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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】浄化システム
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20240509BHJP
   F02D 19/12 20060101ALI20240509BHJP
   F02M 25/08 20060101ALI20240509BHJP
【FI】
F01N3/08 D ZAB
F02D19/12 Z
F02M25/08 301R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023042769
(22)【出願日】2023-03-17
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】岡本 毅
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-011193(JP,A)
【文献】特開2010-168981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
F02D 19/12
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気を浄化する浄化システムであって、
空気を酸素と窒素とに分離する分離部と、
前記分離部で分離された酸素からオゾンを生成するオゾン生成部と、
前記オゾン生成部が生成したオゾンを前記エンジンの吸気管と排気管とに供給する供給部と、
前記排気を浄化する浄化装置の浄化率を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記浄化率が低いほど、前記吸気管への前記オゾンの供給量を前記排気管への前記オゾンの供給量よりも多くする供給制御部と、
を有する浄化システム。
【請求項2】
前記分離部は、酸素を通過させる一方で窒素を通過させない膜を有する、
請求項1に記載の浄化システム。
【請求項3】
前記供給制御部は、前記排気の温度が所定値未満の場合に前記オゾンを前記吸気管と前記排気管とに供給させ、前記排気の温度が所定値以上の場合に前記オゾンを前記吸気管と前記排気管とに供給させない、
請求項1に記載の浄化システム。
【請求項4】
前記オゾン生成部と前記排気管との間に設けられて前記オゾンを圧送して前記吸気管に供給する圧縮機を有する、
請求項1に記載の浄化システム。
【請求項5】
前記エンジンで燃焼せずに前記エンジンから排出されたガスと、前記オゾンとを反応させることにより前記ガスを浄化する前記浄化装置を有し、
前記供給部は、前記排気管において前記浄化装置よりも上流側に前記オゾンを供給する、
請求項1からのいずれか一項に記載の浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排気を浄化する浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの排気を浄化する技術が知られている。特許文献1には、空気から生成したオゾンを排気管に供給することで排気を浄化する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-207316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、空気からオゾンを生成すると、空気に含まれる窒素から窒素酸化物が生成されてしまう。そのため、オゾンだけでなく窒素酸化物が排気管に供給されてしまうことがあった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、排気管に供給される窒素酸化物の増加を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、エンジンの排気を浄化する浄化システムであって、空気を酸素と窒素とに分離する分離部と、前記分離部で分離された酸素からオゾンを生成するオゾン生成部と、前記オゾン生成部が生成したオゾンを前記エンジンの吸気管と排気管とに供給する供給部と、を有する浄化システムを提供する。
【0007】
前記エンジンの排気の浄化率に応じて前記吸気管及び前記排気管に供給させるオゾンの量を調整する供給制御部を有してもよい。
【0008】
前記吸気管へのオゾンの供給量を前記排気管へのオゾンの供給量よりも多くする供給制御部を有してもよい。
【0009】
前記分離部は、酸素を通過させる一方で窒素を通過させない膜を有してもよい。
【0010】
前記排気の温度が所定値未満の場合にオゾンを前記吸気管と前記排気管とに供給させ、前記排気の温度が所定値以上の場合にオゾンを前記吸気管と前記排気管とに供給させない供給制御部を有してもよい。
【0011】
前記オゾン生成部と前記排気管との間に設けられてオゾンを圧送して前記吸気管に供給する圧縮機を有してもよい。
【0012】
前記エンジンで燃焼せずに前記エンジンから排出されたガスと、オゾンとを反応させることにより前記ガスを浄化する浄化装置を有し、前記供給部は、前記排気管において前記浄化装置よりも上流側にオゾンを供給してもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排気管に供給される窒素酸化物の増加を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】浄化システムの構成を説明するための図である。
図2】供給制御装置の構成を説明するための図である。
図3】供給制御装置が実行する吸気管及び排気管にオゾンを供給する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[浄化システムS]
図1は、浄化システムSの構成を説明するための図である。浄化システムSは、分離部1、エンジン2、オゾン生成部3、吸気管41、排気管42、第1供給部51と第2供給部52を有する供給部5、酸素センサ61、温度センサ62、第1NOxセンサ631、第2NOxセンサ632及び浄化装置7を含む。浄化システムSは、エンジン2の排気を浄化するシステムである。浄化システムSは、例えば車両、船舶、発電所等に設けられている。
【0016】
分離部1は、空気を酸素と窒素とに分離する。例えば、分離部1は、膜11、空気取入管12、送風機13及び酸素供給管14を有する。膜11は、酸素を通過させる一方で窒素を通過させない気体分離膜である。膜11は、例えば酸素のみを通過させる酸素透過膜又は窒素を通過させない窒素分離膜であるが、これに限定するものではない。空気取入管12は、外部から空気(大気)を取り込む。送風機13は、外部から空気を取り込んで膜11に向けて送り出す。送風機13は、例えば遠心送風機又は軸心送風機であるが、これに限定するものではない。分離部1は、分離した酸素をオゾン生成部3に供給し、窒素を大気に排出する。
【0017】
分離部1とオゾン生成部3を接続している酸素供給管14には、酸素センサ61が設けられている。酸素センサ61は、分離部1からオゾン生成部3に向かう酸素の量を検出する。酸素センサ61は、例えば気体に含まれる酸素の濃度を測定するガルバニ電池式酸素濃度計である。なお、酸素センサ61は、ガルバニ電池式酸素濃度計に限らず、ジルコニア式、磁気式又はレーザ分光式酸素濃度計であってもよい。
【0018】
オゾン生成部3は、分離部1で分離された酸素からオゾンを生成する。オゾン生成部3は、例えば酸素に紫外線を照射することにより酸素をオゾンに変換する。具体的には、オゾン生成部3は、紫外線ランプを点灯させる又はオゾン生成部3内の電極間で放電させることにより、オゾン生成部3を通過する酸素をオゾンに変換する。オゾン生成部3がオゾンを生成する際の電力は、例えばバッテリから供給される。また、オゾン生成部3の電力は、浄化システムSが車両に搭載されている場合、車両に搭載されている太陽光発電システム又は回生エネルギシステムから供給されてもよい。
【0019】
第1供給部51は、オゾン生成部3で生成されたオゾンを、吸気管41に供給する。第1供給部51は、第1管路511及び第1逆止弁512を有する。第1管路511は、オゾン生成部3と吸気管41を接続している。第1逆止弁512は、オゾン生成部3と吸気管41の間に設けられている。第1逆止弁512は、オゾン生成部3から第1供給部51に向かう気体を通過させ、第1供給部51からオゾン生成部3に向かう気体を遮断する。具体的には、第1逆止弁512は、オゾン生成部3から第1供給部51に向かうオゾンを通過させ、第1供給部51からオゾン生成部3に向かうオゾンを遮断する。第1逆止弁512は、例えばディスク式逆止弁であるが、これに限らず、ポペット式逆止弁、スイング式逆止弁、又は他の方式の逆止弁であってもよい。
【0020】
エンジン2は、燃料と吸気(空気)との混合気を燃焼、膨張させて、動力を発生させる内燃機関である。燃料は、例えば天然ガス、ガソリン又は軽油である。エンジン2は、吸気管41から吸気(空気)を取り込む際に、吸気管41に供給されたオゾンを取り込む。オゾンが気筒に取り込まれることにより燃焼の活性が促されるため、燃料の燃焼効率が向上する。エンジン2は、排気管42から排気する。
【0021】
第2供給部52は、オゾン生成部3で生成されたオゾンを、排気管42に供給する。第2供給部52は、第2管路521、圧縮機522及び第2逆止弁523を有する。第2管路521は、オゾン生成部3と排気管42を接続している。具体的には、第2管路521は、エンジン2と浄化装置7の間の排気管42に接続されている。
【0022】
圧縮機522は、オゾン生成部3と排気管42の間に設けられている。圧縮機522は、例えば遠心圧縮機であるが、これに限定するものではない。圧縮機522は、オゾンを圧縮して排気管42に供給する。具体的には、圧縮機522は、オゾン生成部3から流れてくるオゾンを吸い込んで排気管42に圧送する。より具体的には、圧縮機522は、排気管42を流れる排気の圧力よりも高い圧力でオゾンを排気管42に圧送する。これにより、圧縮機522は、大気よりも高い圧力の排気が流れる排気管42にオゾンを供給できる。
【0023】
第2逆止弁523は、オゾン生成部3と排気管42の間に設けられている。第2逆止弁523は、圧縮機522から排気管42に向かう気体を通過させ、排気管42から圧縮機522に向かう気体を遮断する。具体的には、第2逆止弁523は、圧縮機522から排気管42に向かうオゾンを通過させ、排気管42から圧縮機522に向かうオゾンを遮断する。第2逆止弁523は、第1逆止弁512と同じ方式の逆止弁であっても、異なる方式の逆止弁であってもよい。
【0024】
排気管42には、浄化装置7が設けられている。浄化装置7は、エンジン2の排気を浄化する。浄化装置7は、例えば選択触媒還元脱硝装置(いわゆる尿素SCR(Selective Catalytic Reduction))である。選択触媒還元脱硝装置は、窒素酸化物とアンモニアを反応させる触媒を有し、排気管42を流れる排気にアンモニアの前駆体である尿素水を噴射することにより、窒素酸化物とアンモニアとを触媒で反応させることで窒素酸化物を窒素と水に還元させる。具体的には、選択触媒還元脱硝装置は、触媒の温度が、触媒が反応する反応温度以上の場合に、排気に尿素水を噴射することにより、排気の熱を用いて尿素をアンモニアに変換して、アンモニアと窒素酸化物とを触媒で反応させる。
【0025】
浄化装置7は、エンジン2で燃焼せずにエンジン2から排出された未燃焼ガスを浄化してもよい。未燃焼ガスは、エンジン2の燃焼過程で燃焼しなかった未燃の燃料(例えばメタン、エタン及びプロパン等)を含むガスである。この場合、浄化装置7は、メタンを反応させるメタン反応触媒を有する。浄化装置7は、浄化装置7の上流側で供給されたオゾン及びメタンをメタン反応触媒で反応させることにより、メタンを水素と二酸化炭素に変換することで浄化する。具体的には、浄化装置7は、メタン反応触媒が活性化する温度までメタン反応触媒を加熱して、オゾン及びメタンをメタン反応触媒で反応させる。
【0026】
エンジン2と浄化装置7の間には、温度センサ62が設けられている。温度センサ62は、排気温度を検出する。温度センサ62は、例えば熱電対又はサーミスタであるが、これに限定するものではない。
【0027】
第1NOxセンサ631は、エンジン2と浄化装置7の間に設けられている。第2NOxセンサ632は、浄化装置7の下流に設けられている。第1NOxセンサ631及び第2NOxセンサ632は、活性化温度に達して活性化状態になると、排気管42内の窒素酸化物の量に応じた検出値を出力する。具体的には、第1NOxセンサ631及び第2NOxセンサ632は、排気中の酸素を除去した後、二酸化窒素を一酸化窒素に変換し、一酸化窒素を一酸化窒素還元触媒で分解したときに発生する酸素の量に比例した検出値を出力する。以下の説明では、第1NOxセンサ631の検出値に対する第2NOxセンサ632の検出値の割合を、浄化装置7の排気の浄化率と言うことがある。
【0028】
供給制御装置8は、オゾン生成部3が生成したオゾンをエンジン2の吸気管41と排気管42とに供給させる。図2は、供給制御装置8の構成を説明するための図である。供給制御装置8は、記憶部81及び制御部82を有する。記憶部81は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を含む記憶媒体である。記憶部81は、制御部82が実行するプログラムを記憶する。
【0029】
制御部82は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含む計算リソースである。制御部82は、記憶部81に記憶されたプログラムを実行することにより、取得部821、供給制御部822及び報知制御部823としての機能を実現する。
【0030】
取得部821は、酸素センサ61が検出した酸素濃度を取得する。取得部821は、温度センサ62が検出した排気の温度を取得する。また、取得部821は、第1NOxセンサ631の検出値及び第2NOxセンサ632の検出値を取得する。取得部821は、第1NOxセンサ631の検出値に対する第2NOxセンサ632の検出値の割合である排気の浄化率を取得する。
【0031】
供給制御部822は、オゾン生成部3が生成したオゾンを吸気管41及び排気管42の各々に供給させる。具体的には、供給制御部822は、分離部1の上流に設けられた送風機13を動作させて空気を分離部1に供給する。供給された空気のうちの酸素は、分離部1の膜11を通過してオゾン生成部3に至る。一方、窒素は、膜11を通過できないので大気に排出される。供給制御部822は、オゾン生成部3に紫外線を酸素に照射させることによりオゾン生成部3を通過する酸素をオゾンに変換させることでオゾンを生成させる。そして、供給制御部822は、生成されたオゾンを供給部5から吸気管41及び排気管42に供給させる。
【0032】
これにより、供給制御部822は、空気からオゾンを生成した場合よりも窒素酸化物の含有率が低いオゾンを吸気管41及び排気管42に供給できるので、浄化装置7の上流側の排気管42に送られる窒素酸化物の増加を抑制できる。そのため、浄化装置7は、窒素酸化物を浄化しやすくなり、浄化しきれずに浄化装置7から排出される窒素酸化物の増加を抑制できる。その結果、供給制御部822は、浄化装置7の排気の浄化率の低下を抑制できる。
【0033】
供給制御部822は、排気管42にオゾンを供給する際には、圧縮機522を動作させてオゾンを圧送して排気管42に供給させる。これにより、供給制御部822は、大気よりも圧力が高い排気が流れる排気管42にオゾンを供給できる。
【0034】
供給制御部822は、エンジン2の排気の浄化率に応じて吸気管41及び排気管42に供給するオゾンの量を調整する。例えば、供給制御部822は、浄化率が低いほど吸気管41及び排気管42に供給するオゾンの量を増やす。供給制御部822は、まず、浄化率が低いほど送風機の出力を上げて分離部1に供給される空気を増加させる。そして、供給制御部822は、紫外線ランプの発光量を上げる又はオゾン生成部3が電極間に印加する電圧を上げて放電回数を増加させて、生成されるオゾンの量を増加させる。これにより、供給制御部822は、浄化率が低いほど多量のオゾンを吸気管41及び排気管42に供給できるので、未燃の燃料及び窒素酸化物を浄化装置7が浄化しやすくなるため、排気の浄化率を向上できる。
【0035】
排気の浄化率を向上するには、未燃の燃料や生成された窒素酸化物を浄化するよりも、未燃の燃料や窒素酸化物の生成を抑制して排気管42に供給される量を低減するのが望ましい。そのため、排気管42にオゾンを供給するよりも吸気管41にオゾンを供給する方が燃焼効率の向上に伴い未燃の燃料及び窒素酸化物の生成が低減されるので、排気の浄化率が向上する。
【0036】
そこで、供給制御部822は、浄化率が低いほど吸気管41へのオゾンの供給量を排気管42へのオゾンの供給量よりも多くする。例えば、供給制御部822は、オゾン生成部3に設けられている流量調節弁を制御することによりオゾン生成部3から吸気管41に向かうオゾンの量をオゾン生成部3から排気管42に向かうオゾンの量よりも多くする。これにより、供給制御部822は、排気管42のオゾンの供給量よりも吸気管41のオゾンの供給量を多くできるので、エンジン2の燃焼効率が向上することにより排気の浄化率を向上できる。
【0037】
供給制御部822は、浄化率が低いほど圧縮機522の出力を低くしてオゾン生成部3から排気管42に向かうオゾンの量を少なくすることで、吸気管41へのオゾンの供給量を排気管42へのオゾンの供給量よりも多くしてもよい。例えば、供給制御部822は、吸気管41へのオゾンの供給量が排気管42へのオゾンの供給量よりも多くなるまで圧縮機522の出力を低くする。具体的には、供給制御部822は、圧縮機522を停止させて圧縮機522の出力を0にする。圧縮機522が停止すると、オゾンは、オゾン生成部3から排気管42に流れないので、オゾンが第2供給部52から排気管42に供給されなくなる。これにより、供給制御部822は、オゾン生成部3が生成したオゾンの全てを吸気管41に供給できるので、吸気管41へのオゾンの供給量を排気管42へのオゾンの供給量よりも多くできる。
【0038】
供給制御部822は、排気の温度に基づいてオゾンを吸気管41及び排気管42に供給させる。例えば、供給制御部822は、排気の温度が所定値未満の場合にオゾンを吸気管41と排気管42とに供給させる。所定値は、未燃の燃料や窒素酸化物が浄化装置7の触媒と反応する反応温度である。触媒と反応する温度は、例えば200~300度であるが、これに限定するものではない。これにより、供給制御部822は、排気温度が触媒の反応温度よりも低い場合に吸気管41及び排気管42にオゾンを供給することで、燃焼効率を高めるとともに未燃の燃料及び窒素酸化物の量を低減できる。その結果、供給制御部822は、浄化装置7の排気の浄化率を向上できる。
【0039】
供給制御部822は、排気の温度が所定値以上の場合にオゾンを吸気管41と排気管42とに供給しない。具体的には、供給制御部822は、送風機13及びオゾン生成部3の動作を停止させる。これにより、供給制御部822は、排気の温度が反応温度よりも高い場合には、オゾンを生成するための電力を抑制できるので浄化システムSの消費電力を低減できる。
【0040】
報知制御部823は、分離部1で分離された酸素の量が異常判定閾値以下の場合、分離部1の異常を報知する。具体的には、報知制御部823は、分離部1で分離された酸素の量を示す酸素センサ61の出力値が異常判定閾値以下の場合には、分離部1の異常を報知する。分離部1の異常は、例えば膜の目詰まりである。報知制御部823は、分離部1の異常を示す文字情報や画像情報をディスプレイに表示させたり、分離部1の異常を示すメッセージをスピーカに出力させたりする。また、報知制御部823は、分離部1の交換を促す情報を報知してもよい。報知制御部823は、分離部1で分離された酸素の量が異常判定閾値よりも大きい場合には分離部1が正常であると判定し、分離部1の異常を報知しない。また、報知制御部823は、分離部1が正常である場合には、正常であることを報知してもよい。
【0041】
[オゾンを供給する処理]
図3は、供給制御装置8が実行する吸気管41及び排気管42にオゾンを供給する処理の一例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、エンジン2が動作している間、繰り返し実行される。
【0042】
取得部821は、排気管42を流れる排気の温度を取得する(ステップS1)。具体的には、取得部821は、温度センサ62が検出した排気の温度を取得する。
【0043】
取得部821は、排気の温度が所定値未満か否かを判定する(ステップS2)。取得部821は、排気の温度が所定値以上の場合(ステップS2でNo)、排気の温度が所定値未満になるまで待機する。
【0044】
供給制御部822は、排気の温度が所定値未満の場合(ステップS2でYes)、送風機13を動作させる(ステップS3)。具体的には、供給制御部822は、送風機13を動作させて空気を分離部1に供給する。
【0045】
取得部821は、分離部1で分離された酸素の量を取得する(ステップS4)。例えば、取得部821は、送風機13が動作している場合に酸素センサ61が検出した酸素濃度を酸素の量として取得する。
【0046】
供給制御部822は、酸素の量が異常判定閾値以上か否かを判定する(ステップS5)。供給制御部822は、酸素の量が異常判定閾値以上の場合(ステップS5でYes)、第1供給部51からオゾンを吸気管41に供給させる(ステップS6)。具体的には、供給制御部822は、オゾン生成部3を動作させてオゾン生成部3が生成したオゾンを第1供給部51から吸気管41に供給させる。
【0047】
供給制御部822は、オゾンを排気管42に供給させる(ステップS7)。具体的には、供給制御部822は、圧縮機522を動作させてオゾン生成部3が生成したオゾンを排気管42に圧送させる。
【0048】
報知制御部823は、酸素の量が異常判定閾値未満の場合(ステップS5でNo)、分離部1の異常を報知する(ステップS8)。具体的には、報知制御部823は、報知制御部823は、分離部1の異常を示す文字情報や画像情報をディスプレイに表示させたり、分離部1の異常を示すメッセージをスピーカに出力させたりする。
【0049】
[浄化システムSの効果]
以上説明したとおり、浄化システムSは、空気を酸素と窒素に分離し、分離された酸素からオゾンを生成する。これにより、浄化システムSは、酸素ガスからオゾンを生成するので、空気からオゾンを生成する場合よりもオゾンを生成する際の窒素酸化物の生成を抑制できる。そして、浄化システムSは、空気から生成されたオゾンよりも窒素酸化物の量が少ないオゾンをエンジン2の吸気管41と排気管42に供給する。その結果、浄化システムSは、エンジン2の排気に含まれる窒素酸化物の増加を抑制するとともに、排気管42へ窒素酸化物を供給してしまうことを抑制できる。このようにすることで、浄化システムSは、窒素酸化物が増加することによる浄化装置7の排気の浄化率の低下を抑制できる。
【0050】
さらに、吸気に供給されたオゾンは燃料の反応を促進させるので、浄化システムSは、オゾンを吸気管41に供給することにより未燃の燃料の量を少なくできるので排気の浄化率を向上できる。また、排気に供給されたオゾンは、未燃の燃料と触媒を反応させたり、一酸化窒素を二酸化窒素に変換したりするので、浄化システムSは、排気管42にオゾンを供給することで、排気中の未燃の燃料の量を減少させたり、触媒での反応率を向上させたりできるので、排気の浄化率を向上できる。
【0051】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0052】
S 浄化システム
1 分離部
11 膜
12 空気取入管
13 送風機
14 酸素供給管
2 エンジン
3 オゾン生成部
41 吸気管
42 排気管
5 供給部
51 第1供給部
511 第1管路
512 第1逆止弁
52 第2供給部
521 第2管路
522 圧縮機
523 第2逆止弁
61 酸素センサ
62 温度センサ
631 第1NOxセンサ
632 第2NOxセンサ
7 浄化装置
8 供給制御装置
81 記憶部
82 制御部
821 取得部
822 供給制御部
823 報知制御部
【要約】
【課題】排気管に供給される窒素酸化物の増加を抑制する。
【解決手段】エンジン2の排気を浄化する浄化システムSは、空気を酸素と窒素とに分離する分離部1と、分離部1で分離された酸素からオゾンを生成するオゾン生成部3と、オゾン生成部3が生成したオゾンをエンジンの吸気管41と排気管42とに供給する供給部5と、を有する。浄化システムSは、エンジン2の排気の浄化率に応じて吸気管41及び排気管42に供給させるオゾンの量を調整する供給制御装置8を有する。
【選択図】図1


図1
図2
図3