そのため、多層基板10eが第1区間A12において折り曲げられることによって生じる多層基板10eの電気的特性の変動が抑制される。電気的特性は、例えば、容量値や特性インピーダンス、共振周波数等である。
【0079】
(第6変形例)
以下に、第6変形例に係る多層基板10fについて図面を参照しながら説明する。図11は、多層基板10fの断面図である。
【0080】
多層基板10fは、信号導体層22が第2区間A11、第1区間A12及び第2区間A13にわたって延びている点において、多層基板10eと相違する。なお、多層基板10fのその他の構造は、多層基板10eと同じであるので説明を省略する。このような多層基板10fでは、第1領域A1における積層体12を第2領域A2a,A2bにおける積層体12より大きく圧縮させた後に、第1区間A12において多層基板10fを折り曲げている。
【0081】
多層基板10fによれば、多層基板10eと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10fでは、第1区間A12における積層体12の上下方向の厚みが小さいので、第1区間A12において多層基板10fが折り曲げられた際に、第1区間A12における積層体12の上下方向の厚みが変化しにくい。そのため、第1区間A12において信号導体層22に発生する特性インピーダンスが所定の特性インピーダンスから変化することが抑制される。
【0082】
多層基板10fでは、信号導体層22の線幅を第1区間A12の厚み及び誘電率に合わせて細くし、第1区間A12において信号導体層22に発生する特性インピーダンスを第2区間A11において信号導体層22に発生する特性インピーダンスと等しくなるようにしてもよい。また、第2区間A11と第1区間A12と境界近傍でも第2区間A11から第1区間A12に向かって信号導体層22の線幅が細くなるようにしてもよい。
【0083】
(第7変形例)
以下に、第7変形例に係る多層基板10gについて図面を参照しながら説明する。図12は、多層基板10gの断面図である。
【0084】
多層基板10gは、製造方法において多層基板10fと相違する。より詳細には、多層基板10fでは、第1領域A1における積層体12を第2領域A2a,A2bにおける積層体12より大きく圧縮させた後に、第1区間A12において多層基板10fを折り曲げている。一方、多層基板10gでは、第1領域A1における積層体12を第2領域A2a,A2bにおける積層体12より大きく圧縮させずに、第1区間A12において多層基板10gを折り曲げている。そして、第1区間A12における多層基板10gの折り曲げ時に、第1区間A12における積層体12の内周部分が圧縮され、第1区間A12における積層体12の外周部分が伸張される。
【0085】
第1区間A12が折れ曲がることにより生じる応力によって、第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さくなっている。更に、多層基板10gが第1区間A12において折れ曲がることにより生じる応力によって、第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値より小さくなっている。更に、多層基板10gが第1区間A12において折れ曲がることにより生じる応力によって、第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度より大きくなっている。以上のように、第1区間A12における積層体12が上下方向に圧縮される。多層基板10gのその他の構造は、多層基板10fと同じであるので説明を省略する。多層基板10gは、多層基板10fと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10gでは、第1領域A1の形成と多層基板10gの折り曲げとを同時に行うことができる。また、多層基板10gでは、積層体12において圧縮される部分が第1区間A12である。そのため、積層体12において圧縮される部分が狭い。その結果、積層体12が圧縮されることによる電気的特性の劣化が小さくて済む。
【0086】
(第8変形例)
以下に、第8変形例に係る多層基板10hについて図面を参照しながら説明する。図13は、多層基板10hの断面図である。図14は、多層基板10hの製造時の断面図である。
【0087】
多層基板10hは、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層の数は、第2領域A2における絶縁体層の数より多い点において多層基板10と相違する。より詳細には、図13に示すように、多層基板10hは、多孔質絶縁体層である絶縁体層16e~16lを更に含んでいる。絶縁体層16e~16hは、上下方向に積層されている。絶縁体層16e~16hは、上から下へとこの順に並んでいる。絶縁体層16e~16hは、第1領域A1aにおいて絶縁体層16aの上に設けられている。絶縁体層16i~16lは、上下方向に積層されている。絶縁体層16i~16lは、上から下へとこの順に並んでいる。絶縁体層16i~16lは、第1領域A1bにおいて絶縁体層16aの上に設けられている。
【0088】
また、絶縁体層16e~16lの空孔の大きさの平均値は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの空孔の大きさの平均値より小さい。絶縁体層16e~16lの密度は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの密度より大きい。
【0089】
以上のような多層基板10hは、以下の製造方法により作製される。より詳細には、絶縁体層16e~16hを第1領域A1aにおいて絶縁体層16aの上に積層する。絶縁体層16i~16lを第1領域A1bにおいて絶縁体層16aの上に積層する。そして、絶縁体層16a~16lを上下方向に加圧する。第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16lの上下方向の厚みの合計は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの上下方向の厚みの合計より大きい。そのため、積層体12の上主面及び下主面が平坦面を有する金型により加圧されると、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16lが、第2領域A2における絶縁体層16a~16dより上下方向に大きく圧縮される。そして、積層体12の上主面及び下主面が平坦になる。その結果、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値より小さくなる。第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度より大きくなる。絶縁体層16e~16hの空孔の大きさの平均値は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの空孔の大きさの平均値より小さくなる。絶縁体層16e~16hの密度は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの密度より大きくなる。
【0090】
多層基板10hによれば、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10hによれば、絶縁体層16e~16lに回路を形成することが可能である。そのため、多層基板10hの設計自由度が高くなる。また、多層基板10hによれば、積層体12の上主面が平坦であるにもかかわらず、第1領域A1a,A1bにおける積層体12に多くの導体層を設けることができる。なお、多層基板10hにおいて、第1領域A1a,A1bにおける積層体12に層間接続導体が設けられてもよい。
【0091】
(第9変形例)
以下に、第9変形例に係る多層基板10iについて図面を参照しながら説明する。図15は、多層基板10iの断面図である。図16は、多層基板10iの製造時の断面図である。
【0092】
多層基板10iは、絶縁体層16e~16lが設けられている位置において多層基板10hと相違する。より詳細には、絶縁体層16e~16hは、第1領域A1aにおいて絶縁体層16bと絶縁体層16cとの間に設けられている。絶縁体層16i~16lは、第1領域A1bにおいて絶縁体層16bと絶縁体層16cとの間に設けられている。多層基板10iのその他の構造は、多層基板10hと同じであるので説明を省略する。多層基板10iは、多層基板10hと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10iでは、積層体12の上主面は、絶縁体層16aの上主面により形成される。また、積層体12の下主面は、絶縁体層16dの下主面により形成される。これにより、積層体12の上主面及び下主面には、段差が形成されにくくなる。
【0093】
(第10変形例)
以下に、第10変形例に係る多層基板10jについて図面を参照しながら説明する。図17は、多層基板10jの製造時の断面図である。図18は、多層基板10jの断面図である。
【0094】
多層基板10jは、加圧工程前の絶縁体層16e~16lの形状において多層基板10iと相違する。より詳細には、図17に示すように、絶縁体層16hの右端は、絶縁体層16gの右端より右に位置している。絶縁体層16gの右端は絶縁体層16fの右端より右に位置している。絶縁体層16lの左端は、絶縁体層16kの左端より左に位置している。絶縁体層16kの左端は絶縁体層16jの左端より左に位置している。そして、絶縁体層16a~16lは、上下方向に加圧される。これにより、図18に示すように、第2領域A2において第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界に近づくにしたがって、絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさが小さくなる。第2領域A2において第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界に近づくにしたがって、絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度が大きくなる。多層基板10jのその他の構造は、多層基板10iと同じであるので説明を省略する。
【0095】
多層基板10jによれば、多層基板10iと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10jによれば、第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界において、誘電率、誘電正接、硬さ等の物理的特性が急激に変動することが抑制される。
【0096】
(第11変形例)
以下に、第11変形例に係る多層基板10kについて図面を参照しながら説明する。図19は、多層基板10kの断面図である。
【0097】
多層基板10kは、スルーホール導体である層間接続導体v1,v2を更に備えている点において、多層基板10hと相違する。層間接続導体v1,v2は、第1グランド導体層24と第2グランド導体層26とを電気的に接続している。更に、層間接続導体v1は、絶縁体層16e~16hに設けられている導体層にも接続されている。層間接続導体v2は、絶縁体層16i~16lに設けられている導体層にも接続されている。多層基板10kのその他の構造は、多層基板10hと同じであるので説明を省略する。多層基板10kは、多層基板10hと同じ作用効果を奏することができる。また、層間接続導体v1,v2は、第1領域A1a,A1bにおける積層体12に設けられている。これにより、層間接続導体v1,v2の形成時に、めっき液が積層体12の内部に広がることが抑制される。
【0098】
(第12変形例)
以下に、第12変形例に係る多層基板10lについて図面を参照しながら説明する。図20は、多層基板10lの断面図である。図21は、多層基板10lの製造時の断面図である。
【0099】
多層基板10lは、信号導体層22が第1領域A1における絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)の上主面に設けられている点において多層基板10と相違する。より詳細には、多層基板10lは、第1領域A1及び第2領域A2a,A2bを有している。第2領域A2aは、第1領域A1の左に位置している。第2領域A2bは、第1領域A1の右に位置している。
【0100】
絶縁体層16a,16bは、図20及び図21に示すように、上から下へとこの順に積層されている。また、絶縁体層16c,16dは、第1領域A1において絶縁体層16aと絶縁体層16bとの間に設けられている。そして、第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値より小さい。第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の密度より大きい。更に、第1領域A1における積層体12の上下方向の厚みは、第2領域A2a,A2bにおける積層体12の上下方向の厚みより大きい。なお、多層基板10lは、層間接続導体v1,v2を備えていない。ただし、多層基板10lは、層間接続導体v1,v2を備えていてもよい。多層基板10lのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。
【0101】
多層基板10lは、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10lによれば、軟らかい第2領域A2a,A2bにおける積層体12の上下方向の厚みが、硬い第1領域A1における積層体12の上下方向の厚みより小さい。これにより、第2領域A2a,A2bにおいて多層基板10lを折り曲げることが容易となる。また、信号導体層22の周囲の誘電率が大きくなるので、信号導体層22に発生する特性インピーダンスを所定の特性インピーダンスから変化させることなく、信号導体層22の線幅を細くすることができる。
【0102】
(第13変形例)
以下に、第13変形例に係る多層基板10mについて図面を参照しながら説明する。図22は、多層基板10mの断面図である。図23は、多層基板10mの製造時の断面図である。
【0103】
多層基板10mは、図22及び図23に示すように、積層体12が絶縁体層16e~16lの代わりに絶縁体層116e~116lを含んでいる点において多層基板10hと相違する。絶縁体層116e~116lは、多孔質絶縁体層ではない。すなわち、絶縁体層116e~116lには、意図的に空孔が設けられていない。絶縁体層116e~116lの密度は、絶縁体層16a~16dの密度より大きい。また、絶縁体層116e~116lは、図23の加圧工程において、上下方向に大きく圧縮されない。積層体12の上主面は、図22に示すように、第2領域A2において下方向に窪んでいる。これにより、積層体12にキャビティCが形成される。多層基板10mのその他の構造は、多層基板10hと同じであるので説明を省略する。
【0104】
多層基板10mは、多層基板10hと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10mでは、第2領域A2における積層体12の上下方向の厚みが小さい。そのため、第2領域A2において多層基板10mを折り曲げることが容易になる。また、多層基板10mは、第1領域A1a,A1bにおける積層体12が硬く、かつ、第2領域A2における積層体12が柔らかい構造を有する。多層基板10mでは、絶縁体層16a~16d,116e~116lを積層及び加圧するという簡単な工程により、このような構造を得ることができる。
【0105】
(第14変形例)
以下に、第14変形例に係る多層基板10nについて図面を参照しながら説明する。図24は、多層基板10nの断面図である。図25は、多層基板10nの製造時の断面図である。
【0106】
多層基板10nは、絶縁体層116a,16b,116cが上下方向に積層されている点において、多層基板10と相違する。より詳細には、積層体12は、絶縁体層116a,16b,116cが上から下へとこの順に並ぶように積層された構造を有している。絶縁体層16bは、多孔質材料により作製されている多孔質絶縁体層である。絶縁体層116a,116cは、多孔質絶縁体層ではない。従って、絶縁体層116a,116cには、意図的に空孔が設けられていない。
【0107】
信号導体層22は、絶縁体層116cの上主面に設けられている。第1グランド導体層24は、絶縁体層116aの上主面に設けられている。第2グランド導体層26は、絶縁体層116cの下主面に設けられている。
【0108】
多層基板10nは、第1領域A1及び第2領域A2a,A2bを有している。第1領域A1は、多層基板10において上下方向に信号導体層22と重なる領域である。第2領域A2aは、第1領域A1の左に位置している。第2領域A2bは、第1領域A1の右に位置している。第1領域A1における絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さい。多層基板10nのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。
【0109】
以上のような多層基板10nの製造方法では、図25に示すように、絶縁体層116a,16b,116cを上から下へとこの順に並べて積層する。そして、絶縁体層116a,16b,116cを上下方向に加圧する。この際、信号導体層22が設けられている領域の層数は、信号導体層22が設けられていない領域の層数より多い。そのため、絶縁体層16bにおいて信号導体層22と上下方向に重なる部分は、絶縁体層16bにおいて信号導体層22と上下方向に重ならない部分より大きく圧縮される。これにより、第1領域A1における絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さくなる。以上のような多層基板10nによれば、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10nによれば、積層体12の上主面及び下主面を平坦にできる。
【0110】
(第15変形例)
以下に、第15変形例に係る多層基板10oについて図面を参照しながら説明する。図26は、多層基板10oの断面図である。図27は、多層基板10oの製造時の断面図である。
【0111】
多層基板10oは、第1領域A1a,A1bにおいて積層体12に内蔵されている部品200a,200bを更に備えている点において、多層基板10と相違する。より詳細には、絶縁体層16a~16dは、上から下へとこの順に並ぶように積層されている。部品200a,200bは、絶縁体層16cと絶縁体層16dとの間に設けられている。部品200a,200bは、コンデンサ又はインダクタ等のチップ型電子部品や、IC(Integrated Circuit)等の電子部品である。
【0112】
多層基板10oは、第1領域A1a,A1b及び第2領域A2を有している。第1領域A1aは、多層基板10において上下方向に部品200aと重なる領域である。第1領域A1aは、第2領域A2の左に位置している。第1領域A1bは、多層基板10において上下方向に部品200bと重なる領域である。第1領域A1bは、第2領域A2の右に位置している。第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さい。多層基板10oのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。
【0113】
以上のような多層基板10oの製造方法では、図27に示すように、絶縁体層16a~16dを上から下へとこの順に並べて積層する。この際、部品200a,200bを絶縁体層16bと絶縁体層16cとの間に配置する。そして、絶縁体層16a~16dを上下方向に加圧する。この際、部品200a,200bが設けられている領域の上下方向の厚みは、部品200a,200bが設けられていない領域の上下方向の厚みより大きい。そのため、絶縁体層16a~16dにおいて部品200a,200bと上下方向に重なる部分は、絶縁体層16a~16dにおいて部品200a,200bと上下方向に重ならない部分より大きく圧縮される。これにより、第1領域A1a,A1bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さくなる。
【0114】
以上のような多層基板10oによれば、多層基板10と同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10oによれば、部品200a,200bの周囲の部分が硬くなるので、部品200a,200bの周囲において積層体12が補強される。これにより、部品200a,200bが保護される。また、多層基板10oによれば、部品200a,200bは、第1領域A1a,A1bにおいて積層体12に内蔵されている。これにより、積層体12の外部から部品200a,200bに液体や気体が侵入することが抑制される。
【0115】
(第16変形例)
以下に、第16変形例に係る多層基板10pについて図面を参照しながら説明する。図28は、多層基板10pの断面図である。図29は、多層基板10pの製造時の断面図である。
【0116】
多層基板10pは、絶縁体層16a,16bが上下方向に積層されている点において多層基板10nと相違する。より詳細には、積層体12は、絶縁体層16a,16bが上から下へとこの順に並ぶように積層された構造を有している。信号導体層22は、絶縁体層16bの上主面に設けられている。第1グランド導体層24は、絶縁体層16aの上主面に設けられている。第2グランド導体層26は、絶縁体層16bの下主面に設けられている。
【0117】
多層基板10pは、第1領域A1及び第2領域A2a,A2bを有している。第1領域A1は、多層基板10pにおいて上下方向に信号導体層22と重なる領域である。第2領域A2aは、第1領域A1の左に位置している。第2領域A2bは、第1領域A1の右に位置している。第1領域A1における絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さい。
【0118】
また、上下方向における信号導体層22の半分以上は、絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)に埋まっている。本実施形態では、信号導体層22の上半分が絶縁体層16aに埋まっている。信号導体層22の下半分が絶縁体層16bに埋まっている。多層基板10pのその他の構造は、多層基板10nと同じであるので説明を省略する。
【0119】
以上のような多層基板10pの製造方法では、図29に示すように、絶縁体層16a,16bを上から下へとこの順に並べて積層する。そして、絶縁体層16a,16bを上下方向に加圧する。この際、信号導体層22が設けられている領域の層数は、信号導体層22が設けられていない領域の層数より多い。そのため、絶縁体層16a,16bにおいて信号導体層22と上下方向に重なる部分は、絶縁体層16a,16bにおいて信号導体層22と上下方向に重ならない部分より大きく圧縮される。これにより、第1領域A1における絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT1は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の上下方向の厚みT2より小さくなる。
【0120】
以上のような多層基板10pによれば、多層基板10nと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10pによれば、積層体12の上主面及び下主面を平坦にできる。また、多層基板10pでは、信号導体層22の上半分が絶縁体層16aに埋まっている。信号導体層22の下半分が絶縁体層16bに埋まっている。そのため、信号導体層22は、積層体12の上下方向の中央に位置するようになる。また、多層基板10pでは、信号導体層22は、第1領域A1に位置している。そのため、信号導体層22の周囲の誘電率が高くなる。その結果、信号導体層22に発生する特性インピーダンスが小さくなる。
【0121】
(第17変形例)
以下に、第17変形例に係る多層基板10qについて図面を参照しながら説明する。図30は、多層基板10qの断面図である。
【0122】
多層基板10qは、第1領域A1a,A1b及び第2領域A2が上下方向に並んでいる点において多層基板10pと相違する。より詳細には、複数の絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさは、積層体12の上下方向の中央に近づくにしたがって大きくなっている。また、複数の絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の密度は、積層体12の上下方向の中央に近づくにしたがって小さくなっている。これにより、積層体12の上主面近傍に第1領域A1aが形成される。積層体12の下主面近傍に第1領域A1bが形成される。積層体12の上下方向の中央近傍に第2領域A2が形成される。多層基板10qのその他の構造は、多層基板10pと同じであるので説明を省略する。
【0123】
多層基板10qの製造方法では、高温状態の金型を用いて絶縁体層16a,16bを加圧する。これにより、絶縁体層16aの上主面近傍及び絶縁体層16bの下主面近傍では、金型からの熱が加わりやすいので、絶縁体層16a,16bが軟化して変形しやすい。そのため、絶縁体層16aの上主面近傍及び絶縁体層16bの下主面近傍の空孔は、加圧工程においてつぶれるようになる。その結果、複数の絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさは、積層体12の上下方向の中央に近づくにしたがって大きくなる。
【0124】
多層基板10qは、多層基板10pと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10qでは、信号導体層22近傍の誘電率及び誘電正接が小さくなる。そのため、信号導体層22において誘電損が発生しにくくなる。また、多層基板10qでは、複数の絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の密度は、積層体12の上主面近傍及び下主面近傍において大きくなる。そのため、多層基板10qが変形することを抑制できる。
【0125】
(第18変形例)
以下に、第18変形例に係る多層基板10rについて図面を参照しながら説明する。図31は、多層基板10rの断面図である。
【0126】
多層基板10rは、第1領域A1と第2領域A2a,A2bとの位置関係が逆である点において多層基板10qと相違する。より詳細には、複数の絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさは、積層体12の上下方向の中央に近づくにしたがって小さくなっている。また、複数の絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の密度は、積層体12の上下方向の中央に近づくにしたがって大きくなっている。これにより、積層体12の上主面近傍に第2領域A2aが形成される。積層体12の下主面近傍に第2領域A2bが形成される。積層体12の上下方向の中央近傍に第1領域A1が形成される。多層基板10rのその他の構造は、多層基板10qと同じであるので説明を省略する。
【0127】
多層基板10rの製造方法では、積層体12の全体の温度を均一の温度まで上昇させた状態で、金型を用いて絶縁体層16a,16bを加圧する。これにより、絶縁体層16a,16bの全体が上下方向に圧縮されると共に、絶縁体層16aと絶縁体層16bとが接合される。その後、積層体12の温度を下げ、絶縁体層16aの下主面近傍及び絶縁体層16bの上主面近傍の温度を上げる。これにより、絶縁体層16aの下主面近傍及び絶縁体層16bの上主面近傍の空孔を膨張させる。
【0128】
多層基板10rは、多層基板10qと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10rでは、積層体12の上主面近傍及び下主面近傍の弾性率が低くなる。そのため、多層基板10rを折り曲げやすくなる。また、多層基板10rでは、積層体12の信号導体層22近傍の弾性率が高くなる。その結果、信号導体層22が保護されるようになる。
【0129】
(第19変形例)
以下に、第19変形例に係る多層基板10sについて図面を参照しながら説明する。図32は、多層基板10sの断面図である。
【0130】
多層基板10sは、第1キャパシタ導体層30及び第2キャパシタ導体層32の代わりにアンテナ導体層80を備えている点において多層基板10bと相違する。アンテナ導体層80は、第1領域A1において積層体12に設けられている。本変形例では、アンテナ導体層80は、第1領域A1における絶縁体層16a(多孔質絶縁体層)の上主面に設けられている。多層基板10sのその他の構造は、多層基板10bと同じであるので説明を省略する。
【0131】
多層基板10sは、多層基板10bと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10sでは、アンテナ導体層80は、第1領域A1において積層体12に設けられてる。第1領域A1における絶縁体層16a~16dの誘電率は、第2領域A2における絶縁体層16a~16dの誘電率より大きい。従って、アンテナ導体層80が送受信する高周波信号の波長が短くなる。その結果、アンテナ導体層80の小型化が図られる。
【0132】
(第20変形例)
以下に、第20変形例に係る多層基板10tについて図面を参照しながら説明する。図33は、多層基板10tの断面図である。
【0133】
多層基板10tは、アンテナ導体層80の代わりに信号導体層22aを備えている点において多層基板10sと相違する。信号導体層22aは、第1領域A1において積層体12に設けられている。多層基板10tのその他の構造は、多層基板10sと同じであるので説明を省略する。
【0134】
多層基板10tは、多層基板10sと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10tによれば、多層基板10tの左右方向の幅が小さくなる。より詳細には、信号導体層22aは、第1領域A1において積層体12に設けられている。第1領域A1の誘電率は、第2領域A2の誘電率より大きい。第1領域A1における積層体12の上下方向の厚みは、第2領域A2における積層体12の上下方向の厚みより小さい。従って、第1領域A1において信号導体層22aには、容量が発生しやすい。そこで、信号導体層22aの左右方向における線幅を小さくしても、信号導体層22aと第1グランド導体層24との間及び信号導体層22aと第2グランド導体層26との間に十分な容量が発生するようになる。その結果、多層基板10tによれば、多層基板10tの左右方向の幅を小さくできる。
【0135】
(第21変形例)
以下に、第21変形例に係る多層基板10uについて図面を参照しながら説明する。図34は、多層基板10uの断面図である。
【0136】
多層基板10uは、第1領域A1a,A1b及び第2領域A2の配置において多層基板10と相違する。より詳細には、第1領域A1aは、多層基板10uの前端部に位置している。第1領域A1bは、多層基板10uの後端部に位置している。そして、第2領域A2において第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界に近づくにしたがって、絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさが小さくなる。第2領域A2において第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界に近づくにしたがって、絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度が大きくなる。多層基板10uのその他の構造は、多層基板10と同じであるので説明を省略する。これにより、第1領域A1a,A1bと第2領域A2との境界において、誘電率が急激に変動することが抑制される。その結果、信号導体層22に発生する特性インピーダンスが急激に変動することが抑制される。よって、信号導体層22において高周波信号の反射が発生することが抑制される。また、多層基板10uによれば、多層基板10uの前端部及び後端部の上下方向の厚みが小さい。多層基板10uの前端部及び後端部には、コネクタが実装される。従って、多層基板10uの上下方向の厚みを小さくすることができる。
【0137】
(第22変形例)
以下に、第22変形例に係る多層基板10vについて図面を参照しながら説明する。図35は、多層基板10vの断面図である。
【0138】
多層基板10vは、多層基板10vの上主面及び下主面が平坦ではない点において、多層基板10aと相違する。このような多層基板10aでは、図5の金型T100により上下方向から絶縁体層16a~16dを加圧する。これにより、第2領域A2における積層体12の上主面は、第1領域A1a,A1bにおける積層体12の上主面より上方向に突出する。第2領域A2における積層体12の下主面は、第1領域A1a,A1bにおける積層体12の下主面より下方向に突出する。多層基板10vのその他の構造は、多層基板10aと同じであるので説明を省略する。多層基板10vは、多層基板10aと同じ作用効果を奏することができる。
【0139】
(第23変形例)
以下に、第23変形例に係る多層基板10wについて図面を参照しながら説明する。図36は、多層基板10wの断面図である。図37は、多層基板10wの製造時の断面図である。
【0140】
多層基板10wは、以下の点において多層基板10pと相違する。
・多層基板10wは、絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)を上下方向に貫通する層間接続導体v1,v2を更に備えている。
・(C)絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)において層間接続導体v1,v2に隣接する部分の空孔の大きさの平均値は、第2領域A2a,A2bにおける多孔質絶縁体層16a,16bの空孔の大きさの平均値より小さい。
・(D)絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)において層間接続導体v1,v2に隣接する部分の密度は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a,16b(多孔質絶縁体層)の密度より大きい。
【0141】
ここで、層間接続導体v1,v2の製造時に、図37に示すように、ドリルや金型、レーザービーム等により貫通孔を形成する。この際、貫通孔の内周面は、金型又はドリルから圧力を受ける。また、貫通孔の内周面は、レーザービームにより溶融させられる。そして、貫通孔近傍の空孔が潰れる。その結果、上記(C)及び(D)の構造を得ることができる。なお、多層基板10wのその他の構造は、多層基板10pと同じであるので説明を省略する。
【0142】
多層基板10wによれば、多層基板10pと同じ作用効果を奏することができる。多層基板10wによれば、貫通孔の内周面から積層体12内にめっき液が侵入することが抑制される。また、多層基板10wによれば、貫通孔の形成と貫通孔の内周面の樹脂コーティングを同時に行うことができる。
【0143】
(第24変形例)
以下に、第24変形例に係る多層基板10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図38は、多層基板10の製造時の断面図である。
【0144】
第24の変形例に係る多層基板10の製造方法は、積層工程では、加圧工程を行った絶縁体層16b(多孔質絶縁体層)を含む複数の絶縁体層16a,16bを積層する点において、多層基板10の製造方法と相違する。より詳細には、積層工程の前に、金型T200,T201により絶縁体層16bの一部を加圧する。これにより、絶縁体層16bの一部における空孔の大きさの平均値は、絶縁体層16bの残余の部分におけるの空孔の大きさの平均値より小さくなる。また、絶縁体層16bの一部における密度は、絶縁体層16bの残余の部分における密度より大きくなる。
【0145】
次に、絶縁体層16bにおいて加圧を施した部分に貫通孔を形成する。この後、図示を省略するが、貫通孔に導電性ペーストを充填する。最後に、絶縁体層16a,16bを積層し、絶縁体層16a,16bに加圧処理を施す。これにより、導電性ペーストが固化し、層間接続導体v1,v2が形成される。そして、第2領域A2a,A2bが層間接続導体v1,v2近傍に形成される。
【0146】
(第25変形例)
以下に、第25変形例に係る多層基板10xについて図面を参照しながら説明する。図39は、多層基板10xの断面図である。
【0147】
多層基板10xは、積層体12が絶縁体層16b,16cの代わりに絶縁体層18を含んでいる点において多層基板10uと相違する。より詳細には、複数の絶縁体層は、絶縁体層16a,16d(多孔質絶縁体層)と、絶縁体層16a(多孔質絶縁体層)と絶縁体層16d(多孔質絶縁体層)とを接合する絶縁体層18と、含んでいる、絶縁体層18は、接着層である。また、絶縁体層18の誘電率は、絶縁体層16a,16dの誘電率より低い。更に、絶縁体層18の誘電正接は、絶縁体層16a,16dの誘電正接より低い。このような条件を満たす絶縁体層18の材料は、例えば、フッ素系樹脂である。ただし、絶縁体層18の材料は、エポキシ樹脂や、アクリル樹脂等であってもよい。多層基板10xのその他の構造は、多層基板10uと同じであるので説明を省略する。
【0148】
多層基板10xによれば、多層基板10uと同じ作用効果を奏することができる。また、多層基板10xによれば、溶融及び軟化による絶縁体層16a,16d同士の接合を採用できない材料を絶縁体層16a,16dに用いることができる。そのため、絶縁体層16a,16dの材料選択の幅が広がる。また、多層基板10xによれば、信号導体層22が絶縁体層16dの上主面に設けられることにより形成される段差を絶縁体層18が吸収する。これにより、信号導体層22の周囲の空孔の大きさがその他の部分の空孔の大きさと大きく異なることが抑制される。
【0149】
(その他の実施形態)
本発明に係る多層基板は、多層基板10,10a~10xに限らず、その要旨の範囲内において変更可能である。なお、多層基板10,10a~10xの構成を任意に組み合わせてもよい。
【0150】
なお、多層基板10,10a~10xは、信号導体層22の代わりに信号導体層以外の導体層を備えていてもよい。信号導体層以外の導体層は、例えば、グランド導体層、電源導体層等である。
【0151】
なお、多層基板10,10a~10xにおいて、第1グランド導体層24及び第2グランド導体層26は、必須の構成ではない。
【0152】
なお、多層基板10,10a~10xにおいて、層間接続導体v1,v2は、必須の構成ではない。
【0153】
なお、多層基板10,10a~10xにおいて、信号端子28a,28bは、積層体12の下主面に設けられてもよい。
【0154】
なお、多層基板10,10a~10xには、コネクタ30a,30b以外に部品が実装されてもよい。
【0155】
なお、多層基板10,10a~10xは、上下方向に見て、直線形状を有している。しかしながら、多層基板10,10a~10xは、曲がっていてもよい。ここでの「多層基板10,10a~10xが曲がっている」とは、多層基板10,10a~10xに外力を加えない状態で曲がった形状を有していることを意味する。
【0156】
なお、絶縁体層18は、樹脂シートが絶縁体層16dの上主面に貼り付けられることにより形成されてもよいし、液体状の樹脂が絶縁体層16dの上主面に塗布されることにより形成されてもよい。
【0157】
なお、絶縁体層18の誘電率は、絶縁体層16a,16dの誘電率以上であって、かつ、絶縁体層18の誘電正接は、絶縁体層16a,16dの誘電正接より低くてもよい。絶縁体層18の誘電率は、絶縁体層16a,16dの誘電率より低く、かつ、絶縁体層18の誘電正接は、絶縁体層16a,16dの誘電正接以上であってもよい。絶縁体層18の誘電率は、絶縁体層16a,16dの誘電率以上であって、かつ、絶縁体層18の誘電正接は、絶縁体層16a,16dの誘電正接以上であってもよい。
【0158】
なお、多層基板10,10a~10xは、(A)の構造又は(B)の構造の少なくとも一方を備えていればよい。
【0159】
なお、多層基板10,10a~10xにおいて、多孔質絶縁体層に形成されている空孔は、独立気泡でなくてもよい。
【0160】
なお、多層基板10sにおいて、アンテナ導体層80は、第1領域A1における絶縁体層16a(多孔質絶縁体層)の下主面に設けられていてもよい。また、アンテナ導体層80は、第1領域A1における絶縁体層16a以外の絶縁体層16b~16dの上主面又は下主面に設けられていてもよい。
【0161】
なお、信号導体層22は、第1領域における多孔質絶縁体層の下主面に設けられていてもよい。
【0162】
なお、多層基板10wは、(C)の構造又は(D)の構造の少なくとも一方を備えていればよい。
【0163】
なお、多層基板10,10a~10xは、(E)の構造又は(F)の構造の少なくとも一方を備えていればよい。
【0164】
なお、多層基板10gにおいて、多層基板10gが第1区間A12において折れ曲がることにより生じる応力によって、第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の空孔の大きさの平均値より小さい、又は、第1領域A1における絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度は、第2領域A2a,A2bにおける絶縁体層16a~16d(多孔質絶縁体層)の密度より大きいのいずれか一方が満たされてもよい。
【0165】
なお、上下方向における導体層の半分以上が多孔質絶縁体層に埋まっていなくてもよい。
【0166】
なお、多層基板10cにおいて、部品40は、積層体12の下主面に設けられてもよい。
【0167】
なお、多層基板10,10a~10xの積層体12は、(A)の構造又は(B)の構造の少なくともいずれか一方を満足する少なくとも1層の多孔質絶縁体層を含んでいればよい。従って、積層体12が含んでいる全ての多孔質絶縁体層が(A)の構造又は(B)の構造の少なくともいずれか一方を満足していなくてもよい。
【0168】
なお、多層基板10において、信号導体層22は、絶縁体層16aの下主面に設けられていてもよい。
【0169】
なお、複数の絶縁体層は、多孔質絶縁体層ではない絶縁体層を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0170】
1:電子機器
10,10a~10x:多層基板
12:積層体
16a~16l,18,20a,20b:絶縁体層
22,22a:信号導体層
23a,23b,27a,27b,29a,29b:接続導体層
24:第1グランド導体層
26:第2グランド導体層
28a,28b:信号端子
30:第1キャパシタ導体層
32:第2キャパシタ導体層
40,200a,200b:部品
80:アンテナ導体層
116a,116c、116e~116l:絶縁体層
A1,A1a,A1b:第1領域
A2,A2a,A2b:第2領域
v1~v4:層間接続導体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
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