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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-08
(45)【発行日】2024-05-16
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20240101AFI20240509BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240509BHJP
   A61B 6/50 20240101ALI20240509BHJP
【FI】
A61B6/00 520R
A61B6/00 560
A61B6/46 506Z
A61B6/50 500C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023043531
(22)【出願日】2023-03-17
(62)【分割の表示】P 2020516093の分割
【原出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2023072091
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2018085311
(32)【優先日】2018-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 皓史
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-171719(JP,A)
【文献】特開2015-130906(JP,A)
【文献】特開2018-011871(JP,A)
【文献】特開2015-173923(JP,A)
【文献】特開2011-045709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者に対して放射線を照射する放射線照射部と、前記放射線照射部から照射され前記被検者を通過した放射線を検出する放射線検出部とを備え、前記被検者の放射線撮影画像を作成する放射線撮影装置において、
前記被検者の向きが、該被検者の背面から撮影を行うPA、該被検者の前面から撮影を行うAP、該被検者の左側から撮影を行うLR、及び該被検者の右側から撮影を行うRLのいずれであるかを判定する向き判定部と、
前記向き判定部により判定された前記被検者の向きに基づいてX線画像に対して前記被検者の向きに対応するマークをアノテーションするアノテーション処理部と
を備え、
前記アノテーションが前記X線画像の領域内に付与される
ことを特徴とする放射線撮影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記被検者の可視画像または距離画像を取得する画像取得手段をさらに備え、
前記向き判定部は、前記画像取得手段により取得した前記被検者の可視画像または距離画像に基づいて前記被検者の向きを判定する放射線撮影装置。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記画像取得手段は、前記放射線照射部に付設される放射線撮影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の放射線撮影装置において、
前記向き判定部は、ニューラルネットワークを利用して前記被検者の向きを判定する放射線撮影装置。
【請求項5】
請求項2に記載の放射線撮影装置において、
前記向き判定部は、前記画像取得手段により取得した前記被検者の顔の領域の可視画像または前記被検者の距離画像を利用して前記被検者の向きを判定する放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線撮影装置等の放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、胸部のX線一般撮影においては、被検者の正面から撮影を行う正面撮影と、被検者の側面から撮影を行う側面撮影がある。そして、正面撮影には、被検者の背面から撮影を行うPA(Posterior-Anterior view)と、被検者の前面から撮影を行うAP(Anterior-Posterior view)があり、側面撮影には、被検者の左側から撮影を行うLR(Left-Right view)と、被検者の右側から撮影を行うRL(Right-Left view)とがある。
【0003】
図5から図8は、被検者Mに対する胸部X線撮影を行う状態を示す模式図である。また、図9から図12は、図5から図8に示す胸部X線撮影により撮影されたX線画像を示す模式図である。
【0004】
図5は、被検者Mに対してPAで胸部X線撮影を行う状態を示している。この時には、X線検出部33は被検者Mの前面側に配置され、X線照射部は被検者Mの背面側に配置される。そして、X線照射部から照射されたX線は被検者Mの背面から前面側に向かって被検者を通過した後、X線検出部33により検出される。図9は、この時に撮影されたX線画像を示している。
【0005】
図6は、被検者Mに対してAPで胸部X線撮影を行う状態を示している。この時には、X線検出部33は被検者Mの背面側に配置され、X線照射部は被検者Mの前面側に配置される。そして、X線照射部から照射されたX線は被検者Mの前面から背面側に向かって被検者を通過した後、X線検出部33により検出される。図10は、この時に撮影されたX線画像を示している。
【0006】
図7は、被検者Mに対してLRで胸部X線撮影を行う状態を示している。この時には、X線検出部33は被検者Mの右面側に配置され、X線照射部は被検者Mの左面側に配置される。そして、X線照射部から照射されたX線は被検者Mの左面から右面側に向かって被検者を通過した後、X線検出部33により検出される。図11は、この時に撮影されたX線画像を示している。
【0007】
図8は、被検者Mに対してRLで胸部X線撮影を行う状態を示している。この時には、X線検出部33は被検者Mの左面側に配置され、X線照射部は被検者Mの右面側に配置される。そして、X線照射部から照射されたX線は被検者Mの右面から左面側に向かって被検者を通過した後、X線検出部33により検出される。図12は、この時に撮影されたX線画像を示している。
【0008】
なお、図9から図12におけるX線画像の右下に付されたマークは、撮影方向を示すアノテーションである。
【0009】
特許文献1には、X線CTの技術分野やMRIの技術分野において、ガントリに対して天板を介して移送される被検体の画像を捉え、仰向け状態や横向き状態などの姿勢や、頭側から移送するか足側から移送するかの身体方向を判定する医用画像診断装置が開示されている。
【0010】
また、特許文献2には、振動センサ等により体位の変更を検出し、指示どおりの体位となっていると判断した場合に撮影を行うX線画像撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2011-45709号公報
【文献】特開2014-171719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このような胸部X線撮影は、一般的に、一人の被検者に対して複数の方向の撮影をセットで行うことが多く、例えば、胸部正面(PA)と胸部側面(LRまたはRL)を1セットとしてX線撮影がなされる。この場合、撮影対象である被検者の撮影プロトコルのリストには胸部正面と胸部側面の2つのプロトコルが並び、それらを順番に撮影することになるが、被検者の状態に応じて、放射線技師の判断で撮影順序を入れ替えることがある。このような場合には、放射線技師がタッチパネル等に表示されるプロトコルのリストから撮影するメニューを手動で選んでから撮影を行う。このときには、放射線技師が手作業でプロトコルを選択することから、選択ミスや選択自体を忘れる場合がある。このような場合には、再度選択を行う必要があり手間がかかるばかりではなく、誤ったプロトコルのまま撮影を行った場合には、再度の撮影が必要となることすらある。
【0013】
また、このようなX線撮影装置においては、撮影済みのX線画像がいずれの方向から撮影されたものであるのかを容易に判断できるようにするため、X線画像に対して被検者の向きに対応するマークをアノテーションする場合がある。このようなアノテーションは、デジタル撮影装置においては画像処理により行われ、あるいは、鉛等の金属で作成された物理的なマーカを照射野内に配置することにより行われる。このようなアノテーションは、通常、放射線技師等により実行されることから、マークの付け間違い等が生ずる場合がある。
【0014】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、被検者の向きが正面撮影となる向きか側面撮影となる向きかを自動的に判定して、適正なX線撮影を実行することが可能な放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載の発明は、被検者に対して放射線を照射する放射線照射部と、前記放射線照射部から照射され前記被検者を通過した放射線を検出する放射線検出部とを備え、前記被検者の放射線撮影画像を作成する放射線撮影装置において、前記被検者の向きが、正面撮影となる向きであるか側面撮影となる向きであるかを判定する向き判定部を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記被検者の可視画像または距離画像を取得する画像取得手段をさらに備え、前記判定部は、前記画像取得手段により取得した前記被検者の可視画像または距離画像に基づいて前記被検者の向きを判定する。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記向き判定部は、前記正面撮影となる向きがAPであるかPAであるかを判定するとともに、前記側面撮影となる向きがRLであるかLRであるかを判定する。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記画像取得手段は、前記放射線照射部に付設される。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記被検者に対する撮影プロトコルを取得するプロトコル取得部と、前記プロトコル取得部により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと前記向き判定部により判定された前記被検者の向きとが相違するか否かを判定する相違判定部と、をさらに備える。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記相違判定部が、前記プロトコル取得部により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと前記向き判定部により判定された前記被検者の向きとが相違すると判定したときに、警告を行う警告部を備える。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記相違判定部が、前記プロトコル取得部により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと前記向き判定部により判定された前記被検者の向きとが相違すると判定したときに、前記被検者に対する放射線撮影を禁止する撮影禁止部を備える。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記相違判定部が、前記プロトコル取得部により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと前記向き判定部により判定された前記被検者の向きとが相違すると判定したときに、前記被検者に対する放射線撮影条件を変更する撮影条件変更部を備える。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、前記相違判定部が、前記プロトコル取得部により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと前記向き判定部により判定された前記被検者の向きとが相違すると判定したときに、前記プロトコル取得部により取得されたプロコトルのうち前記向き判定部により判定された前記被検者の向きと適合するプロトコルを選択するプロトコル入れ替え部を備える。
【0024】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の発明において、前記プロトコル入れ替え部は、前記プロトコル取得部により取得されたプロコトルのうち前記向き判定部により判定された前記被検者の向きと適合するプロトコルが存在しないときに、警告を行う。
【0025】
請求項11に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記向き判定部により判定された前記被検者の向きに基づいてX線画像に対して前記被検者の向きに対応するマークをアノテーションするアノテーション処理部を備える。
【0026】
請求項12に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記向き判定部は、ニューラルネットワークを利用して前記被検者の向きを判定する。
【0027】
請求項13に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記向き判定部は、前記カメラにより取得した前記被検者の顔の領域の可視画像または前記被検者の距離画像を利用して前記被検者の向きを判定する。
【発明の効果】
【0028】
請求項1に記載の発明によれば、被検者の向きが正面撮影となる向きか側面撮影となる向きかを自動的に判定することにより、適正なX線撮影を実行することが可能となる。
【0029】
請求項2に記載の発明によれば、画像取得手段により取得した被検者の可視画像または距離画像に基づいて前記被検者の向きを判定することが可能となる。
【0030】
請求項3に記載の発明によれば、正面撮影となる向きがAPであるかPAであるか、また、側面撮影となる向きがRLであるかLRであるかを判定することが可能となる。
【0031】
請求項4に記載の発明によれば、放射線撮影のための放射線照射部の移動と連動させて画像取得手段による被検者の撮影範囲を移動させることが可能となる。このため、画像取得手段の撮影領域を常に被検者方向とすることが可能となる。
【0032】
請求項5に記載の発明によれば、相違判定部により、現在選択されているプロトコルと被検者の向きとが相違するか否かを判定することが可能となる。
【0033】
請求項6に記載の発明によれば、現在選択されているプロトコルと被検者の向きとが相違すると判定したときに警告を行うことにより、誤った放射線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0034】
請求項7に記載の発明によれば、現在選択されているプロトコルと被検者の向きとが相違すると判定したときに撮影を禁止することにより、誤った放射線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0035】
請求項8に記載の発明によれば、現在選択されているプロトコルと被検者の向きとが相違すると判定したときに放射線撮影条件を変更することにより、正しい放射線撮影条件を選択して誤った放射線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0036】
請求項9に記載の発明によれば、現在選択されているプロトコルと被検者の向きとが相違すると判定したときに放射線撮影条件を変更することにより、正しいプロトコル入れ替えることにより、正しいプロトコルを選択して誤った放射線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0037】
請求項10に記載の発明によれば、被検者の向きと適合するプロトコルが存在しないときに警告を行うことから、誤った放射線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0038】
請求項11に記載の発明によれば、向き判定部により判定された被検者の向きに基づいてX線画像に対して前記被検者の向きに対応するマークをアノテーションすることから、正しいアノテーションを自動的に実行することが可能となる。
【0039】
請求項12に記載の発明によれば、ニューラルネットワークを利用することにより、被検者の向きをより正確に判定することが可能となる。
【0040】
請求項13に記載の発明によれば、被検者の顔の領域の可視画像または距離画像を利用して被検者の向きを判定することにより、被検者の向きをより正確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】この発明に係る放射線撮影装置としてのX線撮影装置の概要図である。
図2】この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
図3】この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
図4】この発明の第3実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
図5】被検者Mに対する胸部X線撮影を行う状態を示す模式図である。
図6】被検者Mに対する胸部X線撮影を行う状態を示す模式図である。
図7】被検者Mに対する胸部X線撮影を行う状態を示す模式図である。
図8】被検者Mに対する胸部X線撮影を行う状態を示す模式図である。
図9】胸部X線撮影により撮影されたX線画像を示す模式図である。
図10】胸部X線撮影により撮影されたX線画像を示す模式図である。
図11】胸部X線撮影により撮影されたX線画像を示す模式図である。
図12】胸部X線撮影により撮影されたX線画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、この発明に係る放射線撮影装置としてのX線撮影装置の概要図である。
【0043】
このX線撮影装置は、オペレータがX線撮影操作を実行するための操作室101に設置されたコンソール部1および高電圧装置2と、被検者Mに対して撮影を行うための撮影室100に設置された立位撮影スタンド3および撮影部4とを備える。撮影室100と操作室101とは、隔壁102により遮断されている。
【0044】
コンソール部1は、液晶表示器等から構成される表示部11と、各種の操作を実行するためのキーボードやマウス等からなる操作部12とを備える。表示部11には、X線撮影画像が表示される。また、高電圧装置2は、操作室101内において隔壁102に配設される。この高電圧装置2は、タッチパネル式の液晶表示器等から構成される表示部や入力ボタン等を有する操作パネルと、X線の照射を開始するためのスイッチとを備える。この高電圧装置2は、後述するX線管42の管電圧や管電流、あるいは、X線照射時間等のX線の照射条件を設定するためのものである。
【0045】
立位撮影スタンド3は、X線検出部33を昇降可能に支持する昇降部34を備える。X線検出部33は、ブッキー部とも呼称されるものであり、その内部にフラットパネルディテクタ(FPD)等のX線検出器を備える。また、撮影部4は、撮影室100の天井に対して互いに直交する方向に移動可能な基部46と、この基部46から下方に延びる支持部45と、この支持部45に対して昇降および回動する移動部44とを備える。移動部44には、X線管42およびコリメータ43が支持されている。これらのX線管42およびコリメータ43は、X線照射部を構成するものであり、一体として移動可能となっている。そして、X線照射部を構成するコリメータ43には、被検者Mを撮影するためのこの発明に係る画像取得手段としてのカメラ41が付設されている。
【0046】
このカメラ41は、被検者Mの可視画像を撮影するCCDカメラ等から構成される。あるいは、このカメラ41は、被検者Mの距離画像を撮影するTOF(Time-Of-Flight)カメラから構成される。なお、TOFカメラはTOFセンサとも呼称され、光の位相差を時間差に変換して光の速度をかけることで対象までの距離を二次元的に求めるカメラである。
【0047】
図2は、この発明の第1実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。
【0048】
第1実施形態に係るX線撮影装置は、論理演算を実行するCPU、装置の制御に必要な動作プログラムが格納されたROM、制御時にデータ等が一時的にストアされるRAM等を有する制御部50を備える。この制御部50は、ソフトウエアがインストールされたコンピュータから構成される。この制御部50に含まれる各部の機能は、コンピュータにインストールされているソフトウエアを実行することで実現される。
【0049】
この制御部50は、上述したカメラ41、表示部11および操作部12と接続されている。また、この制御部50は、病院内の被検者管理システムである放射線科情報システム(RIS)104と、通信部57およびネットワーク103を介してWifi等の無線通信手段により接続されている。
【0050】
この制御部50は、カメラ41により取得した被検者Mの可視画像または距離画像から、被検者Mの向きが正面撮影となる向きであるか側面撮影となる向きであるかを判定するとともに、さらに、正面撮影となる向きがAPであるかPAであるか、側面撮影となる向きがRLであるかLRであるかを判定する向き判定部51を備える。また、この制御部50は、被検者Mの情報や被検者Mに対する撮影プロトコル等の情報を、放射線科情報システム104から取得して記憶するプロトコル取得部52を備える。また、この制御部50は、向き判定部51により判定された被検者Mの向きに基づいてX線画像に対して被検者Mの向きに対応するマークをアノテーション(annotation)するアノテーション処理部53を備える。
【0051】
さらに、この制御部50は、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違するか否かを判定する相違判定部54と、相違判定部54がプロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときに警告を行う警告部55と、相違判定部54がプロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときに被検者Mに対するX線撮影を禁止する撮影禁止部56とを備える。
【0052】
このような構成を有するX線撮影装置においてX線撮影を実行するときには、最初に、放射線技師が図1に示すコンソール部1の操作部12を操作することにより、予めプロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち、次に被検者Mに対してX線撮影を実行すべきプロトコルを選択する。そして、被検者Mを、立位撮影スタンド3における撮影部4の前方の位置において、X線撮影のプロトコルに適合する姿勢で起立させる。
【0053】
この状態において、カメラ41により被検者Mを撮影して被検者Mの可視画像または被検者Mの距離画像を取得する。そして、向き判定部51が、取得された被検者Mの可視画像または被検者Mの距離画像に基づいて、被検者Mの向きが、正面撮影となるAPであるかPAであるか、あるいは、側面撮影となるRLであるかLRであるかを判定する。この判定時には、特徴を抽出しやすい被検者Mの顔の領域の画像が利用される。そして、向き判定部51は、予め学習されたニューラルネットワークを利用することにより被検者Mの向きを判定する。そして、相違判定部54が、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違するか否かを判定する。
【0054】
相違判定部54が、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違しないと判定したときには、被検者Mに対するX線撮影が許容される。この時には、放射線技師が高電圧装置2等を操作することにより撮影部4によるX線撮影を実行する。そして、アノテーション処理部53が、撮影されたX線画像に対して、被検者Mの向きに適合したマークをアノテーションする。これにより、図9から図13に示すように、X線画像の右下の領域にAP、PA、RL、LR等のマークが付加される。この時には、向き判定部51により判定された被検者Mの向きと整合したマークが付与されることから、誤ったマークがX線画像に付与されることを防止することが可能となる。
【0055】
一方、相違判定部54が、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときには、警告部55が警告を行う。この警告は、コンソール部1における表示部11に警告表示を表示することにより行われる。なお、警告表示とともに、音や光による警告を実行してもよい。また、相違判定部54が、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときには、警告とあわせて、撮影禁止部56が被検者Mに対するX線撮影を禁止する。これらの警告と撮影禁止動作により、誤ったX線撮影が実行されることを確実に防止することが可能となる。
【0056】
次に、この発明の他の実施形態について説明する。図3は、この発明の第2実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。なお、図2に示す第1実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0057】
この第2実施形態に係るX線撮影装置においては、第1実施形態に係るX線撮影装置における撮影禁止部56のかわりに、撮影条件変更部58を備えている。この撮影条件変更部58は、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときに、被検者Mに対するX線撮影条件を変更する。
【0058】
すなわち、この第2実施形態に係るX線撮影装置においては、相違判定部54が、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときには、警告部55による警告とともに、撮影条件変更部58が、X線撮影を実行するときの撮影条件を、現在選択されているプロトコルに対応した撮影条件から、向き判定部51が判定した被検者Mの向きに対応した撮影条件に変更する。これにより、誤った撮影条件でX線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0059】
次に、この発明のさらに他の実施形態について説明する。図4は、この発明の第3実施形態に係るX線撮影装置の制御系を示すブロック図である。なお、図2および図3に示す第1、第2実施形態と同様の部材については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0060】
この第3実施形態に係るX線撮影装置においては、第1実施形態に係るX線撮影装置における撮影禁止部56のかわりに、プロトコル入れ替え部59を備えている。このプロトコル入れ替え部59は、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときに、プロトコル取得部52により取得されたプロコトルのうち向き判定部51により判定された被検者Mの向きと適合するプロトコルを選択する。
【0061】
すなわち、この第3実施形態に係るX線撮影装置においては、相違判定部54が、プロトコル取得部52により取得されたプロトコルのうち現在選択されているプロトコルと向き判定部51により判定された被検者Mの向きとが相違すると判定したときには、警告部55による警告とともに、プロトコル入れ替え部59が、現在選択されているプロトコルを破棄し、それにかえて、プロトコル取得部52により既に取得されている複数のプロコトルのうち、向き判定部51により判定された被検者Mの向きと適合するプロトコルを選択し、選択されたプロトコルと対応する撮影条件を設定する。これにより、誤った撮影条件でX線撮影が実行されることを防止することが可能となる。
【0062】
このとき、プロトコル取得部52により既に取得されている複数のプロコトルのいずれもが、向き判定部51により判定された被検者Mの向きと適合するプロトコルと異なっていた場合には、警告部55がその旨の警告表示を実行する。
【0063】
なお、上述した実施形態においては、いずれも、この発明を、起立状態の被検者Mに対してX線撮影を実行する立位撮影スタンド3を有するX線撮影装置に適用した場合について説明したが、この発明を、臥位状態の被検者Mに対してX線撮影を実行する臥位撮影テーブルを有するX線撮影装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 コンソール部
2 高電圧装置
3 立位撮影スタンド
4 撮影部
11 表示部
12 操作部
41 カメラ
42 X線管
43 コリメータ
50 制御部
51 向き判定部
52 プロトコル取得部
53 アノテーション処理部
54 相違判定部
55 警告部
56 撮影禁止部
57 通信部
58 撮影条件変更部
59 プロトコル入れ替え部
100 撮影室
101 操作室
103 ネットワーク
104 放射線科情報システム
M 被検者
図1
図2
図3
図4
図5
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図12