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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】制御装置、車両、および制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/10 20160101AFI20240509BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240509BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240509BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20240509BHJP
   B60L 7/24 20060101ALI20240509BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240509BHJP
   B60T 8/17 20060101ALN20240509BHJP
【FI】
B60W20/10
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/08 900
B60L7/24 D
B60L50/16
B60T8/17 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023027392
(22)【出願日】2023-02-24
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】伊東 光
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-051199(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073561(WO,A1)
【文献】特開2022-164093(JP,A)
【文献】特開2001-329902(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/10
B60K 6/48
B60W 10/06
B60W 10/08
B60L 7/24
B60L 50/16
B60T 8/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気の酸素濃度を取得する取得部と、
前記酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、前記酸素濃度が前記酸素閾値以上である場合に比べて、前記エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、車両を推進させるための電動機が発生させた電動駆動力およびエンジンが発生させたエンジン駆動力のうち、前記電動機が発生させる前記電動駆動力を増加させ、前記酸素濃度が基準値未満である場合に、前記エンジンからの前記排気をエンジンに再度戻す排気再循環において前記エンジンに吸入される空気に含まれる前記排気の比率を、前記酸素濃度が前記基準値以上である場合に比べて低下させる駆動制御部と、
を備える制御装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記エンジンに吸入される空気の気圧をさらに取得し、
前記駆動制御部は、前記気圧が気圧閾値未満である場合に、前記気圧が当該気圧閾値以上である場合に比べて、前記エンジン駆動力及び前記電動駆動力のうち前記電動駆動力を増加させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
電力を発生させる回生ブレーキによる回生制動力と、電力を発生させない非回生ブレーキによる非回生制動力とにより、走行中の前記車両を減速させ、前記電動駆動力を増加させる場合に、前記電動駆動力を増加させない場合に比べて、前記回生制動力及び前記非回生制動力のうち前記回生制動力を増加させる制動制御部をさらに備える、
請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
車両を推進させる電動駆動力を発生させる電動機と、
前記車両を推進させるエンジン駆動力を発生させるエンジンと、
前記エンジンからの排気の酸素濃度を取得する取得部と、
前記酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、前記酸素濃度が当該酸素閾値以上である場合に比べて、前記エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、前記車両を推進させるための前記エンジン駆動力及び前記電動駆動力のうち、前記電動駆動力を増加させ、前記酸素濃度が基準値未満である場合に、前記エンジンからの前記排気をエンジンに再度戻す排気再循環において前記エンジンに吸入される空気に含まれる前記排気の比率を、前記酸素濃度が前記基準値以上である場合に比べて低下させる駆動制御部と、
を備える車両。
【請求項5】
コンピュータが実行する、
エンジンからの排気の酸素濃度を取得するステップと、
前記酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、前記酸素濃度が前記酸素閾値以上である場合に比べて、前記エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、車両を推進させるための電動機が発生させた電動駆動力およびエンジンが発生させたエンジン駆動力のうち、前記電動機が発生させる前記電動駆動力を増加させるステップと、
前記酸素濃度が基準値未満である場合に、前記エンジンからの前記排気をエンジンに再度戻す排気再循環において前記エンジンに吸入される空気に含まれる前記排気の比率を、前記酸素濃度が前記基準値以上である場合に比べて低下させるステップと、
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を利用して走行可能な車両を制御する制御装置、当該制御装置を搭載する車両、および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンへの燃料供給を電子制御化することが広く行われている。例えば、特許文献1には、エンジンの空燃比を理論空燃比付近に保つようにエンジンへのインジェクタの噴射量を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-229930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、エンジンに吸入される混合気に含まれる燃料の質量に対する空気の質量の比率である空燃比が小さいリッチ側である場合に、この空燃比を理論空燃比に近付けるようにインジェクタからの噴射量を減少させる。このとき、特許文献1に記載の技術では、噴射量の減少に起因してエンジントルクが不足しやすいという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、空燃比が過少になることを抑制しつつ、エンジントルクが不足することを抑制することができる制御装置、車両および制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の制御装置は、エンジンからの排気の酸素濃度を取得する取得部と、前記酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、前記酸素濃度が前記酸素閾値以上である場合に比べて、前記エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、車両を推進させるための電動機が発生させた電動駆動力およびエンジンが発生させたエンジン駆動力のうち、前記電動機が発生させる前記電動駆動力を増加させる駆動制御部と、を備える。
【0007】
前記取得部は、前記エンジンに吸入される空気の気圧をさらに取得し、前記駆動制御部は、前記気圧が気圧閾値未満である場合に、前記気圧が当該気圧閾値以上である場合に比べて、前記エンジン駆動力及び前記電動駆動力のうち前記電動駆動力を増加させてもよい。
【0008】
前記制御装置は、電力を発生させる回生ブレーキによる回生制動力と、電力を発生させない非回生ブレーキによる非回生制動力とにより、走行中の前記車両を減速させ、前記電動駆動力を増加させる場合に、前記電動駆動力を増加させない場合に比べて、前記回生制動力及び前記非回生制動力のうち前記回生制動力を増加させる制動制御部をさらに備えてもよい。
【0009】
前記駆動制御部は、前記酸素濃度が基準値未満である場合に、前記エンジンからの前記排気をエンジンに再度戻す排気再循環において前記エンジンに吸入される空気に含まれる前記排気の比率を、前記酸素濃度が前記基準値以上である場合に比べて低下させてもよい。
【0010】
本発明の第2の態様の車両は、車両を推進させる電動駆動力を発生させる電動機と、前記車両を推進させるエンジン駆動力を発生させるエンジンと、前記エンジンからの排気の酸素濃度を取得する取得部と、前記酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、前記酸素濃度が当該酸素閾値以上である場合に比べて、前記エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、前記車両を推進させるための前記エンジン駆動力及び前記電動駆動力のうち、前記電動駆動力を増加させる駆動制御部と、を備える。
【0011】
本発明の第3の態様の制御方法は、コンピュータが実行する、エンジンからの排気の酸素濃度を取得するステップと、前記酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、前記酸素濃度が前記酸素閾値以上である場合に比べて、前記エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、車両を推進させるための電動機が発生させた電動駆動力およびエンジンが発生させたエンジン駆動力のうち、前記電動機が発生させる前記電動駆動力を増加させるステップと、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空燃比が過少になることを抑制しつつ、エンジントルクが不足することを抑制するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の車両の構成を示す。
図2】車両の要部の構成を示す。
図3】空気適量時マップの例を示す。
図4】空気不足時マップの例を示す。
図5】エンジン1の回転速度とエンジントルクとの関係の別の例を示す。
図6】制御装置によるエンジン駆動力及び電動駆動力の制御の処理手順を示すフローチャートである。
図7】制御装置によるエンジン駆動力及び電動駆動力の制御の別の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[車両の概要]
図1は、本実施形態の車両100の構成を示す。車両100は、例えば、トラック等の商用車である。車両100は、エンジン1、エアクリーナ2、DOC(Diesel Oxidation Catalyst、ディーゼル酸化触媒)3、DPF(Diesel Particulate Filter、ディーゼル微粒子捕集フィルタ)4、電動機5、クラッチ6、大気圧センサ7、λセンサ8、EGRクーラ9、EGRバルブ10、制御装置11を備える。車両100は、電動機5が発生させた電動駆動力とエンジン1が発生させたエンジン駆動力とにより走行可能である。
【0015】
図1の太線は、車両100内の空気の経路を示す。図1の矢印は、空気の経路における空気の流れを示す。図1の例では、エアクリーナ2を介して吸入された外気は、エンジン1、DOC3、DPF4の順に通過し、外部へ排出される。また、DPF4から排出された空気の一部はEGRクーラ9とEGRバルブ10とを介してエンジン1に戻る。
【0016】
エンジン1は、車両100に搭載されている。エンジン1は、車両100を推進させるエンジン駆動力を発生させる。エンジン1は、例えば、自然吸気エンジンであるが、ターボエンジンであってもよい。エアクリーナ2は、車両100の外部から吸入された空気からごみを除去するフィルタである。
【0017】
DOC3は、エンジン1の排気に含まれる炭化水素、一酸化炭素又は一酸化窒素等を酸化させる。DPF4は、エンジン1の排気から微粒子を除去するフィルタである。DPF4は、DOC3の後段に設けられる。
【0018】
電動機5は、車両100を推進させる電動駆動力を発生させるモータである。電動機5の出力軸は、車両100の駆動軸に接続されている。駆動軸の両端に車輪が設けられる。出力軸が回転することによって、駆動軸の両端に設けられた車輪が回転して、車両100が走行する。電動機5は、例えば、PM(Permanent Magnet)モータである。電動機5は、エンジン1とトランスミッション(不図示)との間に設けられる。また、電動機5は、エンジン1のフライホイール又はその周辺に設けられてもよい。電動機5は、発電機としても動作する。例えば、電動機5は、制動時に電力を発生させる回生ブレーキとして動作し、制動力(以下、回生制動力ともいう)を発生させる。クラッチ6は、エンジン1の回転を電動機5等に伝達するか否かを切り替える。
【0019】
大気圧センサ7は、エンジン1に吸入される空気の気圧を測定する。大気圧センサ7は、エアクリーナ2を通過する前の空気の気圧を測定する。大気圧センサ7は、測定した気圧を制御装置11に入力する。
【0020】
λセンサ8は、エンジン1からの排気の酸素濃度を測定する。図1の例では、λセンサ8は、例えば、排気マニホールドを通過する排気の酸素濃度を測定する。λセンサ8は、測定した酸素濃度を制御装置11に入力する。
【0021】
EGRクーラ9は、エンジン1からの排気をエンジン1に再度戻す排気再循環においてエンジン1に戻す排気を冷却する。EGRバルブ10は、排気再循環においてエンジン1に戻す排気の量を調節する。
【0022】
制御装置11は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)である。制御装置11は、λセンサ8が測定した酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、エンジンに吸入される混合気に含まれる燃料の質量に対する空気の質量の比率である空燃比が過少であると判定する。制御装置11は、λセンサ8が測定した酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べて、エンジン1の筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させる。酸素閾値は、例えば、エンジン1において空気の不足が発生しないために必要な酸素濃度の最小値である。
【0023】
エンジン1の筒内に噴射する燃料の噴射量を制御装置11が減少させることに起因して、エンジントルクが不足する可能性がある。制御装置11は、燃料の噴射量を減少させる場合に、エンジントルクの不足を補うため、電動機5が発生させる駆動力が燃料の噴射量を減少させない場合よりも大きくなるように電動機5を制御する。
【0024】
このようにして、制御装置11は、空燃比が過少となることを抑制しつつ、エンジントルクが不足することを抑制することができる。
【0025】
[車両100の要部の構成]
図2は、車両100の要部の構成を示す。車両100は、大気圧センサ7、λセンサ8、燃料噴射装置21、インバータ22、電動機5、EGRバルブ10、制動装置23及び制御装置11を備える。制御装置11は、記憶部111および制御部112を備える。
【0026】
燃料噴射装置21は、エンジン1の筒内へ燃料を噴射する。燃料噴射装置21は、制御部112が指示した噴射量の燃料をエンジン1の筒内へ噴射する。インバータ22は、電動機5のステータに設けられた複数の電磁石に電力を供給する。制動装置23(非回生ブレーキに相当)は、例えば、ドラム式ブレーキである。制動装置23は、制動時に電力を発生させない非回生制動力を発生させる。
【0027】
記憶部111は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部111は、制御部112を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。記憶部111には、λセンサ8が測定した酸素濃度が酸素閾値以上である場合のエンジン1の回転速度と、エンジントルクとの関係を示す空気適量時マップが記憶されている。
【0028】
図3は、空気適量時マップの例を示す。図3の縦軸は、エンジントルクを示し、図3の横軸は、エンジンの回転速度を示す。エンジントルクの単位は、Nm(Newton metre、ニュートンメートル)である。回転速度の単位は、rpm(revolutions per minute)である。図3におけるA1、B1の意味を含めて、空気適量時マップの詳細については後述する。
【0029】
記憶部111は、λセンサ8が測定した酸素濃度が酸素閾値未満である場合のエンジン1の回転速度と、エンジントルクとの関係を示す空気不足時マップを記憶してもよい。図4は、空気不足時マップの例を示す。図4中の破線のグラフは、図3中に示した空気適量時マップに示したグラフと同一である。図4に示す空気不足時マップでは、図3に示す空気適量時マップと比較すると、同じエンジン1の回転速度に対してより低いエンジントルクが割り当てられている。空気適量時マップ及び空気不足時マップは、車両100の排気に含まれている酸素の濃度とエンジン1の回転速度とに基づいて、駆動制御部202がエンジントルクの目標値を算出する際に参照される。
【0030】
また、記憶部111は、大気圧センサ7が測定した気圧が気圧閾値未満である場合のエンジン1の回転速度と、エンジントルクとの関係を示す低気圧時マップを記憶してもよい。記憶部111は、大気圧センサ7が測定した気圧が気圧閾値以上である場合のエンジン1の回転速度と、エンジントルクとの関係を示す適正気圧時マップを記憶してもよい。低気圧時マップ及び適正気圧時マップは、車両100が走行する位置における気圧とエンジン1の回転速度とに基づいて、駆動制御部202がエンジントルクの目標値を算出する際に参照される。
【0031】
図5は、異なる気圧それぞれに対応するエンジン1の回転速度とエンジントルクとの関係の例を示す。図5(a)は、適正気圧時マップの例を示す。図5(b)は、低気圧時マップの例を示す。
【0032】
図5(b)中の破線のグラフは、図5(a)中に示した適正気圧時マップのグラフと同一である。図5(b)の低気圧時マップでは、図5(a)に示す適正気圧時マップと比較すると、同じエンジン1の回転速度に対してより低いエンジントルクが割り当てられている。
【0033】
図2の説明に戻る。制御部112は、例えば、制御装置11に搭載されたプロセッサである。制御部112は、記憶部111に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部201、駆動制御部202及び制動制御部203として機能する。
【0034】
取得部201は、エンジン1に吸入される空気の気圧を示す情報を大気圧センサ7から取得する。取得部201は、エンジン1からの排気の酸素濃度を示す情報をλセンサ8から取得する。取得部201は、取得した気圧を示す情報を駆動制御部202及び制動制御部203へ出力する。取得部201は、取得した酸素濃度を示す情報を駆動制御部202及び制動制御部203へ出力する。
【0035】
駆動制御部202は、エンジン1を制御して、エンジン1が発生させる駆動力(エンジン駆動力)を制御する。駆動制御部202は、電動機5を制御して、電動機5が発生させる駆動力(電動駆動力)を制御する。駆動制御部202は、エンジン駆動力及び電動駆動力を制御して、車両100を推進させる。駆動制御部202は、取得部201が取得した酸素濃度に基づいて、エンジン駆動力及び電動駆動力を制御する。駆動制御部202は、燃料噴射装置21が噴射する燃料の噴射量を指示することにより、エンジン駆動力を制御する。駆動制御部202は、電動機5のステータに設けられた複数の電磁石にインバータ22を介して電力を供給することにより、電動駆動力を制御する。駆動制御部202は、排気再循環においてエンジン1に戻す排気の量をEGRバルブ10により調節する。
【0036】
[酸素濃度に基づく駆動力の制御]
以下、駆動制御部202が、取得部201が取得した酸素濃度に基づいて、エンジン駆動力及び電動駆動力を制御する方法について説明する。駆動制御部202は、取得した酸素濃度が酸素閾値より低いか否かを判定する。駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べて、エンジン1の筒内に燃料噴射装置21により噴射する燃料の噴射量を減少させる。
【0037】
駆動制御部202は、現在の車両100の走行速度又は目標速度に対応するエンジン1の回転速度A1を特定する。駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値以上であると判定した場合に、酸素濃度が酸素閾値以上である場合のエンジン1の回転速度と、エンジントルクとの関係を示す空気適量時マップ(図3参照)を記憶部111から読み出す。図3に示すように、駆動制御部202は、空気適量時マップを参照して、特定した回転速度A1に対応するエンジントルクB1を特定する。駆動制御部202は、特定したエンジントルクB1に基づいて、噴射量を特定する。駆動制御部202は、特定した噴射量を噴射することを燃料噴射装置21へ指示する。
【0038】
一方、駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値未満であると判定した場合に、酸素濃度が酸素閾値未満である場合のエンジン1の回転速度と、エンジントルクとの関係を示す空気不足時マップ(図4参照)を記憶部111から読み出す。図4に示すように、駆動制御部202は、空気不足時マップを参照して、エンジンの回転速度A1に対応するエンジントルクB1’を特定する。駆動制御部202は、特定したエンジントルクB1’に基づいて、燃料噴射装置21に噴射させる噴射量を特定する。
【0039】
図4に示す空気不足時マップでは、空気適量時マップに比べて、同じエンジン1の回転速度A1に対応するエンジントルクが小さい。このため、駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値未満であると判定した場合、酸素濃度が酸素閾値以上であると判定した場合に比べて、燃料噴射装置21へ指示する噴射量を減少させる。
【0040】
駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値未満であると判定した場合に、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べてエンジン駆動力を減少し、減少したエンジン駆動力を補うように、電動機5が発生させる電動駆動力を増加させる。すなわち、駆動制御部202は、取得した酸素濃度が酸素閾値未満である場合、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べて、車両を推進させるためのエンジン駆動力及び電動駆動力のうち電動駆動力により車両を推進させる割合を増加させる。
【0041】
より詳しくは、駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値未満であると判定した場合に、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べてエンジン駆動力を減少させることから、エンジン駆動力の減少によって不足するトルクを算出する。駆動制御部202は、算出したトルクを補うように、インバータ22を動作させ、電動機5が発生させる電動駆動力を増加させる。このとき、電動駆動力が増加するため、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べて、車両を推進させるためのエンジン駆動力及び電動駆動力のうち電動駆動力により車両を推進させる割合が増加する。
【0042】
駆動制御部202は、取得部201が取得した酸素濃度が酸素閾値以上であるか否かを判定する例に限定されない。例えば、駆動制御部202は、取得した酸素濃度に基づいて、空気過剰率を算出し、算出した空気過剰率が閾値以上であるか否かを判定してもよい。駆動制御部202は、算出した空気過剰率が閾値以上であると判定した場合に、酸素濃度が酸素閾値以上であると判定した場合と同様の処理を行う。駆動制御部202は、算出した空気過剰率が閾値未満であると判定した場合に、酸素濃度が酸素閾値未満であると判定した場合と同様の処理を行う。
【0043】
[気圧に基づく駆動力の制御]
高地など標高が高いことにより気圧が低い所では、通常よりも空気密度が少なくなるため、エンジントルクの不足が生じやすい。駆動制御部202は、取得部201が取得した気圧が気圧閾値未満であると判定した場合に、エンジントルクの不足を補うように、取得した気圧が気圧閾値以上である場合に比べて、電動機5が発生させる電動駆動力を増加させてもよい。
【0044】
より詳しくは、駆動制御部202は、現在の走行速度又は目標速度に対応するエンジン1の回転速度A2を特定する。駆動制御部202は、取得部201が取得した気圧が気圧閾値以上であると判定した場合に、適正気圧時マップ(図5(a)参照)を記憶部111から読み出す。気圧閾値は、例えば、エンジントルクの不足を生じることなく車両100が走行するために必要な車両100の周囲の気圧の最小値である。
【0045】
図5(a)に示すように、駆動制御部202は、適正気圧時マップを参照して、特定した回転速度A2に対応するエンジントルクB2を特定する。駆動制御部202は、特定したエンジントルクB2に基づいて、噴射量を特定する。駆動制御部202は、特定した噴射量を噴射することを燃料噴射装置21へ指示する。
【0046】
一方、駆動制御部202は、取得した気圧が気圧閾値未満であると判定した場合に、低気圧時マップ(図5(b)参照)を記憶部111から読み出す。図5(b)に示すように、駆動制御部202は、低気圧時マップを参照して、エンジンの回転速度A2に対応するエンジントルクB2’を特定する。駆動制御部202は、特定したエンジントルクB2’に基づいて、噴射量を特定する。
【0047】
この場合に、駆動制御部202は、気圧が気圧閾値以上である場合に比べてエンジン駆動力が減少することから、エンジン駆動力の減少によって不足するトルクを算出する。駆動制御部202は、算出したトルクを補うように、インバータ22を動作させ、電動機5が発生させる電動駆動力を増加させる。
【0048】
[排気再循環において戻す空気の量の制御]
エンジン1に吸入される混合気に含まれる燃料に質量に対する空気の質量に対する空気の重量の比率である空燃比が過少である状態では、エンジン1からの排気をエンジン1に再度戻す排気再循環を実施すると、燃料の不完全燃焼によりすすの発生量が増大する可能性がある。このため、駆動制御部202は、取得した酸素濃度が基準値未満である場合に、この排気再循環においてエンジン1に吸入される空気に含まれる排気の比率を、取得した酸素濃度が基準値以上である場合に比べて低下させる。基準値は、例えば、通常の排気再循環を実施してもすすの発生量が許容可能な範囲内になるために要する酸素濃度の最小値である。
【0049】
[回生ブレーキの制御]
制動制御部203は、電動機5を回生ブレーキとして機能させることによる回生制動力と、電力を発生させない制動装置23による非回生制動力とにより、走行中の車両を減速させる。駆動制御部202は、上述のように電動駆動力により車両100を推進させる割合を増加させるためには、バッテリ(不図示)から電動機5へ供給される電力量を増加させる必要がある。
【0050】
このため、制動制御部203は、電動駆動力を増加させる場合に、電動駆動力を増加させない場合に比べて、回生制動力及び非回生制動力のうち回生制動力を増加させる。例えば、制動制御部203は、電動駆動力を増加させる場合には、回生制動力及び非回生制動力のうち回生制動力をできるだけ大きくする。一方、制動制御部203は、電動駆動力を増加させない場合には、回生制動力及び非回生制動力のうち回生制動力をできるだけ大きくしない。
【0051】
[制御装置11による電動機5の制御の処理手順]
図6は、制御装置11によるエンジン駆動力及び電動駆動力の制御の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両100の走行中に開始される。まず、取得部201は、酸素濃度をλセンサ8から取得する(S101)。駆動制御部202は、取得した酸素濃度が酸素閾値未満であるか否かを判定する(S102)。
【0052】
駆動制御部202は、取得した酸素濃度が酸素閾値未満である場合に(S102のYES)、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べて、エンジン1の筒内に燃料噴射装置21により噴射する噴射量を減少させる(S103)。駆動制御部202は、車両を推進させるためのエンジン駆動力及び電動駆動力のうち、電動駆動力を増加させる(S104)。制動制御部203は、回生制動力及び非回生制動力のうち回生制動力を増加させる(S105)。
【0053】
駆動制御部202は、取得した酸素濃度が基準値未満であるか否かを判定する(S106)。駆動制御部202は、取得した酸素濃度が基準値未満である場合に(S106のYES)、排気再循環においてエンジン1に吸入される空気に含まれる排気の比率を低下させる(S107)。駆動制御部202は、車両100の走行が終了したか否かを判定する(S108)。駆動制御部202は、車両100の走行が終了したと判定した場合(S108のYES)、処理を終了する。
【0054】
駆動制御部202は、S102の判定において酸素濃度が酸素閾値以上である場合に(S102のNO)、S106の判定に進む。駆動制御部202は、S106の判定において取得した酸素濃度が基準値以上である場合に(S106のNO)、S108の判定に進む。駆動制御部202は、S108の判定において車両100の走行が終了していないと判定した場合(S108のNO)、S101の処理に戻る。
【0055】
[制御装置11による電動機5の制御の処理手順]
図7は、制御装置11によるエンジン駆動力及び電動駆動力の制御の別の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、車両100の走行中に開始される。まず、取得部201は、エンジン1に吸入される空気の気圧を示す情報を大気圧センサ7から取得する(S201)。駆動制御部202は、取得した気圧が気圧閾値未満であるか否かを判定する(S202)。
【0056】
駆動制御部202は、取得した気圧が気圧閾値未満である場合に(S202のYES)、取得した気圧が気圧閾値以上である場合に比べて、電動機5が発生させる電動駆動力を増加させる(S203)。制動制御部203は、取得した気圧が気圧閾値以上である場合に比べて、制動時の回生駆動力及び非回生駆動力のうち、回生制動力を増加させる(S204)。
【0057】
駆動制御部202は、取得した気圧が基準値未満であるか否かを判定する(S205)。駆動制御部202は、取得した気圧が基準値未満である場合に(S205のYES)、排気再循環においてエンジン1に吸入される空気に含まれる排気の比率を低下させる(S206)。駆動制御部202は、車両100の走行が終了したか否かを判定する(S207)。駆動制御部202は、車両100の走行が終了したと判定した場合(S207のYES)、処理を終了する。
【0058】
駆動制御部202は、S202の判定において気圧が気圧閾値以上である場合に(S202のNO)、S205の判定に進む。駆動制御部202は、S205の判定において取得した気圧が基準値以上である場合に(S205のNO)、S207の判定に進む。駆動制御部202は、S207の判定において車両100の走行が終了していないと判定した場合(S207のNO)、S201の処理に戻る。
【0059】
[本実施形態の制御装置11による効果]
駆動制御部202は、酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、酸素濃度が酸素閾値以上である場合に比べて、エンジン1の筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させるとともに、車両100を推進させるためのエンジン駆動力及び電動駆動力のうち、電動駆動力を増加させる。このため、駆動制御部202は、空燃比が過少となることを抑制しつつ、エンジントルクが不足することを抑制することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
2 エアクリーナ
4 DPF
5 電動機
6 クラッチ
7 大気圧センサ
8 センサ
9 クーラ
10 バルブ
11 制御装置
21 燃料噴射装置
22 インバータ
23 制動装置
100 車両
111 記憶部
112 制御部
201 取得部
202 駆動制御部
203 制動制御部
【要約】
【課題】空燃比が過少になることを抑制しつつ、エンジントルクが不足することを抑制する。
【解決手段】電動機が発生させた電動駆動力とエンジンが発生させたエンジン駆動力とにより走行可能な車両に搭載された当該エンジンからの排気の酸素濃度を取得する取得部と、酸素濃度が酸素閾値より低い場合に、酸素濃度が当該酸素閾値以上である場合に比べて、エンジンの筒内に噴射する燃料の噴射量を減少させ、且つ、車両を推進させるためのエンジン駆動力及び電動駆動力のうち、電動駆動力を増加させる駆動制御部と、を備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7