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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/13 20060101AFI20240509BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20240509BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
B60C11/13 C
B60C5/00 H
B60C11/03 B
B60C11/03 100B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023024264
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2019102094の分割
【原出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2023054133
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】榊原 悠太
(72)【発明者】
【氏名】山岡 宏
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-182147(JP,A)
【文献】特開2017-088018(JP,A)
【文献】特開2015-120380(JP,A)
【文献】特開2008-030605(JP,A)
【文献】特開2016-210342(JP,A)
【文献】特開2015-024757(JP,A)
【文献】特開2018-122772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、
車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する第2トレッド端とを有し、
前記トレッド部は、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の主溝と、前記3本の主溝で区分された4つの陸部とで構成され、
前記主溝は、前記第1トレッド端とタイヤ赤道との間に配された第1ショルダー主溝と、前記第1ショルダー主溝の前記第2トレッド端側に隣接するクラウン主溝とを含み、
前記陸部は、前記第1ショルダー主溝と前記クラウン主溝との間に区分された第1ミドル陸部を含み、
前記第1ミドル陸部は、前記4つの陸部の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅を有し、
前記第1ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝及び複数の第2傾斜溝が設けられ、
前記第1傾斜溝のそれぞれは、前記クラウン主溝から延びかつ前記第1ミドル陸部内で途切れ、
前記第2傾斜溝のそれぞれは、その両端が前記第1ミドル陸部内で途切れている、
タイヤ。
【請求項2】
前記第1傾斜溝は、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記第2傾斜溝は、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置を横切っている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記第2傾斜溝のタイヤ軸方向の長さは、前記第1傾斜溝のタイヤ軸方向の長さよりも小さい、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記第1ミドル陸部には、前記第1ショルダー主溝から前記クラウン主溝まで延びる複数の第1サイプが設けられており、
前記第1サイプは、前記第2傾斜溝の前記クラウン主溝側の端部と前記第1傾斜溝とを横切っている、請求項1又は2に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記第1ミドル陸部には、前記第1ショルダー主溝から前記第1傾斜溝まで延びる複数の第2サイプが設けられており、
前記第2サイプは、前記第1傾斜溝の前記第1ショルダー主溝側の端部に連通し、かつ、前記第2傾斜溝を横切っている、請求項5に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関し、詳しくは、トレッド部が4つの陸部で構成されたタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤを提案している。前記トレッド部には、外側ミドル陸部、外側ショルダー陸部、内側ミドル陸部、及び、内側ショルダー陸部が形成されている。特許文献1は、外側ミドル陸部に配された溝を特定することにより、外側ミドル陸部の剛性低下を抑制しつつ、雪上性能の向上を期待している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-120380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のタイヤは、外側ミドル陸部の横剛性が不足する傾向があり、ドライ路面での操縦安定性について改善が要求されていた。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、トレッド部が4つの陸部で構成されたタイヤにおいて、優れた雪上性能及びドライ路面での操縦安定性を発揮させることを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端と、車両装着時に車両内側に位置する第2トレッド端とを有し、前記トレッド部は、前記第1トレッド端と前記第2トレッド端との間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の主溝と、前記3本の主溝で区分された4つの陸部とで構成され、前記主溝は、前記第1トレッド端とタイヤ赤道との間に配された第1ショルダー主溝と、前記第1ショルダー主溝の前記第2トレッド端側に隣接するクラウン主溝とを含み、前記陸部は、前記第1ショルダー主溝と前記クラウン主溝との間に区分された第1ミドル陸部を含み、前記第1ミドル陸部は、前記4つの陸部の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅を有し、前記第1ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝及び複数の第2傾斜溝が設けられ、前記第1傾斜溝のそれぞれは、前記クラウン主溝から延びかつ前記第1ミドル陸部内で途切れ、前記第2傾斜溝のそれぞれは、その両端が前記第1ミドル陸部内で途切れている。
【0007】
本発明のタイヤにおいて、前記第1傾斜溝は、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤにおいて、前記第2傾斜溝は、前記第1ミドル陸部のタイヤ軸方向の中心位置を横切っているのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤにおいて、前記第2傾斜溝のタイヤ軸方向の長さは、前記第1傾斜溝のタイヤ軸方向の長さよりも小さいのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ミドル陸部には、前記第1ショルダー主溝から前記クラウン主溝まで延びる複数の第1サイプが設けられており、前記第1サイプは、前記第2傾斜溝の前記クラウン主溝側の端部と前記第1傾斜溝とを横切っているのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤにおいて、前記第1ミドル陸部には、前記第1ショルダー主溝から前記第1傾斜溝まで延びる複数の第2サイプが設けられており、前記第2サイプは、前記第1傾斜溝の前記第1ショルダー主溝側の端部に連通し、かつ、前記第2傾斜溝を横切っているのが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のタイヤは、トレッド部が4つの陸部で区分され、第1ミドル陸部が前記4つの陸部の中で最も大きいタイヤ軸方向に幅を有している、このため、前記第1ミドル陸部は、高い剛性を持ち、ドライ路面での操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0013】
前記第1ミドル陸部には、タイヤ軸方向に対して第1方向に傾斜した複数の第1傾斜溝及び複数の第2傾斜溝とが設けられている。前記第1ミドル陸部には、大きな接地圧が作用するため、この陸部に設けられた各傾斜溝は、雪上走行時、大きな雪柱せん断力を提供する。
【0014】
前記第1傾斜溝のそれぞれは、前記クラウン主溝から延びかつ前記第1ミドル陸部内で途切れている。前記第2傾斜溝のそれぞれは、その両端が前記第1ミドル陸部内で途切れている。このような各傾斜溝により、とりわけ前記第1ミドル陸部の前記クラウン主溝側の剛性が維持され、ドライ路面での操縦安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。
図2図1の第1ミドル陸部の拡大図である。
図3図2のA-A線断面図である。
図4図2のB-B線断面図である。
図5図2のC-C線断面図である。
図6図2のD-D線断面図である。
図7図1の第2ミドル陸部の拡大図である。
図8図1の第1ショルダー陸部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。図1は、本発明の一実施形態を示すタイヤ1のトレッド部2の展開図である。本実施形態のタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような態様に限定されるものではなく、重荷重用の空気入りタイヤや、タイヤの内部に加圧された空気が充填されない非空気式タイヤに用いられても良い。
【0017】
図1に示されるように、本発明のタイヤ1は、車両への装着の向きが指定されたトレッド部2を有する。トレッド部2は、タイヤ1の車両装着時に車両外側に位置する第1トレッド端Te1と、車両装着時に車両内側に位置する第2トレッド端Te2とを有する。車両への装着の向きは、例えば、サイドウォール部(図示省略)に、文字又は記号で表示される。
【0018】
第1トレッド端Te1及び第2トレッド端Te2は、空気入りタイヤの場合、正規状態のタイヤ1に正規荷重が負荷されキャンバー角0°で平面に接地したときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填され、しかも、無負荷の状態である。本明細書において、特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、前記正規状態で測定された値である。
【0019】
「正規リム」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば "標準リム" 、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" である。
【0020】
「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば "最高空気圧" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0021】
「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0022】
トレッド部2は、第1トレッド端Te1と第2トレッド端Te2との間でタイヤ周方向に連続して延びる3本の主溝3と、これら3本の主溝3に区分された4つの陸部4とで構成されている。
【0023】
主溝3は、第1トレッド端Te1とタイヤ赤道Cとの間に配された第1ショルダー主溝5と、第2トレッド端Te2とタイヤ赤道Cとの間に配された第2ショルダー主溝6と、第1ショルダー主溝5と第2ショルダー主溝6との間に配されたクラウン主溝7とを含む。
【0024】
タイヤ赤道Cから第1ショルダー主溝5又は第2ショルダー主溝6の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Laは、例えば、トレッド幅TWの0.20~0.35倍であるのが望ましい。タイヤ赤道Cからクラウン主溝7の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Lbは、例えば、トレッド幅TWの0.15倍以下であるのが望ましい。トレッド幅TWは、前記正規状態での第1トレッド端Te1から第2トレッド端Te2までのタイヤ軸方向の距離である。
【0025】
本実施形態のクラウン主溝7は、例えば、タイヤ赤道Cよりも第2トレッド端Te2側に設けられている。但し、クラウン主溝7の位置は、このような態様に限定されるものではない。
【0026】
本実施形態の各主溝3は、例えば、タイヤ周方向に平行に直線状に延びている。各主溝3は、例えば、波状に延びるものでも良い。
【0027】
各主溝3の溝幅Waは、少なくとも3.0mm以上であり、例えば、トレッド幅TWの4.0%~7.0%であるのが望ましい。なお、本明細書において、溝幅が3.0mm未満の縦細溝は、主溝3とは区別される。また、溝幅とは、溝中心線と直交する方向の溝縁間の距離である。各主溝3の深さは、乗用車用の空気入りタイヤの場合、例えば、5~10mmであるのが望ましい。
【0028】
陸部4は、第1ミドル陸部11と、第2ミドル陸部12と、第1ショルダー陸部13と、第2ショルダー陸部14とで構成されている。第1ミドル陸部11は、第1ショルダー主溝5とクラウン主溝7との間に区分されている。第2ミドル陸部12は、第2ショルダー主溝6とクラウン主溝7との間に区分されている。第1ショルダー陸部13は、第1ショルダー主溝5と第1トレッド端Te1との間に区分されている。第2ショルダー陸部14は、第2ショルダー主溝6と第2トレッド端Te2との間に区分されている。
【0029】
図2には、第1ミドル陸部11の拡大図が示されている。図2に示されているように、第1ミドル陸部11は、4つの陸部4の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅W1を有している。本発明のように、4つの陸部で構成されたトレッド部2は、直進時及び旋回時において第1ミドル陸部11に大きな接地圧が作用するが、本発明では、第1ミドル陸部11が4つの陸部の中で最も大きいタイヤ軸方向の幅を有し、高い剛性を持つ。したがって、本発明の第1ミドル陸部11は、ドライ路面での操縦安定性を高めるのに役立つ。第1ミドル陸部11の前記幅W1は、例えば、トレッド幅TW(図1に示され、以下、同様である。)の0.25~0.35倍であるのが望ましい。
【0030】
第1ミドル陸部11には、タイヤ軸方向に対して第1方向(図2では右下がりである。)に傾斜した複数の第1傾斜溝16及び複数の第2傾斜溝17が設けられている。第1ミドル陸部11には、大きな接地圧が作用するため、この陸部に設けられた各傾斜溝は、雪上走行時、大きな雪柱せん断力を提供する。
【0031】
第1傾斜溝16のそれぞれは、クラウン主溝7から延びかつ第1ミドル陸部11内で途切れている。第2傾斜溝17のそれぞれは、その両端が第1ミドル陸部11内で途切れている。このような第1傾斜溝16及び第2傾斜溝17は、第1ミドル陸部11の剛性を維持し、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上性能を高めることができる。
【0032】
しかも、第2傾斜溝17のクラウン主溝7側の端部は、第2傾斜溝17の他の部分よりも深さが小さい。このような第2傾斜溝17は、第1ミドル陸部11のクラウン主溝7側の剛性を維持し、ドライ路面での操縦安定性を向上させる。また、このような第2傾斜溝17は、前記端部に雪が詰まるのを抑制でき、雪上性能を高めるのにも役立つ。
【0033】
本実施形態の第1ミドル陸部11には、前記第1方向とは逆向きの第2方向(図2では右上がりである。)に傾斜した複数の第3傾斜溝18とが設けられている。第3傾斜溝18は、第1傾斜溝16及び第2傾斜溝17に連通しているのが望ましい。なお、本明細書において、1つの溝が別の溝に連通するとは、これら2つの溝が交差して四叉路を構成する態様、及び、2つの溝によって三叉路が構成されている態様の両方を含む。
【0034】
望ましい態様として、本実施形態の第1傾斜溝16、第2傾斜溝17及び第3傾斜溝18のそれぞれは、湾曲している。これら傾斜溝の曲率半径は、例えば、30mm以上であるのが望ましい。
【0035】
第1傾斜溝16は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の中心位置11cを横切っている。第1傾斜溝16のタイヤ軸方向の長さL1は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の幅W1の0.80~0.90倍であるのが望ましい。
【0036】
第1傾斜溝16は、例えば、溝中心線の両端を結ぶ直線よりもタイヤ周方向の一方側(図2では下側)に凸となる向きに湾曲している。
【0037】
第1傾斜溝16は、例えば、タイヤ周方向に対する角度がクラウン主溝7から第1ショルダー主溝5側に向かって漸減しているのが望ましい。第1傾斜溝16のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、30~70°であるのが望ましい。
【0038】
第1傾斜溝16は、クラウン主溝7から第1ショルダー主溝5側に向かって溝幅が縮小しているのが望ましい。このような第1傾斜溝16は、第1ミドル陸部11の剛性を維持するのに役立つ。
【0039】
図3には、第1傾斜溝16のA-A線断面図が示されている。図3に示されるように、第1傾斜溝16の第1ショルダー主溝5側の端部は、第1傾斜溝16の他の部分よりも深さが小さいのが望ましい。これにより、前記端部付近の剛性が維持され、ドライ路面での操縦安定性が高められる。
【0040】
第1傾斜溝16は、第3傾斜溝18との連通部16aと、第1ショルダー主溝5側の端16eから連通部16aまでの外側部16bと、連通部16aよりもクラウン主溝7側の本体部16cとを含む。外側部16bは、第1傾斜溝16の他の部分よりも深さが小さいのが望ましい。また、外側部16bは、タイヤ軸方向に対して傾斜した底面を有し、第1ショルダー主溝5側の端16eに向かって深さが漸減している。このような第1傾斜溝16は、ドライ路面での操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0041】
図2に示されるように、本実施形態では、第1傾斜溝16と第2傾斜溝17とがタイヤ周方向に交互に設けられている。
【0042】
第2傾斜溝17は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の中心位置11cを横切っているのが望ましい。また、第2傾斜溝17のタイヤ軸方向の長さL2は、例えば、第1傾斜溝16のタイヤ軸方向の長さL1よりも小さいのが望ましい。第2傾斜溝17の前記長さL2は、例えば、第1ミドル陸部11のタイヤ軸方向の幅W1の0.60~0.75倍であるのが望ましい。このような第2傾斜溝17は、雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0043】
第2傾斜溝17は、例えば、第1傾斜溝16と同じ向きに湾曲しているのが望ましい。また、第2傾斜溝17は、例えば、タイヤ周方向に対する角度が第1ショルダー主溝5側に向かって漸減しているのが望ましい。第2傾斜溝17のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、30~70°であるのが望ましい。
【0044】
第2傾斜溝17は、第1ショルダー主溝5側からクラウン主溝7側に向かって溝幅が縮小している。このような第2傾斜溝17は、雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0045】
図4には、第2傾斜溝17のB-B線断面図が示されている。図4に示されるように、第2傾斜溝17は、第3傾斜溝18との連通部17aと、クラウン主溝7側の端17eから連通部17aまでの内側部17bと、第1ショルダー主溝5側の端17fから連通部17aまでの本体部17cとを含む。内側部17bは、第2傾斜溝17の他の部分よりも深さが小さいのが望ましい。具体的には、内側部17bの深さd2は、本体部17cの深さd1の0.40~0.80倍である。また、内側部17bは、第2傾斜溝17の長さ方向に一定の深さで構成されている。このような第2傾斜溝17は、雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高めるのに役立つ。
【0046】
図2に示されるように、本実施形態の第3傾斜溝18は、例えば、第1ショルダー主溝5から、第1傾斜溝16のクラウン主溝7側の端部まで延びている。これにより、第3傾斜溝18は、第1傾斜溝16及び第2傾斜溝17と交差し、かつ、前記中心位置11cを横切っている。
【0047】
第3傾斜溝18は、溝中心線の両端を結ぶ直線よりもタイヤ周方向の一方側に凸となる向きに湾曲している。また、第3傾斜溝18は、例えば、タイヤ周方向に対する角度がクラウン主溝7側に向かって漸減している。
【0048】
第3傾斜溝18のタイヤ周方向に対する角度は、例えば、60~85°であるのが望ましい。また、第1傾斜溝16と第3傾斜溝18との間の角度θ1、及び、第2傾斜溝17と第3傾斜溝18との間の角度θ2は、それぞれ、50~90°であるのが望ましい。これにより、傾斜溝の交差部分で雪が強く押し固められ、大きな雪柱せん断力が発揮される。
【0049】
第3傾斜溝18は、少なくとも第1傾斜溝16から第2傾斜溝17まで溝幅が漸減しているのが望ましい。より望ましい態様として、本実施形態の第3傾斜溝18は、第1ショルダー主溝5から、クラウン主溝7側の端部まで、溝幅が漸減している。これにより、第1ミドル陸部11の剛性が維持されつつ、雪上性能が向上する。
【0050】
図5には、第3傾斜溝18のC-C線断面図が示されている。図5に示されるように、第3傾斜溝18は、例えば、クラウン主溝7側の端から第1ショルダー主溝5側の端まで深さが漸増しているのが望ましい。本実施形態の第3傾斜溝18は、例えば、溝の長さ方向に一定の深さで構成された第1定深部18a及び第2定深部18c、並びに、タイヤ軸方向に対して傾斜した底面を有する第1変深部18b及び第2変深部18dを含む。第1定深部18aは、第1ショルダー主溝5に連通している。第2定深部18cは、第1定深部18aのクラウン主溝7側に配されている。第1変深部18bは、第1定深部18aと第2定深部18cとの間に配されている。第2変深部18dは、第2定深部18cのクラウン主溝7側に配されている。
【0051】
第3傾斜溝18の最小の深さd4は、第3傾斜溝18の最大の深さd3の0.40~0.60倍である。このような第3傾斜溝18は、雪上性能とドライ路面での操縦安定性とをバランス良く高める。
【0052】
図2に示されるように、本実施形態の第1ミドル陸部11には、複数の第4傾斜溝19が設けられている。第4傾斜溝19は、例えば、第1ショルダー主溝5から第2方向に傾斜して延び、第1ミドル陸部11内で途切れている。第4傾斜溝19は、第1傾斜溝16及び第2傾斜溝17と交差し、かつ、前記中心位置11cを横切っている。
【0053】
第3傾斜溝18と第4傾斜溝19とは、タイヤ周方向に交互に設けられている。また、第4傾斜溝19のタイヤ軸方向の長さは、第3傾斜溝18のタイヤ軸方向の長さよりも小さい。
【0054】
第4傾斜溝19は、例えば、第3傾斜溝18と同じ向きに湾曲している。第4傾斜溝19の曲率半径は、例えば、30mm以上であるのが望ましい。
【0055】
第4傾斜溝19は、例えば、タイヤ周方向に対して60~85°の角度で延びている。また、第4傾斜溝19は、タイヤ周方向に対する角度がクラウン主溝7側に向かって漸減している。このような第4傾斜溝19は、雪上でのトラクション及び旋回性を高めるのに役立つ。
【0056】
第4傾斜溝19は、第1ショルダー主溝5からクラウン主溝7側に向かって溝幅が漸減しているのが望ましい。このような第4傾斜溝19は、第1ミドル陸部11の剛性を維持し、ドライ路面での操縦安定性を高めるのに役立つ。
【0057】
図6には、第4傾斜溝19のD-D線断面図が示されている。図6に示されるように、第4傾斜溝19は、第1傾斜溝16との連通部分19aと、第1ショルダー主溝5との間の本体部19bと、前記連通部分19aよりもクラウン主溝7側の先端部19cとを含んでいる。本体部19bは、その長さ方向に一定の深さを有している。先端部19cは、湾曲した底面を有し、クラウン主溝7側に向かって深さが漸減している。先端部19cの底面の曲率半径は、例えば、10~30mmである。このような第4傾斜溝19は、先端部19cが第1ミドル陸部11の剛性を維持し、ひいてはドライ路面での操縦安定性を高める。
【0058】
図2に示されるように、本実施形態の第1ミドル陸部11には、複数のサイプ25が設けられているのが望ましい。本明細書において、サイプとは、幅が1.5mm以下の切れ込みを意味する。サイプの幅は、例えば、0.4~1.0mmであるのが望ましい。各サイプ25は、雪上性能を高めるのに役立つ。
【0059】
第1ミドル陸部11に設けられたサイプ25は、例えば、第2方向に傾斜しているのが望ましい。また、サイプ25は、第3傾斜溝18と同じ向きに凸に湾曲しているのが望ましい。このようなサイプ25は、第1ミドル陸部11の剛性を維持しつつ、そのエッジによって摩擦力を提供する。
【0060】
本実施形態の第1ミドル陸部11には、例えば、第1ショルダー主溝5からクラウン主溝7まで延びる複数の第1サイプ26と、第1ショルダー主溝5から第1傾斜溝16まで延びる複数の第2サイプ27とが設けられている。
【0061】
第1サイプ26は、第2傾斜溝17のクラウン主溝7側の端部と第1傾斜溝16とを横切っている。第2サイプ27は、第1傾斜溝16の第1ショルダー主溝5側の端部と第2傾斜溝17とを横切っている。このような第1サイプ26及び第2サイプ27は、第1傾斜溝16及び第2傾斜溝17の端部に雪が詰まるのを抑制でき、優れた雪上性能を長期に亘って発揮することができる。
【0062】
第1ミドル陸部11には、複数の第3サイプ28が設けられている。第3サイプ28は、クラウン主溝7から第4傾斜溝19の端部まで延びている。第3サイプ28は、第4傾斜溝19の端部に雪が詰まるのを抑制するのに役立つ。
【0063】
図7には、第2ミドル陸部12の拡大図が示されている。図3に示されるように、第2ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W2は、例えば、トレッド幅TWの0.10~0.20倍であるのが望ましい。
【0064】
第2ミドル陸部12は、例えば、複数のミドル横溝30が設けられている。ミドル横溝30は、例えば、クラウン主溝7から延びかつ第2ミドル陸部12内で途切れている。
【0065】
ミドル横溝30は、例えば、クラウン主溝7から第1方向に傾斜して延びる第1部分31と、第1部分31に連なりかつタイヤ周方向に沿って延びる第2部分32とを含む。第2部分32の深さは、第1部分31の深さよりも小さいのが望ましい。このようなミドル横溝30は、ドライ路面での操縦安定性を維持しつつ、雪上走行時、タイヤ周方向及びタイヤ軸方向に雪柱せん断力を提供する。
【0066】
第2ミドル陸部12には、複数の第1ミドルサイプ33及び複数の第2ミドルサイプ34が設けられている。第1ミドルサイプ33は、例えば、クラウン主溝7から延び、かつ、第2ミドル陸部12内で途切れている。第2ミドルサイプ34は、例えば、第2ショルダー主溝6から延びかつミドル横溝30に連通している。
【0067】
本実施形態の第2ミドル陸部12には、2本のサイプ片36の間に複数の微小な切れ込みが延びる切れ込み要素35が設けられている。2本のサイプ片36は、例えば、第1ミドルサイプ33からミドル横溝30の第1部分31まで、互いの距離を縮小させながら延びている。このような切れ込み要素35は、タイヤ使用開始時のグリップ性能を高めるのに役立つ。
【0068】
図8には、第1ショルダー陸部13の拡大図が示されている。図4に示されるように、第1ショルダー陸部13のタイヤ軸方向の幅W3は、第2ミドル陸部12のタイヤ軸方向の幅W2よりも大きいのが望ましい。第1ショルダー陸部13のタイヤ軸方向の幅W3は、例えば、トレッド幅TWの0.15~0.25倍であるのが望ましい。
【0069】
第1ショルダー陸部13には、タイヤ軸方向に延びる複数のショルダー横溝40及び複数のショルダーサイプ41が設けられている。このようなショルダー横溝40及びショルダーサイプ41は、雪上性能を高めるのに役立つ。
【0070】
図1に示されるように、第2ショルダー陸部14には、第1ショルダー陸部13と同様のショルダー横溝40及びショルダーサイプ41が設けられている。
【0071】
望ましい態様では、第2ショルダー陸部14は、その踏面と、第2ショルダー主溝6側の側面との間に、面取り部42を有している。さらに望ましい態様では、面取り部42の外面に、前記踏面から前記側面まで延びる複数の細溝が形成されている。これにより、第2ショルダー主溝6が大きな雪柱せん断力を提供することができる。
【0072】
以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例
【0073】
図1の基本パターンを有するサイズ215/60R16のタイヤが試作された。比較例として、第2傾斜溝の深さがその長さ方向に一定であるタイヤが試作された。比較例のタイヤの第2傾斜溝の深さは、実施例の第2傾斜溝の本体部の深さと同一である。なお、比較例のタイヤは、上記の事項を除き、図1に示されるものと実質的に同じパターンを具えている。各テストタイヤの雪上性能及びドライ路面での操縦安定性がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム:16×6.5
タイヤ内圧:240kPa
テスト車両:排気量2500cc、前輪駆動車
タイヤ装着位置:全輪
【0074】
<雪上性能>
上記テスト車両で雪路を走行したときの性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、雪上性能が優れていることを示す。
【0075】
<ドライ路面での操縦安定性>
上記テスト車両でドライ路面を走行したときの操縦安定性が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例を100とする評点であり、数値が大きい程、ドライ路面での操縦安定性が優れていることを示す。
テスト結果が表1に示される。
【0076】
【表1】
【0077】
テストの結果、実施例のタイヤは、優れた雪上性能及びドライ路面での操縦安定性を発揮していることが確認できた。
【符号の説明】
【0078】
2 トレッド部
3 主溝
4 陸部
5 第1ショルダー主溝
7 クラウン主溝
11 第1ミドル陸部
16 第1傾斜溝
17 第2傾斜溝
Te1 第1トレッド端
Te2 第2トレッド端
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8